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鉄腕麗人さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2597
性別 男性
ホームページ https://tkl21.com
年齢 43歳
メールアドレス tkl1121@gj8.so-net.ne.jp
自己紹介 「自分が好きな映画が、良い映画」だと思います。
映画の評価はあくまで主観的なもので、それ以上でもそれ以下でもないと思います。

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121.  アガサ・クリスティー ミス・マープル2 親指のうずき<TVM> 《ネタバレ》 
突然死した叔母、消えた老婦人、時を越えた殺人事件……。 アガサ・クリスティらしいミステリーをミス・マープルが解き明かしていく。  浮上する「謎」の実像がなかなか見えないので、全編通して“ふわふわ”した感じてストーリーは進んでいく。 ミス・マープルと行動を共にするタペンス婦人がアル中だったりするので、余計に事件の真相が現実と妄想の狭間で見え隠れする。 それはミステリーの特徴として良いのだけれど、キーマンとなる人物の存在や見せ方もぼんやりと曖昧なので、ストーリー自体が追いづらい印象を受けた。導き出された真相と真犯人にも強引さと整合性の欠如を感じた。  独特の人間模様にはドラマ性があり、ミステリーとしての面白味は充分あるのだけれど、謎に対する真相に深みは無かったように思う。
[CS・衛星(吹替)] 6点(2010-10-15 10:59:17)(良:1票)
122.  アガサ・クリスティー ミス・マープル2 スリーピング・マーダー<TVM>
アガサ・クリスティの「ミス・マープル」シリーズの映像作品を初めて観た。 謎を解き明かす主人公が地味な老婦人ということで、それほど興味はそそられず恐る恐る観始めたが、冒頭から繰り広げられる上質なミステリアスに途端に引き込まれた。  婚約を機にインドからイングランドへ移ってきたヒロインが、何かに導かれるように訪れた売り家にて、養生時に見た「殺人」の記憶が突然蘇ったことから、それまで眠っていた事件が目覚める。 ヒロインと事件にまつわる人々が入れ替わり立ち替わりし、複雑な人間模様があらわれてくるくだりは、アガサ・クリスティらしいストーリーテリングで、事件の真相と並行して導き出される隠された人間ドラマが秀逸だった。  ソフィア・マイルズが演じたヒロインが、蘇る記憶に苦悩しながらもアグレッシブに過去の人間関係を辿っていくので、ミス・マープルの存在性が薄く感じてしまったことは如何なものかと思う。 が、一つのミステリー作品としての完成度は極めて高く、オールドイングランドを舞台に洗練された文体の世界観を堪能できた。
[CS・衛星(吹替)] 7点(2010-10-05 13:00:01)
123.  PUSH 光と闇の能力者 《ネタバレ》 
様々な超能力を持つエスパーたちが、三つ巴の攻防を繰り広げるという設定は、非常に興味をそそられた。主人公の味方チームがそれぞれの能力を生かして、相手に対抗していく展開も、個人的にツボにはまるものだった。 2005年の「宇宙戦争」以来、久しぶりに出演作品を観たダコタ・ファニングが相変わらず可愛らしく、少し大人の色香も出始めており、良かった。拳銃を両手に持つ様などには、「レオン」のナタリー・ポートマンを一瞬彷彿とさせる魅力が垣間みれた。  が、映画自体はあまり面白くない。  同じ素材でもっと面白くすることは如何様にも出来たのではないかと感じた。 先ず、娯楽映画としての派手さが無さ過ぎる。今の時代、“エスパー映画”が出来たと聞けば、最新の映像技術を駆使したスタイリッシュな映像世界を期待してしまうもの。 それなのに、映し出されるそれは「何年前の映画だ?」と思ってしまう程チープな表現に終始する。  主人公をはじめ登場するキャラクターの「性格」が今ひとつ定まっていないことも致命的だ。キャラクター性が掴めないので、言動に対する理由も終始掴み切れず、説得力に欠ける。  エスパーの能力を絡めて凝ったつもりだろうストーリーは、一定の整合性は保っているけれど、ただいたずらに複雑にした印象が強く、没頭することが出来なかった。  それなりに豪華なキャストを揃えたこの映画は、いろいろと“含み”を持たせてエンディングを迎える。 おそらくはシリーズ化も念頭に置いているのだろうが、たぶん続編は無いだろう。  もっとシンプルに単純な娯楽性を突き詰めていれば、もっと面白い映画になっていたかもしれないという要素は所々あった。久しぶりのダコタ嬢だっただけに、残念。  邦題も意味不明でダサ過ぎる。
