61. 怪談(1964)
《ネタバレ》 もうこれは、1作目の武家屋敷のセットだけで唖然呆然完全KOです。メインで使う部分はごく一部であるにも関わらず、全体をきっちり作りきっている構造。「朽廃しかかっている状態」「本来の状態」「完全に朽廃した状態」の完璧な作り分け。そりゃ、こんな中で芝居をしていいんだったら、役者の演技にも気合が入りまくる、というかむしろ何かが憑依するというものです。2作目は、仲代達矢の木訥な好青年という役柄に違和感がありまくり。ただこれはどちらかといえば、筋の切なさを味わう作品ですね。3作目は確かに長いんですけど、平家衆の亡霊の奥行きを駆使した贅沢な配置を1つとっても顕著なように、この作品にこそ制作側は一番力を込めたのがよく分かります。4作目は単調さを避けるなかなか見事なオチで、ノリはほんのりつのだじろう系かも。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2017-08-22 01:37:40) |
62. カルテット!人生のオペラハウス
びっくりするほどつまらなかった・・・。この4人にどういう背景があるのかも不明だし、それぞれどういう個性(登場の必然性)があるのかも分からないし、オペラという対象とどう接していたのかも分からない。つまり、基本的な人物設定からしてまったくできていないのです。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2017-07-27 00:58:33) |
63. ガンマン大連合
《ネタバレ》 オープニング、教会から女性が走り出てくる(花嫁ベールっぽい白布付き)。必死の表情で走る、走る、走る。たどり着いた先には2人の男が拳銃を手に決闘の雰囲気。ここまで引っ張ったからには、この影に何か壮絶なドラマがあって、この勝負がクライマックスなんだろう、と思うわけですが、終わってみればそのシーンの意味のあまりの下らなさにずっこけます。と同時に、そのセンスに感動します。大体、この作品の登場人物は、この3人以外にもいろいろ出てきますが、揃いも揃ってことごとく好き勝手です。カオス状態です。その中でも、教授の奪還、パートナーの救出、国境突破など、ポイントではなかなか上質なスリルを見せつけてくれるので油断なりません。さらには、教授がもっともらしく最後の教示として残した言葉は結局全員無視しているし、ラストで押し寄せてくる政府軍はどう見ても圧倒的なんだけどそれをどうするのかさっぱり分からないし、むしろそんなことを気にする方がアホらしくなってくるのです。そしてその作用をもたらしているのが、この最高なテーマソングであることは言うまでもありません。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-07-17 02:19:42) |
64. 彼のオートバイ、彼女の島
《ネタバレ》 肝心のオートバイシーンを格好良く撮っておらず、「ただ走っているだけ」なのは致命的。しかも、意味もなく通行車のミラーを破壊するとか、走行トラブルの相手を殴る蹴るだとか、ほとんど暴走族以下ではないのか?「すぐにカッとなる人は運転には向いていません」と教習所で習わなかったか? [DVD(邦画)] 3点(2017-06-04 04:47:38) |
65. カサンドラ・クロス
《ネタバレ》 とりあえず、まあ、テロリストを籠に移そうとするところで、「何で一旦停止して移さないのか?」と思わせてしまった時点で、アウトなのではないでしょうか・・・(乗客が逃げるかもしれないとかいうのかもしれませんが、ヘリが延々並走している方が、よっぽど不安を煽るでしょ)。ただし、駅に防護服隊員がずらっと待ち構えて、本当に窓やら何やらを閉鎖していく光景はなかなかシュールですし、その後も、大映テレビばりに脚本の破綻も気にせずに迷いなく最後まで突き進む姿勢は、嫌いではないです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-06-01 01:59:53) |
66. 眼下の敵
