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プロフィール
コメント数 2390
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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1.  バッド・ジーニアス 危険な天才たち 《ネタバレ》 
貴方は学生時代にカンニングをしたことがありますか?私はあります。でも、カンニングをビジネス化して大金を稼ぐなんて発想は思いつくわけもなく、現代はITテクノロジーがそれを可能にしてしまったわけだけど、どんなことでも金儲けの手段になるなら躊躇しないという世界になってしまったという事なんでしょう。まあこの映画のタイの高校生が使う手段はスマホなんだけど、あくまで情報伝達ツールであるわけで解答をデータに落とし込む手口はまさに悪知恵の極致と言えるもので、こうやって考えるといくらAIが発達しても人間の悪知恵の方が一枚上を行くんじゃないでしょうか。 タイの映画を観たのはたぶんこれが初なんだけど、いやはやいきなり凄い傑作にぶち当たりました。“バンコクの蒼井優”みたいな感じの舌を噛みそうでとても音読みできそうもない名前の主演女優、劇中で喜怒哀楽をほとんど見せない強烈な演技を見せてくれますが、実はファッションモデルで演技経験はゼロというのは驚き。彼女とペアでSTICに挑むバンク君が母子家庭、父子家庭の主人公とは左右対称みたいな環境で、二人を利用して試験突破を図るカップルはブルジョア家庭というところはちょっとありきたりな設定と言えなくもないけど、このバカップルをけっこうコミカルな存在としているのは良かったです。とにかく後半のSTIC試験のシークエンスでのサスペンスとハラハラドキドキは半端ない、まさに手に汗握るとはこういうことですな。たかがカンニングがここまでスリリングなストーリーになるとは、予想外でした。生真面目なキャラと思っていたバンク君が、ラストではふてぶてしいカネの亡者みたいになってしまうのは、自分にはまったく思いもよらない展開でした。邦画なら絶対に二人を恋仲にするラブコメみたいになるのが必定、こういうシビアな幕の閉め方を少しは見習ったらいいのにねえ。でもいちばんいい味出してたのは、リンのお父さんであったことは間違いなしでしょう。名前が出てこないけど、この人とそっくりな俳優が日本にいますよね、誰だったかな?
[CS・衛星(字幕)] 9点(2024-01-22 22:06:59)(良:1票)
2.  パラサイト 半地下の家族 《ネタバレ》 
この作品がオスカー作品賞を獲ったのは、韓国では大統領がまだザイトラとかいう人だったころ。当時の韓国は国策でKポップとやらが世界でムーブメントになっていると有頂天になっていて、ボーイズアイドルのグループをなんと国連総会に連れてってスピーチさせるなんて暴挙に出たりしていた。私からすれば韓国映画がアジア映画としては初めてオスカー作品賞を受賞したってことの方がよっぽど一大快挙、「ついに韓流映画もここまで来たか」と感無量でした。ところが韓国では何とか少年団の時とはほど遠い冷めた反応だったんじゃないかと思います。まあそれは華やかで先進的なイメージをアピールできるポップスと違いこの映画のテーマが格差社会である韓国の恥部に触れていたからなんだろう、こういうところは実に判りやすい国だと思います。 日本でも山の手と下町という区別が昔からあるように、富裕層は“上”庶民層は“下”というところはどんな国の都市にもある地理区分みたいですね。それにしても“半地下”という住環境はちょっと凄いですね、これは黒澤明の『天国と地獄』の設定が彷彿されます。前半の一家四人がそれぞれ他人を装って使用人としてセレブ家に入り込んでゆく過程は、ブラックでとぼけた演出もあって面白いですね。これはジョセフ・ロージーの『召使』みたいな感じで主人一家を操ってゆくのかと思いきや、嵐の晩を境に想像のはるか上を行く展開になってゆくわけです。この映画の中ではセレブ家のセットの造りこみが豪華で、こういうカネのかけ方からして日本映画が韓国映画に勝てないのが納得できます。ただラストはいかにも韓国映画らしい惨劇展開でしたが、後日談をつけた引っ張り具合はちょっと冗長だなと感じました。決して凡作ではなくその切れ味にも鋭いところがあるのですが、オスカー作品賞を獲るほどの出来なのかはちょっと?というのが感想です。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2023-11-09 22:55:49)
