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プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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61.  9デイズ 《ネタバレ》 
 主人公が双子の兄弟に成り済ます為、チェコ語を習得したり、葉巻の吸い方やワインの飲み方を学んだりするパートが面白かったですね。  黒人男性版の「マイ・フェア・レディ」「プリティ・ウーマン」といった趣があるし、実際に劇中で後者の曲が流れたりするのだから、作り手としても意図した演出であったように思えます。   観賞前の期待通り、安心して楽しめる娯楽作品なのですが、ちょっと細かい点が気になったりもして、そこは残念。  例えば、高層ホテルにて刺客に襲われた主人公が、咄嗟に窓の外に逃げるというシーンがあるのですが、ここの件って、どう考えても窓の外の方が室内より危なかったりするんです。  何せ、足場が自分の靴ほどしかない訳で、実際に主人公は落ちそうになりながら、おっかなびっくり移動しているんですからね。  対するに、室内にいる刺客なんて全く強そうじゃなくて、主人公もガラス瓶で殴って撃退したはずなのに、わざわざ危険な窓の外に逃げたのだから、どうにも不自然。  恐らくは、その後の屋外での追いかけっこに繋げる為の脚本なのでしょうが、それならもっと自然にやって欲しかったなぁ……と、つい思ってしまいました。   「別人に成り済まして危険な取引を行う」という王道ネタを扱っているわりに「正体がバレそうになってドキドキさせられる」展開が無かった辺りも、不満ですね。  そういったベタな面白さを避けた以上は、他に何か目新しい面白さを提供してくれるのかなと思ったけれど、それも無し。  結果的に、映画の後半においては「主人公が別人に成り済ましている」という設定が忘れられてしまったかのようで、観ていて居心地が悪かったです。   そんな本作の白眉としては、主人公の母親の存在を挙げる事が出来そう。  最初は厳しい人なのかなと思ったら、実は息子に無償の愛を注いでいるのだと分かり、グッと来ちゃいましたね。  自分は、どうもこういうギャップのある描写に弱いみたいです。  息子の為に都合してあげたお金が「ビンゴの賞金250ドル」という辺りも、絶妙な塩梅。  「この母ちゃんの為にも頑張ってくれよ」と、主人公を応援する気持ちにさせられました。   それだけに、報酬の一部を母親に渡すラストシーンでは「一万ドルじゃなくて、九万ドルの方を母親にあげれば良いのに」と思わされたのですが……  実際にそうしようとしたら「私は一万で良い。九万は結婚資金に使いなさい」と叱られちゃう気もしますね。  最初は仲が悪かった堅物の相棒が、慣れないジョークを口にして祝福してくれたという、結婚式での風景も素敵。   後味が良い結末のお蔭で、なんだかんだ言っても満足出来た一品でした。
[DVD(字幕)] 6点(2017-01-10 12:54:20)(良:2票)
62.  あなたは私の婿になる 《ネタバレ》 
 これ、好きですね。  「偽りの恋が、いつしか真実の愛へと変わっていく」という既視感満載なラブコメ物なのですが、適度なサプライズがあり、ちゃんと新鮮な魅力を味わえるんです。  その最たる例が「心臓発作で倒れる祖母」であり(これは彼女を死なせて盛り上げる展開か)と、観ていてまんまと騙されちゃいました。  それが「家族を仲直りさせる為の演技でした」と判明する訳だけど、全く嫌味が無いし「悲劇を回避出来た」「お陰で皆が仲良くなれた」という形の嘘なんだから、不快感が無いんですよね。  「観客を騙す映画」って沢山あるけれど、ここまで気持ち良い騙され方をした例は、ちょっと他に思いつかないくらい。   アンドリューの元カレが復縁を迫るのかと思いきや「このままマーガレットと別れても良いの?」と言い出す場面も、凄く良かったですね。  本当に脇役が良い人達ばかりだから、彼らに支えられる形で主人公二人が結ばれる流れが、観ていて心地良い。  そんな「サプライズ」が巧みな一方、序盤でヒロインのマーガレットが「泳げない」と言う伏線があったら、ちゃんと後に溺れそうになる場面を用意したりとか、観客の予想や期待を裏切らない構成になっているのも、お見事でした。   あとは、男性目線で観ると「美人な女上司の弱みを握り、言いなりにする」という邪な願望を満たす内容になっているし、女性目線で観ると「実家が金持ちの彼と結ばれる玉の輿展開」になっているしで、その辺の「男女どちらが観ても楽しめる」というバランスの良さも、絶妙でしたね。  孤独だったマーガレットが「家族の温もり」に触れ、アンドリューの家族を騙す事に耐えられなくなり、結婚式での告白に至る流れも丁寧に描かれており、説得力がありました。   そんな本作の不満点を述べるとしたら……  冒頭にて登場する「毎朝ラテを用意してくれる店員」が可愛くて、メインキャラかと思ったら違ってたのが残念とか、男性ストリッパーの場面は観ていてキツかったとか、精々そのくらいかな?   サンドラ・ブロック主演のラブコメ映画は色々ありますが、自分としては本作が一番好きですね。  エンドロールの質問にて「婚約者は誰?」と問われ、嬉しそうに「アンドリュー」と答える姿も可愛らしいし、彼女の魅力が存分に味わえる一本でした。
[DVD(吹替)] 7点(2021-02-11 16:50:27)(良:2票)
63.  グレンとグレンダ 《ネタバレ》 
 てっきり「特殊な性癖だからといって差別するのは良くない」という内容の映画かと思っていたのですが、少々異なる印象を受けましたね。  そういった道徳的な主張よりも「私は女装は好きだが同性愛者ではない」という監督の叫びが聞こえてくるかのような内容だったのです。  こんな時には、ついつい「どっちでも似たようなもんじゃないのか?」と思ってしまうものですが、それが特殊性癖の人にとっては「理解されない」という悲哀に繋がっているのかな……などと、色々と考えさせられるものがありました。   そんな深読みはさておいて、映画単品として評価すると、これが意外や意外。  シュールな映像表現が続いて、中々飽きさせない作りとなっているのですよね。  いきなり牛が飛び出す展開には思わず笑みが零れたし、デヴィッド・リンチが影響を受けたとしか思えない場面などもあったりして、若干の退屈さを覚えながらも、不思議と画面から目を離せない。  ヒロインが女物のセーターを主人公に手渡し、理解と愛情を示す結末なども、それなりに感動的に仕上がっていたと思います。   監督と主演を兼任しているエド・ウッドに関しては「史上最低の映画監督」などという称号も与えられていますが、本作を観賞した限りでは、それは不当な評価であると感じられました。  彼の破天荒な人柄、生涯、そして何よりも「作品から漂う不思議な愛嬌」ゆえに、親しみを込めてそう呼ばれているのではないかな、と考える次第です。
[DVD(字幕)] 5点(2016-06-04 18:09:35)(良:2票)
64.  BLACK & WHITE/ブラック&ホワイト(2012) 《ネタバレ》 
