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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1874
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  勝手にふるえてろ 《ネタバレ》 
彼女の名は、江藤ヨシカ。地味で大人しい何処にでもいるような平凡なOLだ。毎日同じ時間に出社してはひたすら数字と向き合う事務の仕事をこなし、営業の空気読めない同僚やウザい上司の説教攻撃にひたすら耐えるようなしんどい毎日。家に帰ってからも絶滅した古代の動物をネットで検索したり、タモリ倶楽部の空耳アワーを見てにやにや笑うのが自分へのご褒美。一番の心のオアシスは、高校の頃に一方的に好きだったクラスメートの男の子、「イチ」との思い出を脳内再生して妄想にふけることという、いわゆる典型的な〝拗らせ女子〟だ。そんな彼女に最近、大事件が発生!なんと、彼女のことが大好きだという彼が出現したのだ。だが、ヨシカの中で「ニ」と名付けられた彼はやることなすこと空回りばかりで正直、引いてしまうことだらけ。思い出の中にしか居ない理想の彼か、イケてないけれど安定感は抜群の現実の彼か――。思い悩む彼女は、人生最大の賭けに挑むのだったが……。芥川賞作家・綿矢りさの同名小説を原作に、オタク系拗らせ女子の生態をコミカルに描いたキュート&ポップなラブ・ストーリー。ちなみに僕は原作者である綿矢りさの昔からの大ファンで、本作は芥川賞受賞以降、長らく低迷していた彼女が見事な復活を遂げた名作。結論を言うと原作に負けず劣らずの素晴らしい出来でしたね、これ。綿矢りさって若い女子のリアルな生態を描きながら、文章がしっかりしているのでおっさんでもキュンキュンしながら読むことが出来る――というか、彼女の主な読者はほとんどおっさんなんじゃないかってくらい(笑)――幅広い読者から共感を得るその普遍性がウリなんですけど、それが見事に再現されてました。「イチ」に名前も覚えられていないと知った主人公が急にミュージカルになって、「私なんて絶滅すべきでしょうか」と切なく歌い上げられた日にゃ、もはや薄汚れたおじさんである僕も思わず泣きそうになっちゃいましたわ!!あの不自然極まりない街の人たちとの会話も全てこのシーンへの伏線になっていたなんて最高すぎる!!そう、世界のほとんど全ての人間は自分の名前なんて知らないんです。なのに自分が生きている意味とはなんなのか。若い女子の恋愛を描きながら、そんな実存主義的な深いテーマまで視野に入れている。見事というしかない。また、ヨシカを演じた松岡茉優も見事なまでに嵌まっていて素晴らしい仕事ぶり。空耳アワーの名作、レイジ・アゲインスト・マシーンの『ナゲット割って父ちゃん』を見て大笑いしている彼女なんてめちゃキュートで思わず抱きしめたくなりました(もちろん妄想で)。最後が唐突に終わっちゃったのがちょっと残念だったけど、それを上回るような魅力が随所に溢れた傑作でありました。以下余談。原作が雑誌『文學界』に最初に掲載されたとき、ヨシカがアカウントを乗っ取るSNSが思いっ切りミ〇シィって明記されてました。単行本発売時に変更されてましたけど、さすがにヤバいって編集部の間でなったんでしょうかね。
[インターネット(邦画)] 9点(2021-11-01 04:01:07)
2.  ガラスの城の約束 《ネタバレ》 
ニューヨークの高層マンションでセレブな生活を送る雑誌記者ジャネット。金融マンの婚約者とともに何不自由なく暮らしていた彼女はある日、街の片隅でゴミを漁るホームレスの夫婦を目撃する。眉を顰め、すぐに立ち去るジャネット。だが、そんな年老いたホームレスの姿は、幼かったころの悲惨な思い出を彼女に蘇らせるのだった。何故なら、そのホームレスこそジャネットの実の両親だったから――。酒浸りでロクに働かない父親と夢見がちで生活能力が皆無に等しい自称画家の母親。彼らとともに借金取りから逃れ全米各地を転々とするかつての日々。ほとんど学校にも行かせてもらえず、ろくに食べるものもない悲惨な状況で、ジャネットは幼い姉弟たちとぎりぎりの生活を強いられていたのだった。成長とともにこんなどん底生活から抜け出そうともがくジャネットだったが、親子という絆は彼女を簡単には開放してくれない…。親としての責任を放棄した両親の元、過酷な生活を余儀なくされた子供たちのどん底の日々を実話を基に描いたヒューマン・ドラマ。そんな典型的な毒親を演じるのはウディ・ハレルソン&ナオミ・ワッツと言う個性派コンビなのですが、まあとにかくこの両親、これまで色んなダメ親の映画を観てきましたが、その中でもトップクラスの最低夫婦でしたね。無計画に4人も子供を作りながら、ろくに働かず飢えた子供たちをほったらかして一日4箱の煙草と2リットルの酒と言う自らの欲望にだけは忠実な父親。金にもならない絵ばかり描いて幼い子供たちに家事を強要させた挙句、小さな女の子に大やけどを負わす母親。もう徹底的に反吐が出そうになるほど最低の両親なのですが、それでもときおり見せる子供たちへの愛情が本物なのがまた厄介。行政が出てきて強制的に保護されるぎりぎり手前のラインなので、ある意味、こいつらが一番最低な両親とも言えます。そんな彼らの姿が、成長し今や成功した次女ジャネットの目線で描かれるのですが、その愛憎相半ばする葛藤が凄くリアルなんです。最低で悲惨なことばかりだったけど、それでも楽しかった思い出もたくさんあった。そう、まるでガラスの城のように――。「死んだら誰も悪うに言わんからはよう死ね!」。これは無頼派漫画家、西原理恵子が作品中でよく親に使っていた言葉なのですが、それと通じる屈折した想いがここにはある。どんなに最低でも親は親、死と時間がいつか解決してくれる。深い諦めにも似た、そんな境地で最後、家族とともに過去の思い出を楽しそうに語るジャネットの姿に思わず涙してしまいました。この監督の作品は初めて観ましたが、この貧困の現実を冷徹に見つめるスタンスは素直に素晴らしい。かなり重たい作品でありますが、親と子の関係に悩む多くの人に是非観てもらいたい優れた良作でありました。
