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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1874
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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1.  スターシップ・トゥルーパーズ 《ネタバレ》 
オランダが生んだ変態映画監督の巨匠バーホーベンが、そのもてる限りの才能と資金力とCG技術を駆使して作りあげた圧倒的サービス過剰映画。いやー、もう素晴らしいです!!だってこれ一本で、SFアクション・スプラッタホラー・戦争・学園青春ドラマ・ラブストーリー・モンスターパニック・お笑い映画を楽しめるんだから。凡百の映画監督はこんなに馬鹿みたいにいろいろ詰め込んだ映画なんて作れないですよ(作らない、かもだけど笑)。そして、そんな民主主義が崩壊したシニカルな世界に圧倒的な物量作戦で攻め込んでくる昆虫軍団!湯水のように撒き散らされる血しぶきと肉片!沸点マックス寸前の暑苦しい海兵隊の皆様!何処かで勝手にやってくれってくらいドロドロなラブストーリー!もうバーホーベンが確信犯的に創りあげた、中2病映画界にいまだ燦然と輝く、永遠の大傑作だ!!
[DVD(字幕)] 9点(2013-04-29 23:27:17)
2.  300 <スリーハンドレッド> 《ネタバレ》 
この映画、確かに中身がない。史実を基にしたと言いながら、はなからリアリティとは無縁のストーリー展開に、あり得ないような漫画みたいなアクションシーンの数々(アメコミが原作だから当然かもだが)。それでも、この超が幾つも付くぐらいのスーパーマッチョな男たちが、その煮え滾るような男汁を無尽蔵に周囲に撒き散らしながら、スクリーン狭しと暴れまくる姿を暑苦しいまでに映像化してみせた、監督のその中2病的情熱に意味を見出さずにはいられない。やっぱり、どんなくだらないことでも、信念を持ってとことんまで極めれば、もしかしたら素晴らしいものが仕上がるかもしれないという、奇跡のようなお馬鹿映画の傑作だろう、これは。 普通の映画監督が撮っていれば、目も当てられないくらい酷いものになっていたであろう。ザック・スナイダー、大した奴だ。
[DVD(字幕)] 9点(2012-09-06 19:27:25)
3.  ストーリー・オブ・マイ・ワイフ 《ネタバレ》 
1920年代、マルタ島。大型貨物船の船長を務めるヤコブは、世界の海を航海するベテラン船乗りだ。一度海に出れば長く陸には戻らず、常に危険と隣り合わせの彼は、最近何か物足りないものを感じていた。それはきっと心から守りたいと思える存在がいないからだ――。そう気づいたヤコブは、久しぶりの休暇で訪れた街のカフェで友人とある賭けに出る。「誰であろうと、次にこの店に入って来た女性と結婚する」。じっと入り口を見守っていたヤコブは、その人が入って来るのを見た瞬間、自らの運命を確信するのだった。すぐさま声を掛け、結婚を申し込むヤコブ。意外にもそのリジーと名乗る女性は、何のためらいもなく彼の提案を受け入れ、一週間後には本当に結婚してしまう。そうして始まった2人の新婚生活、もちろんお互いのそれまでの人生も人柄も分からない。それでもヤコブとリジーは情熱と欲望のおもむくまま、お互いに満ち足りた生活を謳歌するようになる。だが、そんな2人の充実した毎日に謎めいたリジーの男友達が現れたことから……。これはそんな「私の妻の物語」であり、船乗りヤコブと七つの教訓の物語。監督は前作で男と女のままならなさを、センスあふれる映像と精神と身体性の相克という独自の視点で描いたイルディコー・エニェディ。この監督の知的で考え抜かれた脚本と何処を切り取っても絵になる美しい映像、そして品のいい音楽は相変わらず健在。3時間弱という長尺ながら、最後まで惹き込まれて観ることが出来ました。なによりヒロインとなるレア・セドゥの存在感と言ったら!!決してそこまで美人と言う訳ではないけれど、男を惑わす妖艶な魅力が半端じゃない。物憂い表情で常にこちらを見下すような態度を取る彼女は、この時代の雰囲気も相俟って、何処か谷崎潤一郎『痴人の愛』のナオミを髣髴とさせるファム・ファタルぶり。ちょうどいい肉付きの身体などなんとも官能的で、彼女に身も心も溺れてしまう主人公の気持ちは同じ男として痛いほど分かる(笑)。愛と嫉妬が渦巻く2人の心理劇も常に主導権が入れ替わる濃密なもので、一度でも夫婦となった人ならどれも身につまされるものばかり(と言っても僕は一度も結婚したことないんですけどね笑)。この2人以外のエピソードの見せ方も巧く、夫を惑わすいけ好かないブルジョア息子や街のしがないチンピラから裏社会で徐々にのし上がってゆく悪友の存在など誰も彼もちゃんと印象深い。中盤の豪華客船での火事のシーンなんてそんじょそこらのパニック映画よりハラハラしちゃいました。愛してぶつかりあって傷ついて、身も心もボロボロになりながらもそれでもまた愛して――。そうして迎える2人の結末。ラストシーンはなんとも切なく、自分はしばらくその心地良い余韻に浸っておりました。8点!
