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プロフィール
コメント数 2398
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  人類SOS! 《ネタバレ》 
ジョン・ウィンダムの傑作SF小説『トリフィド時代』を台無しにしてしまった駄作です。 原作ではトリフィドは品種改良(現在で言えば遺伝子操作か)で創造された人工植物で、良質の植物油が採れるので世界各地で栽培されています。名前の由来になったのは三本の脚の様な幹で、これを使ってのろのろとながらも移動できます。獲物は動物で蔓のような枝で叩いて毒液を注入し、死骸から流出してくる体液を吸収するのが捕食方法です。その為に人間に危害を加えないように囲いに閉じ込められる、まるで家畜のような存在です。原作とこの映画の設定での大きな違いは、原作では人類の大半を失明させた流星群とトリフィドが無関係であることでしょう。本作ではまるで流星の発する光線で突然に出現したようになっています。 本作でいちばん違和感があるのは、入院していて失明を免れた船員のビルと、孤島の灯台でなぜか灯台守をしている生物学者トムのシークエンスが全く交差しないことでしょう。他にもいろいろな登場人物があるのならばともかく、これじゃミニマムな群像劇ですらなくどうかしてます。脚本を書いたフィリップ・ヨーダンはオスカー脚本賞を獲ったこともある人なのに、どうしちゃったんでしょうね。この二人の男性ヒーローは原作のトリフィド研究者であるウィリアム・メイスンを因数分解してキャラ分けしたような感じですけど、トリフィドが海水を浴びると腐って死滅するというのは映画オリジナルです。 「この撃退法が判ったことで人類は救われた」とのナレーションで幕を閉じるのですが、全人類の9割以上が失明した問題は解決しておらず、文明崩壊の危機は進行中じゃないですか!原作ではトリフィドは脅威の一つであって、視力を喪失しなかった一部の人間が徒党を組んで争いを始めているのに文明の再建が果たして可能なのかという鋭い視点を持っているのです。娯楽映画としてはこういう文明論的な要素は避けられたのかもしれませんが、普通にモンスター映画として観てもあまりに緊張感がない演出なので褒めようがないです。 ロメロのゾンビの造形に影響を与えたとも言われています。私はこれはのそのそ移動するトリフィドのことだと思っていましたが、案外、盲目になって腕を突き出して街中を彷徨するロンドン市民の絵面の方だったのかもしれません。
[インターネット(字幕)] 3点(2023-02-07 22:42:52)(良:2票)
2.  ジョーンの秘密 《ネタバレ》 
80歳を超えた老婆ジョーン・スタンリーはある日スパイ容疑でMI5に逮捕される。容疑が信じられない息子で弁護士のニックが取り調べに立ち会うが、そこで母親の驚くべき過去と向き合うことになった。 これは1999年に起きた“メリタ・ノーウッド原爆情報スパイ事件”に着想を得た小説の映画化です。ソ連は1949年にアメリカに次いで原爆開発に成功しましたが、ソ連の原爆開発は米英の原爆開発プロジェクト内に潜むスパイからの情報が無ければこれほど早期に成功しなかっただろうというのが定説で、英国の原爆開発情報を漏洩していたノーウッドもその一人だったというわけです。 この映画と言うか原作小説はこの事件をモチーフにしているに過ぎず、主人公の名前から登場人物および事件の経過はほぼフィクションです。あとこの映画はジュディ・デンチが主演となっていますが、どう観てもデンチとソフィー・クックソンのダブル主演で、過去のジョーンを演じたクックソンの方が圧倒的に出番と存在感がありました。 海外の作品評では「魅力的な実話を当惑するほど退屈な形でドラマ化した」「ジュディ・デンチの圧倒的な才能を無駄にしている」などと酷評されていますが、私もそこまで言っちゃうと可哀そうかなと思いますが当たらずとも遠からずかなと思います。