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プロフィール
コメント数 2397
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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1.  大殺陣 雄呂血 《ネタバレ》 
伝説の坂東妻三郎版のオリジナルは未見ですが(何でも現在視聴できるのはオリジナルの30%程度らしい)、調べるとこのリメイク版は登場人物たちの設定自体はけっこう変更されているみたいです。いわば『切腹』のような武家社会の不条理が主人公の背景に織り込まれており、一介の武士である小布施拓馬=市川雷蔵が謹厳なサムライから武家社会の掟に翻弄されて剣鬼に堕ちてゆく壮絶なストーリーです。本作の雷蔵は同時期の『眠狂四郎』シリーズと被ってしまいがちですが、狂四郎よりもはるかに深みのあるキャラだったと思います。密かに思いを寄せられていた志乃=藤村志保が自分の追手に手籠めにされそうになって自害するのを見過ごしてしまうところなんて、わが身を守るためとは言っても狂四郎なら絶対にほっとかないだろうな。もちろん激しく後悔はするけど、そうやってどんどん自暴自棄になった挙句の無残な境遇になっている波江=八千草薫との再会、そしてラスト20分の壮絶極まりない闘いになだれ込むわけです。 オリジナル版ではどれくらいの人数だったのかは不明ですが(ジョセフ・フォン・スタンバーグはオリジナル公開当時に上映館に通い詰めて何人斬られたか数えたそうです)、どう考えても本作で雷蔵が相手にした人数は邦画史上空前絶後、ギネス記録に認定してほしいぐらいです。梯子や大八車もよく捕物帳ものなんかで見かけますが、なるほどこうやって使うのか、と納得した次第です。雷蔵は本来殺陣が上手くなかったそうですが、その息を切らして必死に太刀を振りまわすところにはかえってリアルが感じられました。終いには地面に横たわって刀を振り回す、なるほど多人数に囲まれた場合はこうやって足を薙ぎ払うというのは理にかなっているかもしれません、でもこんな殺陣は今まで観たことないです。 一応は敵を全滅させて八千草薫と向き合いストップモーションで終わるというオリジナルとは異なるエンディングですが、勝ったという高揚感にはほど遠いカタルシスなき無常観に満ちた幕の閉め方でした。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2023-11-30 23:50:55)
2.  誰が私を殺したか? 《ネタバレ》 
邦題は明らかに『何がジェーンに起こったか?』のもじりで、60年代にベティ・デイビスをフューチャーして一世を風靡した『何が…』の亜流映画の一つと位置づけられるが、これが単なる亜流と片付けるには惜しい一編です。デイビスは『何が…』と似たような姉妹ものという設定ですけど、こっちはデイビスが双子の姉妹で一人二役というところがミソ。映画のタッチからしててっきりロバート・オルドリッチが監督かと思ったけど、メガホンを取ったのは俳優としてのイメージが強いポール・ヘンリード、オルドリッチも候補だったことは確からしい。 なんと言ってもデイビスの二役演技が素晴らしい。ファースト・シーンの葬儀の場面では妹マーガレットの方が顔を完全に隠すヴェールを被っていたりカット割りで二役演技をさせる撮り方なのかと思いきや、両端で姉妹が向き合って演技するカットもあって、これが実に違和感がない素晴らしい撮影技術なんです。現代ではデジタル技術でこんなこと簡単に撮れるわけですが、60年代で成し遂げたのは素晴らしい。と、感心してよく調べると、撮影監督は名手アーネスト・ホーラーじゃないですか、納得です。双子で大富豪の未亡人である妹を殺して成りすますのが基本プロットですが、このサスペンスを盛り上げる脚本がとても秀逸です。妹を殺して大豪邸に入り込んだデイビス、来客が待っていると執事に告げられても、デカいお屋敷なのでどこが客間なのか判らない。そこで執事に呼んでくるように先に行かせて、彼の動きでどこが客間なのか判ると「やっぱ私が会いに行くわ」と取り繕う。相続関係の書類にサインしなければならないけど、何度練習しても妹の筆跡に似せられない。そこで暖炉の鉄杭を握って火傷させて、左手でしかサインできないようにして切り抜ける。いくらそっくりだと言っても妹と生活していたわけじゃないから、たしかに細かいことが判るわけがない。こういうリアルなサスペンスを丁寧に盛り上げる巧みなストーリーテリングです。ここに貧乏暮らしだった姉のイーディスに惚れていた警部のカール・マルデンが絡むわけですが、この人がまた良い味出してるんだよなあ。けっきょく妹マーガレットも愛人と共謀して夫を毒殺していたわけですが、その結果死刑が宣告されてもマルデンを悲しませないようにマーガレットとして刑を受けるラストのデイビスには、ジンと来るものがありました。 やっぱベティ・デイビスは凄い女優だったな、と再認識させられた次第でした。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2023-08-18 22:29:02)
