281. 大列車作戦
《ネタバレ》 操車場の爆撃、単機による列車掃射、機関車の衝突、全てのシーンが臨場感に溢れる息を呑む迫力で撮影の困難さが想像出来ます。 「わが命つきるとも」で信念を貫き通したポール・スコフィールドが演じる悪役は、絵画に対する異常な執着心を持ち、やはり偏執的な信念を貫き通しておりました。一言の抗弁も許さぬ無言の目力に見惚れてしまいナチス式の敬礼までかっこいい。バート・ランカスターとの最後の対決は圧巻。盗人猛々しく価値観をまくしたてる威風堂々とした大佐に無言で引き金を引くラビッシュ。転がる多数の木箱と多数の射殺体が戦いの虚しさを漂わせます。傑作。 [DVD(字幕)] 9点(2017-10-17 15:33:06) |
282. ハイヒールを履いた女
《ネタバレ》 寂しさを埋める為のパーティ参加はまだしもその後のジョージとの行為は共感出来ない。犯人であることは容易に解りますが、精神が何処か病んでいる様子に不気味さを感じていた中での誰も乗っていないブランコを押す姿に寒気が。そんな彼女に惚れてしまった警部さん。久々のガブリエル・バーンに期待は大きかったのですが、よく解らない人となりのキャラクターで残念。ラストで警部にしがみついて号泣するアンナに二人の行く末を想像させられる。アンナを演じられるのはシャーロット・ランプリング以外は考えられない。 [インターネット(字幕)] 7点(2017-08-15 17:54:16) |
283. 愛、アムール
冒頭に示される結末に至る過程。じりじりと衰えて行く誇り高いアンヌ、じわじわと追い詰められて行く慈愛深いジョルジュと演ずるすっかり老いてしまったジャン・ルイ・トランティニャン。直視が辛く苦しい思いに耐えに耐えながらの鑑賞でした。この夫婦にしてこの結末に「介護は他人に、愛情は家族が」を痛感させられる作品。 [DVD(字幕)] 6点(2017-06-11 23:07:26) |
284. 街のあかり
《ネタバレ》 カップでナイフを砥ぐコイスティネンに、返り討ちにあって海にボロ雑巾のように浮かんでいる、或いは刺し殺して自首する、ラストが思い浮かんだのですが。打ちのめされて「ここでは死ねない」と呟いた負け組であっても負け犬ではない姿に、同様に踏みにじられて自壊しそうな私がどれだけ力づけられたかことか。女性が何の魅力もないのは彼にとっては一途に思う大切な存在だったという点で良かったと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2017-05-27 13:50:18) |
285. 帰らざる夜明け
こんな陳腐な物語にシモーヌ・シニョレを起用するのは勿体なさ過ぎる。 [DVD(字幕)] 4点(2017-05-20 23:10:36) |
286. 涙するまで、生きる
《ネタバレ》 舞台は1954年、独立戦争のアルジェリア。西部劇と「さらば冬のかもめ」が思い浮かんだ不思議な作品。部族の因習を甘んじて受けようとするモハメドに「生きろ!」と励ますダリュ。自身もアルジェリア生まれのスペイン人移民としての諦念を振り払おうと教師を辞める。授かった命は事切れるまで諦念に押し潰されず全力を尽くして生きるのだと認識させられる。 [DVD(字幕)] 6点(2017-05-14 18:23:43) |
287. 燃えつきた納屋
攻める予審判事と受けて立つローズの攻防は見応えがあるものの、欲を言うと、もう少し感情を露わにした判事であってほしかった。事件を通して大家族の絆が燃えつきた結末はうら悲しい。絶品のシモーヌ・シニョレを堪能できた。 [DVD(字幕)] 7点(2017-05-06 23:01:44) |
288. ライヤーゲーム
話がイマイチ把握出来ず結末も理解し難く、再見して確認しようという気にもなれず。小洒落た感じが何となくしただけの作品。 [DVD(字幕)] 3点(2017-04-17 16:10:44) |
289. マラヴィータ
《ネタバレ》 マーティン・スコセッシ、リュック・ベッソン、デニーロの組み合わせでのお決まりの暴力シーンが満載なのはまだしも、嫁・娘・息子までもが暴れて鬱憤晴らしをしているのに嫌気がさす。ラストのドンパチではトミー・リー・ジョーンズの見せ場が無いわ、敵方がアッサリとやられてしまうわ、ご近所さんを始め多くの人が巻き添えになるわで後味の悪さこの上ない。去り行く車を「お前等だけ幸せに暮らせると思うなよ」と思いながら眺めてた。こんな犬畜生にも劣る一家を保護するFBIジョーンズさんの心中お察し致します。 [DVD(字幕)] 3点(2017-04-16 15:01:35) |
290. イル・ポスティーノ
朴訥なマリオが世界的な詩人に感化されながら友情を育む様子は穏やかで心地良かったのに、切ない結末の唐突さに戸惑う。鑑賞後にマッシモ・トロイージが本作で力尽きた事を知り、額に汗が滲んでいる姿は命を懸けていたのだと思うと何ともやるせない。 [DVD(字幕)] 8点(2017-04-10 00:51:51) |
291. ミッション:8ミニッツ
アフガンの戦場で肉塊となったスティーヴンスを道具として使用する事しか頭にない博士と人格を尊重するグッドウィンの対比が見応え十分でした。存在する魂の世界観の描かれ方が見事な作品。 [DVD(字幕)] 7点(2017-03-19 23:29:33)(良:1票) |
