1. ザ・マジックアワー
互いの意図したところが違うのに何故かハマる面白さ。三谷氏の脚本、キレています。三谷作品はわりとそうなのですが今作は特に舞台劇な感じが強いですね。作られた街は現実感ゼロ、レトロっぽさでファンタジー感も増します。 チョイ役に至るまでまあー日本芸能界の一線級にいる人たちがぞろぞろ顔を出しますなあ。端役にまで主役クラスを使われるとなんだか気が散ります。 演技力の差もはっきり分かりますね。わたしが邦画を苦手とするのはこれがあるからで、言語の繊細な響きも母語だと聞き取れてしまうから「下手だなあ」と感じやすくなるんですね。演技評価をするなら上位では佐藤浩市の仕事が凄いです。けっこう難しいキャラクターだと思うんですよね。ズレてて抜けててでも芝居には純粋な。彼のイメージに無い要素ですから、意外だったし楽しかったです。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2021-07-12 23:11:41) |
2. サベイランス -監視-(2001)
《ネタバレ》 巨大企業の悪だくみを若き精鋭が暴く社会派勧善懲悪モノ。殺人ありスパイあり隠蔽工作ありの仕様は全く新しくないんだけど、その大企業てのが誰が見てもM・ソフト社というのが21世紀ぽい。そしてあの社長をティム・ロビンスがまんま似せてるってのもそこはかとなく笑いを誘います。いいのかなー。 若々しいライアン・フィリップはこの頃が容姿のピーク。瑞々しさや若さゆえの青っぽさが魅力的です。 人物の印象をラストに急変するキャラクターが三名は居り、素直な客のわたしはおお、そうなるのかこいつはと驚いたのですがこのへんは脚本のミスディレクションがさすが、というところでしょうか。 邦題がややテーマとズレてるのが違和感残って残念。いかにも‟surveillance”が原題のような書き方してますが。 [試写会(字幕なし「原語」)] 5点(2020-08-21 23:12:18) |
3. ザ・バッド
《ネタバレ》 豪勢なことに、おじさん名優3人を起用。で、この三者皆涙ぐましいほど真面目にコメディ芝居をしているんだから脚本も、も少し応えたらどうだろう。こんなに障害無くアッサリと成功する窃盗譚初めて観た。見せ場らしい見せ場が無いんだなあ。障害と言えそうなのはウォーケンの女房が計画の邪魔になってる、ってことくらい。それとてわりとすんなり片付いてしまうし。メイシーの木箱交換もあんなんで解決しちゃうし。 で、内容が雑だからって邦題まで手を抜いていいワケがない。安易すぎる・・絶対20分も考えちゃいないと思う。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-05-07 00:00:11) |
4. 最高の人生の見つけ方(2007)
《ネタバレ》 爺さん名優の二人がさすがです。どっからどう見てもニコルソンとM・フリーマンなんだけど、すぽんとその役に入れる技術は玄人の熟練技を見ているようで、全く安心して見ていられる。ただ、物語はわりと深みに乏しく、重鎮二人のネーム負けしています。 人生の辛酸を経て、終盤に差し掛かった二人が最後にやりたいことが世界各地の名所巡り、とはちょっとがっくりしますよ。インドやらピラミッドやらに行きたいって若者の自分探しか。 観光名所をつなげるのは尺稼ぎにはなるでしょうが、”やりたいことリスト”は話の肝なのですからここは脚本家にもっと考えて欲しいところ。 でも主演の二人とニコルソンの秘書がとても良いのです。”猫のフン”コーヒーで爆笑してるシーンと、山頂に遺灰を持ってきたのが秘書氏だった、という意表を突くラスト。この二場面は、他のアラを補って余りあるものでありました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-12-31 00:49:16) |
5. ザ・ロイヤル・テネンバウムズ
《ネタバレ》 変人だらけのシュールな物語。変わってんだけど、一人一人の中で自己完結してるというか、引きこもりタイプの変人さんが多いためか、例えばコーエン兄弟作品のように変と変で化学反応を起こす、ということが無い。ただただゆるーっと展開し、さして何も起きない。けど私このぬめっとした感じ、好きです。ジャージ親子の父であるB・ステイラーは見てきた中で一番良い仕事をしているように感じるし、メンタルをリストカットしている眉無しグウィネスは目がうつろの迫真演技。それにG・ハックマンがすごく良くないですか。さすがというか、大御所でいてこのコミカルさ、今さらながら凄い演技の幅を感じる。ロイヤルというクソジジイに「愛すべき」という文言が乗っかるのは、ハックマンだからこそ。 息子に疎まれつつ、めげずに孫にアタックするじいちゃん、大好きだけど万引きはイカンな。 凝りに凝った美術は冴え渡り、室内の1カット1カットが絵画のよう。印象に強く残る個性派ムービーでありました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-11-04 00:56:00) |
