1. 機動戦士ガンダムUC/episode 5 黒いユニコーン
《ネタバレ》 このガンダムって言うアニメは、テロリストに寛容すぎる。 「視点によって正義は変わる、誰が正しいとは断言できない」 ガンダムとか言うテロリストまるだしな嘘を、コミュニケーションに癖のある人間をターゲットにしてわざと書いてるでしょ?信じるから止めなさい、と思う。 今作は特にヒドイ。この間までテロリストだった人がその罪や間違った思想をすっかり忘れている。贖罪の観念が無い事がこのアニメの最大の難点だ。 モデリングとモーションのしっかりしたアニメが今までに無い絵的説得力を押し出してると思う。技術は高いけど、信じやすい人には毒。 [DVD(邦画)] 5点(2015-04-13 00:27:29) |
2. 麒麟の翼~劇場版・新参者~
グリッソム主任なら50分で二本は片付くであろう犯罪だったけど、雰囲気はそんなに悪くなかった。テーマは秀逸。 [地上波(邦画)] 6点(2013-05-30 00:47:18) |
3. 希望の国
《ネタバレ》 「まあ大丈夫だろう」 「騒ぎすぎ」 「格好付けるなよ」 「知ったかぶっちゃって」 「これくらい」 「気持ち悪い」 「面倒くさい」 こう言った雑音が、その日所々から聞こえた。 「落ち着こうよ」 「気をつけないと」 「大変なことになったらどうするんだ」 「何かおかしいほどじゃない?」 「どうなっちゃうんだよ」 それでも一様に、誰もが心の中で何度も、何度も繰り返して、口の中で唱えるようにつぶやいた。 「大きいぞ」 我々が住む東京は、今から考えれば絶望的な地震が襲って何もかもが崩れてしまった、と言うことは無かった。それは東北でも同じようなことだったかもしれない。だけど、その「思ったより揺れていない」と言う事実は人を急速に蝕んだ。油断が、である。 あの日、仕事を途中で切り上げて国道一号前のレストランでだらだらと、帰るか帰らないか、止まってしまおうか明日休んでしまおうか等とまだ明るい窓の外を眺めながらひたすらおしゃべりに興じた。 しかし、異様な光景がずっと止まらずに繰り返しそこにある事に段々と気付く。 人の列がいつまで経っても途切れない。一人が気付くと、そこに居る何人もが「あ」と声を上げる。一斉に帰宅した我々も、窓の外の人の列もどうという予定も無く出てきてしまったのだった。 このまま歩いては帰れないと言う人を残して、比較的近所に自宅のある私は群れの中に紛れて見慣れた交差点まで一緒に歩くことにした。 水田に流れ込む津波や燃える街などのリアルタイム映像が止むこと無くテレビで流れ続ける。次の日には原発が爆発してしまった。もう生きていけないんじゃ無いだろうか。とすら誰もが思った。だけど、生きてる。もう二三台原発が爆発しても私たちはきっと生きてる。だから、今はまだ諦める時じゃ無い。 地震や原発がある人がその人であると形作る決定的な物を壊してしまって、その人はその人じゃ居られなくなってしまった。死んだら何もならない、そんな気持ちを伝えてしまうと自分が残酷な人間になってしまう。でも、もう完全な手詰まりをそこに見とがめてしまったら、やはり人は自分の命を絶つ。 母親は生き残って、狂ったような生き恥を晒して、護っていたのは何だろう。少々のセシウムから子は護れても、狂ってしまったお母さんからその子を護れない。 色々な物が、そう言えばボロボロになってしまった。 [DVD(邦画)] 7点(2013-05-28 02:30:31) |
4. 桐島、部活やめるってよ
《ネタバレ》 まばらに帰り始める同級生にばいばーいとさよならを投げかけつつ、部活の準備をする。 そろそろ帰宅部の連中は駅やアパートに向かって行ってしまった頃になる。そうすると僕らの第二格技場に向かう広い道で四人のクラスメイトが、ケチをつけてくる。いつもの出来事である。 「ねー、そんなにガチにやんなくても良いから帰ろうよ」 街で遊ぼうよという彼の気持ちは分かる。出来るだけ大勢が良いと言うのもだ。でもこの日は単調なトレーニングが中心だったからかつい、練習したいから遊びにいってくれ。と、僕は強く言ってしまう。このとき生じた彼らの中の黒い気持ちは、すぐに大きくなって僕に向かった。 「あのさ、ここはお前んちじゃねえし」俺らの勝手だし。一人が乱暴に近づいて僕の襟首を引き寄せると、彼らの心から本音のような物が溢れてきた。 不愉快だったのは彼らのせいでは無かったと思う。けど、僕は彼の右腕に僕の右腕をするすると這わせて肩口をつかんだまま、背後に立った。用意していた左手でつかんだ後ろ襟から彼に重しを掛けるとすぐに膝を突かせて自由を奪った。視界が揺れた瞬間の出来事に何が起こったのか彼は理解できないようだった。 今にも暴行事件になりそうな雰囲気に、残りの三人は顔色を変えてすまんすまん、コイツが悪い。悪かった。