61. ヒューゴの不思議な発明
《ネタバレ》 アメリカン・ニューシネマ黎明期のスコセッシからは考えられない様な愛と希望に満ちた物語。これが個人的には嵌りに嵌ってしまい、後半は終始感動しっぱなしでした。何故、私たちは映画を観るのか。人それぞれ異なる答えがあると思います。ある人は現実を忘れるため、ある人はテレビでは観ることができないものを観るため、ある人は画面内のスターに耽溺するため、その他無数に存在するでしょう。しかしどんな人にも共通する理由の一つに、普段の日常では体験できないことをたった2時間、スクリーンに座っているだけで体験できる点があるのではないでしょうか。映画はイマジネーションによって生み出される芸術作品であり、それは戦争が起きようが何があろうが、人々の記憶に刻まれ後世に引き継がれていく。そしてその時代の感動はどの時代であっても感動的であり、人々の心を動かす力となりうる。だから映画は今も無くならないし、映画ファンはわざわざ映画館まで足を運ぶ。そんな"映画"という媒体への愛に溢れた映画だったと思います。最近は「ヒューゴ」や「CUT」、「アーティスト」など映画への愛を描いた映画が多くて困ってしまう。こんなテーマの映画、映画が好きなら嫌でも感動してしまうじゃないか~。 [映画館(字幕)] 9点(2012-03-10 22:05:54)(良:2票) |
62. ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ
《ネタバレ》 ガイ・リッチーお得意のスラップスティック・アクション。物語の佳境で訪れるカタストロフィからは目が離せませんでした。 [DVD(字幕)] 7点(2012-02-26 11:08:36) |
63. ドラゴン・タトゥーの女
《ネタバレ》 面白かった!最近のデヴィッド・フィンチャーは「ベンジャミン・バトン」や「ソーシャル・ネットワーク」など映像の質は相変わらず高いのですが、過去作のようなガツンとくるホラー演出が無くて個人的に残念だったのですが、今作は映像だけで怖がらせるシーンが多くて大変満足しました。私は音だけで怖がらせるホラー演出が大嫌いなのですが、デヴィッド・フィンチャーの演出は特に音で発作的に怖がらせないのに、すごく怖いんです。「ドラゴン・タトゥーの女」ではエンヤの軽やかな音楽をバックに主人公が解体されそうになるシーンが白眉かなぁと。「パルプ・フィクション」でラジオの音楽に合わせて拷問するマイケル・マドセンを思わせる恐ろしさでした。ミステリとしては古典的な一族モノ、フーダニッド・ハウダニッドモノなのですが、特に意外なトリックも無く少し残念でした。こういう一族内での殺人で双子とか年齢の近い子どもがいる場合、入れ替わりトリックは真っ先に浮かぶ定番トリックですからね。最後に例のモザイクですが、私もこれには非常にガッカリしました。リズベットは後見人から性的暴行を受けていて、その末にミカエルと出会い結ばれるのですから、このセックスシーンは主人公の内面描写としてとても大事なシーンでしょう(やや観客へのサービスの気もしますが)。それに修正を掛けるってどういう神経なんでしょうね。作品世界をぶち壊していることに気付かないのか。何より体を張っているルーニー・マーラに失礼だ。邦画で女優があまり脱がないのは日本映画界の事情があるから仕方ないとは言え、海外の映画にむやみに修正を加えるのだけはホントに勘弁してほしい。そんなんならR18でもいいから無修正で公開してほしいと強く感じます。 [映画館(字幕)] 7点(2012-02-19 10:32:49)(良:1票) |
64. 宇宙人ポール
