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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2399
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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【製作年 : 1970年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  悪魔のシスター 《ネタバレ》 
ほとんど実績のなかった若造のデ・パルマに、彼のヒッチコック趣味全開の作品を撮らせたプロデューサーには敬意を表したくなります。なんせ音楽はバーナード・ハーマンですからねえ。ヒッチコックじゃないけど「凶器はナイフがいちばん!」という拘りの殺人シーンはかなりの生々しさです。そして『ファントム・オブ・パラダイス』の“ウィンスロー”ウィリアム・フィンレイの怪演というかその気持ち悪さ、この映画のヤバさのかなりの部分を彼が持って行ってくれました。スプリット・スクリーンの使い方もセンスの良さが感じられます。でも正直言って精神病院にヒロインが忍び込んでからのラストまでの二十分間の展開を理解するのは、自分には無理でした。特にあのラスト・シーンは、主演のジェニファー・ソルトですら「私には理解不能」とインタヴューに応えているぐらいですから。それでもヒロインが見る悪夢のシークエンスは、『ローズマリーの赤ちゃん』を思い出す不気味さ、ブニュエルの映画のワン・シーンみたいな感すらあります。 死体を隠した長椅子に血が染み出ているカットは普通は伏線のはずなのに放置されて終わったのは「なんじゃ、こりゃ?」感が拭えませんが、本当は長椅子の周りでもっとしつこく捜索するところを撮ったけど、尺の都合で切られてあのカットだけが残ったということらしいです。とすれば、かなり雑な仕事だよなあ、まあこの頃のデ・パルマにはそこまでプロデューサーに歯向かう権限はなかったでしょうけど…
[CS・衛星(字幕)] 5点(2023-04-16 22:55:56)
2.  愛の亡霊 《ネタバレ》 
『愛のコリーダ』に続いてフランス資本が主導で撮られた一編、仏語原題と邦題の『コリーダ』との類似性から未だにハードコア作品と誤解されている節があるのはちょっと残念です。自分は『愛のコリーダ』は一種のゲテモノ映画だと思っているので、物語として何の繋がりもない本作の方が評価されるべきじゃないかと思っています。 茨城県で実際に起こった事件を基にした脚本だそうですが、大島渚映画の中でもピカイチと言えるぐらい映像が美しい。それもそのはず、撮影の宮島義勇を始め主要スタッフが小林正樹の『怪談』を製作した人たちなんですから。武満徹の音楽がまた絵も言えぬ独特の雰囲気を出しています。お話しは吉行和子と愛人の藤竜也が夫の田村高廣を殺して古井戸に隠すけど、その後田村の幽霊に悩まされるという割と単純なものです。前半では藤と吉行が田村を殺すに至る経緯があまりに雑なのが気にかかります、殺人から三年たっても二人の関係が変わらないというかかえって疎遠になった様な感じで、これじゃなんで夫殺しに走ったのか?って言いたくなるけど、実話って案外と雑なことが多いんですよね、まあ生身の人間のすることですから。でもそれから田村の亡霊が出現するようになってからは、俄然見どころが多くなってきます。この亡霊は自分を殺した妻の前にだけ現れるのですが、彼女を恨む様子はまったくないんです。そりゃ女房の方は恐怖のどん底ですけど、彼女の注ぐ酒は飲むし勧められれば芋は食べるしでで、こんな人の良い亡霊は珍しいです。だいたい幽霊が現生のものを飲み食いするのは初めて観た気がします。でもこの幽霊・田村はいつも寂しそうに出現するけど不気味さは高レベルで、生前は車引きだった彼が吉行を人力車に乗せて走るところなんかゾクッとさせられますよ。粗野で自分勝手な男としか見えなかった藤も、後半になると亡霊に悩まされて半狂乱になる吉行と供に苦しむようになる演技には胸を突かれました。 斜に構えたような映画を撮っていた大島渚ですが、本作はそんな彼の残した珍しい正統派の映画だと思います。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-04-23 22:37:50)
