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tottokoさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2005
性別 女性
自己紹介 周りに映画好きな人があまりいない環境で、先日はメリル・ストリープって誰?と聞かれてしまったりなのでこのサイトはとても楽しいです。
映画の中身を深く読み解いている方のレビューには感嘆しています。ワタシのは単なる感想です。稚拙な文にはどうかご容赦を。  

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21.  フル・モンティ 《ネタバレ》 
賢い子供とダメ親父という構図に私は弱い。本作でもガズの息子の愛おしいことったら。“あーオヤジだめだなー しょーがねえなこの人”と半ば達観しながら、でも好きで行動を共にする。「返せるんでしょ?」と言いながら小遣いから手付金を払う。終盤怖気づいたガズをぴしっと叱咤する。ううー、いい子だあ。一晩だけのショー。おそらく養育費を払ったら、明日からまたすかんぴんの生活は続くんだろう。でも下ばかり向いてないで何かやってみたら、けっこういいことあるのかもねと押し付けがましくなく背中を押された気分。いろいろ可笑しいんだけど、防犯カメラの映像見ながらつい振り付けチェックしてしまうとことか冒頭の“友だちの定義”がイギリスっぽくて面白い。男性ストリップに興味は無いですが・・んーガズなら見てみたいかな。あと“ランチボックス”級だという彼のも。
[ビデオ(字幕)] 9点(2012-04-21 18:48:44)
22.  ホテル・ルワンダ 《ネタバレ》 
ルワンダで何が起こったのか、ドキュメンタリーで知ってはいたけれどもやはり異様な迫力だった。何度でも衝撃を受ける。繰り広げられる理不尽な暴力に、「やめろぉー!」と画面に叫びたくなる。人間に対して絶望しそうになるけれども、一方で一個人の良心のみを信条に大量の難民を匿ったホテル支配人や、蛮勇を奮って戦い続けた国連大佐、身を危険にさらして孤児を助けた赤十字の職員のような人間もいたわけで、手を合わせたくなる気持ちにもなる。舞台は違うけれども以前TVでコソボでの民族浄化の実態を国際的に知らしめようとしていたかの国の代表が、アメリカ人記者に「なぜ我々の税金を使ってあなたたちを助けなければならないのか」と問われていたのを思い出した。彼の返答は「なぜならそれが人間として正しいことだからだ」だったと思う。D・チードルも言っていた。「外の友人に知らせよう。彼らが恥じて手を差し伸べてくれるよう。」“正しいこと”をせずに見て見ぬふりをするのは恥ずかしいことなのだ。渾身のメッセージというのはどすん、と重みをもって伝わるもので、剛速球で飛び込んできたこの映画を私もぎりぎり踏ん張ってなんとか正面から受け止めた。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2012-03-09 18:35:50)
23.  戦場のメリークリスマス
これを観た時の衝撃。それこそ頭をハンマーで殴られたようだった。何もかも美しくて切なくて呆然とした。まだ柔らかかった心に(笑)ざっくり突き刺さった、数々のシーン。脱走兵がボウイと知って一瞬怯む坂本。剣を捨てるボウイ。埋められて首だけ出ているボウイ。音楽。ラストシーンに至ってはたけしすら美しい。安易な涙すら出なかった。この映画を観た後、憑かれたようにこの曲を練習し、D・ボウイを追い求める日々が続いた。気恥ずかしいですが、これほど身も心も持ってかれた映画は後にも先にもこれだけです。
[映画館(邦画)] 9点(2011-12-14 00:06:34)
24.  最後の決闘裁判 《ネタバレ》 
