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プロフィール
コメント数 2398
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  ブレット・トレイン 《ネタバレ》 
恐るべきパラレル・ワールド、ニッポン!ここでは超豪華シンカンセン・ゆかりが東海道をリニア新幹線の様にぶとっばしている!でも東京駅を夜に出発して京都駅に着くころには夜が明けているけどね(笑)。ここは海外のサブカルマニアが妄想しているニッポンそのものって感じです。主演が日本カルチャー大好きなブラピを起用しているのは、さすが製作者たちは判ってらっしゃる、なんせ『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』のことをインタビューで熱く語る人ですからねえ(笑)。 伊坂幸太郎の小説が原作らしいけど、私は未読。でもこの列車に乗り込んでくる魑魅魍魎たちの関係が恐ろしいまでにややこしい。とくにホワイト・デス(マイケル・シャノン)長老(真田広之)殺し屋ウルフの三人もがかつて妻が殺されて復讐を企んでいてその回想シーンが挿入されてくるので、余計にストーリーを把握するのに苦労させられました。まあこの映画全編が伏線だらけみたいなものですから、最後に(けっこう強引だけど)綺麗に回収してくれたのは快感でしたけどね。京都についてからのブラピたちとホワイト・デス一味の対決が始まるともうほんとに何でもあり状態、新幹線同士がなぜか正面衝突までするという滅多に見れない光景まで拝めるんですからね。そんなカオスの中でも、狭い車内で見せる真田広之の刀裁きはさすがに見事でした。ラストでチラッと登場するサンドラ・ブロック、『ザ・ロストシティ』に続いてのブラピとの共演、でも『ザ・ロストシティ』とは逆で彼女の方がカメオ出演みたいな感じだったのが面白い。そしてなぜかノン・クレジット出演のチャニング・テイタム、あれはもう彼のパブリック・イメージを逆手にとったセルフ・パロディって感じですかね、そういやこの人も『ザ・ロストシティ』に出演していたなあ… 余談ですが、Bulletをブレットと表記するのはいかがなもんですかね、発音はどう聞いてもバレットなんですけど。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-05-13 23:44:35)
2.  プリズナーズ・オブ・ゴーストランド 《ネタバレ》 
日米映画界のヤバい奴二人、園子温とニコラス・ケイジがタッグを組むという異色の映画。話題になりそうな要素は十分だったのに、園子温が例の騒動を起こしてしまって世間から無視されてしまった感はあります。まあ映画自体の出来からいってもしょうがなかったかもしれませんけどね。 ストーリーの基本はファンタジー。いつの時代かどの国なのかは不明な世界にサムライ・タウンという町があり、そこはテキサスのおっさん風のガバナーと呼ばれる権力者が牛耳っています。まずこの町がまるで田舎の吉原みたいな江戸時代の宿場町風なのがぶっ飛んでいます。住民は江戸時代ぐらいの着物姿で皆キツネやひょっとこ風の能面をつけています、そして住民の半分は遊女です。そんな町にも銀行があって、そこに強盗に押し入って逮捕されるのがニコラス・ケイジ、“バンザイ”と叫びながら突入してくるのが可笑しい。収監されていたニコジーは、ガバナーから失踪した(逃げた)孫娘のバーニス(実は愛人)を自爆装置が付いたスーツを着せられ五日間のうちに連れ帰ることを命令されます。この町の外部はゴーストランドと呼ばれて下層民の一団(プリズナー)が廃墟みたいなところで生活していてバーニスもこの場所にいるわけですが、お話しはここから『マッドマックス』チックな展開となるわけです。 ニコジーの登場シーンからして褌一丁姿、なぜかママチャリを漕いで街から出てゆく、もうこの辺りから訳が判らん世界線です。実はこの映画はサムライ・タウンなどのセットには凝っているというかカネがかかっており、プリズナーの居住区なんかもかなり大掛かりな造りです。