3.  ある愛のすべて 《ネタバレ》 
『ある愛のすべて』、まず邦題からして如何なもんでしょうか。これは言わずと知れた70年の『ある愛の詩』のパクり、まあこの大ヒット映画とは似ても似つかないグチャグチャの三角関係の愛憎劇なんですからねえ。 セレブな建築家のマイケル・ケイン、その有閑マダムを絵に描いたような豊満な妻がエリザベス・テイラー、ケインが浮気のつもりで手を出したがだんだんマジになってゆくブティック・オーナーがスザンナ・ヨーク、というのが基本的な登場人物、というかこの三人だけで進行するストーリーです。この頃のケインは男の色気が絞ったら滴りそうな絶頂期、そのキャラ付けは60年代の出世作『アルフィー』の主人公がセレブに成り上がったという感じ。そのケインとリズの夫婦喧嘩が凄まじく、これを延々と見せられる前半はほんとうんざりさせられます。リズは『バージニア・ウルフなんかこわくない』を彷彿させる役柄、仲の悪い夫婦の悪妻はもはや彼女の十八番と言えそうな域に達しています。浮気相手のヨークにも面と向かって悪態をつくし、素のリズも口が悪いことでハリウッドでは有名だったので、けっこう本人も愉しんでいたんじゃないかな。でもそれを見せられる方としては愉しめるかと言うと、そんなわけないですよね。ケインもロールスロイスを乗り回す身分ながらリズのクリーニング代金にも文句をつけるケチ臭い男、小物感は否めません。 大喧嘩を繰り返した挙句ヨークとアパートを借りてリズと離婚するという展開なのに、リズがケインには未練たっぷりでお話しはすんなり進行せず行きつ戻りつ状態、挙句の果てにはリズがリストカットして自殺未遂という波乱のストーリー。「こりゃ、いったいどういうオチになるの?」と呆れているとヨークがリズに打ち明けたある秘密から予想外の展開になり、ラストカットのケインの表情と同じく観ている方も啞然茫然となる幕の閉じ方でした。 けっきょく誰にも感情移入できず、大人の恋愛というレベルのお話しにも達していない。三人ともキャリアに脂がのりきった時期の作品なのになんでこんなに埋もれた映画になってしまったのか、そりゃ観れば納得できますよ(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2022-02-19 21:51:31)
4.  悪魔の沼 《ネタバレ》 
デビュー作が話題を呼んでハリウッドに招かれたトビー・フーパ―、でも『悪魔のいけにえ』がなんであんなに高評価なのかが理解不能な自分としては、この第二作は納得のクズ映画でした。ハリウッドとはいっても怪しげな独立プロデューサーの製作で全編安っぽいセット撮影でフーパーも単なるお雇い監督、フーパーが趣味をあまり主張できなかった分基本的な監督としての能力が発揮できるチャンスでもあったのに、出来はご覧の通りです。メル・ファーラーやスチュアート・ホイットマンといった微妙なビッグネームも出演していますが、オードリー・ヘップバーンが妻だった男が出るような作品じゃないでしょ、ファーラーさん。前作に続いてマリリン・バーンズも出演していますけど、彼女と娘役が終始がなる悲鳴のうるさいことといったら、とくに娘の方はもうほとんど超音波でした(笑)。ネビル・ブラントも終始支離滅裂なセリフを呟くだけ、もうこれは完全にキチ〇イというわけです。このキチ〇イ親父が終始カントリーミュージック放送をホテルに流すのはトビー・フーパ―印なんですが、物語は終始夜間で『いけにえ』が真っ昼間の出来事だったのとは対照的、明るい太陽のもとでの凶行とカントリーは妙に親和感があったけど夜間だと単にうるさいだけ。そう言えば後にフレディ・クルーガーで有名になるロバート・イングランドも出てましたが、“Name's Buck... and I'm rarin' to fuck.”という冒頭のセリフは、“キル・ビル”でタランティーノがオマージュし、看護士バックが全く同じセリフを発してましたね。保安官のスチュアート・ホイットマンもいてもいなくてもどうでもイイキャラで、そのくせラストになって全てが終わったところでまるでヒーローみたいな顔して突然に登場、主要な男性キャラはみんな喰われちまったんだからあんたもワニの餌になればよかったんだよ!