3.  Back Street Girls -ゴクドルズ- 《ネタバレ》 
私は原作コミックもTV放映アニメも未見で、「ヤクザ三人組が下手打って指ならぬアソコをつめて地下アイドルデビュー!」なんて超バカバカしいプロットなんで期待せずに観ましたが、けっこう真面目に撮っていて面白かったです。女性化した三人はなかなか魅力的で、だいいち彼女らの披露する楽曲が極道ネタを巧みに取り入れた歌詞で、しかもちゃんとアイドルソングとして成立しているのが凄い。聞けば三人はゴクドルズとして劇中楽曲をフューチャーしてアルバムリリースまでしているそうで、この楽曲の出来具合ならアイドルファンも納得できるんじゃないかな。挿入されているライブ映像も実に楽しそうで、コロナ流行以前のアイドルライブの盛り上がりがなんかすごく懐かしい感じがします。終盤のアイドルフェスに出演している他の架空アイドルのパフォーマンスも手抜きなくそれらしくて、良く創りこまれていると思います。女性化した三人のかつての荒ぶる男性としての内面との葛藤を男優との掛け合いとして見せる演出も秀逸、でもそれが彼女らが便所で便座に腰かけているときに扉ごしというのは、どういうもんですかね(笑)。岩城滉一の何を考えているのか理解不能な親分も、彼の貫禄で振りきったという感じですかね。そう言えば友情出演でちょっとだけ顔を見せた大杉漣は、これが遺作というか最後の映画出演だったと思うと感慨深いです。 ラストにはまさかの多幸感まであって掘り出し物でした、これなら続編製作もありなんじゃない?
[CS・衛星(邦画)] 7点(2023-05-10 23:03:30)
4.  ハッピー・デス・デイ 2U 《ネタバレ》 
前作がホラー+ラブコメという図式だったのに対して、この続編では完全にホラー要素がSFに置き換わっております。タイムループならぬ次元ループとも呼ぶべき現象、これを全人類の99%が理解できない量子力学という呪文を使って説明してしまう荒業、ちょっと強引すぎるきらいはあるけど何となく納得させてくれたような気がします。前作でツリーのループで毎回冒頭にだけ登場していたアジア系のライアン君、実は彼は卒業研究で量子反応炉なるトンデモない装置を開発してしまう天才的な学生で、本作ではとくに前半で大活躍を見せてくれるところが見どころです。まさかのライアン君のループ地獄が展開してこれも仰天の二人のライアンが出現して量子反応炉が暴発、なんとツリーの方がやっとの思いで抜け出したはずのループ状態に逆戻り。正直この展開には観ていてほんとにびっくりさせられました、まるでこの映画は前作と同時に脚本が書かれて撮影したんじゃないかと思うぐらいです。明らかにこの後は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズを意識した展開になるのですが、前作公開後にこの展開を構想出来る脚本家は、類まれなる才能の持ち主であることは確かです。実際には本作が期待ほどヒットしなかったので構想は萎んでしまったみたいですけど、さらにシリーズ化するプランはあるみたいですね。実現すれば、まさに21世紀の『バック…』シリーズときっと評価されることでしょう。 それにしても、ツリーとカーターおよびライアンを演じた俳優たちは、この二作で何度ほとんど同じような演技(ツリーが目覚めてカーターの部屋を飛び出すまでのシークエンス)をさせられたことでしょうかね、編集マジックで軽減されているかもしれないけど、彼らにはまさにループ地獄ですね(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-12-24 22:58:26)(良:1票)
5.  ハッピー・デス・デイ 《ネタバレ》 