実はこの映画は園子温のフィルモグラフィ中でいちばんカネをかけてるんじゃないかと思います。この映画の設定というか世界観はシュールの極みで、好みが分かれるところでしょうが自分は好きです。というわけで好意的に観ていた自分でしたが、後半になってくるとストーリーが破綻というか訳わからなくなってきて、「やはりいつもの園子温映画だな」というのが感想です。この人の映画って、掴みはイイんだけどたいてい途中からグリップが効かなくなって暴走しちゃうんだよな。そういう意味では、やはり本作は典型的な彼の映画だと言えるでしょう。 とは言え園子温に思い通りにやらせるなら、ハリウッド映画の規模の方が彼の異能を活かせるんじゃないかとも思えてきました。ここしばらくは日本映画界での活動は厳しそうだから、いっそのことハリウッドに拠点を移しちゃえばとも思います。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-09-30 20:58:02)
3.  復活の日 《ネタバレ》 
自分は80年代の邦画の質が下落したのは角川映画と、「とりあえず監督は深作欣二」という安易な風潮が映画界に蔓延したことが原因だと思っています。たしかに70年代後半から80年代にかけての深作欣二のフィルモグラフィは、アクション時代劇からSFまでないのは恋愛映画ぐらいのなんでもあり状態、まるで60年代のロバート・ワイズみたいな感じでしょう。でもワイズと違ってSFに関しては惨憺たる出来で、このジャンルを彼は根本的に理解していなかったとしか言いようがないです。 原作は小松左京で、彼のSF長編第一作目になります。もちろん『日本沈没』より前の作品で、分量としては『日本沈没』の半分もいかない小説ですが比べ物にならないほど雑な作品です。原作の九割は謎のウィルスによって人類がほぼ滅亡するまでのお話しで、映画で半分を占める南極に残った人々のストーリーはほとんどエピローグのような語り口になています。映像としては人類が滅亡するまでの過程を丹念に見せるのが醍醐味なのに、やたらテロップとニュース映像を多用していて、深作欣二はそこから完全に逃げたって感が強いです。当然のことですが映画の後半部分の脚本はかなり書き込まれたものとなっています。草刈正雄たちがワシントンに到着した途端に地震が起きたり、相互確証破壊システムによって発射された核兵器の放射能がウィルスを無力化させたり、なんかご都合主義が鼻白みますがこれは原作通りなので大目に見てやって下さい(原作では、発射されたのは中性子爆弾が多数を占めていたので、放出された中性子がウィルスを変化させたが地球の大気には放射能と違って残存しなかった、という映画以上のご都合主義です)。南極の人々の関心はいかにして人類を存続させるのかということに集中しているようになっていますが、男女比が百対一では鼠じゃないのだからもうアウトでしょ。南極社会は完全に一妻多夫制になってしまうわけですが、この「産めよ増やせよ」状態は現在の世相では炎上間違いなしでしょう。 カネを積んだことが判るのはオリビア・ハッセ―を始めとする渋いハリウッド俳優たちで、まあ彼らもプロですから最低限の仕事はしましたって感じですかね。もっと凄いのは実際にチリの潜水艦をチャーターしたり南極でロケしたりしているところでしょう。マチュピチュにまで足を運んでロケしたりここまで来ると木村大作カメラマンの単なる暴走と言えなくもない。雄大な風景を「どうだ、凄いだろう」とドヤ顔で見せることに費用をかけるなら、もうちょっと脚本をしっかりさせて欲しかったですね。
[映画館(邦画)] 4点(2019-12-13 23:54:28)(良:1票)
4.  ファンシイダンス 《ネタバレ》 