[CS・衛星(字幕)] 3点(2021-08-24 22:56:19)
5.  アリス・スウィート・アリス 《ネタバレ》 
シングルマザーに育てられているアリスとカレンの姉妹、母親は熱心なカトリック教徒で聖体拝領のミサに姉妹を連れてゆきます。姉のアリスは12歳ですが可愛いという感じからはほど遠いヒステリックな娘で、大人にちょっと卑猥な表情を見せたりするませガキです。妹のカレンは真逆の可憐な美少女ですが、嫉妬するアリスから日常的に虐められています。聖体拝領の列に並んでいたはずのアリスが行方不明になっているときに、黄色いレインコートを着てプラスチック・マスクをした謎の女(?)にカレンは絞殺され死体が燃やされてしまいます。警察や神父から“子供だけど危ない奴”と容疑者にされたアリスは精神科の児童施設にいれられてしまいます。果たしてカレンを殺めたのはアリスなんだろうか? 端的に言ってしまうと、マーヴィン・ルロイの『悪い種子』とニコラス・ローグの『赤い影』を足してスラッシャー映画に仕立てましたって感じです。公開当時話題にもならなかったけど、カレンを演じたのがブレイク寸前のブルック・シールズだったということでカルト的な評価に繋がったようです。開幕十分ぐらいで殺されちゃうから出番はとうぜんわずかだけど、確かに美少女ぶりは輝いていました。でも知って「えっ」と驚愕したのが、12歳のアリスを演じていたポーラ・シェパードが撮影時はなんと19歳だったってことです。たしかにませた表情をする子役だと思いましたが背格好には何の違和感もなく、恐るべきロリコン女優だったみたいです。母親役のリンダ・ミラーは、東宝の『キングコングの逆襲』でヒロインのスーザンを演じ、ほかにも東映の『ガンマ―第3号 宇宙大作戦』にも出演している日本の特撮映画と縁が深かった人です。 中盤で連続殺人の犯人はあっさり種明かししちゃうのでミステリー要素は薄いし、スラッシャー描写も70年代としても大したことはない(しかし刃物恐怖症の気がある人にはつらいかも)。でもこの映画で妙なインパクトがあるのは、主要キャラ以外のわき役たちの持つ変なテイストを強調した撮り方をしているところです。とくにほとんどベッドから出てこれない超メタボ大家、なんでこんなキャラ設定にしたのか意図不明です。たしかにここら辺には、『バニー・レークは行方不明』の影響も感じられます。そして聖体拝領のパンを口に入れてもらうために瞑目して舌を出している信者たちを映したカット、なんかグロテスクでエロティックな表情がならんでいて不謹慎極まりない。事件はすべて教会の周辺で起こっているし、教会というかカトリックに対する監督の悪意を感じてしまいます。 しょうじき犯人の動機はさっぱり理解できませんし、ストーリーテリングにもキレはない典型的なB級スラッシャーとしか言いようがありません。でもラストでアリスが見せる表情には、『オーメン』のダミアンを思い出してしまいました。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2021-07-18 22:25:45)(良:1票)
6.  アウトロー(1976) 《ネタバレ》 
“建国200周年記念映画”と銘打たれていますけど、輝かしい勝利を謡った『ミッドウエイ』と違って、西部劇とは言え南北戦争当時の合衆国史の暗部を取り上げているところがイーストウッドらしい。彼が撮った西部劇には一癖も二癖もあるのが特徴です。 彼が演じるジョージ―・ウェルズは、とても農夫だったとは思えない『荒野の用心棒』の名無しの男みたいな無敵のガンマン。もっとも銃を撃ったより毒液の様な唾を吹いた回数の方が多かった感じです(笑)。この物語は先住民チーフ・ダン・ジョージと出会ってからのバディムーヴィー風味が強くなってきます。政治的には保守のイーストウッドですが彼の作品はマイノリティに暖かい視線を向けることが多く、本作ではアメリカ先住民を人間として勇士として扱う敬意を強く感じました。そして忘れられないのがあの“お尻ペロリ”シーンのソンドラ・ロックでこれがイーストウッド映画の初出演、そしてこの後皆さまご存知のようにイーストウッドを生涯悩ませる女となるわけです。