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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2398
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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41.  タンポポ 《ネタバレ》 
『お葬式』に続く伊丹十三の監督第二作目ですけど、この初期二作はサブカル寄りの視点が濃厚で次作『マルサの女』からは社会派的な作風に変化します。でもこの『タンポポ』こそが伊丹の作家性がもっとも色濃く出ているんじゃないかと私は感じます、海外でも評価が高いというのは納得です。 世はあの『美味しんぼ』の連載が始まったころ、膨らみ続けるバブル景気の熱気の中で日本人の関心が食に向き始めてきます。その中であえて伊丹が今でいうB級グルメ的な位置づけだったラーメンをテーマに選んだところは秀逸な観点で、これこそまさに食のサブカルと言えるでしょう。設定やディティールは“ラーメン・ウェスタン”と称するだけあって西部劇のカリカチュアと捉えることができ、登場人物たちを漫画チックなキャラにマッチした撮り方だと思います。ストーリーと並行して挿入される食にまつわるエピソードというか小話がこれまた絶妙。駆け出しの頃だった役所広司を始め、豪華な大物たちがショートコントみたいな寸劇を見せてくれるとはなんと豪華なことでしょう!でもまだ無名だった役所の白服の男の存在感は大したもので、とくに洞口依子との牡蠣のエピソードはヤバいですね。初期の伊丹作品では劇中に一か所はフェティッシュなエロをぶち込んでくるのがお約束ですけど、その中でも直接的な脱ぎや表現はないこのエピソードがエロ度最高峰じゃないかと自分は思います。そして食の映画でもっとも大事なのは、その料理がいかに美味しく見せるかということです。その点では本作でのラーメンは、たとえ深夜に鑑賞していても食べたくてしょうがなくなるまさに“飯テロ”と言ってもいいんじゃないでしょうか。今や定番のネギラーメンは、本作がきっかけで全国に広まったという説があるそうです。あとあまり認識されていないようですけど伊丹十三は音楽のセンスが絶妙で、役所広司のエピソードでのマーラーの使い方は『ベニスに死す』に匹敵するんじゃないでしょうか。 製作から35年経ちましたが、いまだ本作を超える食がテーマの映画は日本映画界では撮られていないのが現実です。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-12-18 22:14:38)
42.  の・ようなもの 《ネタバレ》 
森田芳光は本作が商業映画デビュー、そして志ん魚=伊藤克信もこれが俳優デビュー作。初見の折は伊藤の強烈な栃木訛りと棒読み調セリフ回しには度肝を抜かれました。これが森田の演出なら特異な演技力の持ち主ということになりましょうが、彼はそもそも日光出身だしちょっと前までは素人だったんだから、たぶん素なんでしょう。森田芳光の演出も初期・森田の特徴であるシュール調が織り交ぜられています。銭湯のシークエンスに於いて、男湯でなぜか一人だけ女性が脱衣しているのに誰も反応を示さないというシーンは、何度観ても訳が判らん(笑)。女子高落研部員たちも、みなたどたどしいというか素人っぽい演技(この中にはなんと若き日のエド・はるみがいる)。でもそんな中でも、尾藤イサオと秋吉久美子が見せる演技はさすがでした。尾藤はオープニングとエンディングでは歌声まで聞かせてくれる大サービス、これは浜田省吾が作曲でこれまたいい雰囲気なんだなあ。秋吉はソープ嬢なのにお店ではビキニ姿、70年代はけっこう脱いでいた印象があるんですけど、もう出し惜しみですかね(苦笑)。また志ん魚はじめ若手噺家たちが、私生活はみんなアイヴィー・ルックなのもなんか80年代らしくて良かった。この映画の登場人物はみな善人でしかも裏表がないというのも、ある意味珍しい部類の映画と言えるでしょう。そして、付き合ったJKの父親から「お前の落語は下手くそ」と酷評されて隅田川ベリから浅草仲見世を抜けて歩いて帰るシークエンスは、やはり森田映画きっての名シーンでしょう。 心がささくれだった時こそ観るべき、森田芳光の落語への愛が迸る一編です。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-10-29 22:51:46)
43.  天然コケッコー 《ネタバレ》 
