Menu
 > レビュワー
 > 鉄腕麗人 さんの口コミ一覧
鉄腕麗人さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2597
性別 男性
ホームページ https://tkl21.com
年齢 43歳
メールアドレス tkl1121@gj8.so-net.ne.jp
自己紹介 「自分が好きな映画が、良い映画」だと思います。
映画の評価はあくまで主観的なもので、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作国 : 日本 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順12
投稿日付順12
変更日付順12
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章
人生において、「絶対」な存在と共に過ごせることの価値と、その代償。 原作を読み切って正式なレビューを綴りたい。
[映画館(邦画)] 7点(2024-06-02 18:36:00)《新規》
2.  デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章
多様性という言葉のみが先行して、それを受け入れるための社会の成熟を成さぬまま、問題意識ばかりが蔓延する現代社会において、私たちは、いつしか見なければならない現実から目を背け、まるで気にもかけないように見えないふりをしている。 空に街を覆い隠すような巨大円盤が浮かんでいたって、仕事が大事、受験が大事、友情が大事、恋が大事、体裁やステータスが大事と、問題をすげ替える。 このアニメ映画は、本当は直視しなければならない「日常」の中に潜む「非日常」を、具現化して、切実に茶化して、女子高生たちを中心にした群像劇に落とし込む“くそやばい!”寓話だ。   今だからこそ多少ジョーク混じりに「闇落ちしていた」なんて思い出せるけれど、20代の私は諸々の環境が辛くてしんどくて、滅入っていた。専門学校を卒業して、フリーターを経て、ニートじみた時間を過ごして、ようやく就職した営業職に辟易とした日々を送っていた。 そんな折、いつも傍らにあったのは、浅野いにおの漫画だった。  「素晴らしい世界」「ひかりのまち」「ソラニン」「虹ヶ原ホログラフ」「世界の終わりと夜明け前」……と彼の作品はほぼ読んできた。 漫画作品としての面白さももちろん堪能していたけれど、特にその当時の私のフェイバリットになった「理由」は、同世代の作家が生み出してくれた「共感性」だったのではないかと、20年たった今思える。 自分と同じ20代の漫画家が、己の人生や社会に対する鬱積やジレンマを吐き出すように、そしてその先に一抹の光や希望を必死に求めるように、生々しく創造された漫画世界に、共感せずにはいられなかった。   そんな浅野いにお作品の初のアニメ映画化。そりゃあ観ないわけにはいられない。  「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」は、単行本を買っているけれど、途中で購入がストップしてしまっていた。(作品自体は非情に面白く、無論好きな世界観なのだが、ここ数年漫画本を購入する行為自体がすっかり消極的になってしまい、本屋に行かなくなってしまったことが最たる要因だろう) 既に完結している原作を読まずして、本作を観るのはいかがなものかとも逡巡したけれど、前章・後章構成ということもあり、とりあえず前章の鑑賞に至った。  原作ファンとしての警戒心はもちろんあったけれど、この前章を観る限りでは、ものすごく見事なアニメ映画に仕上がっていたと思える。 物語的には、おそらくは全体のストーリーの序盤から中盤に差し掛かるくらいの地点で終了してしまうので、尻切れトンボ感は拭えないが、それでもこの先何が起こるのかというワクワクドキドキは十二分に表現されていた。 