 凄腕のCIA捜査官である男二人が、一人の女性を奪い合うという御話。   こういった粗筋の場合、最終的には男側が二人とも振られてしまうか、明確な結論を出さぬまま女性にとっての両手の花的なエンドを迎えるパターンが多いように思えますが、本作は明確に片方を選んで終わる為、驚きましたね。  大体映画の三分の二くらいの段階で(これはFDRの方と結ばれるな)と観客に分からせる形になっており、この辺りの時間配分も良かったと思います。   それと、タックには元妻と息子がいるのに対し、FDRは完全に独り身って時点で後者の方が有利なんですが、本作に関しては「最初にローレンスとデートしたのはタックの方である」というアドバンテージを与えて、二人のスタートラインが互角になるよう、上手く調整してあるんですよね。  これによって二人の内、どちらがヒロインと結ばれるのか読めなくなっているし、結果的にFDRとローレンスが結ばれた後も「タックは元妻と復縁する」って形で、主役の三人誰もが幸せになる結末へと着地する事にも成功している。  この手の三角関係で明確に答えを出すと、どうしても一人あぶれ者が生まれて、可哀想になってしまうものですが……  本作に関しては、そんな感情を全く抱かずに観終わる事が出来たし、ここは上手かったんじゃないかと。   男側の二人がCIAである事を活かした会話のギャグや、アクション場面も適度に盛り込まれており、特に後者に関しては「流石マックG監督」と思わせるような仕上がりとなっているんだから、嬉しい限りでしたね。  タックの息子が、父親から教わった技で柔道の組み手に勝つ場面も爽快感があったし、個人的にはココが一番好きな場面です。   そんな具合に、良いところも色々ある映画なんだけど……  残念ながら、欠点もそれと同じくらい見つかっちゃうというんだから、困り物。   まず、ヒロインのローレンスに、どうしても魅力が感じられなかったんですよね。  それは演じているリース・ウィザースプーンが老けていて、美女とも言い難いとか、そんな外面的な理由じゃなくて、もっと深い内面的な理由で(嫌な女だなぁ……)と思ってしまったんだから、キツかったです。   決定的だったのが、FDRと初エッチを済ませた後の展開。  FDRの方は、それまでプレイボーイ気質であったにも拘らず「彼女が出来たから」と他の女の誘いを断っていたのに、ローレンスの方は悩みつつもタックとデートしたり、キスしたりしていたというんだから呆れちゃいます。  自分だって二股を掛けていたくせに、彼らが友達同士と知った途端に「騙された被害者」全開に振る舞うっていうのも酷い。  そこは三者共「ごめんなさい」するところだろうに、何で彼女だけが怒って男達が謝らなきゃいけないんだと、理不尽なものを感じちゃいました。   他にも、意味ありげな「バケツを頭に被って回る少年」は何か重要な役割を果たすのかなと思ったら、本当に単なる小ネタに過ぎなかったのが残念とか「バルカン超特急」(1938年)を「二流の作品」と断じる場面があったので、後でフォローが入るかなと思ったら貶したままで終わっちゃったとか、細かい不満点も色々多いんですよね。  自分は、この監督さんと主演の三人が好きなので、それらも含めて(まっ、良いか)とばかりに、一定の満足感は得られましたが……  そういった思い入れが無かったら、かなり厳しかったかも。   好きな顔触れが揃っているだけに、勿体無く思える一品でした。
[ブルーレイ(吹替)] 5点(2019-02-04 10:12:15)(良:2票)
65.  U.M.A レイク・プラシッド 《ネタバレ》 
 数あるワニ映画の中でも、最も好きな一本。   「面白い」ではなく「好き」なタイプの映画である為、感覚的なものを伝えるのは難しいのですが……とにかく定期的に観返したくなる魅力があるんですよね。  監督さんが「ガバリン」や「ハロウィンH20」「フォーエヴァー・ヤング」という、自分好みな品を色々手掛けている人なので、波長が合うのかも?  何気ない場面や、ちょっとした音楽にも(あぁ、良いなぁ……)と感じてしまうんだから、とことん自分とは相性の良い作品なのだと思われます。   典型的な「誤解を招く邦題」である事。  作中での牛の扱いが可哀想である事。  メインとなる登場人物達が皮肉屋揃いで「良い子ちゃん」とは掛け離れている事。  などなど、欠点と呼べそうな部分は幾らでもあるんですが、それより長所の方に注目したい気分になるんですよね。    雄大な自然を捉えた空撮画面が美しくて、それを眺めているだけでも楽しいし、川辺でキャンプして焚き火したりと「レジャー」「アウトドア」的な魅力を味わえる辺りも嬉しい。  一応、作中で死人も出ているんだから、シリアスな空気になっても良さそうなものなのに、どこか皆ノンビリしていて「楽しいワニ釣り」めいた雰囲気すら漂っている。  それは「緊迫感が無い」という短所でもあるんでしょうが、自分としては「そこが良いんだよ」って思えました。   巨大ワニが実は二匹いたというオチにして「殺さずに捕獲出来た達成感」「ミサイルで派手に吹っ飛ばした爽快感」を、それぞれ一匹ずつ味わえる形になっているのも良いですね。  (そりゃあ無事に捕まえられたら一番だけど……保安官が持ち込んだ小型ミサイルの伏線もあるし、どうせ殺すんでしょう?)と予想していただけに、適度な意外性を味わう事が出来ました。   そして何といっても、最初は喧嘩ばかりしていた主人公四人が、一連のワニ騒動を通して仲良くなっていく姿が微笑ましいんですよね。  それも、物凄く強固な友情が生まれるとかじゃなくて「病院に付き添う」「一緒に飲みに行く」程度に留めているのが、程好いバランス。   最後も「まだまだ赤ちゃんワニが沢山いた」というバッドエンドのはずなのに、妙に明るく〆ているのも良かったです。  ワニを飼ってるお婆ちゃんは、そりゃあ道義的に考えれば「悪」なんだろうけど、彼女にとってワニは「可愛い子供達」な訳だし、それが全て奪われずに済んだという、一種のハッピーエンドにも感じられました。   この後、続編映画が色々と作られて、最終的には「アナコンダ」とクロスオーバーした「アナコンダ vs. 殺人クロコダイル」なんて品まで生み出す事になる本作品。  シリーズ化されるのも納得な、確かな魅力を備えた一品でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2018-06-08 09:37:39)(良:2票)
66.  デンジャラス・バディ 《ネタバレ》 
 女性警官同士のバディ・ムービーというのは初めてだったので、新鮮な気持ちで観賞する事が出来ました。   都会のエリートであるアッシュバーンと、田舎の乱暴者なマリンズ。  前者が後者に迷惑をかけられる事が多かった二人の関係性が、段々と逆転していき「あれ? これってもしかしてアッシュバーンの方がダメな女性?」と感じさせられていく流れが面白かったですね。  作中で「車が爆発するんじゃないか」と思ったら、本当に爆発しちゃった場面なんかも印象深い。  とはいえ、全体的にキツめのブラックジョークが多く、アッシュバーンが応急処置に失敗して相手を血まみれにしてしまうシーンや、マリンズが病院内での電話を看護婦に咎められるも銃を突き付けて黙らせるシーンなどは、ちょっと受け入れがたいものがあったかも。   最初は嫌っていたはずの相棒を認めて、周りに対して彼女を弁護してみせる件など、こういった映画における王道の魅力を忘れず備えてくれているのは、嬉しい限り。  特に「仕事で失敗してしまった後に酒場へ足を運び、飲み明かして憂さを晴らす」流れなどは、この設定ならではの「女の友情」を感じ取れて良かったですね。  ラストシーンにおける「アッシュバーンが飼っていたはずの猫」の件も、本来は傍迷惑な話なのですが、どこか微笑ましいものがあり、後味も良かったです。  そのまま内緒で飼ってしまうのではなく、ちゃんと猫を本来の飼い主に送り返す事を受け入れてくれたのが、ギリギリのバランスを保ってくれた感じですね。  嘘を見破ったマリンズの「全くコイツは……」と呆れながらも、彼女を見離せない事が伝わってくる雰囲気が、実に良い。   里子として育てられ、これまで家族が一人もいなかったアッシュボーン。  実の弟を刑務所送りにした事を、家族から責められ続けているマリンズ。  そんな二人が、共に過ごした時間を通して「姉妹」になっていく。  皮肉な笑いの中にも、微かな温かさを感じられる映画でした。
