101. 雨
《ネタバレ》 宗教の持つ力を示しながら、たとえ宣教師といえども肉欲に屈する可能性があることも示唆したラストは衝撃的。 猫の眼の様に変化する女心にも衝撃を受けた。 雨がジトジトと降り続け、やがて人を狂気に走らせる。 人間の本能と性を絶妙に描いており見事。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-08-18 00:16:18)(良:1票) |
102. アイズ ワイド シャット
普通に楽しめるレベルの作品だとは思うが、かのキューブリック作品だと先入観をもって観てしまうと満足はいかない。 だが、凡作ではない何かも感じる。 それが何かを再度確かめるには、尺が長すぎるのがネックで、もう一度観る気は到底おきない。 だから、その何かはこれからも分からないだろう。 リーリー・ソビエスキーという女優を初めて知ったが、これはこれは・・・ 私がそこに居たら、間違いなく危険な誘惑に負ける模様。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-08-09 23:38:36) |
103. 秋日和
小津安二郎の中期から晩期にかけてのワンパターン化したストーリー展開は正直飽きがくるものの、小津ならではの様式美と色使い、そしてシーンとシーンの合間に挿入される音楽は、軽妙でいて完成度が高い。 小津が長い間かけて自らの様式美を完成させ、それはあまりの完成度の高さに見惚れるほどだが、むしろストーリーにかけてはワンパターンという欠点が同時に存在する。 小津が好きな人なら、小津様式美としてどんどん進化して深くなっていく後年の作品群にのめりこむことだろうが、親子の離別を主軸に描いた後期小津の作品群は、私のような者には、少々飽きがきてしまうのだ。 原節子は限界。 もはや美しくはない。 いや正確に言うと、小津作品の原節子には、かなり前の頃から、その作り笑いに私は違和感を感じていた。 小津の原節子に対するラブコールとは裏腹に、小津と原節子との相性はそんなに良くはない気がする。 この頃の司葉子は、まさに美しさという点において絶頂期である。 若さと大人の気品を兼ね備え、この作品に花を添えている。 オヤジ三人衆の洒脱さは、本作でも健在。 オヤジたちのやり取りの面白さ、背景にあるオヤジたちの豊富な人生経験を垣間見れる深さなんかは、さすが小津である。 このようなオヤジ達の面白いやりとりを撮らせたら、小津安二郎は間違いなく最強である。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2010-08-01 02:12:46) |
104. アキレスと亀
《ネタバレ》 後半の、はちゃめちゃ芸術人生は、コメディ色が強くなり、それほど感じ入るものはなかったが、前半から中盤にかけての芸術への傾倒の過程をブラックユーモアたっぷりに描いた部分は、ほんと面白かった。 直接的なギャグではなくて、武や武映画を好きな人なら微妙に分かるという、微妙な感じのギャグが満載。 とにかく人が次々に簡単に死んでいくところなんかは、いつもの武映画。 寺島進のヤクザ役カメオ出演も印象大。 豪華な役者陣を贅沢に少しだけ出演させて、流れるようにストーリーが進んでいくのも小気味いい。 でも一番印象に残っているのは、汚い工場で事務員として地味に働く麻生久美子。 こんな仕事場で腐り気味に働いている状況で、地味に美しいこんな女性がいたら、まさしくイチコロだろう。 しかも相手からアプローチ。 これは一種の夢物語だ。 [DVD(邦画)] 7点(2010-06-27 00:07:00)(良:1票) |
105. あしたの私のつくり方
成海璃子の入浴シーンと制服姿が拝めるものの、内容としては子供向けで、健全なるドラマといった趣き。 画面をニ分割にしたり、携帯電話の画面を使って台詞を表現したりと、工夫が感じられるが、むしろそんな工夫よりもドラマそのものに厚みを持たせてほしかった。 品行方正過ぎる内容が市川準監督らしさといえばらしさだが、それがまた、私が市川準監督を苦手としている所以にもなっている。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2010-06-02 23:33:26) |
106. UNloved
