81. 007/ドクター・ノオ
この時、S・コネリーは確か弱冠29歳だった筈。(この頃から老けてました!)しかしすでに貫禄は十分で、その後の彼の活躍ぶりを暗示しているかの如く、不敵な役柄を実に憎々しげに、そして颯爽と演じきり、今日のJ・ボンドというキャラクターを見事に創り上げたという点でも、まさに記念すべき作品である。さすがに風俗的な意味においては古さを感じないわけではないが、その独特のオリエンタルでミステリアスな雰囲気や新機軸のサスペンスの面白さは、些かも衰えていない。 8点(2001-02-04 15:17:06)(良:1票) |
82. 007/サンダーボール作戦
シリーズ中でも屈指の制作費とそれに見合うスケール感を伴なった本作は、オープニングのド派手なアクションからクライマックスの海中での一大バトル、そしてラストの高速艇でのアクションに至るまで、T・ヤング監督のサービス精神には脱帽するしかない。当時、「風と共に去りぬ」に次いで、第二位の興行成績を記録したのも頷ける。「ゴールド・フィンガー」と同様に、音楽、特に音響効果というものが、いかに重要なものであるかという事を感じたのも、まさにこの頃からである。 9点(2001-02-04 14:56:08) |
83. 007/カジノ・ロワイヤル(1967)
本家シリーズとは全く別モノの番外篇で、顔ぶれ(かなり豪華!)から判るように、紛れもなくハチャメチャ・コメディーに仕上がっています。全編、本家のパロディかと思えるような内容で、制作費もそれなりに贅沢なほどかかっています。当時はそれなりに楽しく観た筈なんですが、ほとんど記憶に残っていないのが不思議なくらい。 6点(2001-01-28 21:56:34) |
84. 007/ゴールドフィンガー
007の人気が一気に爆発し、一大ブームのきっかけともなった作品。女性が全身に金粉を塗られて殺害されるというアイデアが新鮮で、またシリーズ中、もっともエロティシズムが色濃くでた作品としても、当時としてはセンセーショナルな話題を集めた作品でもある。オープニングのバスタブに温熱機を投げ入れて感電死させるシーン(クライマックスのオッド・ジョブとの対決の暗示ともなっている)は、当時のTVコマーシャル(薬品)のタイトルバックにもなったほどの名場面の一つとなっている。スイスでのロケーションの美しさや、ゆったりとした映画の流れと、テンポ良く描かれていくシーンとが巧く纏め上げられていて、今観ても懐かしいというよりは、むしろ新鮮さすら感じる。 9点(2001-01-28 00:17:24) |
85. 007/ロシアより愛をこめて
もう40年にも及ぶ人気シリーズということもあって、世代によってそれぞれ感じ方が違うのは致し方の無いところ。ただJ・ボンド=S・コネリーという点に関してだけは譲れない。本作はスパイ物とラブ・ロマンスが巧く絡み合った、アクション映画のお手本のような作品で、“見せ場”という言い方もこの頃から始まったように記憶している。アタッシュケース(当時はまだ珍しかった!)という小道具から、ド派手なボート・チェイス(のちにこのシリーズの定番となる)といった大がかりな仕掛に至るまで、アクション映画の基本的な要素がバランス良く詰め込まれている。シリーズの中の一本というより、まったくの別格といってもいい傑作。 10点(2001-01-27 23:54:32) |
86. キリング・フィールド
映画の後半、ガイドのプランが体験する“殺戮の原野”の地獄廻り。その中でも殺された人間たちの白骨が泥沼の中に捨てられている景色を見るとき、我々観客としては言葉の無力感とともに国家のイデオロギー論議というものに、虚しさを感じずにはいられない。ようやく脱出に成功し、赤十字のテントを遠くから眺めるプランの固く静かな表情には、忘れがたい印象を残す。R・ジョフィ監督は、画面構成とエキストラの使い方が巧みで、戦場ならではのダイナミックな臨場感を見せてくれる。 8点(2001-01-22 13:34:19) |