全校で小中学生が七人だけという過疎地の学校生活が、観ていてとても癒されます。小学校と中学校はいちおう教室が別ですけど、給食の時間になると小学生は机と椅子を持って中学教室に移動してきて、先生を含めてみんなでお昼ごはんとはなんか自分が思う理想の学校生活なんですね。こんなド僻地の学校にまでセンターから給食が毎日配達されるって、考えてみれば日本ってすごい国なのかもしれません。また中学生を教える唯一の男性教師がほんわかしていていいんだな、こういう先生に出会いたかったものです。そんな世界に舞い降りた鶴(?)のような美少女そよ、これが初主演である夏帆の透明感あふれる存在は新人賞を総舐めしたのが納得です。一人称が“わし”というのもなんか胸キュンです。「行って来ます」が「行って帰ります」になる石見弁も初めて聞いたので面白かった、なんか全体的に九州の方言と似ている気もします。そよがさっちゃんの家にお見舞いに行くシークエンス、「ごめんね」と謝るそよにさっちゃんが抱きついてくるシーンは、もう泣きますよ。原作漫画は大人びたタッチで描かれているんですけど本作は終始ほんわかムード、完全に山下敦弘ワールドに染め上がっていました。こういう自然が豊かな田舎で育つというのは子供にとっては最高の環境かもしれませんが、ミニマムな人間関係ですので大人にはけっこうキツいんじゃないでしょうか。そこら辺も、さりげなくですが見せてくれる脚本だったなと思います。 そよが通う学校は木村中、受験する高校が森高校でその近隣にあるのが草薙高、「ひょっとして」と調べたら原作設定では“S県香取郡木村稲垣”がそよの家がある村落で、隣町は“中居町”、なんと原作者くらもちふさこはSMAPオタでした(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-08-21 22:41:25)
44.  家族ゲーム 《ネタバレ》 
観直して何となく感じたところですが、ディティールがどこか川島雄三の『しとやかな獣』に似ている感じがするんです。団地の一室が主な舞台だし、戸外の生活音が強調されて観客の耳に入るような音響設計、そしてラストのヘリコプターの轟音を訝しんで窓を開けて外をうかがう由紀さおり、ここは『しとやかな獣』ではパトカーか救急車のサイレンでしたね。沼田一家が住む団地も渡し船で訪問しなければならないベイ・エリアで、この立地条件も『しとやかな獣』と一緒。森田芳光は後年に『椿三十郎』を全く同じ進行でリメイクしたりしてるから、昭和の邦画に思い入りが深かったのかもしれません。 食卓のシーンやラストのカオスに陥る会食のシークエンスはあまりに有名ですが、この映画は「おっ、日本のルイス・ブニュエルが登場か」と当時思わされたぐらいのシュールさです。もちろん原作小説があるのですが細かいところはかなり改変されており、まさに森田芳光ワールド全開といった感じです。他にもいろいろ気になるディティールが満載で、松田優作がいつも持っている子供むけ図鑑(?)のようなものはなんなんだろう?沼田家では在宅中は玄関をロックしないので外部の人間がスーッと家に上がり込んでくる、昭和三十・四十年代じゃあるまいしこの規模の集合住宅でそんな不用心あるかい!等々。いっさい音楽が効果音としても使われない演出、慎一が母親に聞かせる『マイ・フェア・レディ』のサントラ(多分曲は『I Could Have Danced All Night』)も無音(もっともこれは著作権の権利金が発生するからかも)、松田優作と阿木燿子がいちゃついているシーンで電話に出る阿木燿子のセリフも無音(意図不明)と徹底しています。 家族やコミュニティーに異分子の人間が入り込んで人間関係をグチャグチャにするというプロットの映画は珍しくはないですけど、本作では松田優作の大暴れで切れかかっていた一家の絆が逆に修復したハッピーエンドとして捉えるべきなのでしょう。キッチンで割れたお皿や散らばった料理を片付ける四人の姿がそれを象徴していましたね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-07-12 23:37:51)
45.  狂った野獣(1976) 《ネタバレ》 
『暴走パニック/大激突』と同じ76年に二本だけ製作された東映カーアクションものですが、そのぶっ飛びぶりは『暴走パニック』を凌駕している快作です。どっちも渡瀬恒彦が主演でピラニア軍団の川谷拓三と室田日出男が出ているというのが共通点ですが、『暴走』では川谷が警官で室田が犯人、本作では室田が白バイ警官で川谷が犯人と逆のキャスティングになっているのが面白い。 銀行強盗犯の川谷と片桐竜次が路線バスを乗っ取って逃走を図るが、小市民丸出しの乗客の中にグラサン姿の動揺しない渡瀬恒彦がいて、ミステリアスな存在感で観る者の興味を引かせる上手いストーリーテリングです。渡瀬は実は前夜の宝石強盗の犯人で逃走中の身なんですけど、途中から渡瀬が運転するようになってからはひたすら暴走・暴走のまさに『スピード』状態!この役のために大型免許を取ったという彼が実際に運転しているというのも凄いですけど、クライマックスのバス横転まで彼がスタントなしでやったというのはもう開いた口がふさがりません。途中で疾走しているバスの窓から乗り込むというシーンも本人が演じているそうで、この人実は千葉真一に匹敵するスタント能力を持っていたんですね、知らなかった。室田日出男も猛スピードで走るバスの後部にしがみついたり、川谷も画面に映されるわけでもないのに志願して横転するバスに乗り込んだり、この頃の東映俳優たちはムチャしすぎです。バス乗客たちもみなキャラが立っている面々で、とくに女性陣がみな関西のおばちゃん気質丸出しなのが笑えます。終盤のバスとパトカー・白バイのカーチェイスも結構な迫力で、やはり『暴走パニック』よりも本作の方が面白かったと思います。こうやって見ると、深作欣二よりも中島貞夫の方が実はアクション映画の腕前は上だったんじゃないでしょうか。 それにしても70年代東映プログラム・ムーヴィーは、全盛期の新東宝を上回るぶっ飛び映画揃いで侮れませんよ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-01-19 22:13:48)