《ネタバレ》 とにかく主演二人が最高。本当に実生活でも仲がいい奴らなので、その雰囲気が画面から感じられ、またそれが微笑ましい。「ショーン・~」「ホット・ファズ」と殆ど同様のキャラなので、またあいつ等が帰って来たって感覚に陥ってしまいましたので、下手をすれば彼らがタッグを組む限り私の中では高評価になってしまいそうです。宇宙人ポールの地球人よりも地球人らしいキャラも楽しかったし、宇宙の仕組みが分かった瞬間に下品なスラングを使いまくるヒロインにも笑わせてもらいました。そしてとどめのシガニー・ウィーバーの体を張ったギャグで爆笑。純粋にこれだけ笑った映画は久々です。楽しかった!ただ、宇宙人ポールを見ると大概の人は勝手に失神してしまうし、ポールも念力(?)など強力な力を持っているので、宇宙人を連れているのが他人にバレたらどうしよう?というE.T的なサスペンスが弱くなっていたのは少し残念でした。 [映画館(字幕)] 8点(2011-12-25 19:39:24)(良:1票) |
65. フランケンシュタイン(1994)
《ネタバレ》 あらすじの通り非常に原作に忠実な作りには好感が持てます。ただ2時間の尺に収めようとしているのか、展開がとっても早く取りあえずストーリーを追ったって感じでしょうか。その為に各人のストーリーは大幅に端折られており、折角数々の演技派俳優が出ているのにキャラクターの魅力が十分に出せていなかった様に思います。個人的にフランケンシュタインの最も魅力的なキャラクターは作られたのに親に拒絶させ、誰からも外見だけで憎まれる怪物だと思っているので、彼のエピソードだけは細かに追ってほしかったです。失楽園や若きウェルテルの悩みを読み、自身と照らし合わせる件が無いのは非常に残念でした。それから、とにかく音楽の使い方が下手な映画だったですね。音楽のテンションは常にクライマックス状態で本当に緩急がない。溜めに入っているシーンもか細いバイオリンが一人鳴っていて、「なんでこんなにうるさくするん?」と突っ込みまくっていました。 [DVD(字幕)] 6点(2011-11-13 22:15:02) |
66. アポロ13
《ネタバレ》 ロン・ハワードらしいハリウッドテイストでありつつも作家性を感じさせる作品です。子どもの時から何回も観ていますが、いつも極限状態の乗組員たちにハラハラさせられました。 [地上波(吹替)] 8点(2011-10-16 12:32:51) |
67. マチェーテ
《ネタバレ》 まさかダニー・トレホがヒーローの映画を観れる日が来るとは……。やっぱりロドリゲスは偉大です。B級アクションらしく血しぶきが飛び交い、女は無駄に露出し、車は意味無く爆発するのは素晴らしいですが、肝心の終盤のカタストロフィがグダっているのがとっても残念。といっても無茶苦茶な予告編から作られた映画なので、仕方ないのかなー。 [DVD(字幕)] 6点(2011-10-09 19:05:25) |
68. 127時間
《ネタバレ》 映画の出だしが、都会の雑踏を早回し+訳の分からないスプリットスクリーンの映像から始まり、「ダニー・ボイルもオシャレ映画監督になっちゃったのか~」と思っていたのですが、これがキチンと伏線になっていて、ラストにはそれに驚きかつ、胸を打たれてしまいました。映画の内容は至極単純。所謂一昔に流行ったワンシチュエーション・スリラーってやつですね。ただそれでも十分に面白かった!主人公は最終的にあの行動に出るのですが、そこまでの過程、つまり彼がどの様な人間であり、どの様に試行錯誤したのかが、綿密に描かれているので、遂にあの行動をした時に非常に大きなカタルシスを感じられました。あの腕は彼が言っていた通り、それまでの自分一人で生きていけると思っていた彼自身だったのでしょう。だから彼は最後にあの腕を写真に収めた。それと贖罪的に決別した時に彼の人生は始まり、変わったのでしょう。 [映画館(字幕)] 8点(2011-09-05 23:31:05)(良:1票) |
69. インセプション