ホラーとサスペンスとラブコメの絶妙なミックス、考えてみればけっこうな数が製作されているタイムループものに新風を吹き込んでくれた一作だと思います。主演のジェシカ・ローテはたしかにJDを演じるにはちょっと苦しいお年頃でしたが、前半のクソが付くほど嫌な女からどんどん心が清らかになって可愛げが滲み出るようになってゆくところなんかは好演だったんじゃないでしょうか。ストーリーとしてもタイムループものには付き物の矛盾は最小限、というか勢いに任せたストーリーテリングで突っ走って乗り切ったという感じでしょうか。何度も殺されては生き返るけどだんだん体調が悪くなってくるし、体表面は普通だけどレントゲンを撮ると内臓は医者が驚くほどのダメージを受けているなんてところは、なんか謎めいていて面白い。でも苦しいのはマスクを被った殺人鬼の正体で、ネタバレになるので詳しくは言えないけど、やはり一人じゃないってことなのかな。いろいろとばら撒かれた伏線も割と綺麗に回収しているや、ラストのどんでん返しみたいな展開もセンスが良かったです。エンディングの「この話しって『恋はデジャヴ』になんか似ていない?」というセリフも、けっこう強烈な楽屋オチじゃないかな。 なんか皆のレヴューによると続編『2U』も凄いらしいですね、早速観てみましょう。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-12-21 21:44:02)
6.  バーニング・オーシャン 《ネタバレ》 
2010年に起きたメキシコ湾原油流失事故の原因となった原油掘削施設の爆発事故の実話映画化。この手の実話災害映画の王道のパターンのストーリーテリングなので既視感が強いが、さすがに爆発炎上の映像は「どうやって撮影したんだろう?」と唸るほどの迫力はある。しかしドラマ性というかマーク・ウォールバーグとカート・ラッセルおよびジョン・マルコヴィッチ以外の登場キャラへの掘り込みが浅くて誰が誰だか判らないのは弱いところです。一般人には馴染みがない石油採掘が重要なテーマなので、その仕組みや工程をもっと判りやすく描いて欲しかったところです。尺も短めで同種の映画に比べてコンパクトにまとめられているのは良いとしても、その分こういった説明不足感がつきまとってしまう逆効果はあります。爆発が起こってからの経過も、施設のそばに停泊している作業船内の対応が同時に見せられますが、その映像がディープ・ホライズン内なのか作業船の対応なのか区別がつきにくいところでした。とかくハリウッド映画はこういう実話ものでもヒーローを誕生させる方向に持ってゆくのが常套手段ですけど、その後に米国史上最悪となった原油流失と事故の責任についてはほとんどスルーしてしまっているのは、なんだかなあと思ってしまいます。いくら死者が11人出て生存者も大変な目に遭ったと言っても、この事故はやはり人災でブリティッシュ・ペトロリアム社や現場の従業員に最大の責任があることは確かなんですからね。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2022-12-06 23:34:25)
7.  バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 《ネタバレ》 
バードマン≒バットマン、これはもうマイケル・キートンのセルフパロディとしか思えない、もっともバードマンとは違ってキートンは2回しかバットマンを演じてませんけどね。キートンありきで書かれたこの脚本ということは、彼にとってバットマンだったことは黒歴史だったということ何でしょうか。 イニャリトゥなどの最近のメキシコ三羽烏はワンカット風撮影がほんと好きですけど、本作では初めて自分は酔いそうになりました。とくにほとんどの舞台が劇場内の狭い空間なので余計しんどかったです。監督の意図はどうなんだか知らんけど、自分にはこの映画のテーマは映画界=ハリウッドと演劇界=ブロードウェイの、お互いにマウントを獲り合う醜い争いであるような気がしています。別に下北沢に通ったことはないけど、個人的にはとくに日本の演劇界も鼻持ちならない界隈みたいで似たような感じだなと思っています、まあ日本映画界もたいがいですけどね。婆あと言っていい様なおばさん批評家が権力を持っていて、キートンの芝居を観ようともせずに映画スターとハリウッドに対する個人的な反感だけで「明日の記事で酷評して打ち切りにしてやる」と宣う、もうこりゃいじめですやん。面白いところは主役兼脚本のキートンとこのおばさん批評家はどちらもSNSとは無縁のアナログ人種で、おばさんに至ってはメモ帳みたいなものに手書きでせっせと記事を書いている。