[DVD(字幕)] 9点(2020-04-18 00:31:45)
3.  かぐや姫の物語 《ネタバレ》 
素晴らしい。この竹取物語という日本人なら誰もが知っている日本最古の物語を現代に甦らせた本作は、アニメのみならずここ10年の間に製作された全ての映画の中でも歴史に残る傑作と言ってもいいくらいの素晴らしい出来栄えだった。高畑勲という日本を代表する映画作家は、この平安期の日本に古色蒼然と埋もれていたかぐや姫という女の子をその見事なまでの芸術的才能によって、千年の時を経た現代の日本に活き活きと生き返らせたのだ。水彩画を思わせる淡いタッチの絵の中で瑞々しく躍動する、このかぐや姫ほど魅力に満ちた主人公を僕は他に知らない。光り輝く竹の中から生まれた小さな女の子であった彼女が心優しき老夫婦の元ですくすくと成長していくさまを自然に見せていく冒頭部分から僕は心を鷲掴みにされた。最初は心優しき翁だった父が都に出てくると、次第にその出世欲と見栄を増大させ、単なる俗物へと変化していくのは、このかぐや姫という物語の本質を象徴している。生きることは、その純粋さを少しずつ穢していくこと――。常日頃からそう思っている僕にはとても共感できるテーマだった。光り輝く魅力に満ちたそんなかぐや姫も都に出たことによって、社会の序列化の波に組み込まれていく。やがて、彼女は男どもの横柄な支配欲――その裏には必ず醜い性欲が潜んでいる――によって、その美しさと純粋さを完全に奪われそうになるのだ。ただ綺麗なだけの着物を脱ぎ捨て、楽しかった生まれ故郷の里山に帰ろうとするかぐや姫(絵のタッチを意図的に荒くして描かれるこのシーンは息を呑むほどに美しかった)だが、男社会の論理はそれを許さない。何とかしてそんな男どもの支配欲に抗おうとするかぐや姫だったが、とうとう帝に見初められることによって追い詰められてしまう。そして、彼女を後ろから抱き締めようとする帝の醜い支配欲…。かぐや姫はその純潔を守るために自らの意志で迎えを呼び、そして“穢れなき”月の世界へと帰ってゆく。だが、そんな俗世にまみれたこの世界でも初恋の思い出や鳥や虫たちの健気に生きる姿、そして父母の情愛という彩りに満ちた素晴らしいものがあると悟り、かぐや姫は涙を流す。不覚にも、僕はこのラストシーンを見ながら涙が止まらなかった。映画でこんなにも泣かされたのは久し振りのことだった。理不尽で醜い現実に満ち充ちたこの世界で、少しずつ穢れていきながら日々の生活を送る僕たち人間の悲哀を象徴的に描いたこのラストシーンは白眉としか言いようがない。そうなのだ。だからこそ、僕たちは物語というものに純粋さ・美しさ・あるいはユートピアを求めていくのだ。それは竹取物語が誕生した千年前も現代を生きる我々でもなんら変わることはない。そんな普遍的なテーマを追求した本作は、近年稀にみる傑作と言っていい。
[DVD(邦画)] 9点(2015-08-02 16:41:20)(良:2票)
4.  ガンパウダー・ミルクシェイク 《ネタバレ》 
彼女の名は、サム。幼い頃から弱肉強食の裏社会で生きてきた凄腕の殺し屋だ。強大な力を有する犯罪組織「ファーム(会社)」に所属し、日々くだされる過酷な任務を神経をすり減らしながらこなしている。同じく暗殺者だった母親は15年前にへまを犯して組織を逃げ出し、以来行方不明のままだ。そんなある日、サムに極秘の任務がくだる。それはファームの金を盗んで逃亡した会計士を殺し、盗まれた金を全額回収してくるというものだった――。すぐさまターゲットが泊まるホテルへと向かうサム。だが、その会計士は9歳になる娘を人質に取られ、脅されて仕方なく金を盗んだだけだった。早く金を持っていかなければ娘の命すら危うい。それでもファームは、子供なんて知ったことか、今すぐ金を持ってくるんだの一点張り。「そんな!子供を見殺しになんて出来ない!」。自身の悲しい過去から、サムは子供を救い組織を裏切ることを決意する。9歳の少女とともにそんな彼女が逃げ込んだのは、表向きは図書館でありながら裏では殺し屋たちに武器を密売する危険な女たちの砦だった……。男たちが仕切る強大な犯罪組織を相手に孤軍奮闘する女殺し屋たちの活躍をノンストップで描いたバイオレンス・アクション。リアリティなどはなから度外視、荒唐無稽な漫画みたいなお話なのですが、全編に漂う独特の雰囲気、徹底的に無駄を削ぎ落した分かりやすい脚本、キレッキレのアクションの連続に僕は最後までテンション上がりっぱなしでした!とにかく主人公サムをはじめとする女たちがカッコ良すぎ!全員キャラ立ちしまくった図書館の3人の女殺し屋はもちろんのこと、サムとバディを組む9歳の女の子エミリーがかわいすぎました。腕が麻痺してしまったサムのために彼女がハンドルを操作するカーチェイス・シーンは、監督のセンスが炸裂しまくりで思わず拍手。実は生きていた母親と図書館の女たちが組織の男どもを相手に武器を振り回すシーンで、ジャニス・ジョプリンを流すなんて反則過ぎますわ~。全編にセンスの良いユーモアを散りばめてるのも大変グッド。クライマックス、サムが図書館の色んな本に隠された武器を捜しながら戦うシーンは、バカバカしすぎてサイコーでした(この図書館どーなっとんねん!笑)。何気に、女たちの自立と連携を意味するシスターフッド的視点をテーマとしているのも現代的で良いですね。うん、面白かった!8点!