ジョーンをスパイにリクルートしようとするケンブリッジ大学の研究者や外務省の若手官僚などのいかにも胡散臭いキャラたちも登場しますが、どうもこの連中がストーリーから浮いてしまっていたんじゃないかと思います。どうせフィクションならもっとサスペンスを盛り上げるストーリーテリングにした方が良かったと思います。途中からジョーンの夫・ニックの父親が登場しないのが気になっていましたが、ラスト近くでそれが明かされたのが本作で唯一の感銘を受けたところでした。結局はスパイ・ミステリーというよりも、ジョーンの純愛物語だったと言えるでしょう。そして出番は少なかったけど、ジュディ・デンチの存在感はさすがでした。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-07-15 22:29:35)
3.  ショーン・オブ・ザ・デッド 《ネタバレ》 
ゾンビ・コメディの草分けにしてこのジャンルの金字塔です。劇中でゾンビという単語が発せられるたびに「Zワードを使うな!」とショーンとエドが向きになって怒るのがなんか可笑しい。ゾンビが蔓延し始めているのに、まったく気づかずに恋人との別れ話やエドとのしょうもないやり取りを続ける前半がとくに秀逸です。ゾンビの存在を認識してからパブへの逃避行を経てのクライマックスになだれ込む展開ではどんどんシリアスに傾きますが、デヴィッドの最期などグロ要素もしっかり盛り込んでいるのでちゃんとゾンビ映画のツボは押さえています。クライマックスの銃で自殺をとまで追い詰められてからの急転直下の解決は、まるで『ミスト』のパクりというかパロディみたいな感じすらしました。ラストのオチはこれしかないというところですが、笑ってしまいます。できればビル・ナイにもっと活躍して暴れて欲しかったところですが、フィリップがゾンビ化したときのバーバラとの車内でのやり取りは傑作です。 ロンドン上空で人工衛星が爆発して散布されたゾンビ・ウィルスがゾンビを生んだという設定みたいですが、ウィルスに感染してゾンビになった人たちが街をさ迷っている光景は、コロナ・ウイルスにロック・アウトされた時のロンドンを見せられているような感じで、ちょっとゾッとしました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-07-15 19:43:47)
4.  女王陛下のお気に入り 《ネタバレ》 
テューダー朝とは比べ物にならないけど、スチュアート朝もけっこう宮廷内はグチャグチャでなかなかのものです。登場人物はまずアン女王、英国の歴代女王としてはもっとも影が薄く、実際にも明敏な知性や決断力を持ち合わせてはいなかったみたいですが、治世中にはグレートブリテン王国(スコットランド王国との正式な合邦)が発足したりしてそれなりに国勢は伸長しています。そして彼女の幼馴染でもある筆頭女官のサラ、彼女の夫はマールバラ公ジョン・チャーチル、そう英国史上最良の軍司令官にしてウィンストン・チャーチルやダイアナ皇太子妃のご先祖様です。アビゲイルはサラの従妹で、彼女を頼って宮廷に仕官してきました。この女王とサラの関係がなんとも生々しいんです。即位する前から苦楽を共にしてきた親友みたいな感じで、女王に対するツンデレな態度がもう堪りませんし、さすがにこれはフィクションでしょうが二人はレズ関係なんです。いかにも策士といったレイチェル・ワイズと、ただのおばさんにしか見えないオリヴィア・コールマンの対比が面白い。オリヴィア・コールマンは普通のおばさんみたいなのに突然女王らしい威厳を見せるところなど巧みな演技、ヘレン・ミレンに続くクイーン女優の誕生ですか。ルックスからするとヴィクトリア女王役にも最適じゃないでしょうか。カメラ・ワークも独特で、魚眼レンズを使ったカットが頻繁に使用されているところが不思議な感覚です。