ああ、苦手な中世だ。科学も芽生えてなくて因習ギチギチで人間は争ってばかりの。さすがリドリー・スコット、画の力にかけては当代随一の手腕とセンスの監督です。眼前に広がる石造りの城も荒野も硬くて寒々しい中世ヨーロッパそのもの。画力だけで映画作品としての格の高さを感じます。 主演の三名の演技も良かった。各々の視点に沿って出来事を描く羅生門スタイルであるゆえ、それぞれが三パターンの演技を要求されるのですが、なかでもジョディ・カマーが見事。微妙な表情はちゃんと三通りに違い、三番目の‶本物のマルグリット”がやはりというか一番説得力のある造形でしたよね。 それにしても現代の人権感覚では何もかも理解しがたい話です。実事件とはいえ数百年も前のこと、この映画の解釈とは別の事情があったのかもしれない、とか色々考えさせられました。だって敗けたらマルグリットも火あぶりだなんて。なんでこんな滅茶苦茶な決闘裁判に臨むの二人とも。ああやだやだ中世こわい。 三パターンのドラマを観終えて思うはクソな男どもに搾取されるばかりのマルグリットの心の痛み。封建時代の根底に流れるあまりの男尊女卑の思想にはめまいがしそうになりました。こんな時代でも仲睦まじい夫婦もいたんだよねきっと?そんなお話を聞きたいな。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-06-25 18:14:08)
25.  15年後のラブソング 《ネタバレ》 
中年同士の恋愛もの、とくくるには「惚れた腫れた」感があっさりしていてべたつかず、そこがとても心地よかったです。 アラフォーともなると男でも女でも背負ってきた人生の事情がてんこ盛りで、その分互いに新しい出会いには臆病になるもんですわな。今作では病室でのタッカーの親族大集合の場面がソレで、なんかもう笑っちゃうやら気の毒やら。 主演二人が良いんですよ。イーサン・ホークもローズ・バーンも若々しくて、大人だけど迷走しているところなど共感のツボがたくさん。E・ホークは本作で初めて凄く良い役者に感じました。ハマリ役っていうんですねきっと。 あと、脇を務める熱狂的なタッカーファンのダンカン。この人の、熱に浮かされ気味の空回りっぷりがお話のアクセントになってて巧い作りです。どこの国でも熱心すぎるファンって、対象のアイドルからは(近い気分でいて)遠いモンなんですね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-03-13 23:18:38)
26.  ホテル・ムンバイ 《ネタバレ》 
ホテル・ムンバイの中に連れて行かれたような凄まじい臨場感でした。回廊の中を逃げ惑い、非常階段を駆け下り、背後からあるいは頭上から雨あられと銃弾を浴びせられるような。実話だということで恐ろしさは五割増し、ダイ・ハードを観ていた時の‶ハラハラを楽しむ”心の余裕はゼロです。 そう、マクレーンのような絶対的ヒーローが実話にはいないのです。アーミー・ハマーが手縄をこっそりほどくことに成功しても活躍には至らない。「元」プロ軍人のロシア人ですら丸腰では戦えない。地元警官二人も犯人狙撃に成功しない。この ‶上手くいかなさ”が痛いほどに現実的なのです。 それなりの存在感を与えられていた人物が容赦なく死んでゆく。誰が生き残るか全く読めない。テロのリアルな恐ろしさがここにあります。 犯人らの余りに非道な行いには震えるほどの怒りを感じるけど、こんな凶行に及んだ彼らの目線も織り込んであって考えさせられます。絶望的な格差社会の底辺で貧困にあえぐ彼らの家族。希望したレストランが満席なくらいで機嫌を損ねる金持ちがいる一方で、水洗トイレすら知らずに育つ若者がいる。そしてそんな貧者の心に宗教をもって入り込んで人殺しの駒に使う指導者。悪いのは誰なのか。単純に答の出せない今世紀の大問題をも提起した作品でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-10-16 23:17:26)(良:2票)
27.  少年は残酷な弓を射る 《ネタバレ》 
色んな記事を見るに、衝撃的なこの作品を‶誰の立場で”観るかで感想がずいぶん違うものですね。わたしは子どもを育てた母親であるので、エヴァの身になって観ました。ケヴィンのように難易度の極めて高い子を育てるのは生半可なことじゃあありません。彼女は良くやったと思います。自分のキャリアを続けたい、こんな手のかかる子はしんどい。誰でも抱く辛さです。育児あるあるです。彼女なりに精一杯子に向き合ってるのに、キャパ以上の愛を要求されたってどうすりゃいいのでしょう。 なにせケヴィンはおっそろしく知的レベルが高い。そのうえマザーコンプレックスが強い。彼の母に対する想いは思慕というより執着で、立派なサイコパスといえると思います。あの「時計じかけのオレンジ」アレックス以来の大型物件です。