46.  仁義なき戦い 広島死闘篇 《ネタバレ》 
シリーズ二作目は、北王子欣也=山中正治をストーリーラインのメインに据えた番外編みたいなお話しになり、菅原文太=広能昌三はいわば狂言回しのような役割となります。これはまだ抗争自体が燻っていたのに「二作目は広島戦争にしろ!」という岡田社長の号令に脚本の笠原和夫がビビったためで、いわばアリバイ稼ぎで書き下ろした感じみたいです。その為か山中正治のエピソードはかなり時期的にもずらされており(モデルの人物は昭和23年には死亡)、広能との絡みも創作みたいです。文太は出番の少なさに怒って一時降板を申し出る騒ぎもあり、文太なしでシリーズ四作が撮られていた可能性もあったのは興味深いです。 シリーズ中の最高傑作と評されるだけあり、登場キャラが立ちまくっているし群集劇としても見応えは十分です。中でもシリーズ中人気ナンバーワンのトリックスター、千葉真一=大友勝利の強烈な暴れっぷりと言動には惚れ惚れします。「あれらオ○コの汁でメシ食うとるんでぇ!」「人間うまいもん喰ってよ、マブイスケ抱くために生まれてきとるんじゃないの?」、いやはやこの倫理の欠片もない迷セリフの数々、やっぱ書いた笠原和夫を第一に褒めるべきなんでしょうね。北王子欣也も、銃を構えるところの演技が真に迫っていて、とくに最初の殺人のときのリアクションが実にリアルでした。またこの二作目は、北王子欣也と梶芽衣子の悲恋物語でもあるのですが、この梶芽衣子はシリーズ中で唯一の女性主要キャラとなります。まあこの山中正治というキャラは劇中では単なる鉄砲玉的な行動しかしてなくけっこうおバカな感じですし、梶芽衣子を婚家に戻そうとする村岡組長や若頭の考えもあながち理不尽だと断罪してしまうことも出来にくいんじゃないでしょうか。そう考えると、成田三樹夫=若頭・松永が、本作でもっともカッコよいキャラだったと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-01-02 00:18:49)
47.  キサラギ 《ネタバレ》 
自分の中では“期待も予備知識もなく観始めたけど実は傑作だった大賞”ノミネート作です。五人が集まってくるところから幕開けですが、いかにも舞台劇的な展開はちょっと鬱陶しい感じが確かにあります。でも三十分過ぎたあたりからは怒涛の展開、まさに会話劇の真髄といった感じでしょうか。後半で会話に散りばめられた伏線が綺麗に回収されるわけですが、その伏線の置き方も洗練されています。さすがにスネークのキャラがうるさ過ぎてイラっと来ますけど、これはあの小出恵介が演じているのだから我慢我慢です。デブッチャーが実はヤセッチャーだったという展開はちょっと意表を突かれましたが、写真のデブッチャーは本人画像を加工したんでしょうけど、それにしても凄まじい変貌ぶりでしたね(笑)。最後に家元にお話しを収斂させるのが良くて、不覚にもホロっとさせられました。五人の中にユースケ・サンタマリアと塚地武雅という芸能界きってのドルオタがいるところもなんか嬉しいところです。でもやっぱラストだけはねえ…なんで宍戸錠なのかは意味不明ですけど、彼がこの映画に登場すること自体がシュールの極みです。 そりゃあ売れて世間に認知されて欲しいというのがドルオタの共通の望みですが、夢破れて推しが卒業・引退しても残りの人生は幸せであって欲しいと願うものです。そういう観点からはとても悲しくなるお話しではありました。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-12-30 21:54:17)(良:1票)
48.  DEAD OR ALIVE 犯罪者 《ネタバレ》 
三池崇史が撮ったこのトンデモない映画のことはずいぶん前から噂に聞いていましたけど、置いているレンタル屋はなかなかないし、扱ってる店ではいつもレンタル中なうえに気が付けばレンタルビデオ店じたいが身近から消滅してしまいました。今回ようやくCS放送で巡り合うことができて感無量です。 そりゃぶっ飛んでるラストはもはや伝説ですが、開幕からの八分間の映像とサウンドのカッコよさと無茶苦茶ぶりにも痺れます。それにしてもあの“わんこ中華そば”はいったい何ですか、腹に開いた穴から麺を盛大にまき散らせて死ぬなんて、こんな発想が出てくるとは三池崇史は天才か!ハイテンションで始まってもだんだん息切れしてしまうアクション映画がゴロゴロしているのに、テンションを落とさずしかもラストで文字通り大爆発する映画なんて滅多にお目にかかれるもんじゃありません。演出もメリハリが効いていて、無頼漢ながらも家族思いの刑事・哀川翔が良い味出していました。それだけに杉田かおる母娘が誤爆されるシーンはほんと胸が痛みます。竹内力もラストで悟空化してカメハメ波を放出するところでは、あのトレードマークの眼力が消えて意外と可愛い顔になっちゃうのがキュートです。 製作から20年経ったけど、やっぱ三池崇史は本作を超える映画を撮るのはムリみたいですね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-12-18 20:25:19)