3.  太平洋奇跡の作戦 キスカ 《ネタバレ》 
日露戦争の『日本海大海戦』やWW1の『青島要塞爆撃命令』なんかは確かにあるけど、戦後の太平洋戦争をテーマにした東宝特撮戦記映画で“勝ち戦(?)”を描いた唯一の作品です。真珠湾攻撃が含まれる『太平洋の鷲』や『太平洋の嵐』もありますが、どっちもボロ負けするまで描いていますからねえ。 有名なキスカ島撤退作戦の実話映像化ですけど、登場人物は全員仮名で生存している関係者がまだ多かった時期ですから、致し方ない面もあるでしょう。三船敏郎が演じる大村少将は“ヒゲのショーフクさん”で知られた木村昌福提督のわけで、容貌は似ても似つかないんですがその物に動じない豪傑ぶりは三船にはぴったりのキャラでした。前半で一水戦の長官として阿武隈に着任するシーンで、捧げ銃をして迎える水兵長のカイゼルひげこそが木村昌福が生やしていた髭で、三船と水兵長のやり取りを含めていわば楽屋落ちみたいになっています。その阿武隈や一水戦の駆逐艦群は東宝特撮で使われた艦船プロップでは最大縮尺で作られており(五十分の一ぐらいか)、モノクロ撮影も相まって迫力満点でした。だいたいは史実に沿ったストーリー展開ですが、けっこうフィクションも織り込まれておりそれが映画的にはスリルを盛り上げる効果を上げています。たとえば濃霧の中で補給船と阿武隈が衝突しますが、実際には衝突したのは駆逐艦でした。でも阿武隈が応急修理に一時間かかって「果たしてキスカ島突入に間に合うか?」というサスペンスを生むわけで、史実を上手く改変した脚本だと思います。エキストラを含めて女性がまったく登場しない、漢くさいお話しでもあります。 チャーチル曰く「撤退戦だけじゃ戦争に勝てない」のも真理ですけど、もぬけの殻になったキスカ島に上陸した米軍が同士討ちで三百人余りの死者・行方不明を出して、「史上最大の最も実戦的な上陸演習」と公式戦記にまで皮肉られているの知るとやはり痛快でしょう。しかしですね、アッツ島では全員玉砕、キスカ島では全員撤退、この差はなんなんでしょうかね。それは、アッツには海軍兵がほとんどいなかったけどキスカの守備隊のうち半分は海軍だった(この映画では全員海軍みたいな描き方ですけど)、という事情を言っちゃうと身も蓋もなくなっちゃうんですけどね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-03-07 21:38:37)
4.  大反撃 《ネタバレ》 
名匠シドニー・ポラック撮った唯一のこの戦争映画は、私が今までに観た戦争映画の中でも群を抜いて変わっています。町山智浩氏は本作と並べて『僕の戦争』『まぼろしの市街戦』『キャッチ22』をヘンテコな戦争映画として紹介していましたが、このチョイスには私はもろ手を挙げて賛同いたします。 監督シドニー・ポラック・主演バート・ランカスターとくれば典型的なハリウッド映画という布陣に見えますが、撮影監督がアンリ・ドカエ・音楽がミッシェル・ルグラン、ジャン・ピエール・オーモンまで出演しているので映画前半のテイストはまるでクロード・ルルーシュが撮った戦争映画みたいな錯覚を覚えます。舞台はバルジ戦間近のアルデンヌの森にある古城と血筋が古いだけが取り柄の伯爵、そこにいかにもアメリカンな米軍の補充兵たちがやって来る。古城には名画や美術品が山の様にあって、伯爵はこの家宝と伯爵家の血統を守ることだけが関心ごとで、大戦の推移にはまるで無関心。たった八人しかいない米兵もなぜか少佐や大尉から一等兵までいて、これもどこか奇妙な集団。アルデンヌの森の中の村なのになぜかド派手な娼館があってけっこうゴージャスな娼婦がそろっている。伯爵は性的不能で妻(なんと伯爵の姪!)をバート・ランカスターの少佐に寝取らせて無事に妊娠、なんとか世継ぎを創ることに成功。ピーター・フォークが演じる軍曹は本業がパン職人、未亡人がやってる村のパン屋に入り込んで戦争そっちのけで大好きなパン焼きに精を出す。村の目抜き通りでは部隊から脱走した兵士たちがキリスト教伝道団を結成して説教している。とても戦争映画とは思えないフワフワした設定で、ほぼおとぎ話だととらえた方がよい前半部です。中盤からは独軍が怒涛のごとく攻め込んで来て血で血を洗う壮絶な攻防戦と一変してしまいます。独軍の戦車は鉄十字をつけただけのもろT―34(これでロケ地がユーゴスラビアだと判ります)、撮ってる側は「これはあくまでパンサー戦車のつもりです、脳内変換お願いします」なんですけど、この場違いなT-34の登場がおとぎ話チックなテイストを強調する予想外の効果を生んでいる気がします。そして夜になって城に攻めてくる独軍が使う兵器(?)にはたぶんこの映画を観た人すべてに強烈なインパクトを与えるでしょう、なんとサイレンを鳴らしたハシゴ消防車が登場するんですから!城壁を乗り越えるのにハシゴ車を使うというのは理にかなってはいますけど、その絵面はあまりにもシュールです。 本作は小説の映画化ですが、幻想的な雰囲気の中で史実の戦闘を描くところなんかは、ヴォネガットの小説に通じるところもあると感じました。この映画がどれだけ原作の意図を伝えているのかは、私にはわかりませんけど。