87. ドレッサー
刻々と老いさらばえていくシェークスピア役者(その声量の凄さは、走り出そうとしている列車をも停車させるほど!)と、その付人がそれぞれの人生を語る。他者を寄付けぬ二人の間に醸し出される、カミソリで切りつけあっているような緊張感が作品全体を覆う。 7点(2001-01-14 18:44:41) |
88. ダンサー・イン・ザ・ダーク
現実はザラついた淡白なカラーで、主人公の夢想はクリアな画調でカラーも美しく表現されている。が、しかし夢想シーンがあからさまに“楽屋裏”を見せつけているような手法(さほど珍しくもないが・・・)は、この作品にはあまり得策ではないように思う。身につまされると言う点では、以前観た「ロゼッタ」のほうが、よほど強烈な印象として残っている。それにしても全編がカメラの手ぶれ効果とやらで気分が悪くて、映画鑑賞どころではなかったのが正直なところ。この作品にこんな落とし穴があるとは・・・。そういう意味では二度と見たくない作品ではある。 7点(2001-01-07 22:06:44) |
89. カサンドラ・クロス
この年のお正月映画で、本命「キング・コング」の対抗馬として興行的には善戦したものの、評価は惨憺たるモノでした。でも僕は好きですよ!この作品。無国籍風のごちゃまぜのキャスティングが妙に魅力的だったり、クライマックスに至るまでのハラハラ・ドキドキ度など、演出のツボを心得たコスマトス監督、なかなか見せてくれます。(因みに彼はスピルバーグの「激突!」がお気に入りだそうです。)テーマ曲とあわせて、決して忘れてはいけない作品だと思います。 8点(2001-01-04 01:01:51) |
90. フレンジー
どこまでもツキに見放され挙句の果て殺人犯に仕立てられる男と、実に要領よく世間を渡り歩き殺人を繰り返す男と、そして事件の真相を探る警部とがそれぞれの運命の糸に引き寄せられるように、一同に会する皮肉なラスト。実に巧みな話術とストーリーの構成力には思わず唸らせられる。警部と奥さんの手料理のシーンは一服の清涼剤として笑わせられる。 8点(2000-11-26 23:25:02)(良:1票) |
91. 未来世紀ブラジル
人間の情報が管理化され無気力に働く人々という灰色の未来。その中で管理社会に圧殺されていく一人の男の悲劇を、風刺を交えた圧倒的なイマジネーションで描いた異色の近未来SF。主人公が翼をつけた鎧を身にまとい空を飛び、美しい娘の為に悪玉をやっつける。それを阻もうと地面から突如出現するビルディング。主人公のアパートの壁に這うように機能している無数の管のイメージ等々、T・ギリアムの“すべてが夢の中の出来事あるかのような”創造物に対する異能ぶりが如何なく発揮された秀作。スタンダード・ナンバーのサンバのリズムがなぜか哀しく聞こえる。 8点(2000-11-26 17:33:34) |
92. フォロー・ミー
原作は一幕物の舞台喜劇で、仲良し夫婦の勘違いを「堕ちた偶像」、「第三の男」のキャロル・リードが軽々とした演出で描いた小粋なコメディ。可憐なミア・ファローと珍優トポルのリズミカルで溌剌とした演技が、この作品に生命を与えている。やがて誤解がとけて、テムズ河の遊覧船上で女房の前に、夫が探偵愛用のコートを着て登場するラストも粋です。“♪フォロー・ミー”のテーマ曲は今もマイ・ベスト! 8点(2000-11-18 23:13:25) |
93. ブラザー・サン シスター・ムーン
フランコ・ゼフィレッリ監督といえば、どうしても「ロミオとジュリエット」ということになるが、もう一つ忘れてはいけないのが本作。史上有名なアッシジのフランチェスコを主人公にしたこの作品は、歴史物あるいは伝記ドラマである以上に、現代に通ずる平和的な愛の思想を謳い上げている。フランチェスコは自然を愛し、鳥や動物に親しみ、その無限の優しさに生きる事の意味を見出す。その思想が単なるメッセージとしてではなく、人間の優しさ、自然の優しさとして画面に純粋な実を結ぶ。絵画のようなロングショットの美しさが印象に残る作品で、賛美歌のような崇高な旋律のテーマ曲もまた素晴らしい。 9点(2000-11-12 21:08:42)(良:2票) |