[DVD(字幕)] 3点(2010-09-27 00:11:06)
124.  名探偵ポワロ 死との約束<TVM>
遺跡発掘現場にて会した“訳ありの一族”。周囲から忌み嫌われる夫人が殺される。 アガサ・クリスティの原作のみならず、もはやミステリーそのものの大定番の舞台設定の中で、物語は展開していく。  はっきり言うと、用意された「真相」も、“定番”であることは否定できない。 並のミステリーであれば、“オチ”の正体を薄々感じさせるストーリーなど、退屈過ぎ馬鹿らしくて追っていられない。 ただこれがアガサ・クリスティの「名探偵ポワロ」である以上、“退屈”なんてものは存在しない。  何となく真相は見えつつも、デヴィッド・スーシェ扮するポワロの推理劇に身を任せることを厭わない。予定調和の中に身を置くことに、むしろ心地良ささえ感じる。  砂漠の灼熱の中で突如発生した謎が、陽炎のように大きく膨らみ、名探偵により束の間の実体を見せ、去っていく。 アガサ・クリスティらしい叙情的なミステリーに、安心して没頭させられる。   P.S.「ハムナムトラ」シリーズのジョン・ハナーが出演しており、明らかに「砂漠の遺跡発掘現場」という舞台設定を意識したキャスティングにほくそ笑んだ。
[CS・衛星(吹替)] 7点(2010-09-21 13:28:21)
125.  名探偵ポワロ 第三の女<TVM>
「第三の女」と聞くと、いかにも謎に満ちあふれた女の存在をイメージしてしまうが、実際に描かれる設定は、ルームシェアをする若い女性たちの中の”3番目”の女に、同じアパートに住む老婆の殺人疑惑が生じるというもの。  ミステリーのとっかかりはとてもミニマムだ。しかし、名探偵エルキュール・ポワロが事件に絡み合う人間模様を追求していくにつれ、過去のトラウマ、莫大な遺産相続と人間の隠された思惑が拡大していき、「真相」が謎の中に入り込んでいく。  このところ3作品連続して英国のテレビ映画シリーズ版“ポワロ”を観ているが、やっぱりとにもかくにも、デヴィッド・スーシェのポワロぶりが抜群だ。  デヴィッド・スーシェが演じるポワロの存在感が凄いのは、事件を解き明かしていく様、事件を解き明かした後の様に、何とも言えない愁いを携えているところだと思う。 物語においてメインに描かれるのはもちろん「事件」だが、決してそれに映画全体が支配されるわけではなく、要所を主人公である名探偵がしっかりと押さえている。それを成しているのが、デヴィッド・スーシェの存在感だと思う。
[CS・衛星(吹替)] 7点(2010-09-16 12:21:16)(良:1票)
126.  バイオハザードIV アフターライフ
「バイオハザード」シリーズは、すべて映画館で観てきた。 理由は単純明快、1997年の「フィフス・エレメント」以来、主演のミラ・ジョヴォヴィッチのファンだからだ。 そして、第一作目「バイオハザード」は、彼女を“スーパーヒロイン”アクション映画の象徴として確立した秀作だからだ。  が、正直なところ、パート4となる今作については、劇場に足を運ぶつもりは無かった。 前作(パート3)の秀作から転じたあまりの「醜作」ぶりに辟易したからだ。 加えて、流行りに対して安易に乗じたとしか思えない「3D版」での劇場公開もマイナス印象だった。度重なるとってつけたような“3D版”の氾濫にはいい加減うんざりしている。 ブルーレイなりDVDなりを自宅で観るので充分だと考えていた。  それなのに、結局劇場に足を運んでしまった。しかも追加料金を払って3D版を観る始末……。  パート1を監督したポール・W・S・アンダーソンが、再び監督に乗り出したということも要因だが、結局は、「やっぱり3Dのジョヴォヴィッチが観たい」という欲望に負けたと言える……。  今作がパート4でなければ、それなりに満足出来たのだろうと思う。 パート3で行き過ぎてしまったヒロインの超人的な設定を排除して、原点に立ち戻ったことは良かった。 