[DVD(字幕)] 8点(2023-05-13 08:09:41)
4.  スティルウォーター 《ネタバレ》 
彼の名は、ビル・ベイカー。オクラホマ州スティルウォーターで長年石油採掘業に従事し、現在は建設関係の日雇い仕事で食いつなぐ平凡な男だ。妻は何年も前に亡くなり、今は狭い借家で一人暮らし。唯一の肉親である一人娘のアリソンは現在フランスにいて、もう何年もアメリカには帰ってきていない。何故なら、アリソンは今、マルセイユの刑務所に服役中だから――。そう、彼女は当時恋人だった女性を殺害した罪で捕まり、刑務所でもう5年も過ごしているのだ。娘と久しぶりの面会を果たすため、この地を訪れたビル。面会室で再会したアリソンは、彼にとあるお願いをする。それは彼女の無実を証明できるかもしれない新証人を見つけてほしいというものだった。「分かった。父さんが何とかする」と約束し、娘と別れたビル。だが、担当弁護士に話してもまともに取り合ってくれない。そればかりか、ビルはマルセイユの土地勘もなくフランス語もろくに話せない。途方に暮れるビルは、偶然知り合った幼い娘を女手一つで育てる舞台女優ヴィルジニーの手を借り、マルセイユの街を奔走するのだが……。監督は、前作でアカデミー賞の栄誉に輝くトム・マッカーシー。いかにも彼らしい丁寧な演出と考え抜かれた脚本の力が光る佳品に仕上がってましたね、これ。ほとんど説明もないまま、この主人公の父親がフランスの娘へと会いにゆく旅路を淡々と描いた一連の冒頭シーン。留学中の娘に会いにいくのかと思いきや、どうやら娘は刑務所にいるらしいと段々と分かってくるところから、もう観客の心を掴むことに成功しています。セリフの一つ一つが全て意味をなし、編集や音楽の使い方もばっちり、のちに重要な登場人物となるシングルマザーの親子との出会いもとても自然で気が付いたら物語の世界にどっぷりと浸っている自分が居ました。この父親が娘の無実を晴らすために奮闘するストーリーかと思わせながら、後半、主人公を助けてくれるシングルマザーとの大人の恋愛ドラマへと変貌する手際の良さも見事。マット・デイモンをはじめとする役者陣の熱演も素晴らしく、特に9歳とは思えぬ演技を披露したマヤ役の女の子。この子の表情豊かな存在感がこのともすれば重くなりがちな物語にいいアクセントを与えてくれています。彼女と、刑務所から仮出所してきたアリソンが初対面するシーンは何とも微笑ましく、その後、刑務所に戻ったアリソンの行為には思わず悔し泣きしてしまいました。そして、大事な人と出会い、新たな生活を手に入れたと思われた主人公がそれでも犯してしまう罪。駄目だと分かっているのに、大切なものを失うかもしれないのに、それでも止められなかった彼には思わず共感。人生は後悔の連続だが、それでも大事な人のために生きていこうと決意するビルの最後の表情が切ない余韻を残してくれます。なかなか見応えのあるヒューマン・ドラマの秀作でありました。
[DVD(字幕)] 8点(2022-08-24 06:44:02)
5.  Swallow スワロウ 《ネタバレ》 
超一流企業の御曹司と結婚し、誰もがうらやむような生活を手に入れた専業主婦ハンター。ニューヨーク郊外の一等地に建つ豪邸に住み、自由気ままな日々を過ごしている彼女は、最近妊娠が判明し、これからますます幸せになることが約束されていた。だが、横柄でプライド高い夫は常に仕事が第一で妻の話などろくに聞こうとしない。何かと干渉してくる夫の両親も結局、産まれてくる子供にしか興味がない。そんな実は孤独で満たされない毎日を過ごしていたハンターはある日、ふとした好奇心からガラス玉を吞み込んでみるのだった――。次の日、トイレでようを足してみると、そこには昨日吞み込んだガラス玉が何事もなかったように存在していた。何かをやり遂げたような充実感を味わったハンターは、その日から次々と異物を呑み込んでゆく。画鋲、口紅、小さな置物、そして電池……。当然、それは夫とその両親にも知られることとなり、ハンターは無理やりカウンセリングと24時間監視する介護人をつけられてしまう。それでもハンターは、何かを呑み込みたいという衝動を抑えることが出来なかった……。異食症という心の病に侵された専業主婦の孤独な日常を美しい映像で綴ったヒューマン・ドラマ。今回この作品で異食症なるものをはじめて知りましたが、いやー、ちょっときつかったですね~。ビー玉や安全ピンまではまだ耐えられましたが、剝き出しの画鋲を呑み込んじゃうシーンとそれをトイレで排出するシーンはさすがに痛々しく観てられませんでした。血がべちゃっと付いてる便器の中に手を突っ込んで画鋲を探すとか正直、「誰得やねん、この映像!」と思わず停止ボタンを押しそうになっちゃいましたわ。でも、色彩感覚あふれる映像や知的でおしゃれな音楽の使い方など、全編にわたって監督のセンスをビシバシ感じるのでついつい観続けることに。すると中盤、主人公の衝撃の過去が明らかにされ、そのトラウマからこのような行動に走ったのだと分かると俄然、作品世界に惹き込まれている自分がいました。なるほど、これは男の身勝手な欲望に振り回される女たちの切実な哀しみに寄り添った物語だったのですね。女は子供を産む機械だと思っているような男たちへの一種の復讐として異物を呑み込んでしまう主人公。子供なんか産みたくないのに男のために仕方なく子宮を差し出した自分への罰という側面もあるのだろう。最後、様々な女性たちが行きかう女子トイレの映像で終わるのも良いセンスしている。そう、女はそれぞれに男が知らない悩みを抱えているのだ。とは言え、生理的に受け付けないシーンが幾つかあったので自分はもう一度観るのはちょっときついです。この監督の才能は確かだと思うので、次は違うテーマの作品を観てみたいですね。