でも本作の彼女は可憐だったのは確かでイーストウッドが惚れたのも無理ない、というか、後に結婚したフランシス・フィッシャーもそうだし彼はこういう細いタイプが好みみたいですね。 本作は妻子を殺された男の復讐劇なんですけど、隠れテーマは“和解”なんです。もちろんこの映画の戦争は南北戦争ですけど、やはり製作時期を考えるとヴェトナム戦争を意識せざるを得ないんじゃないでしょうか。ラストのジョン・ヴァーノンの「戦争は終わったと告げよう」というセリフには、ヴェトナム戦争とウォーターゲート事件でボロボロ状態だった当時のアメリカ社会へのメッセージだったんじゃないでしょうか。これこそイーストウッドが建国200周年で訴えたかったことだと感じました。
[映画館(字幕)] 8点(2021-05-13 23:24:35)
7.  アンドロメダ・・・ 《ネタバレ》 
みな様ご存じ、最新科学的知見を取り入れたハッタリを書かせたらピカイチのマイケル・クライトンですが、彼のフィクションは映像化するのには意外とハードルが高いところがあります。本作で言えば、ニューメキシコのド田舎の住民を全滅させた宇宙から衛星が持ち込んだものが何なのか、という謎を純科学的に解明してゆくプロセスを映像として再現するところでしょうね。そこはベテランのロバート・ワイズですから、地下深くに構築された研究施設のディテールに徹底的にこだわった演出でストーリーテリングして成功しています。当時では最先端のコンピュータシステムの画面なんかは今の眼で観ちゃうと微笑ましい限りの代物ですが、執拗に描かれる殺菌プロセスなんかは現代でも通じる絵作りだと思います。このストーリーで地味だが斬新なところは、人々に死をもたらしたものが細菌でもウィルスでもなくアミノ酸を持たない地球上では考えられない生命体だったというところで、「微生物やウィルスのようなサイズや構造の知的生命体が地球外に存在するかもしれない」というセリフには目から鱗という感じでした。 この映画では結局匂わすだけで終わった感じでしたが、衛星を打ち上げて回収する“スクープ計画”なるもの自体がなんとも怪しげです。宇宙から細菌や微生物を採取してBC兵器を開発するのが目的だったと暗示しているようですが、まあフィクションですから目くじら立てることはないですけど荒唐無稽ではあります。でも製作時期を考えると“コロナ・ウイルスBC兵器説”に代表されるような陰謀論の元ネタなのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-04-15 22:13:29)(良:1票)
8.  アバランチエクスプレス 《ネタバレ》 
ロバート・ショウと監督のマーク・ロブソンが撮影終了後に相次いで死去して、公開までに製作陣が大変な苦労をしたといういわくつきの作品です。これは観方によっては『ポルターガイスト』どころじゃないリアルに呪われた映画と呼べるんですが、内容がオカルトじゃないので宣伝にもならなかったのが悲しいところです。ポスト・プロダクションではモンテ・ヘルマンやジーン・コーマンといったロジャー・コーマン一家に助けてもらってようやく完成しましたが、やっつけ仕事のボロはいたるところで確認できます。ロバート・ショウは撮影中も体調が悪くて声が張れず、劇中の声はすべて吹き替えなんだそうです。 東西冷戦下のソ連幹部の亡命劇がサスペンスのプロットです。まず首をひねりたくなるのは、冒頭のクレムリンでの会合を見る限り、「アンジェロ」というコードネームの東側スパイを餌にして西側を引っ掛ける作戦で、ショウが演じるマレンコフが「アンジェロ」に成りすますことになったと理解できます。首尾よくリー・マーヴィンたちのCIAに身柄を預けることに成功するマレンコフですが、なぜか全力でマレンコフを殺そうとソ連側が襲撃してきます。「あれ、これって偽装亡命じゃなかったの?」なりますが、マレンコフは裏切ったと解釈しないと辻褄が合わなくなってしまいます。そこらへんの説明が一切ないので、ソ連がどこで裏切りに気づいたのかも不思議です。