49.  ウィーアーリトルゾンビーズ 《ネタバレ》 
これはちょっと衝撃を受けましたね。サンダンス映画祭で認められたってのも納得です。初期のファミコンRPGみたいな直上から撮るカメラアングルは和製というか黒いウェス・アンダーソンみたいなストーリー・テリング。四人のゾンビーズたちの会話が短文ショートメールのやり取りをそのまま発声してるみたいな感じだけど、これはかえってリアルです。リトル・ゾンビーズが結成されるのは開幕して一時間過ぎてからですけど、自分はこの前半がとくにツボでした。この映画はリトル・ゾンビーズのサクセスストーリーなのかと思っていたら、結成後はそこから30分であえなく解散。キッズ・パンクという感じの曲は演出なのかはたまたこれが実力なのか判断に迷いますが、まああんまり上手いバンドとは言えない。でもこの曲のMVが公開されてから一年半も経たずに200万を超える再生回数になっているのはびっくりです。やっぱ個人的に刺さったのは、“タコの知能は三歳児”の方ですかね(笑)。そしてバンド解散してからラストまでの三十分は実にシュールな展開ですが、最後に夢オチ的に人生リセットなんて展開にならず明るい展望を感じさせてくれるのは良かったです。四人の親や親せきたちのキャスティングはけっこう豪華な顔ぶれ、でも何気に凄いのはサブカル界隈からのカメオ出演の多さでしょうな。いとうせいこうも出演しているそうですが、どこに出ていたのか皆目見当がつきません、ホームレスのモブ・ミュージカルのところかな?あとゾンビーズのプロデューサー役の佐野史郎の役名が加茂慶一郎と言うのは、アイドルプロデュースも手掛ける有名音楽プロデューサーである加茂啓太郎のパロディですね、こういう判る人には判る小ネタは嬉しいです。 この映画はこれからカルトとして評価が高まってゆくのは間違いないでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-08-04 22:36:03)
50.  ガメラ 大怪獣空中決戦 《ネタバレ》 
正直言って公開当時はまさかガメラがリメイクされるとは想像すらしていませんでした、それも日本怪獣映画の新境地を開くようなアプローチで製作されるとはね。 いきなり東宝のマークが映り続いて懐かしの大映のマークが出てきて、時代の移り変わりをひしひしと感じさせてくれたオープニングです。冒頭のシークエンスでは巡視艇のじまの船長に本郷功次郎、海竜丸の船長には久保明とオールドファンには感涙もののキャスティングです。そもそもガメラは日本怪獣映画史上もっとも理屈に合わない生物で昭和のシリーズではそこには全く拘りがなかったのに、超古代文明が遺伝子操作で作成した人工生物という斬新かつ妙に納得がゆく設定です。対するギャオスも超古代文明がガメラに先駆けて開発した生命体で、進化を経ないで誕生した完璧な遺伝子を持つ雌雄同体の化け物という痺れるプロフィール。オリジナル通り人間食なんですがギャオスのデザインがオリジナルより生々しくて、そのお食事作法は東宝特撮のガイラを彷彿させます。そういえばギャオスが中央線の快速電車をかっぱらって中の乗客を食べるシーンは、『サンダ対ガイラ』の羽田空港での食人シーンとカット割りが同じでしたね。 「神は細部に宿る」と言われますが、この映画の怪獣が出現することによっておこる社会的混乱を織り込んだストーリーテリングはそれまでの特撮映画になかった画期的な脚本で、この視点こそが『シン・ゴジラ』で昇華したと言えるでしょう。株式市場や為替相場が怪獣のために暴落するなんて描写は、それまでいろいろ怪獣映画を観てきたけど初めての遭遇した気がします。ガメラとギャオスが暴れるシーンでは徹底的にローアングルに拘り、それまでの怪獣映画で使われていたいわゆる“神の視点”のカメラアングルは基本的には排除されています。画造りにも拘っていて、ギャオスが崩壊した東京タワーに沈む夕陽をバックに巣作りをしているところは、まるで実写のようで怪獣映画史に残る名カットじゃないでしょうか。都市破壊シーンも精巧なミニチュアを作成して着ぐるみが破壊するというCG登場以前のテクニックの集大成が披露されていますが、公開されたのが阪神淡路大震災の直後でリアルな都市破壊を散々TVで見せられた後だけに、自分には観ていてなんか辛いものがありました。とくにガメラが東京に出現するシークエンスでは、なぜかガメラが東京まで地下を掘り進んで来て、地上はまるで地震の様に揺れるところがますます大震災が思い出されてゾッとさせられました。 ガメラにつきまとっていた「子供の味方」という臭いイメージを払拭させる意図もあってのリアル指向だったかもしれませんけど、尺も程よい長さになって見応えがある一編だったと思います。でもやはり文句が言いたいのはあのセガールの娘の大根演技だけはねぇ…彼女は最近日本じゃ見かけませんが、いまどうしてるのかな。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-07-18 22:17:56)