何よりも、漫画世界の中で、特異なテンションと表情で悲喜こもごもの感情を爆発させていたキャラクターたちが、アニメーションの中でとても魅力的に躍動していたことが、素晴らしかったと思う。 主人公二人の声を演じた幾田りら&あのちゃんも、素晴らしい表現力と存在感で、門出とおんたんに息を吹き込んでいた。  この映画のストーリーが「後章」でどんな結実を見せるのか、まったくもって予想できないけれど、こうなればこのまま映画で結末を迎えたあとに、残りの単行本を買い揃えようと思う。 もちろん今も私の背後の本棚の一番近い段には、浅野いにおの作品が並んでいる。「後章」公開までは、保有済みの「デデデ」を読み返しながら、はにゃにゃフワーッと待つとしよう。
[映画館(邦画)] 8点(2024-04-09 20:37:57)
3.  天気の子
梅雨明けした週末、それに合わせるように封切りされていた本作を観に行く。 正直なところ“期待”は半々といったところだった。 新海誠監督の前作「君の名は。」はちょっと異常なレベルの社会的大ヒットとなり、これを受けての次作は、否が応でも注目を集めることは必至で、それは「独善的」なこのアニメーション監督の作風にいい意味でも悪い意味でも影響を与えるだろうと思えた。 案の定、公開前からちょっと節操がないくらいの企業タイアップの乱れ打ちが目立ち、注目度と製作資金の潤沢さを感じる反面、あらゆるしがらみに覆われた相当に自由の利かない映画製作になったのではないかと危惧していた。  酷評も辞さない構えで鑑賞に至ったのだけれど、その危惧は全くの杞憂だった。 善し悪しはまず別としても、そこで繰り広げられたのは、前作以上、いや過去作のどれよりも“独善的”で“独りよがり”な新海誠監督の「セカイ観」全開の映画世界だった。 危惧された不自由さはむしろ皆無だったと言っていい。美しすぎる精巧なアニメーションは無論健在だが、その美しさと表裏一体の生々しくリアルな描写が観る者の心情をじわじわと抉ってくる。 現実の具体的な企業名や商品名が作中の至るところで映し出され、「現実感」を効果的に演出していた。そう、節操なく思われた企業タイアップだったが、監督と製作陣はそれを最大限に活かし、アニメ世界の重要なファクターとして表現してみせている。  タイトル「天気の子」が表すとおり、この国のあらゆる「天気」を表現したアニメーションはあまりにも美しく、それだけでこの映画の価値は揺るがないとすら思える。 しかし、この映画で表された美しさは、いびつで残酷だ。 主人公の少年少女たちは、この美しい世界の“底”で、文字通りに生命をすり減らしながら、喜びと希望を見出そうと奔走する。 それは決して安直な綺麗事ではなく、心身ともに追い詰めされた彼らがギリギリのところで保とうとした生きる「意味」だった。  この映画が描き出したストーリーテリング、そして主人公たちの帰着に対して、受け入れられない人は多いだろう。 彼らの「選択」は極めて破滅的な行為であることは間違いなく、想像よりもずっとカオスで狂気的な映画である。  セカイの“しくみ”も“理り”も関係ない。 彼らは、あまりにも無責任に、あまりにも独善的に、そして「確信」をもって、「大丈夫だ」と言い切る。 ならば、それがすべてだ。 世紀の“わがまま”を押し通す、若い生命の猛々しさと瑞々しさ、最高密度の「青臭さ」に、少なくとも僕は、涙が止まらなかった。  梅雨明けのタイミングで観に行って、なんと“梅雨明けしない”顛末には面食らったが、今、この国の夏に観なければ、あまりに勿体ない映画だ。
[映画館(邦画)] 9点(2019-07-26 23:22:01)(良:2票)
4.  手紙(2006) 《ネタバレ》 