[DVD(字幕)] 8点(2022-05-04 05:45:56)
6.  すべてが変わった日 《ネタバレ》 
マーガレットとジョージは長年連れ添った熟年夫婦。もはや老境に差し掛かろうかという歳になった彼らは、人生の良い時も悪い時もともに乗り越えてきた。中でも一番辛かったのは、結婚し赤ん坊が生まれたばかりだった一人息子が、乗馬中の事故でこの世を去ってしまったこと。それでも遺された孫だけを生きがいにこれまで頑張ってこれた。そんな孫の母親であるローナが、この度再婚することに。「大丈夫、二人の新居はすぐ近くの町だし、いつでも会いに行ける」――。そう自分に言い聞かせるマーガレットだったが、ある日、可愛い孫に手を挙げる義父の姿を目撃してしまうのだった。さらには、何の断りもなくローナが義父の実家へと引っ越してしまう。いやな予感に押しつぶされそうになるマーガレット。居ても立ってもいられなくなった彼女は、元保安官であるジョージに孫を探して連れ戻そうと提案するのだった。義父の実家がノースダコタにあるという情報のみを頼りにオンボロ車で旅立つ夫婦だったが…。息子を亡くし失意の中に生きてきた初老の夫婦が、連れ去られた孫を探して旅する姿を描いたロード・ムービー。名優ダイアン・レインとケビン・コスナーがそんな長年連れ添った夫婦役を演じているということで今回鑑賞してみました。とにかくこの二人の、本当に夫婦としてずっと暮らしてきたんじゃないかとしか思えないくらい自然な姿にやられちゃいました。もはや人生の終わりが見えてきただろう二人の枯れた佇まいがとてもいい。そんな夫婦が古い車で旅する前半部分は何とものんびりしていて、でも息子を亡くしたという哀しみも充分に伝わり、上質のロード・ムービーを観ているようでした。ところが後半、孫を強引に家へと連れてきた義父家族が登場してから作品の空気ががらりと変わります。特にこの家族を精神的に支配するお祖母ちゃんの強烈な存在感!次に何をするか分からない不気味な言動がすんごく怖い。でも、こういうきっついおばさんって結構居るよねと思わせるところがまた巧いです。物語はここから、明らかに虐待を受けているだろう孫とその母親を主人公夫婦がどうにかして救い出そうともがく展開になってゆきます。この脚本も良く出来ている。血縁的には孫にあたるのだけど、息子が死んで母親が再婚したのだから法律上は赤の他人。客観的に見れば、明らかにこの主人公の方が誘拐犯となってしまう。ここら辺、何とも歯痒い。そんな八方塞がりの状況を打開するために夫婦が最後に取った行動……。きっと孫を救うにはこの方法しかなかったのだと思うと、何とも言えない切ない余韻を残してくれます。観終わった後、「良い映画を観たなぁ」としみじみ思える良品でありました。
[DVD(字幕)] 8点(2022-03-29 02:02:41)
7.  スケアリーストーリーズ 怖い本 《ネタバレ》 
ホラー好きで学校でも少し浮いた存在であるティーンエイジャー、ステラ。ハロウィンの夜、同じくクラスのはみ出し者の男の子たちと街へと繰り出した彼女は、何かと噂の絶えない町外れの廃墟へとやって来る。そこはおおよそ100年前、家族から監禁された末に自殺した女の子サラが、何人もの子供たちに自作の物語を聴かせた挙句残虐な方法で殺したという恐ろしい言い伝えが残っているのだ。鍵を外し、興味本位で中へと侵入した彼女たちは、そのサラが監禁されていたという秘密の地下室を発見する。そして、そこでサラが殺した子供たちの血で書いたと思しき本を見つけるのだった。ホラー好きのステラは、思わずその本を家へと持ち帰ってしまう。だが、彼女は知らなかった。そこにはいまだ恐ろしい物語が書き継がれていて、そこでつぐまれた物語は現実になってしまうことを――。全米であまりの恐ろしさから図書館へと置くことに論議が巻き起こったという児童書を映画化した本作、制作を務めるのがあのギレルモ・デル・トロと言うことで今回鑑賞してみました。しかも監督は前回、『ジェーン・ドゥの解剖』と言うフェティッシュ・ホラーの快作を撮ったアンドレ・ウーヴレダル。この二人がタッグを組んだというなら、もう観ないわけにはいきますまい。とにかく特徴的なのは、ホラー描写の禍々しさに容赦のないところ。日本的なじわじわ来る怖さとは正反対の、もういちいち人の生理的な部分を逆撫でする描写のてんこ盛り。最初に出てくるかかしのお化けの顔に毎回ゴキブリが這いずり回っていたり、仲間の男の子が食べたシチューの具に人間の足の指が入っていたり、可愛い女の子のニキビから大量の蜘蛛が飛び出してきたり……。いったいどうやったらこんな嫌なエピソードばかり思いつけるんですかね(笑)。極めつけは、廊下の向こうからゆっくりとやって来る太った女のお化け。もうこいつの気持ち悪ーい外見なんて夢に出てきそうなほどです。うん、確かにこれは子供が観たらトラウマになりますわ。肝心のストーリーの方も無駄を削ぎ落したシンプルなもので、最後まで小気味よく観られて大変グッド。ベトナム戦争や移民への偏見と言う社会問題へとさらりと目を向ける視点の幅広さもポイント高いです。主人公が最後に迷い込むことになる、サラが住んでいた洋館のおどろおどろしい雰囲気や彼女の悲劇的な最期なんていかにもデル・トロ的ですね。いやー、なかなか面白かった。やんちゃ盛りのお子ちゃまへの教育用ビデオとしても最適です(笑)。
