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鉄腕麗人さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2598
性別 男性
ホームページ https://tkl21.com
年齢 43歳
メールアドレス tkl1121@gj8.so-net.ne.jp
自己紹介 「自分が好きな映画が、良い映画」だと思います。
映画の評価はあくまで主観的なもので、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

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401.  百万円と苦虫女 《ネタバレ》 
2008年現在時点での、女優「蒼井優」の集大成だと思う。傑作。  “良い映画”として賞賛すべき要素は多々あるが、何を置いても語るべきは、「蒼井優」意外にない。  短大卒、就職失敗、理不尽な事件にまで巻き込まれ、人生に所在が無い21歳の主人公鈴子は、盲目的に100万円を貯めながら、見ず知らずの土地を転々とする。 何があっても苦虫を潰したような愛想笑いしか出来ない主人公のこの一風変わったロードムービーには、ビターに、切なく、そしてふいに温かい風が吹き込む。  「自分」をまったく知らない人達との触れ合いの中で、本当に少しずつ自分自身を見つめ直し、成長していく主人公の姿は、とても自然体で時に「哀愁」すら感じさせる。 どこまでもドライに乾ききった女性像を表現しているにも関わらず、どこまでも魅力的に映し出される蒼井優は、「ハマり役」という言葉では足らず、主人公の「佐藤鈴子」そのものだ。  「何やってんだろう」「くるわけないか」、端々でつぶやくさりげない台詞の一言一言に、主人公の感情がしっかりとこもっていて、印象強く残り続ける。 監督・脚本を手がけた女流監督タナダユキの力量もまた間違いないものだと思う。  見ず知らずの地を巡っていく主人公は、決して幸せには至らない。 でも、見ている者はほんのりとぬくもりを感じ、勇気づけられる。 ハッピーエンドとも、バッドエンドとも言い難い「微妙」なラストシーンで、これほどまで解放的な気分をもたらすこの映画のオリジナリティが、スバラシイ。
[映画館(邦画)] 9点(2008-09-27 14:17:44)
402.  20世紀少年
「20世紀少年」映画化。その第一報を聞いた時、まったく手放しで期待感に溢れた原作ファンの割合は一体どれほどだろうか。 たぶん、原作を深く読んでいる人であればあるほど、まず頭に浮かんだのは、「日本映画では無理だ」ということだったと思う。 要するに、端から期待すべき映画では無かったとは思う。  ただ、それでも、原作のキャラクターのビジュアルを大いに意識したキャスティングが揃っていくにつれ、どうしたって期待感は膨らんでいくというもの。 そういう意味では、このキャスティングについては、きちんと「見事だ」と言いたい。  この辺りで、はっきりと結論を言わせてもらうと、十中八九「駄作」である。  結局のところ、もう幾度も失望した部分ではあるが、大作になればなるほど、監督の人選は最重要点であり、相変わらず日本人は巨費を使うことがへたくそ過ぎるということを、再確認した。  ここで一々、監督の落ち度をあれこれと言う気はないが、日本映画なりに巨額の制作費を投じたというのなら、せめてそれももう少し上手に使ってほしいと思った。 もっと重要に見せるべきシーンはあったろうし、映像化するからこそ意味のあるシーンもあったと思う。  いくら元が面白いものでも、面白く見せようとする工夫をせず、ただ上辺をなぞるだけでは、面白くなるわけがなく、意味がない。  ある部分において、映画以上に漫画が好きなので、いつも思うことなのだが。 日本の優れた漫画家の創造性は、日本の優れた映画監督の創造性を遥かに凌ぐと思う。 それは、世界に通用する日本のポップカルチャーの最先鋒が「漫画」であり、日本国内の浸透性においても、「映画」より「漫画」の方が高いことからも明らかだ。  “畑”が違うことが重々承知ではあるが、こういう結果を目の当たりにすると、 「もう、浦沢直樹にそのまま監督させれば良かったんじゃねーの」 とか、 「アニメ映画にすれば良かったのに……」 と、思わざるを得ない。 