[DVD(字幕)] 8点(2022-09-02 07:30:46)
5.  風立ちぬ(2013) 《ネタバレ》 
国民的〇〇という言葉がある。現代の日本において、たとえば国民的作家といえば村上春樹が挙げられるだろう。あるいは国民的バンドといえばサザンオールスターズ、あるいは国民的アイドルといえばAKB48、国民的プロ野球選手といえばイチロー…、もっとも村上春樹に限ればもちろん愛読者は多いのだけどそれと同じくらいアンチも多いので必ずしも“国民的”とは呼べないかもしれないが。そんななか、国民的アニメ監督といえば、まず間違いなく彼――そう、宮崎駿の名前を誰もがまず真っ先に挙げることだろう。日本という狭い国の枠を飛び越え、いまや世界の巨匠となってしまったそんな宮崎駿監督の事実上の引退作を、子供のころからずっとジブリ作品に慣れ親しんできた僕としては深い感慨と共にたったいま観終えました。うーん、しみじみと胸に来るものがありますね。バブル経済の熱狂とその崩壊、その後に訪れる長い景気低迷と社会の不安定化、911とイラク戦争、景気回復に伴う行き過ぎた拝金主義、そして今回の震災と原発事故…、そんな日本という国の激動の半世紀を共に生きてきた宮崎駿監督がアニメ映画という表現活動を通して最後に辿り着いたであろう「生きねば」というシンプルでありながら力強いメッセージは、彼の遺言として僕の心に深く響きました。ゼロ戦を設計した人も、爆弾を作った人も、体の毒でしかない煙草の原料をずっと育て続けた人も、そしていまや日本という国を内部から壊しかねない危険な原発を造った人たちも、その善し悪しは歴史の審判に委ねるしかないとしても、誰もが真剣に生き自分の仕事に打ち込みこの日本という国の歴史を築きあげてきたという事実を宮崎監督は最後まで優しく肯定的に描き出してゆきます。なのに、いまや日本を含む世界は理不尽で残酷な現実に満ち溢れていて、もしかしたら未来には希望なんてないのかも知れない(最後に二郎が見る夢の中で大量のゼロ戦が瓦礫と化しているのがそれを象徴しています)。巨大な歴史のうねりの中では、ともすれば悪人としてその名を刻まれることにもなるちっぽけな人間たち。それでも誰かを愛し愛されながら必死に生きる人々の姿は無条件に美しい。“国民的アニメ監督”の最後を飾るにふさわしい、慈愛に満ちた良作だと僕は思う。
[DVD(字幕)] 8点(2014-09-14 20:05:02)
6.  華麗なるギャツビー(2013) 《ネタバレ》 
村上春樹に、もし無人島に一冊だけしか本を持っていけないとしたらまず間違いなくこの本を選ぶとまで言わしめた有名な小説(僕はそこまでではないですけど、間違いなく10冊のなかには入る)を、なんとあのバズ・ラーマンが映画化、そしてギャツビー役はまさにはまり役としか思えないディカプリオと聞いたとき、もうそれだけで7点付けちゃうくらいテンションあがっちゃいました(笑)。そして期待に胸を高鳴らせながらこの度鑑賞。おい!いつまで経ってもギャツビー(ディカプリオ)出てこねーぞ!と思っていたら、もう焦らしに焦らせて30分近く経過したころ、満を持して不適な笑みを湛えたギャツビーがこちらに振り返ったときに、もう思わずテレビ画面に向かって拍手しそうになっちゃいました!いやー、やっぱカッコいいっすね、ディカプリオ。まかり間違えてニコラス・ケイジがキャスティングされなくてホント良かった(笑)。そして肝心の内容のほうも、異常なまでの情熱でもってたった一人の女性を愛し、彼女が結婚しようが子供を作ろうが「いや、デイジーはおれの事を絶対に愛して待っているはずだ!」と戦場で武勲をあげ、ビジネスで成功し時には違法な行為にまで手を染め、彼女の家の対岸に大豪邸を建てて帰ってきて、そして夜な夜な人も羨むパーティーを彼女の気を惹くためだけに開くという、まさに全ての男の敵にして全ての男の憧れでもある、愛情と情熱と狂気がせめぎ合うギャツビーの類稀なる魅力が見事に描けていたと思います。特に、デイジーが夫に別れを切り出すシーンの、居合わせた4人の四者四様の思惑がぶつかり合う心理戦の息を呑むような緊迫感といったら凄かったです。欲を言えば、バズ・ラーマンらしいどこか下品で猥雑だけど最高にエネルギッシュな歌唱シーンをもっと見たかったかな。でも、女性はこれをどう見るんだろ?一度はここまで男に愛されたいと思うんだろーか。やっぱりひく?でも、ディカプリオだったらアリなのか?などと、クリスマス(投稿日付注目↓笑)だというのに、たった一人でそんなこと考えてる自分という現実にいま気付いた…(泣)。
[DVD(字幕)] 8点(2013-12-24 18:07:41)(良:1票)
7.  カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇 《ネタバレ》 