と、慌てて走り寄ってきた。 「いや、そう言うつもりでは無く、なんか怒っちゃってすまん」と、今にも壊れそうになっている人間関係を取りなそうと、僕も含めて全員必死だ。 彼らの中に溜まっていた、「何かに打ち込みたい」という応力が心を折って、今日は外に向かってしまったのだった。僕の一言が原因でもあった。 だけど、この一件で僕の心も何となく本当は打ち込んでいない事実を自分のなかに見つけてしまった。 厭々やっている。自分で選んで入ったのに。仲間が無心でサンドバッグを打ち続けているその傍で、僕も怒声を上げて人を蹴り上げている。嫌なのに。 そうやって月日が経っていくうちに、部活には出なくなってしまった。 結局、僕も講義が終わるとベンチに座って遊びに行くのを誘う側に立っている。「何かに打ち込みたい」って思いながら。 新しい仲間全員がそう思っていない事を意外に思い、でも、自分だけが勝手に狭い価値観を作り出している事にやっと気がついた。 と、脳内学園で事件が起こった。 [DVD(邦画)] 9点(2013-05-15 13:41:29) |
5. 巨神兵東京に現わる 劇場版
《ネタバレ》 確かになかなか面白い物を観た。と言う感じではあった。これが上映されることを知らなかったと言う幸運がこの作品に込められた湿った気持ちをよく引き出してくれた。 ただ、ただし。なんと言うか、これを言ったらあれなのかもしれ無いが、CGと組み合わせた方が良かったんじゃないだろうか。光が点滅する突起とか、工事現場を勝手にイメージしてしまい円谷の様で勿体無かった。 サウンドエフェクトも爆発の音がウルトラマンや怪獣物の音そのもので、リアル感が全く無かったのが惜しかった。 造形物の姿は全体としては良い。けどそのせいで特撮の限界が分かった。あるいはそういう意図だったのかもしれない。 破壊されきった東京。私達が住む東京。建物は壊れても燃えてもい無いけど、同じ様に壊れてしまっている。色々な予兆はあった。けど、こうなる事を選んでしまったのは私達の多くだ。 再生に向かって、一人だけで、一人ぼっちてまたとぼとぼ足を引きずるみたいに歩きはじめるんだな。でも、なかなか火は消えそうに無い。この映画も現実も。 [映画館(邦画)] 7点(2012-11-21 07:03:15)(良:1票) |
6. キック・アス
《ネタバレ》 典型的なアメリカンコミックの主役たちを、現実の世界でやったならどうなるのか。それを主人公が体現しようとする。 むろんそれは不可能であり、犯罪者にとっては死にに現れた異常者にしか映らない。冒頭でそれが当然のように説明されると、アメリカンコミックの典型のような、「悩みだらけ」で「事情だらけ」で「ドーピングだらけ」な中身人間なヒーローが現れてしまう。この表現自体の異常性が物語を引き立てるのだが、人間の体が物理的に壊れて生き物から物に変わる瞬間を全く躊躇無く映像にしてしまうことで現実には正常な人間がこのような事をすることができないことを思い出す。意外と巧妙な作りだ。 殺害シーンは終盤アクションの連続になるが、ゲームのインターフェイスや古典的な映画手法を使ってスタイリッシュに見せている。特に暗視装置のような主観視点からのFPSをイメージしたような殺害シーンはその瞬間の罪悪感を感じさせないところに恐ろしさがある。だが、普通の人間ならあとからこれは飽くまでも作られたショーだから許されるという心の節度が効くことが想定されているのは当然だろう。 ところで米軍では、無人戦闘機や有人兵器での暗視装置を使った遠距離からの一方的な殺害をすることで、オペレータの生命を守る事に成功しているが、同時にゲーム然としたインターフェイスを倫理観が受け入れることができないのだという。作戦を実行するオペレーターは白兵戦で感触の伝わる距離での殺害をしてきた時代以上に、重度の精神的な負担にさらされることになり、このことは兵員にとって深刻な問題になっているという。 結局、殺害を職業とする、専門の科学的なカウンセリングと教育と訓練で精神的な調整を施された人間たちでさえ結果として重度のストレスにさらされている。人間が残酷なシーンをアクションシーンと言って見ていられるのは、これが作り物であるという節度が効いているからである。 本物の殺害であったなら、職業として決められ遊び感覚の環境が用意されてさえ罪悪感につぶされてしまうのが正常な人類だ。だからこそ現実の戦争や事件とは切り離して考えるのが妥当ではないだろうかと思う。自分にもできると確信して、本心から嬉々として楽しんでいる人間がいるとしたら異常者の性向がある。 そういう訳で、正常かどうかのリトマス試験紙として普通に楽しんだらいいと思う。 [DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2012-03-11 07:08:32) |