241. あ、春
《ネタバレ》 5歳の時に死んだと聞かされていた父の出現や、会社更生法申請を仰ぐ勤め会社など波瀾万丈を思わせる設定。だが、映画は節分から桃の節句、梅の花から桜、そして端午の節句へと季節感を盛り込んで静かに進行する。このように大上段に構えず、日常生活を淡々と描きながら、思いを胸に刻む映画は私の好みにとても合っている。ちょっとばかり批判したりもするが、皆いい人たちばかりである。そしてタイトルも良い。感嘆詞の「あ、」ちょっとしたというほどよい加減を産み、「春」と続けることによって何とも言えない暖かさとぬくもりを感じさせてくれる。それがイメージとして映像化されたのが卵から孵った雛かもしれない。 [DVD(邦画)] 8点(2013-05-07 06:34:15) |
242. 馬鹿が戦車(タンク)でやって来る
ハナ肇と山田監督による馬鹿シリーズはどれも好き。そしてこの映画にも大好きな岩下志麻も出ているし・・・。常田富士男の日本昔話のようなメルヘンチックな田舎村とどこかへんてこりんな村人たち、映画の前半は團伊玖磨の舞台劇を思わせる軽妙な音楽もすばらしくとても好きだ。釣り人と船頭によって語られる物語形式も良い。だが戦車が登場してからはどうも憂さ晴らしのように思えてややマイナス。 [映画館(邦画)] 8点(2013-05-06 08:34:19) |
243. 喜劇 一発勝負
「馬鹿まるだし」から続いてきたハナ肇と山田洋次のコンビもこの頃になるとややマンネリ化。石油ならぬ温泉掘り当ての一発勝負も、おもしろさはまずまずだがたいした代わり映えがない。 [DVD(邦画)] 6点(2013-05-06 00:06:19) |
244. 約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯
《ネタバレ》 戦後唯一、無罪からの逆転死刑判決となった実際の事件である。事件発生から51年、際限なく繰り返される再審請求と棄却。この冤罪と思われる事件に東海テレビは取材を続け、圧倒的な記録と証言を再検証し、本作を作り上げた。点数では付けることができない映画であり、多くの人に見てもらいたいものである。 [映画館(邦画)] 8点(2013-04-28 11:26:59) |
245. プラトニック・セックス
この映画が作られた頃、私は携帯電話を持っていないどころか知識すらなかったくらいだから、若者の新しい感覚に着いていけるはずはなかった。しかし10年以上が経った今見直してみると、傷つきいたわる若者の心情を表現した良い映画だとさえ感じる。そもそも飯島愛自身のエロティックな物語と思って見たのだが、むしろラブストーリーのジャンルに入れた方が良いのではというくらいだ。挿入曲の「from silence」が印象的でこれまた良い。 [DVD(邦画)] 6点(2013-04-27 23:33:15) |
246. 丹下左膳(1952)
丹下左膳の映画は何本か見たが、この映画もまずまずだ。多少ドタバタが気になるが・・・。やはり阪東妻三郎は時代劇向きなのかなあ。お藤の淡島千景も良い。 [DVD(邦画)] 7点(2013-04-24 06:20:13) |
247. 歩いても 歩いても
この映画を見ながら、ふと小津安二郎を思い浮かべた。小津監督の映画にも「家族」を描いたものがいくつもあり、この映画には「平成の小津」を感じさせる。ごく日常の会話としぐさ、しかしその中にそれぞれ違う立場の思いや心情が出たり引っ込んだり、そしてにじみ出てくる。やはりこういう感覚は日本映画でしか味わえない特別なものであり、私たちの生活にごく身近なものなんだろうと思う。蝶々とか、「歩いても、歩いても、小舟のように」と歌ういしだあゆみの歌が心に残った。 [DVD(邦画)] 9点(2013-04-22 22:06:38) |
248. クライマーズ・ハイ (2005)<TVM>
《ネタバレ》 映画版では、日航機事故に伴う地元新聞の奮闘記ということはよくわかるのだが、なぜ登山なのかがよくわからず、むしろ余計なもののような気がしてならない。ところがこのNHKドラマ版は原作にほぼ忠実で登山のシーンが重要な意味を持つことがわかるのだ。そして最大の「クライマーズ・ハイ」の「ハイ」の意味、最初は単に高い山に登るからハイなのだろうなんて軽く思っていたのだが、「ハイテンション」のハイ、ヤクの常用者などが「ハイ」という高揚した気分になるあの「ハイ」であることに気づく。映画との比較は一長一短があるのかもしれないが、私はタイトルの意味を持つこのドラマ版の方が好きだ。 [地上波(邦画)] 8点(2013-04-21 08:40:17) |
249. ペンギン夫婦の作りかた
《ネタバレ》 グルメもの映画だが、料理に関心がさほどなくても、沖縄石垣島の海を見ているだけでも心が癒されてくる。島の人たちの温かい大きな心と帰国申請調査官の疑ってかかる心の対比がまた良い。そしてまたまたペンギン夫婦の名前の由来も・・・。心が和む夫婦愛の物語で素直に感動した。よけいなことだが、食事の前に見るのと後ではもしかしたら点数が変わるかも・・・。 [映画館(邦画)] 8点(2013-04-19 13:09:12) |
250. 男はつらいよ 寅次郎頑張れ!