無数に襲いかかってくるアンデッドをただ単純に撃ちまくるというシーンの連続は、新たな工夫がまるで無い反面、原作であるゲームの趣向に近いと思う。 ほとんど無意味なスローモーションの連続も、ゲームの映画化において、映像の面白さだけを追い求めたと考えれば、決して悪くはない。  ただし、今作はシリーズの4作目であり、時代は2010年である。 どうしたってこれまでのシリーズ作に連なるストーリー性は求めてしまうし、3Dだろうが何だろうが、ただ「格好良い映像」なんてものは散々見飽きている。 映像世界の魅力だけで迫るのであれば、誰も観たことがない未知なる映像世界の「追求」が無ければ、観客のカタルシスはもはや得られない。  主人公の目的も基本となる世界観も、もはや二の次で、まるでテーマパークの“アトラクション”レベルの内容しか伴っていないことは致命的だ。 例によってまだまだ続編を作る気満々のようだが、もはや映画作品としての魅力は落ち込んでいるように思える。  とか言いつつ、また欲望に負けて主演女優の勇姿を観に行くことになるのかもしれないが……。
[映画館(字幕)] 5点(2010-09-12 19:24:35)(良:1票)
127.  ナイル殺人事件(1978) 《ネタバレ》 
数多のミステリー作品のもはや「礎」とも言えるものが、アガサ・クリスティのミステリーだと思う。それは「王道」であり、ありきたりに感じようが、展開が強引で腑に落ちないと感じようが、否定出来る術は無い。  ただその「王道」に対して、敢えてというか、改めて苦言を呈することができるのならば、一つだけ言いたい。  現場となる遊覧船に同乗しながら、3度の殺人を繰り広げられ、挙げ句犯人の死も食い止められずにいて、よくも「いい推理だった」なんて言えたものだ……。 これまで他の作家の作品でも大いに感じてきたことだが、物語を冷静に振り返ると、その違和感はいつもつきまとう。  ただし、そういう違和感を感じたからと言って、この映画が面白くないなんてことは断じてない。 それは、アガサ・クリスティーのミステリーにおける「王道」ぶりは、その違和感さえも含むからだ。  一見すると、ミステリーの主人公は「謎」を解き明かす“名探偵”のように思える。 でもそれは間違いで、ミステリーの主人公は事件の発生によって巻き起こる「謎」そのものであり、そもそも「謎」が生まれそれが解き明かされない限り、主人公は登場すらしないことになる。 エルキュール・ポワロをはじめとする名探偵は、物語の狂言回しに過ぎないのだ。  入り組んだ「謎」を物語の中で優雅なまでに繰り広げ、狂言回しの名探偵がその正体を浮かび上がらせ、犯人の死によって締める。 そのすべてが、ミステリーに許された「美学」であり、それを如実に反映したこの映画もその優雅な美意識に溢れている。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-09-09 14:53:27)
128.  月に囚われた男
月世界の静寂の中で響く繊細な旋律が印象的な映画だった。 美しく響き渡る音色が、殊更に映画世界に満ちる“孤独感”を際立たせた。  月の裏側で唯一人、貴重な地下資源の採掘業務に従事する男。 孤独と望郷の念に耐え続け、3年間の任期終了まであと2週間に迫った時からストーリーは始まる。  主要キャストは、主演のサム・ロックウェル“一人だけ”だということは認知していたので、果たしてこの性格俳優の「一人芝居」でどのように映画を転じさせていくのか。 もしかすると、物凄く地味で独りよがりな映画なのではなかろうか、という疑念も持ちつつ、映画の「試み」に対して非常に興味深かった。  しかし、その想定は数奇なSFスリラーの展開により、良い意味で裏切られた。  アイデア自体は「奇抜」という程では無いのかもしれないが、“驚き”への導き方と見せ方がとても巧い。 一人の男の淡々とした描写から、突如スリラーの渦に放り込まれる感覚。そのストーリーの転換を、決して映像や音響の急激な変化に頼るのではなく、一つの「視点」の変化のみでさらりと、だが劇的に成している。  そして、このSF映画が素晴らしいのは、ストーリーにおける“驚き”が映画のハイライトではないということだ。 “驚き”はスパイス的な一要素に過ぎず、そこから始まる悲哀に溢れたドラマこそが、この物語の核心となる。  