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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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1.  ウォーター・ホース 《ネタバレ》 
 ネッシー映画って、何故かネッシーを「人を襲い、食い殺す化け物」として描いた品が多いんですよね。  「怒りの湖底怪獣/ネッシーの大逆襲」(1982年)然り「ジュラシック・レイク」(2007年)も、また然り。  にも拘わらず、本作ではネッシーを「人間の友達」として描いているんだから、それだけでもう、嬉しくなっちゃいます。  数少ないネッシー映画の中で、最も有名なのが本作だと思うし、自分としても一番好きなネッシー映画となりそう。   そんな訳で「これぞネッシー映画の決定版」と大いに褒めたいところなんですけど、ここで思わぬ落とし穴。  実は本作における「ネッシー」には「クルーソー」という独自の名前が付けられており、それがちょっとこう……微妙にピントずれちゃってる感じなんですよね。  観ている側としては「ネッシー」と思ってるのに、劇中人物達は「クルーソー」あるいは「モンスター」と呼んでいる。  これに関しては、多少不自然になってもアンガス少年が「ネッシー」と名付けて、それが何時の間にか世間にも流布してしまったとか、そういう流れにした方が良かったのでは? なんて、つい思っちゃいました。   元々あったウォーター・ホース伝説と組み合わせ「実はネッシーの正体とは、ウォーター・ホースなのである」って展開にしたのは悪くないんですけど、どうにも取っ散らかり過ぎなんですよね。  作中で色んな呼び名、色んな属性が当てはめられてるせいで、愛着が湧き難くなってしまった気がします。   あと、クルーソーと別れる場面にて、アンガス少年に「お前は一番の友達だよ」と言わせるなら、もっと事前に両者の交流を描いて欲しかったです。  クルーソーとの絆に関しては、贔屓目に見ても「可愛がってたペット」くらいにしか思えなかったし「場面単体で考えたら悪くないんだけど、伏線が足りないから感動出来ない」って形になってるのが、本当に残念。  戦死した父の存在をドラマに絡め「もう二度と会えない存在である父とクルーソーを、それでも愛し続ける主人公」「クルーソーとの別れによって、ようやく主人公は父とも本当のお別れが出来た」という描き方にしたのも、個人的には微妙というか……  ちゃんとクルーソー(ネッシー)との絆一本で映画にして欲しかったというのが、正直な気持ちです。   とはいえ、総合的に考えると好きな映画だし、良かったと思える部分の方が、ずっと多かったですね。  冒頭にて、色んなネッシー写真で目にした「湖畔の古城」が姿を見せる場面だけでもグッと来ちゃったし、クルーソーの頭には角があるしで、ネッシー好きとしては、それだけでも満足。  写真を偽造している連中の、すぐ傍で本物が泳いでる場面なんかも、皮肉なユーモアがあって良い。    「ネス湖に怪物なんていない」と主張する、世間の代表とも言うべき母親の前に、クルーソーが姿を現す場面をクライマックスに据えてるのも、もう大正解。  ネッシー好きにとっての悲願とは「ネッシーを否定する人物に、本物を見せてやる事」だと思うし、それを映画の中で叶えてくれるんだから、本当に嬉しかったです。   ネッシーに乗ってネス湖を泳ぐという、幻想的な場面も素晴らしいですね。  これまで自分が観てきた映画の中でも、最も活き活きとして美しいネッシーが、ネス湖を縦横無尽に泳ぎ回るという、その姿を拝ませてもらえただけでも(良いもん見たなぁ……)って、しみじみ感じられました。   2023年現在、自分の口から「ネッシーは実在する」と言えば、それは嘘になってしまうと思います。  それと同様に「この映画は面白い」って言ってしまうと、それも嘘になっちゃいそうなんですが……  夢の有る映画である事は、間違い無いと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2023-08-29 18:57:01)(良:1票)
2.  ハンニバル・ライジング 《ネタバレ》 
 「ハンニバル」の時点で(殺人鬼であるレクターを、ヒーローとして描こうとしてるのでは?)って違和感があった訳だけど、本作では完全にヒーローに変身しちゃってますね。  「羊たちの沈黙」にて、罪の無い警官を平気で殺してた男が、良くもまぁここまで変わったもんだと、妙に感心しちゃいます。   そんな具合に、皮肉な目線で捉えるなら「レクターを正義の味方みたいに描かないで欲しい」とか何とか、文句も言えちゃう訳だけど……  意外や意外、これが結構楽しめたんですよね。  後のシリーズと切り離し、本作単体で考えるなら「妹を殺した連中と、愛する女性を侮辱した男しか殺してない主人公」って形になってるし、シンプルな復讐劇として、奇麗に纏まってると思います。   むしろ本作に関しては「主人公は後のハンニバル・レクターである」って点が、デメリットになってるんじゃないかと思えたくらい。  レディ・ムラサキから剣道を習い、それを活かして最初の殺人を行う訳だけど(それなら、後々も日本刀がレクターの得意武器となるはずでは?)って、気になっちゃうんですよね。  それと、この後レクターは上述の通り「罪の無い警官を平気で殺してた男」に変貌する訳だけど、その変貌するキッカケなども描かれていないから「殺人鬼ハンニバル・レクターが誕生した理由」ってのが、見えてこないんです。  あえて言うなら、愛する女性のレディ・ムラサキに振られた事が「復讐者」から「殺人鬼」に変わった理由かとも思えるんですが……  それにしては、エンディングにて「復讐」を完遂しようとする姿で終わってるしで、何かチグハグですよね。   素人の浅知恵ですが、本作に関しては「純粋な復讐劇」として考えるなら、自らも妹を食べていたと悟った主人公は、復讐を完遂した後に自殺する結末の方が良かったと思うし、逆に「ハンニバル・レクター誕生を描いた物語」として考えるなら、復讐の為じゃなく快楽の為に殺人を犯すようになった場面を描くべきだったと思います。  「ハンニバル」よりは面白いって思えた一作なんですが、この辺りの歪さに関しては、正直褒められないです。   その他にも「山小屋の兵士達が、それほど餓えてるように見えない」とか「失語症が治るカタルシスを描かずに、あっさり治しちゃうのは勿体無い」とか、色々と気になる点も多い映画なんですが……  レクターが返り血を舐める場面なんかは、素直に恰好良かったし「正義では裁けない悪を、悪をもって誅す」というダークヒーロー的な魅力は、しっかり描けてたと思います。   何より見逃せない功績は、本作にてレクターに美形属性が備わった点ですね。  本作で美少年としてのレクターが描かれたからこそ、後にドラマ版「ハンニバル」が生まれたのかも知れないし……  そう考えると、非常に意義のある一本だったと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2023-05-10 06:16:42)(良:1票)
3.  ハンニバル(2001) 《ネタバレ》 