先日、親の法要で故郷の菩提寺へ行きました。そのお寺は我が家には不釣り合いな開山1000年を超える古刹で、住職はローカルTVニュースには良く登場する名士。長男次男ともその寺で僧職を務めていますが、その日は次男さんとお話ししました。その明るいイケメン坊主は、なんと地元では有名なミッション系の中・高・大で学生生活を過ごしたとのこと、思わず心の中で「ファンシィダンス!」と叫んでしまいました。 その5年前にピンク映画を一本監督した経験しかなかった周防正行の実質的な商業映画監督デビュー作、初期の周防映画のパターンがこの一本で固まったと言えるでしょう。私は本作に続いた『シコふんじゃった。』『Shall we ダンス?』を初期周防三部作と捉えていますが、もっとも肩の力を抜いたような撮り方の本作が実は一番の好みです。これが映画初主演である本木雅弘の棒読み調のセリフ回しはもちろん演出のうちですが、やはり棒読みの鈴木保奈美(こっちは天然の大根演技)とシンクロして独特のオフビート感が出ています。竹中直人も後年のウザい演技じゃなく、ほんとこれぐらいテンションで見せる演技は彼が芸達者であることを再認識させてくれます。そして驚くのは同僚雲水の彦摩呂、こんなイイ男が30年も経たずして巨漢の食レポ・タレントに変貌してしまうとは、誰が想像できたでしょうか… ともかくとして、本作は周防正行映画のエッセンスが詰まった秀作だと思います。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2019-02-15 23:29:32)
5.  ブリングリング 《ネタバレ》 
「事実は小説よりも奇なり」、本作はまさにこの古人の名言につきます。こんなお話し、フィクションならば脚本段階で即ボツにされること間違いなしでしょう。ハリウッド・セレブの自宅があんなにセキュリティが甘かったなんてとても信じ難い。ビバリーヒルズなんか町の入り口でセレブの自宅を案内するマップが売られているぐらいだから住所をネットで特定するぐらい誰でもできるでしょうが、まさかパリス・ヒルトンが鍵をマットの下に隠していたなんて(笑)。撮影には実際の彼女の家を使わせたそうで、この女どこまでアホなのかそれとも売れるためなら手段を選ばないタレントの鑑なのか?被害者の中にリンジー・ローハンもいましたが、パリスといい今や落ちるところまで落ちてしまった者同士という共通点があります。事実なのか脚色なのか判断に迷いますけど、ラストのインタビューで主犯格のエマ・ワトソンが「刑務所で隣の房にリンジー・ローハンが入っていた」と語るシーンが強烈な皮肉になっています。つまり、盗るほうも盗られるほうもその差は紙一重の似た者同士というわけです。 共感できる要素は一かけらもないんですが、ガーリー・ムーヴィーの巨匠ソフィア・コッポラだけあってそのセンスだけは円熟の域に達していると思います。彼女自身が育った環境の賜物かもしれませんが、こういうファッションとブランドものをアイコンに使わせたら、ハリウッドでも彼女の右に出るものはいないのは確かです。でもそのセンスが映像化されても、観る者の心に何かが残るかという観点から言うと、ちょっと苦しいところがあります。まあこれが彼女の趣味なんだからどうしようもないんですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2018-10-22 22:42:19)
6.  豚と軍艦 《ネタバレ》 
唐獅子みたいなご面相で決して美人とは言い難い吉村実子、でも不思議とこの人には引き付けられる魅力があるんです。まして本作が17歳のデビュー作、とても高校生の新人とは思えない溌溂とした演技が素晴らしい。数年前に『徹子の部屋』に出演しているのを見ましたが、すっかり魅力的なおばあちゃんになっていて感慨深かったです。 今村昌平の最高傑作と言えば、やはり本作になるんでしょうね。この映画が若き日のマーティン・スコセッシに衝撃を与えたという逸話は有名ですが、確かにピカレスクものとしては『グッドフェローズ』に通じるところがあるかもしれません。今村昌平らしく“敵はアメリカ”“悪はヤクザ”という徹底的に冷徹な視点、ヤクザ業界とズブズブな東映じゃないのでヤクザ組織のクズっぷりをこれでもかと突き付けてくれますが、ここもマフィアに厳しいスコセッシと通じるところがあるのでは。でも長門裕之と吉村実子のカップルはまさに「どぶの中の青春」という感じですけど、まだ少年の面影が残る長門裕之の弾けっぷりが見ていて愉しいです。印象良かったのは兄貴分の丹波哲郎で、肩の力が抜けた軽やかなコメディ演技ができたとは意外でした。丹波が横須賀線の電車に飛び込もうとするシーンで線路際に建っている大きな日産生命の看板、強烈なブラックユーモアでした。でもよく見るとタイトルロールに「協賛 日産生命」と出てました(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2018-10-12 23:08:36)