都会の喧騒を逃れ、アメリカ郊外の田舎町へと越してきたガードナー家。納屋で飼っているアルパカが生きがいの父ネイサンに、神経質な母親やオカルトに嵌まっている長女、そして二人の息子たち。彼らは皆、それなりに幸せな日々を過ごしていた。だが、そんな家族の平凡な日常はある夜を境に一変する。紫の光を放つ謎の隕石が、自宅の裏庭へと墜ちてきたのだ。強烈な悪臭を放ち、禍々しい光を発するその隕石は恐らく宇宙の彼方からやって来たに違いなかった。当初はテレビの取材を受けたり、町の噂の的になり浮かれていたガードナー家だったが、やがて不可解な出来事が周りで多発するようになる。突然変異した紫色のカマキリ、無意識のうちに自らの指を切り落としてしまう母親、突如狂暴になるアルパカたち……。果たしてその隕石の正体とは?クトゥルフ神話で有名なアメリカの恐怖小説の巨人、H・P・ラブクラフトの小説をニコラス・ケイジ主演で映画化したというSFモダン・ホラー。この映画、率直に言って全く中身がありません。ストーリーなんてあってなきが如し、ただひたすらグロテスクなホラー描写満載で、ある一家族が徐々におかしくなっていくのが延々と続くだけ。その潔いまでの中身のなさは、観ていて逆に清々しく感じるくらいでした(笑)。その分、グロ描写にはけっこう気合が入ってます。ニンジンをとんとんと切っていた包丁でそのまま指を切り落としちゃうママに始まり、徐々に腕の皮膚がただれてきちゃうお父さん、全身の皮がめくれちゃったアルパカなどどれも生理に直接訴えてくるような嫌なものばかり。特に後半、幼い息子と同化しちゃうママなんて夢に出てきそうなほどエグかったです。もはやお家芸とも言える、ニコラス・ケイジのとち狂った演技もナイスな仕事ぶり。モンスターと化した自分の妻とキスしたときに、ニコケイの唇に糸引いてたシーンはさすがの僕でも「ひえぇぇ」と声が出ちゃいましたわ。うん、そういうものだと割り切っちゃえば、このやり過ぎなぐらいのグロ描写はなかなか良いんじゃないでしょうか。それに古き良きSFを髣髴とさせる紫色のエフェクトも個人的にツボでした。という訳で、僕はぼちぼち楽しめましたです、はい。まぁ完全なるB級ですけどね。あと全体的に長いかな。前半のかったるい部分を削って、もう少し短くしても良かったかもしれない。
[DVD(字幕)] 7点(2021-07-05 22:07:01)(良:1票)
8.  彼の見つめる先に 《ネタバレ》 
ブラジルに暮らす生まれつき目の見えない青年の恋と成長を何気ない日常の中に描いた青春ドラマ。確かにこの全編に漂う品のいい空気感は、なかなかいいセンスしてると思います。主人公を取り巻く少年少女たちも等身大の魅力に溢れていて、彼らが悩み足掻きながらなんとか現状を打破しようとする姿は見ていて微笑ましくなりますね。そして、主人公である青年。目が見えないながらも必死で自立しようと、アメリカ留学を立案したり両親と喧嘩したりと奮闘するところは素直に好感持てました。自らが男しか愛せないと自覚しそんな自分を受け入れて成長してゆく彼と、そんな彼への淡い恋心にもがく親友の女の子との関係性も凄く繊細に詩情豊かに描かれていて大変グッド。あまりにもオーソドックス過ぎて若干物足りなくもありますが、監督の瑞々しいセンスが光る青春ドラマの佳作と言っていいでしょう。
[DVD(字幕)] 7点(2020-01-04 01:00:49)
9.  ガルヴェストン 《ネタバレ》 
肺癌を宣告され余命いくばくもないチンピラ、ロイ。酒が原因で身を持ち崩し、恋人や親しい友人も次々と離れ、気がつけば自分一人になっていた。追い打ちをかけるように、地元のマフィアのボスに嵌められた彼は殺人犯として警察に追われる羽目に。そんな人生八方塞がりのロイが偶然出会ったのは、押し入った家に監禁されていた19歳の少女ロッキーだった――。誰にも頼らずただ自分の身体を売って生活していた彼女と、人生のどん底に居る孤独なチンピラ。何処にも居場所のない二人は、警察やマフィアの手を逃れ、ただひたすら逃避行を続けてゆく。途中ロッキーの実家に寄って彼女の妹だという3歳の女の子を道連れにした彼らが辿り着いたのは、アメリカのどこにでもあるような平凡な田舎町ガルヴェストンだった……。社会の片隅で残酷な運命に翻弄される孤独な少女とチンピラ、絶望の果てに彼らはいったい何処に辿り着くのか?今を時めく人気女優エル・ファニングが、そんな荒んだ生活を送る娼婦役に体当たりで挑んだ本作、これがなかなか見応えのあるヒューマン・ドラマの佳品に仕上がっていたと思います。とにかくこの全編を覆う息苦しいまでの閉塞感は観ていて辛いばかりなのですが、エル・ファニング演じる娼婦の今にも壊れてしまいそうな儚げな魅力が唯一の救いとなっています。どうやら幼いころから親に虐待されて育ったロッキー、彼女が妹の前では健気に笑顔を見せるところなど、その切実な思いが痛いほど伝わってきて胸が締め付けられそうでした。そんな二人が海岸で楽しそうに海水浴をするところはこの重苦しい物語の中で、唯一希望が感じられる美しいシーン。でもその後、物語は一気に加速してゆきます。どん底を這いずり回るような彼らを襲う、更なる過酷な運命。死んだ方がいい人間が生き残り、未来があるはずの人間が辿ることになる悲劇。正直、見れば見るほど気が滅入ってしまいそうなのですが、それでも最後、20年もの月日が過ぎ去った後に明かされる真実には微かな希望が感じられ、哀切な余韻を残してくれます。赤いドレスを纏い楽しそうに踊るロッキーの笑顔が、いつまでも心から離れそうにありません。人生の深い哀感を感じさせる、なかなかの良品でありました。お勧めです。
[DVD(字幕)] 7点(2019-12-29 02:46:16)
10.  カメラを止めるな! 《ネタバレ》 
いくら低予算でもアイデア次第でいくらでも面白い映画が創れることを見事に証明してくれた本作、確かによく練られていて最後まで大変面白く観ることが出来ました。張り巡らされた伏線が見事に回収される後半は特に素晴らしい!!あと、個人的に女性主人公のコスチュームをタンクトップにホットパンツといういで立ちにした監督のセンスも素晴らしかった!!
