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六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 823
性別 男性

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1.  砂の器 《ネタバレ》 
鑑賞後に「なぜ和賀は殺人を犯さなくてはいけなかったのか」が腑に落ちなかった。しかし、よくよく考えてみると、和賀の気持ちを推し量ることは相当に難しいのではないかという結論に至った。 過去に対して抗う男の人生の苦闘・苦悩というものは当人ではないと分からないものだ。 劇中でもセリフがあったが、過去を知る男の存在を消したいといった単純な理由ではないだろう。 他人に成りすます、父親に会いたくてもどうしても会えない、そういった長年の苦闘・苦悩の蓄積のようなものがああいう形で爆発してしまったのではないか。 また、和賀の過去を知る男だからこそ、苦闘・苦悩をぶつけることができたのかもしれない。 さらに、父子を会わせようとする事は確かに親切心かもしれないが、当人たちにとっては願っても願ってもどうしてもできないことだったのかもしれない。 それを三木が強制しようとしたために、このような悲劇に繋がったのだろうか。 父親が自分の息子の姿を見ても「こんな人知らない」と答えたことからも、父子の気持ちを知っているのはやはり父子だけだと感じた。 自分が腑に落ちないと感じるのは当然といえるかもしれない。 ただ、これほど重い想いを抱えているとしたら、加藤剛の演技はやや軽い気がする。 全体的に重厚感のある作品には仕上がっているが、多少軽さが目立つような気もする。 あまり重苦しいと商業的に影響が出るのかもしれないが、もう少し重苦しくしてもよかったかもしれない。
[DVD(邦画)] 6点(2010-12-28 23:28:58)
2.  スミス都へ行く 《ネタバレ》 
熱い映画なのかもしれないが、その“熱さ”が現代から見るとやや理想的過ぎるところがある。途中までは「今の政治家に見せたい」と思っていたが、日本の政治家に見せても政治が変わるような効果はないだろう。逆に、気に入らない法案は徹底的に妨害して潰すというような間違った方向に進みかねないので、日本の政治のためには見せない方がよいかもしれない。個人的には、民主主義の理想、言論の自由、政治による正義などはもはや存在しないと諦めているので、本作のような“理想”とのギャップを感じて、楽しめないところがあった。 政治について語ることは非常に難しいが、現代の政治は利害が絡み合っており、それほど単純でもなく、簡単に物事を変えることはできない。政治は腐敗しているというよりも、何かをしようとすると必ずそれに反対する者がいるので、前には進みにくい世の中になっているのが現実だ。 また、アメリカのように個人で活動できる政治スタイルもあるが、日本のような政党政治では個人の政治家の出番が非常に少なく、郵政民営化の際のように自身の考えに反していても党の方針に従わざるを得ないところがあるので、スミスのような政治家は誕生しにくいところもある。党に反すれば、党からの処分を受けて、政治生命を絶たれてしまうだけだ。 さらに、一部の法律を除き、実際に法律を起案しているのは官僚であり、政治家ではない。立法府は官僚が作った法律を認めるかどうかという機関でしかないので、政治家は主役になりにくい状況となっている。政治家自身も法律を提出することはできるが、サンダースの説明のように基本的には議会では相手にされない。 本作においては、テイラーという有力者の個人的利益(土地売買)に繋げるために法律が提出されているが、基本的に政治家は自身の選挙区の利益になる活動をするものであるのであり、ダム建設が選出州の利益に合致し必要不可欠なものであるならば、ペインの活動もそれほど違和感のある行為でもない。違法な妨害をすることは問題だが、巧みな弁舌で相手を黙らせるのは政治家の仕事だ。 このような現実を踏まえると、本作のような熱い理想を受け入れにくいところがある。スミスの行動よりも、むしろ議長が民主主義や中立性を重んじていることが非常に印象的ではあった。ルールに則った反則的な行為に対しても、きちんと向き合う姿勢というものは忘れてはいけないかもしれない。
[DVD(字幕)] 6点(2010-12-28 23:24:52)
3.  Sweet Rain 死神の精度 《ネタバレ》 
原作は未読。伊坂作品のいかなる作品の1ページも読んだことはない。 原作未読のためか、終始ズレを感じてしまった。 47年近い時間のズレを製作者は懸命に表現しようとしたのかもしれないが、それが上手くマッチしてないという印象。 難しいところだが、時間のズレなどは思い切って無視して演出してもよかったのではないか。 詰まらないことに監督はコダワリを持ったようであり、観客からするともっと他の事をきちんとして欲しいと言いたくなる。 また、ステレオタイプ型の表現が多く、それが違和感を与えているばかりか、全体的に表面の部分をすくったようにしか思えないために深みを感じられない。 さらに“死”を問い切れていないように思えたので、高く評価することはしにくい。 死神の立ち位置も曖昧のような気がした。 死神よりも、ある意味で藤木さんの方が達観しているのには違和感を覚える。 ラストでは成長しているようには感じられるものの、死神としての成長を描くということも重要なことではないか。 死神は全てのことは知っているが、人間の感情を理解していないということといった設定を付加するとよかったかもしれない。 そういう意図は込められていたようだったが、雨が止まないのは、死神としての途中の状態であり、人間の感情を理解して初めて一人前の死神になれるというようなことでもよかったか。 一人の女性を描くのならば、『なぜあの時に殺さなかったのか』ということをもう少し問うてもよかっただろう。 生き続けることによって、不幸で苦しい思いをしたことは間違いないが、生き続けることによって、素晴らしい経験もできたということを藤木さんに伝えてもよい。 映画内では、藤木さんの方で自己解決してしまっており、死神をただの使い走りにしているのはちょっと違うのではないかという印象。