 「レクターはクラリスを犯したいのか殺したいのか食べたいのか」「恐らく三つ全部でしょう」というやり取りが印象的。  答えとしては「犯したい」「殺したくない」「一緒に誰かを食べたい」が正解だったと思うんですが……  何か、その辺りについて真面目に考察する気になれないから、困っちゃいます。   だって本作のレクターってば、控えめに表現しても「クラリスに恋するストーカー」でしかないし、真剣に考えるのが馬鹿らしくなっちゃうんですよね。  原作と違ってレクターの妹について語られていないから「失った妹の面影をクラリスに求めてる」とか、そういう尤もらしい言い訳も出来ないし、本当に良い歳こいた爺様が若い女に執着してるってだけなんです。  しかも回転木馬でクラリスの髪に触れる仕草とか、まるで幼女に悪戯するロリコンみたいだったし……  これは同族嫌悪かも知れませんが、観ていてキツかったのは確かです。   原作ではクラリスと、ドラマ版ではウィルと結ばれたレクターが、本作では孤独な結末を迎えるのが興味深いとか、色々と分析して感想書く事も出来そうなんだけど……  どうも本作のレクターについては、悪口ばかりになっちゃいそうなので、自制しておこうと思います。   で、主人公以外の事について語ろうとしたんですが……これがまた、主人公以外には特に語る事も無いんですよね、この映画。  唯一、本作から登場したメイスン・ヴァージャーという人物は、中々インパクトがあって良かったと思うんだけど、何か彼についても「レクターをヒーローとして描く為に、無理矢理レクターより酷い悪役を出した」って印象が強かったりして、褒め難いんです。  原作だとメイスンには妹が存在し、その事が「レクターにもメイスンにも妹がいる」という形で、両者の因縁を強めていたと思うんですけど、そういう要素も排除されちゃってますからね。  ただ、そんなメイスンの最期に関しては「レクターに誘導された付き人が、主人であるメイスンを突き落とす」という形になっており、これは他者を操るレクターらしい殺し方で、原作より良かった気がします。   その他、印象に残った場面としては……「クレンドラーを調理する場面がグロかった」とか「手錠を掛けられた後、クラリスではなく自分の腕を切断するレクターには驚かされた」とか、精々それくらいかな?  後は、クラリスをお姫様抱っこするレクターに、二人のキスというロマンティックな場面も用意されているので「レクターとクラリスのカップルが好き」という人からすると、満足度の高い映画かも知れません。   何か、気が付けば結局レクターの事ばかり語っちゃいましたが……  まぁ、仕方無いですよね。  なんせタイトルが「ハンニバル」なんですから。   でも、自分としては同じ「ハンニバル」なら、ドラマ版の方が好みです。
[DVD(吹替)] 4点(2023-05-10 02:52:01)(良:2票)
4.  野生のエルザ
(これはフィクションなのか? それともドキュメントなのか?)  と戸惑ってしまうシーンが多く、最後まで集中する事が出来ませんでした。  こういった題材では、その「線引き」が非常に難しいですし、どちらとも受け取れるような演出にする事がプラスに働く例もあると思いますが、どうも自分には合わなかったみたいです。   それでも、雄大な自然の風景を眺めているだけで楽しい、と思える品だったのは確かですね。  人間と動物の関係性、動物を保護するという事、飼うという事について、色々と考えさせられました。
[DVD(字幕)] 4点(2022-10-27 23:05:41)
5.  イベント・ホライゾン 《ネタバレ》 
 とにかく既視感のあるシーンが多過ぎて、さながら「最終絶叫計画」や「羊たちの沈没」をギャグ無しで大真面目に撮ってみせたかのような一品。   宇宙に関連したSF映画という狭い範囲に限っても「エイリアン」「ギャラクシー・オブ・テラー」「禁断の惑星」「2001年宇宙の旅」「ブラックホール」「惑星ソラリス」などのパロディとしか思えない内容となっており、オリジナリティが全く感じられなくて、困ってしまいます。  勿論、全部が全部「どこかで見たような場面」という訳でもないのですが、全体の七割くらいは無知な自分ですら「これって○○が元ネタじゃん」と気付いてしまうような仕上がりなんですよね。  だから、たまに「これは元ネタ分からないな、もしかして本作独自の発想なの?」と思えるような場面に遭遇しても、ただ単に自分が元ネタを知らないだけな気がしてしまうのです。   こういったパロディというか「元ネタありきの品」は決して嫌いではないのですが (映画なら「スター・ウォーズ」漫画なら「鉄人兵団」なんかも元ネタあってこそですからね)  本作に関しては、いくらなんでも過去映画の寄せ集め感が強過ぎて「そこまでやるか」と呆れる思いが強かったです。   とはいえ「ヘル・レイザー」をパロった地獄の拷問描写を見せる際には、わざわざ博士をピンヘッド風の形相に変えたりしている訳だから、多分これって意図的に元ネタが分かるような演出にしているのでしょうね。  ちょっと失礼な表現になってしまいますが「バレないようにパクるつもりなら、もっと誤魔化して上手くやるだろう」という気がします。  「フラットライナーズ」そのままな過去のトラウマに悩まれる描写然り「シャイニング」そのままな血の洪水も然り。  である以上、監督さんとしても本作にオリジナリティがあるなんて考えていないと思われるのですが、怖いのは「この映画の元ネタを知らない人々」がコレを観て「なんて斬新な映画なんだ」って誤解しそうな辺りでしょうか。  実際、この映画の制作年度が1950年辺りだったとしたら、凄く革新的で後世に多大な影響を与えた品だと思います。   こういう品に触れる度(もしかしたら自分も、元ネタを知らずに「○○は斬新な映画だ」と絶賛しているかも知れない)と考えてしまうんですが、そういうのって凄く恥ずかしいし、いたたまれなくなっちゃいますね。  別に元ネタだから後続の作品より無条件に優れているという訳でもないし、そんなの気にせず楽しむのが一番だとは思うのですが、この辺りは「Aという映画はBという映画のパクリなんだぜ」と知識自慢したくなるようなオタク気質が、我が身に染み付いてしまっているのかも。   映画そのものについては、上記の通り「どこかで見たようなシーンを継ぎ合わせたパロディ作品」としか思えず、面白いとは言い難いです。  それでもあえて良かった部分を探してみるなら、サム・ニールとローレンス・フィッシュバーンという、力のある俳優さんを起用しているのは大きかった気がしますね。  この二人が真剣にヘル・レイザーごっこしてくれている訳だから、凄く貴重な映像。  当初はウェアー博士が主役かと思われたのに、終盤にて悪役に回るストーリー展開なんかも、中々意外性があるかと。  ……ですが、そんな脚本についても「惑星ソラリスとヘル・レイザーだけじゃなく、シャイニングも元ネタにしているんだから、当然そうなるよなぁ」と思えたりして、やっぱり褒めるのが難しいですね。   元ネタありきの内容でも面白い映画は沢山ありますが、残念ながら本作はそれに該当しないように思えました。
[DVD(吹替)] 3点(2022-04-27 15:59:49)(良:1票)
6.  オースティンランド 恋するテーマパーク 《ネタバレ》 
 ちょっと評価が難しい一品。   それというのも、この映画って観客が「女性である事」「作家ジェーン・オースティンのファンである事」を想定して作られている感じなんですよね。  なのに自分と来たら「男性」「オースティン作品は映画やドラマでしか知らない」という立場な訳だから、流石に門外漢過ぎる気がします。  ……でも、そんな自分の価値観からしても、面白い映画であった事は間違い無いです。   監督はジャレッド・ヘス(代表作「ナポレオン・ダイナマイト」)の妻である、ジェルーシャ・ヘス。  元々、夫の作品で共同脚本を務めていた為か、これがデビュー作とは思えないほど自然な仕上がりとなっており、落ち着いて観賞する事が出来ましたね。  低予算な作りであり、イギリス摂政時代を完全に再現しているとは言い難いのですが、それが却って劇中の「オースティンランド」の小規模さとシンクロし、リアルな箱庭感を生み出していたと思います。   主人公のジェーンが(何か、思っていたのと違うなぁ……)と失望しちゃう気持ちも分かるし(でも、せっかく全財産を注ぎ込んで訪れたんだから、楽しまなきゃ!)と自らに言い聞かせるようにする辺りなんかも、凄く小市民的で、好感が持てました。   