全編を八章に分けたストーリーテリングなんかはどことなく『バリー・リンドン』を彷彿させられます、時代設定もほぼ同時期ですしね。でもアン女王には配偶者(王配)がいたのになぜか登場も言及もなく、まるで独身みたいなのが不思議。まあこの撮り方の方が、女王の孤独が強調されているとも言えますが。 面白いのは当時の宮廷政治の状況で、このあたりが現在まで続く英国議会政治の始祖と言えるのでしょう。一応トーリー党とホイッグ党という二大政党の体制ですが、議会が開催されていない時は宮殿であひるの賭けレースに興じたり、なぜか素っ裸になった大臣にみんなでトマトをぶつけて遊んだり(なんかの罰ゲーム?)、まるでガキの集団みたいです。議員といっても全員貴族、当時の上流階級の退廃ぶりが窺えます。この宮廷政治や外交政策の決定に、サラやアビゲイルの助言が影響力を持っていたとは史実とはいえ恐ろしくなります。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-01-27 20:51:02)
5.  人生はシネマティック! 《ネタバレ》 
バトル・オブ・ブリテンの真っ最中、空襲に痛めつけられている英国民を鼓舞しようと情報省はプロパガンダ映画の製作を企画した。題材はダンケルク撤退、「双子の姉妹が小舟でダンケルクに赴き兵士を救出した」という新聞の記事をもとにした英雄譚でいこうじゃないか!となって省内で白羽の矢を立てた女性職員を脚本家に仕立てて製作開始。ところが彼女が双子姉妹に会ってみると新聞の記事は話を盛り過ぎてほとんどフェイクニュース状態、姉妹が操縦した船はエンジン故障でダンケルクどころか英国領海を出てすらいなかった… というプロットの映画です、いわゆるバック・ステージものと言われるジャンルになるかと思います。映画製作の裏側を見せる作品はいろいろありますが、本作のヒロインは脚本家で脚本家の視点で撮られているところがその手の映画としては珍しい視点だと思います。“予期せぬ出来事が続いて撮影現場が混乱する”というのが定番のストーリーテリングですが、この映画ではそのシークエンスが割と抑え気味で、そのためかコメディ色が薄くなっています。ベテラン名優役のビル・ナイは確かに彼らしい役柄で光っていますが、全般にヒロインを含めて主要キャストが地味な顔ぶれなのがなんか弾けてない感を強くしてしまっている気がします、まあそこがいかにも英国映画というテイストなんですけどね。登場キャラやその周辺の人々がぽつりぽつりと空襲で死んでゆくのがリアルなところなのかもしれませんが、ヒロインと恋仲になる脚本家が死ぬところだけは「そんな死に方ありか!」とただただ驚いてしまいました。 決して悪い映画だとは思いませんが、観客の期待する水準までには達しなかったなというのが正直な感想です。コメディ要素がもっと強い方が良かったかと思います。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2019-07-26 23:39:26)(良:1票)
6.  女王陛下の007 《ネタバレ》 
自分でも意外なことに、今回生まれて初めて『女王陛下の007』を観たことに気が付きました。公開当時はジェームズ・ボンドがショーン・コネリーじゃないということに強烈な違和感があったのですが、観てみるとこれは子供が観ても理解できない、大人になって観て初めて真価が判る種類の映画です。まさか007シリーズでホロリとさせられるとは、想定外でした。正直、本作は今まで自分が観た007シリーズの中でもトップクラスの出来で、近年になって世間の評価が高まってきたというのは納得です。 まずサントラが抜群にイイ。サッチモが歌う「愛はすべてを越えて」はもちろん知っていて好きな曲ですが、本作の主題歌だったとは迂闊にも知りませんでした。このアレンジが全編に流れるだけでエモくなります、あの騒々しい“ジェームズ・ボンドのテーマ”がオープニング以外では上映2時間を過ぎてからほんのちょっとだけ流されるにとどまっているのも、ナイスです。