[DVD(邦画)] 5点(2010-02-05 23:31:21)
4.  スペル 《ネタバレ》 
傑作ホラーといわれている「死霊のはらわた」が個人的に全く合わなかったので、無理を承知で鑑賞してみたが、やっぱり合わなかった。 極端につまらないとは思わないが、どうにもノリ切れない。 ホラーともコメディともいえない独特な路線がサム・ライミ監督の持ち味なのかもしれないが、自分にはどちらにも振り切れていないと感じられて、中途半端にも映った。 それほど怖くもなければ、それほど笑えるわけでもないという生煮え状態が続く。 追いつめられていくような心理的な圧迫もなく、単に“突然さ”と“音”だけで誤魔化しているのではないかと感じられるところもチラホラと見受けられる。 冒頭の車内バトルは楽しめたので、あのようなテンションが続けばもうちょっと楽しめたと思われるが、あとは基本的にはワンパターンにも感じられた。 作り物のグロさには耐性があるので、あの程度ではビクともしない。 冒頭を過ぎれば、肝心のババアとのバトルも盛り上がりはない(死体に髪を引っ張られるだけのシーンは“お約束”と笑えばいいのか)。 ラストの落としどころは誰でも分かるように製作されている。 それはそれで「そのネタをいつ明かしてくれるんだ!」というワクワクするような期待感を抱くことができるものの、ノリ切れない者にとっては「バレバレなんだよ。早くしろよ!」という“萎え”という感想も抱くことにも繋がる。 完全に見る者を選ぶ映画といえそうであり、自分はもちろん選ばれなかったようだ。 こういう作品を心から楽しむことができないのは、自分はちょっと損をしているかもしれない。
[映画館(字幕)] 4点(2009-12-01 23:39:27)(良:2票)
5.  スター・トレック(2009) 《ネタバレ》 
本シリーズは全くの未見だったため、本作を鑑賞する前に1と2をとりあえずチェックして本作に臨んだ。その予習があまりにハマったため、多少オマケをしたいところ。 「コバヤシ丸」テストのエピソードは、2を観ていないと深く楽しむことはできまい。未来のスポックが若いカークに出会った際に語ったセリフ「これまでもそしてこれからも私は永遠にあなたの友人です」も2を観ていないと“深さ”が分からないだろう。 このシリーズを観ていない者も楽しめるように作ったらしいが、やっぱり往年のファンを喜ばせるような作りになっている。 たんなる前日譚だろうと思っていたら、見事に裏切ってくれたアイディアは評価できる。パラレルワールド化したことで、既定路線を交えながら、新たな世界観を構築できるメリットを生んだ。新シリーズは新たな解釈を加えていくことが、これによって可能となったといえる。 パラレルワールドというアイディアもそうだが、冒頭の壮絶なシーンに対して、感動的な“出産”を上手く絡めてくるなど、「1+1」が「3」にも「4」にもなることをエイブラムスはよく分かっているようだ。 ただし、違和感があったのは、肝心のスポックだろうか。 バルカン人は感情を抑制し、全てを論理で物事を考えることができるという設定の割には、あまりにもあらゆる“感情”に溢れていた。 彼からは「怒り」「悲しみ」「喜び」「愛情」「友情」といったものが伝わってくる。 もっとも、地球人とのハーフであり、母親と故郷を同時に失っているので冷静にいられるわけではないということは分かるが、序盤のカークとの確執などは感情的になりすぎているところがある。 未来のスポックが語っていたように論理的に考え過ぎることは正しいことではなく、感情的になること自体はもちろん悪いことではないが、地球人らしい感情の表し方に終始しており、バルカン人らしさが上手く活かされていなかったような気がする。 カークとスポックがいい対比関係にはなっているものの、ややステレオタイプ的なところがある点が気になるところだった。 全体的にも、単なるSFアクションに展開しすぎるところが見られるが、最後の「新世界を探索し、新しい文明、生命体を求めて、人類未踏の世界へ」といった類のセリフを聞くと興奮が高まり、やはり低い点数は付けられない。 新シリーズへの期待感はいっそう高まってくる。
[映画館(字幕)] 8点(2009-06-14 03:18:50)(良:2票)
6.  スター・トレック2/カーンの逆襲 《ネタバレ》 
タイトルを見れば分かることだが、前作のような哲学的なテーマには挑戦せず、今度こそは普通の対戦型SFになっているだろうと思っていた。 そのため、80年代という時代背景を考えれば、今のSF作品を見慣れている自分にとっては恐らく見るに耐えないレベルの低いものになるのではないかとタカをくくっていた。 しかし、予想に反して、意外に面白いと感じられて、この世界観に引きずり込まされた。 80年代において、このクオリティ、壮大なスペクタクル感、人間模様、激しいバトルを描くことができるというのは、流石は人気シリーズだけのことはある。 日本においては、他のSFの陰に隠れてしまったことが、もったいない。 このシリーズは過去に一度も観たことはなかったが、シリーズを全部観てもいいかなと思わせるほどに、楽しむことができた。 カーンとカークの過去の関係についてはテレビ版で深く描かれているようであり、本作ではあまり語られていないので完全には理解できないことは残念だが、この程度ならば「過去に何かあった」ということだけを感じ取れれば、問題ないだろう。 “規則”とそれだけに囚われない“直感的な行動力”の重要性についても本作のテーマになっている。 “直感的な行動力”がカークの勝因であり、またカーンの敗因だろうか。 常識に囚われない発想こそが、冒険の“基本”であることが描かれているのと同時に、規則に則って、会話を“暗号化”していることも見逃せない。 “規則”ももちろん必要なことだろう。 要するに“臨機応変な行動”こそが冒険にとって重要ということのようだ。 残念なことは、「スポックが死ぬ」ということを、本作を観る前から知っていたことだ。 当然「スポックが復活する」ということも観たこともないのに知っているが、それを知らないで見たら、果たしてどう感じただろうか。 “感動”はもっと大きかったように思われる。 バルカン人らしく、感情では行動せずに、すべて論理的に考えた末での行動ではあるが、やはり“友情” “エンタープライズ号に対する愛着”という非論理的な感情を思わずにはいられない。
[DVD(字幕)] 7点(2009-06-14 03:09:46)
7.  スター・トレック(1979) 《ネタバレ》 
このシリーズは映画もテレビも見たことないので、初見となった。 70年代のSFが面白いわけないだろうと思っていたが、意外と楽しめたというのが正直な感想。 冒頭以外には、敵の宇宙人も登場せず、銃を使って撃ち合うこともない。 ストーリーは哲学的な内容で溢れており、現代ではなかなかお目にかかれなくなった、ある意味で斬新かつ新鮮なSF作品と感じられた。 「スター・ウォーズ」のようなエンターテイメント性、「エイリアン」のような神秘性、「未知との遭遇」「2001年宇宙の旅」のようなテーマ性を兼ね備えた作品に仕上がっており、ユニークかつ深いと感じられる。 その“深さ”も、一般人が楽しむことのレベルであり、理解できない難解さではないということも好印象だ。 本作をみて「機械ですら創造主を知りたい」と願うのならば、「炭素ユニットである我々も当然創造主を知りたいと願うのではないか」というようなことを考えていた。 宗教的な見地からも深みや面白みを感じられる。 深く考えれば、「人間と機械との違い」「人間とは何か」「人類の進化」という点まで広がる。 機械とは異なり、人間は非論理的であり、感情的であり、愚かなのかもしれないが、そうだからこそ、色々と何かを想像・創造して、幸福に生きることができるのかもしれない。 エンタープライズ号のクルー同士の微妙な関係も面白い。 はっきりしたことは本作では何も描かれていないが、「過去に何かがあったのだろう」と想像力が膨らむような作りになっている。 カーク船長も完璧な人間ではなく、ある意味では不完全な船長だ。 “機械”ではないので、不完全であることは当然なのかもしれない。 ただ、なかなか始まらないのでDVDが壊れているのかと思ったくらいに映画がスタートしないのは驚き。 いよいよ始まっても、序盤のスローな展開は異常。 エンタープライズ号にはそれほど興味が全くないので、ただの宇宙船を延々と映されたシーンが続いた際(ファンにとっては最高のサービスだと思うが)には、「これは絶対に寝るな」と思ったが、序盤を乗り切れば、あっという間にこの世界観に引きずり込まされる。 宇宙の神秘というか、宇宙の奥深さを感じさせるようにもなっており、ミッション終了後にカーク船長が宇宙に旅立つ前から、無性に「冒険に行きたくなる」ようにもなっている。 ファンが多いのも納得といえるデキといえる。
[DVD(字幕)] 8点(2009-06-14 03:06:20)
8.  スラムドッグ$ミリオネア 《ネタバレ》 
最近には見られなかった直球の映画。クイズという形を借りて、彼の生き様を描き、彼の生き様を通して“夢”や“愛”を手に入れるという単純なハッピーエンドムービーを単純に楽しめことができた。スラムの負け犬でも、諦めなければなんとかなる、思い続ければなんとかなるという“甘い”ストーリーは非常に好みだ。本作は、社会派の映画でもなければ、リアルなインドの実態を描いた映画でもないだろう。ましてや、教養のない人間が、難問のクイズに答えられるはずもない。リアルティのある作品ではないが、そういうことはでうでもよくなるほどの出来栄えだ。 インドが舞台であることが、本作の勝因ともいえる。 この舞台がアメリカや日本だったら、全く面白くはないだろう。 出来すぎたストーリーに嘘っぽさを感じてしまうはずだ。 アメリカにはもはや「アメリカンドリーム」はないかもしれないが、発展を続けているインドには「アメリカンドリーム」があると感じさせるパワーやパッションの溢れる街であるというように魅力的に描かれている。 また、クイズを絡めて、一人の男の生き様を語るというのは素晴らしいアイディアだ。 普通に描けば、大して面白くないストーリーでも、この手法によりダイナミックさが加わった。ストーリーに飽きることがなく、画面に集中させる効果も非常に高いといえる。 個人的には、最後の問題をジャマールは回答できなくてもよかったのではないかと思う。ジャマールにとっては、“愛”さえ手に入れれば、“金”などどうでもいいもののはずだ。「三銃士」の三番目と命名したラティカ自身が分からない「三銃士」の問題を間違えるというのも面白い運命とも思ったが。もともとゼロからのスタートなのだから、ゼロの状態からジャマールとラティカがスタートする方がもっとイマジネーションは膨らむと思う。あの二人にはむしろ“大金”は不要ではないか。 さらにレベルの高い演出をするのならば、司会者が正解かどうか答える瞬間に画面が切り替わり、駅のシーンへ移行してもよかったかもしれない。彼が正解できたかどうかを、観客の心に委ねてもよいだろう。 ただ、最後のエンドクレジット中のダンスはややマイナスといわざるを得ない。 ダニー・ボイルはインド的なものを取り入れようとしたのかもしれないが、せっかく気持ちよくさせてもらったのに、あれで“夢”から一気に冷めてしまった。