「手紙ってめちゃ大事やねん」と、沢尻エリカが主人公をこれでもかと諭すように言い放つ。 もう映画のクライマックスだと思っていたシーンでのこの陳腐であざとい台詞を聞くや否や、思わず大あくびをしてしまった。 物語としての面白さがまるでない道徳映画を観てしまったなあと思った。  が、映画はもう少し続いて、結局最後は泣いてしまった。  東野圭吾の原作は読んでいないので、一概には言えないが、ストーリーには彼らしい捻りはない。 殺人を犯した兄を持つ主人公の苦闘の日々を、兄弟間の“手紙”のやり取りを絡めながら、つらつらと重苦しく描く。 映像となり、主人公を山田孝之が演じることで、その“重さ”は余計に”じっとり”としたと思う。  だからと言って、特筆する程の「悲劇」も描かれない。明確だけれど地味な「不幸」が波のように訪れるばかり。  苦悩し続けた主人公は、ついに兄との明確な「決別」を決意する。 ラスト15分、そこから物語はようやく感動へ転じていく。  映画の中でも説教臭く描かれる通り、世の中から「差別」が無くなるなんてことはないのだろうと思う。 なぜなら、人の世の中は、差別し、差別されることで成り立っている要素が多分にあるからだ。 そして、そのことと同じく、一度繋がった人と人との関係性を完全に消し去るなんてことも、実際不可能なことだろうと思う。  それが血縁者であるなら尚更。ただただ受け止めて、生きていくしかない。 使い古された言葉を敢えて使うなら、それが「宿命」というものなのだろう。  そういうことをこの兄弟がそれぞれに受け止めたラストシーン。 受刑者の兄を演じる玉山鉄二が、漫才をする弟の姿を見つめながら、号泣を押し殺すようにひたすらに両の手を合わせる。 それは、延々とありふれた道徳論を描いてきた映画の果てに辿り着いた、綺麗ごとではない真実味だったと思う。  映画としての展開は非常に稚拙で、ラストシーンにしても小田和正の楽曲を無理矢理持ち出して、強引に涙を誘うというあざとさが溢れていることは否定できない。  ただあざといからこそ、人間と社会、人間と人間の結びつきについて考えさせられる映画だとは思う。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2010-12-22 17:20:08)
5.  天然コケッコー
登下校の何気ないひと時、遠い昔の記憶は、いつも奇跡のように思い出される。 それは、全校生徒が数人しかいない田舎の小中学校に通っていなくても、誰しもが持つ経験だと思う。  この映画は、単純に田舎の純朴さや雰囲気の良さを描いているのではなくて、そういったすべての人が持ち得る「遠い記憶」の何にも代え難い「価値」を描いていると思った。  主人公の中学生たちは、決して人間として完成なんてされていない。当たり前だ、中学生なのだから。 そんな彼らが、まわりの人間や自分自身の言動によって、喜び、傷つく。 全編通して、それほど大きな事件が起こるわけではない。むしろ「何もない映画」と言えるかもしれない。 しかし、日々の生活の中のたった“一言”が、彼らに生活の中では大事件であり、心は大きく揺れ動く。  きっとそれは誰しもが経験し、成長とともに徐々に薄れていく感受性なのだろう。 でもそれは全く無くなってしまうわけではなくて、それぞれの人間の奥の方に、ずうっと残り続ける。 そんな感覚をそっと思い起こさせる映画だった。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2010-09-05 08:54:02)
6.  ディア・ドクター 《ネタバレ》 
山里の無医村で偽医者として、医療を生業とする主人公。 唯一の医者を神のように崇拝する村人たち。 “嘘”はいつまでもつづくことはなく、偽医者は遂に逃げ出す。  この映画、この監督の凄いところは、人間を決してキレイには描かないことだ。 たとえば、同じプロットであったとしても、主人公にもっと使命感を持たせ、村人をはじめとする周囲の人間にもっと分かりやすい慈愛を持たせれば、涙溢れるとても感動的な映画になっただろうと思う。  しかし、この映画は、そういう安直な感動を否定する。 それは、人間の持つ本質的な弱さや不安定さを、この監督はよく知っていて、認めているからだ。  主人公は、安易な自己満足のために偽医者を演じはじめ、大金を得て、何となく誤摩化し、偽り続けながら生きている。 