[DVD(字幕)] 8点(2020-08-27 19:16:17)
8.  スポットライト 世紀のスクープ 《ネタバレ》 
カトリック教会の神父による児童への性的虐待事件――。疑惑を摑んだボストングローブ紙の記者ロビーは独自に調査を開始する。事件に関わった弁護士、金銭的リスクを恐れてやむなく示談に応じた被害者たち、地道な活動を続ける被害者支援団体、多くの関係者に取材を重ねていくうちにやがて、とても信じられないような驚愕の事実が明らかとなってくる。児童への性的虐待を繰り返していた神父の数はボストンだけで約90人にものぼり、この教区を統括していた枢機卿も事実を把握していながら黙殺していたかもしれないのだ。「この件は必ず公にしなければならない。被害者のためにも…」。ロビーをはじめとするグローブ紙の4人の記者たちは、自らの生活を犠牲にして追及の手を深めていくのだったが…。強大な権力を有するカトリック教会内で明らかにされた一大スキャンダル。本作は、そんな忌まわしい事件の真相を決死の覚悟で追った記者たちの姿を実話を基にして描いた社会派ドラマだ。非常に地味な作品である。扱っている事件こそスキャンダラスではあるものの、ドラマの焦点はそこに絞られることなく、あくまでその後に起こった出来事をただ淡々と描写してゆくのみ。主人公をはじめとする記者たちにも特別な個性があるわけでもなく、魂を揺さぶるようなドラマティックな出来事が起こるわけでもない。ただひたすら地道に取材を重ね、隠された真実を明らかにしようという記者たちの姿がそこにあるだけだ。だが、これこそがより多くの人に伝えるべき本当の真実ではなかろうか。世の中には理不尽な出来事や人間の強欲や悪意が満ち溢れ、その陰で犠牲とならざるを得ない社会的弱者が大勢いる。でも、それだけではない。彼らのような人間もまた社会には――少数かもしれないが――存在するのだ。社会の片隅で誰にも気づかれず声にならない声で泣き続けている人々。そして見返りなど何も期待せず彼らを救おうとあらゆる手段を講じようとする人々。彼らの声に耳を澄ませることもまた映画の役割の一つだろう。なかなかの力作と言っていい。地味な作品ながら本作にアカデミー作品賞を与えたハリウッドもまだまだ捨てたもんじゃない。
[DVD(字幕)] 8点(2017-06-30 00:20:39)(良:1票)
9.  スノーピアサー 《ネタバレ》 
地球温暖化を阻止するために全世界の上空に散布された人工冷却物質CW‐7の暴走により、超氷河期を迎えてしまった未来の地球。全ての地表は硬い氷と冷たい雪に覆われ、全生物が瞬く間に死滅するなか、生き残った一握りの人類は、永久機関を搭載し世界中に張り巡らせたレールの上を永遠に走り続ける高速列車〝スノーピアサー〟へと乗り込み、目的地を見失ったまま17年もの間走り続けていた。そして、そこは列車の開発者であるウィルフォード氏を頂点とする厳格な格差社会でもあったのだった――。最後尾車両で虫けらのような生活を強いられていたカーティスは、ある日、そんな理不尽な列車内の秩序を変えるため、とある計画を実行に移すのだった。皆で一致団結して叛乱を起こし、列車内のセキュリティを開発したという男を救い出すと、エンジンがある先頭車両をただひたすら目指す彼ら。だが、車両を進むたびに、カーティスたちは予想だにしなかった驚愕の事実を目の当たりにしてゆくのだった…。予告編を観て、「なんだか変な設定の映画だなぁ」くらいの予備知識だけで今回鑑賞してみたのだけど、予想外に面白かったっすね、これ。いやー、この監督さん、僕の勝手な予想だけど若いころのテリー・ギリアムが大好きなんだろうね(だって、最後尾の長老の名前はギリアムだし、「未来世紀ブラジル」へのリスペクトな映像がいっぱいあるし)。破綻寸前のぎりぎりで成立している荒唐無稽な設定と、列車内で濃密に構築される摩訶不思議な世界観、アクの強い個性豊かなキャラクターたち、グロと美しさが絶妙のバランスで同居しあう美麗な映像…。ギリアム・ラブな僕としては、そんな本作の溢れんばかりの魅力に最後まで酔いしれることが出来ました。それに、ちゃんとこの監督独自の美学のようなものも随処に感じられて、久し振りに次作が楽しみな才能に出合えたように思います。このポン・ジュノって人、韓国で活躍されていた方なんですね。普段、韓国映画ってまったく観ないのだけど、彼の過去の作品もあらためて観てみようかなぁなんて思ってみたり。取り敢えず、なかなかアクが強い(ゴキブリ羊羹の製造過程なんてヒェェ~!って感じでしたッッ笑)ので、観る人を選ぶ映画だとは思うけど、僕のようにギリアム好きな人にとっては充分楽しめると思います。うん、8点!