[映画館(字幕)] 9点(2009-05-10 21:44:04)(良:2票)
9.  300 <スリーハンドレッド> 《ネタバレ》 
歴史や背景に関する知識はゼロで鑑賞したが、知識があまり必要な作品ではなさそうだ。史実と異なるかもしれないが、そういうことはあまり気にならない。 史実をきちんと描く必要のある映画もあるが、作品を通して“何を描くか”“何を伝えたいか”ということが大事だ。『職業:戦士』という言葉が心に残るほど“スパルタ”の精神が上手く描かれている。無駄に死ぬよりも、何かのために戦って死ぬために彼らは自らを鍛え上げている。国のため、愛するもののため、仲間のため、自由のために、戦場で死ぬことこそ、名誉であり誇りであるという精神は見事であり、どことなく“侍魂”にも通じるところがある。 また、ザック・スナイダーの恐ろしいほどのセンスの良さも光る作品に仕上がっている。素人でもプロでも、この仕事を真似できるものはいないといえる。彼だからこそ出来る映像表現ともいえそうだ。 素晴らしいグラフィックだけではなく、見応えのあるバトルも見事である。 しかし、バトルにはやや飽きてしまったところもあった。 サイやゾウ、爆弾魔術師軍団、停戦交渉ありと、手を替え品を替えたバトルが展開されているものの、基本的にはワンパターンというところがある。 レオニダスを苦しめた中ボス級の強敵が一人いたものの、こういった特異なキャラクターをもっと出すとさらに面白くなったかもしれない。 また、隊長の息子をドラマもなく単に無駄死にさせたことはもったいないところだ。 父親や王を護って死ぬというようなドラマや、楽勝のための慢心さが生んだ心の隙というような展開でもよく、何か物足りない展開だった。 圧倒的なグラフィックで、ただただぶった切るシーンで圧倒するというのも分かるが、バトルの中にもう少し“ドラマ”が必要だったのではないか。 男の映画ではあるが、王妃を通して女の戦いもきちんと描かれている。 スパルタは男だけではなく、女も強いということを描きたかったのだろう。 しかし、こちらも完全にはオチておらず、裏切り者の政治家を刺し殺すくらいならば、交渉する必要があったのかとは思うが、彼らスパルタ人の愚直さを表しているのかもしれない。 自分のためというよりも、自分を犠牲にして何かを守るために戦うスパルタ人の気質を表しているようにも感じる。 素晴らしいビジュアルや才能であるが、バトル等においてドラマが不在だったことがマイナスと感じられた作品だ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-04-19 22:30:48)(良:1票)
10.  スカイ・クロラ The Sky Crawlers 《ネタバレ》 
ビジュアルは文句なく、ストーリーも良く、しかも何かを考えさせるようになっており、非常に満足できる作品に仕上がっている。 世界や海外を意識したためか、自分の追求するスタイルを少々捨ててはいるが、自分のコアな部分はきちんと投影されている点は素晴らしい。 自分の世界観を分かりやすく伝えるのもプロの監督の仕事だ。 あまり彼の作品は観たことはないが、やはり押井監督はプロフェッショナルな監督だと感じさせる。 チカラを相当に注いだと思われるビジュアル面では他の追随を許さない圧倒的な美しさには驚かされる。 単に美しいだけではなく、空や雲の空気感・飛んでいるような感覚までをも描きこもうとしている。 ある意味では“芸術”ともいえる領域だ。 キルドレについては、現代の若者をイメージしているのだろうか。 空の多彩な表情とは変わって、能面のような表情が実にいいコントラストになっている。 感情的にならないドライな若者たちを非難しているようには感じない。 現代の若者を上手く捉えており、彼らに非常に分かりやすくメッセージを伝えたと思う。 本作ではキルドレの代わりがいくらでもいるという設定になっているが、現代の若者たちに対して「それでいいのか?」と問うているのではないか。 「オマエらは人形じゃない」「代わりなんていない」「この世界はゲームじゃない」ということを監督は伝えたがっているように感じた。 また、描くことが難解な微妙な部分を上手く演出している点を評価したい。 冷めているようで、ほんの少し熱い部分もある。 感情を表に出さないが、内面には秘めたる部分もある。 諦めているようで、何かを変えようともがいている部分もある。 逃げているようで、立ち向かおうとしている部分もある。 このような微妙な感覚を上手く演出しているのはプロの仕事だ。 菊地凛子の起用の成否の判断は難しいが、恐らく押井監督はギャンブルに出たのではないか。 彼女よりも上手い声優はいくらでもいたと思うが、彼女の下手くそさ(しっくりこない違和感)が良い意味で個性的な味わいが出たような気がした。 栗山千明のように悪くなくても印象の残らないよりも、冒険を犯して印象に残すということに主眼を置いて勝負したと思われる。 菊地凛子は好きではないが、そういう意味においては彼女の起用は当たった。
[映画館(字幕)] 8点(2008-09-04 00:32:56)
11.  スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ 《ネタバレ》 