[DVD(字幕)] 6点(2016-05-02 21:21:33)(良:2票)
67.  オールド・ボーイ(2003) 《ネタバレ》 
 原作を久し振りに読み返した勢いで、本作も再観賞。   「謎の部屋に十年以上も監禁されていた主人公が、犯人の正体と目的を探ろうとする」という粗筋こそ共通しているものの、基本的には全く別の物語であり、しかも原作も映画版も両方面白いっていうんだから、中々珍しいパターンですよね。  自分としては「犯人の動機が詩的で味わい深い」という理由で原作の方が好みなのですが、映画版も間違い無く快作だと思います。   そもそも「原作の方が好き」という立場の人間としては「この映画が面白いのは原作のお蔭だ」と主張したくなるんですけど、本作の場合、それを言うのはかなり無理がありそうなんですよね。  犯人の人物像や、動機も全然違っているし、何より映画版の方が「憎たらしい悪役」「ショッキングで分かり易い動機」になっている。  多分、原作通りに映画化していたといたら、ここまで大衆受けはしなかったんじゃないでしょうか。  それだけ、この映画のオリジナル部分、独自の部分が優れているって事なんだと思います。   主演のチェ・ミンシクは男臭い魅力があって良かったし、ヒロイン役のカン・ヘジョンも可憐な雰囲気がたまらないしで、キャスティングも絶妙。  その他にも「脱獄が成功しそうな直前に釈放される」というシニカルな脚本、ハンマーを手に大立ち回りを演じる場面での、泥臭いのにスタイリッシュなカメラワークなど「映画版独自の魅力」を感じさせる場面が沢山あったんだから、お見事です。   ……ただ、一つだけ。  「犯人の動機については、原作の方が絶対に良かった」っていう事に関してだけは、どうしても譲れそうにないんですよね、自分の場合。  確かに原作の時点で「催眠術を便利に使い過ぎ」とか「犯人のやり方が遠回り過ぎ」とか、色んな欠点があるって事は分かるんです。  それでも、最後に明かされる真相「わたしの人生に《他者》は存在しなかった……」「生涯で、おそらくキミだけが、わたしの”孤独”を……」という悲しい独白には、非常に胸打たれるものがあって、忘れ難い余韻を残してくれるんですね。  自分が久し振りに「オールド・ボーイ」に触れようと思った際、映画版ではなく、原作漫画を先に選んだのも、やはりこの「真相」の差にあるんじゃないかと。   で、以下は映画版に関する文句というか、難癖になってしまうのですが……  「孤独」ではなく「近親相姦」をテーマにした本作に対しては、抵抗も大きかったりするんですよね。  それは何も「近親相姦はタブーだから、見るのもおぞましい」とか、そんな理由じゃなくて「犯人像を変えた事により、不自然な点が生じている」のが気になっちゃうんです。  まず、原作の場合は「犯人を殺して復讐する事より、真相を知りたい好奇心を優先させてしまう」のも納得なんですが、映画版に関しては、そうじゃない。  なんせ原作の犯人と違って、映画版の犯人は主人公の妻を殺してる訳ですからね。  この時点でもう破綻しているというか「私を殺したら真相は分からず仕舞いだぞ」と原作の犯人同様に挑発してくるイ・ウジンという存在にも、それに従う主人公にも、感情移入出来なくなっちゃうんです。  (いや、真相を知りたい気持ちとか優先させてないで、妻の仇を取れよ)と思えちゃって仕方無い。  また「俺は確かに獣にも劣る人間だが、生きる権利はあるんじゃないか」という台詞が印象的に使われている訳だけど、その台詞を最初に吐いた男を主人公は見殺しにした形なのも気になります。  死者の台詞を剽窃する形で、自分だけは特別と言わんばかりに「生きる権利」を求められても、勝手な奴だなぁとしか思えなかったです。    そんな訳で「映画オリジナルで面白い部分」「原作と違っているがゆえに不満がある部分」が、どちらも強烈な光を放っており、何とも評価が難しい本作品。  面白かったし、観て良かったと思えたのは確かなのですが……  諸手を挙げて「好きな映画」とは言えない、そんな引っ掛かりの残る一本でした。
[DVD(吹替)] 6点(2020-02-06 02:13:32)(良:2票)
68.  イーグル・アイ 《ネタバレ》 
 面白かったはずなのに満足度は低めという、不思議な感覚が残った作品。   内容としては、コンピューターによる人類への反乱という「コロッサス」から連なる王道ネタを扱っているのですが「携帯電話の誘導に従って、窮地を乗り越えていく」というテイストを盛り込む事により、上手く独自色を出していましたね。  シャイア・ラブーフも、お得意の「事件に巻き込まれた若者」を好演していますし、嫌味なタイプの主人公なのに、しっかり感情移入させてくれる辺りなんかは、本当に凄かったです。   じゃあ何故「満足度は低め」なのかというと……まず、終盤のカタルシスに欠けるんです。  クライマックスに用意されているのは「主人公の自己犠牲によって、政府高官の暗殺を阻止してみせる」という展開な訳だけど、その前の段階で「息子を人質に取られた母親に対し、自分を撃てと諭す主人公」というシーンが、既に存在している。  つまり「自己犠牲展開」を二度やる形になっており「あの自分勝手な主人公が、他者の為に命を投げ出している」という衝撃も、二回目の場面では薄れてしまうんです。  おまけに「主人公は命を投げ出し自己犠牲を行ったけど、結局は助かった」というオチまで二連続になっている訳だから、これは流石にキツかったですね。   その他にも「絵を描く趣味がある」「息子の誕生日を憶えていない」などのネタが、大した伏線になっていないのも寂しいし、黒幕であるアリアを倒すのが主人公じゃなく、脇役の少佐と捜査官というのも、ちょっと乗り切れないものがありました。   最後はハッピーエンドである事自体は嬉しかったし「携帯電話の謎の声に、人々が導かれていく」パートは、本当に面白かったんですけどね。  特に「電車の中で、乗客の携帯電話が一斉に鳴り出し、主人公が指名手配されていると告げる」場面なんかは、かなりゾッとさせられるものがあって、忘れ難い。   色々と粗はあるけれど、何だかんだで内容を忘れた頃に再見したくなるような……そんな、不思議な魅力のある一品でした。 
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2018-01-07 19:57:50)(良:2票)
69.  アナコンダ 《ネタバレ》 