[DVD(邦画)] 7点(2019-01-18 00:55:35)
11.  ガール・オン・ザ・トレイン 《ネタバレ》 
物語は、三人の女性の視点によって語られる。一人は、レイチェル。過去の夫婦生活の破綻によって現在は重度のアルコール依存症に悩まされている。離婚によって家を失い友達の家に居候をしている彼女は、酒が原因で現在は無職の身だ。毎日することと言えば酒を飲みながら一日電車に揺られ、かつての夫と彼の新しい妻との幸せそうな生活を車窓越しに盗み見ること。ますます酒の量が増えいつも記憶をなくすほどひどい状態なのに、それでもまた電車に乗り込んでしまうどん底の毎日だ。一人は、アナ。レイチェルの元夫と結婚し、生まれたばかりの赤ん坊と満ち足りた幸せな生活を謳歌している。でも、一抹の不安も感じている。原因は夫の元妻からひっきりなしにメールや無言電話がかかってくること。そんな現実から逃げたいと漠然と思うものの夫に経済的に依存してる彼女は何も行動できない。一人は、メガン。かつてレイチェルが夫と過ごし、今はアナが新たに暮らしている家の隣に住む平凡な女性だ。束縛の強い夫に嫌気を感じながら、今はアナの娘のベビーシッターとして働いている。過去に経験した辛い出来事が原因で誰にも心を閉ざし、唯一カウンセラーの精神科医に心の慰めを得ている――。同じ電車で同じ場所をぐるぐると廻り続けるような閉塞感に満ちた日常を送っていた、そんな三人の女性たち。だがある日、過度の飲酒で酩酊状態となったレイチェルがアナの暮らす家へと不法侵入したことから運命は大きくうねり始める……。ほとんど予備知識もないまま、印象的なタイトルとアルコール依存症に苦しむ主人公をエミリー・ブラントが演じているということで今回鑑賞してみました。前半、語り手が交互に入れ替わり時間軸も行ったり来たりするため一見とっつきにくいお話なのかと思いきや、すぐに物語の骨格が力強く表れ始める。泥酔したレイチェルが本当に子供をさらおうとしたのか。この日を境に失踪してしまったメガンはどこに消えてしまったのか。そして3人がそれぞれに抱え込んだ心の闇とは?いやー、なかなか考えられた脚本ではないでしょうか。そしてストーリーの進行とともに次第に明らかとなってくるどろどろの愛憎劇もまた見応え充分。誰もが決定的に悪いわけでもないのに些細なボタンの掛け違いから、誰もが負の連鎖に嵌まってゆく。この不安感の煽り方、すごくうまい。なんともいやーな感じのお話なのだけど、微かな希望が感じられるこの終わり方はけっこう好きですね。うん、なかなか面白かった。7点!
[DVD(字幕)] 7点(2017-12-01 00:53:01)
12.  帰らない日曜日 《ネタバレ》 
1920年代、第一次大戦の傷跡が未だ根強く残っているイギリスのとある地方都市。大戦で二人の息子を亡くしたニヴン家に務めるメイドのジェーンは、幼い頃に孤児院に捨てられ以来一人で生きてきた天涯孤独の身。年に一度、メイドたちが里帰りを許される母の日の日曜日、帰る家などないジェーンは一人自転車でピクニックに行くといって屋敷を出てくる。だが、彼女の本当の目的は違うところにあった。ニヴン家と仲が良い同じく上流階級のアプリィ家の息子ポールと密かに会う約束を交わしていたのだ。婚約者のいるポールに初対面の時から言い寄られていたジェーンは、その後何度も逢瀬を重ねていた。誰もいない広い屋敷の中で今という時間を楽しむ若い二人。だが、彼らの親の世代に当たる当主たちは大戦で失ったものの大きさにいまだ心を引きずられていて……。自然豊かなイギリスの田園地帯を舞台に、秘密の恋に溺れるとある若い女性と彼女を取り巻く様々な人々の心理を繊細に描いた文芸ドラマ。確かに作品としての完成度は非常に高い。孤児として育った若いメイドのとある一日と、のちに作家となった彼女の悲恋、そして世界的な文学賞を受賞することになる晩年の彼女を俯瞰的に描くことで、20世紀という激動の時代をラディカルに見つめるその視線の鋭さは特筆に値する。時間軸を頻繁に行き来し、しかも過去パートは作家となった彼女の創作かもしれないメタフィクションともとれる複雑な構造なのに、観客をまったく混乱させないこの完璧な構成力は見事としか言いようがない。そして、センスあふれる美しい映像と気品に満ちた音楽も見どころの一つ。長い伝統と格式を感じさせるイギリスの古い屋敷の中を全裸で気の向くままに歩き回るヒロインなど、まるで中世の重厚な絵画の世界に入り込んだかのよう。きっとこの監督の才能は確かなのだろう。ただ自分は、その才能をまるでひけらかすような感じが少々ハナについてそこまで好きになれなかった。技巧に溺れすぎたのか、肝心のストーリーがいまいち心に残らない。登場人物がみな上品に振る舞いすぎていて、血の通った人間味が感じられないのだ。泥臭くてもカッコ悪くてもいい、自分はもっと心に響く物語を観たい。
[DVD(字幕)] 6点(2023-09-14 08:34:00)
13.  カムバック・トゥ・ハリウッド!! 《ネタバレ》 