51.  君も出世ができる 《ネタバレ》 
自分は戦後日本映画界の最高峰ミュージカルは『狸御殿』シリーズだと思っていましたが、どうしてどうして、この東宝が放ったカルト・ミュージカルもななかのいい勝負してます。 まず、アニメーションのタイトルデザインがソウル・バスが関わったかと思わせるほど洒落て秀逸。舞台となる東和観光のオフィスは確かにシャレまくったセットで、色彩と言いデザインといいカネかけたなというのが良くわかる豪華さ。フランキー堺や高島忠夫を始めとして芸達者な役者と中尾ミエと雪村いづみといった本職歌手の女優をそろえた豪華キャスト、皆さんほんとスキルが高いですね。中でもフランキー堺のダンスというか身のこなしの華麗さ、ほんと天才的としか言いようがないです。でも浜美枝みたいにそっちの方の芸が劣る女優は歌わせないというのは賢明な選択、そういや有島一郎もほとんど歌ってなかったですね。しかし本作の浜美枝はキュートさが爆発状態、ピンクで統一された彼女の部屋のオシャレさは現代でもなかなか観れないセンスです(愛犬のプードルまでピンクなのは笑ってしまいました)。 この映画はアメリカ帰りの雪村いづみが登場してからの展開が本番です。二言目には「アメリカでは」と社員に説教する“アメリカ出羽守”ぶりが笑えます。この「アメリカでは」はメインスコアにもなっていて、なんと40年近く経ってピチカート・ファイブが雪村いづみを使ってカヴァーしているんですよ。どうりでなんか聞いたことある曲だなと思ったわけです。こういうバタ臭いコメディになると東宝の独壇場なんですけど、アメリカ出羽守・雪村いづみと対峙する高島忠夫のテーマソングは「あこがれのタクラマカン」、でもなんでタクラマカン砂漠なのかは理解不能でした(笑)。そしてワン・シーンだけですが植木等がノン・クレジット登場でフランキー堺と絶妙な掛け合いを見せてくれます。この二人の共演はたぶんこれだけなんじゃないでしょうか、貴重です。 しかし何といっても「凄いもの見せられたな~」とため息が出るのは、やはりクライマックスのサラリーマン軍団のモブ・ダンスで、邦画でここまでのミュージカル・シーンがあったとは、これはぜひとも大スクリーンで観てみたいものです。これがヒットしなくてカルトになってしまうという現実、やっぱ日本じゃミュージカル映画は根付かないのかなあ…
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-05-28 21:58:30)(良:1票)
52.  ダイナマイトどんどん 《ネタバレ》 
野球映画というジャンルが不毛の地である邦画界ではありますが、この映画はチャーリー・シーンの『メジャーリーグ』に匹敵する快作じゃないでしょうか。とは言っても、これは野球映画と呼んでいいのかはちょっと首を傾げるところですがね(笑)。中谷一郎や岸田森といった岡本喜八組の常連が再集結しているだけでなく『独立愚連隊西へ』以来のフランキー堺まで顔を見せてくれるのは嬉しいところです。「チッキショー」でおなじみの佐藤允が出ていなかったのはちょっと残念でしたけど。おまけに菅原文太と北大路欣也という東映実録シリーズの巨星が主演とくれば、ますます野球というよりもヤクザ映画って感じです。文太はお馴染みの広島弁ではなく小倉弁でセリフを捲し立てるわけですがこれが実に様になっていまして、彼ほど西国訛りが似合う俳優はいないんじゃないでしょうか(本人は東北出身ですけどね)。気になったのが岡源組の留吉役の俳優で、巨人の左投手で現コーチの宮本和知にそっくりで最初は本人かと思いましたよ。実はこの人は松竹新喜劇がホームの小島秀哉という方だということを後に知りましたが、今回再見してもやはり似てますよ、賛同してくれる人いますかね? というわけで野球+ヤクザ映画なのかは確かですが、任侠映画の強烈なパロディであることは間違いないです。クライマックスの決勝戦にまで持ち込んでゆくエネルギッシュな撮り方は痛快そのもの、とくにラストの大乱闘のカオスぶりはまさに岡本喜八の本領発揮としか言いようがない痛快さでした。ストーリーテリングとしてもふつうは嘉助と銀次は途中で何らかの和解が成立して友情を育むというのが定番ですが、ほぼ最後の一球までずっといがみ合い続けるという展開が面白かったです。北大路欣也のキャラも三振とる以外は打者にぶつけるだけ(それも頭!)、一つ間違えば殺人マシーンになりかねないシャレにならない男です。でももちろんカット割りしますけど欣也の投球フォームはなかなかのカッコよさで、この人野球選手経験があるんじゃないかと思いました。 まあ一つ言えることは、頭をカラッポにして愉しめる映画だということですね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-05-04 23:08:53)