イオン・プロが関わっていないジョン・ヒューストンの『カジノロワイヤル』を除けば、本作のサントラはシリーズ中で最高なんじゃないでしょうか。アクションも抑制気味なのも良かったです。アルプス山中が舞台なだけあってスキーに始まってカーリング(現在行われている競技とは細部がだいぶ違ってました)そしてラスト・チェイスはボブスレーと、まるで冬季五輪とタイアップしてたみたいです。今回の悪役ブロフェルドもシリーズ恒例の“何がしたいのか良く判らん症候群”が重症です。「ウィルスばらまくぞ」と国連を脅迫した見返りが自分の恩赦と引退後の爵位の保証って、えらいみみっちい、金正恩の方がはるかに器がでかい(笑)。それにしても、ブロフェルド、スキー上手すぎでしょ(笑)。 そしてついにジェームズ・ボンドが結婚、それも欧州でNO.2の犯罪組織のボスの娘!結婚式でベソをかいているマネーペニーおばちゃんが、抱きしめてあげたいほどいじらしい。そしてご存知悲劇の幕切れとなるわけですが、ボンドよ、なんでブロフェルドの死体確認をしなかった?テレサの死にはお前の責任が多々あるぞ! でもやっぱ本作のボンドはジョージ・レーゼンビーで正解だったのかもしれません、ショーン・コネリーやロジャー・ムーアだとだいぶテイストの違う映画になってしまったでしょうね、悪い意味で。
[DVD(字幕)] 8点(2018-05-29 22:53:03)(良:1票)
7.  シンプルメン 《ネタバレ》 
これぞまさしくNYインディース、って感じでしょうか。全然毛色が違いますけど、同時代に活動を始めたタランティーノと較べてみたくなるんですよ。ハル・ハートリーは映像に凝る趣味は持ち合わせていないみたいですが、登場キャラたちのうだうだした会話を見せられているようでも、セリフ自体は良く磨きこまれています。ジョン・バークがケイトを口説くシークエンスを観てください、彼の無駄がない研ぎ澄まされた口説き文句は、まるで一編の詩の朗読を聞かされているような感じがしました。なんの脈絡もなくマドンナを批評する無駄話が始まって、こんなところもタランティーノ風なのかな。いわばハル・ハートリーは思いっきり上品なタランティーノと呼べるかもしれません。また登場人物たちがキャラ自体は真面目な設定なのに、それぞれがどこかオフ・ビートな一面を見せるところが面白いんです。まあそれを言えば、あの有名なダンス・シーンも思いっきりオフ・ビートだったですね。この独特の空気感は、ちょっとはまります。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2018-05-23 23:16:43)
8.  ジェーン・ドウの解剖 《ネタバレ》 
グロ耐性が低い人にはしんどい映画化もしれませんが、正直言ってしまうとこれは掘り出し物でした。前半は推理ミステリー仕立てで話が進み、後半は怒涛のホラー展開。低予算・B級にしてはブライアン・コックスやエミール・ハーシュといったそこそこ名が知られて俳優を起用しているので?でしたが、あの『トロール・ハンター』を撮った監督のハリウッド進出第一作だったんですね、納得しました。家業で解剖検視と火葬を営むなんて日本じゃ想像もつかない話ですが、アメリカのど田舎だったらこういうのもありなんでしょうね。そして怖がらせ方が実に上手い。死体の足首に鈴をつける由縁なんか、とても効果的な伏線になっています。カーブ・ミラーに映る人影や猫の死など、説明過多にならないストーリーテリングも好みでした。 でも何とも壮絶なのはジェーン・ドゥ、つまり死体を演じた女優で、文字通り全編にわたって全裸の死体で押し通してしまいます。もちろん死体だから身動き一つせず、解剖台に載せられる時と瞼をこじ開けられるところだけしか身体が動きません。もうこれなら別に女優を使わなくても精巧なダミー・ドールで撮影することもできたんじゃないでしょうか。まあここまでの死体演技(といっても動かないだけですが)を見せてくれる映画は正直初めて観た気がしますし、彼女の女優根性には脱帽です。