たぶんこのあたりのストーリーの撮影が未了だったんじゃないでしょうか、そうじゃなかったら恐ろしく雑な仕事と言わざるを得ません。スイス経由の国際列車でミラノからアムステルダムまでマレンコフを移送することになりますが、ふつう飛行機を使うんじゃない?まあ、そこに突っ込むのはやめときましょう。でも山中でソ連は派手に銃撃を加えて襲ってくるは、挙句は雪崩を起こして葬ろうとまでする始末です。この雪崩シーンはアナログな特撮でしたが良く撮れていて、ジョン・ダイクストラもそこそこ良い仕事をしています。でもこの列車は専用列車じゃなくて一般の乗客もいるのにこんな酷い目にあってもパニックも起こらず、何事もなかったかのように駅で時間調整するところなんて、あまりのバカバカしさに笑いも出ずシュールなものを見せられたかのような感覚すらしました。 終始こんな調子で進行するのでお話がどんどん安っぽくなってゆくのが哀しいところですが、90分弱というこの手の映画にしては短すぎる上映時間も失敗の原因ですね。マーク・ロブソンと言えば『脱走特急』という快作があるしリー・マーヴィンも『北国の帝王』が代表作だし、二人とも鉄道がらみの映画とは相性が良いはずなのにこの惨状ですからねえ…
[CS・衛星(字幕)] 3点(2018-11-17 20:52:13)
9.  アギーレ/神の怒り 《ネタバレ》 
冒頭の山下りのシーンから、この映画のヤバさがひしひしと伝わってきます。もう完全に未踏の地みたいなジャングルの山道で実際にロケをするという発想自体が、この監督の狂気を具現しているとしか言いようがないです。アギーレが反乱を起こしエル・ドラドを目指して筏で河を下ってゆき全滅するのがストーリーですが、どこまでが演出なのか迷わされる映像の連続でもあります。前半の怒涛渦巻くアマゾンを筏で下るシーンも、これはマジで事故ったら大惨事という危険な撮影です。またクラウス・キンスキーの演技というか表情がマジでヤバい。ヘルツォークがキンスキーをあわや殺すところだったというエピソードは有名ですが、キンスキーのあの狂気のまなざしは監督に対する怒りというか不信感が表れていたんですね。アギーレがなぜか娘を同行させますが(この娘、劇中で一言もセリフを発しません)、この二人は近親相姦の関係にあるんじゃないかと思わせる撮り方です。この娘役がナターシャ・キンスキーだと間違えてる解説を見かけますが、クラウスも実はナタキンを使って欲しかったんじゃないでしょうか。 あのジャングルの大木に朽ち果てた帆船が引っかかっている摩訶不思議なシーン、これが『フィッツカラルド』につながってゆくんでしょうね。
[ビデオ(字幕)] 7点(2018-07-20 23:51:02)(良:1票)
10.  悪魔のいけにえ
『エクソシスト』のトラウマが残っていた時期なので同時代では観ていないけど、たぶん観なかったのは正解だったと思います。確かに低予算のなせる業で思ったよりスプラッター的な描写は少ないんですけど、映像とBGMと効果音がこれほど狂気にシンクロした映画は滅多に観れるもんじゃございません。たぶん公開時に観た人達は、これは実験映画なんだろうな、と思ったに違いありません。こんな凄い映画を撮ったトビーフーパーという人は天才かと当時は思われたかもしれませんが、その後のフィルモグラフィを観れば本作がいろんな要素が重なり合った幸運な偶然だったということが判ります(笑)。撮影直後に権利を買いたたかれて、可哀想にもフーパ―自身はこの歴史に残る金字塔からほとんど利益をもらっていないそうです。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-03-29 22:50:00)
11.  悪魔の追跡 《ネタバレ》 