低俗で低予算の主にB級ばかりを制作する小さな映画会社、ミラクル映画社を経営するマックス。オスカーに絡むような話題作や全国公開されるような大作映画とは無縁だが、得意のはったりだけを武器にプロデューサーとしてこれまで数々のB級映画を手掛けてきた。そんな彼だったが今、人生最大の危機に直面していた。最新作『尼さんは殺し屋』が、カトリック教会から「神を冒涜している」と猛烈な抗議を受けてしまったのだ。映画は大こけ、しかも製作費を借りた街のギャングからは35万ドルもの返済を迫られていた。窮地に陥ったマックスは思い悩んだ末、とある方法を思いつく。それは、新作映画の撮影中に主演俳優を事故死させ、保険会社から莫大な保険金をせしめようというものだった――。老人ホームを巡り、いつ死んでもおかしくないような落ちぶれた元ハリウッドスター、デュークを担ぎだしたマックスは早速意気揚々と撮影に挑む。作品は、ベタな西部劇。だが、撮影初日に暴れ馬から落ちてデュークに死んでもらおうという彼の計画は、しょっぱなから躓くことに。もはや人生を諦めたはずのデュークが、なんと久しぶりの撮影でその俳優魂に火がついてしまったのだ。その後も彼の計画はことごとく裏目に出て、撮影は順調に進んでしまう。このままでは自分の命が危ない。何とかしてデュークに死んでもらおうと躍起になるマックスだったが……。1970年代のハリウッドを舞台に、主演俳優を死亡させて保険金をせしめようという悪徳プロデューサーの悪戦苦闘をスラップスティックに描いたコメディ。ロバート・デ・ニーロ、モーガン・フリーマン、トミー・リー・ジョーンズというもはやハリウッドの生ける伝説が豪華共演ということで今回鑑賞。まあ観る前から八割方内容の予想がつくベッタベタなお話なのですが、この三人のレジェンドが画面にそろうと不思議と観ていられるんですから大したものです。この三人が本当にのびのびと楽しそうに演じているのを見られるだけで、もはや眼福。まあ、内容がかなりゆるゆるでネタのほとんどが余りにもベタすぎてほぼ笑えないというのもそれで許せるかな?とは言え、さすがに最後、ギャングのボスが乗り込んできてからのオチのつけ方は余りにテキトー過ぎてもはや苦笑しちゃいましたけど(笑)。ま、そんな感じです、はい。
[DVD(字幕)] 6点(2022-07-12 05:30:50)
14.  海底47m 古代マヤの死の迷宮 《ネタバレ》 
海沿いのリゾート地へとバカンスに訪れた4人の女子高生がたまたま海底47メートルにある古代マヤの遺跡を発見し、そこでわーきゃーわーきゃー楽しんでいたら、突然巨大ザメに襲われて超大変!!ってお話。それ以上でもそれ以下でもありません。監督は、前作に引き続きキレイな映像とエンタメ性溢れる作風がウリのヨハネス・ロバーツ。いかにも彼らしい映像への拘りは相変わらず健在で、今回もほぼ舞台は海中となるのだけどこれが凄くキレイで見やすい!主人公たちが海面に飛び込んだ時の波しぶきやどこまでも続く大海原などこちらにまで潮の匂いが漂ってきそうで、もう見ているだけで涼しくなっちゃいますね。主役となる女子高生たちも健康的なお色気が炸裂してて癒し効果倍増(ビキニのお尻の面積がちょうどいい感じに小さいのもナイス!)。肝心のサメさんたちもずっと地下洞窟で進化してきたために盲目で、代わりに発達した聴力でもって獲物を追いかけてくるというのもなかなか新しい。死亡フラグの立ったキャラクターがちゃんと順番通りに死んでゆくのもセオリーどうりで、その死に方がどれも適度にグロいのも大変グッド。とまあ肩の凝らないエンタメ映画としては充分合格点ではありました。ただ一つ難を言うなら、さすがにこれは肩が凝らなさすぎですかね。お話としてはあまりにもオーソドックス過ぎて、心に残るものがほとんどありません。もう少しこの作品ならではという一捻りが欲しかったところ。主人公をイジメていた、あのいじめっ子のクラスメートも最後にサメに喰われるんだろうなと思ったらまさかの見てるだけでちょっと肩透かしでしたし。結論。真夏の熱帯夜にビールと枝豆片手に観る分にはちょうどいいくらいの内容でありました。
[DVD(字幕)] 6点(2021-05-18 00:34:15)
15.  海底47m 《ネタバレ》 
メキシコへとバカンスで訪れた若く美しい二人の姉妹。現地で知り合った男たちに誘われるまま、彼女たちは鮫が目の前で見られるというアクティビティを楽しむことに。船で沖合へとやって来た彼女たちは、その強固な檻の中に入り、凶悪な鮫がうじゃうじゃいるという海中へと沈めてもらうのだった。間近にまで迫って来る強大な鮫の姿に興奮を隠せない二人。だが、その直後にあり得ないような悲劇が二人を襲う。船の上で檻を支えていたワイヤーが折れ、彼女たちを閉じ込めていた檻が暗い海の底へと瞬く間に落ちてしまったのだ。辿り着いたのは、海底47メートル――。そこは凶悪な鮫が縦横無尽に暴れ回り、助けてくれる者は誰も居ない、海上の光すら届かない暗黒の世界だった。ボンベの酸素も残り僅か。果たして彼女たちは無事にまた日の光を見ることが出来るのか?海底に取り残された姉妹の究極の恐怖を、ワンアイデア・ワンシュチュエーションで描いたパニック・スリラー。まあいかにも低予算で撮られたであろうそんな本作、これがなかなか演出のキレが良いエンタメ映画の佳品に仕上がっていたと思います。事前の想像通り、お話の7、8割方は海の中で展開されるのですが、このブルーを基調とした映像がキレイ過ぎず汚過ぎないちょうどいい見やすさでした。カメラワークの専門的なことは分かりませんが、この映像技術はなかなかのものなんじゃないですかね。