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1.  エルネスト もう一人のゲバラ 《ネタバレ》 
1959年夏場当時の服装、外務省のオフィスや新聞社の会議室などを再現する仕事が実に丁寧だ。 当時の風俗をこれ見よがしに画面に詰め込むといった風ではなく、 四角い氷の上にやかんを置いて水を冷やしているといった描写が控え目に為されているのがいい。  キューバロケも実際の現場を多く取り入れているのではないか。学生がくつろぐカフェや学内など生活感の滲む ロケーションに、オダギリジョーのナチュラルなスペイン語と慎ましいキャラクターがよく馴染む。  時折その佇まいの背後に風が吹き、木々が揺れる。 地面に横たわり射殺される主人公の眼がカメラを見る。その背後に小さく揺れる焚火の炎。 人物と風土が溶け合うなかに、フレディ前村の人生が浮かび上がってくる。
[映画館(字幕)] 7点(2017-10-14 13:43:39)
2.  エイリアン:コヴェナント 《ネタバレ》 
冒頭に現れるのは、蒼い瞳の超クロースアップ。『ブレードランナー』冒頭のレプリカント:ロイの蒼い瞳と同じである。 加藤幹朗氏の「『ブレードランナー』論序説」が論考した「超時間的存在」たる蒼い瞳の主の説を踏まえるなら、 本作の真の主人公がマイケル・ファスべンダーの演じるアンドロイドであろうことは早々に明白だろう。  高みから紅茶を注ぐ彼が人間を見下ろす冒頭の位置関係と冷徹な凝視は、冬眠機を見下ろすラストまで映像的な韻を踏み続ける。  その割を食うようにヒロインが魅力を欠いてしまっているのも、至極ごもっとも。  序盤で亡くなった船長の形見らしきものを彼女が結ぶシーンからして、ショットを三つも四つもに分割する無意味さに ストレスを感じさせられるのだが、これがアクションシーンとなるとさらに乱雑・細切れになるわけでまるで面白くない。 それでなくともショットが無駄に多いのに。  第一作を再見するとショットの持続が明らかに違っていて、サスペンスのタメがまるで違うのだ。
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2017-09-23 04:28:32)
3.  エル ELLE 《ネタバレ》 
イザベル・ユペール繋がりで、シャブロルの『甘い罠』のサスペンスの味わいを思い出したり、 同名タイトル繋がりで、ブニュエルの脚に対するフェティシズムを連想したり。 特に夏休み明けだけに、非心理的表情と奇矯的言動のアンチ・ハリウッドぶりは心地よくすらある。 その真意を容易には読ませないユペールの表情に終始引き込まれる。  門、窓、ドア、鏡が頻繁に活用されるが、特に窓外を背景にしたリビングのショットは風や鳥、猫や侵入者が次々と 現れ静かなサスペンスで張りつめさせる。  この窓のあり方も実にシャブロル的だ。
[映画館(字幕)] 7点(2017-09-05 23:19:38)
4.  映画 聲の形 《ネタバレ》 
直訳のとおり、言葉が手話の型・ポージングによって具体化される。映画版としては当然その動き=アクションが重視されることになるだろう。 実際に、発話のシーンはバストショットで対話にあわせてリップシンクロの動画を施すというような安易な手法は極力避け、 表情以外の部位や空ショット的なカットを織り交ぜたり、POVショットを多用したり、フレーム・イン・カメラフレームを利用したりと 画面に変化を持たせている。 手話の身振りもショットサイズやアングルに工夫を凝らしながらアニメーションとして再現することで描画ならではのささやかな誇張が表現できている。 そうした手話の模写自体は実に丹念で力が入っているのだが、いかんせんヒロインの像が弱いように思う。  実際の手話にしても過去の実写映画の手話シーンにしても、観るものを感動させるのは表情や全身の身振りによるその表現力の豊かさだ。 例えば『風の歌が聴きたい』での中江有里の感情豊かな表情とそのアクションを思い起こしたい。 その映画的アクションと比べると、こちらは文字通り小手先の模写に見えてしまう。  ヒロインの人物の掘り下げがもう少しでも欲しいところである。 別に御大層なことではなく、食事でも家の手伝いでも難聴者ならではのちょっとした日常動作の点描の中から人柄を浮かび上がらせるのが演出だろう。 ベッドに飛び込むばかりでは描写が貧弱に過ぎる。