ところが娘のエマ・ストーンを通じて見せつけられるリアルでは、ブリーフ姿でブロードウェイを彷徨うキートンの動画があっという間に300万再生を超えて不振だったチケットが爆売れしてしまう。つまりハリウッドだブロードウェイだといがみあっていてもどちらもオワコンになりかけてるんだよ、と監督のイニャリトウは皮肉っているんじゃないかな。 一度観ただけでは情報量も多くて深いところまで理解しにくい作品であることは確かです。でもイニャリトゥはやがて“21世紀のフェリーニ”と呼ばれるようになるかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-11-21 22:58:41)
8.  ハンターキラー 潜航せよ 《ネタバレ》 
ロシアで好戦的な国防大臣の陰謀でクーデターが発生、穏健な大統領を拘束してなんと米国と一戦を交えるつもり!四年前に製作された映画だけど、事実は映画よりも奇なり、まさか現実の大統領プーチンが核兵器使用をちらつかせながらウクライナに侵攻するとは誰も予想すらできなかった現実です、しかも予想外にロシア軍が弱いとはね。 いちおう元潜水艦の艦長が原作者の小説が元ネタですから、原潜の内部や潜水艦戦の進行などはリアルです。主役ともいえる原潜USSアーカンソーは最新型の攻撃型原潜ヴァージニア級ということになっていますが、実はこの艦は建造中で架空艦みたいな感じかな。道理で艦橋と船体が繋がる部分が実在のヴァージニア級とは微妙に違っているわけです。冒頭で撃沈されるUSSタンパベイはロサンジェルス級原潜ということになっているけど、すでに全艦就役中の同級にはタンパベイという艦はなく、そりゃあ実在の原潜だったら海軍に激怒されちゃいますよ。 前半はスリリングで「おっ、これはいけるかな」と期待するも、中盤以降はご都合主義だらけのメタメタな展開です。だいたいからして、国防相のクーデターの目的が「アメリカと戦争がしたい」としか思えないのがヘンでしょう。現実のプーチンだって、彼なりにいちおう損得を計算して戦争をおっぱじめているわけですからね。そして大統領を始めは殺そうとしなかったというのはあまりに不自然、こりゃクーデター成功の鉄則からはあり得ない。まあそんなことは、アーカンソーに撃ち込まれる対艦ミサイルをロシアの駆逐艦が全弾撃ち落とすマンガみたいなオチを見せられれば、大したことじゃないって思えてきますけど(笑)。 ジェラルド・バトラーは豪胆な叩き上げの潜水艦乗りという雰囲気は良く出ていました、兵学校出じゃなくて原潜の艦長になれたというのはリアルなのかは別にしてね。統合参謀本部議長役はゲイリー・オールドマン、久々に十八番のキレ芸を見せてくれて嬉しかったです。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2022-06-24 22:16:10)
9.  パージ:アナーキー 《ネタバレ》 
“PART2は群れで行け”のセオリーを守って、前作よりもいろんな意味でスケールアップしていたところは喜ばしいことです(出演俳優陣はかなりの格落ちでしたが)。やっぱ籠城戦よりも機動戦の方が見応えがありまよね。脚本も格差社会・アメリカ合衆国を前面に押し出してテーマ性が色濃くなってきました。でも、年に12時間だけのパージ開催だけで国民平均所得が上がって社会が平穏になるという理屈だけは、あいかわらずですけど理解不能です。「12時間だけ犯罪OK」と言われても、果たして人はあそこまで殺人に奔走するものなのか?ってのはこのシリーズの最大の疑問点であるのも確かです。パージが終われば残りの364日は普通の社会なんだろうから、身近だったり繋がりがある人を殺めたら通常の人間関係が成立しないんじゃないだろうか。また、どうせ何でもありなら窃盗や強盗など経済的に得する犯罪に走りそうな気もしますが、パージ中は企業も個人も現金や商品を物理的に奪うことができないようにするだろうし、そうなると大金を稼ぐにはハッキングするぐらいしか手段がない。だから殺人ぐらいしかすることがないってわけで、考えてみるとここまでアメリカ人の本性を貶めるプロットは類を見ない気がします。本作ではこの手のディストピア映画ではお約束の抵抗組織が登場しますけど、こういう「我々アメリカ人には悪と闘う権利と根性があるんだ」という単純なスローガンにはちょっと辟易させられるところがあります。マイケル・ベイが製作陣にいますけど、全体に流れる銃社会肯定感は気になるところです。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-06-27 23:06:08)(良:1票)
