1. ヴィレッジ(2004)
《ネタバレ》 森の中に隠された人生。誰の目にもとまらぬように。 デバイスとインフラに管理された現代の人間には、彼らの悲喜交々はわからない。彼らを管理しているのは伝承と習慣であり、完全に文明から分離され自律的な存在を信じて疑わない彼らには、旧来の人間の形をした布をかぶせたような不自然さが漂う。 人工的な生命であるような気味の悪さを彼らに感じつつも、無理にでもその居心地の悪さを飲み込んでしまうのは、彼らの生活に何らかのリアリティがあるからなのだろう。 決して万能ではない、たとえ異能を持っていたとしても外界の人間を超越することが出来ない彼らの箱庭に生かされる彼らは、この後どうやって人生を振り返り、拓いて行くのだろう。 そう思うと、色々な枠の中に綺麗に収められて大切に扱われているに過ぎない現代人がなぜか強大な力を持った異文明の中で暴威をほしいままにする存在のように感じられてしまう。 無力な彼らに対する憐憫は、彼らの境遇を作り出した人間にも向けられ、結局何をすべきだったかを間違ってしまっているのに受け入れてしまうそうになる。 色々に気持ちが揺れたまま、静かに終わるこの物語はどうしてこんなにも心地良いのだろう。 [映画館(字幕)] 7点(2012-05-30 01:16:47) |
2. 宇宙戦艦ヤマト 復活篇
《ネタバレ》 この共産主義のひとが、日本人を洗脳するためにデフォルメしたアメリカ国家のスタンダードな非難理論とキャラクター作りが可笑しいほど通り一遍で十把一絡げ感いっぱい。 どこで洗脳されたのかアメリカが嫌いでしょうがない人っているよなぁ、とかそういうことばっかり考えてしまって笑ってしまった。 [ビデオ(邦画)] 2点(2011-09-01 01:47:04) |
3. WXIII 機動警察パトレイバー
《ネタバレ》 なかなか面白かった。 これをアニメでやる意味は、既存の技法が動画によりトレースされることで新しい雰囲気を生むから。この味わいは何にも代え難い。映画で文学とか小説の映像化とかと同じだ。嫌いな人には不可能か無意味かのどちらかに見えている。 押井的な味わいが、映画をドロッとした物にしている。良い感じだ。だが、押井というブランドを他の人が使うことでブランドの浸透に成功しているかというと微妙。品質は高いのに他人の個性を着るというのがあまり良くなかったのかも知れないし、押井に興味がなければ地味で気持ちが悪いだけかもしれない。 原作がいったいどれなのか、というとよく分からないのがパトレイバー。マンガも映画もテレビもすべてヘッドギアとかいうとこの原案からの創作物で、メディアミックスが前提となった結構前衛的なお話だったのかも知れない。 で、映画版の気にくわないところがある。多面性が全くない。 社会派実写邦画のようなタメにこだわった物しかなく、パトレイバーというコンテンツが終息する原因の一つではないかと思う。ロボットが出なくってもいいし、コミカルでなくても良いけどこの水準で他のやり方も見てみたかった。 あと、監督誰だっけ?押井じゃないんでしょ、分からなくても良いけどさ。で、終わる原因にもなっている。 [ブルーレイ(邦画)] 7点(2011-08-16 02:43:57) |
4. ヴァン・ヘルシング
《ネタバレ》 なかなか面白かったと思う。 アホみたいなプロットに、ゴリゴリ特殊効果が乗って削り削られの泥臭いバトルというか、つぶし合いのようなアクションが非常に心地よかったりして。 劇場専用な環境依存的画質で、おそらくBDで観たらCGIとそうでない部分は違和感ゴリゴリだろう。DVDや地上波で観たらかなりパワーダウンするかもしれない。 それにしても、こんだけ荒っぽい話でも目的に向かって主人公ががんばる話というのは面白くなるのか。ある意味スゴいなこれ。エンディングも意外と良い。 [映画館(字幕)] 7点(2010-09-13 19:18:43) |
5. 宇宙戦争(2005)
《ネタバレ》 アメリカ人のほとんどが宇宙戦争の最後を知っているわけで、オチははじめから重視されていないでしょう。それでもリメイクされるのは2000年以降の流行はオチや謎を重視しない作品で、単なるだましよりも日常にちかい意外性のない物を題材にする映画が増えているように思います。 表現力の向上で、リメイクや原作物にこういった部分の自然さを引き出すことができるようになったんでしょうか。どんでん返しやだましオチが無い分、深く追体験できて自分のためになりそうな話であることが非常に好印象でした。 そんなわけ無いでしょ、っていうどんでん返しや騙しではなく、普通の人が映画の中に巻き込まれるような作品であることの良さが際だっていました。お約束の農家のシーンは、恐怖に負けた普通の人なのか元々おかしな人だったのか、こんなことがなければこんなことにはならなかったであろう、一農夫が普通の親子に見せる恐怖はやはり一番の見せ所か。 とにかくあきらめない、ということを普通視点で描く。そこが凄い。 [映画館(字幕)] 9点(2010-04-25 18:38:41) |