[映画館(邦画)] 5点(2016-09-21 23:28:35)
5.  X-MEN:アポカリプス 《ネタバレ》 
より細密に、より大スケールにというのは重々承知しつつも、この都市破壊のパノラマももはやマンネリと化している。 正直のところ、またかと思う。無味乾燥なインフラ破壊の絵解きであって、災厄の描写とは程遠い。 (劇中のスターウォーズネタは、特撮ジョン・ダイクストラ絡みでもあるのだろう、その1983年設定は、 今の時代に勧善懲悪ものをやるエクスキューズの意味合いが強く感じられる。)  not alone、 not alone、の合唱も食傷してきた。ギャラクシーだか、ガーディアンだかの幼稚な映画も そうだったが、とにかく仲間だ、仲間だと声に出して確認していないと気が済まないのか。 目線なり、身振りなりでスマートに表現出来るものを。  前半の悪役側の仲間集めも、やりようによっては『七人の侍』的な面白さが出せたかもしれないが、 この若干三名がまた小粒なのだ。 寝返りとか翻意のシーンこそ映画の高揚する瞬間のはずだが、そこの演出が弱くてどうするという話である。
[映画館(字幕なし「原語」)] 3点(2016-08-11 16:57:33)
6.  エンド・オブ・キングダム 《ネタバレ》 
辞職願を出すか、出さぬか。生まれてくる子と妻の為にどうやら主人公は悩んでいるらしい。 事件を経て映画のラストにはあまりにも判りきった結論が出される訳だが、主人公の所謂人間味を垣間見せるための出来レース的設定としても、 つまらないエピソードだと思う。画面的にもパソコン前の入力作業でしかない訳で。  といいながら、一旦アクションが開始されればジェラルド・バトラーも機敏な銃捌きが様になっている。 クライマックスのアジト突入ではカメラも長廻しで縦横無尽に彼の動きを追い続けて臨場感をよく演出している。 その中で、現場リーダーとの間に交わされるやりとりと連帯感などさりげない部分が良い。 半面、反テロだとかの大きな物語の方ははっきり云えば胸糞悪い。  最終盤のアジト内の攻防もアイデア不足である。
[映画館(字幕なし「原語」)] 4点(2016-06-03 23:10:48)
7.  エヴェレスト 神々の山嶺 《ネタバレ》 
ザイルで宙吊りの相棒を見捨てるか、助けるか、を山仲間でひと悶着するシーンが脈絡もなく始まると、この後にどんなエピソードが来て、 それをどう発展させていくつもりか、誰でも簡単に読めてしまうだろう。実際その通りの展開なのだが、あまりに直截すぎて呆気にとられる。  現地ロケーションのスケールに負けまいと、情緒過多の劇伴音楽も、スターのアップも物理的スケールがデカい。佐々木蔵之介の表情とか、勘弁して欲しい。  頻繁なフラッシュバックももっと控えめにすることは出来なかったか。  厳寒の天候の中、ほぼ垂直の山肌を登攀する人物を捉えるショットは力強く、迫真性は満点である。 小さな人物と雄大な景観を極力一体として撮っているのがいい。
[映画館(邦画)] 4点(2016-03-18 23:58:25)
8.  エベレスト 3D 《ネタバレ》 
かつて本多勝一氏が指摘したマロリーの「because,it is there.」が相も変わらず劇中で「そこに山があるから」などと日本語訳されている。 これはエベレストの映画ではないのか。何故に最高峰エベレスト(it)に登るのか、を語らう会話のシーンで字幕は「山があるから。」 頓珍漢な翻訳センスに頭が痛くなる。 映画とは関係ないが。  『エベレスト3D』だが、望遠のパノラマショットの3D効果は案の定、実に薄い。飛び出す絵本レベルで、平板さこそが際立つ。 断崖からの俯瞰の数ショットのみに効果を発揮し、遠近感の失せる嵐のシーン以降は有害でしかない。 深度の浅く薄暗い屋内シーン、人物はアップ中心でその顔貌の凹凸ばかりを3Dで見せつけられても苦痛なだけである。  サテライト電話の用法・見せ方も巧くない。
[映画館(字幕)] 4点(2015-11-10 23:52:32)
9.  S -最後の警官- 奪還 RECOVERY OF OUR FUTURE 《ネタバレ》 