53.  教祖誕生 《ネタバレ》 
監督は北野組の助監督だった人だから、絵面というかストーリーテリングはほぼ北野武映画風味で、たけしが監督していると言っても通るぐらいです。原作小説も書いているたけしは脇に回っていますが、これがまた飄々としたいい演技なんだな。萩原聖人に接するときの肩の力が抜けた温和な男と、玉置浩二とやりあってボコボコにしちゃうヤクザ風味がアンビバレントであるけど頗るリアルです。でもあのたけしお得意のヤクザ・キックって、畳の上で靴を履かないでやったら足の指が折れちゃうんじゃないかな(笑)。このストーリーの今から考えると凄いところは、製作されたのがオウム真理教事件の起こる前、やたらマスコミが宗教団体をアンタッチャブル視というかビビっていた時代だったということでしょう。宗教ビジネスの基本というか本質を判りやすい視点で説くたけしの視点はさすがです。この映画を観て考えさせられたのは、神がいるかいないかは別にして(たぶんいないでしょう)、神と教祖だけでは単なる危ない奴の妄想でしかなく、信者がいてその人たちが団体を形成した時点ではじめて宗教が成立するんだなということです。その団体の運営者が有能であればその宗教は広まるわけで、教祖の手腕は関係ないというわけです。キリスト教がまさにこのパターンの宗教で、この映画の宗教団体に当てはめると萩原聖人はイエスでたけしはパウロという感じですかね。イスラム教は教祖が有能で、自分で教団まで作っちゃったというパターンですね。 映画は五年後たけしがクビにした初代教祖とふたりでまたインチキ宗教を始めているというのがオチですが、萩原聖人が教祖になった方の教団の五年後も見てみたい、岸部一徳が牛耳っているのか覚醒した萩原聖人がヤバい存在になっているのか、どっちなんでしょうかね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2020-03-31 22:16:33)
54.  台風クラブ 《ネタバレ》 
製作当時の80年代にはなかった言葉だけど、この映画は中二病を患った中三が集団発作を起こすお話しだと思います。その中で彼ら彼女たちは性の目ざめや人間の根源的な生死の問題に苦しみ、そしてその中の一人はその問題に決着をつけたってわけです。この物語は徹底的に中学生たちの世界を描いていて、大人は実質的に三浦友和が演じる数学教師とその関連人物しか登場しませんでした。この三浦友和の演じる教師がいかにもいそうないい加減な俗物で、実にリアルです。山口百恵との共演でアイドル俳優というイメージが定着していた彼がよくこんな役を引き受けたと思いますが、本人の回想にもあるようにこの役が現在まで続く俳優人生の大転機となったことは言うまでもありません(当初は糸井重里にオファーしていて断られたそうです)。半面、工藤夕貴ら生徒たちの親は家庭内のシーンがあっても全くといっていいほど登場せず(寺田農だけが暗がりで誰だか判らないようになってワンカットだけ映る)、これが本作の独特のテイストを形成しています。またこの映画には有名な『犬神家の一族』のパロディとしか思えないカットやオカリナを吹く白装束の男女など理解に苦しむところが多々ありますが、相米慎二は脚本にはほとんど異議を唱えない監督だったそうなので、これは脚本家にそういうクセがあったってことでしょう。まあ、土砂降りの中で下着姿になって『もしも明日が』を踊り狂うところをワンカットで見せるという相米らしいシーンもあるので、これは良しとしましょう。とにもかくにも、本作は日本の80年代青春映画の最高傑作だと思います。 この映画は、長野県佐久市の中学校で夏休みに集中してロケしたそうで、在校生もエキストラ出演しています。完成後に体育館に生徒を集めて披露試写会を学校は企画していたそうですが、中身やストーリーを知らずに協力していた先生たちが怖気づいてけっきょく企画は立ち消えになったそうです。これはぜひ実現して欲しかったですね、きっと家族団らんで観ているTVに突然濃厚なラブシーンが流れて気まずくなるような雰囲気だろうなと、想像しただけで笑えてきます。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2019-09-12 18:43:46)(良:2票)
55.  魔界転生(1981) 《ネタバレ》 
この映画を製作後40年近く経っても人々の記憶に残っているのは、やはり千葉真一の柳生十兵衛と沢田研二の天草四郎の対決というインパクトがなせる業でしょう。千葉真一の十兵衛はこの映画で四度目のとなる彼の当たり役、でもこの一作しかないんですけど沢田研二の天草四郎も映画スター・ジュリーが演じたもっとも有名なキャラとして日本映画史に君臨しています。本作でのジュリーの存在感は半端なしで、真田広之とのキス・シーンまでありその妖艶な色気はクラクラさせられます。原作を大胆にアレンジしたストーリー(細川ガラシャまで登場させるところなぞ、原作者の山田風太郎は絶賛していたそうです)には、江戸時代初期の有名人や事件がてんこ盛り状態、佐倉惣五郎や刀匠村正まで登場し最後は明暦の大火で江戸城天守閣炎上ですからねえ。