[DVD(字幕)] 7点(2018-03-07 22:41:16)
9.  ジプシーのとき 《ネタバレ》 
エミール・クストリッツァにとっては『パパは、出張中!』と『アンダーグラウンド』の間で撮られた作品ですけど、本作以降に濃厚になってくるいわゆる“クストリッツァ印”が確立された映画です。まず動物、これについては七面鳥ということでまだ小粒です。クストリッツァ映画には欠かせない“宙づり”はなんと家が宙づりにされちゃいます。元祖宙づりは、対象が人間じゃなくてこんな大物だったんですね。そして忘れちゃいけないのがジプシーブラスと幻想シーンです。序盤にある川の中で繰り広げられるジプシーたちの祭りは凄く荘厳で心に響いてきます。ストーリーはひとりのジプシー青年の転落の軌跡という感じの物語となります。この俳優は『パパは出張中!』と『アンダーグラウンド』にも出演している当時のクストリッツァ映画の常連俳優ですけど、本作の10年後に29歳で亡くなってしまったそうです。 結婚式のシーンで始まり葬式で終わるというのはいかにもクストリッツァらしいストーリーテリングでしたが、長年観たかった作品でしたのでDVD化には感謝でございます。
[DVD(字幕)] 7点(2016-03-08 20:57:50)
10.  ジャッジ・ドレッド(2012) 《ネタバレ》 
スタローン版のせいでどうしてもイメージが悪くて可哀想なんだけど、最近のマーヴェル・コミック映画とは一線を画したダークな世界観が素晴らしい。主演のカール・アーバンはメットを被りっぱなしでとうとう最後まで素顔を見せずじまいでしたけど、これもある意味いい役者根性と言えるでしょう。ルーキー・ジャッジのオリヴィア・サールビーは 反対に被らないで通したけど、“ヘルメットの装着すると超能力が使えない”というのは実に上手い説明です。たしかにアーバンはどうでもいいけど、彼女のルックスを堪能できるのは眼福ですよね(笑)。 それにしても、ここまで顔面破壊に拘った映画には初めて出会った気がします。これはかなりエグくて痛そう。展開が気のせいか『ザ・レイド』にそっくりになっちゃってるのは、まあご愛敬と言うことで。でも8万人が居住している200階建てのビル、そして8億人がうごめくアメリカ東部全体ぐらいの規模を持つメガシティなんて、もうそのセンス・オブ・ワンダーには痺れてしまいますね。バルカン砲で撃ちまくられても無事だったり銃弾が命中してもまるでプレデターみたいに応急処置が出来たり、などご都合主義なところはありますがシンプルながらも見応えは十分でした。 カール・アーバン自身が署名活動しているそうですが、続編製作は難航しているみたいですね。私もドレッドとアンダーソンのコンビをもう一度観てみたいので、署名してみようかな。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-06-13 23:08:49)
11.  ジンギス・カン(1965) 《ネタバレ》 
オマー・シャリフがテムジン/チンギス・ハーン、その妻ボルテがフランソワーズ・ドルレアック、その他のキャストも米英の俳優でチンギス・ハーンの生涯を描くというキワモノ的な映画です。かつてジョン・ウェインがチンギス・ハーンを演じている『征服者』という珍品大作があって余りのひどさに笑いのネタにされていましたが、10年も経って懲りずに同じ様なコンセプトで撮るとはプロデューサーも大した度胸です。オマー・シャリフのテムジンはそりゃジョン・ウェインよりは格段にマシですが、やはりこの時代ならユル・ブリンナーにやらした方が様になってたような気がします。私の想像ですけどこの企画は最初はユル・ブリンナーにオファーがあったと思いますよ、でも彼はクレバーなので断ったというのが真相なんじゃないでしょうか。 