「この国のために」とかいう、あまり耳馴染みになりたくないイマドキなフレーズが押し付けがましく二回も三回も出てくる。 こういうところからもジワジワと慣らされていくわけか。簡単に括れば、御用映画。 『海猿』だの『図書館なんたら』だの、カワイイお兄さん、お姉さん達のソフトな外面で覆ったマッチョイズムが解りやすい。  そのヤサ男:向井らが乱打戦、ヒロイン新垣・綾野らが狙撃戦を担うわけだが、やはり狙撃のほうが映画と相性がいい。  ジャックされたバス内を狙う狙撃手の眼。ターゲットスコープ内の視点。揺れるヘリ内で銃身を安定させてのタンカー側との狙撃戦。その俯瞰ショット。 それら一撃一撃が重みを持つシーンが映画を引き締めている。  向井・オダギリが無駄に格闘するクライマックスの肉弾戦は、新垣が止めの一撃を狙うシーンの緊張の邪魔ですらある。
[映画館(邦画)] 4点(2015-11-06 22:58:10)
10.  映画 ビリギャル 《ネタバレ》 
ビル群を遠景に、英語の格変化を暗唱しながら夕暮れの土手を自転車で走る有村架純を追う横移動。 こういうエモーショナルなロングショットをもっと見せて欲しい。  家の廊下の壁に大量に貼られた学習メモと、それを見つめる田中哲司。 辞書を引きつつ机にかじりついて筆記する有村の後ろ姿。 映画はヒロインらの情緒過多な表情アップに偏り気味だが、そういった顔面に頼らない ショットでもっとドラマを語れないものか。  ハイタッチやおんぶなど、スキンシップもいろいろと採り入れてはいるのだから、 ラストの手紙のやりとりといった言語的なくどいコミュニケーションも少し控えて欲しい。  ラストの新幹線は、冒頭と中盤の憧憬を語るシーンから繋がるはずだが、 これも効果的な見せ方になっていない。  父母らの芝居もまた情緒過多で、 おまけにBGMのタイミングもショットも台詞もテレビドラマなのだが、一方で その臆面の無い割り切りぶりがピュアすぎるヒロインを始めとするキャラクター像を 鮮明に形作って心地よかったりもする。
[映画館(邦画)] 5点(2015-05-15 22:09:17)
11.  江ノ島プリズム 《ネタバレ》 
2012年と年月日までを特定しながら、吉田康弘は時代錯誤なまでに頑なに携帯電話を登場させない。 初監督作『キトキト!』では惜しくも一箇所肝心なところで使ってしまっているが、 それ以降は確信的に禁じ手としているのは間違いない。  だから、この物語の中では海外留学はまるで今生の別れのようだ。 本田翼は手紙をしたため、福士蒼汰は駅へと海岸沿いの道路を自転車で全力疾走する。 そこに普遍的な感情と、映画の躍動を生んでいる。  陽光が差し込む江ノ電の長閑な走行と、野村周平の住む日本家屋などのレトロ感も、 ケータイ無き世界でこそ活きる。  校舎の窓から夜の花火を見る未来穂香の表情がまた素晴らしい。 RAM WIREのエンディングテーマとドラマとの相性もいい。  
[DVD(邦画)] 7点(2014-11-11 23:51:02)
12.  エクスペンダブルズ3 ワールドミッション 《ネタバレ》 
序盤に登場する港湾や、クライマックスの舞台となる廃ビル、 そこに至るまでの岩山など、各地のロケーションが素晴らしく、 火器の物量もより派手になり『スパイダーマン』以降の傾向ともいえる アクロバティックなアクションも様々に組み入れられているのだが、 もはやそこにサスペンスは望むべくもない。 スリルなきカウントダウンごっこであり、シューティングごっこである。  メル・ギブソンとの因縁話の弱さも、そのままドラマの弱さになっている。  いわゆる肉体派を揃えながら、またしてもひたすら顔面偏重の画面であるあたりも スター映画のある種の弊害だろう。  かつての戦友についてのとめどのない饒舌をシルヴェスター・スタローンが 決して聞き流してはいなかったというエピソードのささやかな仕掛けの巧みさや、 「one way is better than no way」などの粋な台詞が効いて、 影を秘めた陽性のアントニオ・バンデラスが断然、儲け役である。 
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2014-11-03 23:11:00)
13.  永遠の0
