21. アメリ
J・P・ジュネ監督独特のクローズ・アップの多用や凝りに凝った画面作りによる作品世界は、まさにファンタジー・ワールドそのもので、突如、彗星のように現れたアメリに扮する妖精のようなオドレイ・トトゥが、その夢先案内人として実に魅力たっぷりに演じてみせる。そして人間ってほんの些細な事で幸せな気分になれるということを、寓話でありながら実に細やかな描写の積み重ねで説得力をもたらせる事に成功していると思う。余談ですが、人形が一人旅をしてそれぞれ各地で撮ったスナップを送ってくるというエピソードは、確か実話にあったと記憶しています。 9点(2001-12-24 18:07:28) |
22. 赤い橋の下のぬるい水
人間の生と性を終始一貫描きつづけている今村昌平監督ならではの大人の寓話。物干し場から鏡を光らせて、ひたすら乞う清水美砂のしぐさや表情がなんともいじらしく、仕事を放ったらかしてまでその期待に応えようと必死に彼女に向かって走りに走る役所広司ともども、実にユーモラスに描かれている。従って二人のまさに凄まじい“濡れ場”も、どこかカラッとしていて些かのエロティックさも感じさせない。様々な登場人物たちにもそれぞれに比重が置かれ、実に無駄がない。 9点(2001-12-02 00:01:11) |
23. アルタード・ステーツ/未知への挑戦
着想がまず面白く、視覚映像もシュールでかなり凝ってはいる。しかしキノコの成分を抽出した幻覚剤を用いるなど、人間(=生命)の根源を探求するというには、肝心の科学的な裏付けがかなり曖昧で説得力に欠ける。折角の題材をK・ラッセルは上手く料理できなかったようだ。 6点(2001-11-10 23:59:01) |
24. アポロ13
月に到着・征服するはずが機械の故障で不可能となった時点から、この極限状態におかれ生命さえ危険にさらされる三人の宇宙飛行士という物語は、たちまち帰還がテーマとなってくる。人知の及ばない神的な宇宙にいながら、結局、人間の知恵と技術によって助けられるという、宇宙に対するロマンというよりも、むしろ実話としての重みを感じざるを得ないし、またアメリカ映画の基礎とも言える“フロンティア・スピリッツ”と“ゴーイング・ホーム”というテーマをも見事作品に生かされている。 8点(2001-10-20 23:41:26) |
25. 愛のエチュード
主人公は子供の頃の出来事がトラウマとなってある種自閉症的で、生きる事に不器用でましてや服装などには何の関心も示さない。又、大胆かつ激情的である反面、ガラスのように繊細な天才肌のチェス名人である。そんな彼をJ・タトゥーロがこういう役どころを天賦の才の如く絶妙に演じきる。一方、貴族的な価値観で生きてきた令嬢が、初めて本気で愛した男に迷うことなく献身的に尽くし、自分の選んだ道が正しかったということを、愛を貫くことで表現するといった役どころを、E・ワトソンが的確にそしてしたたかに演じて魅せる。悲劇的な結末であるにも拘わらずむしろ爽やかな余韻を残すエンディングだ。 8点(2001-10-06 16:51:49) |
26. 雨の訪問者
ミステリーの渦中に巻き込まれた女性の心理に焦点を絞っているのは、さすがにフランス映画ならではの味がある。ややもすると暗くなりがちなストーリーだが、C・ブロンソンが謎の男として登場してからは、俄然、トーンが明るくなるのはこの人の持つキャラ所以だろう。サスペンスの盛り上げ方としては、同じルネ・クレマン監督の名作「太陽がいっぱい」に勝るとも劣らない、そして些かの無駄な描写もない秀作となっている。 8点(2001-08-05 18:00:31) |
