1. 七年目の浮気
《ネタバレ》 『七年目の浮気』という中々直接的なタイトルですが、実際には堂々とした浮気は起きない。主人公はなんだかんだ言っても配偶者を愛していて、大それた行動は取れない上に、勢い余って取ってしまった時は本気で焦る。そして妄想力逞しい。つまり世の中の大体の人間のソレなのですね。 そんな主人公の二階の住人が何とマリリン・モンロー、あの完璧なプロモーションとちょっとアホ可愛い性格に終始翻弄される主人公は、可也笑えました。 初回と全く違う深刻な状況で繰り返されるラフマニノフの第二番や、鏡の中の顔が見る見る老ける時に言及されるドリアン・グレイの肖像など、洒落が良く効いています。 ただ、舞台劇を映画化したにしても全編にわたり主人公の独り言が延々と続くのはやや違和感を感じました。ビリー・ワイルダーは他にも様々な舞台劇を映画化してしますが、今回はそういう他作と異なり完全に舞台をそのまま映画として撮ったという感じ。 [DVD(字幕)] 7点(2014-07-20 07:12:07) |
2. シンデレラ(1950)
《ネタバレ》 ディズニー・プリンセスの中でもクラシックと呼べる作品でしょうが、その為か現在のプリンセス物と比べるとやや物足りなさを感じた点が多かったです。ネズミ達と意地悪なネコの追いかけっこも楽しいとはいえ、基本的にシンデレラの物語の中核に関わってくるのは終盤だけですので、そこまでのシーンのそれはかなり冗長に感じました。そのシーンでシンデレラという物語が一々止まってしまうと言いましょうか。それから美しい心を持った者は容姿も美しく、憎まれ役は醜くというパターンはエンタメの謂わば基本ですが、シンデレラを虐める継母と、特にその娘二人が不細工に描かれているのはやや単純な発想ではないかと思います。今のディズニーですとこの悪役にもドラマを持たせるのでしょうが、本作は基本的にはそういう配慮も一切ありません。 但し、そういう不満点を吹き飛ばしてくれたのが素晴らしいスコアの数々。特に「So This is Love」の美しさは頭一つ抜けている。魔女のおばあさんが登場する楽しい雰囲気の「Bibbidi-Bobbidi-Boo」も良い。 [DVD(字幕)] 5点(2014-06-02 22:27:06) |
3. 知りすぎていた男
《ネタバレ》 ヒッチコックのサスペンスと言えば「何か起こりそうでしょ、怖いでしょー」と観客に伝えようとする為に全体のテンポが鈍重になっている作品が多い印象ですが、本作はストーリーテリングの手際の良さが目立ち単純にクライムサスペンスとして面白く観やすかった。それでも剥製屋に忍び込む場面や終盤の首相狙撃シーン、最後の悪役の退場シーンに代表される様なチラリと映るヒッチタッチは健在で単純なサスペンスに緊張感が生まれている。ヒッチコックのサスペンスはこのくらいのバランス感覚がいいなあと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2012-08-13 00:07:51) |
4. 十二人の怒れる男(1957)
《ネタバレ》 舞台はたった一つの小部屋のみ、登場人物は僅か一二人、それでもこの映画が非常に面白い理由は登場人物の人間模様の描き方が非常に上手い事なのでしょう。 少年の有罪無罪に関する八番陪審員の推理は、まあそこそこ面白い位ですが、その推理が展開されていく中での登場人物の人間関係の移り変わりが非常に面白いです。 ある者は勇敢で、ある者は残酷で、ある者は面倒臭がり屋で、ある者はカタ物だったり登場人物の一人一人の個性が非常に上手く自然に表現されています。あっという間に過ぎる90分でした。ただ会話が延々と続くだけの映画なのに、これだけ素晴らしい作品が出来るのかと。 [DVD(字幕)] 9点(2012-04-22 09:34:59) |
5. 情婦