ジャムカに父を殺されてとらわれの身となった族長の息子テムジンは、ある日脱走して自分の部族を再興する。勢力を増してきたテムジンは中華王朝の大使を助けた縁で都に行き、皇帝に信頼されてその将軍となって戦う… ちょっと待った、ええそうなんです、実はこの映画は韓流歴史映画の様な史実無視のファンタジーなんですよ。皇帝を殺して部族を統合して世界帝国を築きました、と最後の辻褄だけは合わせてますが、その最期もジャムカと決闘して負った傷がもとで死ぬという独自性に満ち溢れたストーリーです。ユーゴで撮影されたそうですが、自然や地勢がどう見たってモンゴルや中国には見えません。ちょっとチャチなところも有りますが都(北京のつもりか?)のセットや宮廷衣装はそれなりに造りこまれてはいます。合戦シークエンスも名手ジェフリー・アンスワースが撮影監督だけあって見せるべきところはキチンと見せてくれます。脇を固めるのも演技力ある名優を揃えており、中でもジェームズ・メイスンが印象的でした。西洋人が感じている東洋人感のカリカチュアなのか知りませんが、メイスンは薄ら笑いを浮かべた表情で全カットを押し通したんですからね。そしてフランソワーズ・ドルレアック、まさか彼女が金髪のモンゴル人だなんてなんか凄いものを見せられて得した気分です。 でもねえ、チンギス・ハーンが中華皇帝に仕えて「皇帝陛下!」なんて言ってるのを見せられると、もう見続けてゆく気力が無くなってしまいそうでした。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2015-04-22 22:22:15)
12.  紳士同盟(1960) 《ネタバレ》 
プロットというか設定は『オーシャンと十一人の仲間』に酷似しています。舞台が英国で元将校ジャック・ホーキンスが集めた連中がかつての戦友じゃなくて軍を不名誉除隊となった互いに見ず知らず同士というのが『オーシャン』との大きな違いです。普通ならこの海千山千な男たちが持つ特殊技能や仲間内の確執で話を引っ張るものですが、親玉ホーキンスが飄々としているせいか実に淡泊なストーリー・テリングです。いつもそのいかつい顔を活かしたキャラが多いホーキンスも、こんなにとぼけた役もこなせるとは御見それいたしました。 犯行が露見するネタには「こんなことでばれるか?」とちょっと疑問が湧きますが、あのラスト・カットを見れば「ああこれがやりたくてこの映画を撮ったんだろうな」と思わせるようないい味がありました。
[DVD(字幕)] 6点(2014-01-19 22:24:40)
13.  勝利への脱出 《ネタバレ》 
第二次世界大戦の捕虜収容所脱走映画ってたいがいは実話ものだけど、この映画は珍しくフィクション。まあフィクションならもっと弾けるバカっぷりがあってもいいけどね。 それにしても、捕虜たちの服装が綺麗すぎて実感を損ねている。『戦場にかける橋』の英軍捕虜のズタ袋を被った様なボロボロの軍服とは好対照です、もっとも『戦場にかける橋』はビルマだからハダカでも何とかなりそうですが。ドイツ軍将校の軍服がまた考証が行き届いているのは感心したけど、騎士鉄十字章(喉元にぶら下げている鉄十字章)をつけた将校が多すぎるのはちょっと興ざめです。この勲章、全軍で7,000人しかもらってないんですから。でも、スタジアムでナチ党関係者はナチ式敬礼、国防軍の軍人は普通の敬礼ときちんと見せているところなどは印象が良かったです。 ペレをわざわざキャスティングした割にはあまりに見せ場が少なくてもったいない限りです。肝心の試合の見せ方が単調すぎると言うのはちょっと致命的で、サッカーに縁が薄いアメリカ人のジョン・ヒューストンがメガホンをとったのがそもそも失敗だったかも。
[CS・衛星(吹替)] 6点(2012-10-20 20:50:45)
14.  銃殺(1964・英) 《ネタバレ》 