「スター・ウォーズ」については、それほど詳しくはなく、素人からの目線でレビューしたい。 画像については、それほど違和感がなかったが、実写ではない分、バトルシーンにはどうしても迫力を欠いてしまうところがある。 実写では迫力などでごまかすことができるので飽きずに済むところがあるが、飽きずにもたせるには展開の面白みがなく、短い映画にも関わらず非常に長いと感じられた作品。 また、アニメ作品「クローン大戦」を見ていないと、ヴェントレスという敵キャラクターが分からないので、やや違和感があるのではないか。むしろグリーヴァス将軍の登場を期待していたので、やや拍子抜けしたところがある。 まだまだ続きがありそうだが、ⅡとⅢを繋ぐブリッジストーリーとしては、本作だけでは物足りなさすぎる。 ジャバの息子の誘拐など、子ども騙し的なネタしか描かれていないので、本作を観たとしても、大きなものはあまり得られないと思う。 最初から最後まで、クローンとドロイドがただ無益な撃ち合いをしているという印象しか残らなかった。 一番驚かされたのは、アナキンがパダワンを取っていたということだろう。 ただ、このエピソードも個人的にはあまり好ましいとは思わなかった。 パダワンを持つということは、ジェダイの騎士としてそれなりに責任が増すのであるから、ジェダイを裏切るという最終的な方向とは逆の意味に繋がってしまう。 また、パダワンを持たせるというアイディアは、オビワンとヨーダの考えのようであるので、二人はアナキンのことを一人前と認めている証拠でもある。 一本立ちを認めないオビワンのことをアナキンは憎んでいたはずではなかったか。 パダワンを持ったことでジェダイを憎むような展開になればよかったが、そんな展開にもならなかったので、やはりアナキンにパダワンを持たせる効果がよく分からない。 任務を優先することを第一に考えるジェダイと、ピンチに陥ったパダワンの生命を考えるアナキンとの間に亀裂が生じるという展開にでもなれば、本作にも意義が生じるとは思ったが、結局パダワンが自分の危機を一人で切り抜けるという面白くもない展開になってしまった。 慎重派オビワンと無鉄砲アナキンとのコンビとは違う、無鉄砲コンビの誕生もそれほどすっきりしたものを感じられないのも惜しいところであり、全体的には評価しにくい作品となっている。
[映画館(字幕)] 5点(2008-08-24 22:51:28)(良:1票)
12.  スピード・レーサー 《ネタバレ》 
平日の最終回とはいえ、470人キャパの有楽町の劇場に20人ほどの観客しかいないという惨憺たる光景を目の当たりにするとは思わなかった。 観客の中には『「マッハGOGOGO」懐かしいな』と楽しそうに語っていたおじさんもいたが、自分は生まれてこのかた、元ネタを見たことは一度もなく、元ネタの情報を一切知らずに鑑賞した。 原作を知らず、ゲームもやらないのでこんなことを言っていいのか分からないが、誰も見たこともない世界・映画を構築しようという高い理想を感じられるようにはなっていると思う。 問題点はあるが、製作陣は一切妥協をせず、批判を恐れずに、真摯な姿勢で努力している跡が窺われる。 画面だけ見ていれば、それなりに楽しむことはできるだろう。 ただ、その世界観に上手くハマれず、乗り切れなかったというのが正直なところ。 やや、自分と映画の間に温度差を感じてしまった。 「この人たち、なぜ一生懸命走っているのだろうか?」「この人たち、なぜ戦っているのだろうか?」「主人公、なぜ家を出ようとしているのか?」と感じる冷めた自分が劇場にいた。 なんでもかんでも詰め込もうとして、まとまりが悪くなってしまったのが問題か。 世界観は豊かなのだから、子ども達が楽しめるようにもっと単純でも良かったのではないか。 「レースを金儲けの道具にしている悪い奴を倒す」「レースは八百長ではない」というだけでよく、株価がどうのこうのとか、ビジネスがどうしたとか、買収とか、訳の分からない、どうでもいい背景などは要らない。 余計なことを描きすぎたために、「スピードの兄が自分の身分を隠してまで本当にやりたかったこと」なども上手くは伝わってこず、「家族の繋がり」などの重要なメッセージも伝わりにくくなってしまった。 余計なストーリーだけではなく、余計なキャラクターも多いので、各キャラクターが生殺し状態に陥っている。 本作の描き方では、真田広之、RAINの扱いに合格点を出すことはできないだろう。 肝心のレーサーXですら、あの程度の出番では足りない。 「マトリックス」と同じく世界観を広げすぎたために、上手く収束させることはできなかったようであり、反省が活かされていないようだ。 優れたクリエイターではあるが、もっと単純にまとまりよく物事を伝えることができないと優れたストーリーテラーとはいえない。
[映画館(字幕)] 6点(2008-07-20 00:50:02)
13.  素晴らしき哉、人生!(1946) 《ネタバレ》 
「友人や困っている人を助けましょう」「自分の命を大切にしましょう」とかなり道徳的すぎるところもあるが、さすがに映画史に残る素晴らしい傑作といえる作品だ。 最近の映画のように、あえて難解にしてこねくり回すよりも、ストレートにメッセージを伝えており、非常に分かりやすい。分かりやすい単純なハッピーエンドだからこそ、多くの人の共感を得られやすいのではないか。現代の映画にはない“良さ”を感じられる作品だ。 また、ジョージがそれほど完全な善人というわけでもないのも気に入った。 彼には、自分の夢はあるが、夢が叶わない苛立ちやフラストレーションを常に抱えているのがよく分かる。 困難にぶち当たったときには、子どもや子どもの先生に八つ当たりしたり、物に自分の苛立ちをぶつけたりもする。 ときには、金儲けの誘惑にも負けそうにもなる。 聖人君子のような、現実にはいないだろうという完全なキャラクターではなく、欠点を抱えた、より現実的なキャラクターとしてジョージは存在している。 ジョージは架空の存在というよりも、自分自身の分身のように感じられるので、より共感を覚えやすくなっているのではないか。 そして、天使の存在も意外といい効果を発揮していると思う。 たいていの人間ならば、「人生は過酷なものだ」と分かっているはずだ。 「人生に奇跡など起きる訳がない」とも知っている。 