(そういや年齢も同じだ) ケヴィンの狡猾さは幼少時から現れています。母親の失点(骨折事件)は他に漏らさず、秘密を共有しようとする。また、相手によって態度を変える。そんな子は集団の中にはしばしばいますが、たいていの場合大人には見透かされることがほとんど。でもケヴィンは天才的というか悪魔的というか最後まで父親をだまし通すことに成功しています。彼が生来の残酷な性質を見せるのは母親にだけ。捨てずにとってある幼い頃の絵本。求めていたのは母の愛、関心、承認。 ケヴィンの破壊願望がついに臨界点を超えたのは両親が離婚、親権は父親にと聞いたとき。とうとう母に見捨てられるのだと感じたのでは、と推測します。父親のことなどちょろい奴、と軽蔑していたでしょうし妹も憎らしいだけ。世界の全てを破壊してパトカーの中から母を見据える視線は「これでも俺を愛せるかい?」 子育てする全ての親を震撼させる展開でしたけど、エヴァが息子の悪魔性を凌駕するほどの強固な母性を見せるのがこの陰惨な話の唯一の光です。生き地獄に落とされようと、彼女の母性は枯渇することは無かった。かつての若き冒険家は、粛々と息子との運命を受け入れるやつれた母となりました。「分からなくなった」と憑き物が落ちたようなラストのケヴィンの表情が印象的です。 エズラ・ミラーの美貌がケヴィンのキャラクターにぴったりで、同じくどことなく俗人離れした顔つきのティルダ・スウィントンを母親にしたキャスティングの妙が光ります。よく似ているので、ああ親子なんだ、とすっと納得できます。全く別人種顔のJ・C・ライリーが父親というのもまた上手い。彼は最後まで「理解せず」の人でしたからね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2021-01-23 16:54:21)
28.  ビューティフル・デイ 《ネタバレ》 
作品紹介でスリラーとあったのですが、本作は違いますね。人の死に方がオソロシくて血も飛びますけど、テーマはPTSDと闘う男の凄絶な心の軌跡。画も音楽もビターで内省的。とりわけ音楽は劇中のラジオが音源だったりすることが多く、これが作品世界にすっと入っていける効果をもたらしているように感じました。 ホアキン・フェニックスが只事じゃない重たさです。幼少期の父親の虐待に始まって、軍の任務で経験した数々の不条理な暴力でジョーはすっかり心をやられてしまいました。何度も死のうとして、でもギリギリ踏みとどまってきたのは母親の世話があるから。二人でフォークを磨いたり、子どもの頃に口ずさんだ歌を思い出したりする姿は、説明の少ない本作の中で彼らの結び付きがうかがい知れる心安らぐ場面でした。 母親は死んでしまったけれど、ニーナがいてくれる。観る者が希望を抱くのは、彼女が若くて心の芯が強そうだから。彼女もさんざん傷ついているのに「今日はいいお天気よ(It's a beautiful day) 」とジョーが立ち上がるきっかけを与えることができるのだから。 窒息しそうなジョーが息をつくことのできる人生を取り戻してほしい。ショッキングなラストの自死のシーンが現実でなかったと分かった時、わたしは本当に、心からほっとしました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-08-11 23:41:15)
29.  K-19 《ネタバレ》 
非ロシア人であるハリウッド二大スターを使って旧ソ連海軍を描くとは難しい仕事だったと思います。しかし、言語こそ英語ですけど原潜内部のリアリティ溢れる造りはもとより、乗組員と政治士官との立場の差異など社会主義国ならではの政治事情もストーリーで説明できており、メイド・イン・ハリウッドということを気にさせない立派な作りです。画がちゃんと重くて渋い、ザ・共産圏の香りがします。 原潜内部で起きた異変の原因は、党が強いた突貫工事による整備不良や、正規品も間に合わない現場のとりあえず間に合わせた不完全な仕上がりによることは明らかです。K-19、この艦はドックから出たての処女就役なんですよね。この年1961年。1年目からこんな有様の潜水艦をソ連はその後老朽艦になるまで使い回し、冷戦終結後に明らかになった数字ではのち29年間で23件もの同様の原潜事故が起きていたと書物で読みました。 