6. ザ・ドア 交差する世界
《ネタバレ》 まず、ちょっと勘違いしていたのだけど、あのドアはタイムマシンではなくてパラレルワールド的な、隣の世界への扉だったのですね。だから5年前の自分を殺しても、現在の自分には影響が無いのね。いつ消滅するのかと思っちゃった。それでは話が展開しないわけですが。 ”そっくり”だけど”自分のじゃない”擬似家族の気持ち悪さがうまく醸し出されていると思いました。娘は気付いて懐かないし。ああそうなるのか、と変に納得しながら観ていたら、あの扉は他の人にも開かれていてすでに「先輩」がいるという驚きの展開であります。どうしても視野が主人公エリアになってますからこちらも。 生きるため自分を殺すって、どういう心理になるのかな。自殺とも違うし。そこらへんが描かれてなかったのが残念。 摩訶不思議なストーリーをこしらえたものですが、ラストの納まり方は奇跡的にベストな形になりました。子を失った夫婦二人が元の鞘に納まってつくねん、と庭に佇む。別世界で生きる娘の姿を心に抱いて。違うのは流れる時間のみ。 喪失に出会っても、乗り越えるより他に術はないのです。取り戻せないものへの、心の対処を不思議な筆致で描いた作品でありました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-01-17 00:08:02)(良:2票) |
7. サルバドールの朝
《ネタバレ》 観終わってなんだかもやっとした不快感だけが残る。物語を人に語る上でのツボを外している。サルバドール青年が不当に処刑されたことへの怒りとかフランコ独裁への抗議とか、おそらく作り手が言いたいのはそういうことだと思うけど、まったく語り足りていない。反体制運動へ身を投じたサルバの思いや、そうなった動機である独裁政権下の苛烈な市民生活といったものがてんで描けていない。看守との交流や死刑直前のじりじりした数時間にやたらと時間を割く、ここの描写は悪趣味だろうが。奔走する弁護士に苦しむ妹たち、執行人の到着。ひっぱってひっぱって観ている者に苦痛を与えるだけのここらの場面はサルバを英雄視するためのプロットに必要だとは思えないんだが。しつこく亡骸まで映すなんて、この監督はほんとにサルバを英雄とみてるのか?冒涜してるのと違うか。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2014-02-07 00:28:48) |
8. 13デイズ
あくまでも視点はアメリカからのキューバ危機。事件そのものを第三者の目から検証しているわけではないのですな。私はどっちかというとソ連側の言い分が聞きたい。“気取った高慢ちきのアメリカに一泡ふかせてやろう”とカストロと結託した「共産主義から見るキューバ危機」の方が面白いと思うんだけど。ちょっと間抜けな予感もするし。もしも実現したならキューブリックに撮ってほしかったなあ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-10-21 00:05:17) |
9. サスペクト・ゼロ
みんな言ってるけど、セブンぽいけどセブンじゃない類似作。画質の湿度がずっと低いし、美しさも劣る。“苦悩する超能力者”ベン・キングスレーが重く熱演してるけれども、A・エッカートの固いお芝居が足を引っ張る。ベンの悩みはわかるがアーロン君は何をそんなに仏頂面なの?という気がしてくる。徐々に真実が顕れてくる話の展開は面白かったんですが、ちらちらと挟まるESP映像?のせいもあって二度観して整理する必要があったり。いまいちかな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-09-11 00:02:51) |
10. サイドウェイ
《ネタバレ》 人生も中盤だというのに、今のとこどうにも出来損ないな感のある中年男が二人。軽薄男が内向うじうじ男を引っ張る形で一週間の婚前(?)旅行へ。この二人なんだかんだでお互いを補い合って、結果じりじりとちょっとづつ人生前に進んでいる、その感じが共感できるような可笑しいような。相方の財布を取り戻しに家宅侵入したうえに、全裸のおっさんに追いかけられるなんて、こりゃかなりの厚い友情だ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-07-04 01:11:57) |
11. サイン