無駄に氾濫する説明台詞に、その会話が始まると同時に鳴り出す説明調のBGM。 このパターンが全編にわたって続く。 おまけに語り手自らが感傷に溺れきったナミダナミダの鬱陶しい表情芝居の羅列と、 手とり足とり。これは幼児向け番組か。  思い入れも過剰にキャラクターに寄りすぎのカメラは引くことを知らず、 ダラけた脚本は、省略というものを知らない。  一枚の写真は最後に一度だけ効果的に見せれば十分だろう。何度も見せる気が知れない。 橋爪功の知るはずのない、一夜の帰宅シーンのエピソード。 なぜ、それをあたかも橋爪のフラッシュバックのごとくに視覚化し、 現在シーンの三浦春馬らのショットへ繋げるのか。 ここも、後半の井上真央に語らせればすむだけのシーンだろう。  見せるばかりが脳。見せないことで語るということをまるで知らない。  いくらシネコン映画とはいえ、観客をなめすぎではないか。      
[映画館(邦画)] 2点(2013-12-26 22:26:51)
14.  エンディングノート
黄金色に輝く銀杏並木の光が、街路を歩く主人公:砂田智昭さんの横顔を包む。 砂田さんが登る階段の背後で教会のステンドグラスが輝いている。 臨終を確認する音声が流れる中、街のシルエットとその背後に広がる マジックアワーの淡い陽光が悲しいまでに美しい。  家族の交流を映し出す合間に点描される、光を伴った街・空の情景ショットが、 単に映像がキレイだとかいう事ではなく、映画の場面として印象深い。  8mm映像の中で笑う、ありし日の父の姿は誰が撮ったものか。 その粗い画調ならではのノスタルジックな美しさ。  病床で妻への愛情を伝えるシーンは恐らく、撮影者=監督不在のまま 録画されているのだろう。光量不足でザラついた画面だからこそ 夫婦二人だけの時間・空間を切り取ったこの場面はひときわ美しい。  日頃からカメラを向けてきたからこそ、自然体のままカメラを受け入れ、 何の衒いもなく被写体を生きる父。 そして砂田麻美監督を含めた家族それぞれが、被写体として素晴らしい。   
[DVD(邦画)] 8点(2013-10-14 22:57:14)
15.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q
作戦開始を伝える交信音声が流れる中、画面中央に浮かんでいたメカニックが 次第に大写しとなり、回頭、降下。そして縦横無尽のアクションに突入していく。  事態の推移は判然としない上、アクションもスピーディで目まぐるしいながらも、 逆に映画開始から観客の視線を巧みに誘導し、一気に引き込ませる。 この牽引力はなかなかだ。  そのファーストカットや、戦艦の戦闘ブリッジ内を旋回するカメラ、 遠心力を利用した戦法や渦巻く雲海など、ぜひ3Dで見たいと思わせるような 立体的なカットが印象的だ。  TV版のような静止画利用はほとんどなく、 ピアノ連弾のシーンなどは恐らくプレスコなのだろうが、 シネスコサイズでの難しいレイアウトの中で、 運指を的確に動画させていて手抜きを感じさせない。  中盤の、星々が小さく瞬いている静かな夜空のカットの美しさは忘れがたい。  
[映画館(邦画)] 6点(2013-04-23 23:43:56)
16.  エクスペンダブルズ2
序盤でのブルース・ウィリスとシルヴェスター・スタローンの対話を、 それぞれ別撮りしたかのような単調な切返し編集で焦らしながら、 シーンの最後ではしっかりと二人を横並びに収めてみせるあたりが憎い。  複数のスターを同一画面内にどう配置し、どういうアングルと距離で引き立てるか。 如何に編集で邪魔せずに、ジェイソン・ステイサムが「classic」と呼ぶ スター自身による体技をフルショットで見せるか。 そうした見得の切り方、ケレンの利かせ方が前作より格段に良く、 静のシーンを短く配置した緩急のバランス感覚もいい。  その静の中にも、朝霧・硝煙・葉巻の紫煙の動が演出され、 粒子の粗いザラついた感触の残る画面によく映えている。  そして、重低音の銃撃と爆発も祝砲と花火のように華々しい。 
[映画館(字幕なし「原語」)] 8点(2012-10-24 06:32:08)
17.  エッセンシャル・キリング 《ネタバレ》 