村人たちは、決して声には出さないが、実はその“偽り”にも気付いていて、ただ“無医村”という自分たちの状況におけるとてつもない“不安”を覆い隠すために、それを盲目的に認めている。 偽っていたのは、主人公の無免許医だけではない。村全体が、互いの弱さを支え合うように、偽ってきたのだと思う。  だからこそ、主人公が無免許医であるということが具体的な形で判明した後の村人たちの反応は、極めて冷ややかで、彼を擁護する者は無い。ただし、彼のことを全否定できる者も同時に無い。それは、偽っていたのが彼だけではないということを、誰もが知っているからだ。  「その嘘は、罪ですか」とこの映画は問う。 もちろん、罪だとは思う。ただその罪には、加害者も被害者もない。「嘘」に関わったすべての人間が、加害者であり、被害者だったと思う。 そして、嘘をつかなければならなかった「状況」にこそ、本当の罪があると考えさせられる。  正直、観終わった直後は、想像以上に感動が薄かったせいもあり、一寸の物足りなさを感じてしまった。 しかしそうではなく、その物足りなさの中に存在する見えない感情こそ、この映画が伝えようとすることだと思う。  鶴瓶師匠の決して目の奥が笑っていない恵比寿顔は、まさにベストキャスティングで、その表現力は最高だったと思う。  そして、前作「ゆれる」に続き、またもや一筋縄ではない人間ドラマを創り上げてみせた、西川美和。その若き女流監督の懐の深さに感嘆する。
[DVD(字幕)] 9点(2010-03-14 14:12:19)(良:1票)
7.  転々
「人生」なんてものは、まさに“転々”としていくもので、悲しい事も、嬉しい事も、順繰りにめぐるものだと思う。 ただ、幸せは、はっきりと目に見えるものではないし、これがそうだと実感できるものではないから、見逃してしまいがちで、辛い事ばかりに目がいってしまうのだと思う。  そういう人生の中での、ささやかな幸せを、淡々と、とぼとぼと、踏みしめるように映し出した映画だった。  三木聡監督らしいゆる~い可笑しさと、ふいに垣間見せる温かさの中で、オダギリジョーと三浦友和がさらにゆる~く息づく。  冒頭では、ただの借金を抱えた大学生とそれを追う取立屋だった二人の関係が、東京の可笑しさに溢れた“散歩”を通じて、次第に“疑似親子”のそれになっていく様に、人と人が触れ合うことによってはじめて生じる滑稽さと、その素晴らしさを感じる。  むさくるしい風貌の男二人の掛け合いがメインの映画なので、上野樹里と蒼井優が出演した「亀は意外と速く泳ぐ」ほどの華やかさはなく全体的に地味な感じはあるが、その分、じんわりと暖かみが染み渡る作品だったと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2008-06-21 10:46:14)(良:1票)
8.  転校生-さよならあなた-
世間は夏休み。何を観ようか迷っていたら「転校生」のタイトルが飛び込んできた。 1982年版「転校生」をビデオで観て、すぐさま尾道へ行きたくなり、炎天下の中を原動機付自転車を駆って松山(愛媛)から尾道まで向かったのは、2年前の真夏だった。 リメイクが公開されていたのは知っていたが、まあオリジナルを上回るようなことはないだろうと興味は薄かったが、このタイミングでは観るしかあるまいと思った。  舞台は尾道から信州へと変わり、時代も現在へと移り変わった。 が、映画世界が描こうとする空気感は、オリジナルと通じるものを感じた。 ただ大林監督が織りなす独特の雰囲気が、現代の空気感に対して違和感があったことは正直否めない。 主人公たちの言動は、現代っ子のそれとはあまりにかけ離れている感じがして、細かい部分で“つくられている”という印象が終始拭えない。 25年前の少年少女たちの「等身大」をそのまま現代に転用しても、やはりそれは「等身大」ではない。  主人公たちに与えられる「運命」も、オリジナルのノスタルジイと切なさに溢れた顛末に対して、あまりに悲しい。 その運命は、15歳の彼らにはあまりに酷ではないか。と思わざるを得ず、設定としてもリアリティが無い。  しかし、新しい「転校生」が、82年版「転校生」と同様に成し得た“価値”がある。 それは、名女優の原石の発掘である。 82年の「転校生」が、小林聡美という名女優を発見したように、今作「転校生」でも、蓮佛美沙子という物凄い可能性を秘めた女優を発見したと思う。 現在16歳の彼女が、新しい世代の女優界を引っ張っていくことは、かなり可能性が高いことではないか。と、思う。