[映画館(邦画)] 2点(2008-09-01 14:50:12)
403.  東京湾炎上 《ネタバレ》 
映画自体の良い悪いはともかくとして、この時代の日本の娯楽映画には、ハリウッド映画に負けない大胆さというか、肝っ玉の大きさを感じる。  石油コンビナートの爆破中継を求めるテロ集団に対し、特撮映像によって局面を乗り切ろうとする日本政府の様を特撮映画で描こうとすることに、この映画自体に「大胆不敵」という言葉を当てずにはいられない。  「俺たちの特撮技術スゴイんだぜ!」という絶対的な自信を礎にして作るからこそ、迫力のある娯楽性が生まれるのだと思う。 ハリウッド映画の迫力に対して根本的な部分で尻込みしてしまっている今の日本の娯楽映画界に、圧倒的に足りないのはそういう部分だと思うのだ。  かと言って、この映画が問答無用に面白いと言えるわけではない。 ストーリーは今ひとつ説得力と抑揚に欠けるし、中途半端な日本語を喋る外国人キャストはチープさを助長する。藤岡弘、丹波哲郎、水谷豊ら主要キャストのバックグランドも描き方が不十分で深みがない。  が、それでもごり押して、主演俳優の暑苦しい程の哀愁で締めてしまう力強さが、この映画の、この時代の娯楽映画の「価値」だと思う。
[DVD(邦画)] 5点(2008-08-03 01:03:45)(良:1票)
404.  崖の上のポニョ
アニメというものは、根本的な部分で「寓話」であるべきだと思う。 そして、理屈ではなく、感覚的な面白さ、愛くるしさ、に埋め尽くされた時、アニメがアニメであるほんとうの価値が見出されるのだと思う。  日本のアニメーション界におけるもはや「神」である宮崎駿の最新作。 CGを駆使し極限まで作り込まれたここ数年のあまりに魅力のない「精密作品」から一転して、手書きの「絵」で紡がれた絵本のようなこの作品の存在と方向性は、圧倒的に正しい。  ストーリーに深みはない。でも、スクリーンいっぱいに映し出される“生命感”に溢れるアニメーションを見ているだけで、ただ“楽しい”。そして、1シーン、1カットに情感が溢れる。  これこそアニメである。幼い頃に見続けたディニーアニメの根幹、そしてジブリアニメの紛れもない「原点回帰」を見れた。  正直なところ、最近2作に対する失望感から、期待よりも不安の方が大きかった。 ただそれでも、ジブリアニメで育った者にとって、宮崎駿の映画というものは、絶対的に心の拠り所なのだ。 幼い頃から与えられ続けた「幸福」と「興奮」と「高揚」を求め続けてしまう。  そうして辿り着いた久しぶりの安堵感。それがただ嬉しい。
[映画館(邦画)] 9点(2008-08-02 00:14:56)(良:2票)
405.  アフタースクール
前作「運命じゃない人」で、衝撃のスパイラルムービーを見せつけた内田けんじ監督の最新作。またもや、人の思惑と思惑がストーリーの“裏側”で入り交じる展開が見事だった。  何も考えていなさそうなやつが、実は秘めている企みの妙。確信犯的なストーリー以上に、人間が常に秘めている表には出さない感情と真相に、面白味を感じた。 今作では、大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人と、それぞれに味わいを持った性格俳優がメインを張っていることも、「人間の深層(真相)」という部分で、深みを持たせる要因となっている。  日本には今、エンターテイメント映画のジャンルで、良作を連発できる映画監督は少ない。 肯定的な意味で、“同じような映画”を連発する監督が少ないのだと思う。 内田けんじ監督には、今後も、積極的に観客を騙し続ける映画を量産していってほしいものだ。
[映画館(邦画)] 8点(2008-07-13 12:04:45)(良:1票)
406.  魍魎の匣