映画は映画であれば良い。読書ではないのだから。メッセージ(「いいたいこと」)やテーマを伝えたければ論文を書けば良いだけのこと。  文科省の読書感想文による主題論教育に従順に馴らされてきた者は一般的に映画においても画面を味わうことを知らず、まずテーマを読みたがり、そしてそれが自分の理解の範囲を超えたとたん、「芸術」を逃げ口上に使う。よって純粋な活劇はなかなか理解されることがない。   雪の白に擬態し、罠に嵌った犬を囮に使い、木の枝や蟻を齧り、崖から滑落する。 『ランボー』のサバイバルアクションを髣髴させつつ、その『ランボー』がラストにおいて嵌った饒舌な内面心理や社会性といったものも見事に削ぎ落としている。  言語も記憶も時制もことごとく排除され、生物の一次欲求だけが活劇を駆動していく。  代わりにその静寂のラストに訪れるのは『バルタザールどこへ行く』を連想させるような冷厳さだ。 右肩部分に血痕の付いた寡黙な白馬は、主人公(ヴィンセント・ギャロ)が野生へと転生した姿か。  回想シーンの幻聴や様々な状況音(ヘリの爆音、チェーンソー、犬の咆哮など)そして台詞の代わりに主人公の口から漏れる呻き、吐息、咀嚼音といった要素に意識を向けさせられるのもブレッソン的だ。  馬・鹿・犬たちの佇まいと躍動が素晴らしい。特に、ギャロの周囲に群がる犬の集団アクションは圧倒的なスペクタクルである。 
[映画館(字幕)] 9点(2011-09-19 18:14:36)
18.  エンジェル ウォーズ 《ネタバレ》 
妄想なのだから、架空のカメラワークでも、物理法則無視でも、誇張アクションでも良いのだが、その肝心のアクションにいわゆる「ツメ」「タメ」といったアニメーション的ケレンもハッタリのセンスも衝迫力も感じない。 手垢塗れのスロー・クイックモードを濫用して奇を衒おうとするのだが、動作の中で施すべき箇所を取り違えているように見える部分が多々ある。だから、殺陣アクションがメリハリも快感も伴わない。 というより、そもそもシチュエーションに危機感もなければ痛覚の演出もないから、どうでも良くなってくる。 当然ながら、ヒロインがコックの喉元にナイフ一本を突きつける厨房シーンのほうがまだアクションとしてのスリルがある。 意匠とイメージ先行で、デジタルエフェクトの陥穽に嵌っているというべきだろう。  図面を必要とする程の複雑構造の病棟なら、その建築物の空間的ディティールをアクションや芝居場に活かすべきだろうに。 火炎も脱走経路も印象が極めて薄い。 
[映画館(吹替)] 4点(2011-05-07 16:34:52)
19.  エクスペンダブルズ 《ネタバレ》 
ジェット・リーとドルフ・ラングレンの格闘まで、編集で「ワンショット(一打)・ワンショット」まで切り刻む愚に悲しくなる。  打撃間の「間」を削ることが、キレの良さとでも勘違いしていると思われる。 おまけに顔面アップの連続で、まともに体技も間合いも見せてくれず、徒手格闘戦の面白味がまるで無い。CGを大幅に封印したとしてもせっかくの格闘系俳優自身によるアクションが活きていない。 二度のカーチェイスも単に派手で大味。格闘シーン同様に運動の持続性も緩急も無く、空間と位置関係の提示には全く無頓着で、興を削ぐ。  「売り」らしいスリーショットは、まともなスリーショットならず。バランスの配慮か、役者の絡み演技未熟のためか、スケジュールの都合か。各々の短い単独ショット、あるいは無言のツーショットの組み合わせを単調に繋いだのみで、三人の正面姿を1ショットに収めた持続的画面はほとんど無い。背中だけの代役が一人いれば、三人揃わなくても撮れてしまう貧弱で胡散臭いシーンだ。  クライマックスに至ってもひたすらな「作戦無き」乱打戦の連続に、途中から安泰感すら感じさせてしまうのも良いのか悪いのか。  一方でフルオートショットガンの重低音や、中盤の橋桁での空爆ロングショットといった派手な見せ場、音響は良い。  『デモリションマン』風のベレー帽、『コブラ』風のレーザーサイト、サングラスといったセルフオマージュ的アイテムの数々は懐かしく、橋桁での泥臭い「全力疾走」ショットはシルヴェスター・スタローン映画必須の刻印ともなっている。   
[映画館(字幕)] 4点(2010-10-17 21:30:17)
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