[DVD(字幕)] 8点(2014-10-26 20:20:42)
10.  スタンド・バイ・ミー 《ネタバレ》 
初めてこの映画を観たのは、中学生になってしばらく経ったころ。なので、この主人公たちの年代と思いっ切りかぶってしまい、思わず感情移入して泣いてしまったのを覚えている。少年たちが思春期に入って大人への階段の一歩目を踏み出すときに、誰もが感じるあの普遍的な切なさが胸に染みる。世界が自分が思っていたより圧倒的に広く、そして自分ではどうしようも出来ない理不尽な現実があることを身を持って知ってしまったあと、今まで何も悩むことなく皆で楽しく遊んでいられた昨日の世界にはもう帰ることが出来ないんだ。僕たちは、これから嫌でも大人になっていくしかないんだ。タイトルにもなっている楽曲がそんなテーマととてもよくマッチしていて、その郷愁感がとっても切なくて、大人になった今でも、好きです、この作品。
[DVD(字幕)] 8点(2013-05-13 19:30:00)
11.  スラムドッグ$ミリオネア 《ネタバレ》 
冒頭の、インドのスラム街を少年たちが疾走していく軽やかなシーンからあの『トレインスポッティング』の冒頭を思い出してワクワク感が止まらず。この監督はどうしようもない悲惨な世界を、軽快に疾走してみせる若者の姿を描かせたら右にでるものは居ないですね。インドのスラム街で横行する陰惨な現実(もっとお金を恵んでもらうためにスプーンで浮浪児の目を潰す大人の姿が印象的です)のなか、主人公は持ち前の知性と運の良さで鮮やかに這い上がっていきます。とっても爽快でした。音楽もグット!!
[DVD(字幕)] 8点(2013-04-20 19:52:30)
12.  スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師 《ネタバレ》 
舞台は19世紀末、硬い石畳に覆われまるで陰鬱とした空気をどんよりと閉じ込めてしまったかのような街、ロンドン。悪徳判事に妻と娘を奪われ、絶海に追放されてしまったスウィーニー・トッドが、血塗られた復讐を果たすために地獄の底からこの街に帰ってきた…。一時期、低迷していたティム・バートンが見事な復活を遂げた前作から、もう自分の進むべき道を見出したかのように作り上げた、ダークホラー&ファンタジー。監督の本当に自分がやりたかったことを体現するかのように、ひたすら人を殺しまくる(間に歌も唄う)ジョニー・デップの怪演は見ていて爽快感すら感じられて良い。途中から、もう復讐なんか忘れてしまったんじゃないかってくらい、なんの罪もない人々の喉を掻っ切る(飛び散る鮮血がとても美しい)彼の店の下で、彼が開業してから何故か急に美味しくなったミートパイをひたすら売りまくるヘレナ・ボナム・カーター…。ちっぽけなモラルや常識を軽く笑い飛ばすような、そんな二人の活躍に僕は心底痺れてしまいました。ティム・バートン&ジョニー・デップ、僕は何処までも付いてゆくので、これからもずっとブレずに我が道を突き進んでもらいたい。
[DVD(字幕)] 8点(2012-05-01 12:23:10)
13.  すずめの戸締まり 《ネタバレ》 
人々から忘れられ廃墟となった場所にはいつしかこの世とは違う世界へと通じる扉が開くという。災いをもたらす異形の存在ミミズがその扉から現れることによって、その地は地震に見舞われるのだ。古くから日本中を旅してそんな災いをもたらす扉を閉じる作業を人知れず続けているのは、閉じ師と呼ばれる一族。ある日、そんな閉じ師の末裔である草太と知り合った平凡な女子高生すずめは、災いを封じるための要石が猫に姿を変え日本列島を北上し始めたことを知るのだった。「このままでは未曽有の大災害が日本を襲い、また多くの人たちが死んでしまう」――。要石によって小さな椅子に変えられてしまった草太とともに、そんな猫を追って旅することになったすずめは、各地で様々な人々に出会い助けられながら北を目指して旅を続けててゆく……。日本映画界を牽引する稀代のヒットメイカー、新海誠の最新作は災害列島日本という国で人知れず人々を救ってきた閉じ師と平凡な女子高生の物語をファンタジックに描いたロードムービーでした。正直この人の映画ってイマイチ好きになれなくて(特に前作『天気の子』は酷かった!)、本作も別に観る気はなかったのだけど、今回地上波でノーカット放送されるということで鑑賞。そんな期待値ゼロで観始めたのが良かったのか、感想は「あれ、意外と悪くないじゃん」でした。いやむしろけっこう好きかも!冒頭からノンストップで描かれるすずめの旅はかなりテンポが良くて、ストーリーの強引さも気にならないくらい惹き込まれて観ている自分がいました。映像が美しいのはもはや言わずもがな、それより椅子に変えられた草太と要石猫との追いかけっこがアニメならではの躍動感に満ちていて率直に楽しい。いけ好かないキャラだった草太が、ちゃちな椅子に変えられてしまったことで逆に魅力的にさせてるとこなんてなかなかいいセンスしてるやん!今回は東日本大震災をテーマにしていることで、新海作品特有の童貞男子が夢見そうな青臭い妄想臭が幾分か抑えられていたことも大変グッド。椅子にチューしちゃう主人公をどーしても入れたかったのだろう監督の意地はご愛敬だけど(笑)。旅先で出会う人々がみんな良い人過ぎるのもどーかと思ったけど、後半叔母の心のどす黒い声が溢れ出してしまうシーンでちゃんと暗い現実も描いていて上手くバランスをとっていたと思う。311をエンタメとして扱うことにネットなどで賛否が分かれているのは知っています。確かにちょっと軽く描き過ぎとは思うけれど、自分は普通に受け入れられました。何故なら本作の根底には、震災のみならずすべての災害で亡くなった人々への祈りと鎮魂の物語があると思えたから。これまでの自らの世界観を踏襲しつつも新たな地平を築いた新海誠監督の秀作だと自分は思う。