しかし、天使が登場することによって、本作にファンタジックさの色合いが濃くなる。厳しい現実世界ともやや異なる世界であるとイメージ付けることによって、奇跡が起きても、すんなりと受け入れることができるようになっているのではないか。 そして、ファンタジックな世界ではあるものの、相反する現実的な色合いもまた濃いので、身近にも感じることができる。 虚構と現実のバランスが上手く取れた作品である。 現実世界を序盤に描き込み、天使の登場が終盤までズレこんだのも、功を奏している。 天使も全く天使らしくないのも素晴らしいアイディアだ。 全て計算で演出しているのならば、フランク・キャプラは天才といえるだろう。 観る人によっては、甘すぎ、ご都合主義的だと感じるかもしれないが、たとえ夢が叶わなくても、たとえ自分の人生が思い描いたものでなくても、たとえ平凡な人生でも、「自分の人生もそれほど悪くはないのかな」という錯覚に陥らせてくれるパワーのある映画と感じさせる。
[DVD(字幕)] 9点(2008-03-27 00:01:05)
14.  スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師 《ネタバレ》 
面白いとは思うが、期待感があまりにも高すぎたためか、やや不満なところもあった。強引なストーリー展開はミュージカルなので許されるが、ストーリーの膨らみがやや物足りず、さらに感情面に訴えてくる点が少ないような気がした。バートンが意識したのは、ストーリー展開ではなく、ミュージカルそのものだったからだろう。ストーリーを楽しむというよりも、ミュージカルとして視覚的・聴覚的に楽しませることを念頭において製作したものと思われる。 それにしても、バートンの世界観はさすがだ。どっぷりと彼の世界観に浸ることができた。陰湿極まりないが、どこかユーモアがある見事な世界だ。グロいけれども、これは品のあるグロさだ。グロさを極めたものだけが、到達できるグロさだろう。 デュエット構成のミュージカルは見応え・聞き応え十分だ。 メチャクチャ上手いというわけではないが、編集の上手さで盛り上がりのあるデュエットを堪能することができるのは、映画ならではのものか。 ストーリーとして面白いのは、トッドが妻の顔も娘の顔も分からなかったことだろう。 15年間の牢獄の中で、記憶から消えつつあったのは妻や娘の顔であり、克明に記憶に刻まれたのは、判事の顔や役人の顔だったのではないか。 彼は“復讐”に溺れていただけということがよく分かる。 「恋に恋する」という状況があるが、あれに近いものがあったのではないか。 なんのために復讐するのかが、トッドには分からなくなっていたのかもしれない。 復讐することでしか、自分自身をサルベージ(救う)できなかったようだ。 ラベットが「顔を覚えているのか?」と聞いたときに、トッドがつまりながら「髪は黄金色で・・・」と答えていたのが印象的だ。 欲を言えば、もっとトッドの悲哀を感じさせて欲しかったところだ。 “復讐”いう名の魔物に取り憑かれた男の哀しさを十二分には感じることはできなかった。そういった感情をミュージカルで表現せざるを得ないため、通常の映画のようには上手くはいかなかったのかもしれない。 ラストのクダリも少々物足りないのではないか。観客には妻の正体が分かっているために“復讐”に囚われた男の末路の悲劇に深みや衝撃があまりない。 ラストのオチはあれでやむを得ないだろう。贖罪を求めて、自分の死を受け入れるかのように自分の首を少々上げるトッドの姿には、さすがに悲哀は感じられるものとなっている。
[映画館(字幕)] 7点(2008-01-19 23:37:35)
15.  スカーフェイス 《ネタバレ》 
2時間50分という長尺だけれども、その長さをまったく感じさせなかった。トニーモンタナの人生をきっちりと3部に分けて、飽きさせることなく描き切られている。 第一部は「チンピラから成り上がりまで」、第二部は「ボスとして伸し上がり、盛隆を極めた日々」、第三部は「落日」という感じだろうか。きっちりとストーリーが時系列に、かつドラマテッィクに流れていくから、飽きないのだろう。 これらを通じて感じたことは、「チンピラは、金を得て、権力を得て、女を得たとしても、やはりチンピラでしかない。」ということだ。チンピラという言葉は、トニーモンタナには失礼かもしれないいかもしれない。彼はトラみたいな猛獣のような存在かもしれない。決して群れることができず、周囲を信用することもできず、周囲を傷つけることしかできない。そんな孤独で哀しい男の「生き様」がしっかりと描き切られており、アルパチーノが見事に演じきった。まさにトニーモンタナという人間に完全になりきったような演技であった。アルパチーノのベストといってもよいのではないか。 そして、トニーモンタナの変化が痛々しくも描かれている。「びびったら心臓に悪い」と言いつつも、セキュリティを完備した「城」に立て篭もり、「信頼とガッツが自分の取り柄」のようなことも言っていたが、徐々に人々から「信頼」が失われていく。「世界をこの手におさめる」という「夢」を追い求めるものの、自分の「ファミリー」すら手中におさめることはできず、結局「金」に溺れ、「権力」に溺れ、「ヤク」に溺れていき、破滅への道を歩んでいくしかなかった。 トニーは前々から、エルヴィラに対して「子供は好きか?」とか、「自分の子供を生んで欲しい」と言っていたから、幸せな家族に憧れていたのだろう。父親はおらず、自分の母親から罵倒され、非難される。そんなバラバラな家庭生活を送っていたから、「子供」や「妹」、「家族」に対して、固執したのではないか。エルヴィラとの間に子供さえできていれば…彼の生活も少しは変わったのではないだろうか。 映画の評価としては、7点くらいかなあと思うけれども、アルパチーノの演技のおかげで、深みのある素晴らしい映画に仕上がったので、もう1点追加して、8点としたい。