[ビデオ(字幕)] 6点(2019-09-27 22:55:33)
5.  太平洋戦争 謎の戦艦陸奥 《ネタバレ》 
戦艦陸奥は、ワシントン条約が有効だった1930年代まではビッグ・セブンと呼ばれた世界に7隻しか存在しなかった40センチ砲を装備した最強戦艦の一隻、大和・武蔵が国民には秘密にされていたので、長門と陸奥は戦前では日本人なら誰でも知っていた海軍のシンボル的存在です。そんな陸奥ですが昭和18年に瀬戸内海に停泊中に大爆発を起こして沈没、1000人以上の犠牲者を出しました。実は旧海軍では明治時代から爆沈事故が定期的に起きていて(三笠も実は爆沈事故で一度沈んでいる)戦艦クラスでは陸奥が5隻目、これは他国の海軍では見られない旧帝国海軍の最大の恥部だと言われています。けっきょく海軍の秘密主義もあり徹底的な調査はされず陸奥の爆沈は原因不明となりましたが、他の4隻と同じく人為的な要素が原因(つまり放火ですね)じゃないかとも言われているけど真相は不明です。 その陸奥の爆沈事故を唖然とするようなミステリー仕立ての大胆な脚色で映像化したのが本作、これは日本戦争映画史に残る怪作です。よく「虚実織り交ぜて」といわれる手法がありますが、この映画の場合「虚」だけでなく「実」の部分までいい加減な脚本なので疲れます。まずミッドウェー海戦のところから話が始まりますが、セリフで何度も「空母が6隻沈められた」と出てくるので唖然、ナレーションの方では正しく4隻としているので、この映画の雑さが判るというもんです。その後陸奥は内地に還って出撃しないわけですけど、それは史実とはかけ離れています(実際には戦闘に参加こそしていないが、南洋と内地を数往復していた)。その間の戦争進行の状況がまるでフィクション、なんか仮想戦記を見ている感じすらします。特撮もかなりの低レベル、冒頭では53年の『戦艦大和』の特撮戦闘シーンが流用されてますが、なんでここに大和が出てくるの?おまけに7年前の映画よりどう見ても特撮技術が退化している。そんなことはまあ可愛いもんで、ぶっ飛ばされるのが肝心の「虚」のパートで、陸奥を爆沈させたのは「海外」のスパイ団という驚きの展開。なんで「海外」なのかというと首領がドイツの大使館付き武官、そいつがなぜか日本への破壊工作を組織する、アメリカの二重スパイ?かと首をひねるが結局そこら辺の説明はないのでわけが判らん。こいつが日本人グループを使って悪事の限りを尽くして陸奥に時限爆弾を仕掛けることに成功しますが、土壇場で海軍に感づかれてスパイ団は全滅、でも最後は史実通り陸奥は爆沈してしまい何のカタストロフィも得られなく閉幕、ほんとにため息がでるばかりです。 当然と言えば当然ですけど、艦長や副長など陸奥の乗組員は架空です。でも天知茂が演じる副長が日本人スパイの女性にあわや篭絡されそうになる描写などもあり、実際の艦長や副長の遺族などから猛抗議を受けたそうです。新東宝が倒産間際にすかした最後っ屁みたいなものかもしれませんが、ほんとにこの映画誰得だったんでしょうかね。
[インターネット(邦画)] 2点(2019-03-06 23:50:55)(良:1票)
6.  タイム・マシン/80万年後の世界へ 《ネタバレ》 
偉大なるH・G・ウェルズの有名な『タイム・マシン』の初めての映画化ですが、実はこの小説は本作の他にはガイ・ピアースが主演した2002年版の二作しかないというのはちょっとしたサプライズです。 ストーリーテリング自体は原作とほぼ一緒ですが、原作が発表されたのは1895年ですから近未来のエピソードについては当然ウェルズが知る由もないことが追加されています。1966年に核戦争が起きていったん文明が滅びることになりますが、もちろんこんなことはウェルズの原作にはありません。原作では社会階級制度の極端化によって知識階級のイーロイと労働者階級のモーロックに人類が分化したとあり、イーロイは見た目も現生人類とはちょっと違い言語も当然英語ではない。見せ場優先の映画化ですからそこら辺は改変されて当然ですけど、さすがにイーロイが英語を話して「政府」とか「法律」なんて言葉を認識しているというところは違和感が半端ないです。タイムトラベルを科学者たちが議論する冒頭のシーンで「四次元は時間だ」という理論でタイムトラベルを説明してますが、まあこれはアインシュタインの相対性理論が発表する前の小説ですから致し方ありません。でも「過去は変えることができるかもしれないが、未来はもはや変更することはできない」というセリフは、単純ですが自分には目から鱗でした。もちろん特撮はオスカー受賞したといっても時代掛かった代物ですけど、センス・オブ・ワンダーを今の眼で観ても刺激してくれるのはさすがです。 話はそれますが、「1900年が20世紀の最初の年」というセリフがありましたが、これって字幕の誤りでしょうか?「新しい千年紀の始まりの年」なら判りますけど…
[CS・衛星(字幕)] 7点(2019-03-02 22:18:05)