キューブリックの『突撃』のプロットを英軍に置き換えた様な感じですが、もとは舞台劇だったそうで、戦場の廃墟が軍事法廷となりあと映されるのはハンプ二等兵が監禁されている室内だけでほとんど密室劇の様な展開です。弁護人のハーグリーブスをダーク・ボガードが演じているので、『突撃』のカーク・ダグラスとは打って変わってポーカーフェイスでお行儀のよい弁護を展開しますが、その冷淡な弁論に徐々に感情がこもってゆく演技が秀逸です。ハンプ二等兵は個性がない平凡そうな男で、その当り前さが戦場にいる普通の兵士たちを代表している様な演出です。 弁護は成功したかの様に見えましたが、「攻撃前に士気を高める必要がある」という将軍からのお達しで判決はあえなく有罪・銃殺。なんの救いもない結末ですが、「彼にはなんの軍功もない、ただ生き残ってきただけの臆病ものだ」「生き残ることが罪だとおっしゃるのですか?」、このやり取りに重い反戦のメッセージが込められていました。
[DVD(字幕)] 8点(2012-05-09 22:25:03)
15.  ジョン・レノンの僕の戦争 《ネタバレ》 
ジョン・レノンはいちおう出てますけど、あまり目立たない役です。この映画の出演のために切ったそうですが、それでも彼の短めのマッシュルーム・カットは周囲からは浮いてましたねー。レノンより遥かに存在感を見せてたのはジャック・マッゴーラン(『エクソシスト』でリーガンにぶっ殺される映画監督です)で、ほとんど彼の独演会みたいな印象でした。この映画、まるでキャロル・リードの『最後の突撃』を思いっきり茶化してパロディにした様な内容で、まあ、無能な上官のせいで兵士がバタバタ死んでゆくという本作のプロットの方が現実に近いというのが強烈な皮肉です。「戦場にクリケット場を造れ!」なんて不条理な設定は非常にシュールで面白いのですが、戦場が北アフリカからヨーロッパに移ってからは普通の戦争映画みたいになっちゃって、どうせなら「クリケット場を造って転戦してるうちに戦争に勝っちゃった」というストーリーの方がはるかに良かったと思います。笑いのセンスは実にベタで、悪い意味での英国調なのですが、監督のリチャード・レスターは生粋のアメリカ人というのは実に不思議です。
[ビデオ(字幕)] 4点(2011-10-28 18:35:50)
16.  地獄へ秒読み 《ネタバレ》 
第二次世界大戦で敗戦直後のベルリンで、不発弾の処理を仕事とした6人の男たちを描く『ハートロッカー』をはるかに先取りした様なプロットです。でもこの6人は占領軍にとっては単なる復員してきた元ドイツ軍兵士で、任務に失敗して死んでしまっても構わないいわば捨て駒なのが現実。不発弾処理も爆弾一発につきひとりしか割り当てられず、装備もつなぎの作業服だけでヘルメットぐらい被らせろよと言いたくなるぐらいの軽装備です。監督がロバート・アルドリッチですからこの不発弾処理の過程を手に汗握るサスペンスとして見せてくれると当然期待するわけですが、それがこの映画、肝心のハラハラドキドキが全然ダメなんですよ。それはマルティーヌ・キャロルをフューチャーしてるので無理やりジャック・パランスとのメロドラマにしようとして見事に失敗しちゃったせいもあります。男くさい映画を撮らせたら天下一品のアルドリッチも、さすがにメロドラマっぽいお話しでは単なるヘボ監督だったんだと思いしらされました。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2011-05-26 23:02:51)
17.  邪魔者は殺せ 《ネタバレ》 
なんでも英国映画で初めてIRAの活動が描かれた作品なんだそうです。冒頭に「この映画は組織の活動を描いたものではない」という曖昧なテロップが出るところを見ると、まだ遠慮というか配慮があるみたいですね。舞台が北アイルランドのベルファストなのでIRA活動家と敵対しているプロテスタントの住民たちも多く強盗に失敗したジョニーは逃げ回ることになるわけですが、『第三の男』の原型とも言える陰影が深いモノクロ映像は一見の価値ありです。ラストのジェームズ・メイスンとフェイ・コンプトンの死の場面は、まるで浄瑠璃の心中物でおなじみの“道行き”の様で、英国製フィルム・ノワール史屈指の名シーンです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-01-27 00:34:24)