[DVD(字幕)] 8点(2006-09-26 00:01:39)(良:2票)
16.  スネーク・アイズ(1998) 《ネタバレ》 
表面上のストーリーだけを評価すれば5、6点程度の映画なのかもしれないが、デパルマ監督の卓越した手腕を見せつけられたことにより、個人的な評価が随分上がった。8点はちょっと高すぎかもしれないが、デビットコープの大した事のない脚本を高レベルの映画にきちんと仕上げた点を評価したい(コープ脚本の「パニックルーム」を高レベルの映画に仕立てたフィンチャーと同様)。 ポイントはなんといっても、冒頭ちょっと過ぎからの「長回し」だろう。100分未満の映画にも関わらず10分以上をワンショットで撮ってしまう技量には驚愕する。その他にも分割画面により同時並行にストーリーを進め、緊迫感を高めたり、同じ場面を色々な角度から描いて、全貌を徐々に明らかにしたり、仕切られたホテルの部屋の上からカメラを動かしたりと、デパルマ監督の演出が冴えわたった見事な作品に仕上がっている。 ニコラスケイジも役になりきった演技が好印象だ。決してヒーローでもない安っぽい小悪党役が彼にハマッタ感じがする。金への誘惑などに対する「心」の揺れをタバコの手の揺れで表現しているのもベタであるが、分かりやすくてよかった。決して100万ドルの男ではなくて、血塗られた100ドル程度の男(汚れた安っぽい男)なんだよ、あのニコラスケイジの役は。 シニーズも好演している。彼は部下を見捨てて溺死させた過去によって「命」の重みに対して不感症になってしまったのだろう。数万の命のために数名の命を犠牲にしても厭わない「軍人」と、一人の命のために働くことが本分の「警官」の構図が面白い。また、親友同士の駆け引きも見所の一つになっている。 ラストではシニーズは自害し、ニコラスが親の一人勝ち(スネークアイズ)をしたかのように見えたが、実はそうではなかった。一躍「英雄」に祭り上げられるものの、汚職が次々と明らかになり(高級車に乗り回す)、「別荘(刑務所)」に行く破目になる(刑期を終えて真人間になったらジュリアはまた逢いましょうと言ってキスをする)。結局、親の一人勝ち(スネークアイズ)をしたのは、事件の全貌が闇に葬られ、予定通り建設を進めるパウエルであったと、ラストの宝石(赤毛の女が嵌めていたもの)が告げている。そういうオチにするんだったら、もうちょいパウエルにもスポットを当てても良かったかなとは思うが、真の悪人は捕まらないという一種のメタファーなのかもしれない。
[DVD(字幕)] 8点(2006-09-14 21:13:41)(良:1票)
17.  スーパーマン リターンズ
約20年ぶりに復活したシリーズ最新作は、続編でありながら、原点回帰のリメイク的な内容にもなっている面白い造りだ。今まで観た事がない人でも十分楽しめる内容にはなっているが、「Ⅰ」とリンク(マーロンブランドの重要なセリフ等)する部分もあるので、事前に「Ⅰ」だけでも観ておくとより一層楽しめるだろう。 【評価とテーマ】なかなか評価は難しい。「なぜスーパーマンが必要なのか」というテーマを相当ねちっこく、かつ丁寧に創りこんだため、完成度は高く、スーパーマンに対する深い愛情も感じられる良作というジャッジもできるが、2時間30分という長尺と派手なバトルがあるわけでもないストーリーとのバランスを踏まえると「長い・飽きる・くどい」といった評価も聞こえてきそうだ。「初代」に思い入れのある人には高評価で迎えられると思うが、最終的にはあまり高い平均点は期待できないかもしれない。 【ブランドンラウスが演じるスーパーマンについて】見た目や雰囲気はクリストファーリーブを彷彿とさせる見事なチョイスかもしれない。しかし、肝心の演技ができるかどうかは別だ。彼のスーパーマンは「表情」が語っていない。鉄火面のような無表情、CGのような無機質さを感じる。「人類に対する慈悲深い無償の愛」が根底にあるのは分かるが、「表情が豊かではない」→「感情が伝わらない」→「行動に対して共感できない」→「さっきから同じことの繰り返しじゃないか」という思考が延々とループしてしまった。もっと人間くささを出してもよかったように思える。 【ケヴィンスペイシーが演じるレックスルーサーについて】「セブン」のようなゾクゾクするような悪役を期待していたが、やや魅力を欠いている。好意的な評価をしても初代のジーンハックマンと同レベルかなという印象。もっとはじけてもいいと感じたが、本作のテーマを踏まえて、キャラクターとしての存在感を抑えたようにもみえる。本シリーズは、悪役が目玉となる「バットマン」とは根本的に異なり、あくまでも主役はスーパーマンという方針なのかもしれない。 【その他】幼年期のジャンプシーンは「スパイダーマン」や「ハルク」、着地時には「ミッションインポッシブルⅠ」を思い出した。ルーサーの出獄理由は「ダーティハリーⅠ」と似ているし、「タイタニック」のようなシーンもある。パクリではなくサービス的な意味合いでなかなかユニークと感じた。
[試写会(字幕)] 7点(2006-08-02 21:01:38)(良:2票)
18.  スーパーマンIII/電子の要塞 《ネタバレ》 