7.  大侵略 《ネタバレ》 
はぐれものを集めた特殊部隊が砂漠を突っ切ってドイツ軍の基地を襲撃するというプロットは、『トブルク戦線』とまんま同じ、作戦を命じる上官を演じるのがどっちもナイジェル・グリーンというのは、実に紛らわしい。でもあの大味な戦争アクションと違って、こっちはいかにも英国製戦争映画らしい諧謔味にあふれたくせ玉です。まさに原題通りの“Play Dirty”なストーリー展開であります。 マイケル・ケインが隊長なんですけど、その部下たちが彼の言うことを聞かないことに関しては、数ある特殊部隊もの戦争映画の中でも屈指の曲者ぞろいです。なんせ筆頭部下がナイジェル・ダヴェンポートですからねえ、この人は初代ジェームズ・ボンドの候補だったぐらいで、その男くささはマイケル・ケインを圧倒しちゃってます。他にも部下には異常に仲が良いアラブ人コンビ(つまりホモ達)がいたりして、いくら何でも捻り過ぎだろ!苦労して燃料基地にたどり着いたのに、実はそこは…(ネタバレ過ぎるので以下自粛)つまり『マッドマックス2』みたいなお話しだったわけです。そこでめげずにマイケル・ケインはみんなをベンガジまで引っ張って行って大暴れを図るけど部下は全滅、ケインとダヴェンポートの二人は生き残るけど実に皮肉な最期です、こんな結末ハリウッド映画じゃ絶対あり得ない! ということで、自分的にはスマッシュ・ヒットだなと思うんですけど、『大侵略』という邦題だけは許せません、チンギスハンの映画じゃないんですからねえ。でもこの映画ユナイトが配給したみたいだし、ひょっとして邦題の名付け親はあの水野晴郎だったのかも?
[CS・衛星(字幕)] 7点(2017-12-24 23:38:09)
8.  007は二度死ぬ 《ネタバレ》 
さあ出ました、コネリー・ボンドで最大の問題作(?)でございます。本作はイアン・フレミングが書いた最後の007なんだそうですが、映画化は彼の死後でストーリーは全くと言っていいほど改変されているそうです。 まあ正直いって日本の描写は笑うしか対処のしようがありません。その中でも自分としては最高にウケたのは、丹波哲郎のタイガー田中ですね。なんと都内での移動には決して地上を歩かず、地下鉄丸の内線にしか見えない車輌で地下を高速移動する、しかも車内は豪華ラウンジの様な特別仕様ですからねえ。そして日本と言えばこれ、忍者の登場は欠かせません。タイガー田中率いる特殊部隊は忍者だった!彼らが犠牲を顧みず秘密基地に殴り込みをかけるところは、なかなか勇壮です。典型的な忍者のカッコウじゃないのには少しはスタッフの良識を感じますけど、忍者訓練所が姫路城という設定で撮影中に石垣に傷をつけたって聞かされると、ふざけんなよ!と義憤を感じてしまいます。世界的な映画の撮影と言われて使用許可を与えるなんて、まだ戦後20年足らずの日本は欧米には卑屈だったんですね。 日本描写についつい目が奪われるのでかすんじゃっていますが、脚本もなかなかのもんです。相変わらずスペクターは何をしたいのか良く判らず、ボンド襲う危機(まあどれも簡単に切り抜けちゃうんですけど)とストーリーが上手く融合していないんじゃないでしょうか。と言うか、本作ではボンドは単なる偶然で死を免れてばかりで、三回はそんなシーンが確認できましたよ。さすがのショーン・コネリーも、降板したくなっちゃったのは無理からぬことでしょう。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2017-09-02 23:54:16)
9.  007/サンダーボール作戦 《ネタバレ》 
ムダにカネかけてますね~、前作にそこはかとなく漂っていた映像のチープ感は払拭されています、でも力を入れるところがちょっと間違っていますよ。水中撮影はそれだけで結構経費がかかるそうですけど、確かにこれだけ大々的に水中撮影を多用したアクション映画は初めてだったでしょう。実際に走行する潜水艇を製作したり、ほぼ実物大のヴァルカン爆撃機のプロップを海中に沈めて撮ったり、とサービス過剰気味です。でも悲しいかな、それが映像になるとちょっと地味なんですよね。水中銃の大銃撃戦なんて非常にレアなシーンもありますけど、やっぱ水の中ではスピード感がどうしても出せないんですよ。製作陣も撮りだしてみて「しまった」と後悔したんじゃないですか。 今まで何度もTV放映で観ているはずなのにどうしても『ドクター・ノオ』と混同するぐらい本作の印象が薄いのは、ボンド・ガールや悪役たちがあまりにもキャラが立っていないからかもしれません。ボンド・ガールはドミノとフィオナとポーラということになるでしょうが、みんな同タイプの女優なので区別がつきません。ラルゴの手下たちも印象が薄いうえに大して手強くもなくて愕然とさせられます。今回もスペクターは単なるブラック企業みたいな感じで、儲けを追求するための組織ならそこまで全世界を敵にまわすような暴走しなくてももっと手堅く収益が上げられると思いますよ。いっぺん経営コンサルタントにでも分析してもらった方が賢明です(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2017-08-19 23:44:48)