《ネタバレ》 感想としては素直に面白いと思えた作品でした。スパイ物として十分面白い上に、夢を盗んだり上書きしたりするシステムが絡んで上質なSFサスペンスとなっています。キャラクターの数も計画に必要な人数を最小限に絞っており、スパイ物に多いごちゃごちゃしたキャラクター描写になっていない点も良いですね。ハンス・ジマーの派手な音楽も壮大な世界観とマッチしています。最後の「結末は観客にまかせます」て感じのラストも個人的には好き。あのラストが理解できなかった人は、偉そうに言いますけど、デカルトって哲学者の「我思う、故に我あり」という概念を齧ってみたら理解し易いと思います。 気になった点は、計画に関するミスの原因がほぼ全て主人公のコブにある事でしょうか。主人公があれだけダメダメなスパイ映画も珍しい。他の人達は必死こいて頑張っているのに、なんだあの優柔不断な主人公は!でも良く考えるとノーラン映画の主人公ってみんな優柔不断ですね。 [映画館(字幕)] 8点(2011-08-16 08:54:44) |
70. 未来惑星ザルドス
《ネタバレ》 設定は秀逸だと思っています。実際に観終わった後で気付いたのですが、グレンラガンの設定ってこの映画のそれを完全にパクッてますね。そういう意味でも偉大な映画かと思います。ただ見た目がかなり安っぽく、ピンクのパンツ一丁で走り回るショーン・コネリーにはずっと苦笑しっぱなしでした。 [DVD(字幕)] 6点(2011-06-19 22:48:24) |
71. ウルヴァリン:X-MEN ZERO
なんというか一番苦手なタイプのスピンオフ作品。シリーズで人気のウルヴァリンを取り敢えず主役にして、あとは適当なヴィランをでっちあげ、最後にこれまでのキャラをそれとなく登場させるっていう流れ。柳の下のどじょうをすくおうとしたのがバレバレで、正直詰まらなかったです。問題は色々あるのですが、そもそもウルヴァリンという孤独を背負った男を通して何を観客に伝えたかったのか?それが全く見えてこなかった。単に私の読解力不足なのかも……。 [DVD(吹替)] 5点(2011-06-19 12:08:04) |
72. スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団
《ネタバレ》 ハッキリ言って凡庸な監督が同じことをしたら、「金返せ!」の大合唱になると思います。全編簡単に言うとおふざけで、マトモな演出は一つも無いと言っていい。それでも、この映画が良くある実験映画の様な完全自己満足作品に落ちぶれずに済んでいるのは、エドガー・ライト監督のコメディの演出が上手いからなんだろうなと思います。と言いますか、良くこれだけムチャクチャな原作を忠実に実写化出来たなと感心したいくらいです。プロットだけ抜き出すと、「美人(という設定)の彼女と結ばれるには、彼女が過去に付き合っていた7人の元彼を全員倒さなければいけない。しかも元彼達は何かしらの特殊能力を備えている!」って自分で書いててサッパリ訳が分からん。 [映画館(字幕)] 5点(2011-05-29 22:11:30)(良:1票) |
73. ニューヨーク1997
《ネタバレ》 大して予想外な展開は起きないのですが、それでも十分に面白い水準の作品だと思います。短い上映時間の中でもキャラクターがキチンと立っているから安心して物語に没頭できます。ただジョン・カーペンター御大自らの音楽だけには苦言を呈したい。終盤になってもあのゆったりとしたテクノじゃ気分が全く盛り上がらないよ! [DVD(字幕)] 7点(2011-05-29 10:04:24) |
74. 赤い影
《ネタバレ》 物語の佳境、不吉な弦楽器のコンチェルトをバックに、暗く澱んだベニスの街並みを、主人公が彷徨い続ける。コンチェルトも、美しいベニスも、カメラへの収め様によってこれだけ恐ろしいものに変貌するのかと、大変驚愕しました。この一連のシーンを観れるだけでも、この映画は価値があると思います。面白いサスペンス映画に必須の伏線の回収も実に良くできていると感じました。またこの映画の語り草になっているベッドシーンは矢張り素晴らしい出来でした。中年のカップルのラブシーンにおいて、本作ほど相手への愛情を感じられるベッドシーンを私は他に知りません(大した映画の本数観ていないということもあるでしょうが……)。古さを感じさせない傑作サスペンス映画でした。 [DVD(字幕)] 9点(2011-05-08 16:26:55) |