[地上波(邦画)] 7点(2024-04-10 10:13:10)
14.  すばらしき世界 《ネタバレ》 
その日、殺人の罪を犯し、13年ものあいだ刑務所へと服役していた男が出所する。彼の名は、三上正夫。10代の頃から何度も罪を犯し、そのたびに刑務所へと投獄され、積み重なった前科は十犯。これまでの人生の28年間を鉄格子の内側で過ごしてきた彼の人生とはいったい何であったのか――。人生の終盤を迎えつつあるそんな三上の再出発の日々を、彼を題材にドキュメンタリーを制作しようというテレビ局のスタッフの視点を交えて描いたヒューマン・ドラマ。監督は、うまくいかない人生にもがく人々の苦悩を終始一貫して見つめ続ける西川美和。いかにも彼女らしい丁寧な演出は相変わらず健在で、特別なことは何も起こらないこの三上という元犯罪者の日常を淡々と描いているのに、最後まで観客を惹き付けてやまないのは見事としか言いようがない。短絡的で何かというと暴力に走るこの粗暴な男が主人公なのだが、そこまで嫌悪感を抱かせないのはやはりこの監督の慈愛にも似た優しいまなざしによる部分が大きいのだろう。不器用で身勝手で社会性が皆無に等しい元犯罪者の人生を否定も肯定もせず、ただ淡々と見つめている。やがて明らかとなる、過去にこの男が心から愛していた女性の存在、今度こそ真人間になろうと誓った経緯、そして彼を子供のころに捨てて失踪した母親……。一般的な人々からすればやくざ者で人生の落伍者である彼にも、当然、人間としての苦悩や後悔、弱い部分や魅力的な部分、そして深い愛もあるという当たり前の事実を改めて気づかさせてくれる。そんな彼をそれぞれの立場から優しく見守る周りの人々の存在も素晴らしい。弁護士やその妻をはじめ、途中で出てくる何気ないキャラクターまでちゃんと血の通った人間として描くことに成功している。特に、六角精児演じるスーパーの店長が印象的だった。ただ、意図してそうしているのだろうが、三上を取り巻く人々がどこまでも良い人ばかりというのは、自分としては少々違和感があった。三上の古い友人であるやくざの組長の妻までが主人公に献身的なまでの優しさを見せるというのはちょっとやり過ぎと言えなくもない。とは言え、それも好みの問題なのだろう。社会という枠からはみ出し、今にも溺れそうになっている人々の悲哀を掬い取ろうという今作のテーマは充分に胸を打つ。血の気の多い元やくざ者をナチュラルに演じた役所広司をはじめ、キャスト陣も皆いい仕事をしている。どんな人間でも、心の持ちようによって、この世界はいくらでも素晴らしいものになる――。そう思わせてくれる、ヒューマン・ドラマの秀作と言っていい。
[DVD(邦画)] 7点(2022-08-19 08:04:43)
15.  ストレイ・ドッグ(2018) 《ネタバレ》 
17年前のとある事件がきっかけで心を病み、以来酒に溺れ荒んだ生活を送ってきた女性刑事エリン。ロサンゼルス市警内でもお荷物扱いされ、夫とも離婚、16歳の一人娘からも嫌われ、生きる希望も見失いかけた彼女はただ刹那的に日々を生きていた。そんな折、エリンの元に差出人不明の一通の封筒が届く。中に入っていたのは、紫色の塗料で染められた、一枚の薄汚れた紙幣だった。そしてそれは、17年前に封印したはずの忌まわしき記憶を彼女によみがえらせるのだった――。17年前、エリンはFBI捜査官であるパートナーのクリスとともに、とある犯罪組織内で潜入捜査任務にあたっていた。だが、そこで彼女は取り返しのつかない失敗を犯し、犯罪組織のボスであるサイラスを取り逃してしまったのだ。そしてその紙幣は、以来潜伏生活を続けていたサイラスが再び、現役復帰を果たしたことを宣言するものだった。17年前の忌まわしき記憶にけりをつけるため、エリンは執念の捜査を再開するのだが……。オスカー女優ニコール・キッドマンが、過去の記憶に苦しめられ酒浸りの生活を送る刑事役を熱演し、ゴールデン・グローブ賞にノミネートされたクライム・サスペンス。全編に横溢する、このひりひりとした緊張感はなかなかのものでした。過去と現在を行き交いながら描かれるストーリーも全く先が読めず、最後まで飽きさせません。特に中盤辺りで突発的に開始される銀行強盗のくだりは、非常にサスペンスフルで見応え充分。大胆な老け顔メイクを披露したニコール・キッドマンもなかなかの熱演ぶりで、回想シーンの美しかった時との激しい落差がより、この女刑事の悲哀を浮き彫りにさせている。そして、クライマックスで明かされる主人公の衝撃の過去…。と、クライム・サスペンスとしては充分面白かったのですが、惜しいのは脚本に突っ込みどころが多い点。現代と過去の銀行強盗パートがさすがに都合よく行き過ぎる。ここまで大胆な行動を取った主人公をほっとく警察署は明らかに無能すぎだし、事故を起こした逃走車の近くにあるごみ箱を調べない鑑識も不自然。冒頭の殺人事件が実は…となるミスリードもイマイチ効果を発揮していない。と、そこらへんに不満は残るものの、総じて満足度は高い。なかなか密度の濃い犯罪劇の佳品でありました。