10.  007/ゴールドフィンガー 《ネタバレ》 
オープニング、なんとジェームズ・ボンドがアヒルのデコイを頭にくっつけて水中から登場。よくこんなこと監督はやらせたもんだよ、と呆れますが第三作からはいよいよ007も洒落っ気要素が強くなってきます。 007シリーズの突っ込みどころといえば何をやりたいのか意味不明な悪ボスたちの存在ですが、ゴールドフィンガー氏もかなりのもんです。ぶっちゃけ単なる金持ちのデブ親父というわけですが、カードやゴルフで真剣にインチキするなど、器の小ささが情けない。でもミニマムではセコい煩悩のかたまりのくせに、悪の本業ではフォートノックスの合衆国金保管所に核爆弾を仕掛けるんですから訳が判りません。この作戦、要は「世界最大の金保管庫が放射能に汚染されて実質的に無価値になれば、自分の持っている金が暴騰して大儲けができる」という、これまたしごく下世話な動機です。でもこれってよく考えなくても、突っ込みどころが満載なおバカ作戦なんですよね。だいたい、あんな頑丈な保管庫の中でたとえ超小型といえども核爆弾を破裂させれば、ほとんどの金が蒸発しちゃって放射能汚染どころの騒ぎではないでしょう。そして世界経済のシステムは破壊されて確実に大混乱になりますから、実業家であるゴールドフィンガー氏にはデメリットしかないでしょう。まあこれは原作に問題があるわけで、考えるとイアン・フレミングの007は結構なおバカ小説だと言えるでしょう。 そしてこの映画ではジェームズ・ボンドがびっくりするほど活躍しないんですよね。伏線なのかと思いきやボンドは最後までゴールドフィンガーに捕まったままだし、唯一の功績はオッドジョブを感電死させたことぐらいです。どうやってゴールドフィンガーの作戦をボンドは仲間に知らせたんだろうと不思議に思っていたら、なんとボンドに男に目覚めさせられたプッシー・ガロアが寝返って通報した(それも説明セリフだけで済ますという横着な撮り方です)という驚愕のオチでした。なるほど、大活躍していたのはボンドの下半身だったわけですね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2017-07-26 19:57:09)
11.  007/ロシアより愛をこめて 《ネタバレ》 
『ゴールドフィンガー』と初期007シリーズのトップ評価を競っていますが、個人的には本作がコネリー・007の最高傑作だと思っています。主題歌“ロシアより愛をこめて”も、シリーズ中もっとも有名な歌曲なんじゃないでしょうか。そういえばエンドクレジットに“次は『ゴールドフィンガー』でお会いしましょう”みたいな文言があるのに気が付きました。このころにはもう007シリーズの世界的なブレイクが確定していたんですね。 本作から007お得意のガジェットが登場してきますが、まだ仕掛けスーツケース程度で可愛いものです。それよりも男と男は肉体勝負、男と女は色気で勝負、のハード路線で撮られているのがポイントです。ダニエラ・ビアンキはこの映画の撮影時はまだ22歳(!)、その美貌は歴代ボンドガールの中でも文句なしのNO,1でしょう。彼女はこの後ロクに映画に出演せず60年代終わりには引退しちゃったんですから、実にもったいないことでした。ボンドに対するロバート・ショウがこれまた“記憶に残る悪役ベスト・ランキング”の上位にランク・インすることは必定です。ボンドとの列車内での格闘はまさにヘビー級戦で、迫力満点です。アクション・シーン全般もVFXをほとんど使わない肉弾戦が中心なので、引き込まれてしまいます。当時としては濃厚だったと思われるお色気路線もふんだんで、これぞ“大人のアクション映画”と呼ぶにふさわしいと思います。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2017-06-28 22:16:40)(良:1票)
12.  007/ドクター・ノオ 《ネタバレ》 
ジェームズ・ボンド、記念すべき初登場作。余談ですけど自分が子供のころにはたしか“ゼロ・ゼロ・セヴン”だったはずですけど、いつごろから“ダブル・オー・セヴン”に変わったんですかね? 前半はけっこうサスペンスを意識した撮り方をしてたんだな、と今の眼で観ても感じます。当然ですがシリーズ中盤以降のなんでもありのボンドではなく、マネーペニー女史といちゃついたりところどころでブラックな皮肉を吐くところなどジェームズ・ボンドのキャラを確立させる布石を打つだけで終わったという感じも否めません。それでも部屋に入るときの用心振りなどエージェントとして当然身に付けているはずの描写はきっちり押さえているところは好感が持てます。 やはりこの映画が趣をガラリと変えるのは、ドクター・ノオの島で例のドラゴンが登場してからでしょうね。ドクター・ノオというキャラはシリーズ中でも屈指の不気味クンだと自分は感じるんですけど、スペクター加入してまで彼が何をしたかったのかがいまいち不明なんですよ。秘密基地の中にわざわざメイドまで用意してボンドたちを迎えたり、独房に閉じ込めたボンドには通気口を破られていとも簡単に逃げられたリ、なんかわきが甘いんです。最近のアクション映画のラスボスの最期と較べると、信じられないぐらいあっさり退治されちゃうのは逆に新鮮に感じるぐらいです。この映画の後半パートに関しては、尺が30分ぐらい足りなかったのかな。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2017-06-26 23:42:24)