この映画はホラーものというよりもアメリカ映画特有のジャンルでもあるスモールタウンものといった方が正しいんじゃないでしょうか。でもわたくし的には並みのホラーよりスモールタウンものサスペンスの方がはるかに怖い話が多いんです。とくにテキサスの田舎のお話しはね。 四人が旅に出てから出会う人間は全員怪しいという設定は当時としてははかなり奇抜だったんじゃないでしょうか。劇中でケリーだけは出会う人達が不気味に見えてしまうわけで、その時点ではこれは彼女の被害妄想と見えなくもない撮り方ですけど、彼ら四人が出会う人間が男女ともすべて中年以上で若者が一人もいないというところで不自然さが満開です。まあこれはラストで襲ってくる面々を観て答えは出るわけで、かなりストレートな恐怖です。このプロットは70年代の若者世代が年寄り世代のに抱いていた不信感のメタファーになっているのかもしれません。結論としてはアメリカ(特にテキサス)の田舎は恐ろしい、ということでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-01-14 23:24:52)
12.  愛のさざなみ 《ネタバレ》 
『愛のさざなみ』、そういや昔そんな映画があったな、という記憶も有ります。でもネットで検索すると、出てくるのは島倉千代子の同名の歌ばかり。まさに忘れられた映画という感じですかね。で、実際に観てみますと、大したお話しではないうえに陳腐で観念的としか表現できない映画でした。 『明日に向かって撃て!』の翌年に撮られた作品ですから、キャサリン・ロスの魅力は満喫できます。相手役のジェイソン・ロバーズには、この人がキャサリン・ロスとラブ・ストーリーなんてあり得る?、という懸念は当然有りました。ロバーズはちょっと有名なホラー映画専門の俳優というキャラでしたが、けっこう味がある演技かなという感じです。でもなんでこの男がホラー俳優じゃなきゃいけないのかという必然性はまるでないのですけどね(笑)。でも、とにかく脚本が酷い。前半のロスとロバーズの質問に質問で返す会話の連続の陳腐さには閉口させられましたし、突然のFBIの登場や森の中での若者たちのレイプまがいの騒ぎなど、何が言いたかったのかさっぱり判りません。またキャサリン・ロスがなんで弁護士の旦那と離婚したがっているのかも、浮世離れした観念的なセリフでは観る方に全然伝わってきませんよ。劇中いかにも70年代と言う感じの歌を流して『ジョアンナ』風の映画に仕上げたかったみたいですけど、肝心の曲が陳腐なのでこれまた失敗。 恋愛ものアメリカン・ニューシネマは駄作だらけという法則がどうもあるみたいです。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2016-06-06 23:10:07)
13.  暁の7人 《ネタバレ》 
ハイドリッヒ暗殺とその後の報復虐殺事件の悲劇をストレートに映像化し、戦争映画史上に残るダウナー映画として名を残しています。本作と『ジョニーは戦場に行った』および『炎628』が私が選ぶ三大ダウナー戦争映画です。ティモシー・ボトムズはこのうち二本で主演しているというのはある意味凄いですね。 暗殺成功した後の報復を恐れる現地レジスタンスと、命令遂行しか眼中にないまるで青春物語のキャラみたいに脳天気な若い潜入組との対比が面白い。だいたい史実通りなんですけど、暗殺隊員たちのグダグダぶりはイライラさせてくれます。でも妻子持ちをメンバーに選ぶおえらいさん方もたいてい間抜けです。そんな杜撰な計画でも暗殺は成功してしまい、その後にメンバーたちとチェコのリディツ村の住民の悲惨な運命を見せられると、実に暗澹たる気分にさせられます。 映画ではハイドリッヒが全欧のナチ占領地の責任者になることを阻止するのが暗殺を急ぐ理由になっていますが、そんな事実はなくこれはウソです。本当は有能なハイドリッヒが飴と鞭の占領政策で労働者階級を味方につけるような情勢になって来たので、チェコ亡命政府が住民を虐殺される危険を承知のうえで決行した作戦でした。この政治感覚は、ヴェトナム戦争のヴェトコンと相通ずるところがあります。冷戦時なのにプラハでロケさせてもらえたぐらいですから、そこら辺の機微に触れる様な部分は改変せざるを得なかったんでしょうね。
[映画館(字幕)] 6点(2015-08-13 20:54:12)
14.  愛のメモリー 《ネタバレ》 