寅さんが現役を引退して恋愛のコーチへ、と思ったら思いがけないところにお姉さんがいてたちまち現役復帰。ところがこのお姉さん藤村志保、皆さんご指摘のように控えめというかやや影が薄い。もちろん藤村志保らしい雰囲気は良く出ているのだが・・・。中村雅俊と大竹しのぶの若いカップルが初々しく、見ていてこちらもポッと赤くなるほどだ。この二人だが、大竹しのぶは映画「青春の門」で高い評価を得ていたが、中村雅俊はその頃はテレビドラマで活躍中で「ふれあい」という歌がヒットしていた。 [DVD(邦画)] 6点(2013-04-13 05:58:32) |
251. 肉体の門(1988)
壊れたビルやリンゴの唄などでそれらしくは装ってはいるものの、戦後の貧困にあえいだ混乱期の雰囲気には思えない。それどころかどうも監督の好きな任侠映画に近いような気がして私好みではない。 [DVD(邦画)] 3点(2013-04-10 18:48:13) |
252. 肉体の門(1964)
戦後流行した「リンゴの唄」や「星の流れに」が流れるが、特に「星の流れに」は彼女たちの運命を物語っていて涙を誘う。戦後の混乱期、焼け落ちたビルにバラック小屋や闇市が並ぶ街、駐留軍兵士やMP、帰還兵、浮浪者やパンパンなどがあふれていた。そういう時代を象徴するような映画、戦争の傷跡が生々しい。原作の浅田せんではなく、ボルネオマヤに扮した野川由美子の好演が光る。 [DVD(邦画)] 7点(2013-04-10 15:03:08) |
253. 曽根崎心中(1978)
宇崎竜童といえばダウン・タウン・ブギウギ・バンド、髪は突っ張りリーゼントにサングラス、正直好きでなかった人物なのだが、この人を映画に起用した増村保造監督はすごい人だと思う。映画も最初はド素人の主役と音楽が気になるなあと思って見ていたのだが、どっこい映画にはまってしまった。それほどすごい映画だ。梶芽衣子さんが多くの賞をとったのはわかるし、脇役陣もうまい。近松門左衛門の心中ものなのだが、愛の深さに感動せざるをえない。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-04-03 17:46:00) |
254. 俺たちの荒野
それまでの青春映画と異なり、アメリカンニューシネマの影響を受けた異色作。男二人に女一人という組み合わせは、同年の米国映画「明日に向かって撃て」を思わせる。屈折した青春映画とも言うべきか。ただあちらの銃をぶっ放すのとは違うが・・・。私好みではないが、それなりの人が見れば評価が高いと思う。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2013-03-29 11:38:16) |
255. 雪の渡り鳥(1957)
長谷川伸の有名な戯曲「雪の渡り鳥」の映画化。三波春夫の歌は知っていても映画は見たことがなかった。浪花節調のヤクザ渡世映画だけど、映像はまずまず。戦前は阪東妻三郎主演の映画もあったとか。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2013-03-28 21:19:33) |
256. 火垂るの墓(2008)
これはまずい。名作が駄作を通り越し醜作になってしまっている。原作が大幅に作り替えられているが、その真意がわからない。同じ作り替えでも2005年版のTVドラマは生きていく上でのやむにやまれぬ実情をうまく表現していたのだが・・・。ひとつ例を挙げると校長先生一家の自殺、御真影云々を知っている人なら何とかわかるだろうが、あの表現では唐突としか思えないだろう。 [DVD(邦画)] 2点(2013-03-28 17:30:04) |
257. 火垂るの墓(1988)
涙腺の弱い私にとってこの映画は大変な衝撃だった。もう終盤あたりは正視できないほどボロボロ。そのため二度と見るまいとさえ思ったほどだ。しかし、戦後60年のドラマスペシャル(2005年版)を見て、改めて見直す気になった。そして思ったのは戦争の悲惨さを伝えるアニメ以上の映画だと思う反面、アニメの限界をも感じさせる映画ではないかと・・・。この映画では清太と節子に焦点を当てているため、せつないとかかわいそうという感情は起きても、彼らがどうして浮浪児みたいな生活を送ったのか疑問に思う人も出てくるに違いない。(この点については2005年版のテレビドラマを見てほしい) 戦争を体験した人たちやそういう人に育てられた年代には身に積まさせられるかもしれないが、戦後60年以上経った今では「やらせ」「作られたもの」としか受け取られかねないのが心配である。 [DVD(邦画)] 8点(2013-03-26 18:38:28) |
258. 火垂るの墓(2005)<TVM>
原作から離れ、親戚のおばさんの家庭を中心に置くことにより、人間ドラマとしての深みを増している。実写のリアルさを十分に発揮し、戦争中は皆生きるのに必死だったことがひしひしと伝わってくる。後半は涙が出て止まらず、アニメ映画以上の深い感動を覚えた。家や食べ物がない極限の生活経験のない私たちにとって、身につまされる映画。 [DVD(邦画)] 9点(2013-03-26 16:05:01) |
259. しゃべれども しゃべれども
十河のムスッとした顔が饅頭よりこわかったけど、落語の世界がよくわかっておもしろかった。点数は少々甘いが、村林に免じて7点。 [DVD(邦画)] 7点(2013-03-25 08:58:06) |
260. やじきた道中 てれすこ
時代劇が好きだろうと嫌いだろうと、古典落語を知っていても知らなくても、年配の方から若い人まで楽しめるコメディだと思う。主役の三人は一見アンバランスな組み合わせだけど、うまくはまっていた。 [DVD(邦画)] 8点(2013-03-24 16:34:23) |