13.  大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス 《ネタバレ》 
昭和ガメラと言えばギャオス、実は大映特撮怪獣映画が産んだ最高のスターだったりして。その後のガメラシリーズでもカメオ出演して大根切りされたり平成ガメラでは一段と凶悪なキャラとして再登場果たしたり、やはりギャオスの存在感は大きいんです。とにかくあの幾何学的なスタイルがカッコ良いんですよね。人間を喰ったり血を吸うのが大好きで太陽光線を浴びると死んじゃうとか、怪獣というよりヴァンパイアみたいな奴です。 前作に続いてガメラは、またもや怪獣退治のためにどこからともなく登場するまるでフーテンの寅みたいな存在です。大映特撮の特徴としては怪獣が傷を負うシーンがやたらと多いことですが、本作のガメラとギャオスの対決はもう流血デスマッチ状態、怪獣スプラッターと呼ぶに相応しいですね。両者とも血の色が赤くないのでインパクトは多少減じましたが、これがふつうに赤かったらさぞや壮絶な画面となったことでしょう。自分の足を超音波メスでぶった切ってガメラから逃げるところなんて、観ていてもう痛すぎです。そして未だに強烈に記憶が残っているのが走る車を超音波メスで縦切りしちゃうシーンで、なんでこんな画を撮ったのか監督のセンスは理解不能です、でもこれは日本怪獣映画史の中でもトップクラスのびっくり映像であることは間違いないです。 欲ボケ人間のドラマが本編パートのサブストーリーというのは前作バルゴン戦を踏襲していていかにも大映らしいかなと思います。でもお上(道路公団)が善で地元住民が悪という露骨に体制的なプロットは、東宝特撮では到底考えられなくこれまた大映らしいところです。 さて本作からモンスターがなぜか子供の味方という他国の同種映画では考えられないプロットが本格化したわけですが、リアルタイムでガメラを観ていた子供の自分でもガメラ・シリーズは本作が耐性の限度でしたね。これ以降のガメラ・シリーズは子供の眼で観てもバカバカしいものでした。
[映画館(邦画)] 5点(2016-01-16 23:24:06)(良:1票)
14.  大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン 《ネタバレ》 
昭和ガメラ・シリーズの中では文句なしの最高傑作、というか思わず「どうしちゃったの?」と訊きたくなるほど他のガメラとはタッチが違い、それは東宝の『フランケンシュタイン』2作に負けないグル―ビーさです。「ガメラと言えば子ども(というかガキ)」がお約束なのに、本作ではエキストラ・クラスまで観ても子供が全然画面に登場しません。その分関西を舞台にしてるだけあってコッテコテの欲まみれ男ばっかり登場してくるのですが、これはこれで観ててちょっと鬱陶しい感じです。あと気がついたのは、ガメラ映画ではやたらとナレーションが多いんですよ、東宝の怪獣映画は対照的にナレーションはほとんど皆無です。これはきっと本田猪四郎の拘りなんでしょうね。 バルゴンはニューギニアが産地ということですが、戦時中にニューギニア戦線に従軍した兵士がその卵を見つけたというのは、なんか有りそうなお話しの様で掴みはGoodです。たしかにあれはオパールと間違えても不思議じゃないです、まさかトカゲの卵とは誰も気がつかないでしょう。約40年ぶりに観直したのですが、バルゴンの造形は思いのほか良く出来ています。またこの映画ではローアングルからバルゴンを撮ることに拘っていて、怪獣としての重々しさが良く表現されていたと思います。でも「水に浸かると皮膚が溶ける」という弱点は致命的で、色んな奇天烈な武器も持あってますけど昭和の怪獣の中ではいちばん弱いかもしれません。なんせ人工雨を浴びせられるだけで中盤からはほとんど動けなくなってしまいますからねえ。これならもう少し頑張れば、ガメラに頼らなくても自衛隊が史上初めて怪獣を退治する快挙が達成できたかもしれません。 この様に本作はバルゴンと欲深男たちの物語で、実はガメラは脇役なんです。冒頭こそ派手にダムバスターしてくれますけどすぐにどっかに飛んで行ってしまい、中盤になってやっとバルゴンのいる大阪に登場します、しかも唐突に。でもすぐ冷凍液で凍らせられてお休み、ラスト10分を切ったところで再登場。自分の発した光線で自爆し瀕死の重傷を負ったバルゴンを咥えて琵琶湖に引きずり込んで息の根を止める、良く考えるとガメラがスクリーンに登場するのは30分弱しかないんです。 でもなんでガメラはバルゴンが水に弱いって知っていたんでしょうか?これも怪獣映画でお馴染みの便利なフレーズ「動物の本能」ってやつでしょうかね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2015-12-24 22:21:58)