ベストセラー作家・京極夏彦の人気シリーズの2度目の映画化作品。 前作「姑獲鳥の夏」に続き、主要キャラクターを、堤真一を始めとして豪華な俳優陣が同じく演じている。(永瀬正敏が演じた関口だけ、椎名桔平に変わっていたが……)  不思議な映画だった。 ストーリーは、「匣(はこ)」に取り憑かれた男が繰り返す連続少女バラバラ殺人を軸に、怪奇的に紡がれるミステリーだが、その物語のテイスト以上に、“噛み砕けない”映画だったと思う。 京極夏彦の原作を未読で、物語の核心をつかめていないことが、そもそも入り込めない要因なのかもしれない。 おそらくは、原作はもっと緻密にストーリーの裏に蠢く人間の「闇」を描き切っているのだろう。  堤真一、阿部寛、椎名桔平をはじめとする主要キャストの掛け合いはとても秀逸で、彼らのパフォーマンスを観ているだけでも、結構魅せる。 ただそれが、そのまま映画の核心にリンクしていないという印象。物凄く面白いようで、とてつもなくつまらない。完全に相反する感想が共存する感覚が残る。  原作風景を意識した作り込まれたビジュアル、良い意味で仰々しい演技、見所は確実にあり、豪華な舞台作品を観ているようにも感じる。 自信をもって「面白い!」とは言えず、すべてが消化される「快感」はないが、ひとつの映画体験としては、こういうのもアリだとは思う。
[DVD(邦画)] 6点(2008-07-12 09:09:23)
407.  クライマーズ・ハイ(2008)
とある真夏の日、地方新聞社の編集局フロアが一本の電話を皮切りに、徐々に、確実に、ざわめき始める。 編集局内の人物の配役は、映画ファンにとっては「堅実」と「豪華」が相まみえるベストなキャスティングで、彼らが織り成すその序盤の緊張感を見るだけでも、総毛立ってくる。  昔、地元のTV放送局でカメラアシスタントのアルバイトをしていたことがある。 放送局と新聞社では、根本的にその性質は大きく異なるのかもしれないが、何か突発的な事件の報が飛び込んできた時の緊張感はやはり独特で、フロア内にピンと糸が張るような感覚をよく覚えている。 それが国内事件史に残る未曾有の航空機事故となれば、その糸の張りつめ方は半端なく、各人が努めて冷静であろうとすることで生じる異様な“静寂”と、そこから始まる“怒濤”の情報錯綜の様が見事に表現されていると思う。  1985年。御巣鷹山の日航機墜落事故を題材に、事故を追う地元新聞社での人間模様を、熱く、真摯に描き出した横山秀夫のベストセラーの原作小説も、この映画を初めて観た少し前に読んでいた。 個人的には、ベストセラー作品の映画化に「成功」した稀有な事例だと思っている。  何よりもこの映画の成功を決定づけた要素は、やはりそのキャスティングだ。 それは、それぞれにキャスティングされた俳優たちが、揃いも揃って素晴らしい演技を見せた事に他ならない。 自らの出自と会社との軋轢の間で板挟みになりながらも、信念を貫き、未曾有の事件に向き合う主人公を演じた堤真一をはじめとし、野心溢れる県警キャップを演じた堺雅人、紅一点の新米記者に尾野真千子(最高!)、辣腕上司役の遠藤憲一、新聞社社長に山崎努、田口トモロヲ、堀部圭亮、滝藤賢一、でんでん、マギー……決して流行のスター俳優を揃えたわけではない本当の意味での“オールスターキャスト”だと思う。  描き出されるストーリーは原作同様に、大事故に直面した人間たちの徹底的にリアルな心理描写を主題にしているので、安直な盛り上がりは許されない。 クライマックス、大スクープを手中にした主人公は、最後の最後まで「チェック、ダブルチェック!」の慎重な信条を貫き、ついにはそれを回避してしまう。 観客として「ええ~」と一寸思うが、見返す程にこれこそが真摯な人間描写だと思える。 安易な娯楽性に走らず、それを貫いた原作者も監督も脚本家も、それぞれが一様に技量が高く、巧い。  いまひとつ世間的な評価が低いことが気になるが、何度観ても、その当時の夏の熱さを伝えてくる紛れもない傑作だと思う。
[映画館(邦画)] 10点(2008-07-07 00:21:50)
408.  アヒルと鴨のコインロッカー 《ネタバレ》 
ふとこういう色々な意味で驚きに溢れた良い作品にめぐりあうから、映画はやめられない。  進学のため越してきた普通の大学生が、突然隣人に「本屋を襲わないか?」と誘われる。 なぜ、隣の隣のブータン人のために本屋を襲わなければならなかったのか?……なぜ、ディランを歌うのか?……なぜ、「じゃあ河童の方」の河なのか?、さりげなく散りばめられた伏線が結びつき、紡ぎ出された「真実」に、突如として感情が揺さぶられた。  伊坂幸太郎の原作は未読で、「映像化不可能」と言われいた文体がどういうものなのかは、この映画化作品を見た後だからこそ、殊更に気になる。  こういう映画は、感想の言葉を並べれば並べる程、蛇足になってしまう。  ボブ・ディランの「Blowin' in the Wind」によって繋がった出会いは、きっと神様が「彼」に差し伸べた「救い」だったのだろう。