 こういった川下りを疑似体験出来る映画、好きですね。  「アフリカの女王」みたいなロマンス物も良し、本作のようなモンスターパニック物も良し、という感じ。  出発シーンにて、上空からグルリと回って船を映し出す件なんて、荘厳な音楽も合わさり「実際に船旅をしても味わえない程の高揚感」を与えてくれるように思えます。   しかしまぁ、映画冒頭の説明文「獲物を呑み込むだけでは満足出来ず、捕った獲物をわざわざ吐き出して、また新たな獲物に襲い掛かる」が伏線だったと判明するシーンには、もう吃驚。  ジョン・ヴォイト演じる悪役のサローンが、大蛇に吐き出された後、死にかけの体であるにも拘らずウインクしてみせるのだから、忘れ難いインパクトがありました。   サローンに関しては「殺す相手の目は見るな」「見ると亡霊が付き纏うぞ」などの台詞も恰好良く、悪党には悪党の魅力があるのだと教えてくれた気がしますね。  もしかしたら生きていて、2で再登場する事も有り得るのではないか? と思えただけに、1にしか出て来ないのが残念です。   その他、あえて不満を述べるとすれば、贔屓の俳優であるオーウェン・ウィルソンが、散々な役どころだったという事くらいでしょうか。  一応、最後は川に落ちた恋人を救った末に殺されているけど、主要人物の中で一番情けないキャラクターだったように思えます。  物語の欠点と呼べるような類ではありませんが、彼のファンとしては寂しかったですね。  ダニー・トレホが冒頭でアッサリ死んじゃうのも、ちょっと勿体無い。   でも、その分他のキャラクターには見せ場が用意されており、バランスは良かったです。  ヒロインの恋人役であるケイルが、昏睡状態の身体を押してサローンを倒してみせたり、気弱で嫌味なだけの男かと思われたウエストリッジが、意外な活躍を見せたりと、気持ち良いサプライズ感を味わえました。   最後も、派手な爆発オチで大蛇を倒してくれるし「実は、まだ生きていた」なオチも交えて、二重に盛り上げてくれるしで、大いに満足。  当初の目的通り「霧の民」と遭遇するのに成功した事も、ハッピーエンド感を強めてくれましたね。   細かいツッコミどころはあるかも知れないけど、観賞後は、そんなの気にならなくなる。  楽しい映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2017-08-22 06:34:25)(良:2票)
70.  武士の一分 《ネタバレ》 
 姉妹作とも言うべき「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」については、何年も前に観賞済み。  何となく観そびれていた本作にも、ようやく手を出してみたのですが、上記二作と変わらず楽しむ事が出来ましたね。   とにもかくにも主演に「現代のアイドル俳優」というイメージが強過ぎる為、最初の内は「武士という割には軽過ぎる」という違和感もあったのですが、それが中盤以降の悲劇的な展開との落差を生む事に繋がっており、結果的には良かったと思います。  妻の加世、中間の徳平に軽口を叩く姿も、ちょっぴり嫌味なのに愛嬌がある辺りなんかは、正に木村拓哉という存在だからこそ、という感じ。   また、真っ当な殺陣の魅力に関しては一作目の「たそがれ清兵衛」で存分に描いている為、二作目と三作目においては「隠し剣」「盲目の武士の戦い」という変化球で攻めた辺りも正解だったのではないでしょうか。  歴代の中でも、間違いなく本作が一番不利な状況下での戦いであった為、前二作と同じ流れで最後は主人公が勝つだろうと安心しつつも「本当に勝てるの?」という緊張感を、適度に抱く事が出来たと思います。  あえて言うなら「決闘の場所の下調べくらいはしておくべきじゃないか」とも思えましたが、それをやるのは卑怯という価値観なのかなと、何とか納得出来る範疇でした。   それよりも個人的に残念であったのは、タイトルにもなっている「武士の一分」の使い方について。  復讐の動機は、妻が辱められた事にあると言い出せず「武士の一分としか申し上げられません」と絞り出すような声で訴える場面は凄く良かったと思うのですが、その後も「武士の一分」という言葉を繰り返し用いるものだから、ちょっと重みが薄れたように感じられてしまったのですよね。  全ては「あの御仁にも、武士の一分というものはあったのか」という台詞に繋げる為だったのかも知れませんが、それならせめて使用は二回までに留めて欲しかったなぁ、と。   脇役に関しては魅力的な顔触れが揃っており、本人に悪気は無くとも傍迷惑な叔母さんは妙に憎めなかったし、意外な名君であった殿様の存在感も良かったですね。  特に後者に関しては、主人公の失明後も「大儀」と一声掛けるだけであり、所詮は家臣の事など軽く考えている天上人なのだと示す場面があっただけに、その後に真相が明かされる場面には、完全に参ってしまいました。  家老の結論を覆し、藩主自ら主人公を庇ってみせたのだと判明する、あそこの件が、この映画のクライマックスだったのではないでしょうか。   結局、決闘については周りに知られぬまま、主人公の仇討ちが咎められる事も無く、離縁した妻とも再び結ばれるハッピーエンドを迎えた本作。  ですが、あの殿様であれば、たとえ事情を知ったとしても、きっと公明正大な処置を下されたのではないかな、と思えました。
[DVD(邦画)] 6点(2016-11-17 12:10:58)(良:2票)
71.  ミスト 《ネタバレ》 
 ドラマ版「ザ・ミスト」(2017年)を一気見した勢いで、久々に本作も観賞。   後味が悪いというか、趣味が悪いというか、とにかく強烈なバッドエンドの映画なのですが、途中までは「スーパーに籠城するモンスターパニック映画」としても楽しめるようになっている辺りが嬉しいですね。  自分のようにラストが苦手な人間でも「中盤までの籠城戦は楽しめた」と評価出来るし、上手い作りだったと思います。   「主人公を臆病者と罵っていた強面のオジサンが、いざモンスターが現れると怯えるばかりで役に立たない」「如何にも頼りない副店長のモリーが、実は射撃の名手で大活躍する」とか、お約束を押さえた脚本になっている点も良い。  決死隊となって外に飛び出す男に対し、武器として小さなナイフを渡そうとしたら、もっと大きなナイフを既に持っていると返される場面なんかも小気味良くて(流石はフランク・ダラボン監督)と感心させられるものがありましたね。  店の外で男が襲われた事を、命綱の動きだけで表現してみせる件なんて、特に素晴らしい。   そういった面白い場面が要所要所に配されているので退屈しないし、監督としても脚本家としても優秀な人なんだなと、今更のように思ったりしました。   その一方で、そんな「上手さ」が悪い印象に繋がってしまった部分もあったりして……それは終盤の車中での射殺シーン。  ここ、せめて息子が眠っている内に済ませてやれば良いのに、わざわざ起きるシーンを挟んだ後に父親が撃つ流れになっていて、これにはもう(そこまでやるか)と呆れちゃいました。  確かに、そうした方がより衝撃的で後味も悪くなるし、効果的な演出だって事は分かるんです。  でも、流石に悪趣味過ぎる気がして、ノリ切れませんでした。   ノリ切れないといえば、主人公達が拳銃による死を選ぶのも納得いかなくて、説得力に欠けていた気がしちゃうんですよね。  妻の死が主人公にとってショッキングだったのは分かるけど、他の面子まで揃って絶望するっていうのは(なんか急に悲観的になったなぁ……)と違和感を抱いちゃう。  そもそも「絶望して一思いに家族を射殺しようとする父親」という展開自体は「アメリカを震撼させた夜」(1975年)でも描かれており、その際には間一髪で真相を知って皆救われる結末だったりするんです。  恐らく本作のラストも元ネタはそれであり「真相を知る数秒前に射殺していたら、どうなっていたか」を描いたって事なんでしょうね。  その結果、歪みが生じたというか……  原作小説では最後まで主人公は希望を失わずにいる話なのに「アメリカを震撼させた夜のオチを剽窃して、更に衝撃的なラストにしたい」っていう意図ゆえに結末を変えたせいで、こんな不自然な形になったんじゃないでしょうか。  元ネタの「アメリカを震撼させた夜」では「心中を提案したのは絶望した母親。幼い子供達は歩き疲れて泣くばかり。父親はそんな妻や子供達を哀れんで心中を図る」という形だから、ちゃんと説得力がある展開だったのに、本作は「安易に他の作品を剽窃した結果、それまでの話の流れと合ってないし説得力も無い結末になった」としか思えない形であり、凄く恰好悪い。  全体の完成度という点を考えても、この「無理矢理バッドエンドにした」感じは、どうも好きになれないです。   その他にも、序盤に話題になった「歩くタブロイド紙」ことエドナが登場しないまま終わるのは寂しいとか、最初に店を飛び出したオバサンが無事だった理由が明かされず仕舞いでスッキリしないとか、細かい不満点もあったりするんですよね。  自分はバッドエンドが苦手ではありますが「それでもなお、この映画は素晴らしい」と認めざるをえなかった傑作も一杯ある訳だし、どうも本作はそれに該当しなかった気がします。   「ザ・フォッグ」(1980年)との類似性、後の「ウォーキング・デッド」(2010年)にも通じる作風、霧が出現する前は平和な日常だった映画版と日常の時点で化け物が身近にいたドラマ版との対比など、語りたい事は他にも色々あるのですが……  結局、この映画に関しては終わり方が衝撃的過ぎて、それを好きか嫌いかどうかという話に落ち付いちゃう気がしますね。  自分としては「嫌いな終わり方」だったのですが、それなりには楽しめたし、色んな客層を配慮して作られた、出来の良い映画だったと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2019-04-12 06:26:15)(良:2票)