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2007-08-12 18:44:35)(良:1票)
9.  DEATH NOTE デスノート the Last name 《ネタバレ》 
様々な要素を巡り巡って結末を得た原作に対して、この映画版はどういう「結末」を迎えるのか。 正直なところ、この映画についての期待というか「興味」は、そこに集約されていたと思う。  好意的に見れば、原作のエピソードを巧く選りすぐって、ストーリーをまとめているということは感じた。原作で言えば、「L編」の終盤と「ニア編」の大部分をすっ飛ばしてラストのくだりだけを頂戴したという形だが、何とか破綻せずに繋がっていると思う。  “L派”としては、原作と違って「Lがキラを出し抜く」展開は少し嬉しかった。が、個人的には「見所」と言えるのはその部分しか無かったというのが正直な印象だ。  冒頭からどうにも気の抜けた演技と演出が、鈍く光り続ける。「前編」は、瀬戸朝香や香椎由などある程度の演技力を携えた女優がポイントを抑えていたのだが、今作のモデル上がりやらアイドル上がりやらの女優らの演技は“チープ”の範疇をとても抜けきれずに、辟易してしまう。そのせいにするのは酷だが、主演俳優二人の演技もなんだか大袈裟なだけに見えて、説得力を感じることができなかった。  原作とは違う展開を見せた終盤の顛末は面白味はあったが、細かく“L”やその他のキャラクター性などを考えると腑に落ちない点も多々あるし、盛り上がりにも大きく欠ける。  まあ元々、期待などはしていなかったのだけれど、「面白くはない」ということを覚悟しながら140分の長丁場に臨むのは、やはりしんどい。
[DVD(邦画)] 3点(2007-04-22 01:21:52)
10.  鉄コン筋クリート
2006年の年の瀬。実はもっとも観たかった映画が、この「鉄コン筋クリート」。 年末公開だったのだが、地方都市の性で年明け一発目の公開とずれ込んでしまった。 というわけで、2007年一発目。新年最初に観る映画がアニメというのも悪くはない。  んで。そういう新しい年の“高揚感”的な部分がないと言えばウソになるが、いきなりの最高点。  とりあえず、あの松本大洋の独創的な原作漫画を“カンペキ”に映画化してみせたということだけで、「スバラシイ」という他はない。 しかも、ただ原作を忠実にアニメ化しただけではなく、その物語と世界観が持つ「深層心理」まで確実に表現してみせたこのアニメーション技術には、もはや言葉が無い。 地獄のような町で、どこまでも純真に、だからこそ狂気的に生きていく二人の少年。 その躍動感を、息づかいを、そして無限に混沌と広がる精神世界を、見事に映し出す。 目の前に際限なく広がっていく映像世界には、ただ呆然とするばかりだ。  そもそもが一つの“カタチ”を持たない物語である。すべてを明確に説明することなど不可能だし、意味がないことだ。 ただただぶつけてくる登場人物たちの感情をそのままに受け止めればそれでいいのだと思う。そこに理屈など存在せず、感情のままに揺さぶられる。   一昨年の「マインド・ゲーム」に引き続き、果てしない精神世界を独創的に表現してみせた“STUDIO 4℃”。 ながらく「ジブリ」によって支えられ発展してきたジャパニメーションは、その停滞と同時にまた新たな“チカラ”を得たのだと思う。
[映画館(邦画)] 9点(2007-01-08 00:16:22)(良:1票)
11.  電車男