[DVD(邦画)] 9点(2008-06-21 16:55:53)(良:1票)
409.  転々
「人生」なんてものは、まさに“転々”としていくもので、悲しい事も、嬉しい事も、順繰りにめぐるものだと思う。 ただ、幸せは、はっきりと目に見えるものではないし、これがそうだと実感できるものではないから、見逃してしまいがちで、辛い事ばかりに目がいってしまうのだと思う。  そういう人生の中での、ささやかな幸せを、淡々と、とぼとぼと、踏みしめるように映し出した映画だった。  三木聡監督らしいゆる~い可笑しさと、ふいに垣間見せる温かさの中で、オダギリジョーと三浦友和がさらにゆる~く息づく。  冒頭では、ただの借金を抱えた大学生とそれを追う取立屋だった二人の関係が、東京の可笑しさに溢れた“散歩”を通じて、次第に“疑似親子”のそれになっていく様に、人と人が触れ合うことによってはじめて生じる滑稽さと、その素晴らしさを感じる。  むさくるしい風貌の男二人の掛け合いがメインの映画なので、上野樹里と蒼井優が出演した「亀は意外と速く泳ぐ」ほどの華やかさはなく全体的に地味な感じはあるが、その分、じんわりと暖かみが染み渡る作品だったと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2008-06-21 10:46:14)(良:1票)
410.  ザ・マジックアワー
三谷幸喜が、「映画」そのものをパロディー化した「映画」を作った。 それは、今の日本を代表する喜劇作家が、辿り着いた一つの到達点かもしれない。  前作「THE 有頂天ホテル」ほどの娯楽映画としての煌めきはないが、それ以上に、「映画」そのものに対するあらゆる憧れと愛に溢れた映画だと思う。  ひたすらに銀幕での成功を夢見る売れない映画俳優を、今や日本映画界のトップ俳優と言っても決して過言ではない佐藤浩市が演じるという“面白さ”。 そしてその映画俳優の滑稽な様を、絶妙に演じて見せた佐藤浩市と、それを引き出した三谷幸喜。 この俳優と監督のコラボレーションの成功が、そのままこの映画の成功だと思う。  喜劇を、ただ喜劇で終わらせないことが、三谷幸喜という作家が優れた部分で、この映画の核心も、そういう要素が溢れる。  売れない映画俳優が、ギャングの抗争に巻き込まれ、騙されたままひたすらに演じ続ける。 そこには、作り込まれた笑いのエッセンスと共に、どこまでも自分の夢を真っすぐに追い求める不器用な男の愛すべき姿が表われる。  映画が好きな人、夢を追い求める人、または追い求めたことがある人にとって、その姿には、特に胸を締め付ける程の感慨深さが残る。  良い映画だったと思う。  
[映画館(邦画)] 7点(2008-06-10 00:34:49)(良:1票)
411.  人のセックスを笑うな
そもそも映画の評価など"個人的な価値観”の極みだと思っているので、この映画の場合、永作博美は悪戯な笑みが魅力的すぎて、蒼井優は久々に脇役ならではの素敵な存在感を放っていて、それだけでもう満足してしまうというもの。  全編通したまったりとした空気感の中で、息づくそれぞれの何気ないロマンスをぼやっと眺めているだけで、この映画は成立していると思う。 ただ、そういう雰囲気を楽しむ作品としては、少々尺が長い気もする。 ストーリー自体に特別な抑揚はないのだから、もう少しさらっとまとめてくれた方が、もっと心地よい余韻が残ったと思う。  あと主人公である永作博美演じるユリの人間性を終盤もう少し描いて欲しかった。 ミステリアスで魅力的な美術講師としての存在感はとても素晴らしかったけど、結局彼女はどういう人間なのか?という部分が曖昧なままで、その心象風景が見えてこなかったのは残念だし、そういう部分が思ったよりも感情が揺れなかった原因だと思う。 終盤の露出が減り、最終的に蒼井優に食われてしまった感がある。その辺りの切替えが監督の狙いかどうかは分からないが、この作品の場合は永作博美の「存在」を最後まで押し通すべきではなかったかと思う。