[DVD(字幕)] 7点(2021-08-21 02:07:33)
16.  SKIN 短編 《ネタバレ》 
過激な白人至上主義者である、とある一家族の日常とその崩壊を研ぎ澄まされた感性で見せる短編ドラマ。後にベラ・ファーミガ主演で長編映画化されたものの原型となった作品で、アカデミー短編映画賞を受賞している。先に長編の方を見てからこちらを鑑賞したのだが、こちらはこちらでよく出来ている。と言うか、物語としては正直こちらの方が面白い。黒人を人間とみなしていない差別主義者が、スーパーの駐車場で絡んできた黒人に制裁を加えたことがきっかけでさらわれ、そして全身にあるタトゥーを彫られてしまうというストーリー。まあ単純で荒唐無稽ではあるが、ちゃんと起承転結がしっかりと纏まっているし、オチの切れ味も鋭い。一言で言うなら、世にも奇妙な物語の社会派版といった感じか。なにより素晴らしいのは、この暗鬱な世界観よ。社会に蔓延る闇を冷徹に凝視しながら、それをエンタメへと昇華してしまえるこの監督の手腕は大したものだ。社会派に特化した長編もなかなかのものだったが、次はこの短編のようにエンタメに寄った作品も観てみたいものだ。
[DVD(字幕)] 7点(2021-06-11 22:39:20)
17.  SKIN/スキン 《ネタバレ》 
全身に禍々しいタトゥーを彫り込み、常に社会に対して鋭い目を向けるその男の名は、ブライオン。幼いころ親に捨てられ、たまたま白人至上主義団体の代表を務める夫婦に引き取られた彼は、以来ずっとアメリカの白人の権利を守るために生きてきた。黒人やユダヤ人、同性愛者をアメリカから追い出すために、彼は日々、暴力と犯罪に塗れた生活を送っていた。そんなある日、ブライオンは3人の子供たちを女手一つで育てる貧しいシングルマザーと出会う。彼女や子供たちと過ごすうちに彼は生まれて初めて心の安らぎを感じ始めるのだった。「彼女たちと一緒に平穏な暮らしを手に入れたい」――。そう決心したブライオンは、差別主義者たちの転向を手助けしている団体と連絡を取る。だが、人種差別の闇は簡単には彼を手放してくれず、さらには全身に彫られたタトゥーが彼をより一層苦しめるのだった……。実話を基に、全身に禍々しいタトゥーを彫り込んだ白人至上主義者たちの真実を描いた社会派ドラマ。全編に横溢する、この濃厚な空気にとにかく圧倒されてしまった。カギ十字や髑髏などのタトゥーを全身に纏った男たちが大声で喚き散らしながら酒やドラッグをきめ、そして黒人を次々と血祭りにあげてゆく。しかもそこには当然のように子供たちの姿も…。噂には聞いていたが、そんな狂った世界が実際にあることに戦慄せざるを得ない。いったい何が彼らをそんな悪意に満ちた行動へと駆り立てるのか?この作品が優れているのは、ドラマの焦点をそこに絞るのではなく、主人公のそこからの厚生まで描いているところ。入るのは簡単だが、そこから出て社会復帰することの難しさを冷徹に見つめている。要所要所に挿入される、いかにも苦しそうな入れ墨除去手術の映像など、この監督のシャープで研ぎ澄まされた感性はなかなかのものだった。特に、雪の積もった真っ白なスクラップ置き場で放火された車から黒煙がもうもうと立ち上ってゆくシーンは、なんとも言えない暗鬱な美しさに満ちている。と、映像や世界観は文句なしに素晴らしかったのだが、惜しいのはストーリー面。単純なお話である分、一編の物語として観客を引き込む力が若干弱い。もう少しストーリーの見せ方を工夫するか、それかもうちょっと短くするべきだったのでは。90分くらいでコンパクトに纏めてくれたら、もっと完成度は上がったはず。とは言え、全体として非常に見応えのある社会派ドラマの秀作であることは確か。この監督の次作を楽しみに待とうと思う。
[DVD(字幕)] 7点(2021-06-11 22:02:40)
18.  スウィート17モンスター 《ネタバレ》 
彼女の名は、ネイディーン。何処にも居るような平凡なティーンエイジャーだ。別にクラスの人気者ってわけでもなく、勉強もスポーツも平均以下、憧れの男子にはSNSで友達申請するもずっと音沙汰なし、婚活失敗続きのママはずっとヒステリーを起こしっぱなし。そんな冴えない日々を送っていた彼女に、大事件が発生。なんと自分の兄と、唯一の友達で子供のころからの大親友でもあるクリスタが付き合うことになったのだ。「そんなの絶対あり得ない!」――。色ボケ兄貴も親友だと思っていたクリスタも怒ってばかりのママも分かってくれない学校の先生もクソったれな世界も何より自分のことが大嫌いになったネイディーンは、その日から人生の袋小路へと迷い込むのだった。果たしてお先真っ暗のネイディーンの人生に明日の光は差すのか?そんな八方塞がりのイケてない日々を送る17歳の女の子の日常をポップに描いた青春ドラマ。