ストーリーの流れとしては、所謂「幻想の世界に浸っていた主人公が、現実と向き合う話」「オタク趣味から卒業する話」な訳だけど、主演にケリー・ラッセルという美女を配する事によって、あまり痛々しい印象を与えない作りになっているのも、ありがたい。  短い出番ながら、元カレが最低な奴だとハッキリ伝わってくるのも良かったですね。  主人公が現実に失望して、何時までも幻想の世界に閉じ籠っていたくなる事に、説得力が増す感じ。   映画の途中から「貴族であるノーブリー様との幻想の恋」「使用人であるマーティンとの現実の恋」が逆転していく流れも、鮮やかでしたね。  劇中のジェーン同様「マーティンも役者であり、最初から彼と結ばれるよう計画されていた」「実はノーブリーとの交流こそが、演技ではない本当の恋だった」という二段仕掛けの真実には、見事に驚かされました。   まず、最初に映画に登場するのはマーティンの方であり、観客としても自然と彼の方がメインかと思うよう誘導しているのが上手い。  そして、園内の役者達が休憩中に交わす会話に違和感があって、その違和感が伏線となっている辺りなんて、本当に感心しちゃいました。   マーティンは役者ではなく、本当にジェーンを好きになった純真な男であるはずなのに、彼女の名字を憶えていなかったりする。  その一方で、彼女に興味無いかと思われたノーブリーは、しっかり憶えている。  そういった伏線が効果的に盛り込まれているからこそ「裏切られた」という不快感ではなく「そう来たかぁ!」という快感に繋がってくれる形です。   素顔のマーティンは女に困らない陽気なプレイボーイ、素顔のノーブリーは親友と婚約者に裏切られて傷心中の真面目な男、という設定なのも、これまた絶妙。  あんまりノーブリーを「王子様キャラ」として描かれちゃうと、同性の自分としては鼻白むものがあるし、何より「現実と向き合って幸せを手に入れた」という映画の結論も、嘘臭くなっちゃいますからね。   そもそも、反発し合っていたはずの男女が惹かれ合うのも「高慢と偏見」のダーシーとリジーそのままだし「貴方は、このお屋敷のダーシー様」という台詞もあるしで、本作品って「オースティン作品の幻想から抜け出したと思ったら、ダーシー様のような素敵な男性と結ばれた」という、都合が良過ぎる結末なんです。  だからこそ、その現実世界における「素敵な男性」を、なるべく嘘っぽくせず、リアルに感じさせる必要がある。  彼は美男子だけど、不器用で、不幸な女性経験があって、歴史の教授だから金持ちでもない、という辺りが、程好い「身近な存在」っぷりで、良い落としどころだなと思えました。   あえて気になった点を挙げるとしたら「妊娠中の友達が、あんまりストーリーに絡んでこない事」「エリザベスとアンドリュー大佐の仲がどうなったのか、曖昧なまま終わる事」などが該当しそうですが、欠点とも言えないレベルでしたね。  それよりも、気に入った部分の方が、ずっと多い。   主人公カップルを祝福したくなるような、良い映画でした。
[DVD(吹替)] 8点(2022-01-11 04:35:57)(良:1票)
7.  ラブ・アクチュアリー 《ネタバレ》 
 「ラブ・アクチュアリーを観た日」という曲を聴いた勢いで、元ネタである本作も鑑賞。   所謂「グランド・ホテル」形式の群像劇であり、エピソードの殆どを「恋愛」で纏めている点と「クリスマス」という特別な日にスポットを当てた点が、当時としては斬新だったのでしょうね。  この映画から数年後に「バレンタイン」や「大晦日」にスポットを当てたラブコメ群像劇が作られていますし、影響力の強さが窺えます。   登場人物が多く、同時進行するエピソードも多くて、難易度の高い作品なのですが、それをギリギリで混乱させず、破綻させずに仕上げてる手腕も見事。  特に「場面転換の際に音楽を用いて、各話の繋ぎを自然にしてる事」には感心させられましたね。  主人公の一人が歌手である点も含め、全体的に音楽の使い方が上手かったと思います。   個人的に一番好きなのは、義理の親子であるダニエルとサムが、少しずつ距離を縮めていくエピソード。  そして、ラブストーリーとして一番好きなのは「小説家と家政婦の恋」になりそうですね。  後者に関しては「言葉が通じない彼女とも、キスによって互いの想いを確認する」「片言のポルトガル語で告白したら、相手も片言の英語で答えてくれて、互いに相手の為に言葉を習ってたと分かる」って場面が凄く良かったし、映画全体の構成を考えても、この二組の話が主軸になってた気がします。   それと、オールスターキャストも魅力的でしたが、やはり一番印象深いのは、ローワン・アトキンソン。  カメオ出演のような形で「店員役」として登場し、それで出番終了とばかり思っていたのに、終盤まさかの再登場でしたからね。  しかも、デパートでは傍迷惑だった「緩慢な動作」が、空港では恋する少年を助ける形になってたりするんだから、これには脱帽。  つまり「誰かにとっては迷惑な人物が、他の誰かにとっては有益な人物と成り得る」って事を描いている訳で、群像劇ならではの魅力があるんです。  正直、各キャラの繋がりが「たまたま知り合いだった」「血縁だった」程度な事にはガッカリしちゃったけど……  彼の存在だけでも、本作を群像劇にしたのは正解だったと言えるんじゃないでしょうか。   その他、欠点としては  ・歌手からマネージャーへの想いが、友情なのか同性愛なのか分かり難い。 ・サムがダニエルの事を初めて「パパ」と呼んだ場面が、アッサリし過ぎていて戸惑う。 ・クラウディア・シファー演じるキャロルが出てくる場面は意味深なのに「本当に偶々、ダニエル憧れのクラウディア・シファーに似てるだけ」ってオチなのが残念。   等々が挙げられそうですが……  これらに関しては「脚本が説明不足」というより「演出が拙くて、場面の意味が伝わり難い」って印象を受けましたね。  やはり、リチャード・カーティスは「監督」というよりも「脚本家」気質の人なんだと思います。   後は「アメリカに行けば俺はモテまくるはず!」って一念で渡米した若者が、本当にモテモテになっちゃうオチだったのは吃驚したとか、精神を病んだ弟がいるサラだけは意中のカールと結ばれず可哀想とか……気になったのは、そのくらいかな?  サラという例外もありましたけど、彼女は彼女で「恋愛」よりも「姉弟愛」を選んだと言えそうな感じですし、色んな形の「愛」を肯定し、優しく包み込んでるような雰囲気が心地良かったです。   「ハッピーエンドな恋愛映画」の代表として、曲のタイトルに選ばれるのも納得なくらいの、良い映画でした。    ……ちなみに、2017年の続編ドラマ(米国版)では、サラがカール以外の男性と結婚する展開になってたりもするんですよね。  本作を鑑賞後にモヤモヤが残ってしまった人は、そちらも是非チェックして欲しいです。
[DVD(吹替)] 7点(2022-01-01 01:00:59)(良:3票)
8.  アタック・ザ・ブロック 《ネタバレ》 
 この手のエイリアン物であれば、モブとして殺されるだけで終わるであろう「不良少年」にスポットを当てたのは新鮮で、面白い発想。  刀を背負った「ニンジャ」スタイルの主人公というのも、如何にも海外の映画オタクの心を掴みそうな感じです。   ただ、冒頭にて「女性を刃物で脅して金品を奪う」という姿が描かれており、そこで(えぇ、こいつらが主役なの?)とドン引きしてしまって、結局最後まで感情移入する事が出来ず、残念でしたね。  そもそも作中の情報から判断する限り、黒いエイリアン達が人々を襲う理由は「白い小さなエイリアンを主人公に殺された復讐」としか思えない訳で、どうにも観ていて居心地が悪い。  そのキッカケとなる「エイリアンの殺害」にしたって「正当防衛」「事故」ではなく、わざわざ逃げたのを追いかけて丁寧に殺しているんだから、情状酌量の余地は無し。  作中でも「こうなったのは俺のせい」と言っているのだから、作り手としても確信犯的にそういった流れにしたのでしょうが、それにしてはラストにて主人公が英雄視されちゃっているし、どうにも不可解なのですよね。  「この主人公も、実は親に愛されない可哀想な子だったんですよ」とばかりに子育てを放棄されていた事が示唆されても、それで悪事が正当化されるとも思えず、何だか中途半端な印象を受けました。   墜落死するかと思われた主人公が、国旗に捕まって助かるというオチからしても「可哀想な不良少年を国が救ってあげるべき」というメッセージが込められているのかも知れませんが、本人が非行を反省する描写も殆どありませんし、押し付けがましいものを感じちゃいましたね。   シンプルな黒いエイリアンの造形は好みでしたし、強力過ぎない武器を用いて、狭い団地内で戦うという内容自体は、とても良かったと思います。  「ロケット花火を用いてのガス爆発」という敵の倒し方も痛快で、観ていて気持ち良い。  それだけに、主人公にとって都合が良過ぎる世界観に付いていけなかった事が、勿体無く思える一品でした。