7.  腑抜けども、悲しみの愛を見せろ 《ネタバレ》 
まず題名に一言。ストーリーとはどこにも繋がらない、いかにも青臭い演劇人が思いつきそうなダサいネーミングは何なんですか。もちろん原作通りなのは承知ですが、劇作家である原作者は一周回って確信的にこういう名づけをしたのかな。 とりあえず腐しましたけど、映画自体は予想を外されて面白かったです。他の方のレヴューを見ると総じてストーリー自体が受け入れられないという意見が目立つような気がしますが、私はブラックコメディとしてはかなりの高レベルと評価いたします。サトエリはもうどう見てもサイコパスとしか言いようがない外道っぷり、こういう女性と今まで遭遇してひどい目に遭った過去を思い出しました(もっともここまで酷いのはいませんでしたが)。対する嫁の永作博美は、そのKYぶりというか理解不可能な言動はもう立派なアスペルガー障害の域に達しています。彼女がここまでの演技ができる女優だったとは意外で、この役で女優賞を総なめしたのは納得です。この二人に挟まれ、とくにサトエリにズタボロに虐待される喘息持ちの妹・佐津川愛実だけは多少はまともなのかと思いきや、ラストには大どんでん返し、実はこいつが最恐のサイコ女だったというオチにはやられました。彼女のことは『悪夢のエレベーター』で知ったのですが、そういやこっちの役も…(ネタバレが過ぎるので以下自主規制)文字通りサトエリに翻弄される永瀬正敏も彼らしいいい演技だったと思いますが、永作博美に対する虐待もこれまたすごい迫力です。 実質登場人物は四人で進行するドロドロ劇ですが、苗字に「佐」と「永」いう漢字が付く役者同士がペアになって相手を苛めるという構造なんです(だからどうした、って言われそうですけど)。一番怖かったシーン:永作博美が永瀬正敏に襲い掛かってロスト・ヴァージンを成し遂げるところ(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2018-07-28 22:11:08)
8.  震える舌 《ネタバレ》 
破傷風、この単語には私たちの世代は少なからず恐怖を感じるはずです。小学校のころには普通に破傷風の予防接種をみんな打たれたし(この注射と日本脳炎の予防接種はほんとに痛かった)、たしか同学年には破傷風で死んだ子もいた記憶があるぐらいです。その破傷風との闘病記を“あなたは、この恐怖に耐えられますか!”“彼女はその朝、悪魔とともに旅に出た…”なんてコピーを付けて映画化するんだから、松竹という会社はえげつないです。トラウマ映画としてはあまりに有名ですがとても観る勇気がなくて、今回初鑑賞となった次第です。 主演の女の子の演技が凄まじいというか、監督もよくここまでやらせたな、って呆れかえりました。今のご時世でこんなことさせたら、下手したら幼児虐待で炎上ものですよ。また、劇中でも医師に破傷風菌は唾液なんかじゃ感染しないと説明させてるのに、両親が感染したんじゃないかとほとんどノイローゼになってゆく様を丹念に撮っていて、これじゃほとんどゾンビ扱いじゃないですか。野村芳太郎は『砂の器』でもハンセン病患者団体から抗議を受けてますが、ちょっとリテラシーに欠けるところがありそうですね。まあ短期勝負で致死率の高い破傷風ですから、患者団体なんてなさそうですけど。あと気になったのが昭和50年代の医療体制で、こんなに程度が低かったのかな。それには宇野重吉と中野良子以外の医師やナースがあまりにも感じが悪く無能に見えたこともありますが、絶対安静で光線も遮断しなければいけない破傷風患者を小児科の大部屋病室の隣の病室で治療するなんてあり得ない感じがします。聖路加病院が撮影に協力してロケもしているみたいですので、実際こういうレベルだったんでしょうね。でも容体が急変して渡瀬恒彦が主治医の中野良子を自身で医局を回って探し回るシーンがありましたが、こんなこと大病院であり得ますかね?