《ネタバレ》 オセロをプレイしていて一番面白い瞬間、それは一手で一気に表が裏にひっくり返る瞬間でしょう。つまりはどんでん返し。この感覚がこの映画は数回続くのだから、その時の興奮は堪りません。ビリー・ワイルダー監督らしくエンターテイメントにグッと寄っており、ストーリー運びのテンポが非常に良く、また個々のキャラクターが魅力的で、エンディングまで画面に釘付けにさせられました。そしてエンディングで見せつけられる究極の愛の形。暴走した愛情というのは心底恐ろしい。マレーネ・ディートリッヒの演技が白眉だとは聞いていましたが、あの髪を掻き上げた時の表情は本当に素晴らしく、また恐ろしかった。傑作です。 [DVD(字幕)] 9点(2012-04-22 09:32:58) |
6. 死刑台のエレベーター(1958)
《ネタバレ》 まずこの映画の秀逸な点として、サスペンスとミステリとしての完成度の高さを挙げたいと思います。「エレベーターからの脱出」「夜を彷徨う夫人」「明日を顧みないカップル」の三場面がバラバラに進行しているのですが、お互いの動きが実は綿密に絡み合いラストの破滅に向かうに従って、収束していく様は非常にスリリングです。最後のどんでん返しもやや意表を突いてくる感じで面白いです。ジュリアンの指紋とモーテルの現場に残された指紋を照合すれば万事解決してしまうという脚本の穴に文句を付けたくはなりますが。 マイルス・デイヴィスの音楽もリリカルな場面ではひたすらにリリカルな演奏、スリリングな場面では焦燥感を煽るようなアップテンポな演奏が画面と合っていました。50年代後半というと、マイルスはプレスティッジと契約していた頃ですので、中期の黄金時代と呼べるくらい脂の乗った時期。モードジャズをやや無意識に取り入れている様な素晴らしいアドリブも納得です。 [映画館(字幕)] 8点(2011-02-15 00:28:37) |
7. 七人の侍
《ネタバレ》 圧倒的な迫力で見せつけられる七人の侍を含む農民達と野武士との死闘。黒澤明お馴染みの影と光の美しいコントラスト、驟雨や豪雨の魅せ方、ダイナミズム溢れる男達の合戦、要所要所で挟まれる笑い。どれをとっても素晴らしい。娯楽時代劇として本当に完璧に仕上げられています。中でも、菊千代の「こいつは俺だ!俺もこのとおりだったんだ!」と彼の出生元が明らかになる所や最後の散り様、全てが終わった後の勝四郎の慟哭は観ていて本当に辛くなるのと同時に、なんかこう……良く分からんモノが突き上がって来ました。こういう時に文章力が無いのが悲しいですが、こういう良く分からんモノを感じる時に「映画好きで良かったなー」と思えるので文句なしの満点です。 [DVD(邦画)] 10点(2010-12-18 11:42:39) |
8. 白い馬(1952)
《ネタバレ》 馬の躍動感溢れる動きは面白いのですが、ストーリーに難がありすぎると感じた。まず白い馬と少年の友情が生まれる瞬間がアッサリしていて、またハッキリと分からないので、後半で「こいつら何でこんなに仲いいの?」と思ってしまう。また叙情感を出したかったのでしょうが、少年の家族としておじいさんと妹(?)を入れたのは明らかにミスでしょう。ラストで少年と白い馬がどこかの国に旅立っていくのを観て、真っ先に残された家族を心配してしまいます。そこに全くフォローが無いのはキツい。 普通に考えても結構脚本に難があると思うのですが、フランスの芸術映画ってそう云うことは二の次なんでしょうかね。 [映画館(字幕)] 5点(2009-12-30 17:41:28) |
9. 紳士は金髪がお好き(1953)
マリリン・モンローの映画は初めて観たのですが、その役者っ振りが想像とかけ離れててビックリ!今までただのお色気要員だと思ってました、すみません……。 主人公のバカっ振りを見事にコミカルに演じきっています。バカ可愛かったです(そんな言葉あるのか) [地上波(字幕)] 7点(2008-09-24 09:12:41) |