[DVD(吹替)] 4点(2021-07-09 17:22:48)(良:1票)
9.  イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密 《ネタバレ》 
 映画を観始めた直後に「あっ、シャーロックが主演だ!」と驚き、中盤にて「戦争映画じゃなかったのか……」と再び驚かされましたね。  確かに戦争を描いた映画でもあるのですが、それ以上に『同性愛』という業を背負った天才にスポットの当てられた映画だったと思います。   自分は数学音痴なもので、そんな観客にもストーリーを分かりやすく構成してくれた事は、本当に嬉しい限り。  「真っ当な方法でエニグマを解析しようとしたら、二千万年も掛かってしまう」など、その任務の困難さが明確に伝わってくる辺りは、凄く良かったですね。  途中、ヒロインが唐突なプロポーズを受け入れてくれたり、犬猿の仲であったはずの同僚が庇ってくれたりする流れには(ちょっと主人公に都合が良過ぎない? もっと仲が親密になるまでの描写が必要だったのでは?)なんて思ったりもしたのですが、後にキチンとそれらに対する答え合わせも用意されているのだから、お見事です。  ヒロインは自分も「普通じゃない」という引け目を感じているがゆえに、同じく「特別」な存在である主人公に惹かれていたと明かされるし、同僚はソ連のスパイだったというオチ。  後者に関しては察知する事も出来ましたが、前者に関しては、良い意味での驚きを味わえましたね。  自分は同性愛者である、という秘密を告げられて「それが何?」と返す姿には、惚れ惚れとさせられました。   それにしてもまぁ、主演のカンバーバッチさんは「SHERLOCK」でワトソンとの同性愛疑惑を掛けられたと思いきや、今度は本当の同性愛者を演じる事になるとはなぁ……なんて、微笑ましく思っていたのも束の間。  まさか、こんな悲劇的な結末を迎えるとは予見出来ず、終盤には何とも重苦しい気分を味わう事となりました。   夭逝した初恋の少年と同じ名前を機械に付け、それを偏愛する主人公の姿は、どこか滑稽でありながら、とても哀しいものを感じさせます。  観客としては(あんなに素敵な女性が愛してくれているのだから、その愛に応えてやれば良いじゃないか)と、もどかしい気持ちになったりもするのですが「クリストファ」を再び失う事を恐れる彼の姿を目にすれば、何も言えなくなってしまいますね。  慰めるヒロインの手を取った瞬間、その指に既婚者の証のリングがはまっている事に気が付き「おめでとう」と告げて、微かに笑うシーンの演技なども、素晴らしい。   作中、ヒロインが「貴方の行いによって命を救われた人が沢山いる」と慰める場面では(でも、それによって殺された人々も沢山いるのでは?)と思えてしまい、全面的に彼を「正義の人」と感じる事は出来ませんでした。  けれど、そんな事は彼女も承知の上で、彼を全肯定してあげる言葉が必要だからこそ口にしたのだろうなと、自然と納得させられる作りになっていたのも、上手かったですね。  「誰を助けて、誰を殺すのか」を決める立場に置かれた過去を持つ彼の苦悩を、ほんの一時でも癒してあげる、優しい言葉だったと思います。   それと、ストーリーの序盤にてチラッと語られた「主人公は林檎が好物である」という情報が、現実の彼の死と直接リンクしていると知った時には、大いに衝撃を受けました。  (この映画でも、もっと林檎にスポットを当てても良かったのでは?)とも思えるのですが、それをやると寓意性が高まり過ぎると考えて、故意にオミットしたのでしょうか。  判断の難しいところです。   ラストシーンの「チューリング・マシーン。今それは、コンピュータと呼ばれている」のナレーションには、本当に鳥肌が立つのを、はっきりと実感。  今、自分はノートパソコンを使って、この映画の感想を書かせてもらっている訳で、それを考えるだけでも、非常に感慨深いものがあります。   この映画を「後味が悪い」と感じなかった理由は色々とあるのですが、一番の理由は「彼を愛してくれた女性がいた」と、丁寧に描いてくれた事。  そして、少なくとも今現在の我々の世界においては、主人公の業績は正当に評価され、偉人として称えられているのだと、ハッキリ伝えてくれた事にあるのでしょうね。  本人がそれを喜ぶかどうかは、もう決して分からない事ですが、映画の観客としては救われるような思いがしました。
[DVD(吹替)] 8点(2021-02-26 03:44:20)
10.  ラン・オブ・ザ・デッド 《ネタバレ》 
 「ゾンビ」+「パルクール」という組み合わせの、一発ネタのような映画かと思いきや、さにあらず。  予想以上に真面目に作られており、驚かされましたね。   とはいえ「パルクールゾンビならではの魅力」という意味では、序盤の「壁蹴り階段降りシーン」くらいでしかそれを感じられなかったし……そういう意味では、期待外れとも言えちゃいそう。  人間ドラマが中心となっており、ゾンビは障害の一つに過ぎないという扱いなんですよね。  ・主人公のコールはウイルスに感染済みであり、薬を使っても十八時間後には発症してしまう。 ・時間切れになる前に、唯一抗体を持ってる可能性があるアンジェラを見つけ出し、無事に保護しなければいけない。   という構造になっており、非常にゲーム的な作りなんです。  この辺りは「安っぽい」「薄っぺらい」と感じる人もいるかも知れませんが、自分としては、分かり易くて好印象でした。   それと、メイン主人公のコールだけでなく、サブ主人公としてアンジェラの元彼であるジョーが用意されている辺りも良かったです。  (ははぁん、コールは死んじゃうからジョーをもう一人の主人公として生存させるって訳か……)  とばかり思っていたのに、まさかの両者死亡エンドでしたからね。  これには、本当に吃驚しました。   でも、バッドエンドという訳ではなく、二人とも「無事にアンジェラを逃がす事が出来た」という満足感を抱いて死んでいくので、後味も決して悪くないんですよね。  それぞれ「大手製薬会社に雇われて、汚れ仕事を色々とやってきた始末屋」「麻薬中毒の少年を誤って射殺してしまった元警官」という暗い過去を背負っており「アンジェラを救い、人類を救う事」が「贖罪」であるという風に描かれている。  基本的に主人公が死ぬ映画ってのは好みじゃないのですが、これは冒頭の時点でコールの死が示唆されている事も含め、あまり抵抗を感じず楽しむ事が出来ました。   その他、難点としては、低予算なのが画面から伝わって来てしまう作りな事。  そして、主人公二人は罪悪感を抱いて鬱屈としているし、アンジェラは受け身なお姫様ポジションだし、その他の人物も自分勝手な言動が目立つしで、登場人物に感情移入しきれなかった事が挙げられそうですね。   総合すると、自信を持ってオススメ出来る……という程ではありませんが「意外とイケるよ」という意味で、ゾンビ映画好きには、こっそりと推薦したくなる。  そんな一品でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2020-11-27 11:33:30)(良:1票)