[映画館(邦画)] 6点(2008-03-22 16:44:51)(良:1票)
412.  犯人に告ぐ
かつての誘拐事件で心に傷を負った敏腕刑事が、新たに巻き起こった連続児童殺人事件を、テレビを通じて犯人と対峙する「劇場型捜査」として挑む。  原作は未読だったので、色眼鏡なく展開するストーリーに入り込むことができ、トータル的にはまずまずよく出来た映画だという印象に落ち着いた。 主人公を演じた豊川悦司は、キャラクターによく合い安定した演技を見せたと思う。笹野高史をはじめとして、脇を固める俳優陣は地味めながらも実力者揃いで味のある存在感をもって作品を支えていた。  想像するに、原作をうまくまとめて決して破綻することなく映像化しているのだと思う。ただその体裁の良さが、同時に映画作品としてやや「味が薄い」という印象に繋がっているとも思う。 「劇場型捜査」というセンセーショナルな要素を核心に据えてはいるが、このストリーのミステリー性はそれほど練り込まれたものではなく、むしろベタと言える程シンプルだ。 原作を読んでいないので想像の範疇を出ないが、この物語の本質は、真犯人特定のプロセスではなく、主人公を中心とした「劇場型捜査」に絡む群像のドラマ性にあるのではないかと思う。 そういう意味では、もう少し主人公以外の登場人物たちの人間性を深く掘り起こして欲しかったと思う。そうすれば、もう少しアクの強い映画に仕上がったのではないか。
[DVD(邦画)] 7点(2008-03-22 03:12:43)(良:1票)
413.  チーム・バチスタの栄光 《ネタバレ》 
正直、「愚作」という言葉を否定することができない。 昨年原作を読んで、現役医師によるライブ感とリアリティのある描写による秀逸な医療サスペンスに感嘆し、映画化が楽しみな小説の一つだったのだけれど、ものの見事に“医療ミス”が起こってしまっている。  そもそも、主人公の田口医師の設定を女性にしたのはどういうわけか? 大学病院の出世コースから遠く離れたある種のアウトロー性を持った落ちこぼれ講師が、病院の花形である“チーム・バチスタ”の内部調査をしていくという不相応さが、先ずこの物語の面白味であったはずだ。それなのに、主人公をただ単にのほほんとした柔和な神経内科女医としてしまったことで、物語自体が非常に“ゆるい”感じになってしまっている。  もう一人の主人公である厚生労働省の変人役人白鳥の設定もおかしい。 元々、特異なキャラクター設定であることには違いないが、そこに必要なのはあくまでもリアリティであり、「もしかしたらこんなエキセントリックな役人もいるかもしれない」という現実味のある面白さがなければ、現実的な医療現場を舞台にしている以上、ストーリーとして破綻してしまう。 原作では白鳥は「厚生労働省大臣官房秘書課付技官・医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長」という馬鹿みたいに長々しい肩書きを披露するのだが、彼のキャラクター性のユニークさはそういう部分で、突如ソフトボールの試合に現れて大ホームランを打つなどという安いインパクトは必要なかった(そもそも主人公がソフトボールに興じているという設定が意味不明だ)。  高階院長以下その他のキャラクターについても原作に対して人間描写が薄すぎて、物語の核心であるチーム・バチスタ内の人間関係や医療現場の問題性がほとんど伝わってこない。 主人公の田口医師、そして“ロジカルモンスター”白鳥が、チーム・バチスタに対して行う“ヒアリング”によってそれぞれの人間性が見えてくるくだりこそ、この物語の“キモ”であり、面白味であるのに、その描写が軽薄では話にならない。  考えれば考える程に「粗」が見えてきて仕方がない。映画化においてどういうイメージをもって製作が進んだのか知る由もないが、監督の抜擢から脚色、キャスティングまでもう少しまともなセンスを保てなかったものか。 売れた原作をただただ安直に映画化しただけの出来映えが残念でならない。 
[映画館(邦画)] 1点(2008-02-10 16:31:30)(良:5票)
414.  舞妓Haaaan!!!