主人公に課せられたあまりに残酷な運命。 それを受け入れる様、それに抗う様、相反する“二つの姿”の在り様こそが、この挑戦的なSF映画の深さであり、面白味だと思う。  SFとは科学的空想であり、だからこそ、そこには人間の心理描写が不可欠だと思う。 人の精神と科学が結びつき交じり合い、無限なる世界が創造される。  手塚治虫の「火の鳥」や、藤子・F・不二雄のSF短編漫画を彷彿させる、広大な奥行きを備えたSF映画だ。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2010-08-30 00:05:23)(良:2票)
129.  ナイト・オン・ザ・プラネット
自分自身もすっかり大人になってしまい、深夜のタクシーに乗る機会も度々あるようになった。  大概の場合酔っ払っていて、繁華街から自宅までのせいぜい20分間程度の道のりなので、特に何があるということはないけれど、タクシーの中というものには独特の雰囲気があると思う。  その雰囲気は、全く見ず知らずの運転手と客との間に生じるその場限りの「空気感」によるものだと思う。  地球という惑星のあちこちで、全く同時刻にひっそりと織りなされたタクシー運転手と客らによる5つのショートストーリー。 ジム・ジャームッシュらしい淡々とした語り口で繰り広げられるこのオムニバス作品には、本当に何気ない人間同士の関わり合いにおける素晴らしさが溢れている。  それぞれのストーリーの登場人物たちが、その束の間の出会いによって、何かが変わったということは決してない。 ただそれでも、その一つ一つの出会いが、次の瞬間の人生を築いていくということを、この映画は、深夜の静寂の中でしっとりと伝えてくる。  とても良い映画だと思った。
[DVD(字幕)] 8点(2010-08-13 13:02:33)
130.  オリエント急行殺人事件(1974)
アガサ・クリスティ原作の「名作」というこの映画に対する評は随分と前から認知していて、10年以上前にレンタル落ちのビデオテープも購入していたのだけれど、なかなか食指が動かず、観る機会がなく、ビデオもどこかにいってしまっていた。  食指が動かなかった最大の理由は、“ストーリーのオチ”を知ってしまったからに他ならない。 原作も映画もあまりに有名な作品なので、どこかしらからミステリーの顛末が耳に入ってしまったのだ。 オチを知ってしまったミステリーほど魅力減のものはないわけで。  満を持して鑑賞に至ったわけだが、なるほど面白い。  何たってアガサ・クリスティのミステリーなので、そのストーリー展開はもはやミステリーの「定番」といったもので目新しさはない。 しかし、描き出される映画世界にはもちろん時代は感じるが、往年の娯楽映画によくある“古臭さ”は全くなかった。 それは名匠シドニー・ルメットの卓越した映画創りによるものだろうと思う。  前述の通り顛末は知ってしまっていたので、ミステリーに対する“驚き”は少なかったが、それでも思わず唸りたくなるような「真相解明」は、流石に上質だった。 
[DVD(字幕)] 8点(2010-08-08 10:53:47)
131.  ジャガーノート
爆弾の解体シーンにおける、「赤か?青か?」の大定番を生み出したと言われる本作。 大定番の「初出」に相応しい見事なサスペンスアクションを堪能出来た。  冒頭の船出のシーンと“ブリタニック号”という船舶名から、海洋パニック映画の雰囲気を携えて映画はスタートする。しかし、その雰囲気を良い意味で一変させて、船上の爆弾解体と本国での犯人捜しという2本のラインを並行させてサスペンスフルな展開が巧みだったと思う。  ストーリー自体の巧みさもさることながら、やはり何と言っても特筆すべきは、爆弾解体の緊迫感だろう。 爆弾犯が仕組んだ幾重ものトラップかいくぐりながら解体していく様は、このジャンルの映画の常套手段的な演出であるが、その礎となった今作の”オリジナリティ”は上質で印象的だった。  それにしても、今作のタイトルを知ったのは映画「交渉人 真下正義」で犯人が引用したことからだが、このように優れた映画でもタイトルも知らない映画もまだまだ多いのだろうと思う。  観なければならない映画は尽きない。
[DVD(字幕)] 7点(2010-08-01 23:20:15)