まあいわゆる今どき“こじらせ女子”の生態をリアルに描いたそんな本作なのですが、何より主役を演じたヘンリー・スタインフェルドの魅力に尽きると思います。最近のクロエ・グレース・モレッツを髣髴とさせる、この絶妙なブ……失礼、個性的なルックスがこの主人公のこじらせ具合にばっちり嵌まってました。ほとんどアドリブなんじゃないの、これ?って思わせるほど人の嫌がることを次から次へと捲し立てる彼女の減らず口には思わずニヤニヤ。うん、居るよね、こんな子。自意識過剰のかまってちゃんで、自分の思い通りにいかないとヒステリーを起こすトラブルメイカー。いやー、客観的に見る分にはすこぶる面白いですわ。まあ当事者になるのは絶対嫌ですけど(笑)。「いいよね、君は私と別れられて。私はこんな自分とは一生別れられないんだよ」。同じくこじらせ女子の生態を描き続けて芥川賞を受賞した日本の小説家に本谷有希子が居ますが、彼女のとある作品の中にあるこんな言葉を思い出しちゃいました。そんな彼女を温かく見守る、ウディ・ハレルソン演じる学校の先生もなかなかいい立ち位置でナイス!ただ、さすがに後半は余りにも迷走しすぎてちょっとしんどくなっちゃいましたので、そこは若干マイナスです。ネイディーン、さすがに男を振り回しすぎでしょ。まあそこらへんは好みの問題だろうけど、ぼちぼち面白かったです。
[DVD(字幕)] 7点(2020-02-20 03:01:25)(良:1票)
19.  ストレンジャーズ/地獄からの訪問者 《ネタバレ》 
親戚夫婦が営む湖畔の小さなロッジへとバカンスでやって来た、とある四人家族。反抗期の長女がこれから全寮制の高校へ入学するので、家族水入らずの夜を過ごすために両親が半ば強引に計画したのだ。いやいや連れてこられた長男とともに、小さなトレーラーハウスでギクシャクした夜を過ごす家族たち。すると、唐突にドアをノックする音が。母親がドアを開けてみると、そこには見慣れない若い女が立っていた。「タマラは居ますか?」――。謎の問いかけを残し、すぐに夜の闇へと立ち去ってゆく女の子。不審に思いつつもまた見せかけの家族団欒へと戻る両親と子供たち。だが、彼らはまだ知らない。その謎の言葉こそ、血に塗れた殺人ゲームの開始を告げる合図だということを……。シーズンオフの真夜中のキャンプ場を舞台に、突如として現れた三人の残虐な殺人鬼によって恐怖の一夜を過ごすことになった家族を描いたスプラッター・スリラー。リブ・タイラーが主演したという前作は未見。低予算ながらキレのいい演出と小気味の良いストーリー展開でスマッシュヒットを飛ばした『海底47m』のヨハネス・ロバーツが監督したということで今回鑑賞してみました。いやー、相変わらずこの監督の“画”への拘りは凄いですね~。不穏な映像が醸し出す、このいや~~~な空気感は素晴らしかったです。神出鬼没の三人の殺人鬼たち(彼らの被るマスクもヤバい!)が現れるタイミングも、絶妙の間で画面に出てくるもんだから、もうこれが怖いったらありゃしない。ゲームの開始を告げる謎の言葉の意味を最後まで明かさないのも、終始ほとんど無言で襲い掛かって来る殺人鬼も、不条理な恐怖が炸裂しまくり!緊迫感を煽る不気味な音楽の合間に急に軽快なポップソングを流すとこなんかも、この監督、良いセンスしてますね~。きれいな照明に照らされた、こじゃれたプールでの殺人鬼との血みどろの攻防なんてそのハイセンスな演出が冴えまくりです。最後、トラック炎上でさすがに死んだと思われていた殺人鬼が実は生きていて、燃え盛るトラックで追いかけてくるとこなんか、「も、もう止めてくれ~」と何度も叫んじゃったし。いやー、この監督さん、なかなか才能あるんじゃないですかね。まあ肝心のお話の方は余りにもシンプル過ぎて若干物足りなくもありますが、僕は最後まで充分楽しませてもらいました。うん、面白かったです!
[DVD(字幕)] 7点(2019-11-11 00:42:47)(良:1票)
20.  スリー・ビルボード 《ネタバレ》 
舞台はアメリカのとある田舎町。娘をレイプされ焼き殺された母親が町外れに立てた、三枚の看板。そこには一向に事件を解決できない警察署長への怒りのメッセージが書き込まれていた。当然、その影響は小さな町に瞬く間に広まってゆく。人種差別主義者の警察官、末期癌を患い余命幾ばくもない警察署長、看板を立てた広告代理店の営業マン、被害者となった女の子の弟、DVの末に離婚したその父親…。彼らの怒りが更なる怒りを呼ぶ憎しみの負の連鎖を軽快に描いたクライム・ドラマ。じっくりと考え抜かれたであろう脚本の力が際立つ、なかなかの佳品であったと思います。そんなよく出来た脚本だけではなく、適材適所に振り分けられた俳優陣の演技もすごく嵌まっていました。特に、主人公の娘を殺された母親を演じたフランシス・マクドーマンドの狂気すれすれなのに何故か嫌いになれない人物造形はなかなかのもの。ちょっと僕の好みとは微妙に外れますが、なかなか見応えのある人間ドラマでありました。
[DVD(字幕)] 7点(2018-11-08 19:49:20)
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