「真実」というフレーズを謳うものほど、実のところ“つくりもの”が多いのではないかと、常々思っている。 この「電車男」についても、そういう疑いは拭えず、一体どこまでを“リアル”と捉えるかは微妙な部分があると、思う。 書籍化、テレビドラマ化、映画化、さらには舞台化と、ありとあらゆる媒体において「企画化」されていく様を見て、そういう印象は益々膨れ上がる。  ただ、リアルかどうかということを度外視するならば、このストーリー自体は結構好きだったりはする。 根っからのヲタク野郎が、ふいな出会いから文字通り“高嶺の花”なお嬢様に恋をするという着想は、ベタで古典的であると同時に、非常に現代的な要素が巧く合わさっている。 「ネット」という手法で、主人公が見ず知らずの無数の「他人」たちによって、支えられ、励まされるという構図にも、ある種奇跡的なほどの成功要素が加味されていると思う。  でも、なかなか珍しいことではあるが、この映画版よりもテレビドラマ版の方が、随分「映像化」ということについて完成度が高いと思う。 主演の山田孝之の根っからの「暗さ」が、一層に拍車をかけていると思われるが、映画全体がとても「重い」感じがする。ヒロインの中谷美紀はもちろん巧い女優だが、そういう女優としての厚みが、また必要以上に「重い」印象を与える結果になっている。 全体的に軽くアクティブな作りだったテレビドラマ版に対し、映画版は少々趣向を変えて“リアリティ”を狙ったのだとは思うが、ストーリー自体のテンションとしては、ドラマ版の雰囲気の方がふさわしかったのではないかと思う。製作費もドラマ版の方がずいぶん潤沢だったんじゃないかと思う。  まあ詰まるところ、某キー局お得意の「企画映画」の枠を越えないことは確かなことだ。 
[地上波(字幕)] 5点(2006-09-16 23:29:30)
12.  DEATH NOTE デスノート(2006)
うむ。良い意味でも悪い意味でも「こんなものだろう」というのが素直な感想。やはりというか当然ながら、「漫画」の実写化というものは難しい。 オリジナルストーリーが絡んで、一瞬「こんなのは月(ライト)じゃない」と思わせるが、しっかりと原作の人物像に迫らせられたのは良かったと思う。ただ、漫画に対し実写となると、やはり極端に非道な内面描写というのは困難だったのだと思う。漫画だと許されるが、実写だとリアリティがなくなるという部分は、この漫画の場合特にあると思う。 映画的なディティールにおいて雑な部分はあるが、それでもそれなりに「よくまとめた」ということが言える出来だろう。 懸念だった死神リュークのビジュアルも、ベストかどうかは疑問だが、悪くは無かった。
[映画館(字幕)] 5点(2006-06-27 18:25:58)
13.  転校生(1982)
ふと“尾道”へ行こうと思いたち、「それならば大林監督の映画を観なければ!」と思い、初めてあまりにも有名な今作を観た。 いやー、スゴイ映画だと思う。知名度の高い映画なので、内容を知っていた分、今まで敬遠してきたことをうらめしく思う。 大林監督の、まさに郷里への愛情溢れるノスタルジー。可笑しくそれでいて切ないストーリー性。郷里の美しさ、感情の美しさ、過ぎ去った時間の美しさ、あらゆる美しさが合わさり、また違う美しさが映画いっぱいに溢れている。 それにしても、何よりスゴイのは、この映画に主演した“新人”俳優二人の発見である。この映画の、特に主人公の二人の間での台詞がいちいち完璧なのは、もちろん脚本の素晴らしさもあるが、演じる二人の俳優のチカラに他ならない。ほんとに「天才じゃないか」と感嘆してしまう。 良い役者というものは、そのキャリアの発端から“巧い”ということをつくづく感じた。
[ビデオ(字幕)] 9点(2005-08-08 02:30:23)
14.  鉄人28号