そんなリアルな海の中に取り残される姉妹も、姉は冷静沈着だが臆病、妹は行動的で活発だが少々無計画と各々のキャラがちゃんと立っているのもポイント高い。そしてもちろん最後までナイスな水着姿なのも大変グッドです(笑)。この手の作品に必ず必要な適度なグロ描写も抑制が効いていて良かったと思います。まあシュチュエーションがこれだけなんで、途中で若干ダレてしまうとこはあるものの僕は最後までそこそこ楽しめました。もっと鮫さんたちに活躍してもらってもよかったような気がしなくもないですが、そこは予算の関係なのかな。ただ、ラストの展開には僕は少々否の立場。努力の末、主人公たちは助かった→と思ったら実は主人公の幻覚でした。バッドエンドか→と思ったらやっぱり救出部隊がやってきて……ってちょっとクドいよ!!そこらへんがイマイチでしたけれど、真夏の熱帯夜にビールでも飲みながら観るには最適な映画でありました。
[DVD(字幕)] 6点(2019-09-05 20:15:21)
16.  完全なるチェックメイト 《ネタバレ》 
東西冷戦が激化し始めた1970年代、プロチェスプレイヤーのボビー・フィッシャーはその類稀な才能でもって輝かしい戦績を挙げていた。だが、極めて偏屈で自己中心的な性格からその私生活はかなり破天荒なものだった。スタッフに到底不可能な要求を何度も繰り返し、見るに堪えない悪態など日常茶飯事、気に食わないことがあれば試合会場にすら現れない…。それでもひとたびチェス盤に向かえば、天才的なひらめきと緻密に考え抜かれた戦略でもって相手を翻弄する。天才の名をほしいままにする彼が当時の世界王者、ソ連のスパスキーと対戦することになった。世界中から注目を浴びた彼らの対戦は、いつしかアメリカとソ連の代理戦争の様相を呈してくる。すると、ただでさえ細いワイヤーの上を歩くように張り詰められていた彼の精神は、ますます崩壊へと向かうのだった――。実在した天才チェスプレイヤーの破滅的な生涯を、世界王者スパスキーとの今や伝説となった対戦を軸に描き出す社会派ドラマ。監督は、社会性に富んだエンタメ・アクションを得意とするエドワード・ズウィック。病的な性格で回りを翻弄するボビー・フィッシャー役には、まさにはまり役とも言えるトビー・マグワイヤ。もうこれだけで映画として一定の水準は保証されたようなもの。その期待に違わず、ズウィック監督のストーリーテリングは手堅く纏められ、狂人一歩手前のボビー・フィッシャーというこの人物の生きざまが濃厚に伝わってくる佳品となっていた。数奇な運命を歩んだ彼の人生を、その生涯の中でも最高の対局と評されるスパスキーとの第6局へと収斂させる流れも巧い。特に、精神が崩壊寸前まで追い詰められたボビーを鬼気迫るように演じたT・マグワイヤはなかなかのものだった。これまで馴染みのなかったチェスという世界の凄みを充分味合わせてもらった。だが、正直何か物足らないものを感じてしまったのも事実。例えば、同じようにプレッシャーから狂気へと捉われるプリマを描いたアロノフスキー監督の傑作『ブラックスワン』などと比べると、その狂気の迫力が幾分か劣るように感じてしまうのだ。これは監督の資質の問題だろう。ズウィック監督の才能はこのような個人の精神世界を描くのにはいまいち向いていないように思う。あと、この対戦の後にまるで世捨て人のように世界中を放浪した彼の人生を自分はもっと見たかった。
[DVD(字幕)] 6点(2017-01-08 21:26:47)
17.  ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 《ネタバレ》 
このストーンをもし自由に操ることが出来れば、世界などいとも簡単に消滅させることが出来るだろう――。地球暦2014年、銀河系の片隅にひっそりと浮かぶ廃墟の惑星モラグにある一人の男が降り立つのだった。彼の名は、スターロードことピーター。幼いころに地球外の未知なる者どもに連れ去られて以来、いまや銀河を股に掛けて活躍するようになったトレジャーハンターだ。今回の獲物はオーグという名の謎のストーン。易々と手に入れることが出来たものの、依頼主に届けようと訪れたザンダー星でいきなり見たこともないような緑色の肌をした女アサシン・ガモーラに襲われるのだった。さらには、偶然それを目にしたアライグマ姿の賞金稼ぎ・ロケットとその部下で植物型のヒューマノイド・グルートも加わり、ザンダーの街で大立ち回りを演じることに。当然、彼らは捕まり、刑務所にぶち込まれるのだが、そこでこのストーンを巡って悪の化身のようなロナンという反逆者が暗躍していることを知る。このままでは銀河が危ない!同じく刑務所に収監されていた、ロナンに家族を殺された大男・ドラックスと共に脱獄に成功した彼らは、銀河の平和を守るために危険な大冒険へと出発するのだった…。マーブルの人気コミックを原作に、個性豊かなキャラクターが銀河狭しと大活躍する姿をコミカルに描いた波乱万丈SF冒険活劇。いやー、十中八九予想していたこととは言え、もう超が何十個も付きそうなほどの超々王道エンタメでしたね~、これ。よく言えば家族揃って最後まで安心して観ていられる安定の娯楽作、悪く言えば新しい部分が一切ないベタベタな薄味作品。でもまあ、けっこう脚本がしっかりしていたりお金をたっぷり掛けただろうCG映像はさすがの迫力だったりで、僕はぼちぼち楽しめたかな。途中まではいがみ合っていたけど、なんだかんだ色々あって最後は大きな目的のために一致団結して戦うって、もはや「映画ドラえもん のび太のナントカカントカ」みたいなノリ(ジャイアン、スネ夫、しずかちゃんとほぼ揃ってるじゃん笑)。でも、ここまでベタに徹してくれたらこれはこれで好感が持てるわ。全編に散りばめられた小ネタもキレがあってなかなか良かったしね。難があるとすれば、悪役の目的がいまいち分かりづらいところか。思いっ切り続編が作られる感じで終わっていったけど、きっと一週間もすればほとんど内容忘れちゃうだろうね。ま、でも別に問題なく観られる(笑)。そんな感じの作品でございました。6点っす。