[CS・衛星(邦画)] 6点(2017-11-21 23:48:54)
9.  復讐するは我にあり 《ネタバレ》 
緒形拳が演じた榎津巌は、まさに日本映画史に残る魅力的というかふてぶてしい殺人犯。はっきり言ってなんでこの男が人殺しをするのかは観客にはさっぱり理解できませんが、緒形の演技があまりにも堂に入っているのでそんなことはすっかり忘れてしまいます。後半にある緒形と清川虹子の息詰まるようなやり取りはただ息を呑むばかりでした。そして倍賞美津子や野川由美子との絡みがまたドロッドロッとしていて今村昌平らしくて良かったです。 原作は佐木隆三の直木賞を受賞したベストセラーですけど、これは事実をもとにしたフィクションという形式で、時代設定は昭和38年ということになっています。そしてロケが多いので街並みが当然映されるわけですが、走っている車は普通に昭和50年代の風景です。まあこれは予算に限りがある中で映画を完成させるためにロケ映像をそのまま使っているだけで、今村昌平という人はあまり細部にこだわらないタイプの映画監督だったのかもしれません。ところが劇中で緒形と倍賞が映画館にいるシーンでは、ニュース映画ではケネディ暗殺を伝えているのは良いとしても次に上映されるのが昭和46年製作の『ヨーロッパの解放』なんです。これはひどいミスなのかとも思いましたが、あれだけ堂々とオープニング題字を見せられるとなんか変な感じがします。これも今村昌平の演出意図なんでしょうか、そうだとしても自分には全く理解不能ですけど…
[CS・衛星(邦画)] 7点(2016-08-02 22:59:06)
10.  不滅の熱球 《ネタバレ》 
伝説の大投手、沢村栄治の伝記映画です。池辺良という人は個性が感じられない俳優だと思っていましたが、本作の沢村栄治はなかなかの好演だと思います。沢村独特の投球フォームも上手く演じており、この人が実際には野球音痴だったとは感じさせません、きっと身体能力は高かったんでしょうね。沢村栄治が伝説的な活躍をしたのはプロ野球創設前のアマ時代なんですが、この映画ではそこは完全にスル―であくまで“巨人の沢村”に焦点を合わせています。 後楽園や甲子園を実際に使ってロケしたり巨人の二軍選手を出演させたりして読売巨人軍がスポンサーみたいな作品なんで当然かもしれませんが、巨人はかなり脚本にも口を出していますね。右手の怪我を克服して復活を遂げようとしているときに二度目(史実では三回目の召集)の召集がかかったとしていますが、実際には沢村はこの時巨人軍を解雇されていたのです。まあそこら辺は見事に頬かむりして美談に仕立て上げるとは、観ていて無茶苦茶腹立ちました。もし彼が巨人で現役投手だったら、三度目の召集はなかった可能性も否定できないんですからね。実際の戦死の状況とは違うということなんかそれに比べれば大した問題じゃないかもしれません。私は読売巨人軍という球団が昔から嫌いなんですが、この映画を観て余計その感が強くなりました。 でも戦死した沢村の霊が無人の後楽園に還ってきて、司葉子と赤ん坊だけが見守る中をニコニコしながら投球するラストは、思わず涙が出るほどジーンときました。監督の鈴木英夫もこれがやりたくてこの映画を撮ったのかもしれませんね。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2015-05-05 19:47:19)
11.  ブラック・レイン 《ネタバレ》 
追悼、高倉健。この映画は日本人出演者の中では健さんよりも松田優作の方が今まで圧倒的に注目されてきてましたが、改めて観てみると随所にそれまでの高倉健のイメージを変える様な人物造形が見られます。上司に忠実な窓際族だったり、なんせあの健さんがヘンなサングラスをかけてレイ・チャールズのモノマネさせられるんですから、リドリー・スコットも怖いもの知らずです。対照的にマイケル・ダグラスはいつも通りで、『氷の微笑』の荒っぽい刑事と同一キャラを再登場させたのかと思いましたよ。 お話自体は前年に製作された『レッド・ブル』の設定を真逆にした様な感じがします。『レッド・ブル』と違って主人公の方が敵の母国に乗り込むわけですから、それだけ敵国たる日本の描写をどれだけ丁寧に撮れるかが映画の出来を左右するわけです。でもそこはリドリー・スコットはご覧のとおり自分のやりたい通りに大阪を撮っちゃってますが、センスが良いから様になってます。