18.  ジャーヘッド 《ネタバレ》 
海兵隊兵士の品のなさがとってもリアル、でもこれが現実なのでしょう。こういう客観視というか突き放した撮り方は、監督が英国人ならではと言うことでしょうか。アメリカの最近やっている戦闘は「非対称戦争」と良く言われますが、この映画でも米軍が損害を受けるのが味方の誤爆だけで、とても判りやすい。しかしこの海兵隊の若造たちは、みんな志願して入隊したわけなので、個人的には感情移入や同情は出来なかったですね。青春群像劇として観ることも可能でしょうが、リアルに描けば兵士たちは女と酒にしか関心がないという風になってしまうし、そこはジレンマですね。しかしイラクやゲリラ相手の戦争では軍艦が撃沈される心配はなさそうだし、米軍に志願するなら海軍の艦艇乗り組みということですな(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-05-07 21:53:54)
19.  ジャガーノート 《ネタバレ》 
この映画、公開当時は『ポセイドン・アドベンチャー』的な宣伝がされて自分はあまり食指が動かなかったのですが、じっくり鑑賞すると実は素晴らしい傑作サスペンスでした。そう、本作はパニック映画ではなくサスペンス映画、それもとびきり上出来な海洋サスペンスです。監督がR・レスターですから、冒頭からお得意のシニカルな撮り方が楽しめます。船内の描写にしても、豪華客船ですからおいしそうな料理がつきものですが、厨房で客の食べ残した料理を始末するところばかり何度も映しておしまい、さすがレスターさんやってくれますねー。そしてレスター映画には欠かせないロイ・キニアが可哀想な宴会司会者として笑わせてくれます。実際に荒天の海で巨大客船を使って撮っているのもたいしたものです。CGはもちろんのこと、VFXすら使用してないのですから。クライマックスは、あまりにも有名な「赤か青か」の選択なのですが、リチャード・ハリスのこのシーンでの演技は鳥肌ものです。ハリウッド映画なら俳優に汗だくにさせて演技させるのですが、ほとんど汗を見せずに黙々と爆弾に取り組むハリスには却ってリアリティがあるから不思議です。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2010-05-06 02:34:50)(良:1票)
20.  シャドウ・オブ・ヴァンパイア 《ネタバレ》 
発想は良いんですけどね、この作品。その発想をスタッフが消化しきれていないのですよ、これが。ウィレム・デフォーはメイクも演技も文句なしで素晴らしいのですが、途中まで観ていて、この映画は実はホラー・コメディなのかと思うほどノスフェラトゥが滑稽に見えてしまう。いっそのことコメディに徹した方が良かったと思うのですが、ラストはなんか途中で放り出した様な終わり方で、がっくり。突っ込みどころも多いのですが、そもそもサイレント映画の時代に、あの程度の照明設備で夜間撮影が出来るはずがないでしょう。現実の『吸血鬼ノスフェラトゥ』は、私は未見ですが、異様に白っぽい映像だそうで、当時の技術では闇を撮影するのは無理だったみたいです。そういうことを踏まえたうえで脚本を書かないと、いくらフィクションでも説得力がないでしょう。私のセオリーは、「オスカーの演技賞に出演俳優がひとりだけノミネートされている映画に当たりなし」ですが、この作品でも適中しました。
[ビデオ(字幕)] 4点(2010-03-24 01:45:41)
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