《ネタバレ》 偶然遭遇した駆逐艦と潜水艦の対決という、そのたった1つのシチュエーションだけで最後まで押し切る、職人芸的好作品。勝因は、最低限の簡潔な判断と指示だけで、しかも専門用語の駆使を恐れずに脚本を通していること。そのことが、作品に1本の鋼線のような緊張感を通し、ラストの奇跡も現実にありうると信じさせる説得力を発生させている。その上で、錯乱する乗組員をたった3つの台詞で静まらせる艦長、1曲のレコードが魚雷にも勝るインパクトを起こす構造的逆転劇、ここぞというときには躊躇なく退艦命令が出て、しかも即座にそれに従う隊員、などなど、丁寧な忘れがたいシーンも随所に織り交ぜられている。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-05-25 05:16:02) |
67. 河内のオッサンの唄
《ネタバレ》 この名曲を映画化までしてくれたというだけですでに低い点はつけられないが、逆にいうと、たった1曲でここまでのイマジネーションを膨らませられるほど、このテーマソングはとてつもない名曲だったということである。●前半はとにかくカオスな生活が描かれる。「ちょっと聞いてくれ~」というだけで近所からわらわら人が集まって、そのまま宴会の開始。博打のカタで当然のように嫁入りし、その嫁も博打のカタになり、当の嫁自身も「博打のカタはきっちりつけんとあかん」と言い残してあっさり敵地に赴く。女子高生(?)が堂々と大人を挑発したら、周囲も「やってしまったもんはしゃあない」と縁組を認める。カオス以外の何物でもない。しかし製作側にはもちろん何の迷いも作為もないわけで、やはり映画とはこのように堂々としていてほしい。●終盤、場面が東京に移動してからは、ちょっとテンションが落ちるかな・・・せめて大阪市内くらいで収められなかったのかとも思うけど、前半でさんざん東京がどうのこうのという伏線を張っているから、仕方ないか。 [DVD(邦画)] 7点(2017-03-27 01:35:15) |
68. 海底二万哩
いろいろ冒険してるはずの割には、何か全体的な雰囲気がのんびりしていて、迫力を感じないんですよね・・・。やたら長く感じました。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2017-03-10 23:16:37) |
69. 華麗なるギャツビー(2013)
ラーマン&ディカプリオによるリメイク作といえばもちろん「ロミオ&ジュリエット」が思い浮かんでしまうのだが、あの古典をグシャグシャに崩しまくった「ロミジュリ」は、まあ、それはそれで面白くはあった。こちらの方は、ただひたすらゴテゴテした絵面があるだけで、一体何が作りたかったのか分からない。必然的にディカプリオも、演技力や表現力を発揮する場はなく、ただ画面内に存在しているだけ。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2016-09-29 00:09:02) |
70. 崖っぷちの男
《ネタバレ》 どう見ても途中からは説明がつかないほどの無謀極まりない展開なのに、なぜか見ているときは最後まで一気に見切ってしまえるという妙な作品。エリザベス・バンクスは、いくら頑張っても、ベースの雰囲気が若すぎ&明るすぎ。もっと不幸そうで疲れ切った感じの人(何じゃそりゃ)をキャスティングすべきだった。ジェネシス・ロドリゲスという人は初めて見ましたが、適度に知性も色気もあって、いい存在感を発していましたね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2016-09-08 01:05:08) |
71. 母べえ
《ネタバレ》 ステレオタイプな底の浅い人物造形と、筋を追うだけの機能しかない説明台詞(ナレーション含む)を最初から最後まで並べただけの作品。脚本で奥行きを感じたのは、鶴瓶の「その後」をそっけない一言で済ませていた箇所のみ。役者陣で唯一光っていたのは、父の後妻役の左時枝。わずかな出番ながら、違和感なく場面にすっとはまり込んでいる。さすが。 [CS・衛星(邦画)] 3点(2016-09-04 11:11:29) |
72. 彼女が消えた浜辺
《ネタバレ》 海辺での仲間内旅行から1人が消えました、というたった一つの謎だけでここまで引っ張れる構築力に驚きます。しかもそれが、ちょっとした情報量や共有度の差が徐々に積み重なって、解決するつもりがかえって底なし沼にはまっている、とでもいうような緩やかな迷走を、必然性をもって紡いでいるのです。こういう丁寧な脚本だったら、俳優陣も演じていてやり甲斐があるんだろうな。ただし、最後の確認のシーンは不要で、あそこは謎は謎のまま余韻をもって置いてほしいところでした。それと、キャスティングにおいて、年齢層が合ってなさそうな夫婦が2組ほどいるのが気になりました(入れ替えるとちょうどよさそうな気がしたのですが)。 [DVD(字幕)] 7点(2016-08-24 02:13:21) |