「IWGP」で池袋を、「木更津キャッツアイ」で木更津を、「タイガー&ドラゴン」で浅草を、それぞれの街の独自色をマニアックに抽出し、コメディドラマに昇華してきたクドカンが新たな題材として選んだのは、満を持しての「京都」。  主演に阿部サダヲを抜擢し、舞妓好きの常軌を逸したサラリーマンを,破天荒に描き出した様は、まさにクドカンワールドと言える。 ヒロインに柴咲コウ、ライバル役に堤真一と、配役的にも豪華な面々を揃え、花街の華やかさに彩りを添えている。  コメディ映画として笑いどころは全編通して繰り広げられており、ラストには心地よい爽快さも垣間見せるが、どうにも手放しで楽しめない雰囲気が残る。 それは、これまでの宮藤官九郎脚本によるコメディ映画においてもそれぞれ感じてきたことなのだが、映画の長尺になると、彼のコメディ作品は間延びしてしまう感がある。 「GO」「ピンポン」「69」などドラマ性の高い映画作品の脚本では、持ち前のコメディセンスと作品のドラマ性がバランスよく合致して、それぞれ優れた脚本力を見せつけてくれる。 しかし、「木更津キャッツアイ」の映画版や今作などコメディのウエイトが高い映画作品の脚本では、どこかテレビ的というか、深夜枠の範疇を越えられない感が残ってしまう。  もちろん、その独特のマニアック感がクドカンの脚本の面白味ではあるのだけれど、その面白味が映画作品の尺でも発揮された作品が生まれることが、今後の「期待」かもしれない。 
[DVD(邦画)] 4点(2008-01-14 14:09:40)
415.  世界大戦争
藤子・F・不二雄の短編漫画に「ある日」という作品がある。 日常の何気ない生活が何の前触れもなく”プツン”と核爆発によって消失してしまう可能性を秘めた「現実」を、シニカルに表現した傑作である。  そして、この特撮映画の傑作を見て、まさにその短編漫画を思い出した。  人が自分自身の努力によって幸せに生きるという権利の崇高さと、それを一方的に消失させるという世界で最も愚かな暴挙。 「戦争」とはその暴挙そのものであり、どうしたって取繕うことなどできない「罪」だ。  映画では、平凡で幸福な人々が健気に生き、緊迫する両陣営の現場ではそれぞれの兵士らが「最終命令」が出ないことを心から望み、日本政府は事態の回避に苦闘する。 すなわち、世界の誰も「世界の滅亡」など望んでいるわけもなく、誰しもが平和に暮らしたいのだ。 愚かなのは、人間一人一人の意識を超えた、人間という「種」そのものの「不安定さ」だと思う。  ラスト、笠智衆の演じる炊事長のセリフにもあるが、人類全体がもっとシンプルに「生きたい」という願望を貫くことができれば、世界はもっと単純に幸福に存続していけるのではないか。 そういうただただ「生きたい」という望みが、フランキー堺の演じる父親の行き場のない嘆願に溢れ、涙が止まらなかった。  様々な面において、日本映画が世界に誇れる名作の一つだと思う。 こういう映画があることを、もっと多くの日本人に知っておいてほしいと切に思う。
[DVD(邦画)] 10点(2007-12-30 12:46:29)
416.  めがね
「何が自由か、知っている」 このコピーを見た時、まだ作品を観ていないのに、なぜだか「なんてこの映画を捉えた巧いフレーズだろうか」と思った。 「かもめ食堂」の監督が描き出す新しい映画世界が、きっと「自由」というものの本質をさらっと表現しているのだろうということは、かなり容易に想像ができたからだ。  そしてそれは想像通りに、美しく、美味しそうな描写の中で、淡々と何気なく伝えられていた。  「自由」というものを得るために、必要なのは時間を過ごすためのトランクではなく、その本質を見ようとする「意識」だ。 何もしない時間を、楽しむということは、コツがいる。 個人としての自分を、本当の意味で自立させなければ、本当に自由な時間というもを過ごすことはできない。 そしてそれは、大きな勇気と、経験が要る。  おだやかな時間の描写の中で、この映画は、そういう人間として生きていく上での本質的な「強さ」とその意味を伝えてくる。  ストーリー性が無い分、「かごめ食堂」よりも一層に映画としての面白味は、ゆっくりとじわりじわりと染み込むように伝ってくる。  並ぶテーブル、古めかしいかき氷機、当たり前に広がる曇り空、そういう何の変哲もないワンカットごとに、「情感」が溢れるこの映画の価値は、紛れもなく本物だと思う。
[映画館(邦画)] 8点(2007-11-25 14:05:08)
417.  茄子 スーツケースの渡り鳥<OVA>