72.  メリーに首ったけ 《ネタバレ》 
 破天荒なラブコメ作品。   この頃のファレリー兄弟作が好きな人にとっては、後の作品は「良い子ぶってる」と思えるだろうし「これぞファレリー兄弟の真骨頂」と本作を賛美する人の気持ちも、分かるような気はしますが……  自分としては「後の飛躍を感じさせる、粗削りな初期作品」って印象でしたね。  決して嫌いではないけど、完成度は低かった気がします。   主人公のテッドが小説家志望とか、冒頭に出てきたルイーズの存在とか、色んな設定やキャラを活かしきれていない気がするし、あれもこれもと面白そうな要素を詰め込んだ結果、粗が目立つ形になってるのが、良くも悪くもアマチュア的。  序盤の「ナニをチャックに挟んでしまった」展開も痛々し過ぎて笑えないし、最後の終わり方も唐突過ぎて(雑だなぁ)と感じちゃいます。  自分は本作を何度か観返してるんだけど、その度に序盤で(うわ、痛そう)と引いちゃうし、最後には(すっごい雑な終わり方)と呆れてるんだから、これはもう筋金入りというか、この二点に関してだけは、とことん自分に合わないポイントなんでしょうね。   でもまぁ、やっぱり嫌いじゃないというか……むしろ好きな映画なんです、これ。  そもそも監督がファレリー兄弟で、主演がキャメロン・ディアスとベン・スティラーという自分好みな布陣なんだから、嫌いになれという方が無理な話。   メリーに言い寄る男共を多数用意して、群像劇として描いてるにも関わらず、主人公のテッド以外が酷い奴揃いで「誰がメリーと結ばれるか」みたいなドキドキ感が無い(ブレット・ファーヴは例外的に聖人として描かれてるけど、実在人物である彼がメリーと結ばれるはず無いと観客は分かっちゃう)辺りとか、映画としては致命的な欠点だと思うけど……  ベン・スティラーという名優がテッドを演じ(こいつとメリーが結ばれなきゃ駄目だ)と思わせてくれるお陰で、その辺も気にならなかったです。   あと、一番大事なポイントとして「作中で色んな男に言い寄られるくらいに、メリーは良い女である」って事に、しっかり説得力があったのも素晴らしいですね。  これはもう脚本とか演出以上に、キャメロン・ディアスという存在ありきの、力業みたいなもんだと思います。  「ヘアジェル」で髪が逆立ったメリーの姿を、下品にし過ぎず、可哀想にもし過ぎずに(この子、可愛いな)と笑える形で演じられるのって、彼女だけじゃなかろうかって思えたくらい。   それから、本作って下品なギャグが目立つけど、実は凄く道徳的な話でもあると思うんですよね。  メリーの弟のウォーレンに関しても、知的障碍者である以上、映画としては「天使のように良い子」として描かれるのがお約束なのに、本作では全然そんな事無いんです。  テッドの顔に釣り針を引っかけても「僕じゃない、テッドが悪いんだ」と言ったりして、むしろ嫌な奴というか、悪い子として描いてる。  でも、最終的にはテッドに心を開いて、耳に触れられても怒らない場面を見せたりして、可愛いとこあるじゃないかって思わせたりもする。  つまり「基本的には悪い子だけど、それなりに可愛気もある」という、非常にリアルなバランスなんですね。  その辺り「障碍者だからといって、特別扱いはしない」「障碍者は皆して善人だなんて、そんなの馬鹿げてる」っていう作り手のスタンスが窺えて、自分としては好ましく思えました。   誠実なテッドがメリーと結ばれ、嘘ついて彼女に言い寄ってたパット達は振られちゃうのも、如何にも道徳的というか、童話的。  「好きな映画が一緒」って事に浪漫を感じる身としては、本当は好きな映画でもないのに騙してメリーに言い寄るパットって場面が一番抵抗あったし、その後の顛末にも大満足。  やっぱり、映画オタクとしては、映画の好き嫌いでは嘘ついて欲しくないです。   最後は人が撃たれて、悲劇的な幕切れのはずなのに、エンドロールでは皆で唄って賑やかに終わるのも、何だかアンバランスな魅力があって良い。  ファレリー兄弟の映画って、観た後は大体明るく楽しい気持ちになれるんだけど……  それは本作に関しても、例外ではなかったです。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2023-12-20 10:49:39)(良:2票)
73.  キス&キル 《ネタバレ》 
 アシュトン・カッチャーが好きな自分としては、それなりに楽しく観られたけれど……  そうでない人には、結構キツそうな一本でしたね。   まず、序盤は良い感じというか、中々面白いんです。  旅先で主人公とヒロインが出会い、結ばれるまでを描いており、ラブコメ要素が濃い目で、楽しい雰囲気。  空撮の映像が美しいし、海辺のプールなんて本当に素敵だしで、良質な「旅映画」だったと思います。   にも拘わらず、二人が結ばれ「三年後」に時間が飛んだ辺りから、一気に失速しちゃうんですよね。  主人公のスペンサーが莫大な懸賞金を掛けられ、友人達から命を狙われるブラックコメディと化すんだけど、どうも緊迫感が無くて、アクション映画としても魅力に欠ける感じ。   例えば、友人のヘンリーが突然ナイフで斬り付けてくる場面なんて(本気で殺そうとしてるの? それともふざけてるだけ?)と戸惑っちゃうくらいヌルい描写でしたし、彼の退場シーンもアッサリし過ぎてて、本当に死んだかどうか気になっちゃうんです。  この辺の作り込みが甘いせいで「平和な日常から、殺し合いの日々に戻ってしまう」というギャップの魅力が伝わってこないんですよね。  せっかく映画の前半と後半で違う「色」を打ち出しているのに、これは如何にも勿体無い。   あと、序盤から何度か「バンジージャンプ」ってワードが出ていたので、これはヒロインのジェーンが高所から飛ぶ場面が絶対あるだろうなと思ってたのに、それが無かったっていうのも、拍子抜けでしたね。  「(貴女と友達の振りをしていて)楽しい事もあった」と、友情を示した途端に撃ち殺されちゃうジェーンの女友達って場面も、凄く後味悪いし……  黒幕であったジェーンの父と、スペンサーの和解もアッサリし過ぎてて(えっ、それで終わりなの?)って感じなんですよね。  「スペンサーに莫大な懸賞金を掛けたのはジェーンの父だけど、誤解だったので取り下げました。めでたしめでたし」ってオチにも(結果的に人が死にまくってるんだけど、それで良いのか)ってツッコむしか無かったです。   カメラワークや演出などは平均以上だと思うし「観客を退屈させないサービス精神」は伝わってきただけに、つくづく惜しいですね。  少し手を加えるだけで、絶対もっと面白くなったはずだと、観ていて悔しくなっちゃう感じ。   個人的には「人殺し稼業にウンザリしていたスペンサーが、結婚後の『普通の生活』を噛み締め、幸せそうにしている場面」が凄く良かったので……  その後の展開にて『普通の生活』を奪われた事に対する主人公の怒りや切なさを描いてくれていたら、もっと好きになれたかも知れません。