6. ウォッチメン
《ネタバレ》 結構面白かったと思う。が、アクションが無くても楽しめる人向けじゃないだろうか。アクション映画だと思っている人にはおすすめしない。 冒頭、激しいアクションシーンを見せておいて実は心理描写がメインの映画であるというのが面白い。類型的なアメコミと思わせておいて、実は会話劇に近く各キャラクタのやりとりと心理描写の大きさの競り合いでもって物語が進んでいく。ここで自分にマッチしないなと思ったらラストまでじれったさが残るだろう。 描写されるヒーローたちの、実は異能者であってもその能力に上下関係が存在し、年齢や社会的な役割すら存在する。そこに古典アメコミらしい条例という縛りをもうけ、その上でヒーローたちに人間的な生活をさせてしまうと言うあたりが現代アメコミらしさを感じさせる。 また、長々と扇情的なシーンを加え、さらにセックスまでしてしまうと言う描写に関しては象徴化としては甚だあからさまであるが、少年少女が見るたぐいの映画ではないということを表しているのかもしれない。単純にサービスシーンかもしれないけど。 ラストシーンでは、米ソという単純な対立関係を持ち込んで、それを犠牲で解消するというプランに違和感を覚えるが、その後「わがままな正義」で思想的犯罪を誘発するための仕掛けをロールシャッハが投函していることが明らかになる。結局は、どれだけの犠牲を払っても、思想的にズレや我儘を抱える人間の見かけ上の正義が存在する限り、社会単位以上での平和は当然存在し得ないという主張はとても現代的だった。 原作が読まれた80年代においても、米ソの対立と戦争や紛争はすでに米ソの枠組みを超え中東を土壌とした「ズレた正義」の醸成が始まっていた。それがすでにはっきりとした形となった現代において、成人に向けた映画化をする意義というのは大きかったと思われる。 [ブルーレイ(字幕なし「原語」)] 7点(2009-11-24 14:20:06)(良:1票) |
7. ウォーリー
《ネタバレ》 ピクサーの映画のなかでもトイ・ストーリー1と並ぶ・・・かそれ以上か。の超傑作。 小さな子供では飽きてしまうストーリーですが、小さな子も映像にかじりついていました。 最初にエバが登場するシーンでは、明らかに人類的な技術で動作する「機械」から出現するあたり、人類がなんらかの形で介在していることが映像できちんと書き込まれているところに釘付けになり、最初の人類の映像が滅んでしまった人類の置きみやげではないのではないか、と受け手を疑心暗鬼にさせるところがもの凄く新しかったです。 これまでのSFで人類がいない荒廃した地上という設定では、生き残りが人類の残した物を巡って物語りが始まりますが、うーん新しい。でもうっかりエバの登場シーンで仕掛けを見逃したとしても、無人の宇宙に連れて行かれたウォーリーがどうなるのかとかなりはらはらするはず。 それから全編にあふれる脳天気なキャラクタ達の諦めなさや、前向きさ、ストーリーの優しさに大満足でした。 CGだというだけでバカにする人もいるかも知れませんが、ボタン一つでコンピュータが勝手に絵を作り出すのがCGではありません。 手で紙にかかれた原案が、様々な工程に乗って少しずつ人の手によって積み重ねられ、最終的にコンピュータに陰影を付けさせる製品です。 そうして作られたキャラがそれぞれに違ういろいろな意味の大切な物を、それぞれが大切に守る。それに理由が必要なんだろうか、いちいち考えなければ分からないものなんてそれは大切ではないのではないだろうか。そういう気持ちを素直に確認させてくれる、心にズシンと来るテーマではないかと思います。 こういう生活サイズのテーマにもかかわらず、直球勝負で重い。立派! たくさんの人に丁寧に心をこめて作られたキャラ達が、休む間もなく動き、物語をつづる様はCGのもつ、人が作った暖かさにあふれています。 これほどの作品をCGアニメーションで作り上げたということの凄さは、一つのブレークスルーではないでしょうか。 もの凄いインパクトです。 [映画館(吹替)] 9点(2009-01-02 01:34:32)(良:1票) |