デ・パルマ映画の中でも屈指のぶっ飛びストーリーだと私は思います。詳しくは書けませんけど、もうあわや近親相姦になるところですからねえ(笑)。妻子を亡くした男の喪失感を前面に押し出した前半と、強引な急展開へと暴走する後半がかなりアンバランスなのも目を見張るところかもしれません。思うにこれは脚本にポール・シュレイダーが参加しているのが原因かもしれませんね。ヒッチコック大好きデ・パルマですからもろにオマージュと判るシーンも幾つかありますが、誘拐犯たちの意図がイマイチ不明なのに突っ走っちゃうストーリー・テリングも彼らしいところです。でも急展開の後で見せてくれるあのグルグル回るラスト・シーンは、映画史に残ると言う人もいるぐらいでさすがにグッとくるものがあります。これをマネしている映画はいっぱいありますからね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2014-10-10 18:29:57)
15.  アルカトラズからの脱出 《ネタバレ》 
脱獄ジャンルものは、どれだけ刑務所生活が悲惨かを観客に納得させ脱獄する囚人にいかに感情移入させるかが映画の出来を大きく左右するものです。その観点からは、もう一生シャバに戻れない終身犯は別としてもアメリカの刑務所生活は途上国なんかと比べると恵まれているように見えちゃうのが難点。そういう点ではこの映画のイーストウッドにも、飄々とし過ぎていて脱獄するぞという執念が感じられなかったのはちょっと残念です。その代わりに換気口に穴を穿つための努力を淡々と見せてくれる丁寧な描写はイイですね。看守を見張るために鏡を使うところなぞ『穴』でも使われた手口で、こういうところは万国共通なのかもしれません。ハラハラさせるところはちゃんとツボを抑えていて、ここら辺の手腕は老いたりと言えどもさすがドン・シーゲルです。音楽も最小限におさえたドキュメント・タッチの撮り方も渋いです。 アルカトラズ島の遠景が、日本の軍艦島みたいだったのが印象的でした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2014-08-17 22:17:24)
16.  アルフレード アルフレード 《ネタバレ》 
D・ホフマンがイタリア映画に出てイタリア語を喋ってる(もちろん吹き替えですけど)というだけでも一見の価値ありです。違和感が最初にはありましたが、だんだん彼がイタリア人にしか見えなくなってくるのはやはり名優のなせる技でしょうか。 イタリア映画のお得意ジャンルである離婚騒動ものでありますが、このジャンルでは離婚するために男と女が奇想天外な手を使って笑わせるというのがお決まりなのに、苦労はするけど離婚自体は至極まともに成立しちゃいます。これは70年代になってイタリアでも次第に離婚がしやすくなってきたことが反映しているのかもしれません。劇中アルフレードは愛人と離婚合法化を要求するデモに参加したりしますしね。でも愛人とベッドに入っているところを警察に踏み込まれたりして驚かされますが、これは当時のイタリアでは男にも姦通罪が適用されたからでしょう。 この映画では離婚よりも結婚生活の苦しみのほうがツボで、悪妻S・サンドレッリとその両親の振る舞いはもう笑うに笑えないレベルです。C・グラヴィーナにしたって、ホフマンとの仲が深まるにしたがってやはり両親との関係や性格など、先が思いやられる展開です。そこら辺はコメディとしてカリカチュアしてるけど観る者にとって身につまされることが多いです。彼女らを笑い飛ばせるのはよほど出来た奥さんを持っている人で、羨ましい限りです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2013-04-21 23:29:55)
17.  明日に処刑を・・・ 《ネタバレ》 
