221. ルパン三世 カリオストロの城
欠かさずに観ていたTV版ルパン三世では五右ヱ門ファンでしたので、本作のストイックなルパンに惹かれたものです。忘れられない、銭形とっつぁんの例の台詞から今思うのは、彼はルパンの無二の親友なのだと言う事。エンディングの「炎のたからもの」に当時は一期一会の、30年を経た今は生きることの、儚さをしみじみと感じます。アニメ史に残る珠玉の名作です。 [地上波(邦画)] 8点(2009-11-10 01:31:20) |
222. お遊さま
《ネタバレ》 サディストの姉とマゾヒストの妹の間に挟まれた慎之助。三人四脚で危うげながらもバランスを保って走っているかの様です。その舞台となる風景、格調高い商家の佇まいのあまりの美しさに、三人からもうっかりと気品を感じてしまいます。何時までも走り続けられないとは承知していましたが、・・・・二人が落ちぶれた暮らしに至った経緯に多少なりとも触れて欲しかったです。 [DVD(邦画)] 5点(2009-11-04 23:45:45) |
223. 砂の器
《ネタバレ》 初見。前半部分の事件の真相に一歩一歩近づく展開と、今西・吉村、両人の実直な人柄は原作通りで丹波・森田の意外な好演に驚きます。後半部分、重きを置いた親子の苦難の描写に、数年前のハンセン病訴訟控訴断念のニュースの際の原告のお一人が語られた「ようやく人間になれました」が思い浮かびます。 同じ風景でも悲しい時にはとても綺麗に見えます。流浪の親子を包む風景の美しさが残酷でした。 巡査の行為も誤った国策にたった上でのもので息子にとって善意だったのか。息子が隔離されてはならぬとの思いが言わせた「知らん」 陰険な用心深さで目標に突き進む者を肯定出来ませんが、そうさせた背景の人間ドラマが際立っている本作は原作以上の仕上がりでした。 [DVD(邦画)] 8点(2009-11-03 01:25:57) |
224. 白い巨塔
個人的に、原作は国内外の作家で最も尊敬する山崎豊子さんの最高傑作、田宮版ドラマはTVドラマ史上の最高傑作であり、本サイトの制限字数内はもとより、一日や二日では語り尽くせないものがあります。150分に収めると通り一遍になってしまうのは止む無しとしても、肩に力が入り過ぎている田宮二郎に対する違和感と、唯一、人物像を逸脱していた小川真由美演ずるケイ子が物語の質を下げている点が残念です。 [DVD(邦画)] 5点(2009-10-16 00:37:58) |
225. 雨月物語
《ネタバレ》 御伽噺を思わせる内容の中で、幼子が食べる前に母の墓に供えて手を合わせるラストシーンにハッとさせられました。宮木への供養はその思いを汲み取って生涯を送る事であり、誰にもあてはまる事なのだと痛感させられます。映像と和楽によって、妖艶かつ物悲しい世界に惹き入れられます。ご参考までに、ビデオの台詞は幸いにしてクリアでした。 [ビデオ(邦画)] 7点(2009-10-15 16:27:07) |
226. にっぽん昆虫記
生きるためには誠実さや倫理観などクソくらえ。自身が味わった理不尽さを他人に味あわせ、しっぺ返しを食らう主人公が見せる食うか食われるかの生き様がタイトルに相応しい。虫けら並みの交尾であっても子孫を残せばよい、では世代が進むにつれて人間の質と民族の文化が退化していくのだと思います。本作が殊更に見せ付ける「生きる」が人間の力強さとして描かれている事がこの上なく不快でした。 [ビデオ(邦画)] 2点(2009-09-20 12:30:42) |
227. お吟さま(1962)
妻を持つキリシタン大名の高山右近と千利休の娘(実の娘ではない)吟。双方が思慕と倫理観の狭間で錐揉みする姿のみ描かれていれば辟易したことでしょう。しかし、秀吉・三成と千利休の確執が盛り込まれている事で奥行きの深い物語になっています。とりわけ千利休が示した娘に対する慈愛の深さ、宗匠としての巌の如き威厳。それぞれの神々しさは神の領域でした。結末の理不尽さ・非情さを際立たせる音楽、桃山文化(ですか?)の凛とした気品が漂う衣装も心に残る、一級の作品です。 [ビデオ(邦画)] 7点(2009-09-20 12:26:24) |