自転車競技における人間ドラマを見事なアニメ表現で描いた良作「茄子 アンダルシアの夏」の続編……ってこれはなんで劇場公開されなかったのだろう。 前作に負けずよくできた作品だと思う。  自転車に人生を捧げるアスリートたちの精神世界での葛藤と苦悩を、シンプルに、実に巧みに描ききっている。 日本ではなじみの薄い自転車レースの競技としての”熱さ”とそこで繰り広げられる人間模様の“熱さ”が、レベルの高いアニメーションでもってしっかりと伝わってくる。  大泉洋が前作に引き続き主人公の声をユーモアと人間性を溢れた表現で好演している。  劇場公開でないこともだが、もう少し長い尺で作り込んでも充分に魅力的な映画になると思うのだが……。
[DVD(邦画)] 6点(2007-11-22 14:47:26)
418.  秒速5センチメートル
詰まる。胸が詰まる。 小さな恋心が、“生まれ”、“深まり”、“離れ”、次第に果てしなく遠いところへ“消えて”いく「時間」の切ない流れに。  画面の中に映し出される「映像」も「音」も「言葉」もすべてが美し過ぎる。 美し過ぎることが、殊更に切なく、どうしようもない喪失感に拍車をかける。  もし、この作品を同等の“美しさ”で実写化しても、そこには現実に対する違和感が生じてしまうだろうが、アニメーションであることがこの世界観をまかり通している。  透明感に溢れた映像世界は、新しくはあるがこの国の原風景的な情感を感じさせ、どこか懐かしく、安心感を覚える。 この新しい「才能」は、生み出される映像世界と同様に、無限の可能性を感じさせる。  いい映画だと思う。 種子島の吹き抜ける風の中で、無限の世界に飛び立っていくロケットを見たい。
[DVD(邦画)] 9点(2007-11-09 00:17:48)(良:1票)
419.  クワイエットルームにようこそ
松尾スズキの長編監督作品第二作目となった今作は、「日常」から唐突に精神病棟という「異世界」に放り込まれた主人公の精神世界を、病棟における群像と共に、繊細にエキセントリックに描き出す。  フリーライターの主人公は、精神病棟の非日常性の生活の中で、精神をかき乱されていくが、それはその環境が「異常」だからではなく、元来自分の中にあった心の「屈折」に気づいていくからだ。 すなわちそれは、「異常」は囲われた特別な世界に存在するものではなく、「日常」という世界の中のどこにでも、誰にでも存在するものだということに他ならない。 だからこそ、"クワイエットルーム”で目覚めた主人公は、同じその場所で、本当の意味で“目覚める”ことができたのだと思う。  松尾スズキの異色的な世界観の中で、巧い役者たちの生々しい息づかいがスバラシイ。 特に久しぶりに映画主演復帰を果たした内田有紀の存在感は素晴らしく、生まれ持った華々しさとともに、とても魅力的な女優への変貌は驚きと期待感に溢れていた。  きっと誰しも“苦悩”はあり、故に誰しも心に“闇”を携えているものなのだと思う。 それは必ずしも周囲に分かりやすい形で表われるものではなくて、本人さえ自覚がないままにひっそりと確実に浸食していき、ある時ふとしたはずみで“パチン”とはじけるものかもしれない。 ただそういう部分こそ、人間の面白さであり、何にも代え難い愛おしさなのではないだろうか。  一見のインパクトの大きさだけにはとどまらない奥深さを備えたスバラシイ映画だったと思う。
[映画館(邦画)] 9点(2007-10-28 20:54:03)(良:1票)
420.  EX MACHINA/エクスマキナ(2007)
予想外に衝撃的な面白さだった「アップルシード」の続編は、前作同様、スピードと衝撃性に溢れた次世代アニメーション映像と、直球勝負のストーリー性で優れたエンターテイメントを備えた作品に仕上がっている。  最先端のCG技術に彩られたこの3Dライブアニメというスタイルは、アニメーションの一つの方向性を確立していくと思う。 アニメーションをどこまで実写のクオリティまで近づけていけるかという試み。結果からすると、まだまだそこには大きな「違和感」が生じている。 ただその「違和感」は、決して嫌悪するような類いのものではなく、もはやこのアニメスタイルの「味わい」のような感覚を覚えてきた。  それは、日本の古典芸能である「人形浄瑠璃」や「文楽」のそれと通じるものがあるのではないか。 人によって生み出された「人形(ひとがた)」に魂を吹き込み、彼らによって物語を紡ぐという創造性は、日本人の文化の中に古くから息づいてきた性質であり、現代におけるその“カタチ”こそが「アニメ」なのかもしれない。 そう考えると、アニメが今や日本が世界に誇る“文化”であることも、必然なのだなと思う。   文化のこの更なる「進化」は、驚嘆と賞賛に値する。
[映画館(邦画)] 8点(2007-10-27 00:20:18)
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