1. MEN 同じ顔の男たち
《ネタバレ》 いやあ、今年観た中でいちば訳が判らなかった映画でした。てっきり私は田舎の村に越して来たら村人の男性がみんなクローンの様に同じ顔だったというホラーを予想していましたが、これが外れたような的中したような微妙な映画です。主人公が気が付かなかったように、屋敷の管理人を演じた俳優が司祭を始め登場する村人全てに扮していたなんて、あまりに違い過ぎて気が付きますかね?妙に長髪の司祭からしてマーロン・ブランドそっくりで、唯一「あれって?」と訝しんだのはマリリン・モンローみたいなマスクをつけて現れた少年だけだったし、これはCGで顔だけ付け替えたのかな?まあ統合失調症の患者の頭の中を映像化しただけのストーリーと切って捨てれば身も蓋もなくなっちゃうけど、フェミニストというか男性嫌悪主義者が喜びそうな映画なのかもしれません。クライマックスというか後半三十分はもう???の無差別攻撃状態でしたけど、中盤に裸の男が庭に現れるけど主人公が気が付かないというところだけは、ゾワゾワする恐怖が味わえました。庭に生えているリンゴを食べるところや、とても教会にあるはずもない不気味で卑猥なレリーフ、なんか宗教的な意味づけがあったのかもしれないけど、こちとらにはサッパリでした。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2023-12-14 22:17:33) |
2. 迷探偵シャーロック・ホームズ/最後の冒険
《ネタバレ》 “名探偵”じゃなくて“迷探偵”となっている邦題がミソのシャーロック・ホームズのパロディもの。私は別にシャーロキシアンじゃありませんので大して気になりませんでしたが、名探偵は実はワトソン博士でホームズは彼が見つけてきた三文役者だったという、熱狂的なファンたちの神経を逆なでする様な挑戦的なプロットです。でもこの飲んだくれでアホなホームズをマイケル・ケインにやらしているので安心して観れました。ワトソンはベン・キングズレーで、この二人の名優の掛け合いは観ていて実に愉しいものです。敵役にはおなじみモリアティ教授も登場で、ストーリー自体はオリジナルながら色んなお約束ごとは盛り込んでいるみたいですね。ヘンリー・マンシーニが音楽担当ですから洒落た雰囲気も愉しめます。 で、肝心のストーリーなんですが、これがちっとも印象に残らない薄味でした。ラストの劇場でのアクションもちょっとは大掛かりなんですが、何と言うか平均的な凡作としか言いようがないですね。ここは二大名優のボケ・突っ込みを漫才として愛でるのが正解でしょう。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2015-07-20 22:06:19) |
3. メンフィス・ベル(1990)
《ネタバレ》 ぶっちゃけたところ、「第二次世界大戦でアメリカは精密な照準でドイツの軍事目標だけを爆撃した」というお話は、西部開拓神話と同様の神聖なメルヘンに過ぎないのです。たしかに当時としてはハイテクなノルデン爆撃照準器は一定の効果があったが、爆撃目標が砂漠の真ん中にあるわけではないので、周囲の市街にも爆弾は落ちて民間人も多数が犠牲になっています。爆撃機の搭乗員に責任が問われることはありませんでしたが、たぶん当時の搭乗員たちは地上で何が起こっているかは考えないようにしてたでしょう。 だからM・モディーンの機長が「目標の周囲には学校や病院がある」と言って爆撃進入をやり直させる偽善的なシーンが私は反吐が出るほど嫌いです。こんなことは実際には起こり得なかっただろうと確信しますし、かような幼稚な描写など使わなくてももっと違う観点で爆撃作戦の苛酷さをいくらでも表現出来たでしょうに。 この映画は製作時期からして、湾岸戦争の戦意高揚プロパガンダ映画だったと思います。M・C=ジョーンズ監督の作品にはスプラッターじみた描写が多いのが特徴ですが、機首がちぎれて乗員がこぼれ落ちたり空中衝突して真っ二つになったり、本作では人ではなくてB17爆撃機自体をその残酷趣味の対象にしているみたいです。実話をモチーフにし当時の若手俳優を集めて青春映画っぽくしたかったみたいですが、あまりに幼稚な脚本には呆れるばかりでした。 クレジットを良く見ると、なんとフジサンケイ・グループがこの映画に出資していたことに気がつきます。これもあの当時叫ばれていた“対外貢献”のひとつだったんですかね。 [映画館(字幕)] 3点(2013-07-28 22:16:31) |
4. 召使
《ネタバレ》 ジェームズ・フォックスが劇中「魚の様な男」とダーク・ボガートのことを評するけど、これぞどんぴしゃりの表現。無表情というわけではないけどあまり顔の筋肉が動く感じが見えない、まさにお魚の様な顔なんですよ。家の中にある鏡はなぜか円形や楕円型をしていて、そこに映る画がまるで魚眼に映っているかの様なのも、意味深です。こんな演技ができるのは、ダーク・ボガートのほかにはいないでしょう。 屋内でほとんど話が進行するのでこのフラット(屋敷)が影の主人公みたいなもんですが、壁に映る影の映像が多用されてドイツ表現主義の教科書みたい。そして屋外はありふれた風景なのに、名カメラマンであるダグラス・スローカムの静謐なモノクロ映像が素晴らしく、屋内とは対照的である。 最後の悪夢のようなパーティはいまいち意味不明っぽいのではありますが、ハロルド・ピンターの脚本はかなりの完成度だと思います。 今ではカルト映画みたいな位置づけになってますが、本作はジョセフ・ロージーの最高作なのかもしれない。 [DVD(字幕)] 8点(2012-06-23 10:28:46) |
5. めぐりあう時間たち
《ネタバレ》 まるで寄木細工のように重層的な見事な脚本でした。ヴァージニア・ウルフや「ダロウェイ夫人」について何も予備知識なく観たので、始めは三つのエピソードにつながりがあるなんて夢にも思いませんでした。中盤以降の展開で「あっ、そうなのか!」と驚かされましたが、まるで上質のミステリーを見せられたような気分です。三人の女優とも凄い演技を見せてくれますが、特にジュリアン・ムーアが良かったと思います。また、ジュリアン・ムーアのエピソードでは、「ダロウェイ夫人」がまるで「デス・ノート」みたいに彼女を翻弄するのがちょっと怖かったです。そしてこの映画を観て、人間の顔にとって鼻の形がいかに重要な要素であることを再確認しました。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-10-03 02:13:09) |