劇中非業の死を遂げた乗組員や艦長らの慟哭、非人道的な安全対策の不備がこの物語の後30年も繰り返されたとは旧ソ連という国家の非人間的なことに改めて衝撃を覚えます。 この映画の伝える恐怖は身体が震えるほどのリアル描写で、恐慌状態に陥ったP・サースガードが泣き叫ぶほどにこちらの気分も悪くなりました。 序盤まではリーアム・ニーソンとハリソン・フォードという主役クラスをどう両立させるのか、バランスの難しさを危惧しましたが杞憂に終わりました。特にH・フォードの新艦長がどういう立ち位置になるのか、とても興味深い出だしでした。ハリソンといえば、いつでも「正」側にいるイメージがついているスターですから‟無能艦長”の役回りで終わるとも思えなかったですし。 そう、もちろんボストリコフ艦長はこの就航が無理なミッションであることを分かっているのでした。しかしひとたび任に就けば艦内のトップとして職務全うにベストを尽くす。「訓練好きのコネ艦長」などではないのです。 副館長のリーアム・ニーソンはハマリ役で安定感抜群でした。部下に対しては温情型の彼が、しかしクーデターを許さず厳しい態度に出たことで原潜内の秩序維持の必須なことを思い知らされます。危険で特殊な環境下では組織のタガが緩む行為は許されない。たとえ意見は対立してもハリソンは艦長なのです。 ベテラン俳優二人の見事な組織人ぶりがドラマの重厚感をより引き立てました。どっと疲れるけれど、観るべき映画と思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-06-08 23:31:27)
30.  パディントン2 《ネタバレ》 
1作目よりも大幅に評価が高いのですね。続編でこの現象は珍しいと思って鑑賞しました。ああ、確かに。“2”の方が「小さいクマさんを巡って起こるハートフルな世界」観をよりしっかりと確立しようという制作の心意気を感じますね。 だってまあご覧なさいよ。美術画の如き画の美しさを。琥珀色に輝くアンティークショップ、金色に縁どられたカーニバルの輝き。悪巧み役者の自宅インテリアですらグリーンを基調とした品の良い調度品で設えられています。お子様向けのクマの物語に、こんなにも情熱を注ぐ。クラフトマンシップの粋と呼べるCGスタッフの仕事ぶりに感動すら覚えます。 お話も、新登場のキャラクターに頼りすぎず、パディントンの人の好さとブラウン家の親切さもそのままに、ストーリーの流れに沿って交友関係を広げています。審美眼にやや難のある警備スタッフの彼まで再登場するとは。笑わせどころも心得た脚本です。 「善良」というエッセンスのみで作られたかのような本作、ぜひお子さんと一緒にご覧あれ。かなりささくれた大人になった私でも、ラストの叔母さんとの再会には泣けました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-02-09 23:50:17)
31.  ブラジルから来た少年 《ネタバレ》 
これは、大変戦慄を覚えました。序盤のうちにポリス・アカデミー出身S・グッテンバーグが早々と死んでしまう。彼が主役となって話を回してゆくのだろうと思っていた私は度肝を抜かれました。世界中の94人の公務員の男を殺せという指令の意味不明なことや、世界のあちこちに見つけられたそっくりの男の子等、謎の提示とその解明が予測もつかないし、判って震えるしでサスペンスの一級品と思います。 個人の感想ですけどこの年代の作品て、共通して淡々としたところがあって、今作は人の死ぬ場面がどれも恐ろしい。「ああー、逃げないと殺されちゃうよ!」と思っていたら本当に殺されちゃう。カメラはあまり動かず騒がず、すっ、と殺っちゃうんだ。あまりの生々しさにいちいち「ひっ」とビビります。ダムなんかトラウマになりそうだ。 整形かメイクか、顔に違和感のG・ペックの怪演や、クローンアドルフの男の子ともに不気味でいっぱい。遺伝子と環境の二つを揃えてやればもしかして、と思えなくもない現状も怖い。特に21世紀の今なんか欧州各国で極右政党が台頭してますから、メンゲレ博士の狙いも実現しやすい土壌は十分ですし。怖い。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-01-15 00:11:38)
32.  セブン・シスターズ 《ネタバレ》 