11.  ブリジット・ジョーンズの日記 《ネタバレ》 
 この映画に関しては、元ネタである「高慢と偏見」を知っているかどうかで評価が分かれそうな感じですね。   それというのも、文学少女の憧れである「ダーシー様」を1995年のドラマ版で演じたコリン・ファースが「マーク・ダーシー」役を演じている訳だから、本作のブリジットは彼と結ばれるって事がバレバレなんです。  一応、ストーリーラインとしては「マークとダニエル、どちらと結ばれるのか分からない三角関係」って形になっているので、これはかなり致命的なネタバレ。  作り手側としては、もう配役の時点で開き直り、最初から「三角関係」要素を薄めて「ブリジットとマークが紆余曲折を経て結ばれるラブコメ」として仕上げているんでしょうけど……それでも消しきれない「三角関係」要素が、重荷になってる気がしましたね。  ダニエル役にヒュー・グランドが起用されているのも「豪華」というよりは「準主役でもないのに、勿体無い」と思えちゃいました。   そんな訳で、自分としては「悪い意味で結末が分かり切ってる映画」という、大きなハンデを背負った上での鑑賞だったのですが……  それでもしっかり楽しめた辺りは、流石という感じ。   本作が2000年代を代表するラブコメというだけでなく「ブリジット・ジョーンズは2000年代と寝た女」と思えちゃうくらい、彼女が魅力的に描かれていたんですよね。  ちゃんと仕事は頑張ってるから「彼氏がいないのを嘆いて、自堕落な休日を過ごしてる姿」も微笑ましく思えたし「ぽっちゃりとした女性の色気」が、視覚的に描かれていた辺りも良い。  特にカメラに向かってブリジットの巨尻が落ちてくる場面なんて、ギャグタッチにも拘らず昂奮しちゃったくらい。  メールでは強気な態度を取れるけど、いざ相手と目が合ったら愛想笑いしちゃうとか、そんなところも憎めない。  そんな彼女を愛でる「萌え映画」として考えれば、本作は満点に近い出来栄えだったと思います。    「人生やり直せるなら、今度は子供を作ったりしない」と母に言われる場面では鼻白んだとか、ブリジットの友人達の存在意義が薄いとか、不満点も色々あるんだけど、まぁ御愛嬌。   どちらかというと、終わり方がアッサリし過ぎていたのが気になりましたね。  これは欠点というよりは「マークと上手くいきそうになって、これから面白くなりそうだってところで終わるのが残念」っていう類の不満点です。  結果的に三部作になったので、この不満も続編で解消される訳だけど、本作単体で考える分には、どうしても「物足りない終わり方」って評価になっちゃうと思います。   後は……上司にカッコいい啖呵を切って辞職する場面が痛快だったとか、頑張って新しい自分に変わろうとするブリジットに「ありのままのキミが好き」とマークが言ってくれる場面にはグッと来たとか、そのくらいかな?   こういったシリーズ物の場合、初代が一番面白くて続編は蛇足ってパターンも多い訳ですが……  本作に関しては、続編の方が面白いんじゃないかと思えましたね。  興味がおありの方は、是非チェックして欲しいです。
[DVD(吹替)] 6点(2020-11-20 04:26:52)(良:1票)
12.  ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期 《ネタバレ》 
 冒頭にて、初代同様に「All By Myself」が流れたりと、ちゃんとファンの事を意識して作ったのが窺える三作目。   とはいえ、2で最高のエンディングを迎えておきながら「やっぱりマークと別れました」と言われても納得出来ない訳で……  「無理矢理作った続編」感は否めなかったですね。  三作目まで「マークと他の男、どちらと結ばれるか?」で引っ張るのにも、無理があった気がします。   と、そんな具合にストーリー面には不満もありますが「痩せて熟女になったブリジット」を拝めるという意味では、充分に楽しめる映画。  ラブコメのヒロインが老けちゃうのって、基本的にはマイナスでしかないはずなんだけど、彼女に関しては作中の台詞通り「エロ年増」的な魅力もあって、良かったですね。  とうとう禁煙に成功したっていうのも感慨深かったし、誕生日ケーキに立てられた四十三本の蝋燭を見つめ、何とも言えない笑みを浮かべる姿も良い。  母としての愛に目覚め、無事に出産して赤ちゃんを抱く姿にも、本当に(おめでとう)と祝福する気持ちになれました。   ギャグの面でも可笑しい箇所が色々ありましたし、特に「スタバの店員」ネタはお気に入り。  ここ、過去作にも共通する「元ネタを知らずとも充分面白い」バランスに仕上げてあるのが、本当に良いと思いますね。  エド・シーランを知らなくても、ちゃんと話の流れで「彼は凄い歌手だったんだ」と理解出来るよう作ってある。  クライマックスにおける「愛と青春の旅だち」をパロった演出も、また然り。  本シリーズって、根底には「ダーシー様に恋する文学オタクの為の映画」ってのがある訳だけど、マニアックな笑いに走り過ぎず、色んな人が楽しめるよう配慮されているのが見事でした。   「夢は共有出来るのに、現実はズレてばかり」という台詞も切ないし、旦那候補のジャックも、女医さんも良いキャラでしたね。  前作におけるレベッカもそうでしたが、続編で出てくる新キャラにもきっちり魅力があるというのは、大いに評価したいところです。   その一方で、そんなレベッカが本作で再登場してくれないというのは寂しいんだけど……  まぁ、これは登場人物を絞る為に、仕方無かったのかな?  初代からの恋敵であるダニエルが出てこないのも「流石に三作連続で、同じ顔触れの三角関係やる訳にはいかないから」って事で、納得出来る範疇でした。   改めて考えてみると「マークの元妻であるカミラの存在感が薄過ぎる」とか「女上司のアリスがそこまで悪い人じゃないので、啖呵を切って辞職する場面に一作目ほどの爽快感が無い」とか、欠点も色々思い付いちゃうんだけど……  決定的にファンを裏切るような真似はしていないし、一定のクオリティはあったしで「不平不満」より「映画三本分かけて付き合ったブリジットへの愛着」が優っちゃいますね、どうしても。   マークと結婚して幸せになりましたって終わり方なのも「王道」というより「予定調和」なんですが、それが心地良い。  エンドロールの最後を飾る、家族三人の写真にも和みましたね。  良い映画であり、良い三部作だったと思います。
[DVD(吹替)] 6点(2020-11-13 18:37:25)
13.  ディセント2 《ネタバレ》 
 前作ラストの答え合わせ。  思わせぶりなシーンは「主人公が洞窟から脱出する前に見た、束の間の幻」だった訳ですね。  まぁ、元々インパクト重視のバッドエンドというだけで、そこに深い意味なんて無かったように思えるので、単なる夢オチの一種だったという事なのでしょう。   さてさて、そんな訳で前作と地続きな続編となる本作なのですが、ご丁寧に「主人公グループが未知の地底人と遭遇するまで」の件を、たっぷり時間掛けて描いている事に吃驚です。  これって、1を未見で2から観たという人に対する配慮なのだろうけど、連続視聴した自分としては「いや、地底人がいるとか、そんなのとっくに知ってるって」と、少々ノリ切れないものがありましたね。   そんな具合に序盤は既視感が強いシーンが続き、正直退屈。  でも「前作で死んだと思われていたジュノが、実は生きていた」というサプライズが飛び出す中盤からは、ようやくギアが入った感じで、面白く観賞出来ました。  考えてみれば、確かに前作でも彼女の死亡シーンは明確に描かれていませんでしたからね。  観客を裏切らない程好い衝撃といった感じがして、好印象。  前作を生き延びた主人公のサラと、彼女が再会し、対立しそうになるも最終的には共闘してみせる展開なんかも、ベタだけど良かったと思います。  