[DVD(吹替)] 5点(2020-09-08 20:54:22)(良:2票)
74.  百万円と苦虫女 《ネタバレ》 
 作中人物に「えっ? 何で?」と思わされる事が多く、残念ながら肌に合わない映画だったみたいです。   まず、主人公の弟が「僕は逃げない」「だから受験はしません」と言い出す理由が分からない。  怪我させた相手に許してもらうまで諦めないというなら、別に中学が変わっても会いに行けば良い話だし、結局は事件を起こして問題児となったから受験を諦めたという、後ろ向きな結論に思えてしまいます。  主人公の彼氏が「彼女にお金を使わせていた理由」を言えなかった事も不自然で、男の見栄がそうさせていたというなら、どう考えても食事を奢ってもらったり借金したりする方が、情けなくて恥ずかしいのではないかなと。  極め付けがラストの主人公の行動で、結局また引っ越すって、どうしても理解出来ない。  「色んな人から逃げていた」と反省したはずなのに「今度こそ次の街で、自分の足で立って歩こうと思います」って、それ典型的な「明日から頑張る」な先送り思考じゃないかと、盛大にツッコんでしまいました。   これまで「自分探し」という行いからも逃げていた主人公が、今度こそ自分探しの旅を始めるという事なのかな……とも思ったのですが「今回は引っ越すけど、次の街では定住してみせる」なんて考えているようなので、そんな解釈すらも不可能。  泣いてスッキリしたら、またまた仕事を辞めて旅立ち「引っ越さずに、この場所で頑張ってみる」「彼氏を信じて待つ」という事さえも出来なかった姿からは、どうにも成長を感じ取る事が出来ません。  そもそも物語の合間に挟まれる「弟がイジメられる光景」が、実に胸糞悪くて、そちらの方が主人公の悩みなんかよりも余程深刻に感じられる辺り、物語の軸がブレているようにも思えました。   監督さんとしては、あの「男女が再会出来ずに、すれ違ってしまう切ないラストシーン」を描きたかったがゆえに、多少の不自然さには目を瞑ってでも、こういうストーリー展開にしたのかなぁ……と推測する次第ですが、真相や如何に。   そんな本作の良かった点としては「かき氷を作るのが上手い」「桃を採るのが上手い」と褒められるシーンにて、こちらも嬉しくなるような、独特の爽やかさがあった事が挙げられますね。  こういった形で「働く喜び」のようなものを描いている映画は、とても貴重だと思います。   同僚の女性に「良いんですか? 誤解されたままじゃないですか」と、長台詞で「不器用な彼氏の真意」を種明かしさせた件に関しても、今になって考えてみると、良かったように思えますね。  当初は(ちょっと分かり易過ぎるよなぁ……)とゲンナリしていたのですが、曖昧なまま「もしかしたら、愛情ゆえにお金を使わせていたのか?」と含みを持たせるだけで終わるよりは、ずっと誠実だったかと。  主人公に「来る訳ないか」と言わせた点も含め、両者の恋愛模様に対し、はっきりと答えを出してみせた姿勢には、好感が持てました。
[DVD(邦画)] 3点(2016-07-20 06:37:06)(良:2票)
75.  2番目のキス 《ネタバレ》 
 これは久々に大当たりの一本。  明るく楽しいラブコメとして、観賞中は常に笑顔のまま、夢見るような時間を過ごせました。   冒頭、レッドソックスのファンを「神の作った、最も哀れな生き物」なんて評してしまう時点で、もう面白い。  チケットのドラフト会議にて、男友達連中がダンスを踊るシーンも、非常に馬鹿々々しくて良かったですし 「俺の女房とチケットを交換しない?」  と言われて、一度はジョークと思って笑ってみせるも、相手が本気と気付いて真顔になる主人公の反応なんかも絶妙な「間」で、センスの良さを感じますね。  少年野球チームの教え子に対し、恋人の愚痴を零していたら、幼い教え子から的確なアドバイスを貰ってしまうシーンも、凄く好み。   あえて気になった箇所を挙げるなら、女性陣が「どんなに好人物であっても、自分が切った爪や髪を捨てられず取っておくような男は、気持ち悪くて無理」という反応を示す場面。  そして「ヒロインにファールボールが命中して気絶しているのに、それに気付かず仲間と盛り上がってる主人公」という場面が該当しそうですが、明らかにギャグとして描かれているので、笑って受け流せる範疇でしたね。  作品全体に明るい愛嬌が漂っているので、よくよく考えるとブラックなネタなんかも、あまり気にならないというか、スムーズに受け入れられる感じです。   姉妹編である「ぼくのプレミアライフ」(1997年)に比べると、ヒロインが「相手の趣味を知らないままで好きになった」という違いがあり、これには「上手いバランスだな」と感心。  承知の上で付き合った訳ではなく、恋人同士になってから、後出しで本性を知らされた訳だから、ヒロインが彼に「野球観戦を止めて欲しい」と訴えるようになっても、身勝手な印象を受けず、自然と感情移入出来るのですよね。  また、仕事一筋なキャリアウーマンという設定でもある為「趣味に生きる男」「仕事に生きる女」という対照的なカップルになっている辺りも面白かったです。   映画の中盤「夫婦って、お互いに歩み寄るものじゃない?」と言っていたヒロインが、クライマックスにて 「私は彼の為に仕事を犠牲にしなかったのに、彼は私の為に大切なチケットを売ろうとしてる」  と気が付き、その愛の深さを知る流れなんかも、非常に丁寧で分かり易く、ありがたい。  こういった心理の流れを、あえてボカしてみせる演出も御洒落で良いとは思うのですが、やはり万人に伝わりやすい演出の方が、自分は好きみたいですね。   二人が球場でキスを交わした瞬間には、観客の皆が拍手喝采で祝福してくれたのと同じように、心から(あぁ、結ばれて良かったなぁ……)と思えました。   レッドソックス優勝の感動を、そのまま映画のクライマックスに据えて、フィクションよりも劇的な「シリングの血染めのソックス」を、さらっと紹介してみせる辺りも心憎い。  間違いなく球史に残るような大きな奇跡の中では、一組の男女が結ばれた事なんて、とてもちっぽけな事かも知れません。  けれど、主人公達にとっては「愛する人が傍にいてくれる事」が何よりも大切なのであり、優勝の喜びの方は「二番目に素敵な事」になったのだと、最後のキスから伝わってきました。    エンドロール後の、家族ぐるみでレッドソックスのファンになった姿なんかも、実に微笑ましくて良かったですね。  大きな感動と、小さな幸福を感じられる、素敵な映画でありました。
[DVD(吹替)] 9点(2016-09-05 12:33:31)(良:2票)
76.  プロジェクト・イーグル 《ネタバレ》 