[DVD(字幕)] 6点(2016-09-26 22:56:11)(良:1票)
18.  渇き。(2014) 《ネタバレ》 
普段、積極的に邦画は観ない。何故かというと、安易な商業主義に走るあまり、アイドルのPVもどき・昔のアニメの実写化・テレビの連ドラの延長でしかない「ナントカ・ザ・ムービー」等というほとんど中身のない類型的な作品ばかりが公開され、僕が映画に求めるものがそこにはないように思えるからだ。そんな邦画の世界で僕がその新作を心待ちにする数少ない傑出した才能の持ち主である中島哲也監督の待望の最新作ということで、もう期待に胸を高鳴らせながら今回ツタヤでレンタルしてきた。夕食を食べ終え、トイレで用を済まし、部屋の電気も暗くして、映画の世界にどっぷり浸かろうともう万全の体制を整えてDVDプレーヤーにディスクをセットする。長い最新映画情報も終わり、ようやく本編が始まるといきなり主役を演じる役所広司が口汚く罵る「この糞が!!」という言葉…。さらに続く、極彩色の映像で描かれる不穏なバイオレンス&エロ描写に、「ああ、これこれ。この誰もが最後まで安心して観ていられる“無難な”娯楽映画ばかりを求める昨今の邦画の観客たちにガツンと挑戦状を叩きつけるような、いかにも中島哲也監督らしいこのアンモラルで淫靡な世界観。これを待っていたんだよ~」と僕のテンションは否が応でも上がっていくばかり。『告白』という中島の生んだ傑作を髣髴とさせる、心に闇を抱えた中学生たちが織り成す不穏な世界と、狂った大人たちの狂った欲望がどんどんとエスカレートしてゆく阿鼻叫喚の地獄絵図を交互に展開させ、さらにはそんな狂った世界を彩るポップでサイケな抜群の映像センス、「やっぱ、中島哲也は天才だ!」と僕はそんな不穏で淫靡な世界にますます嵌り込んでいった。だが…、1時間が過ぎ、完全にぶっ壊れてしまった役所広司が暴走していく後半からそんなヒートアップした僕のテンションは急速に萎んでしまうのだった。加奈子という悪魔的な美少女が周りの人々をどんどんと不幸にしていく過去パートと、アクの強いキャラクターたちが織り成すもろにタランティーノを意識しただろう現代のバイオレンス展開が完全に乖離しているのだ。この2つの世界が上手くリンクしていない。これが本作から僕の心が離れてしまった最大の原因だ。僕が中島哲也の作品に求めるものは、極端なまでにシニカルな暴力描写と人間の心の闇に鋭く切り込む冷徹な視線、そしてその狭間に垣間見える豊かな詩情性だ。もう言わせて貰えば、この役所広司演じる狂った父親の暴走ストーリーは完全に要らなかった。加奈子という悪魔的魅力に満ちた美少女がその持って生まれた“美貌”と“悪”でもって、周りの世界をどんどんと破滅させていくというこの耽美的ストーリーだけを徹底的に追求していたら、既存の道徳観を爽快に踏み越える物凄い傑作になりえただろうに。残念と言わざるを得ない。とはいえ、それまでの作風に安易に留まることなく、さらに新しい世界を追求する中島哲也監督のそのアグレッシブな姿勢を僕は素直に称えたいと思う。今回は残念な結果に終わったが、これからも彼の新作を期待して待とうではないか。
[DVD(字幕)] 6点(2015-08-17 22:46:25)(良:1票)
19.  崖の上のポニョ 《ネタバレ》 
良くも悪くも宮崎駿印の家族みんなで楽しめるほのぼのアニメ。本当にそれだけ。宮崎駿の過去の作品の魅力ってそんななかにも、ちゃんと心に残る印象的なセリフがあったり、社会の残酷さをその片鱗ながらも感じさせる絶妙の演出手法が際立っていたりしたのだけど、このところの宮崎作品ってそんな魅力が顕著に減じているような気がして仕方がない。それでもあのグロテスクな魚たちの大津波のシーンだけは心に残ったので及第点で。
[DVD(字幕)] 6点(2013-05-02 19:09:51)
20.  カールじいさんの空飛ぶ家 《ネタバレ》 
この映画、完全に出オチ。冒頭10分の平凡だけどささやかな幸せのなかに生きた、ある老夫婦の歴史と、その後、誰にも心を開けず偏屈になったじいさんが沢山の風船を家に付けてファンタジックに空に飛び上がるところで、もう全精力を使い果たしたといった感じ。さすがにその後はアイデアが続かなかったのか、以降はかなり退屈な作品になってしまった。冒頭10分が素晴らしい出来だけに、残念!
[DVD(字幕)] 6点(2013-04-03 12:52:36)
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