この炎上する江戸城内での十兵衛と但馬守の柳生親子対決の迫力といったら壮絶です。若山富三郎といえば殺陣の技は日本映画史上ナンバーワンとの呼び声ですから、千葉真一との対決はまさにドリームマッチです。このシーン、炎上する室内と役者の合成が偉く上手いなと感心してたら、なんとほんとにセットを燃やして撮ったそうで、もうクレイジーとしか言いようがないです。そんな危険な現場で無傷でチャンバラできるのは、そりゃ千葉真一と若山富三郎しかいませんよ、ジュリーに至っては軽く火傷したそうです。 この映画こそ、毀誉褒貶のある角川映画が残した最高傑作だと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2019-03-23 23:32:51)(良:1票)
56.  カメラを止めるな! 《ネタバレ》 
製作費が300万円ということですが、ほとんど映画らしい手間をかけていないPOV映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の6万ドルや『パラノーマル・アクティビティ』の1万5000ドルと比較すれば予算の割には登場人物も多くて普通の映画だと思います。逆に言うと、300万円でこれだけの映画が撮れちゃう日本の映画製作状況が心配になります。俳優さんたちはギャラなんてほとんどもらってないんじゃないかな。 冒頭の長回しの他はとくに目新しいアイデアは使われていないけど、映画として普通に面白い。「ネットで話題沸騰!」ということで大ヒットしたわけですが、若いネット民やマスコミには長回しというスタイルがよほど新鮮に感じたみたい、ヒッチコックなんか70年も前に全編ワンカットという手法(厳密にはワンカット風)で『ロープ』を撮っているのを知らないみたいです。私はそれよりも、全編に映画愛が濃厚にあふれているところが気に入りました。トリュフォーの『映画に愛をこめて/アメリカの夜』の日本版がついに誕生したとさえ私は感じています。ラストで人間ピラミッドが崩れた後に俳優たちが見せるさわやかな笑顔には、胸がキュンとしてしまいました。 最近の地上波では血が画面に映るのはご法度で放映できない映画がたくさんあると聞いていたので、劇中劇のフェイク・ブラッドとは言えこれだけ流血シーンや首チョンパまである本作が放映されたことには驚きです。数字が稼げてスポンサーがつくなら原理原則なんて糞くらえというというのはいかにもTVらしいところですが、そんならもっとゾンビ系やスプラッター系を放映しろよと言っておきます。もっとも自分としては、地上波で映画を観ることは滅多になくなってますけどね。
[地上波(邦画)] 8点(2019-03-10 21:41:01)
57.  アウトレイジ(2010) 《ネタバレ》 
北野武の映画がなんで世間では高評価なのかがイマイチ解せない自分ですが、やくざモノを撮らせたら目が覚めるような秀作を撮ることは認めざるを得ません。この映画の優れているところは、ストーリーテリングというか脚本の構成です。会長の池元への叱責がきっかけでまずは大友組の嫌がらせから始まり次は村瀬組の反撃、このテニスのラリーのようなターン交代が徐々にエスカレートしながら上映40分過ぎまで続く。途中カジノ開業のハーフタイムショーがあり、試合再開したらたけしの怒涛の攻撃で村瀬組組長のタマを捕る。しかしこれでワナに落ちることになって、窮地に立たされた大友は池元を葬ってしまい、旧池元組と山王会の連合軍の猛反撃であえなく大友組は全滅。これぞまさしくヤクザ抗争におけるバタフライエフェクトと呼ぶにふさわしいエスカレーション劇、まことに見事な脚本です。この映画で面白いのは、北村総一朗が三浦友和を、椎名桔平が加瀬亮を、そしてたけしが小日向文世をと上位者や先輩が目下の者に恥をかかせたり殴ったりするのですが、三人とも逆襲されて無残な最期を迎えます。アウトレイジな世界でも、行き過ぎたパワハラは禁物ということなんでしょう。 とは言え、「やっぱたけし映画だなあ」と嘆息させられたのも確かです。それは大友が山王会会長に「池本を殺っちゃえ」と唆されるところで、大友が会長の甘言を疑わずに信じていたところです。たけしが自身の映画で演じるヤクザは、どれもお人よしだったり過剰にカッコつけたりなど悪人に徹しきれていないのは彼個人のナルシスト気質が濃厚すぎるからで、これが鼻につくんです。あんだけ無法の限りを尽くした大友が、あんな見え見えの策略に引っかかるようなアホでしたってのは、私には耐えがたいところです。半面、池元演じる國村隼の人間の卑しい面をこれでもかと強調した演技は、もう絶賛しかないです。これは『仁義なき戦い』シリーズの金子信雄を超えちゃったかもしれません。できたら二作目以降も出てほしかったけど、さすがのたけしも死人を蘇らせる(自分が復活するだけで精一杯)わけにはいかないでしょう(笑)。まあこの映画の前日譚を撮るという手もありますけどね。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2019-01-23 20:45:01)
58.  腑抜けども、悲しみの愛を見せろ 《ネタバレ》 