お約束の「自己犠牲」を意図的に否定してみせた前作を踏まえた上で、本作ではあえてお約束の「自己犠牲」を主人公が行ってみせる構造になっているのも面白い。  途中まで退屈だったがゆえの反動もあるかも知れませんが、この後半部分に関しては、本当に良かったと思います。   その一方で、ラストが前作と同じ「助かったと思いきや結局は助かっていない」というバッドエンドであった事には、心底ガッカリ。  何もそこまで重ね合わせなくても……と、つい思っちゃいましたね。  もし3が出たら、今作の黒人女性も実は助かっており、サラに代わって彼女が再び洞窟に入って、そこで生き延びていたサラと再会して……という無限ループ的な展開になったりするんでしょうか。  そこまでやってくれたら天晴な気もするけど、どっちかっていうと(変に凝ってバッドエンドにするより、そのまま脱出に成功してハッピーエンドで良かったのに)という気持ちの方が強かったです。   そんな本作は「洞窟に入るメンバーが女性だけではなく、男性もいる」という点が前作との大きな違いとなっている訳ですが、結局は「男なんて不要」とばかりに、バッサリ切り捨てる脚本になっているのも凄かったですね。  「何があっても、君を見捨てない」なんて恰好良い事を言っていた男性キャラクターも、その二分後には崖から墜落して瀕死となり、そのまま何の活躍もせず退場するのだから、恐れ入ります。  その後に文字通りの意味で「足手まといな男を斬り捨てる」展開も存在しているのだから、徹底しているなぁと呆れる思い。  もしかしたら、一種の女性賛歌の映画なのかも知れませんね。   1と2の合計で、約194分。  色んなシーンを拝ませてもらいましたが、結局は「怪物なんかより女の方が怖い」という結論に至るという……そんな二作品でありました。
[DVD(吹替)] 5点(2020-11-12 09:03:30)
14.  ディセント 《ネタバレ》 
 地底人という怪物なんかよりも、人間の方が怖い。  そして人間の中でも「女」は特に怖い……と感じさせる映画でしたね。   前半は洞窟からの脱出劇かと思いきや、中盤から地底人が登場して「モンスター映画だったのかよ!」とツッコませてくれる辺りは中々楽しかったし、終盤にて「友人を犠牲にして自分だけでも助かろうとする主人公」を描いているのも衝撃的。  後者に関しては、普通なら嫌悪感しか抱かないはずなのに、何となく納得出来るように仕上げられているんですよね。  その友人が主人公の夫と不倫していたからとか、誤解も重なった上での選択であるとか、そういった「理由付け」以上に「他者を犠牲にしてでも生き残ろうとするエゴイズム」を肯定的に描いており、そこに説得力が生まれているように思えました。  とにかくもう、犠牲にする友人を見下ろす主人公の目線が怖くて、強くて、ちょっと恰好良く見えたりもしたんだから、お見事です。  この手のホラー映画なら、友人側が率先して自己犠牲を選ぶのがお約束であるだけに、それを逆手に取った展開が、非常に新鮮だったと思います。   一方で、オープニングの事故がラストの夢オチに繋げる為にしか機能しておらず、劇中ではむしろ「夫と友人が不倫していた」事に重点が置かれている辺りなんかは、チグハグに思えましたね。  だから最後に娘の幻を見たとしても、何か「取って付けた」感がある。  それと、夢から覚めて起き上がった際に、気絶する前は周囲に散らばっていたはずの白骨が無くなっているなど、ミスなのか演出なのか良く分からない部分があるのも気になりました。  演出だとすれば「地底人も、その地底人の犠牲者である白骨も存在しない。洞窟で起こった惨劇は主人公達の妄想による代物」あるいは、娘の姿が消えた事も含めて「ようやく主人公が死から解放されたという事を示す為に、あえて白骨は映さなかった。血まみれなのも出産直後の赤子を連想させて、生まれ変わった事を示す為」なんて可能性もありそうなんですが……そのわりには地底人の声を被せてくるし、主人公は娘の亡霊に囚われたままみたいな表情だしで、どうも納得し難い。  「ただ単に、脱出したと思ったら、実は夢オチで未だ洞窟の中にいたというバッドエンドをやりたかっただけじゃないかなー」と思えちゃいましたね。  最後には「洞窟探検に旅立つ前の、皆が笑顔で映った写真」で〆る辺りも合わせ、後味の悪さ重視の結末であった気がします。   ……なんて具合に、色々と解釈が出来そうな「投げっぱなしオチ」だった訳ですが、その答え合わせが続編にて行われていましたね。  本作を観賞後「結局あれって何だったの?」と気になって仕方ない人には、オススメです。
[DVD(吹替)] 5点(2020-11-12 08:55:46)(良:2票)
15.  ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月 《ネタバレ》 
 前作が「これから面白くなりそうって所で終わる映画」だったもので、自分としては嬉しい続編映画。   元々、ラブコメ映画の続編って代物自体が珍しい訳で、そういう意味でも新鮮でしたね。  映画一本分をかけて結ばれた背景があるもんだから、前半部分にてブリジットとマークがイチャついている様も、とても微笑ましく感じられて良かったです。   ジェーン・オースティンの「説得」が下敷きだったり、マークが濡れたシャツ姿を披露したりと、基本的には「元ネタありきの映画」なのですが……  個人的には、元ネタを知らずとも充分楽しめるんじゃないかと思えましたね。  例えば、タイの刑務所にて女囚達と一緒にマドンナの曲を歌う場面なんかも、原曲を知らずとも十分に楽し気な雰囲気が伝わってくると思いますし。  前作は「高慢と偏見」ありきの映画だな、って印象でしたが、本作に関しては「元ネタよりも面白い映画」とすら思えちゃいました。   妊娠検査の最中に、二人が喧嘩しちゃう件なんて、特に面白い。  ここ、ほんの数分間なのに「二人の価値観や、育った環境の違い」が如実に伝わる作りになってるんですよね。  ラブラブな二人だったのに、徐々に擦れ違いが生じて喧嘩別れしちゃう流れに、自然に繋がっていたと思います。   他にも「そろそろ不幸じゃない事が起こるはず」と言った途端に、ブリジットが空港で逮捕されちゃうとか「引きずり出せるならどうぞ」と挑発したダニエルを、マークが本当に引きずり出して外で喧嘩しちゃうとか、台詞の使い方が上手いんですよね。  前作以上に「ブリジットがダニエルを選ぶ訳無い」「マークと結ばれるに決まってる」と分かり切ってる内容なのに、それでも楽しめたのは、こういう細かい部分が面白いお陰だと思います。   新キャラとなるレベッカも、非常にキュートで良かったですね。  「ブリジット→マーク←レベッカ」という関係と思わせておいて、実は「マーク→ブリジット←レベッカ」という関係だと判明する件は驚きましたし、ストーリーの面白さにも凄く貢献してる。  色んな映画に出てくるレズビアン女性の中でも、五指に入るくらい好きなキャラになりました。  妙な仮定になりますけど、もし自分がブリジットだとしたらレベッカを選んだかも知れないな……って、そう思えたくらいに可愛かったです。  煙草を吸う理由は「もっと悪い事が起きる前に死ねると思うと、心が安らぐから」と語るブリジット父も良い味出してましたし、前作以上に脇役の魅力が光ってた気がします。   そんな本作の難点としては……  タイの女囚達に見栄を張る形で「マークには酷い事された。暴力を振るわれたり、薬漬けにされたり」と嘘を吐く辺りは、流石に引いちゃった事。  あとは、中盤にてマークに部屋の鍵を渡すのが伏線かと思いきや、全然違ってて拍子抜けしちゃった事とか、そのくらいかな?   ブリジットを主役にした映画は現在三本ありますが、自分としては本作が一番好きですね。  作中の台詞にある通り「ハッピーエンドの、その先」を描いた映画として、しっかり楽しむ事が出来ました。
[DVD(吹替)] 7点(2020-11-11 10:25:49)
16.  アフリカの女王 《ネタバレ》 