コーマン&スコセッシという今の視点で観ると実に異色なコンビですが、本作がスコセッシの実質的な商業映画デビュー作になります。 コーマンがプロデュースした映画としてはかなり丁寧な出来だけど、スコセッシ映画として観るとかなり未熟なところが多々あると言うところでしょうか。思いっきりカメラがハレーションしているカットがあるところなんかはまあご愛敬ということでしょう。 でもラストのデヴィッド・キャラダインがキリストのように処刑されるあまりに鮮烈なイメージは、「この監督若造だけど、こりゃただ者じゃないぞ」って公開当時の観客に印象付けたことでしょう。“ボックスカー・バーサ”役のバーバラ・ハーシーが気持ちの良い脱ぎっぷりを見せてくれ、その大胆な演技に魅了されました。さすがに、製作当時ヒッピー女優として名をはせていただけのことはあります。考えてみれば、スコセッシ映画でこれほど主演女優が脱いだことは、その後もなかったんじゃないでしょうか。 ここら辺がコーマン流なのかもしれません(笑)
[DVD(字幕)] 7点(2012-05-03 21:30:22)
18.  雨の訪問者 《ネタバレ》 
フランス映画に出たときのブロンソンってどうしてこんなに渋くてカッコ良いんだろうか、本作でも無意味に上半身裸になって女性客向けサービスに務めるシーンまであって、もうブラピ顔負けのセクシー・スターぶりです。脚本のセバスチャン・ジャブリゾは冒頭にルイス・キャロルを引用するのが好きみたいだが、この映画はどう見ても『不思議の国のアリス』とは関係なさそうでした。ルネ・クレマンは「ブロンソン映画を撮ると監督生命が終わる」というジンクス通り本作以降どんどん落ち目になるのですが、そんな呪いを歯牙にもかけないフランシス・レイの絶頂ぶりが堪能できる音楽です。まあ本作の価値は、レイの華麗なムード・スコアが楽しめると言うことに尽きるでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2011-11-27 19:43:11)
19.  悪魔のはらわた 《ネタバレ》 
数あるアンディ・ウォホールの映画の中で本作と『処女の生血』はもっとも観て判り易いのでは(もっとも、ウォホールは名前を貸しただけで内容には一切タッチしてないというのが定説です)。立体映画(今でいう3D映画)として撮られたところが、まあウォホールらしさが感じられると言えなくもない。精力絶倫男の首をねらったのに、間違って女に全然興味がない顔が良いだけが取り柄の友人の首をチョンパしちゃうなんて、これほど笑えないブラックジョークも珍しいですよ。この映画の特長は使われている“はらわた”がどう見ても本物(もちろん人間のじゃないでしょうけど)をみたいで、最近のスプラッター映画と違った気色の悪さが観る者に襲いかかります。ヘタではないけどヘタウマの域までも達していない監督の手腕では、ウド・キアの熱演も空回りでした。彼は今でも個性派バイプレイヤーとして活躍してますが、まあ何と言う無残な変貌ぶりでしょう! 『ロッキー・ホラー・ショー』のティム・カリーとともに、「少年老い易く、学なりがたし」という感慨に打たれてしまうのでした。それにしても、10年以上むかしとはいえ、こんなゲテモノをNHK衛星放送よく放映したもんですな。
[CS・衛星(字幕)] 2点(2011-10-01 19:04:18)
20.  アニー・ホール 《ネタバレ》 
人によって好みが激しく分かれるアレンだけど、『アニー・ホール』には彼の才気と映像および脚本テクニックが凝縮されていることは間違いありません。屁理屈が多くてユダヤっぽいセリフが臭いと最初は感じていましたが、何回も観ているとけっこう名セリフが多いんですよね。「私を入会させるクラブ…」はあまりに有名ですが、自分は「愛とサメは似ている。常に前進していないと死んでしまう」が好きですね、けっこう名言だと思います。そして、私はこの映画のダイアン・キートンほどリラックスして役を演じる女優は観たことがありません。本来彼女はそんなに器用な女優ではない気がするのですが、アレンの手にかかると軽やかなコメディエンヌに変身させられてしまうのですから、彼の女優を操る腕前は大したものです。でもあのキートンの歌だけはちょっと微妙でした(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2011-06-12 19:59:42)(良:1票)
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