まず題名に一言。ストーリーとはどこにも繋がらない、いかにも青臭い演劇人が思いつきそうなダサいネーミングは何なんですか。もちろん原作通りなのは承知ですが、劇作家である原作者は一周回って確信的にこういう名づけをしたのかな。 とりあえず腐しましたけど、映画自体は予想を外されて面白かったです。他の方のレヴューを見ると総じてストーリー自体が受け入れられないという意見が目立つような気がしますが、私はブラックコメディとしてはかなりの高レベルと評価いたします。サトエリはもうどう見てもサイコパスとしか言いようがない外道っぷり、こういう女性と今まで遭遇してひどい目に遭った過去を思い出しました(もっともここまで酷いのはいませんでしたが)。対する嫁の永作博美は、そのKYぶりというか理解不可能な言動はもう立派なアスペルガー障害の域に達しています。彼女がここまでの演技ができる女優だったとは意外で、この役で女優賞を総なめしたのは納得です。この二人に挟まれ、とくにサトエリにズタボロに虐待される喘息持ちの妹・佐津川愛実だけは多少はまともなのかと思いきや、ラストには大どんでん返し、実はこいつが最恐のサイコ女だったというオチにはやられました。彼女のことは『悪夢のエレベーター』で知ったのですが、そういやこっちの役も…(ネタバレが過ぎるので以下自主規制)文字通りサトエリに翻弄される永瀬正敏も彼らしいいい演技だったと思いますが、永作博美に対する虐待もこれまたすごい迫力です。 実質登場人物は四人で進行するドロドロ劇ですが、苗字に「佐」と「永」いう漢字が付く役者同士がペアになって相手を苛めるという構造なんです(だからどうした、って言われそうですけど)。一番怖かったシーン:永作博美が永瀬正敏に襲い掛かってロスト・ヴァージンを成し遂げるところ(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2018-07-28 22:11:08)
59.  県警対組織暴力 《ネタバレ》 
これはいろんな意味ですごい映画です。 まず製作当時の東映という会社が置かれていた状況ですよ。『山口組三代目』シリーズが兵庫県警の逆鱗に触れて本社やプロデューサーの自宅に家宅捜索が入っている最中に、社長の岡田茂が笠原和夫に大号令をかけて脚本を書かせて製作したのが、この映画ですからねえ。現在じゃあ絶対に考えられないことですし、東映というか東大卒のインテリとは思えない岡田茂の、反骨精神というかがめつさにはもう驚くしかありません。その反体制ぶりがウリだった深作欣二や笠原和夫でしたが、実は岡田茂の度はずれたアナーキー体質に引きずられていただけだったんじゃないかと思います。 そして笠原和夫が書いたストーリーが強烈、ここまで赤裸々に警察と暴力団の癒着を描いた映画はこれからも決して出現することはないでしょう。菅原文太と松方弘樹の広島弁のやり取り、そして警察や暴力団の内部での会話も、もう全編啖呵のぶつけ合いの様相を呈しています。有名な川谷拓三が取り調べられるシーンはもちろんですが、“こんにちは赤ちゃん”がTVから流れる部屋での刺殺劇がまた強烈な印象を残してくれます。金子信雄の狡猾なタヌキ市会議員はもう彼の伝統芸みたいなものですけど、風采に似合わず強面の佐野浅夫が演じる刑事もなかなかいい味出していました。という感じで、脇を固めるキャラが立ちまくっているわけです。そしてちっとも勧善懲悪(いや、この映画に“善”へ分類される登場人物はいなかったですね)とならないカタルシスのかけらもないラストも、日本映画としては珍しいといえます。 笠原和夫が「自分の書いたシナリオで最高傑作」と語っていたそうですが、それは納得します。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2018-06-18 23:36:16)(良:1票)
60.  TSUKIJI WONDERLAND(築地ワンダーランド)
出演しているハーバードの研究者がいみじくも語った「築地の仲卸は魚に情報を付与して商品としての価値を高めている」、なるほどこれは目から鱗、これほど的確に卸の役割を説明するとはさすがハーバード大学です。そのためには言葉というかコミュニケーションが大事な要素で、大勢登場している老若の仲卸業者が魅力的な男たちなんでほれぼれしてしまいます。そして築地市場は株屋の世界に通じるところが多々あり、言ってみれば仲卸は証券マンみたいな存在だと感じました。年内最終日には手締めをするのも同じですしね。客として仕入れにくる有名な料理人たちも仲卸を全面的に信頼して勧める魚を買う、これなんか証券マンと顧客との理想的な関係じゃないですか。 80年前の開設当初の築地の貴重な映像も流れて、ここが時代の最先端をゆく施設だったことが判ります。果たして移転した先でこの世界随一じゃなくて唯一の市場は、どういう姿を見せてくれるのか不安でもあり楽しみでもあります。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-03-10 23:38:59)
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