 呑気な川下り映画というイメージだったのですが、久々に再見してみて、序盤は意外と陰鬱な事に吃驚。   ヒロインの兄が精神を病んで死ぬ場面とか(あれ、こんな映画だったかな……)と戸惑っちゃうくらいでしたね。  この辺りは、やはり戦争を扱った映画なんだなと、しみじみ感じさせるものがありました。   とはいえ、川下りが始まってからはイメージ通りの「呑気さ」に溢れており、ホッと一安心。  一応、道中では色んな災難に見舞われて苦労するんだけど、それもお約束の範疇というか、安心して観ていられる感じなんですよね。  裏を返せば「緊迫感に欠ける」って事でもあるんですが、自分としては長所に思えました。   現地人の描写とか、蚊の大群が合成丸出し(ヒロインが「こんなに刺されて」と主人公を気遣うけど、刺された痕なんて全然分からない)とか、現在の観点からは気になる点も多いんだけど、まぁ御愛嬌。  舟を止めて水浴びしたり、雨が降ったら狭い屋根の下で男女同衾したりと「ラブコメ映画」としての魅力を備えている点も、良かったですね。  最初は兄にさえ「器量が悪い」なんて言われていたヒロインのローズが、どんどん綺麗に見えてくるし、ボガート演じる主人公も髭を剃ったら二枚目だしで、観ているこっちとしても、主人公カップルの好感度が徐々に上昇していく様が気持ち良い。  アフリカが舞台って点を活かし、色んな動物を拝ませてくれるし、急流の場面は迫力あるしで「旅映画」「アドベンチャー映画」としての魅力も、文句無しでした。   ただ、これは勿体無いなと思えたのは……  ちらちらワニの存在を匂わせておきながら、結局ワニとの戦いになる場面が無かった事ですね。  流石のジョン・ヒューストン監督も、後の「ワニ映画」需要までは予見出来なかったのでしょうか。  もしワニと戦う場面があったら「川下り映画の元祖」というだけなく「ワニ映画の元祖」としても語られたかも知れないし、つくづく惜しいです。   最後は目的通り「ルイザ号」の爆破に成功し、アッサリ終わるんだけど……  なまじ爆破後も長々と尺を取っていたら(ご都合主義過ぎる)って印象が強まっていたでしょうし、スパっと終わらせて正解だったんでしょうね。  死刑執行直前に主人公カップルの結婚を認めたりと、ルイザ号の船長も良い人だったので、船が爆破されても生きてる描写を挟んであるとか、そういった細かい配慮にも感心させられました。   昔の名作映画って、格調が高い代わりに「一度観たら充分」って気持ちになる事も多いんですが……  これは例外的に、また忘れた頃にでも観返したくなる。  そんな味わい深い一本です。
[DVD(字幕)] 7点(2020-10-14 19:12:49)(良:1票)
17.  フラッド 《ネタバレ》 
  これは……  「途中までは面白かったのに」ってタイプの映画ですね、残念ながら。    クレジットではモーガン・フリーマンが一番上になっているけど、物語の主人公は間違い無くクリスチャン・スレーター演じるトムの方って時点で、既に歪というか、どこかバランスが狂ってる感じ。  両者を好きな自分にとっては「夢の共演」と言える映画のはずなのに、この二人が手を組む流れも雑に思えちゃって、全然興奮しなかったです。  トムに関しては凄く好きなタイプの主人公で、スレーターが演じた役柄の中でも一番じゃなかろうかと思えるくらい気に入っていただけに、途中から(何でそうなるの?)って展開になってしまったことが、本当に惜しい。   繰り返しになりますが、途中までは面白かったんです。  町が水浸しになっている光景だけで、如何にも「非日常の世界」って感じがしてワクワクしちゃったし、狭い室内でのジェットスキーを駆使したアクションなんかも、目新しくて興奮。  牢の中にまで水が押し寄せ、溺死しそうになったところを間一髪で助かる場面なんて、本当にドキドキさせられましたね。  口喧嘩ばかりしているけど、実は強い絆で結ばれていた老夫婦の存在など、脇役の魅力も光っていたと思います。  「他人様の金を命懸けで守るなんて、下らん仕事さ」と自嘲していた相棒のチャーリーが、実は裏切り者だったと明かされる流れも、程好い意外性があって好み。   じゃあ、何で「残念映画」と感じてしまったかというと……  やっぱり、主人公のトムと、モーガン・フリーマン演じるジムが手を組む流れが、無理矢理過ぎるんですよね。  せめて、もうちょっと「トムVSジムVS保安官達」という三つ巴展開を描き、終盤にてようやく緊急避難的にトムとジムが手を組むとか、そういう形にした方が良かったんじゃないでしょうか。  本作の場合「金に目が眩んだ保安官達が、敵になる」というだけでも充分にサプライズ展開だったのに、そこにプラスして「トムとジムが手を組む」っていう展開までセットで押し通しちゃったもんだから、驚きを通り越して困惑に繋がってしまった気がします。   あと「引鉄をひいても弾が出ない」って展開を繰り返しやってるのも興醒めだし、スローモーションの使い方も雑だし、終盤になると脚本だけでなく演出まで一気にレベルが下がっていたように思えるんですが……  (制作現場で、何かトラブルでもあったの?)って心配になっちゃいますね。   途中までは本当(意外な傑作に巡り会えた)(しかもクリスチャン・スレーター主演じゃん! 最高!)ってテンション上がっていただけに、終盤のグダグダっぷりが、返す返すも残念。  スレーター好きな自分としては、彼が主演というだけでも満足度は高めだったのですが……  もうちょっとだけ頑張って「文句無しの傑作」「スレーターの代表作といえばコレ」と言わせて欲しかったという、そんな口惜しさの残る一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2020-02-27 04:38:03)
18.  ファーナス/訣別の朝 《ネタバレ》 
 クリスチャン・ベールが髭を蓄えた姿に、最初は違和感も覚えたのですが、すぐに慣れる事が出来て、一安心。  これはこれでワイルドな魅力があって良いんじゃないかと思えましたね。   特にお気に入りなのは「弟を思いやって、密かに借金を肩代わりしてみせる場面」と「別れた恋人の妊娠を祝福してみせる場面」の二つ。  主人公の優しさ、人の良さ、利己的になれない善人ゆえのもどかしさなどを丁寧に演じられており、相変わらず素晴らしい役者さんだなと、再認識させられました。   映画の内容はというと、往年のアメリカン・ニューシネマを彷彿とさせる作りとなっており、全体的に陰鬱な雰囲気が漂っているのが特徴。  鹿狩りが印象的に描かれている点などは「ディア・ハンター」へのオマージュではないかとも思わされましたね。  脇を固める俳優陣も非常に豪華であり、彼らの演技合戦を眺めているだけでも楽しかったです。   ただ、冒頭にてウディ・ハレルソン演じる悪役が、北村龍平監督の「ミッドナイト・ミート・トレイン」を観賞中に喧嘩を始めるシーンの意味は、少し分かり難くて困惑しました。  後にキーパーソンとなるキャラクターを、事前に紹介しておく事が目的だったのでしょうか。  上映作品のチョイスに関しても引っ掛かるものがあり、ともすれば映画がつまらないせいで作中人物が退屈して暴れ出したのかと邪推出来たりもするのですが……  まぁ、監督さんがあの映画を好きだから選んだのだろうなと、好意的に解釈したいところです。   基本的なストーリーラインとしては、弟を殺された兄が復讐する形となっているのですが、どうもそれだけでないような印象も受けましたね。  それというのも、主人公の境遇が余りにも悲惨過ぎて、弟の死さえもがその「不幸な要素」の中の一つにしか思えなかったのです。  老後は病に侵される事が約束されているような製鉄所での仕事。  交通事故によって人を死なせてしまった罪悪感。  刑務所で暴力に晒される日々。  愛する女性との別れ。  父親の病死。  これらの事件が次々に起こり、主人公は鬱憤を溜め込んでいた訳なのだから、弟の死はそれを爆発させた引鉄に過ぎなかったのではないかな、と。   