228. 波の塔
原作は清張作品で三番目に好きであり期待が大きかったのですが、感情を表せないロボットのような津川雅彦がぶち壊しています。結城夫妻の方から男女の機微を感じるようではいけません。 [DVD(邦画)] 6点(2009-09-19 17:21:19) |
229. 怪談(1964)
色彩が言葉に表し難い素晴らしさであり、容赦ない厳しさと幻想が混ざり合った光景が、触感にまで迫ってきます。そして、登場するそれぞれが抱く無念の計り知れない深さも胸に押し寄せてきました。スタッフが作り上げた極上の舞台で豪華役者陣が入魂の演技を見せる。相乗効果が傑作を生み出しており、映画という文化の良さを実感させられる作品です。肩透かしを受けた四話目が割愛されていれば満点でした。 [映画館(邦画)] 8点(2009-09-16 17:49:36) |
230. おくりびと
《ネタバレ》 故人とそこに居合わせる人々の悲しみや怒り等全てを慮り受け止める。いぶし銀の仕事ぶりをいぶし銀の演技で魅せる山崎努はさすがであり、本木雅弘も意外と好感が持てました。それにひきかえ広末涼子の演技の拙さは相も変わらずで明らかなミスキャストです。加えてくどい音楽、知人・肉親を送るであろう予感通りの展開であったことが残念でした。 [DVD(邦画)] 4点(2009-09-14 02:08:56) |
231. 嫌われ松子の一生
愛し、愛される事が生き甲斐の松子。目を覆うような壮絶さも生きている証。求める事を一切放棄した後の生ける屍状態にこそ、歳がさほど離れていない私は胸を衝かれ、身につまされるものがありました。後味の悪さこの上なしの最期の遂げ方に一気に点数が下がりました。酷過ぎます。腸が煮えくり返りました。 [DVD(邦画)] 4点(2009-09-09 00:28:35)(良:1票) |
232. 犬神家の一族(1976)
《ネタバレ》 本作で記憶にあるのは、金田一が石坂浩二、音楽、逆立ち死体、喋る偽スケキヨ、お琴の師匠の5点。30年を経ての鑑賞となりました。インパクトのある猟奇の演出は表面上の恐ろしさであり真の恐ろしさは肉親との愛憎から人は鬼になれる事を見せ付けた松子です。演ずる高峰美枝子に圧倒され胃にズシリと堪えました。金田一探偵の飄々さは胃薬のようで縋ってしまう私がいました。余韻の残る去り方は作品全体の味わいを深めるもので見事さに唸らされました。 [DVD(邦画)] 8点(2009-09-07 13:33:59) |
233. 赤線地帯
「夢の里」の人間模様。遊郭モノにありがちな、殊更おどろおどろしく描かれる男女の絡みや同性の取っ組み合いはありません。そのようなものが無くとも、個性がそれぞれ際立っている五人から共通して「生き抜いてやる」意志を感じた見応えのあるドラマでした。ですから、ゆめ子には何としても快復して欲しいと思うのです。余韻が残るラストシーンの演出が見事です。 [DVD(邦画)] 7点(2009-08-28 17:28:20) |
234. レッドクリフ Part I
子供の頃NHKの人形劇で見た内容は忘れてしまっています。予備知識なく観た事が幸いしたのか迫力ある歴史絵巻を楽しめて、終わった途端にこの「決着」を映画館で観たいと思いました。また、この面々がその時代、何に価値を置き、何を考え、どう行動したのか、詳細を原作で知りたくなりました。思わぬ余禄が付いていた本作。この嬉しさも映画鑑賞の醍醐味の一つです。 [DVD(吹替)] 7点(2009-08-26 14:41:43) |
235. 残菊物語(1939)
《ネタバレ》 風雪や泥に耐えた上下の隔てのある恋が報われる舟乗り込みのシーンはまさに圧巻。お徳の身は灰となってもその魂は菊之助に生き続けるのでしょう。一つ一つ丹念に作り上げられたシーンが一層心に染入ります。 [DVD(邦画)] 9点(2009-08-20 08:10:32)(良:2票) |
236. レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦―
《ネタバレ》 「続編を映画館で」Part1を観た直後から待ち遠しかった水曜日。満を持しての鑑賞となりました。将の智略の妙を堪能し、尚香と一兵卒と同様な心情を持ち合わせた何十万の兵士の壮大な肉弾戦では、業火に彼等の思いが表れているようで鳥肌が立ちました。ですので史実であったとしても結末が残念でなりません。曹操の首を取れなかったのならともかく、取らなかった。これでは死者が浮かばれない。取った上での「戦争に勝者なし」なのではないか。と思います。 [映画館(字幕)] 7点(2009-08-09 02:05:19)(良:1票) |
237. 女囚さそり 701号怨み節
《ネタバレ》 細川俊之と田村正和の最期のみ当時の記憶が残っています。観直してみて、荒唐無稽な話の中にあって工藤の負け犬根性だけが現実味があり、裏切り者に相応しい最期に納得。とは言うものの、寡黙な者の放つ一言の重みが皆無なのは脚本が拙いのか演者が大根なのか、さそりがお粗末なので、観終わっても何の感慨もありませんでした。若かりし細川俊之の懐かしさにプラス2点です。 [DVD(邦画)] 4点(2009-07-18 13:34:24) |
238. 新幹線大爆破(1975)
《ネタバレ》 初鑑賞。予備知識は「主演が高倉健である」のみ。主犯の理詰めな行動、警察が犯人を特定していく過程、国鉄が爆弾解除を行う過程。結末に向かって片時も目が離せず、山本圭を筆頭に各々の俳優としての個性が役柄に反映されている豪華出演陣の演技も見応えがありました。三者の中で分が悪かった警察ですが、高飛びへの最後の一歩を阻止した手際は忘れられないものとなるでしょう。あの子の姿には衝撃でギョッとしました。惜しむらくは、乗客が事態の好転にも悪化にも絡む事無く、ただうろたえている存在でしか描かれていない点です。あと、どうでも良い事なのですが、一心に太鼓を叩く一団は謎でした。あれも形を変えたヒステリー状態ということなのでしょうか? [DVD(邦画)] 9点(2009-07-10 17:58:16) |
239. 宣戦布告
《ネタバレ》 万が一にも起こりえないとは言い切れない内容が不気味です。潜入の目的と危機回避の経緯が明確に描かれていれば一層不気味さが増したでしょう。ところで、敵に遭遇して命のやり取りをするのに「発砲していいですか」「この武器使っていいですか」とお伺いを立てるシステムは事実ですか?酷過ぎますね。世の中の上から下まで長と名のつく者であれば肝心な時にこそ役に立たなければ軽蔑の対象となるだけです。5月27日の党首討論。野次で覆い尽くされた泥田のような場所で立ち回りを演じるお二人。これぞまさしく泥仕合。あの場におられる方々が、今、危機が現実になったとして役に立ってくれるのだろうかを考えると空恐ろしくなります。「わしゃ知らん」と遁走する外務大臣は映画の中だけであって頂きたいものです。 [DVD(邦画)] 7点(2009-06-01 03:48:56) |
240. 赤い殺意(1964)
《ネタバレ》 初めて観ました。貞子、その亭主、貞子にまとわりつく男、亭主の愛人、それぞれ個性が際立った4人が織り成す人間模様の生々しさは、手に汗が滲むものでじわりじわりと画面に引きずり込まれてゆきました。従順で愚鈍な貞子は哀れみを誘いますが、なかなかどうして、打たれ強く生きる女性だったのです。依存するだけの男と中途半端に利口な愛人が共に自滅してしまったのとは対照的です。写真を見せられてもシラを切り通す貞子の姿は圧巻でした。誰が誰を手にかけるのか?と数多の想像が空振りしてしまった結末は、妻を露骨に使用人扱いする嫌らしい亭主の立場が将来は逆転するであろう事が想像されるもので、私の考えは浅いと思わされるものでした。 [映画館(邦画)] 8点(2008-11-02 20:38:07) |