WOWOWの名物企画、「J・MOVIE・WARS」からのし上がった、筋金入りのラブストーリーの傑作。 森口瑤子、仲村トオル、松岡俊介の3人を主軸に取り交わされるセリフの応酬は、他に類をみない一種のスリルを感じた。 同じく「J・MOVIE・WARS」から生まれ出た傑作『月はどっちに出ている』に次ぐ傑出した日本映画と言えるだろう。 男女の価値観の相違による意思疎通の不可能性を表現しているという点については、かのミケランジェロ・アントニオーニの『太陽はひとりぼっち』に類似するテーマを扱っている。 しかし、『太陽はひとりぼっち』が、会話や行動のすれ違いといった「静寂」さでもって男女の意思疎通の不可能性を表現してみせたのに対して、本作は、ひたすら繰り広げられる「動的」な口論から男女の意思疎通の不可能性を表現したというところに違いがあり、本作はそういった点においても、オリジナリティを発揮している。 映像面においても、実に映画的な侘しさに満ちた暗いトーンの映像で全編を覆い尽くしており、森口瑤子の住むボロアパートの質素な佇まいを、味わい深く映像化することに成功している。 森口瑤子が演じた女性は、完全なる保守的思考の持ち主で、仕事においても恋愛においても、他人の言動に全く動じない。 自分というものをしっかり持った女性として捉えることもできるが、一方で、他人の意見を受け入れず、恋愛において一人相撲的な状態に陥り、相手の男が孤立感を感じてしまうという点において、実に気難しい女性とも言えるだろう。 ラストのまとめ方については、気分良く観終えることはできたが、果たしてあれで良かったんだろうか、と感じてしまった。 自分をしっかりと持った自立した女性が、恋愛についてどう向き合っていけば良いのか、それが結局分からずじまいだった感は否めない。 [ビデオ(邦画)] 8点(2010-05-09 22:33:03) |
107. 悪夢(1896)
《ネタバレ》 悪夢というより、普通の喜劇にしか見えない。 そして、またしても、顔のある月!! またかよ!って感じで、相変わらず気色が悪い月だ。 [インターネット(字幕)] 2点(2010-05-09 00:09:30) |
108. 赤線玉の井 ぬけられます
赤線「玉の井」が舞台なのだが、「玉の井」ならではの雰囲気をもっと出してほしかった。 だけど、舞台もセットだし、予算もおそらく多くはないだろうし、あれが限度なのは仕方なしか。 しかし、玉の井の赤線街を流れる用水路はとても印象的で、実にいい情緒を生み出している。 まるで京都で見た用水路の裏バージョンという感じ。 当時自分がもし生きていたら、絶対に行って実地検分(?)してみたい赤線だ(これは「洲崎パラダイス」も同じだが)。 内容は、現在も語り継がれる名だたる日活ロマンポルノの名作たちと比べてしまうと、見劣りがする。 舞台が1つのセットしか存在しないから、屋外シーンを多く撮れないのは仕方ないかもしれないが、せっかく「玉の井」という題名を冠しているのだから、当然、屋外の風情ある描写を期待してしまうが、ほとんどは室内の濡れ場が中心で、「玉の井」を舞台にしている意味がほとんど無いのが残念である。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2010-05-07 21:57:59) |
109. 悪魔の下宿人
《ネタバレ》 おっさんの軽快な動きを観てるだけで、少しだけ楽しめる。 しかもこれ、途中までノーカットだから、疲れただろうなぁ。 大小さまざまな物を全て折りたたみ収納してしまうという発想は面白い。 そして最後は、爆発砂煙のお約束でした(笑)。 [インターネット(字幕)] 3点(2010-05-04 07:20:50) |
110. 青ひげ
これはどうだろう、微妙かなぁ。 映像で見せるというより、脚本で見せるというメリエスにしては珍しい内容。 9分ちょっとなのに、メリエス作品だと思って観てしまうと長く感じるから不思議。 [インターネット(字幕)] 2点(2010-05-04 05:22:34) |
111. 非・バランス
《ネタバレ》 主人公の少女を演じた派谷恵美がかわいい! 声はとってもキュートで、細い体がこれまた素晴らしい! 彼女を鑑賞するだけでも楽しめてしまう美しく繊細な邦画だ。 小学校時代のいじめが原因で心を閉ざした少女と、借金まみれのオカマが織り成す人情ドラマ。 この二人の奇妙な友情は、とっても透明感があった。 性という障壁がない分、年齢も関係なく、実に純粋な友情の形が描かれていたように思う。 決して派手な魅力はないが、観る者の心を洗うような清らかな佳作である。 [ビデオ(邦画)] 7点(2010-04-26 00:59:21) |
112. 朝の並木路
貴重極まりない1930年代の成瀬巳喜男作品群の一つ。 小粒な作品ながら、さすが成瀬と言える味わいを持つ内容で、音楽もまた軽快で、観ていて楽しい気分になれる。 しかし、このような軽妙な作品を撮りながら、後年は抜き差しならない男女の愛憎劇を描いた重い作品を撮ろうとは、恐るべし成瀬巳喜男だ。 成瀬巳喜男の進化の過程を知る上でも、観ておくべき作品であろう。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2010-02-13 00:23:40) |
113. 浅草の灯(1937)