27. 悪魔の手毬唄(1977)
山間の古い村。由緒ある旧家。伝説を秘めた沼。多彩な登場人物。怨みのこもった人間関係。殺しの手口。陰惨さがそのまま華麗さに変容する独特のムード等々。横溝文学の世界を市川監督が良質のエンターテインメントに仕上げたシリーズ第二弾。印象的な主題曲から、ラストの金田一と警部との別れのシーンまで、その演出の旨みと作品に対する力の入れようは前作に勝るとも劣らない。が、この作品、推理モノというよりは殺人を情緒的に楽しむという点で、死の小道具が相手の屋号に因んだものとするには、あまりその必然性は無いし、殺し方にも無理を感じざるを得ない。第一、犯人の心理状態から考えて、そんなゆとりがある筈もなく、唯一不満が残る部分だ。 8点(2001-04-22 17:02:08) |
28. 雨あがる
水煙を上げ叩きつけるような雨、豊かな人物描写、殺陣の動と静の美しさとその見事さ、地響きを立てて疾走する馬、そして夫婦愛。黒澤が撮っていたら、やはりこのような作品に成っていたであろうと思えるぐらい、完成度は高い。まさに彼の遺産をものの見事に受け継いだ黒澤組の紛れもない勝利である。 9点(2001-04-01 17:25:50) |
29. ある日どこかで
ジョン・バリーの音楽と、ヒロインを演じるジェーン・シーモアの美しさに酔いしれ、素晴らしい愛を見せてもらったという感想。ただし結末には納得いかないものがある。 8点(2001-03-18 00:18:17) |
30. アンブレイカブル
「真実を知る覚悟はあるか」の売り文句で、半年近くも期待を弥が上にも抱かせておいて、いざ拝見したら・・・。要するに結末がどうのこうのと言うより、そこへ至るまでのミステリアスなプロセスを楽しむ作品なんでしょうナ。それにしてはストーリーがあまりにも強引すぎて無茶苦茶。 これではいくらなんでも観客は怒るわナ~! 4点(2001-02-24 23:25:51) |
31. Avalon アヴァロン
本物の銃器や戦車やヘリ等とCGによる創造物とが渾然一体となって、ほとんどなんの違和感もない点がまず素晴らしい。モノトーンともいえる作品世界(現実の世界すらバーチャルっぽい!)の斬新な創造力がこの作品の命であり全てでもある。その意味では押井守の意図したことは成功したと言っていいだろう。今後も彼の手によってさらなる映像世界というものを期待したい。 7点(2001-02-04 18:15:52)(良:1票) |
32. 愛のメモリー
ある誘拐事件で不幸にも妻と娘を失ってしまった男。十数年後、彼の前に現れた妻と瓜二つの女。やがて彼女を亡き妻として愛するようになったときから、不思議な運命のドラマが展開されて行く。サスペンスとロマンとを結合させた、ブライアン・デ・パルマ監督の最高傑作。この作品には見た人でないと判らない話のトリックが用意されていて、空港の廊下で主人公二人が、そのすべてが判ったあと抱擁したまま、カメラが二人を中心にぐるぐると踊るように回りだすラストは、忘れられない感動的な名シーンとなっている。 9点(2000-10-22 23:30:43) |
33. 明日に向って撃て!