 「サンダーアーム/龍兄虎弟」に続く「アジアの鷹」シリーズ第二弾。   始まって早々、お馴染みの「ガムを食べる」シーンを挟んでくれるのが、ファンとしては嬉しい限りですね。  (あのアジアの鷹が帰って来た!)と思えて、大いにテンションが上がりました。  「原住民達との追いかけっこ」「旅の移動時間に曲を流す演出」なども前作と共通しているのが嬉しい一方で、アランやメイといったキャラクター達が出て来ないのは寂しいですが……まぁ、バノン伯爵が続投しているだけでも良しとすべきでしょうか。    そんな本作は無論、アクション重視の冒険活劇なのですが、ストーリーに関しても優れていたと思います。  「宝石よりも水の方が価値がある」と、冒頭のシーンで伏線が張ってある事には感心させられるし、敵となる集団が仲間割れして「ラスボス」枠かと思われたアドルフが味方になってくれるという意外性も良い。  前作において「俺が信じる神の名は『金』さ」と嘯いていた主人公が「人間にとって、一番必要な物は何なのかな」と呟き「金」の無価値さ「水」の大切さを実感しつつ砂漠を彷徨って終わるというのも、皮肉が効いてて良かったですね。   そして何といっても……エンディング曲が素晴らしい!  数あるジャッキーソングの中でも、一番好きな曲じゃなかろうかって思えるくらいですね。  「世の中は、空気と水に満ちている」「無欲ならば、どこでも楽園さ」という歌詞は心に響くものがあり、映画の内容とも完璧に合っていて、実に味わい深い。  普段は笑いながら観賞する事が多いエンディングのNG集なのですが、この曲のお蔭で、涙が滲んでくる事さえあるほどです。   それと、本作の特色としては、もう一つ。  お色気要素が豊富な点も見逃せないですね。  キャリアウーマン風のエイダに、金髪お嬢様のエルサ、不思議な雰囲気漂う旅人の桃子と、個性豊かな三人の美女が揃っており、実に華やか。  彼女達の立ち位置が、これまた絶妙であり「主人公の存在感を食ってしまうほどには目立たない」「全くの役立たずという訳じゃなく、適度に活躍してくれる」っていう形に仕上がっているんだから、お見事です。  鉄の装備で身を固め、敵兵をボコボコにして倒しちゃう件は痛快だったし、ジャッキーに水を飲ませてもらう場面なんかは妙にエロティックで「ハーレム」な匂いすら漂っていたのも、凄く魅力的に思えちゃいました。   序盤のバイクに、巨大な送風機を駆使したラストの大立ち回りと、アクションパートの面白さも文句無し。  そういった「ジャッキー映画お馴染みの魅力」と「感動」「お色気」という本作独自の魅力とが、非常にバランス良く交じり合っている。  傑作と呼ぶに相応しい一本だと思います。
[DVD(吹替)] 9点(2018-10-04 02:38:30)(良:2票)
77.  激流(1994) 《ネタバレ》 
 シンプルな邦題の「激流」ってのが、凄く恰好良いですね。   内容に関しても、画面に広がる雄大な自然を眺めてるだけで楽しいし「崩壊の危機にあった家族が、試練を乗り越え強く結ばれる」という王道展開も備えているしで、満足度は高いです。  一応サスペンス色も強い作りなんですが、血生臭い場面は出て来ないし、主人公一家の中から死人が出たりもしないという、安心設計。  程好い緩さの、程好い緊張感を味わえました。   旦那の命令は全く聞かないけれど、妻に命令されたらすぐに聞き入れる飼い犬の存在も、良いアクセントになっていましたね。  上述の描写は「旦那さんは仕事で忙しく、家を留守にしがち」「だからこそ、犬も旦那さんを家族として認めていない」と、さりげなく伝える効果があり、それだけでも感心していたのですが、実は終盤に掛けての伏線になっていたというんだから、もう吃驚。  共に協力し、危機を乗り越え「初めて私の言いつけ通りにしてくれたな」と、旦那さんが犬を抱き締め、喜ぶ展開に繋がってたんですよね。  「父と息子」「夫と妻」の和解は描かれるだろうと予測済みでしたが、この「主人と飼い犬」の絆に関しては予想していなかっただけに、気持ち良いサプライズ感を味わえました。   川下りの途中、釣りをする描写があるのも嬉しいし「一家は手話が使える」という設定の使い方も上手い。  メリル・ストリープも、流石の目力と存在感。  如何にも頼りなさそうな、眼鏡着用の旦那さんが、家族の為に奮起して超人的な活躍を見せちゃうというのも、観客としては応援したくなるし、良い脚本だったと思います。   そんな本作の不満点としては……やはり、ケヴィン・ベーコン演じるウェイドの扱いが挙げられるでしょうか。  勿論、良い悪役だったと思うんですけど、ちょっと勿体無い気がしたんですよね。  主人公一家の幼い息子、ロークと心を通わせる序盤の展開が好みだっただけに「結局は単なる悪人でした」というオチな事が、凄く寂しい。  ロークに拳銃の秘密をバラされた時に、傷付いた表情を浮かべたりするのが良かっただけに「悪人だが、子供には優しい」というキャラで通して欲しかったなと、つい思っちゃいます。   例えば「十徳ナイフ」の存在にしても、犯人達がそれをロークから取り上げておかないのって、凄く不自然なんですよね。  でも自分としては(ウェイドはロークが好きだから、誕生日プレゼントのナイフを取り上げるような真似はしたくないんだろう)と解釈し(十徳ナイフで危機を脱する展開を、自然にしてみせたな)と感心してたくらいなんです。  でも、クライマックスにてウェイドの本性が暴かれ「ガキも捕まえて殺せ」とか平気で言い出すもんだから(……じゃあ、あれって単に迂闊なだけかよ!)と、大いに失望。  自分の読み違いに過ぎないんですけど、それにしたってコレは落胆しちゃいました。   終盤の難所「ガントレット」を乗り越えるシーンに関しても、迫力があって良かったんですが(いや、旦那さんは陸路で先回り出来たんだから、無理して水路を選ばなくても良いのでは?)と、そこが気になっちゃうんですよね。  多分「犯人二人は、ガントレットを越える以外のルートは無いと、元仲間のフランクに騙されていた」「ローク達もそれを察し、陸路の事は口にしなかった」って事だとは思うんですが、それならそうで、もっと分かり易く説明して欲しかったです。   そもそも、登場人物達は「ガントレット」を越えた際に凄く盛り上がっている訳だけど、前提として「ガントレットを無事に越えたとしても、その後に犯人二人をどうにかしなければいけない」って課題が残っている訳だから、観客目線だと一緒に喜べないんですよね。  「犯人達と協力して難所を越えた事により、絆が芽生えて分かり合うなんて有り得ない」「勧善懲悪な結末であるべき」という真っ当な作りゆえに、映画の一番の山場で、カタルシスを得られなかったように思えます。   全体的には好みな作風ですし、家族の絆が深まるハッピーエンドなので、後味も悪くない。  それでも(最後、もうちょっと上手く着地してくれたらなぁ……)と、欲張りな気持ちを抱いてしまう。  そんな一品でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2018-01-09 08:57:29)(良:2票)
78.  バウンティー・ハンター(2010) 《ネタバレ》 
 愉快な雰囲気の映画でしたね。  追う者と追われる者、賞金稼ぎと賞金首が元夫婦であり、二人が追いかけっこを通して、徐々に復縁していくというストーリーラインも良かったと思います。   ただ、自分としては今一つ楽しめなくて……その理由は、主人公の性格。  野性味があって、毒舌で、所謂ツンデレ気質でと、女性目線なら魅力的なキャラクターに思えたかも知れませんが、単なる「嫌な奴」としか思えない場面も多く、感情移入するのが難しかったです。  演じているジェラルド・バトラーは嫌いじゃないし、なんだかんだで一途な男なんだろうなぁ、って事は伝わってくるんですが、あまり応援出来ないタイプ。  元妻の家に忍び込んで、トイレの便器に歯ブラシを落としたり、録画されていた番組を消したり、ベッドの上でスナック菓子を貪り枕で口元を拭うシーンなんかは、流石に呆れちゃいましたね。  しかも、そこをさも痛快な復讐劇みたいなタッチで描いているもんだから、どうにもノリ切れない。   監督さんは傑作映画「最後の恋のはじめ方」なども手掛けられているし、全体的な演出や音楽の使い方なんかは、結構好みだったんですけどね。  