回を重ねるごとにどんどん詰まらなくなっていくこのシリーズ。80年代にも関わらず、このクオリティとストーリーのメチャクチャさはひど過ぎやしないか。Ⅰ・Ⅱでは上手く処理していたワイヤーも本作ではあからさまに見せているのもなんとかして欲しかった。 ストーリーとしては、自分の中の悪意が知らぬ間に増幅され、悪意に支配されるというのはヒーロー物にありがちで面白い展開なんだけど、もう少し前フリや、その解決方法に工夫が必要だろう。例えば、なんでもかんでも人類がスーパーマンに頼りきりになり自分たちのチカラで物事を解決しなくなったり、少しでも救助に遅れ被害が拡大したりしたら、全てスーパーマンの責任にするといった人間特有の利己的で自己中心的な部分にスーパーマンが少し辟易するような場面を描くと、いい前フリなるのではないか。 また、善のスーパーマンと悪のスーパーマンがいきなり二つに分かれて殴りあうというのは、なかなかお目にかかれないシュールな展開なんだけど、普通に戦って勝つというのは脚本としては最低だ。例えば、人類のスーパーマンへの過度な期待がスーパーマンに悪意が芽生え、クリプトナイトでそれが増幅される。そして悪意に支配されたスーパーマンは悪事に手を染めていき、人類から一旦見離されるが、自分の中の善意がまだ心の中に残っており分裂し、善のスーパーマンと悪のスーパーマンが公衆の面前で決闘する。公衆の面前ということが重要だろう。善のスーパーマンはやはりパワー不足で、悪のスーパーマンに敗れそうになるけれども、スーパーマンが人類へ対してしてきた行為への感謝の気持ちを思い出し、人類が悪のスーパーマンへ攻撃しようとする。人々からの支援や期待を受けて、悪のスーパーマンを打ち破るという方がより展開が引き締まり、悪意の芽生えとヒーローの重要性という前フリともリンクしてくると思う。そうしないと数々の悪事は帳消しにはならないだろう。 さらに、少々不可解だったのは、コンピューター使いの黒人が、せっかくスーパーマンの世話してくれた就職口を断るところ。いったいどういうつもりなのかを考えてみたけど、そろそろ自分のチカラで就職口を探してみたかったか、それとももうコンピューター関係の仕事はしたくないかのどちらかかと思うけど、ちょっと分かりづらい。どうせならスーパーマンがいるときに断れば少し意図が明確になったんだけど。
[DVD(字幕)] 3点(2006-07-31 23:51:50)
19.  スーパーマンII/冒険篇 《ネタバレ》 
ライバル設定は面白いけど、結末がすっきりしなかった。 当時の技術では映像化できなかったのかもしれないけど、もう少しちゃんとしたバトルを展開させないと、このせっかくの設定がもったいないだろう。これだと、スーパーマンはただの騙まし討ちで勝ったとしか思えず、結局あまり強くはないんだなとしか感じない。そして、ゾッド将軍とデカイ無口な男は事故のような形で死んでいったが、チカラを失ったもう一人の女性をロイスがぶん殴って奈落の底に叩き込むというのは、ただの殺人であり、興ざめもいいところだ。ロイスはスーパーマンの正体を明らかにしたいがために川に飛び込んだり、エッフェル塔に登ったり、勝手に悩んで一睡もできずに泣き崩れたりと、やることの度を越えている。そりゃあ、記憶を消されて、次作で別の女性に走られても文句はいえないよね。 ラストであの例のレストランに戻るのは面白いが、チカラがなければ何もできないという描き方は最低だ。 いったい、彼が一旦「人間」になって何を学んだのかがまるで見えてこない。暴力と金だけで解決するというのが、彼が「人間」になって学んだことなのか。 チカラを失って初めて、チカラを誇示したり、暴力だけで全てが解決できるわけではないということに気づいて欲しかった。 例え、チカラが戻ったとしても、チカラで対抗するのではなく、大男に殴られても殴られても、こちらからは一切手を出さない。相手に対して暴力を振るっても意味がないことを諭す必要があったのではないか。そして、殴られても殴られても倒れない彼の姿を周囲の人々に見せつけて、彼らを奮い立たせることによって、暴力という手段を取らずに大男に謝罪させ改心させるということも必要だったのではないか。あれでは、大男はまたあのレストランに来て、これまで以上にひどいことをするだろう。 「せっかく修理したのに」と叫ぶ店の主人をよそに、私怨込みでボコボコにし、店内を必要以上にメチャクチャにした挙句、金を放り投げて立ち去る姿にヒーローの資格はあるのだろうか。
[DVD(字幕)] 4点(2006-07-31 23:21:06)(良:1票)
20.  スーパーマン(1978) 《ネタバレ》 
前半・中盤は、結構丁寧に創っているなという好印象だったけど、あのラストにはさすがに言葉が出なかった。時代背景が違うとはいえ、この脚本をみて常識あるワーナーのお偉いさんとか誰も何も言わなかったのかな。 あんなメチャクチャなラストで物事を解決するのではなく、個人的には「失った命は結局救えない」というラストでも良いのではないかと思われる。 ヒーローはなんでもできると思われがちだが、決して神というわけではなく、できることには限界がある。だからこそ、救うことができたはずなのに救えなかったという苦悩や苦しみが産まれ、かけがえのないものを失った悲しみや、限りあるものの美しさが描かれるのではないか。 このラストでは、「人類の歴史を変えるな」という父親の教えを無視する上に、自然の摂理に反する行為である。子ども達にも影響を与えるはずなのに、物事はすべて駄々をこねれば解決できるという子どもじみた発想でしかなく、ヒーローとして、また大人としての成長が感じられないと思う。 ところで、このシリーズのⅠ~Ⅲを通してみたけど、スーパーマンへの変身のシーンで、Ⅰで電話ボックスをちょっとはチェックするもののボックスタイプではなく諦めるシーンがあっただけで、結局変身の際にほとんど電話ボックスを使うことがなかったのには驚いた(Ⅳは未見)。Ⅰでは自動回転ドア、Ⅱでは証明写真用のボックス、Ⅲではクルマの中だったかな。その他には、誰もいないところで走りながらとか、ビルから飛び降りながらとかで、電話ボックスではなくて結構いろいろな場所や方法を利用していたのは、新たな発見だった。
[DVD(字幕)] 5点(2006-07-31 23:05:41)
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