94. 蝿の王
無人島に漂着した少年たちがサバイバル生活の中で、文明から遠く離れていく人間の残虐性と、それに拮抗する理性の有りかたというものを、瑞々しい感性で描く異色作。全体的にはうまくまとめ上げているものの、肝心の二人の相反する少年のリーダーの描き方が、いかにも児童文学的な大人しさが目立ち、人間の根源的なものの掘り下げが少々不足しているように思える。 7点(2000-11-11 23:19:25) |
95. パーフェクト・カップル
民主党の大統領候補を選ぶ予備選の話。その候補者たちが優位にたつためならば、相手候補のスキャンダルを暴くなど手段を選ばない。予想外の出来事に選挙参謀がどう対処していくかを実に面白おかしく描いている。それにしても邦題がよろしくない! 7点(2000-11-06 00:11:28) |
96. ジャッカルの日
緑の森の中に砕け散る真っ赤な西瓜。恐ろしいほどの静けさ。暗殺用の特殊ライフルの試し撃ちのワン・シーン。一匹狼でプロの殺し屋“ジャッカル”の情感というものが見事に表現されている。最後まで顔を合わせることの無い二人の男。作品は、人間味豊かに描かれるルベル警視と、孤独で冷徹・不敵なジャッカルとを対比させ、フィクションでありながらノンフィクションと錯覚をおこす程の、見事な緊迫感をもって描かれている。 9点(2000-10-16 23:34:46) |
97. 秘密と嘘
主人公たちそれぞれに秘密があり、告白するべき嘘をもち、そしてそれに涙する。それはそれぞれの痛みを分かちあい、そこに愛の存在というものを確かめ、やがてファミリーという自然な姿となる。この人生の悲喜こもごもの物語を、マイク・リー監督は中産階級や労働者階級の人々の生活に、喜びや哀しみ、さらに戸惑いや感動をも含めた、親しみを込めて切々と謳いあげていく。出演者のすべての演技が素晴らしい名作。 9点(2000-10-16 23:11:29) |
98. ファーゴ
登場人物がみんなどこか変だけど愛すべき人たちばかり。そんな彼らのドラマゆえ、ストーリー展開も予想がつかない。かなりエグいシーンもあるんだけど、むしろユーモラスにさえ感じるから不思議だ。 7点(2000-10-15 15:58:38) |
99. わらの犬(1971)
若い魅力的な人妻に目をつけ、やがて精薄の青年を追っかけてきた村のならず者たちを、自宅への侵入を防ぐため自らの知力と体力の限りを尽くし皆殺しにする数学者。都会から逃れて新天地の田園での平穏な生活を求めてやってきた主人公夫婦だったが、しかしこの世の中、何処へ行こうとも暴力の危機からは逃れられない。S・ペキンパー監督は、主人公が大惨劇のあと精薄者を車に乗せて霧の中を彷徨うラストに、当時のベトナム戦争末期のアメリカの姿をダブらしているかのように描いてみせる。 8点(2000-10-15 14:59:48)(良:1票) |
100. シャイニング(1980)
独特の映像哲学であらゆるジャンルに挑戦し続けるS・キューブリックの今回のテーマはオカルト・スリラー。この作品、観る人によって意見が分かれるでしょうね~。ただ原作をあえて無視してまでも自分独自の世界を構築するといった、彼の一貫した姿勢だけは評価しておきたい。相変わらずの洗練されてはいるが無機質な左右対称の構図や、本来誰もいないはずの広間に大勢の話し声が聞こえてくるシーン、クライマックスの積雪でできた迷路でのスティディカムの撮影効果などなど、これぞキューブリックの世界だと強烈に印象づけられるシーンばかり。ただ少女の亡霊などのさまざまな魑魅魍魎の登場シーンや、あるいはエレベーターから血が噴出すシーンなどは、意外なほどパンチが効いていない。J・ニコルソンの怪演がモノをいったような一作でもありました。 8点(2000-10-12 14:59:56)(良:1票) |