カジノのシーンにおける「最初は乗り気じゃなかったヒロインも、勝ち続けるにつれ段々ヒートアップしていく」という流れや「軍資金片手にエレベーターに乗り込んだ主人公が、次の瞬間には酒のグラス片手に出てきて、ボロ負けした事を示す」という表現なんかも、良かったと思います。  「主人公とヒロインは元夫婦である」という設定も活かされており、互いを知り尽くしている夫婦ならではの会話が劇中に散りばめられている点も、好感触。   で、そんな主人公カップルを囲む脇役陣はというと……ヒロインの母親は結構良い味出していたけど、精々それくらいで、他は微妙に思えちゃいましたね。  中でも、ヒロインに片想いしている男のエピソードなんかは、本筋に全然関係無いし、人違いで骨を折られたりして悲惨な目に遭うだけなので、全然笑えない。  主人公目線なら「俺の元妻に言い寄るから悪いんだ、ざまぁみろ」と思えたかも知れませんが、ちょっとキツかったです。   「結婚記念日を一緒に過ごす為、嫌味な警官を殴って主人公もヒロイン共々逮捕され、檻の中でキスをして終わり」というハッピーエンドに関しては、中々オシャレだし、綺麗に纏まっていたと思います。  終わり良ければ全て良し……という程ではありませんが、この結末のお蔭で、そんなに後味は悪くない。  まずまずの満足感を味わえた一品でした。
[DVD(吹替)] 5点(2017-09-05 18:36:41)(良:2票)
79.  幸せになるための27のドレス 《ネタバレ》 
 オチの良さありきというか、それがやりたい一心で映画撮ったんじゃないかと思えるような品なんですが……  自分としては、過程も含めて楽しめましたね。   例えば、話の流れとしては冒頭の「タクシー運転手とのやり取り」が面白くて、もしや彼が恋人候補かとも思える感じなのですが、ちゃんと配役や演出でケビンこそが「ヒロインと結ばれる王子様」だと分かるよう作ってあるんです。  上司のジョージを(良い人だけど、何か違う……)と観客に思わせる辺りも絶妙で、たとえヒロインが彼に恋い焦がれていても、最終的に結ばれるのはケビンの方なんだろうなと、予想も出来るし、納得も出来ちゃう。  「先が読める展開」「安易な脚本」ではあるんだけど、ちゃんと丁寧に作られていたと思います。   主人公カップルに「結婚式が大好きな女性」と「結婚式が嫌いな男性」を据えて「相性最悪かと思われた相手が、実は運命の相手だった」というラブコメ王道の魅力を描いている点も良い。  それと「ドレスを着たままおしっこする際は、誰かの補助が必要」とか、男性からすると(そうなんだ)と思える場面があるのも良いですね。  女性向けのラブコメ映画だからこその、意外な魅力って感じです。  「要領が良くて、周りに愛される妹」「それに対する、姉としての複雑な感情」を描いている点も、女性主人公ならではって感じがして、これまた楽しめちゃいました。   終盤、主人公が妹の結婚をぶち壊して憎まれ役になる訳だけど、そこで親友がキチンと「こんなの間違ってる」と諭してくれるのも良いですね。  観客が主人公から心を離してしまうのを繋ぎ止める効果があり、ラブコメの親友キャラとして、良い仕事したなって思えました。  アン・フレッチャー監督は「あなたは私の婿になる」(2009年)も良作でしたし、こういう細かい部分の作り込みが自分好みなんでしょうね、きっと。   そんな本作の欠点は……  「姉妹が仲直りする場面に、無理がある」って事でしょうか。  ここに関しては、些細な部分ではなく、映画の中で重要な部分だと思うので、ちょっと看過出来ないです。  妹のベスは、彼女なりに色々考えて「ジョージに相応しい女性になろうとした」と告白するんだけど、具体的に何か努力したという訳じゃないので、説得力に欠けるんですよね。  その辺に関しては、作り手側も気になったのか「実は仕事をクビになったばかりだし、元カレに振られていたりで、妹も挫折を経験していた」「妹は妹で、姉にコンプレックスを抱いていた」と、様々な要素を用意してはいるんですが、どれも和解に至る決定的な材料とは思えず、残念でした。  せめて「喧嘩の切っ掛けになった母親のドレスについて、妹が謝る」って場面があれば、印象も変わったかも。   とはいえ、冒頭にて述べた通り「ブライズメイドを務めてあげた友達27人が、ドレスを着て結婚式に来てくれた」というオチが凄く良かったもので、鑑賞後の満足度は高め。  (これまでの主人公の行いは、無駄じゃなかったんだ……)って感慨を抱けるし、映画のクライマックスと共に完結する構成が美しかったです。  新聞記事に擬したエンドロールも御洒落だし、ラスト数分で一気に評価を高めてくれた一本でした。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2021-03-16 22:46:47)(良:2票)
80.  イントゥ ザ ブルー 《ネタバレ》 
 「夏らしく、海の映画が観たい」という理由でチョイスした一本。   以前に観た時は「演出も脚本も凡庸だけど、主演がポール・ウォーカーというだけで大体満足」という評価を下した記憶があったのですが、改めて観賞してみると、ヒロインのジェシカ・アルバの存在感にも驚かされましたね。  「貴方と一緒なら、ボロでも幸せよ」「貴方が幸せなら良いの」なんて優しい言葉を掛けて、主人公にキスしてくれる姿を、冒頭から繰り返し拝ませてくれるのだから、何だか観ているコッチまで気恥ずかしくなる。  ここまで堂々とされると「男にとって都合が良いヒロイン像」なんてツッコミを入れるのも野暮に思えてきました。   作中で描かれる海の風景が、記憶に残っていた以上に鮮やかで美しかったのも、嬉しい限り。  ストーリーに関しては、正直色々と「ユルいなぁ」と感じる部分もあるのですが、海を舞台とした程好いリゾート気分、アドベンチャー気分を味わっていると、あんまり気にならないようになってくるから不思議です。   やや既視感のある展開ですが、海に眠っていた財宝が金塊ではなくコカインだったという導入部もキャッチーでしたし、ヒロインが空気を口移しキスする場面なども印象深い。  銃では無く銛を武器にして戦ったり、敵を出血させてサメを誘き寄せて攻撃させたりするなど、水中ならではのアクションが盛り込まれていたのも良かったですね。   終盤にて明かされる黒幕が、最初から嫌味な態度で主人公に接している奴だったので、特にショッキングな展開でもないという辺りも、何やらこの映画を象徴しているように感じました。  何というか、全てが「観客を不快にさせない予定調和の中にある」という感じで、安心して楽しめるのですよね。  裏切りの快感を与えてくれる映画も良いけれど、こういう安心させてくれる映画も、自分は好きです。   ヒロインは最初から主人公にベタ惚れで仲も良好である以上「喧嘩していたカップルが、命の危機を乗り越えて再び強く結ばれる」などのカタルシスは望めない訳で(彼女が死んで盛り上げる可能性もあるんじゃないかな~)と予想していたのですが、しっかりと生存してくれた辺りも良いですね。  予想が外れたはずなのに(そうこなくっちゃ!)と思えたりして、嬉しかったです。   「宝物はココにある」なんて気障な台詞と共にヒロインにキスをして、金銀財宝なんかよりも、ずっと大切なものに気が付いた主人公というオチかなと思っていたら、ちゃっかり財宝は財宝として発見しちゃう欲張りなハッピーエンドを迎える辺りも、妙に憎めない。   物凄く良い映画ではないかも知れないけど、自分としては希望通り、期待通りの映画でありました。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2017-07-06 03:21:02)(良:2票)

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