73. カビリアの夜
《ネタバレ》 前半は、話自体が好き勝手な方向に動いていて、焦点がよく分からなかったのですが・・・催眠ショーのシーン以降は、ほとんど必然のラストへ向けて、騎虎の勢いでした。ラストシーンも的確に決まっていました。 [DVD(字幕)] 5点(2016-08-04 01:34:36) |
74. がんばれ!ベアーズ
《ネタバレ》 よく考えたらこの主人公って、指導らしい指導は何もしていないのだな。しかもラストは、謝ってきた相手をさらに馬鹿にするという反スポーツマンシップ、しかも全員でビールという、およそスポ根ものの定番の逆を行っている。それならば中盤までも、別にもっともらしく野球に取り組んだりせず、もっとアウトロー方面からの描写に徹底したらよかったのにね。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2016-07-27 01:08:39) |
75. カンバセーション・・・盗聴・・・
《ネタバレ》 前半の、同じ会話と同じ公園のシーンが執拗に繰り返され、そこからじわじわと次の展開が浮かび上がる構成力はなかなか。後半は違う世界に行ってしまい、結局何がしたかったのかはよく分からないのですが、74年の時点でこういったサイコ/一人称妄想系サスペンスに正面から取り組んでいたという点は、評価すべきかも。いろんな有名作品の源流が、実はここにあるのかもしれません。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-07-09 02:15:51) |
76. 彼女と彼(1963)
やたらと前衛的というか何というか、通常の描写の枠組を外そうという意図が見て取れるのですが・・・怖いぞ怖いぞと煽り立てられても、逆に作り物っぽさが増してしまって、かえって怖くないのです。 [DVD(邦画)] 3点(2016-05-11 23:27:26) |
77. 華麗なるギャツビー(1974)
いろいろな登場人物を配置しているはずなのに、1人として個性的・魅力的な人物が見当たらない。肝心のギャツビー自体が、何か突出したところがあるわけでもなければ存在感で見せきるわけでもなく、その辺にいるような人でしかないのです。その描写の凡庸さに、逆にびっくりしました。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2016-03-08 00:08:02) |
78. 鉄輪
《ネタバレ》 まあ、何というか、乙羽信子がひたすら90分、浮気夫とその愛人を延々と呪い続けるという作品。過去と現在の二重構造なので、恨みの深さも二重、という趣向と思われる。しかしそれ以外の物語上の要素はほぼゼロであり、フラワー・メグの魅力的な肢体の大盤振る舞いがなかったら、一体どういうことになっていたんだろう。 [DVD(邦画)] 4点(2016-02-09 00:27:55) |
79. カウボーイ
何というか、何とものどかで平和な世界というか、牧歌的というか・・・。真剣にカウボーイをめざそうとする初心者が、いろいろ経験を積んでいって、いつしか1人前に成長していくという、至って真面目な成長譚。しかし、この全体に漂う頑張ろう感というかほのぼの感みたいなものが、作品世界と対応していなくて、どうにも居心地が悪いのです。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2015-12-03 23:49:35) |
80. 鍵(1959)
《ネタバレ》 もうちょっと背徳感とか逸脱感があるべき設定だと思いますが、意外にあっさりした描写でした。剣持がいまわの際に郁子を「目だけで脱がせる」ような、心理的なやりとりも加えた官能性をもっと見たかったんですけどね。それと、京マチ子はえらく堂々と落ち着いていて、何をやっても最後には勝ちそうなので、剣持の行動が無茶に見えません。ここはもう少し弱々しそうな幸薄そうな人を起用してほしいところでした。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2015-11-30 00:22:50) |