《ネタバレ》 ・・私これけっこう気に入ったんですが・・みんな厳しいなあ。私も初めは予告のミステリーサークルの画からしてうさんくさいなあと警戒してたのですが、しかしテーマは一人の男の魂の再生の物語だったですよ。たぶん監督、予兆と何をリンクさせようかなあと考えて、幽霊は使っちゃったからよし、宇宙に担ってもらおう、としちゃったもんだから客の耳目がそっちに行っちゃったうえにエイリアンの造形がちと陳腐で評価散々の憂き目に。いや抑えに抑えたメル・ギブソンの演技、P・フェニックスの大真面目っぷり、良いじゃないですか。映画の質感も抑制が効いて上品。亡き妻の部屋から、不穏な電話を受けるメルを撮る場面や包丁に写し出された“何か”の影、ブラウン管に映る“例のもの”。ひっそりとして研ぎ澄まされたようなカメラワーク。うるさい音楽に耳を煩わされることのない静けさ。電話の音には飛び上がった。所々にはさまるユーモアも好き。ああー消されちゃった叔父さんの“水着特集”、メルも絶句するぺかぺかのアルミ帽子。“ムー”みたいな本を三人で拝読、ちゃかすメルと怒る息子が可愛い。みんなばかにするけど、現実にあんな報道があったら誰でもホアキンになると思うよ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-04-12 01:28:42) |
12. サンシャイン・クリーニング
《ネタバレ》 ちょこちょこと展開が強引だったり、ベタだったりもするんだけど、エイミーとエミリー、二人の女優が姉妹の空気感を出すのがとても上手くって好感が持てました。きょうだいってね 近すぎても煩わしいし、けど血を分けてるぶん、やっぱり気がかりで。私は強い、と自らに言い聞かせて奮闘するお姉ちゃんとやっちまった系になってしまう妹。彼女らを見守るちととんまなじいちゃんに、ワークショップの片腕店長ら脇もなかなかの存在感。冒頭の「パイの注文は無かったわ」の台詞があんな風に効いてくるとは思わなかった。もらい泣きです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-02-20 17:33:33) |
13. ザ・インタープリター
はっきり言ってストーリーそのものはあまり面白くない。シルビアのアフリカでの過去もざっくりしすぎてよく伝わらないし。相変わらずのS・ペンの熱演空回り。特筆すべきはキッドマンの美しさ。知性も感じる彼女の美貌が国連通訳の役柄にもすっぱりはまる。すらりと縦に長いスタイルに、さらりとまとめた金髪。全編ダークな配色でまとめたファッションが、ジャケットから普段着に至るまで素敵で素敵で。ぜひ参考にしよう、と意気込んだところでああ何もかもパーツが彼女と違いすぎるわぁと気付く寂しさ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-10-28 16:51:21)(笑:1票) |
14. ザ・ビーチ(2000)
なんとまあ まるっきし荒唐無稽。勿体つけたディカプリオに、ちゃちで幼稚なコミュニティ。こんなんを楽園とは噴飯もの。しらこいエンディングには目を疑う。愛をこめて??冗談か?「ヨーロッパ人の馬鹿なユーモア」って台詞にのみ1点。 [CS・衛星(字幕)] 1点(2011-10-28 15:36:28) |
15. 殺人の追憶
これぞ映画を観る醍醐味。サスペンスものとして欠かせない展開の意外性、畳み掛けるような演出。加えて各人物の抱えるドラマ描写も怠り無く、画面から発せられる熱量がはんぱない。一緒にぬかるみに足をとられそうになる湿度過多な映像もみごと。凄い。ああ翻ってわが邦画。「シュリ」「JSA」でお隣に抜き去られた、と思ったんだ。その間ホラーなんかでちょっとちやほやされてる間にもう韓国映画の背中すら見えなくなってしまってる。 [DVD(字幕)] 7点(2011-09-02 11:26:06)(良:1票) |
16. 3時10分、決断のとき
《ネタバレ》 なんてこった号泣だ。なんといってもジョン・ウェイド演じるR・クロウの演技が白眉。彼は凶悪犯なのだけど、キレて手に負えない人物ではなく(この辺は手下のチャーリーが一手に引き受け)話はきちんと通じるしむしろ知識・経験が豊富で器の大きさすら感じる。おまけに笑顔がチャーミングでつまり人間としての魅力に溢れてる・・んだが、自らの中で整合性がとれるといきなり隣の人間を惨殺する道徳の無さ。そのウェイドがおそらく人生で初めて敬意に近い感情を抱くのがダン。ダンが息子のために人間としての矜持を示そうと決意した場面から涙腺決壊。究極の状況の中、ぽつぽつと心の一番痛い箇所を告白するんだけど、その話もいちいち泣かせるんだ。始めは14才らしく、不良なことに憧れてたお兄ちゃんが、世の中の黒いも白いも勉強させられて成長していく姿も良い。最後に銃口を下に向けたお兄ちゃん、あっぱれです。ああもうハンカチ乾いてるとこない。忠犬のごときチャーリーが哀れといえば哀れ。 [DVD(字幕)] 10点(2011-08-26 18:20:42)(良:1票) |