勿論「数々の不幸に対しても感情を露わにしなかった主人公が、弟の死に対してだけは本気で怒った」訳なのだから、それだけ弟を愛していたのだと解釈する事も可能だとは思います。  けれど、その場合はラストにて悪役に「お前の弟はタフだった」と言わせた事に、疑問符が残るのです。  本当に弟への愛情だけが動機であったのならば、そんな弟の凄さを認めてもらった事に対し、主人公のリアクションを描いて然るべきだと思うのですが、彼は超然とした態度のまま相手を殺してしまう。  そして、復讐を止めようとした保安官が、主人公の元カノを妊娠させた男であるとなると……  一連の行いには「保安官への当てつけ」という意図もあったんじゃないかと、そんな風に感じちゃいました。   単なる復讐譚としての映画であれば、ラストシーンの主人公は満足感や達成感を抱いていてもおかしくないのに、その顔に浮かぶのは、どちらかといえば「やってしまった」「これで終わった」という諦観の念。  長く、深く吐息をつく姿には、未来を捨て去った人間だけが得られる、一種の解放感のようなものが漂っていたようにも思えましたね   積み重なった悲劇が更なる悲劇に繋がるという、一種の悲惨美。  そして、全てを台無しにしてしまったからこそ得られる、後ろ向きなカタルシスを描いた映画であるように感じられました。
[DVD(字幕)] 6点(2019-09-26 01:27:08)
19.  クライムダウン 《ネタバレ》 
 映画「エラゴン」で主演を務めたエド・スペリーアスの数年後の姿を拝めるという、非常に貴重な一品。   自分としては、劇中で彼がどんな活躍をしてくれるのかに期待していたのですが……良い役とは言い難いものがありましたね。  一応、副主人公に近いポジションなのですが、どうにも憎まれ役というか「主人公の好感度を下げない為に、マイナスな言動を代わりに行うキャラクター」って感じなのです。  最後も(えっ? 死んだの?)って戸惑うくらいにアッサリ撃たれて退場するし……  何だか凄く不憫で、応援したくなりますね、エドさん。   それで映画本編の方はといえば、これが中々面白い佳作。  登山を楽しむ主人公達が、地中に女の子が埋められている事に気が付き、慌てて掘り起こして木箱を開けるシーンのドキドキ感なんて、凄く良かったですね。   その後に少しずつ謎が解き明かされていくのかと思いきや、かなり早い展開で「彼女は誘拐され、ここに閉じ込められていた」「誘拐犯の二人組は、すぐ近くにいて、銃を手に主人公達を追跡している」と分かるので、これにも吃驚。  謎解きを放棄した、追いかけっこに特化した作りだったとは、完全に予想外でした。   舞台が山の為か、危険な崖を降りるシーンもあるのですが、そこに関しては「急がなければいけないのに、危険だから慎重に、ゆっくり降りなければいけない」というのが何だかチグハグで、緊迫感を削いでいたように思えて、残念。  そんな崖のパートを過ぎて、河の急流に差し掛かる辺りからは、ようやく演出もスピーディーになり、以降はノンストップで楽しめたように思えます。   「追ってくる奴らの狙いは、その子だけだ」と言い出し、女の子を犠牲にして助かろうとするかと思われた男が、自ら囮になって他の皆を逃がしてあげる展開なんかも(そう来たか!)という感じで、実に好み。  誘拐犯の一人が「以前、人質の男の子と仲良くなってしまった事がある」と語り出し、その子が苦しまないように後ろから頭を撃ち抜いてやったと話す件なんかも、彼の恐ろしさと人間味を同時に感じられて、良い場面だったと思います。   最終的には、主人公と女の子の二人は何とか助かるので、ハッピーエンドと呼ぶ事も出来そうな本作品。  でも「実は女の子の父親が悪どい権力者であり、誘拐犯は彼の手によって無残に殺される」というオチまで付いているのは、ちょっと蛇足に感じられましたね。  誘拐された側が絶対的な正義ではない、という深みを持たせたかったのでしょうが(後味が悪くなっただけじゃない?)というのが正直な感想。   どちらかといえば、楽しめた場面の方が多いのですが(ここ、もうちょっと何とかなったらなぁ……)と細部が気になってしまう。  そんな映画でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2019-04-09 21:42:15)(良:1票)
20.  ショコラ(2000) 《ネタバレ》 
 こういった内容の映画である以上、観賞後に「チョコレートを食べてみたい」と観客に思わせる事が出来れば成功なのだと思います。   自分はといえば、事前に買い込んでおいたチョコレート菓子の包装を解いて、美味しく頂かせてもらったので、まず満足。  基本的に優しい映画であり、作中の人物殆どが幸せな結末を迎えてくれるので、後味も良かったですね。   特に感心させられたのが主人公の扱いで、こういった御話では 『主人公は癒しを与える天使のような存在なので、心の弱さを見せて取り乱したりしない』 『村の人々が幸せになるのを見届けた後、主人公は次の村に幸せを運ぶ為に風のように去っていく』  という不文律が存在しているにも関わらず、本作は意図的にそれを覆しているのです。  終盤に北風が誘い掛けるシーンでは(あぁ、やはり立ち去ってしまうのか……)と寂しく思っていただけに、それを否定して窓を閉め、街に留まる事を選択する姿に驚き、安堵もさせられましたね。  遺灰を撒いて、それが北風に運ばれる描写もあったとなると、次の「幸せを運ぶ旅人」の役目は、あのお婆ちゃんにバトンタッチされたのかな? とも推理出来て楽しかったです。   ちょっと気になったのは、作中で唯一「救われない」人物として、セルジュが存在している事。  彼の扱いが完全なハッピーエンドとなる事を妨げているので、そこをもう少し上手くやってくれていたら、より満足出来たんじゃないかと思えましたね。  女性目線の映画なのだから「家庭内暴力」を振るった以上は許されるべきではないという判断なのかも知れませんが、一応彼なりに妻を愛していて、反省し、許しを乞うていたのだから、復縁するのは無理としても、もうちょっと救いを感じさせる顛末にしても良かったんじゃないかなぁ、と。  火事の件など、物語の進行上に必要な悪事は全て彼に押し付けて、村から追放したという形だったのが、どうにも居心地が悪かったです。  意地悪な見方かも知れませんが、村長の妻だって浮気という罪を犯しているのに、そちらは全く罰せられる描写が無しというのも、何だか女性に都合の良い世界観に思えてしまいました。  いっそ次の「幸せを運ぶ旅人」の役目を、セルジュに担わせても良かったんじゃないかと思えるのですが、どうなんでしょう。   そんな本作の中で自分の一番のお気に入りは、倦怠期に陥っていた夫婦が「情熱を呼び戻すカカオ豆」を通じて、仲睦まじい夫婦に変わっていくシークエンス。  ちょっと下世話な描写でしたが、お風呂掃除中の妻のお尻に欲情してしまう件なんかが、非常に共感を持てたのですよね。  その後に、妻の荷物を「持つよ」と優しく提案する姿など、些細な描写の中にも「不器用ながらも、妻想いな旦那様」に変わった事が窺えて、微笑ましかったです。   断食の果てにチョコレートに貪り付く村長の姿からは、一種のカタルシスが感じられたし 「人間の価値は何を禁じるか、何を否定するか、誰を排除するかではなく、何を受け入れ、何を創造し、誰を歓迎するかで決まる」  というアンリ神父のお説教も、心に沁みるものがあって良かったですね。  娘の友達であるカンガルーの存在も、物語の寓話性を高める程好いアクセントになっていたと思います。   ゆったりと身を委ねたくなるような甘みと、微かな苦み、両方を味わえた映画でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2019-02-08 02:47:55)(良:3票)
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