軍隊まで出動して大包囲網にもなっていることも知らず、自分たちの未来を語りやがて一気呵成に飛び出す二人。映画はそこでストップ・モーションとなり、無数の銃撃音とともにやがてセピア色に変わり終わる。古き時代を生き抜いてきた二人のならず者が、新しい時代というものに圧殺されてゆく哀しさを、ジョージ・ロイ・ヒル監督はまったく新しい映像感覚で描いてみせてくれる。列車強盗の際、火薬の量が多過ぎたため車両が粉々に吹っ飛ぶさまを、真正面から超望遠レンズで捉えたショット。二人が追ってから逃げるときの砂漠のような荒野の美しさ。白い帽子の男を中心とする追っ手のランプの灯が、遠く荒野の果てに見えてくる恐怖感。そして御馴染み“♪雨に濡れても”が流れる中、新しい時代の象徴としての自転車を、P・ニューマンがおどけて乗りまわすシーン等々、印象的な名場面は数知れない。 9点(2000-10-15 15:39:37)(良:3票) |
34. アビス(1989)
昨今見慣れてしまった「T2」の形状記憶合金のSFXの原型を、本作の“水”の動きで実験済みなんですけど、でも最初観たときはド肝を抜かれましたよ。ホント。エド・ハリスっていつも役になりきって本物に見えてくるところが凄い。終盤はちょっとベタな安っぽい仕上がりで評価を下げました。 7点(2000-10-12 00:54:34) |
35. 愛を乞うひと
日本映画としては久しぶりに力の入った、そして完成度の高い作品でした。原田美枝子の演技は鬼気迫るものがあり、虐待シーンの執拗さには目を覆いたくもなりましたが、雨の理髪店でのシーンでは鏡を前にして二役を見事に演じ分け、合成技術の進歩と共に優れて印象深い名場面となっています。 9点(2000-10-12 00:35:48) |
36. 愛と哀しみの果て
この作品、同じアフリカを舞台にしている分けでもないんだろうけど、「野生のエルザ」の旋律に近い、スケール感をともなったリリカルなJ・バリーのスコアに、随分恩恵を蒙っているように思えます。 7点(2000-10-12 00:20:45) |
37. 愛人/ラマン
この作品を観てからもう何年もたつのに、“あのメロディー”が何処からか流れてくると今でもさまざまなシーンが甦ります。つくづく映画音楽の力というものの不思議さを感じざるをえません。特にラストの無言の別れはいつまでも記憶に残っています。 7点(2000-10-12 00:09:19) |
38. アンドロメダ・・・
とある村に宇宙から飛来したと思われる謎の細菌。宇宙服のような防護服を着て、死体がころがる村の中を偵察するシーン、その細菌に犯された死体の手首を切ると、血液が凝固して砂のように流れるショットや、のちに研究所での細菌に犯されていく動物実験を段階的に見せていくシーンなど、一種の科学ドキュメンタリーを見ているかのような錯覚におちいる。R・ワイズ監督の長年のリアリズム精神がいかんなく発揮され、又、ほとんど無名にちかい俳優を使ったのも成功の一因だと思う。ストーリはこのあと村民全滅の中、泥酔の老人と赤ん坊だけが生き延びたことが分かり、その原因と細菌の正体をつきとめるべく科学者たちの戦いがはじまる。終盤、このミステリアスな雰囲気ががらりと変わり、謎の解明を急ぐ研究所がついに細菌に犯されて自爆装置が働いてしまう。そのセットを解除にむかうシークエンスが実にスリリングで(途中、動物威嚇用レーザー光線で攻撃されるシーン等)、さすがはワイズ監督、サスペンスフルな娯楽作品としての見せ場もちゃんと用意してくれている。おススメのSF映画です。 10点(2000-10-08 16:02:37)(良:1票) |
39. アンタッチャブル
ブライアン・デ・パルマ監督の作品って、いつも途中までハラハラドキドキなんだけど、終盤になるにつれて肩透かしというか腰砕けになってしまうんですよネ。でも本作は脚本の良さもあって、冒頭からエンディングまで隙がなく巧くまとめています(彼らしくないといえばそうなんだけど・・・)。クライマックスの駅構内の階段でのド派手な銃撃戦は、スローモーションでさらに効果をあげ、映画史に残る(かな?)名シーンになっています。でもあの赤ん坊は可愛くないっ!(笑) 8点(2000-09-20 23:52:18) |
40. アルマゲドン(1998)
SFXはとにかく凄いんだけど、出演者のほとんどがアホ面で脳天気なのはどういうこと・・・。コメントするような作品じゃ~なさそう!? 5点(2000-09-03 16:38:44)(笑:3票) |