132.  インセプション
睡眠中の「夢」というものを、本当によく見る。 前夜に見た夢のことをつらつらと思いめぐらせて、一日が過ぎるということもしばしばある。 そういう者にとっては、この映画の完成度は殊更に高まると思う。  「夢」の世界の中で巡りめく攻防を描く今作。 先ずはストーリー展開がどうのこうの言う前に、その世界観のクオリティーの高さにおののく。  夢をよく見る人であれば、常に感じているだろう“夢”という世界の“目まぐるしさ”を完全に表現している。その映像世界が、先ず圧巻だ。  表面的な現実感と同時に存在する、時空と空間を超越する「感覚」。  そういうことを、現時点で成し得る映像表現の全てを使って”具現化”している。 その映像世界を構築した時点で、この映画の価値は揺るがない。  「ダークナイト」ですっかりメジャー監督となったクリストファー・ノーランだが、よくよく思い返せば、彼は「メメント」の監督なわけで、この手の作品こそこの映画作家の“真骨頂”ということなのだろうと観終わって納得した。  ただし、この映画に対して充分に評価した上で言わせてもらうならば、  物凄い製作費を投じて生み出された作品ならではの、出来るだけ広いマーケットを意識した“譲歩感”は感じられる。  恐らく、クリストファー・ノーランの本来の「構想」は、もっと無遠慮に難解で、歪んでいく映像世界を凌駕する程にねじり込まれたものだったのではないかと思われる。  “鑑賞者”として物凄く身構えた分、ストーリー展開に対しては、案外“ストレート”な印象を受け、一抹の物足りなさも感じた。 詰まりは、もっと人間の精神的な内部に踏み込み、その不可思議さに対する顛末を表現出来たのではないかと思う。  主演のレオナルド・ディカプリオが、もう一つ弾き切れていなかったことも、そういった“遠慮”が少なからず影響していたように感じてならない。 一概には比較出来ないが、ディカプリオのパフォーマンスだけを捉えるなら、今年公開された「シャッター アイランド」の方がインパクトがあった。  まあ、とは言っても、とんでもないオリジナリティに溢れた映画だということは間違いないし、その映画のセカンドネームに「Ken Watanabe」がクレジットされていることは、日本の映画ファンとして誇り高いことだと思う。
[映画館(字幕)] 9点(2010-07-25 00:34:22)(良:2票)
133.  ヘアスプレー(2007)
素晴らしい。まさにこれこそがミュージカル映画だ。  歌って踊ることが大好きなおデブちゃんの女子高生が、テレビスターを夢見る。それに当初は反対する巨漢の母親。その母親役をなんとジョン・トラボルタが演じている。 そう聞くと、なんだかエディ・マーフィのコメディ映画みたいな印象も受けるが、ある意味、圧倒的に正統な楽しさに溢れるミュージカル映画に仕上がっている。  数日前に豪華俳優陣を揃えて大ヒットブロードウェイミュージカルを映画化した「NINE」を観たばかりだった。「NINE」は流石に豪華な大ミュージカル映画だったが、あくまで舞台ミュージカルの映像化という範疇を抜け切らなかった点が、ミュージカル映画好きとしては残念だった。  でも、今作は、映画だからこそ表現出来るミュージカルシーンをきちんと見せてくれる。 主人公の女子高生が、丸々とした愛らしいルックスで朝の街を歌い踊りながら登校するシーンからはじまり、ロケーションとカメラワークで多面的でバラエティ豊かなミュージカルシーンに溢れている。  ストーリーなんて二の次で、とにかく見ているだけで「楽しい」。ということこそ、ミュージカル映画が持つべき根本的な魅力だと思う。 その本質をしっかりと押さえつつ、“他人と違う”ということを肯定しその価値を魅力的に示すことで、あらゆる「差別」の否定にまで繋げたストーリー構成も良かった。   何と言っても、ジョン・トラボルタを自らの体型にコンプレックスを持つ母親役に配したことが、最大のファインプレイだろう。 やや引きこもり気味だった母親が、新進的な娘に刺激されて徐々に自分を曝け出していく流れは、トラボルタがどういう俳優か知っている人にとっては予定調和過ぎる要素ではあるが、巨漢の母親に扮した彼がBigな尻を振り乱し歌い踊る様は問答無用に爽快だ。 そして、すっとぼけてはいるけど理解のある人格者の父親を演じたのは、名優クリストファー・ウォーケン。 まさかトラボルタとウォーケンが「夫婦役」で共演し、愛に溢れたミュージカルシーンで共に歌い踊るとは……、拍手。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2010-03-22 12:43:08)(良:2票)