15.  大怪獣ガメラ 《ネタバレ》 
そもそもガメラのアイデアは、大映社長の永田雅一が旅客機の中で観た空を飛ぶ亀の夢なんだそうです。まあそれを映画にしちゃうところがワンマン社長の面目躍如なんですが、いくら怪獣とはいっても生物としてのリアリティを決定的に欠いたキャラが、大映という会社自体が消滅してしまったのになんと21世紀まで生き残るとは驚きですね。松竹のギララや日活のガッパはあえなく一作で消滅ですからねえ。 昭和の各社の怪獣映画の中でも大映のは脚本のいい加減さではやはりピカイチですね。その割には妙に凝ったところもあって、たとえば本作では原爆搭載機を撃墜するのは明らかに米空軍機ですし、船越英二と浜村純は東京大学と北海道大学の教授という風にかなり現実社会にリンクしています。東宝特撮では絶対考えられないことで、あっちでは“ロリシカ国”“東都大学”“毎朝新聞”が定番ですからねえ。でもそれとストーリーにリアリティがあるかは全く別問題でして、東大と北大の学者さんが考えた対ガメラ作戦が「カメはひっくり返ると自力では起き上がれないので、餓死させる」と来るんですから、それも大真面目に。そしてガメラが火を吹いて回転しながら逃げてしまうと、「カメが空を飛ぶとは…」と北大の先生、もうそれは観てるこっちがいうセリフじゃ(笑)。 特撮技術自体は同じ大映でも京都撮影所が製作した『大魔神』には足元にも及びませんが、当時としては頑張っていた方でしょう。ガメラの吐く火炎は口にバーナーを仕込んで本物の火を出したそうで、いやはや何とも凄いアナログ撮影ですがスタッフの熱意というか根性は伝わってきます。そしてガメラ映画にはお約束の子供はこの第一作目から始まってますが、このガキがまたとことんウザいんです。いろんなところに勝手に潜り込んできて危うく助けようとした大人ともどもガメラに殺されそうになり迷惑このうえなしです。でもあれだけガメラ・ガメラと執心だったくせに、大島のロケット基地を観たら途端に「僕も大人になったら立派な科学者になるんだ」と宗旨替えしちゃうんです。もういいから、お前早く死ね!(怒)
[CS・衛星(邦画)] 4点(2015-12-12 22:11:56)
16.  戦うパンチョ・ビラ 《ネタバレ》 
メキシコ革命って複雑な経緯のうえに指導者たちの裏切りの連続でちょっとかじっただけでは理解不能なんですが、それでも何をしたかは知らなくてもパンチョ・ビラの名前だけは有名ですよね。まあぶっちゃけて言えば山賊の親分なんですけど、メキシコでは正義のヒーローという位置づけされているみたいです。 メキシコ大好きのサム・ペキンパーが脚本書いた映画なんで、全篇に“パンチョ・ビラ愛”が満ち溢れていますね。ビラを演じるのはユル・ブリンナーですが、髪の毛ふさふさで髭まで生やしてるという彼としては珍しい役作りです。自分の存在感を示す為に政府軍に身内の村が荒らされるのを傍観したり11回も結婚(それも重婚)するなどと、ビラの人間像をあけすけに描いています。でも自分で飛行機の操縦に挑戦して失敗するなど抜けたところも見せるコミカルな一面もある人物なんです。彼にヤミ武器商人のロバート・ミッチャムとビラの側近チャールズ・ブロンソンが絡むのですが、この三人がそれぞれみごとにキャラが立っていて愉しめます。善人だか悪人だか掴みどころがないミッチャム、冷酷残忍で捕虜を殺しまくるけどとぼけたところもあるブロンソンというのが役どころです。戦闘シーンもなかなか迫力がありまして、大規模な空撮を使った攻城戦のシークエンスなどはかなり見応えがありました。 本作はテンポも良いしアクションもキレているという絵に書いた様な隠れた秀作なんですが、DVD化もされていません。TSUTAYAの“発掘良品”あたりでソフト化するには相応しい作品じゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2015-04-17 21:44:14)
17.  胎動期 私たちは天使じゃない 《ネタバレ》 
いきなり「推選 日本労働組合総評議会 協賛 日本医療労働組合協議会」の字幕が大写しにされると、次に流れるのは古き良き時代のローマ字表記の新東宝マーク。つまりこの作品は大蔵貢が会社を投げ出した新東宝が倒産するまで61年に製作した21本の映画のひとつだったというわけです。総評がスポンサーの企画を映画化するなんて、そりゃ大蔵貢時代には絶対あり得ないことですからね。 脚本はなんと新藤兼人、中身は病院付属の看護学校を舞台にしたプロレタリア演劇になりますかね。色んなところから支援を受けて撮られたみたいで、主役の看護学生たちはほとんど俳優座の女優たちです。新東宝の女優陣からは池内淳子や三原葉子などが出ていますが、みんなチョイ役か悪役ばかりです。三原葉子ももちろんナース役で、彼女のナース服姿というレアな映像が拝めます。婦長に平手打ちを喰らわしたり辞めてストリッパーに転職したり、キャラ自体はいつもの三原葉子でした(笑)。 しょせんはプロレタリア演劇なので、「看護学生=善」「学校体制=悪」というと綺麗に色分けされています。教官や先輩ナースたちは生徒たちが自治会を作ろうととするのを徹底的に邪魔するわけですが、あまりに学校側に感情移入させないように持ってゆく脚本は、ちょっと強引過ぎる感じがします。 こうやって外部の血を入れて苦労した企画でも、肝心の監督が新東宝プロパーのヘボ監督じゃあ映画の出来はイマイチにしかなり様がありませんでした。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2014-03-16 23:45:20)