292. 抵抗(レジスタンス) 死刑囚の手記より
《ネタバレ》 「死刑囚は逃げた あるいは風は自ら望むところに吹く」原題を忠実に映像化しています。望みを叶える為に出来る事を独りコツコツとやり抜く。些細な気の緩み失敗が即処刑に繋がるので細部にまで気を配る丹念な作業の緊張感が物凄い。これ程の準備をしても一人では成功できなかった事実に風が吹いたのを見ました。脱獄ものの最高作。 [DVD(字幕)] 10点(2017-02-19 23:55:49) |
293. スリ(1959)
《ネタバレ》 あの手この手のスリの手口の滑らかな美しさにウッカリ見惚れてしまう。金儲けしても青年は侘しいアパートで覇気のない暮らしをしている。悪運尽きて捕まった事で幸せを掴む結末だが、驕り高ぶった性根を入れ替えて働くことは出来るのか疑問が残る。 [DVD(字幕)] 7点(2017-02-14 15:26:48) |
294. 独裁者と小さな孫
《ネタバレ》 舞台である国を特定せず寓話を装っているが、これまでも今もこれからも地球上で起きている話。独裁者と孫の逃亡劇。無垢な孫が最後に「こんなゲームはもうしたくない」と涙する姿に、力だけが正しい統治の虚しさを観る。独裁者を擁護する者の台詞は蛇足だった。 [DVD(字幕)] 6点(2017-01-31 23:59:16) |
295. 黒猫・白猫
何時の時代? 舞台は何処? ガチョウの大群? 何故にリックとルノー署長? 等々、「何じゃこりゃ?」が満載。 どことなく詩情を感じる賑やかにも程がある音楽と共に繰り広げられる突き抜けたハチャメチャぶりに何だか元気を貰う。特に大爆笑させられた楽団が病室になだれ込み爺さんを連れ帰るシーンは「天才バカボン」の世界。ラストの二人のカサブランカダンディの粋な台詞に、バカボンのパパの決め台詞「これでいいのだ」が浮かんだ。掘り出し物の珍作・快作に出会えた喜びを味わった。 [DVD(字幕)] 8点(2017-01-14 23:28:59)(良:1票) |
296. 離愁(1973)
《ネタバレ》 戦火から逃れる疎開列車の道中譚が物語の大部分を占める。死と隣り合わせの緊張感が絶えず続く中で生まれた束の間の恋が丹念に描かれている。妻子と同じ客車に乗れていたならアンナに惑う事もなかったのに。長男誕生を受けてジュリアンのもとを去ったアンナ。ああ、よかったと安堵したのも束の間のゲシュタポ?の取り調べシーン。瞬きするのも憚られるこれ以上ない緊迫感の中でのジュリアンの選択に、あぁ、何故部屋をあとにせずに振り返るのか、何故頬に触れるのか、妻と二人の幼子よりも自分の命よりもアンナを取るのか、悲しくて身悶えする。耐えに耐えていた思いが決壊したアンナも同じく思った筈。勝ち誇った取調官の台詞が雑音にしか聞こえなく、迸る思いを一言も発することなくぶつけ合うジャン・ルイ・トランティニャンとロミー・シュナイダーのラストショットに見惚れる。 [DVD(字幕)] 9点(2017-01-14 14:36:06) |
297. 北ホテル
《ネタバレ》 ただ一度、21歳の時に鑑賞した際の、粋なルイ・ジューヴェの立居振舞、切ないラストシーンが脳裏に焼きついています。もう一度観たいという思いが最も強い作品です。 【2016/12/31再見】自ら死を望んだエドモンの胸中を思うと切なくてやりきれない。生きて欲しかった。 [DVD(字幕)] 8点(2017-01-01 00:23:25) |
298. 殺しが静かにやって来る
トランティニャン、キンスキー共演に惹かれての鑑賞は大当たり。どこまでもストイックな男とどこまでも卑劣な男の対決に手に汗握り、決着の衝撃に打ちのめされる。雪景色に流れるモリコーネの物悲しいテーマ曲に更に冷え冷えとさせられる。 [DVD(字幕)] 8点(2016-12-30 22:03:22) |
299. 奇跡の海
《ネタバレ》 少し頭が弱いベスが神に縋ってヤンへの盲愛に突き進んだ果ては想定内の救いの無いもの。彼女の気持ちを考えず彼女を地獄へ追いやったヤンがすっかり回復して感慨深げに鐘の音を聞く姿は想定外で、言いようのない憤りに体が震えた。しつこい演出の冗長さに我慢しながら鑑賞の甲斐も無く、監督の鼻持ちならない陶酔感に反吐が出る。愚作。 [DVD(字幕)] 1点(2016-12-05 00:58:13) |
300. リピーテッド
《ネタバレ》 今作のコリン・ファースは誠実なのか不誠実なのか、あれこれ想像しながらの鑑賞。気怠い展開に催してきた眠気を体重の乗った左張り手が覚ましてくれました。そこからラストまで不誠実を堪能できました。鑑賞後にあれやこれやの疑問が。①壁に貼られている二人の結婚写真 ②先の事件でホテルから発見現場までの目撃者がないのか ③警察の捜査 ④あの場所にあったアイロン ⑤眠ると無くなる記憶はうたた寝や昼寝や徹夜の場合は。 毎朝「僕は夫のベン・・・」と説明する幸せに思えない生活を続ける彼女への愛情と犯行発覚の恐れが綯い交ぜになった歪んだ人格者を好演した彼に惹かれた思いが、無理があり深みのない展開に醒めてしまった作品です。 [DVD(字幕)] 6点(2016-11-26 21:19:46) |