134.  シャーロック・ホームズ(2009)
“シャーロック・ホームズ”の今更の映画化、しかも監督は、ガイ・リッチー。 正直、「なんだそりゃ」と、イメージのアンバランスさに戸惑ってしまった。 更に、主人公“シャーロック・ホームズ”を演じるのは、ハリウッドきっての問題児、ロバート・ダウニーJr.。 流石に“悪ノリ”し過ぎなんじゃないかと一抹の不安を保ちつつ、鑑賞に至る。  予想通り、“悪ノリ”し過ぎている。が、問答無用に”面白い”。  コナン・ドイルの世界的古典「シャーロック・ホームズ」と、ブリティッシュ・ギャング映画を得意とするガイ・リッチーのまさかの融合。 そこに生まれたのは、奇跡的なエンターテイメントだった。  “英国紳士”という世界的なイメージが定着しているシャーロック・ホームズというキャラクターを、180度転じた無頼漢に仕立て直した試みが、何と言っても面白い。 しかも、そこにロバート・ダウニーJr.を配した潔い抜群のキャスティングに脱帽だ。  実は今年に入って、ロバート・ダウニーJr.主演の「アイアンマン」を観たばかりで、立て続けて新たな造詣の”ヒーロー”を演じる彼の姿を見て、自らの”過ち”を糧にして新境地を切り開いた役者魂を感じずにはいられない。  混沌とする現代社会は、汚れのない真っ当なヒーローなんて真実味がなくて魅力を感じないのだと思う。 不潔でだらしなくて、多少強引に「正義」を貫く新たなヒーローの姿に、共感し喝采を送る時代なのだ。  ただし、「アイアンマン」と並び、これでヒーローシリーズの主役を張り続けるしかないロバート・ダウニーJr.には、ぐれぐれも真っ当に俳優業を続けてほしいものだ。
[映画館(字幕)] 8点(2010-03-14 03:05:21)
135.  007/ロシアより愛をこめて
どうにも掴めない……。 と、いうのが往年のアクション映画を観て幾度となく感じてきた印象である。  映像の稚拙さやテンポの悪さ。それらは、現在のアクション映画のめまぐるしい程の映像に慣れ親しんでしまっているからかもしれないが、とにかく全編通して間延びしてしまう。 悪役との格闘シーンもごちゃごちゃともみ合うばかりで、結局あっけなく終わってしまい、盛り上がりきれない。  初代ジェームズ・ボンドのショーン・コネリーは、さすがに若く格好良い。ただし、これも現在と比較しての映像の稚拙さによるところだろうが、スーパー諜報員のわりにはどうも動きがフツーというか、アクション性が低い。  現ジェームズ・ボンドのダニエル・クレイグとショーン・コネリーが闘ったとしたら、絶対にクレイグが圧倒するだろうなあと思ってしまった。
[ブルーレイ(字幕)] 5点(2009-12-26 14:08:47)
136.  アバター(2009)
流行りの3D映画を初めて観た。 その「初体験」がジェームズ・キャメロンの12年ぶりの新作で、本当に良かったと思う。  革新的な映像を見せる映画に対して、“未経験の映像体験”なんてキャッチコピーはよく使われるが、今まで観たどの映画よりも、この映画こそその常套句にふさわしい。 まさに、「観た」というよりは、「体験した」という表現の方がぴったりとくる。   正直、危惧の方が大きかった。 「タイタニック」以降、音沙汰なかった巨匠が、12年ぶりに挑んだ最新作は流行りの3D映画。 個人的に、3D映画に対しては、最新技術に頼った安直さが伺えて興味がなかった。映画の「本質」をぼかしているように思えたからだ。 大々的に広告はしているけれど、ただただ資金と時間を浪費した“超駄作”に仕上がっているのではなかろうか。と、不安を抱えたまま劇場へ入った。 初めての3Dグラスは、非常にかけ心地が悪く(眼鏡をかけているので尚更…)、上映前に益々萎えてきた。  しかし、本編が始まるにつれ、危惧とか不安とかそういうものは一蹴された。 それ以上に、今ここにある自分の日常的な存在自体が、どこか遠くに吹き飛ばされる感覚を、終始覚えた。 冒頭から間もなくして、すっかり映画世界に引き込まれた。  “引き込まれた”という表現を映画の感想で多々使ってきたけれど、今作ほどその表現にふさわしい映画はないと思う。 まさに「体感」。出演者の息づかいをスクリーン越しに感じるのではなく、自分自身が彼らと共に息づいているような感覚。それは紛れもない未体験ゾーンだった。   素晴らしい映画によくありがちなことだが、この映画は、うまく形容する言葉が見つからない。  『未開の惑星を侵略する地球人、スパイとして先住民族の中に送り込まれた主人公、やがて主人公は愚行から目覚め先住民と共に地球人の侵略に立ち向かう。』  と、プロットをただ言葉にするとあまりにありふれている。 が、そこに加えられた“光”と“音”によって、圧倒的な価値が生まれる。 それこそが「映画」そのもののマジックであると思う。  3Dという新たな映画表現によって見せ付けられたのは、そういう根本的な映画娯楽の魅力と、 12年ぶりに復活したエンターテイメント映画の大巨星の、絶対的な“瞬き”であった。  “ゼロ”からの圧倒的な「創造」。そのすべてが、凄い。物凄い。
[映画館(字幕)] 10点(2009-12-26 02:06:09)(良:1票)
137.  サブウェイ123 激突 《ネタバレ》 
初めての海外旅行で、当然ながら初めて航空機の国際線に乗った。 せっかくなので、機内上映の映画を見ようと思い、映画のプログラムを見てしばし葛藤。 国際線ということで、いま日本では劇場上映中、もしくは上映終了したばかりの作品がいくつか見られる。 が、とは言っても鑑賞の環境はあくまでエコノミークラスの狭い座席であり、映画を観る環境としては劣悪極まりない。もし見た映画が素晴らしい映画だったとしたら、逆に“勿体ない”。  そんなこんなで思案した挙げ句、選んだ作品がコレ。 スター俳優の競演、過去の秀作のリメイク(未見)、監督はアクション映画の雄トニー・スコットと、注目すべき要素はあり、劇場に足を運ぼうかと思ったりもしたのだけれど、もう一つ鑑賞意欲がわかず、二の足を踏んでしまっていた。  結論。機内で見る“時間つぶし”には丁度いい映画だった。  地下鉄職員とハイジャック犯の「頭脳戦」を映画の最大の”売り”とし、そこに名実共に力のある二大スター俳優を配置した、そこまでは良かったと思う。 ただし、肝心のストーリーテリングが稚拙すぎる。  地下鉄職員、ハイジャック犯の両者に通じて、キャラクター性が希薄で、終始言動に説得力が無い。故にどちら側にも感情移入が出来ない。  デンゼル・ワシントン&ジョン・トラボルタというキャスティング自体は、もちろん魅力的だが、ストーリーが薄いので、それぞれが演じるキャラクターの底が浅く、容易に予測がついてしまう。  工夫に乏しいストーリーによって、何を持って「頭脳戦」を指しているのかさえ見えてこない。 もちろん役づくりなのだろうが、ワシントンもトラボルタもボテッとした体型をしており、見栄えがよろしくない。 いろんな意味で、格好悪い映画だ。
[地上波(字幕)] 3点(2009-11-24 21:34:27)
138.  ターミネーター4 《ネタバレ》 
この映画は、「ターミネーター」という映画シリーズのSF性をどういう風に捉えているかによって、その是非は大いに変わってくるのだと思う。 まず理解しなくてはならないことは、この映画シリーズの各作品は必ずしも一連の時間軸上で連なってはいないということだ。  今作はそうしたシリーズのSF性を、根底に据えた上で、過去の名作に依存しないオリジナリティーをもって描き出されていると思う。  コンピューターに「自我」が芽生えたことに端を発した終末戦争のおいて、人類としての「自我」を忘れまいと戦いに臨むジョン・コナーの姿は、過去の作品において「未来からの情報」として語られつつも、決して描かれることのなかった抵抗軍指導者の圧倒的なカリスマ性を見事に表現し切っている。  そして、過去と未来、更に未来と過去を繋ぐためのキャラクターとして登場するマーカス・ライトの存在性は、まさにキーパーソン。その役割は本作のみにおけるものだけでなく、シリーズ全体をある意味において繋ぎ止める重要なキャラクター性を秘めている。  そして、崩壊し乾き切った空気の中で繰り広げられる圧倒的にメカニカルな迫力性は、明らかに独自の世界観を構築している。   