設定の斬新なこと、展開の速さと意外性、全てにハイスコアがつく見事な脚本です。人口増(あるいは減)に悩む近未来SFという発想は出尽くした感があるのですが、題材を巧く生かしています。降りかかる危機をさばくのは、一人のような七人のようなヒロイン。まるで分身の術を使っているかのようにも見えるこの設定が、観る者に月~日までの彼女らを等しく応援する気持ちにさせ、だからこそ月曜の行動の意外なことに驚かされるのでした。 ノオミ・ラバスの卓越した演技力が無くては成立しない話でもあります。七人分の人格をきっちり演じ分け、○曜と○曜がかぶるじゃん、と一切思わせなかったのはほんとにあっぱれです。厚化粧なメイクも現実離れした未来感がありました。 これといった伏線を張っていないのもポイント。思わせぶりが無いのですんなりと話に入れるし、瞬く間に疾走しだすストーリーに乗るのは快感です。伏線を回収せずとも(そもそも張ってないので)、深まる謎を明かしてゆく筋立ての妙味。脚本家はかなりのスキルとみました。脇を固める大ベテラン、W・デフォーとG・クローズのハンパない安定感も作品をきりっと締めています。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-09-24 00:04:17)
33.  ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅
ハリーポッターのスピンオフ的なイメージを抱いてましたが、新作としてとても楽しかったです。 魔法世界を描くCG技術には今さら驚嘆すべきものはないけれど、舞台となる1920年代のニューヨークは落ち着いた色彩で纏められており、この雰囲気がまず良かった。 主人公と逃げた魔法動物の追いかけっこを本筋として、街で連続する不可解かつ物騒な事件を横糸に絡ませたストーリーはきちんと謎解きになっていて面白く出来ていると思います。もっとも、真相から目を逸らせるミスリードのプロットはハリーポッターシリーズと同じじゃん、という指摘もありましょうが。 そしてこの映画の一番の功労者はエディ・レッド・メインでしょうな。彼が与えたニュートの造形すなわち動物オタクの優男キャラは100%完璧で、彼以外の配役はもはや考えられない。ハリポタシリーズ後半ではおじさんぽくなってしまって高校生に見えづらかったダニエル・ラドクリフよりも物語の主人公への理解度が高いと思われます。 エディの繊細なことと、魔法動物の奇想天外なことに心掴まれたワタシはそういえばかつてポッタリアンだったのでした。魔法の世界観にノレるタイプには楽しみなシリーズができました。ニフラーにプラス1点。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-07-04 17:10:22)
34.  柔らかい殻 《ネタバレ》 
神々しいほどに美しい映像と構図、でも気が遠くなるほどに救いの無いストーリー。画と話の両軸がかけ離れているが故に強烈に記憶に残る一本。 大人側の世界、まあ見事なまでに陰気な材料ばかりだ。荒んだ母親、焼身自殺の父親、兵役から帰還した兄は原爆症の疑いが濃く、そのうえ子供が被害者の連続殺人が発生するときたもんだ。 大人が全員暗い目をしている。なんで誰も彼もがどうかしちゃってるんだろう。ぶつぶつ言いながら道を往く二人組のおばさんは勘弁してほしいくらい怖かった。 病んでる大人の世界は子供の無垢なフィルターを通すと様子は違ってくる。ヤバイ未亡人は吸血鬼で、白蝋化した誰かの中絶胎児は天使なのだ。セスにとってはそうなのだ。自分の世界が優先するから大人の浮き世の騒ぎはピンと来ないんだ。警察に目撃した車のことを言うことなんかより、兄を吸血鬼から守ることの方が断然大事なことなのだ。 だけどラストにフィルターは崩壊し、現実のその意味が降りかかる。8歳の子が悟るその残酷なこと。 シュールで苛烈なまでの不条理が金色の小麦畑に展開する。美しくて怖い白昼夢のようだ。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-04-26 16:55:22)
35.  レディバード・レディバード 《ネタバレ》 
英国の話だけど、我が国にとっても全く他人事でない案件。子どもへの虐待を防ごうと行政が家庭に介入することの限界もほんとに良く似ている。すごく考えさせられた。 いや本作のケースはどうしたらいいですかね?日々報道で子どもの虐待事件を耳にするたび、震えるほどの怒りを覚える身としては英国社会福祉局の言い分も良くわかる。たしかにこの母親は子どもに安全な環境を用意できていない。暴力男の元に舞い戻るなどその最たるもので、典型的なDV被害者の行為なのですね。母親本人も情緒不安定で、嘘も多い。強制的に子を保護しないと死なせてしまうと、世論の高まりでできた法律を遵守するのは役人として当然の職責でありましょう。 でもなあ。この母親の不幸な成育歴や地域社会の荒れっぷりを見てると、この人一人のせいばかりでもないと思っちゃうんですよね。隣人が悪意で証言したりと、運も無い。なにより役人が産院にまで赤ん坊を奪いに来るなど、これはちょっと機械的、暴力的に感じる。母親は子どもに愛情を抱いているけれど、彼女の環境がうまく健康的に働いていないのです。さて、一体どうすれば。 行政と個人と、どちらかの主張に偏ることなく問題を開陳してみせたケン・ローチ監督のバランス感覚の良さが光ります。大人は必見の、社会の課題です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2019-02-15 00:18:46)
36.  レイニング・ストーンズ 《ネタバレ》 
ああーこりゃまたケン・ローチらしい・・。また私の「仲間」がやられている、と思った。貧困と不運に。まだしも健康でガッツがあってユーモアも友人もあるから陰惨というほどではないけど。でも首の皮一枚だ。 ほんとに、真面目で信仰心もあって娘のために必死で、友人の子を思ってヤクの売人に怒りを爆発させる良き人間がなぜこうも経済的に窮しているのだ。かつての大英帝国の社会のひずみは深刻だ。 このお父さん、ケン・ローチ作品のなかでも群を抜いて運が無い。もっとも、一度きりの娘の聖餐式に服から靴まで一式揃えようという分不相応な出費はなあ。神父さん曰く「分別の無い」行為で自分の首絞めちゃってるわけで、いやおとーさん、そこはレンタルで良いと思うよ?周りも皆そう言ってるじゃないですか。かくして彼の運は坂を転がり続け、とうとう自暴自棄に一線を越えそうになるのですが告解された神父さんが実に良いんだ。Fワードを吐きながら真に正しい方向へ父親を諭す様はロックなキリストのようだった。 ラストも監督ったら冷や冷やさせてくれちゃって。バンかよ!お父さんの運もようやく上がり始めたみたい。ケン・ローチらしい匙一杯分の粋な締め方でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2018-10-18 19:54:55)
37.  ブルックリン 《ネタバレ》 
これから社会に巣立ってゆく女の子たちにぜひ観て欲しい一本。ヒロインと笑い涙し、勇気を共に振り絞る経験ができるでしょう。 美少女だったS・ローナンはすっかり大人になりました。アイルランド出の野暮ったさをすっぴん顔で上手く表現できている前半と、垢抜けてゆく中盤以降の変身ぶりも印象的です。 都会に出たての心細さや、虚勢張りやホームシック、それをサポートする周囲との関わりといった彼女の生活が丁寧に描かれ、エピソードの一つ一つが胸に溜まります。船で出会った赤い服のアドバイザーや寮の先輩達、職場の主任、皆気の良い性質なのだった。初めはコワイけれど。 そして、場が急転換する第二部帰郷編。これがもう、胸がざわつく大変なことになるんだ。ええー、どうする?とワタシが苦悩しちゃったよ。なにしろ旅立つ前と状況が違いすぎる。一会社の事務を任せてもらえるし、以前は相手にもされなかった上層ランクの男子と親密になるにつれ、周囲まで期待を寄せてくる。なんと運命はズルイのか。故郷ってこんな風に絡め取ってくるものなのか。 彼女は決断します。エイリシュ、ああ、もちろんそれしかないよね。だってNYのそこは貴女が自ら切り開いた居場所なのだから。姉の後釜となって故郷に残るより、ずっとローズも喜んでくれると思う。
[DVD(字幕)] 8点(2018-01-22 00:11:20)(良:1票)
38.  キングスマン: ゴールデン・サークル 《ネタバレ》 
キングスマン、大好きです。楽しみにしながら映画館に出向いて、楽しかったー、と帰ることができました。今作もキレキレの音楽と、趣向を凝らしたブリティッシュな武器の数々にはうっとりしました。 ただ、やっぱり続編は風呂敷を広げがち。舞台は広範囲、人も格段に増えました。私は”英国風”センスが好みなので、アメリカ側にやたらと人物が出てくるのはちょっとうるさかった。チャニング・テイタムなんて、わりとすぐ冷凍になっちゃうしと思ったら、ウイスキーなんて代わりの駒が出てくる。んん?テイタム一人で押しても良かったんじゃないかい? 再会できると思ってなかったハリー、まあその無茶蘇生ぶりは置いとくとして、やっぱり嬉しいし、ジュリアン・ムーアも超絶怪演。死に際もコワイ。エルトン・ジョンの仕事っぷりには脱帽だ。どこまでが素なのやら、すごいおっさんだ。笑わしてもらったー。 主人公とその彼女のキャスティングが、個人的にぴったりこないのが前作からの難点なのですが、なんたって脇が磐石ですから。コリン・ファースにマーク・ストロング、お二方の英国紳士なスーツ姿が美麗なことに変わりなく、脚本の疾走感(と悪趣味センス)も衰えてはおりません。
[映画館(字幕)] 8点(2018-01-12 00:39:08)(良:1票)
39.  サード・パーソン 《ネタバレ》 
「三つの都市での三者三様の恋愛模様」だかっていうピンボケの内容紹介のせいで、全く先入観無しで観たのだけど、ラスト5分で唸ってしまった。そこに至るまでオチが読めず、だからこそとてもすっきりした。 変だったもんなあ。NYのミラ・クニスがちょくちょくパリに現われるし、ローマでは初対面のロマの女に全財産注ぎ込む男が不可解。女の8歳の娘も姿を見せないし、出来事全容の歯切れが悪いのだ。 NYとローマの側が「何か変」なのは、架空の話だから。実在するのはニーソンとオリヴィアとキムのフィールドだけ。NYの愚かな母ミラはニーソンの映し鏡。”重過失”でわが子を失った小説家が自らを投影したキャラクター。翻ってローマ編、他人の娘を救いたいと必死になるビジネスマンもまた、小説家の願望の現われなのだろう。こちらはぼんやりとハッピーエンドぽくフェイドアウトした。 観直すと、ちゃんと伏線がたくさん張られている。キムの台詞「あなたは小説の人物にしか感情理解できない」「この会話もどうせ書くんでしょ」とか、編集者の「(エレインが)よく立ち直ったね。強い人だ」とか。分かって観るとおお、と思うが初見で気付くのはかなり難しいと思う。タイトルの「三人称」の意味するところも、気付いた人って凄いな。 ラストの愛人の驚愕顔と小説家が「自らについた嘘」、これらはまだ私にとっては宿題中。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-06-26 00:27:32)
40.  マッチポイント 《ネタバレ》 
クラシックなオペラ歌曲にのせて展開するは現代のお話なれど、中身ははるか昔から繰り返されてきたであろう男女のいざこざ。不誠実な男と、責任を迫る女。ありがちな話がアレンにかかると「運」まで動員される。神の役回りはもちろん監督なんだが。大体神様が女好きだからねえ。 自分でも誰の立場で観てるのかちょっとわかんないまま、いつ男のハリボテがはがれるのかと変に手に汗握りながらの観賞だった。とにかく性格のひん曲がっている監督の手腕が凄いとしか。スカヨハ登場一発目のシーンからこの先の倫理違反は明白、「あれ?きのうの夕方お前を見たぞ」と証言する友人がやなとこで現われるしスカヨハはどんどんヒステリックになってゆくし、落とした薬きょうを「見せて」とウルサイ妻。小心者のワタシはまったく気が休まらない。極めつけは空に放り投げた老婆の指輪。欄干に当たって、そして「こちら側」に落ちる。もちろん思い出すのは冒頭の「運」のお話。ああ、そうなるのかと思いますよね。ついに引導を渡されるのかと。・・が、ところがなんですね。つくづく食えないジジイ監督だ。 ちなみにキャスティングも天才的に的確だ。ヨハンソン以外にも「育ちが良くて」「つまらない」妻E・モーティマー、温室育ちの坊ちゃん長男M・グード。うるさい割りに鈍感な義父母。駄目刑事。こわいほどにハマっている。やっぱり監督ただ者じゃない。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-05-15 23:56:52)
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