18.  大脱走 《ネタバレ》 
120年を数える映画の歴史でもっとも有名なバイク・アクションを見せてくれるスティーブ・マックイーン、そして彼の短かった映画人生でも最高のヒーローはこのヒルツであることは間違いないでしょう。今まで映画の中で色んなヒーローを見てきたけど、本作のマックイーンを超えるカッコいい男にはいまだ出会えず、です。 荒唐無稽な大冒険スペクタルの様に見えますけど、これが実話をベースにしているというところがまた凄い(もっともマックイーンのキャラはフィクションですが)。収容されている捕虜たちの国籍もバラエティに富んでいて、米・英・豪・ポーランドと言うわけですが、各国の軍服の微妙な違いにもきちんと考証が行き届いているところは高得点です。それはドイツ側にも及んでいて、所長ルーガー大佐が首に下げている勲章がプール・ル・メリットであることに注目。これは帝政時代の最高勲章で、部屋に飾られた写真からも彼が第一次大戦で活躍した戦闘機パイロットであったことが判ります。ナチス政権では廃止されたこの勲章をいまだに佩用している設定からも、この人物がナチス信奉者ではないことをさりげなく暗示していますね(ロンメル将軍も生涯この勲章を佩用していました)。こういう細部に対するこだわりの積み重ねが、戦争や歴史もの映画の出来を左右するものなのです。 「脱走は捕虜となった兵士の義務である」と言う欧米の文化(?)はなかなか日本人には理解しがたいところがあります。私なら戦争が終わるまでのんびり収容所生活を楽しみますがね(笑)。
[映画館(字幕)] 9点(2013-09-11 22:02:28)(笑:1票)
19.  ダンケルク(1964) 《ネタバレ》 
原題は『ズイドコートの週末』。戦前は海水浴客で賑わっていたダンケルク近郊の海岸に、英仏の敗残兵たちが押し込められてしまったわけです。彼らにはもうフランスでの戦争は終わった様なもので、ドイツ軍の砲爆撃にさらされながらただ救出されるのを待つだけの状態。イギリス兵たちにはまだ帰国出来るかもしれないという希望があるけど、フランス兵にとっては船に乗れてもそれは故国との永遠の別れになるかも知れないという絶望的な状況でもある。このフランス兵がまたおっさんばっかりで若者がベルモンドぐらいしか出てきません。第一次世界大戦で大量の戦死者をだして出生率が著しく下がった当時のフランス軍の状況が判ります。後にも先にも、ダンケルク撤退戦をフランスの視点から描いた映画は本作だけなので貴重です。むかしは仲が悪くて戦争ばかりしていた英仏人の微妙な気質の違いも良く判ります。 紅一点のC・スパークの魅力を満喫できるのは特筆ものです。顔のパーツが大きいところは、今の女優で言うとA・ハサウェイみたいな感じでしょうか。死に行くベルモンドの眼に、スパークがスーツ・ケースを持って遥か彼方から歩いてくるのが映るラストシーンには、ほんと胸が突かれます。
[映画館(字幕)] 7点(2013-02-02 22:55:36)
20.  魂のジュリエッタ 《ネタバレ》 
ジュリエッタ・マッシーナの顔を観ているとなんか誰かに似ている様な気がしてきて、そう、山東昭子にそっくりじゃないですか(笑)。そんな歳がばれる与太話は別にして、彼女には不思議なオーラがただよってました。この後20年後の『ジンジャーとフレッド』まで実質映画出演がないなんて、この人フェリーニと結婚しなかったらもっと他の監督と仕事をして錚々たる大女優になっていたかもしれないと思えて残念です。巨女フェチのフェリーニが小柄なジュリエッタを女房にしたのもまた不思議ですが。 この映画は言ってみればユング式精神分析の啓蒙映画みたいなもので、祖父が乗る飛行機や籠を使って出入りする樹上の部屋など、心理学的には判りやすいメタファーが多いのでちょっと拍子抜けするところもありました。フェリーニにとってまだ二作目のカラー作品ですので、セットや帽子を強調した衣装の色使いは今観ても斬新です。モノクロ作品時代が長かったと言う共通点があるせいか、フェリーニと黒澤明はカラー映像に対する感覚が似ている様な気がします。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2012-02-08 00:29:04)
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