シリーズの各作品それぞれで描かれる「未来を変えるための戦い」とその顛末は、結果的に幾つもの”パラレルワールド”を生じさせたのだと思う。  第一作目の「ターミネーター」で、ボディビルダー上がりのアクション俳優が、文字通りの「殺人マシーン」として過去に送られた時点で、未来のパターンは無数に枝分かれした。 美少年のエドワード・ファーロングがジョン・コナーである「T2」も、醜男のニック・スタールがジョン・コナーである「T3」も、それぞれが枝分かれした時間軸での“別世界”だと考えれば、途端に納得しやすくなる。  今作の最大の価値は、そういった一連の時間軸上に存在する様に見えて、実はバラバラの世界観を描いていた映画シリーズを、更に全く違う時間軸と、世界観を描き出した上で、繋ぎ止めてみせたことに他ならない。  密かに期待していたT-800(=?)の絶妙な登場シーンも含め、色々な意味で楽しみがいのある秀逸なエンターテイメントだ。
[映画館(字幕)] 8点(2009-06-17 01:15:15)(良:2票)
139.  ザ・ムーン
人類が「冒険」をしなくなって久しい。「アポロ計画」は、人類が臨んだ最後の「冒険」となっているのではないかと思う。  1本のロケットもまともに打ち上げられなかった時代、「人類を月に送る」と宣言したJFKは、その計画に対しどれほどの「確信」があったのだろう。 作品の中でも語られているが、彼(JFK)は、ヒーローだったのか、夢想家だったのか、狡猾な政治家だったのか、そのすべてだったのか。 ただ何よりも重要なのは、大国の歴史的リーダーが、自国の威信と誇りをかけて「未知」へと進むための具体的なアクションを起こしたということだと思う。 失敗も成功も、何かをしなければ得られないわけで、すべてはJFKの宣言から始まったのだろう。  月へ向かった宇宙飛行士たちが語るアポロ計画の真実、そして「未知」を経験した価値。それぞれのコメントも実に印象深いものばかりだったが、それ以上に感じたことは、彼らの「目」の輝きだった。皆、80歳前後の老齢のはずだが、その目の輝きは、おそらくかつて月へ向かったかの日のままなのだろうと感じた。  莫大な予算を投じ、多くの犠牲もあった。しかし「冒険」の価値は、そのすべてを凌駕する。 有史以降、未知に向けてのチャレンジは、人類自体の成長そのものだったと思う。 即ち、人類としての「冒険」を止めてしまうことは、人類という「種」自体の退廃に直結する。  大偉業から40年。人類は再び、冒険に向かうべきではないか。 
[映画館(字幕)] 8点(2009-05-25 22:02:02)(良:1票)
140.  バーン・アフター・リーディング 《ネタバレ》 
下世話な欲望の連鎖に、CIAの機密情報が絡んだらどうなるか? コーエン兄弟くらいしか思いつかないだろう題材を、どこまでも馬鹿馬鹿しく描いた映画だった。  シュールでブラックなユーモアセンスは、相変わらずのコーエン節で愉快だった。 ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、フランシス・マクドーマンド、ジョン・マルコビッチ、ティルダ・スウィントン、とアカデミー賞クラスの俳優をずらりと並べた豪華さは、強く興味深かったし、それぞれの俳優のアクの強い演技は流石だったと思う。 (特にブラッド・ピットの馬鹿野郎ぶりは、「ベンジャミン・バトン」を観た後だっただけに、殊更強烈だった)  しかし、そういう利点に相反して、映画としての魅力をあまり感じることができない。 馬鹿馬鹿しさの中にしっかりと“巧さ”のあるストーリーだけれど、面白くない。  その原因の一つとして、豪華な俳優を揃えたはいいが、それぞれの直接的な絡みが希薄であることがあげられると思う。 同シーンに存在はしているけど、台詞の掛け合いがあまりないので、巧い俳優それぞれが「独り相撲」をしている格好になっている。  結果として一番面白かったシーンは、スター俳優の登場しない、CIAの管理職同士のやり取りであった……。  キャスティングの段階で力を注ぎ過ぎてしまい、肝心の映画づくり自体に軽薄な印象を、観客に与えてしまったことは、残念。
[映画館(字幕)] 5点(2009-05-02 12:08:37)
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