75. ロッキー・ホラー・ショー
《ネタバレ》 全編に渡って繰り広げられるビザールでサイケデリックな変態世界にテンションあがりまくり!正にホラー・ショー、正にカルト映画の名にふさわしい突き抜けっぷりですが、私にとっては大好物です。フランクン・フルター博士がマントを脱ぎ捨てた時の衝撃は忘れられない。人によっては拒絶反応を起こし、人によってはこのハイテンションな変態世界に魅入られるでしょうね。 [DVD(字幕)] 9点(2011-05-07 22:43:23) |
76. ヘイヴン 堕ちた楽園
監督が脚本も兼任しているので、パルプ・フィクション以後のことをやりたいのはハッキリしているのでしょうが、最終的に作品として大して面白くないのが玉にキズでしょうか。元々はスラップスティック・コメディと相性がいい題材に悲恋という要素を突っ込んだアイデアは面白いと思うのですが……。これ見よがしな撮影・編集テクニックも無かった方が良い様な気がします。でも初監督らしいのに、有名俳優を使ってやりたいことをしている姿勢は好きですね。 [DVD(字幕)] 5点(2011-03-15 01:01:39) |
77. ラブ・アクチュアリー
《ネタバレ》 群像劇で恋愛モノをするというのは非常に難しいことだと思うんです。ただのロマンス映画でさえ、1カップルの恋のすったもんだを二時間かけて必死こいて描いているんですから当たり前でしょう。なので冷静に見ると、この映画には結構穴がある。ポルノ俳優のカップルなんて何の障害も無く恋愛が成就してしまいますからね。……でも、そんなツッコミが野暮に感じる位、この映画は恋に一歩踏み込む勇気を確実に与えてくれる。恋愛映画ってたまにこういう理屈抜きで「良い!」と思える作品があるので侮れません。 [DVD(字幕)] 7点(2011-03-14 00:18:26) |
78. ヘアスプレー(2007)
《ネタバレ》 観てると、底が無い明るさのトレーシーが可愛く見えてくるから困ります。トラボルタの女装は流石に笑いました。ミュージカル映画としては楽曲の出来は良く、俳優さん達も歌の方を頑張っています。少し気になったのが、色々なテーマを詰め込みぎかなあと思いました。特に夫婦愛の部分は削ってもよかったかなあと思ってしまいました。トラボルタ歌ヘタですし。 [映画館(字幕)] 6点(2011-01-21 00:47:55) |
79. 第三の男
個人的には、良く考え抜かれた脚本、演出、構成を楽しむ作品と思っています。流石に巨匠の業と言いましょうか、非常に丁寧に作られています。ハリーが闇の中から登場する名シーンと、終盤の地下水道での逃走劇は、当時のフィルム・ノワールを代表する映像美でしょう。なので、あーだこーだイチャモンは付けられませんが、全体を通すとやや平凡な気もします。 [地上波(字幕)] 7点(2011-01-03 14:07:42) |
80. ダンサー・イン・ザ・ダーク
これ程レビューが書き難い映画は今までにありませんでした。なぜって映画のエンディングはセルマにとっては兎も角、観客にとっては余りにも辛い終わり方ですし、別段、観客に何かのメッセージ、テーマをはっきりと投げかけてくる映画でも無い。そこにあるのは憐れで不幸な一人の盲目のダンサーの人生だけです。 しかし日常に溢れるリズムに合わせ、妄想の中で踊るセルマは美しく、素晴らしいビョークの歌声、名演は私の胸を打ちました。どれだけ人生が酷くとも、そこに音楽と息子が存在すれば彼女は生きていけたのでしょう。良い映画か悪い映画か意見が分かれるのは当たり前だろうけど私はこの映画は傑作だと思います。この映画に出会えて良かった。 [DVD(字幕)] 9点(2010-12-29 14:10:22) |