作品登録要望を出して1年、やっとのことで観ることができ個人的にはある種の感慨深さがあった。のだが、正直「もう少しなあ~」という部分が多すぎる出来栄えだった。物語自体の軽薄さも目に付くところではあるが、そこはあえて“王道的”と片付けておいておこう。やはり問題はビジュアルに尽きると思う。名作漫画「鉄人28号」を今、映像化する意味をもっと考えてほしかった。一辺倒で工夫の無い構図の羅列、原作が持つ秀逸な昭和的色合いをまったく見せない造形、映画全体の中途半端な時代の雰囲気……。製作費をかけるという以前に、手間をかける部分、工夫をすることが可能な部分が随所で露呈し、残念という他ない。エンディングで流れる原作漫画の一コマ一コマの方がよっぽどスリリングだ。それでも何とか見せるのは、鉄人28号というキャラクター自体が持つ揺るぎないパワーのおかげだろうか。
[映画館(字幕)] 3点(2005-03-25 19:07:48)(良:1票)
15.  デビルマン 《ネタバレ》 
まったく……。一番目のレビューとして申し訳ないが、言わせてもらいます。  これほどまでに“胸糞が悪い”映画は観たことがない。 日本映画でヒーローものの娯楽映画だから“くだらない”だけならまだ許せるだろうが、娯楽映画としてこれほどの醜悪さはまさに憎むべきものだ。 もう何が悪いどこが悪いと指摘するのも虚しい。まともな神経で作ったとは思えないし、観る側もまともな神経では耐えられないものだ。  上映前の暗がりの中、一人の老人がおぼつかない足で劇場に入ってきた。 そして彼は、クライマックス前もっとも下劣なシーンのところでさらに足元をふらつかせながら途中退席していった。 もちろんぼくはこの映画に何の関係もないが、何だかその老人に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。  まあ、とにかく、映画としてのあらゆる罪を犯した今作を許すことはできない。 そして、もし「この映画は庇護るにたるべき存在か」と聞かれれば…そんな愚問には答える気にもならない。
[映画館(邦画)] 0点(2004-10-12 18:49:52)(良:7票)
16.  点と線 《ネタバレ》 
時刻表を利用した計画殺人の妙自体は、今となってはさほど目新しくはないが、事件の核に女の憎愛を据えるドラマ性は、さすがに文学の巨匠松本清張の原作であると言える。卓越した映像美も手伝い非常にスリリングに展開する映画世界が秀逸。心中に始まり心中に終わる様式美も見事。
8点(2004-05-14 12:10:09)
17.  DEAD OR ALIVE 2 逃亡者
その衝撃性でカルト的なファンを誕生させた前作であったが、そのノリを一切無視した続編を作るあたりが実に三池崇史監督らしい。前作の破天荒さを期待した者にとってはやはり面白くないが。
1点(2003-12-20 13:41:03)
18.  DISTANCE/ディスタンス
「ワンダフルライフ」ではあざとさを感じたが、今作では是枝監督の技法であるドキュメンタリー的フリーな作風が効果的に物語りに反映していたと思う。無差別殺人を犯した新興宗教家たちの加害者遺族たちの集いという題材は、非常に斬新で興味深いものだった。配役も良く、作為的なセリフを一切廃した展開には非常にリアリティがあった。
8点(2003-12-17 13:28:16)
19.  天国と地獄
なんといっても映画全体に広がるねっとりとした暑さが印象的だった。なんだか観ている方まで汗が噴出しそうな映像に包み込まれた。その映像感覚がサスペンスフルな展開に絶妙にマッチして映画の濃厚さにつながっていた。三船敏郎、仲代達矢ら往年の名俳優の存在感もさることながら、現在の名俳優山崎努の出世作としても印象深い。
8点(2003-11-30 13:42:29)
20.  DEAD OR ALIVE 犯罪者
終盤までの展開は後味の悪いバイオレンスが続き好感は持てないものだけど、このラストには良いも悪いも引きつけられることは間違いない。圧倒的なまでの破天荒なラストシーンは伝説的ですらある。さすが三池崇史という感じだ。
1点(2003-11-30 11:55:33)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS