1. アバター(2009)
《ネタバレ》 素晴らしい! 唯一の3D映画アバター。それは感動の映像体験だ。 スピルバーグはたぶん嫉妬したであろう。 いや、恐らくすべてのクリエーターが嫉妬したであろう美しすぎる映像世界。 個人の芸術家はこの作品を前に何ができるのか。 この世界を創造したキャメロンはまさに天才である。 自分はこんな素晴らしい世界を見たことがない。 ファンタジー世界を崇拝する者にとっては最高の幸せだ。 完璧に構成された見事な一場面一場面に息を呑み、 圧倒的なスケール感と物凄い迫力にただただ感動するばかりだった。 震えるほど美しい場面がある。それはもう美の極致だ。 SFファンタジー映画はこの映画をしばらくは超えないだろう。 内容はエンターテイメントの次元をとうに超えている。 CGで作られた世界はFFなどのゲーム美術に共通するところもある。 しかしFFなんかよりも遥かに美しい。 いや、これはアメリカ版「ラピュタ」といっても良いくらいに幻想的な世界。 ネイティリはどことなくもののけ姫のサンを彷彿とさせる。 色彩的に青が非常に美しく神秘的。 まるで海のように深く静かに輝く幻想的なムードの青に癒される。 また水の表現が非常に美しい。 これはタイタニックやアビスを監督したキャメロンならではの成せる業。 この作品には人間の原始の美しさとエネルギーで満ちている。 この作品を見ると現在に生きる人類はどれだけ霊や自然との一体感を失ってしまったのかと思う。 ナヴィ族の生活は美しく生のエネルギーに満ち溢れる。 そこで生きる強さと逞しさが生命の強さを思わせていて美しい。 獰猛な獣や奇妙な植物たちが埋め尽くす森こそ正に「命」そのもの。 しかしこの作品で行われるのは人類がこれまでにしてきた残虐な行為だ。 軍人たちが神聖な巨大樹を焼き倒すとき神をも殺した。 巨大樹こそ自然の象徴で、それを欲しいもののために破壊する人間の姿がそこにはある。 そういった自分よりも遥かに大きな神聖なものを破壊してしまうことに「畏れ」のような感情はないのだろうか? 戦闘機をはじめとする背景には、キャメロン映画にあるメカデザインのカッコ良さがみられる。 戦闘機に描かれたドラゴンの絵にはドラゴンの霊が宿ってるみたいでカッコいい。 このアバターは映画史の中で唯一3D映画として語られる映画だと思う。 [映画館(吹替)] 10点(2010-01-29 00:07:14)(良:2票) |
2. シャイニング(1980)
《ネタバレ》 始まりの場面からとても強いインパクトを受けた。 広大な大自然を美しい映像で見事に捉えている。 この大自然をスピード感のあるカメラワークで大地を滑るように写しているので、 観ている側が空を飛んでいるかのように気持ちいいのだ。 家族が車の中で「ドナー隊の遭難」の話しをしているが、 それがこの家族の「これからおかれる状況」を暗示している様に思う。 父親の孤独感、疎外感が描かれている。 憔悴し、疲れ果てた父親の表情がヤバい。 ウェンディーがすごいホラーっぽい顔立ちをしている。 ウェンディーが驚くのがとても上手。 「シャイニング」という作品には家族が描かれているんだと思う。 その家族のかかわりが面白いと思った。 そして父親には父親だけの世界があるんだと思った。 家庭的では無いというか、どこか非現実的な、自分のすがりたい世界が。 ハロランさんが食料庫の食材の説明をしている時、とても楽しそう。 ハロランさんの「アイス好き?」っていう表情が一番怖い。 双子の少女はすごい存在感。ただそこにいるだけで怖い。 バーテンのロイドは、照明のあたり方がとても不気味で、どこか陰になっている。 グレーディーにも同様のことが言える。 庭に巨大迷路があるが、それもまた現実世界から非現実の世界に迷い込むきっかけになっているように思う。 床のカーペットの装飾模様もどこか気持ち悪く生きているように見えてきてしまう。 トイレはどこか今までとは違う未来的な空間になっている。 これは父親が「家族側」から「ホテルの住人側」に移るきっかけになっているように思う。 (もしかしたらそれ以前のロイドのお酒を飲んだ時点で悪に身を売っていたのかもしれない。) 食料庫の、食品の缶詰や箱が大量に山積みにされていて、その様々な食品のパッケージ模様が独特の雰囲気をつくっていて面白かった。 だから僕が一番好きな場所は「食料庫」。 やはりキューブリックの映像の魔力はスゴい。 [DVD(字幕)] 10点(2007-12-04 01:56:46) |
3. ストレイト・ストーリー
《ネタバレ》 恥かしいことに“ストレートに心に響く物語”で「ストレートストーリー」だと今まで思い込んでいましたが、 実は“ストレイト兄弟の物語”だったのですね。 これが実に素晴らしい映画です。 イレイザーヘッドをかました鬼才監督の作とは思えないです。 非常に優しく、画面は温かさに包まれます。 淡々と描かれるのは自然の温もりです。 派手なことをしないで面白みを出すのは熟練された表現だと思います。 広大な風景が映し出されるとまるで呑み込まれるような美しさと不思議な陽光の温かみをおぼえます。 旅の途中で様々な人とのふれ合いがあり、そこに人間の温もりがありました。 スローライフやマイペースを自分に取り戻し、自分の欠点までも許し愛せてしまうかのようなヒーリング度の高い癒し映画。 非常にヒューマンな映画ですが、リンチ監督のセンスによるユニークさも見られます。 リンチ監督の「闇」も今回ばかりは自然の中(夜の森の暗闇など)にひっそりと溶け込んでいるようです。 いや、普段から「闇」を見つめるリンチ監督だからこそ、この陽光みなぎる温かみの映画が作れたんだと僕は思います。 淡々としているところに「隙」があり過ぎてそうでいて、実は一切ないという、そして感動は本物という凄すぎる作品です。 (しかし僕は何故かウィンナーがとくに忘れられない) [DVD(字幕)] 9点(2012-06-27 00:05:53)(良:2票) |
4. エレファント・マン
《ネタバレ》 (2009年の映画メモをもとに作成) 昔友人から聞いた話で、記憶も曖昧なんですが、「この作品の本来の姿は”恐怖映画”の類であり、それが何故か日本に入って来た時に”感動の映画”とやたらいわれるようになってしまった」、のだとか。 もちろん定かではなく信憑性も薄いです。 しかし僕はこの作品を初めて観た時に「感動的な映画」だと思い込んでそれを強く意識し過ぎた為か正直いうと「!??」な感じでした。感動は凄く微妙で逆にドロドロと恐ろしい重苦しい場面が残りました。 しかし今回は「恐怖映画」と決め込んで観てみると、、、非常に良質な恐怖映画であり、また深く感動する場面がありました。 2度目にしてやっとヒューマン映画だと気付きました。 ジョンメリックの姿は非常にグロテスクで、それは他のホラー映画とは比べられない程の圧倒的な恐怖とリアルな質感で生理的な不快感を与えます。 それはどのホラー映画でも味わう事の出来ない深い漆黒の恐怖感です。 悪魔のような清掃員の男がいます。いや本物の悪魔です。彼がジョンメリックを客共と引き合わせる場面なんかこれほど残酷な悪意に満ちた場面は他の映画にはありません。 おぞましいです。 作品全体には独特の暗い雰囲気があります。精神的に重いです。 しかしその中でメリックの汚れの無い心の輝きは光ります。 彼の心は美しく澄んで綺麗です。 彼には美しいものを見出す感性があり、美しい物を作り出す才能があります。美しいものに対する尊敬の念を持って、人に対して気品に満ちた美しい態度で接します。 そんな彼の人間的な素晴らしさというか、心の美しさに感動します。 最もグロテスクな肉体をして彼の心には一切の汚れた部分が無いです。 嫉妬とか攻撃性を全く表さないなど僕はとてもできません。 これをみると、肉体とは何なのだろうと考えます。 また「人はなぜ生まれてくるか?」とまで考えさせる程の恐怖映画はまずありません。 メリックは拍手喝采に包まれました。ほんとに素晴らしいです。 最後まで誇らしくあることを選んだメリックに感動しかありません。 フリークスの仲間たちがメリックを逃がす場面がありましたが、圧倒的に美しい場面です。 [DVD(字幕)] 9点(2012-03-21 02:50:45)(良:1票) |
5. ラブ・アクチュアリー
《ネタバレ》 (今年2013年のクリスマスっぽくなさは以上なのですが、) 今年もまた観てしまった。 クリスマスにはたくさんの愛と奇蹟が紡がれるという感動のお話。 とにかく愛にあふれた内容になってます。 いくつものラブストーリーで構成された群像劇ですが そのどれもが一本の映画に値するほど素晴らしい。 それらが束になっているのだからまさに無敵。 人々の愛を多面的に描くことで、 ラブストーリーとは人の数ほどあるのだと知る。 また愛に伴う切なさも描かれていて何か泣けてくる。 大切な人と寄り添い、また相手に自分の気持ちを伝えることを教えてくれるこの映画は素晴らしかったです。 物語が集束に向けて大きく動き出すラストは劇的な感動を巻き起こす。 この大きなうねりは群像劇の中でもレベルは高いと思う。 この映画は大人のクリスマス映画(子供ははやく寝なさい)の理想形。 てか最強のクリスマス映画。 そして 人々の中から愛を見出し描き出してゆくラブストーリーの傑作。 [DVD(吹替)] 9点(2011-12-27 02:13:26) |
6. ロミオとジュリエット(1968)
《ネタバレ》 素晴らしいです。神秘的に美しいです。こんなに美しい物語だとは思ってもいませんでした。 音楽も素晴らしいです。心に残ります。 ヒロインはとても美しいです。黒髪がとても美しかったです。 こんなに激しく愛し合うなんて、僕も激しい愛に死んでみたいものです。 この作品を観た後、まさに放心状態です。 [DVD(字幕)] 9点(2010-01-14 23:13:51) |
7. アポロ13
《ネタバレ》 人命はこんなにも貴いものかと思いました。 この作品では、そういう「命の貴さ」について描いていると思います。 話は違いますが、その日は図書館に行って適当に手にとって開いた本のページに「人ひとりの命は地球よりも重い」と書いてあるのが目に入ったんですが、ちょうどそれです。 この作品では人命がとても重いんです。 地球と宇宙船とではとても距離があって、その距離感というか隔たりみたいなものがとてもよく描かれていたかと思います。、、、 宇宙ってとても神秘的な感じがするなぁと思いました。とても巨大なんです。 そういう宇宙の大きさが素晴らしいです。 (この作品を子供のころに観てしまったが、それはあまりにも大きくて過酷で、宇宙は怖いという印象を、この作品によって強く植え付けられた気がします) この作品では宇宙も素晴らしいですし、宇宙船や機械、スイッチ、ボタンなどの装置も素晴らしいですが、やはり「人間」が見事に描かれている(僕はそう感じた)ので、とても面白いです。 あんなにも過酷な状況だったのに、船を切り離すときに「いい船だった」と言ったのです。そこになんだか自分は感じるものがありました。 ワガママでボケたようなお婆ちゃんでしたが、孫が泣いてしまったときに「大丈夫よ(日本語吹き替え)」って優しく語りかけるところになんだか少し感動しました。 でもでも!僕は言いたいのですが、「諸君 君らは最高のクルーだ」(字幕)と「諸君 一緒に飛べてよかった」(吹き替え)と、この差をどうにかして欲しいんですケド! それに大変失礼なのですが、フレッドさんの(ウ●コみたいな)ゲロに1点を減点させて頂きたいのです(個人的に汚物描写は1点減点)。 あと、ジャックニコスソンに似ている人がいるような、いないような、、、(禿げ方が似ているんです!)。 なんだかこの作品は、観ていてちょっと疲れるので、休日にちょうどいいかもしれません。 ちょっと信じてもらえないかもしれませんが、「命の大切さ」みたいなものを少し感じるかもしれません。 、、、宇宙なんて絶対行かねぇ!俺は行かねぇ! [DVD(吹替)] 9点(2009-12-21 00:12:20) |
8. オーメン(1976)
《ネタバレ》 悪の威厳に満ちた素晴らしい作品だ。 全体的に流れる「秋」のようなメランコリックな雰囲気が良い。 悪魔的なおどろおどろしい音楽も素晴らしいが、平和なときに流れる静かな曲もとても美しい。 川の辺でダミアンがいなくなったと思ったら、ひょっこりと彼が現れる場面が好き。 子守ホリーが自殺する場面はとても素晴らしく、自分の中のホラー映画の名場面だ。 あの迫力!日常の平和を壊してしまうあの破壊力! 自殺する直前のホリーの笑顔にはとても怖いものがある。 黒犬もとても不吉な存在感だ。なんだか影になっている。 ダミアンの目つきは悪の眼光だ。あの目はなんだか冷たく鋭くて怖い。 カメラマンを演じている役者はとても良い雰囲気をだしている。 (カメラマンが死ぬ場面も名場面、、、) ブレナン神父の何かに怯えるような、鬼気迫る表情が良い。彼はとても病んでいる。 神父の説得には威圧するような迫力があってとてもリアルだ。 神父の目からは涙まで流れて、彼の本気な感じが伝わってくる。 乳母のベイロックはとても嫌な感じ! でもかなりの熱演で、そのために嫌な感じがするのかもしれない。 彼女はホントに勝手で押し付けがましくヒステリックな、不気味な笑みを浮かべるベイロックさん、嫌い。 グレゴリーペックは良いですね。この作品をきっかけに好きになりました。 奥さんのキャシーが家の中で「落ちる」場面では、とくに金魚鉢が落ちるシーンが何故か印象に残った。 「子守」「神父」「妻」「カメラマン」がそれぞれ死ぬ場面はホラー映画の名場面だと思う。 それは主人公ロバートにふりかかり、その彼の苦悩が伝わってくる。 フロジノーネ修道院の鐘の音、高台から見下ろした修道院はとても静かで厳粛な雰囲気で素晴らしかった。 後味は悪いです。 でも、この重い厳粛な雰囲気は素晴らし過ぎる。 僕はホラー映画を「スプラッターホラー」か「ゴシックホラー」かに区別する癖があるが、 そうするとこの作品は厳粛な「ゴシックホラー」だと思う。 悪魔がとても崇高なものとして厳粛に描かれている。 悪魔という存在とちゃんと向き合い、悪魔を圧倒的なスケール感とリアリズムで描いているオカルト映画の傑作です。 ホラー映画でここまで崇高で厳粛な作品はなかなか稀かもしれない。 [DVD(吹替)] 9点(2008-03-09 01:16:53)(良:2票) |
9. ブラザー・サン シスター・ムーン
《ネタバレ》 聖人とはどういう人のことをいうのか?無欲であるとはどういうことであるのか? この映画の主人公フランチェスコは本物の聖人像です。 ここまで自分を投げ出した姿を見ると感動しか覚えません。 非常に清々しいです。 牧師さんは神に仕えながら豚でいます。 そこに聖人との違いがあります。 フランチェスコみたいになるなんて無理なんですが、でも彼の姿を見ると心が癒されました。 人間は欲を持って生まれたものですが、フランチェスコはその欲を完全に捨てきったところを僕は尊敬と感動を覚えます。 フランチェスコは欲に負けた者さえ心優しく受け入れます。 フランチェスコの言葉には人の心を癒す力があります。 フランチェスコには一切の暗さがありません。 それとは別に 「キリスト教」を構えて攻撃の手段に出る人は神の名を偽り自分も偽ります。人の心も惑わします。 フランチェスコの歌う音楽は美しいです。 神秘的な映像とも美しい風景ともよく合います。 宗教の厳粛な雰囲気も漂っていて、教会の音楽はとても荘厳で神々しくて怖い位です。 キリストの目が開くとき、あの場面は神がかり的な迫力があります。 王が最後にとった行動はとても衝撃的でした。 フランチェスコの愛の大きさに涙が溢れて、大きく感動しました。 少しでも聖フランチェスコに人格が近づきたいと思いました。 [DVD(字幕)] 9点(2008-02-09 01:34:00) |
10. ストリート・オブ・クロコダイル
《ネタバレ》 面白いというより大好き! 「ストリートオブクロコダイル」の長さは、短くて良い(短いほど集中できるから)。 動きがとても美しい。 とても滑らかで心地よく、でも独特の動きが美しい。美意識! 独特の雰囲気も古惚けた質感も良いです。 アニメーションに詳しくないので「ヤンシュバンクマイエル」と比較してしまう。 「ヤンシュバンクマイエル」は漂白剤がかかったような色あせた質感が古ぼけていて、それがどこか風化した楽園的なものを感じさせる。 「ストリートオブクロコダイル」は全体的に暗闇で薄暗い、光と影のコントラストがとても良いと思う。 アニメーションは密室で展開するのが面白いと思う。 現実と隔離された全く嘘の世界で、そこは箱庭のユートピアのよう。 独特の暗い雰囲気。古惚けた質感。 この暗い退廃的な場所にどこか居心地の良さを感じる。 憂鬱な音楽、でも途中で入るヴァイオリンの旋律の美しい音楽がこの作品に高揚感をあたえる。 内臓が出てくるのは良いのです。 しかしそこに釘がたくさん刺さっているのは痛々しいものがあります。 一瞬だけ映る人形の表情にゾッとする。あの顔は、、、 [DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2007-12-31 00:01:33) |
11. 小さな恋のメロディ
《ネタバレ》 これは何度観ても色褪せないです。 ノスタルジックな町並み、ミュージック、子供の楽園、、、 僕が子供のころに見た夢がそこにあるように思った。 「少年」から見た「少女」はとても不思議で神秘的な生き物であり、それが学園の中でとても不気味に存在している(少女は神秘的なパワーを放つ存在)。 「少年」と「少女」との「世界の違い(故郷の違い)」というものが、見事に描かれているが、しかし学園の中ではそれらが同じくらいのエネルギーでもって渦巻いている。 「中性的」な主人公の少年「ダニー」は、その「少年の世界」と「少女の世界」との間をさ迷うのである。 だから「ダニー」の存在は中間に位置する。 「少年達の遊び」と「少女達の遊び」を覗き見て、中性的な存在の「ダニー」はどちらか迷う。 迷っているからこそ、隠れてオドオドしながら覗き見しているのだと思います。 「ダニー」は少年達が爆弾を作る「遊び」を覗き見る。 「ダニー」はお墓での少女達の「遊び」を覗き見る。 「少年の世界」と、「少女の世界」を見事に対比させていると思う。 「少年」と「少女」はお互いに別々の集団を形成し、その間は目に見えない確かな境界線で仕切られている。 また、それと同時に、「子どもの世界」と「大人の世界」をも対比させている。 「子供の世界」が楽園で永遠であるかのようなのに対して、 「大人の世界」が醜く下品に描かれていると僕は思うのです。 主人公「ダニー」は「悪ガキのトム」と、「恋する少女メロディ」との間を行き来する。 「トム」と、「メロディ」も、また上手く対比されていると思います。(「ダニー」と「トム」との関係が同性愛っぽく見えたのは僕だけかな?) 「メロディとのデート」と「トムとのデート?」これまた対比!? この映画、相反するものどうしを対比させまくりだ。 でも、それよりも少女という神秘的な生物を見事に描き出している。 「お墓での戯れ」もそうだが、「バレエの授業」を覗き見た時の少女の妖精のような姿、校舎を歩く少女達の奇麗な生脚!とてもエロティックで神秘的だ! 食堂でダニーが「隣に座っていいかい?」と少女メロディに尋ねるシーンは、とても恥ずかしくて見られない! この映画は爽やかなハッピーエンドですが、その裏にあるどこか陰(毒?怪しさ?性?)があり、それがとても魅力的な雰囲気を放っている。でもやっぱ「純粋」だぁ! [DVD(字幕)] 9点(2007-12-23 05:46:10)(良:2票) |
12. アリス(1988)
《ネタバレ》 シュヴァンクマイエルのアニメーション映画の最高傑作。 カルト性と芸術性が非常に高い。 アリスが最高に可愛い。 シュヴァンクマイエル独自のアリスワールドであるが、 この人はアイディアの鬼であろうか。 ただでさえシュールな原作をさらに不条理にし、見てる方は混乱させられる。 全く一筋縄ではいかない、常識を裏切られる面白さがある。 音の使い方が独特で、物の質感が伝わってくる。 童話の世界であるがとても気味が悪い。 幼い頃に絵本(ヨーロッパの古い童話など)に感じた怖さと近いものがある。 ウサギとかキ×ガイとしか思えない怖さだ。 [DVD(字幕)] 9点(2007-12-04 01:42:28) |
13. エコール
《ネタバレ》 とても神秘的です。夢、王国、楽園、天国といったような風景がそこにある。 その「現実」から隔離された「王国」で少女達が戯れる。 5つの寮に分かれているとか、外灯に沿って歩くとか、そういったシステムというか秩序みたいなものがとてもシュールで怖かった。 寮に番号をつけたり、少女たちが見えないものに管理されている感じが良い。 また少女達を管理している「黒幕」みたいな存在がどこにも見当たらないのが怖い。 柱時計などのオブジェもとても良い雰囲気を出している。 音楽も極力使わないで、鳥のさえずりや木々のざわめきが静寂的で耳に心地よく、神秘性を高めている。 どこかPCゲームの「ミスト」を連想させられる。 「ゴシックロリータ」っていう単語がありますよね。 「少女」と「棺桶」、この二つの相性はとても美しいと思う。 「少女」と「死」、この二つは美と酷の相反する物の対比で、それがとても美しい(エロティックな)のかもしれない。 でも少女ならアジア系よりもヨーロッパ系のほうが絶対に美しいのにね。。。 観ていてとても不安になる。とても神秘的な作品。 [DVD(字幕)] 9点(2007-12-04 01:25:42) |
14. エイリアン
《ネタバレ》 とてもいい! なんかもう、「エイリアン」という文字が浮かび上がってくるところからカッコいい。 並外れたセンスを感じる。 デザインが素晴らしい。 ギーガーのクリーチャーデザインはもちろんのこと、背景の宇宙船や装置がとても良い。 それが過剰じゃなくて、必要最低限の機能的なデザインだからリアルに感じる。 今観ると、「昔のSF映画」の良さがあると思う。 色彩は色鮮やかというよりも、むしろモノクロで、その色あせた感じが落ち着いていてカッコいいと思う。 宇宙の「黒」と、宇宙船の銀色がかった「白」とが対比されているように思えた。 エイリアンは生物的だけど、どこかメカニカルな感じがする(ロボットとは違う)。プラスチックとか、そういう無機質な感じがするけど、デザインが昆虫のように複雑な形態でグロテスク(生物的)だ。 なんだかエイリアンの赤ちゃんは「男性器」にしか見えない。 エイリアンは暗闇に隠れてあまり表に出てこないし、人が殺される(過剰な)描写もあまり出てこない。しかしそこがいい!あえて見せない。だから映像がうるさ過ぎないでリアルだ。 そして静寂的な怖さもあり、暗くて不気味な雰囲気もあり、全体的にクールだ。 また、この頃は「組織」の存在感も不気味だ。 そして独特のリアリティがある。 やはりシリーズ第一作目はリアリティを徹底している。 [DVD(字幕)] 9点(2007-12-04 01:18:27)(良:2票) |
15. 時計じかけのオレンジ
《ネタバレ》 暴力が描かれますが凄い恍惚感があります。 不思議な音楽です。 音楽と映像が作り出すこの孤高で深遠な雰囲気はまさに芸術的です。 スタンリーキューブリックの映像の美しさはシンメトリーな構図にあるような気がします。 この作品はキューブリックの作品の中で最もアートな印象を受けます。 暴力がテーマだと思いますが、その不快さを美しく見せるコンセプトは分かりづらかったですが、 ただ凄いものを見ている感じです。 また暴力が絡んだ因果応報みたいなのが面白かったです。 あれだけ好き勝手していたアレックスちゃんが気に毒になっちゃうところが大好きです。 逆流性胃炎になってしまいそうなゲップの演技でした。 あと作家おじさんの変顔が最高です。霊気みたいのが出てるかもしれません。 派閥争いを始めとする全ての事柄は世の中の仕組みが描かれている気がします。 正直分からないことも多いのですが。 描写や技巧が洗練され過ぎていてそれを言葉で表現しようとすると無理があるくらいです。 [DVD(字幕)] 9点(2007-09-18 23:59:32) |
16. ゼロ・グラビティ
《ネタバレ》 ゼログラは未体験の無重力体験を味わえる映画でした。 無重力の法則をここまで見事に再現した映画を自分は見たことがなかったです。 スローなのにハラハラするアクションはちょっと新しいと思います。 主観でとらえた場面からは臨場感が伝わります。 広大な宇宙に取り残された絶望感を自分は初見ではあまり感じ取ることができませんでしたが、 無重力で起こる様々なことが怖いと感じました。 (映画作りをしたことがない素人の意見ですが、 もっと人間が宇宙にとって小さなものであり、宇宙空間が無であることを伝える描写がさらにあればなお良かったです。 私の理解力の問題かもしれませんが、あるいは視点が主観に近いからなのかもしれませんが、これはごく個人的な感想です。) 宇宙のシーンは美しく神秘的で、音楽もそれを助長させていました。 ラストは重力の偉大さと壮大さを感じさせました。 「宇宙船とヒロイン」が「胎内と胎児」を思わせるシーンがありました。 [DVD(字幕)] 8点(2016-06-09 23:27:48) |
17. ロッキー・ホラー・ショー
《ネタバレ》 ハロウィンの時期に見ましたが最高のテンションにさせてくれる映画です。 不気味で退廃的なのに最高に愉快でご機嫌な映画です。 世の中に蔓延する不安や不幸を一気に吹き飛ばすパワーがあるかもしれません。 倒錯的な世界観が現実をどうでもよくさせます。最高に明るいです。 パーティー的な楽しさが究極レベルです。 音楽が最高に良かったです。 怪奇映画の恐怖演出のツボを押さえていて、 その胡散臭さが効果的に使われていたと思います。 [DVD(字幕)] 8点(2015-11-17 21:53:48) |
18. 凶人ドラキュラ
《ネタバレ》 これぞ本来のドラキュラである、とでもいうかのような迫力のあるドラキュラ役が好評価。 名優クリストファー・リーが演じるこのドラキュラを正統派といわずしてなんといおうか。 ドラキュラの復活のシーンがよくできている。 儀式がオカルトらしくていい。 この映画の牧師さんはかなりワイルドだ。 聖典の代わりに銃を担いでいる。 ドラキュラの最後って大体の想像はつく。 心臓に杭を打たれるか日の光を浴びることでその呪いの歴史に終止符を打つドラキュラ映画は多いと思うけど、 この作品のドラキュラの最後は少し独特なのかも。 本来のドラキュラの恐怖が味わえる希少な映画であると思う。 [DVD(字幕)] 8点(2013-12-11 21:58:02) |
19. ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館
《ネタバレ》 ダークで幻想的な雰囲気が支配する映画。 古典怪奇映画の魅力をリバイバルさせ今に伝えるのはさすがハマー。 老舗レーベルならではの本格的な演出が光る。 まさかリアルタイムでハマーホラーが見られるなんて思ってなかった (検索してたった今知ったが「ぼくのエリ 200歳の少女」のリメイクもハマーフィルムだった)。 とにかく村の雰囲気が陰鬱で美しい。 古城(洋館?)、酒場、濃霧、沼地など これぞ怪奇映画といった妖艶な雰囲気が見事。 しかし古惚けてはいるが最近の映画らしいスタイリッシュさはある。 ゴシックホラーではスリーピーホロウ以来の衝撃。 それでこの映画は美しいロリータが沢山出てくる。 まさにゴシックロリータというものがこれほどまでに効果的に使われている 映画は希である。 少年の霊よりも少女の霊が多いのはたぶん こういった雰囲気の映画では、少年よりも少女のほうが幻想的な雰囲気を作り出すアイコンとしては役立つからかもしれない。 ウーマンインブラックというタイトルの通り漆黒の黒さが凄い。 因縁の深さと暗さがあり呪いの恐ろしさと伝染性が見事。 ハマーホラーというとモンスターホラーが主流であるという印象だったが この作品のジャンルは幽霊のホラーだ。 正直いって外国の幽霊のホラーは怖くないという印象であったが、この映画の幽霊はマジ怖だ。 ほんとどんだけ怖いんていう後半の恐怖のコンボが観客を恐怖に陥れる。 ゴシックホラーとしては完璧。ハマーホラーリバイバル。 (主役はハリーポッターのダニエルラドクリフ君であるが無精髭まで生やして大きくなったものだ。 しかしハリーポッターのころから賢そうなイギリス顔してるなと思っていたので、 こういった雰囲気の映画には結構あっている。 もしかしたらそのうちに彼はティムバートン監督にも見初められるかもしれない。 彼は妻を失った主人公の喪失感を見事に演じている。) [DVD(字幕)] 8点(2013-07-14 13:59:15) |
20. 吸血鬼サーカス団
《ネタバレ》 かなり面白いハマーホラー。 その昔、シュテッテル村では少女が次々と行方不明となっていた。 犯人はその土地の城主で彼は吸血鬼だった。 村人は結束して吸血鬼を倒した。 しかし村は吸血鬼によって呪われてしまった。 十五年後、黒死病の蔓延する村に奇妙なサーカス団がやってきた。 彼らの正体はおおよそ吸血鬼だった! 村人と吸血鬼サーカス団との大戦! 従来のハマーホラーのヴァンパイア映画と比較すると エンターテイメント色が強く怪奇色は減ったのかもしれないが、 しかし中世ヨーロッパの雰囲気は色濃く、サーカスと吸血鬼の組み合わせによって怪しい雰囲気は増した。 物語がすすむテンポは良いと思う。 美男美女が多いだけでなくキャラクター性が凄く高い。 キャラクターだけで楽しい映画だ。 ドーラがめちゃくちゃ美少女。 黒豹の男がイイ表情してる。 森で獣に襲われる悲惨なスプラッタ描写が強烈。 怪奇映画とエンタテイメントとが見事に一体化した傑作怪作ヴァンパイア映画。 [DVD(字幕)] 8点(2013-04-12 00:04:55) |