毎日自分が通勤で通っていた阪急梅田駅のコンコースが、あんな幻想的な映像になるなんて思いもよりませんでした。難波・十三・京橋・神戸とロケしていますが地元の人間が見ると確かに空間的にはおかしなところも有りますが、これはリドリー・スコット世界なんだから良いんです。でもクライマックスの田舎家の対決だけは風景からしてアメリカで撮影したことがミエミエだったのは残念でした。 ラスト、松田優作を殺さずに逮捕して府警本部に連行するところも普通のハリウッド・ポリスアクションとは一味違っていて良かったんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2014-11-22 20:55:12)(良:1票)
12.  フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン) 《ネタバレ》 
傑作『サンダ対ガイラ』の前日譚というかオリジナルという位置づけになるのでしょうか。数ある東宝怪獣映画の中でも、ゴジラもの以外で本作と『サンダ対ガイラ』だけが怪獣対決映画なんですね。もっともフランケンシュタインは怪獣と言うよりは“怪人”に近く、純粋な怪獣対決とは言い難いところはありますが。フランケンシュタインの決して死なない心臓というモチーフは良い意味でセンス・オブ・ワンダーを刺激するところがあります。このプロットは良く考えるとips細胞などの現代の細胞再生医療に繋がるところもあって、科学の進歩がSFにやっと追い着いてきた感じがします。また三人の科学者の中では高島忠夫のキャラが突出していて、なんかとても腹黒い感じがしていかにもいそうな人物だったと思います。 この映画で東宝怪獣映画としては初めて怪獣の肉食性が描かれる様になったことは特筆すべきことでしょう。直接描写はないですがバラゴンは人間まで喰っちゃいますし、口から喰ったニワトリの羽根が溢れる描写なんてなかなかエグいです。バラゴンは怪獣造形としては屈指のデザインですし、妙に敏捷な動きを見せるところもリアルです。やはり難点はバラゴンの存在がストーリーに有機的に活かされていないところでしょう。自衛隊の存在がまた妙に薄く、藤田進や田崎潤といった面々がみんな警察の幹部として配役されているのも原因でしょう。フランケンシュタインが掘った落とし穴に戦車が落っこちるというみっともないシーンまであります。 そして有名な海外バージョンでの大タコ登場のラスト、初めて観たときはホントびっくり仰天させられました。タコの造形自体は非常に良く出来ているんですけどねえ。オリジナルの“フランケンシュタインが風穴に落ちる”というバージョンも観たことがありますが、これはこれでただ穴に落ちるだけという唐突感にあふれるラストだったと思います。投げやりな終わり方をするのは東宝怪獣映画の伝統芸みたいなものですね(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2014-02-22 00:03:50)(笑:1票)
13.  フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ 《ネタバレ》 
私が初めて封切時に映画館で観た東宝特撮映画で、いまだに軽いトラウマが残っています。ゴジラシリーズ以外の東宝特撮怪獣映画は、ハードな物語設定で怪獣の恐怖を追及する作品が多いのですが、本作はその中で最高傑作と言えるでしょう。東宝特撮怪獣映画があえて避けてきた「捕食者」としての怪獣をテーマにしたことが観る者の本能的な恐怖心を刺激します。前作で地底怪獣バラゴンに「捕食者」的なキャラクターを持たせていますが、直接描写は見られませんでした。ところが本作では、人間型怪獣フランケンシュタインがヒトを貪り食うというカニバリズム的な映像を見せてくれるわけで、これはガイラの造形と相まって実に怖いです。特筆すべきは自衛隊の対怪獣戦で、軍事作戦としてリアルな演出で見せてくれます。メーサー殺獣光線車が逃げるガイラを追って光線を放射すると、ガイラの前方の木が光線に当たってと激しく吹き飛ぶシーンは、現在の眼で観ても興奮させられます。
[DVD(邦画)] 7点(2009-02-07 11:51:54)(良:1票)
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