1930年代当時の浅草の景観が何度となく出てきて興味深い。 しかし、それにしても、皆さん若い!若い! 上原謙も杉村春子も高峰美枝子も、とにかく若い! 特に高峰美枝子の純朴さ加減が一番のインパクト。 後年に、『犬神家の一族』で見せたあの気味の悪いオバサン役が目に焼きついているだけに・・・ [ビデオ(邦画)] 6点(2010-02-08 19:45:46) |
114. 愛と希望の街(1959)
とても大島渚監督の作品とは思えない作風で、ストレートなテーマの訴えかけに驚きながら鑑賞した。 タイトルの『愛と希望の街』とは、およそかけ離れた内容。 貧富の格差が生み出す、社会の不条理を、とても分かりやすく描いており、すんなりとは観られる。 ただ、安易なキャラクター設定の出演陣に魅力を見出せず、又、暗いというより、ただ単に血の通っていない冷たい内容に、感情移入することができなかった。 しかしながら、感情移入ができないというより、むしろ感情移入させることを敢えて拒んでいるかの様な硬質な作りに、早くも大島渚監督の反骨的な精神を垣間見た気もした。 [DVD(邦画)] 5点(2010-01-29 00:45:30) |
115. 愛・アマチュア
《ネタバレ》 変わった過去を持つ男女4人が織り成すサスペンスだが、面白くない。 深夜にテレビで適当に観るには十分なレベルだが、わざわざレンタルしてまで観るとガッカリするレベル。 登場人物がことごとく死んでいく流れは、アメリカ的安易さを感じ、出演陣の古臭さにアメリカのダメな点を感じる。 ゲロシーンに拷問シーン、と不必要に不快なシーンが出てくるのもマイナスポイント。 唯一いいのは、中途半端ながらもストーリーに起伏があり、なんとか最後まで観れた点かも。 [ビデオ(字幕)] 3点(2010-01-04 01:16:22) |
116. 暗殺の森
ファシズム、ホモ、レズ、小児性愛、スワッピングもどき、殺人・・・と、タブー三昧だが、別に過激でもない。 内容は、ファシズムに関するものがメインで、何とも解りにくい。 映像は美しいが、映像だけで楽しめるほど美しくはない。 消化不良という言葉がピッタリくる、ベルナルド・ベルトルッチの代表作。 [ビデオ(字幕)] 3点(2010-01-03 01:27:07) |
117. 蟻の兵隊
主演の奥村氏が、病床の97歳の先輩を訪れるシーンが最も印象に残った。 「私の力不足です、申し訳ありません」と謝罪し、植物人間に近い状態の先輩は、何度となく奇跡のように反応をみせる。 国に捨てられた悔しさはどれほど凄まじいものなのかを垣間見た気がした。 高齢になった今でも、その悔しさを少しでも晴らす為に、老体にムチ打って行動に出る。 そのエネルギーはまさに負のエネルギーとも言えるもので、戦争というものが残した傷跡の深さを痛いほどに体感できた。 侵略され惨殺された中国人はもちろん被害者だが、こうした傷跡が老年になってもいっこうに癒えない元日本兵も、紛れもない戦争被害者であるのだ。 戦争はあらゆる方面で人々に深い傷跡を残した。 どんな世の中になろうとも、戦争だけは起こしてはならない。 平和ボケした現代において、その平和の有り難味を感じることのできる貴重なドキュメンタリーである。 こんな作品を観てしまうと、不景気だのなんだのと、自分の身を憂うことが恥ずかしく思えてくる。 そして、日頃のストレスなんて、ほんの些細なことだと思えてくるのだ。 [DVD(邦画)] 7点(2009-12-29 01:45:56) |
118. 阿部一族(1938)
セリフの半分は判然としない。 特有の言葉のせいもあるが、とにかく音声が割れている。 聴きづらくて仕方なかった。 お馴染みの河原崎長十郎と中村翫右衛門コンビは、本作では不発。 山中貞雄作品のような存在感は感じられなかった。 [ビデオ(邦画)] 2点(2009-12-18 23:42:36) |
119. アジアの逆襲
まるでデヴィッド・リンチの『イレイザーヘッド』を観たかのような気分。 いや、あれほど気色悪くはないが、どこか似た世界観だった。 石井聰亙監督のパンクなエネルギーが炸裂していて、石井聰亙初期作品と同じノリを感じた。 [DVD(邦画)] 4点(2009-12-14 01:25:53) |
120. アシク・ケリブ
映画というより、芸術作品たる絵巻物を観た感覚だ。 セルゲイ・パラジャーノフという監督は、いわゆる映画監督としての才能というより、単純に芸術家としての才能をフィルムに発散している。 映画監督してみると、このようなスタイルの作品を連発されても、正直飽きがくるようにも思うが、ラストで“アンドレイ・タルコフスキーに捧げる”と出てくるように、タルコフスキーのような孤高のスタイルを貫徹する映画監督がいてもいいのかもしれない。 そう思えてしまう程、圧倒的な芸術的美しさ、完成された様式美を持った作品である。 [ビデオ(字幕)] 5点(2009-12-13 14:56:58) |