10.  ハウス・ジャック・ビルト 《ネタバレ》 
「ラース・フォン・トリアーがサイコ・キラー映画を撮った」ということで身構えて鑑賞いたしましたが、正直言って今まで観た彼の作品の中では不快感は低めだった感じです。冒頭に「この映画はラース・フォン・トリアーの作品を彼の許諾のもとに編集したものです」というテロップが出るのでこれはソフィスティケートされたバージョンなのかと勘ぐってしまいましたが、思うに彼の作品の特徴は普通に見えるキャラの行動が観る者を不快にさせるのであって、本作の様に始めからおかしいと判っている人間の行動を見せられると意外とインパクトが弱いのかもしれません。それでもジャック=マット・ディロンの狂気の行動と語られる理屈というか自己分析はおぞましく、とくに自分の妻子を狩りの獲物にして撃ち落とした鳥と一緒に並べるところには嫌悪感が抑えられませんでした。ジャックとまるで精神分析医のように対話するブルーノ・ガンツが実はあっちの世界の存在でした、ってのは想像通りでしたが、エピローグの二十分での地獄めぐりの訳わからなさこそが監督の鬱の映像化なんでしょうが、こういう表現に関するセンスはデヴィッド・リンチの足元にも及ばないと感じます。けっきょく最もインパクトがあったのは凍結した死体をくみ上げて作った“ジャックが建てた家”というわけでしたが、こういうことを平気で撮っちゃうのがラース・フォン・トリアーたる所以なんでしょうね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-05-28 21:34:45)
11.  ハウンター 《ネタバレ》 
たしかにこれは並みの監督ならある程度の評価が貰えそうですが、ヴィンチェンゾ・ナタリが撮ってますからハードルは高くて不評を貰うことはしょうがないと言えるでしょう。たった25日で撮影されたそうですから、ナタリ自身も深く考えずにサクサク撮ったって感じです。とはいえナタリですから、とくに前半はいかにも怪談という雰囲気は良く出ていたと思います。ループする日常と判りにくいストーリーテリングが、不条理感を強めているのかな。後半は謎とき要素が強まってくるのですが、西洋怪談に特有の“悪との闘い”が前面に押し出されてくるので観てる方のテンションは下がり気味です。だいたい、幽霊が首を絞められて苦しむなんて、製作者側は大真面目なのかもしれませんが、私は苦笑するしかなかったです。リサ達はいわば成仏できないキリスト教で言うところの煉獄を彷徨っている状態、オリビア一家を救ってけっきょく天国に行けましたとさ、って言われてもこれはハッピーエンドなんでしょうかね?東洋人のこちとらとすれば、死の無常観やもののあわれを感じさせてくれないと、歓談噺にのめり込めないんです。やっぱ西洋人にそんなことを求めるのは間違ってますかね?
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-04-21 23:04:40)
12.  ハッピーボイス・キラー 《ネタバレ》 
これ真面目に撮ったら身も蓋もない凄惨なお話しなんだけど、ライアン・レイノルズ、ジェマ・アータートン、アナ・ケンドリックスと言った若手のどちらかというと爽やかスターを起用しているので、ちょっとポップでオフ・ビートに寄せてみました、って感じです。でもネコやイヌや生首が喋るというプロットですから、それだけで誰をキャスティングしようがぶっ飛んでますけどね。レイノルズが勤務する工場がピンクを基調とした田舎の会社とは思えない妙にモダンな色使い、ピンクのフォークリフトがダンスを踊るように動くところなんか笑っちゃいます。でもなんといってもエンドロール、主要登場人物六人が鮮やかな色合いの衣装でバスビー・バークレー風のミュージカル、しかも例のピンクのフォークリフトを操るイエス・キリストまでも登場、このセンスは好きです。スラッシャー・シーンはさほど多くはなかったですけど、第一の殺人で解体した死体が肉片にされて百個近くのタッパーで積み上げられるところは、最近死刑が確定した座間の連続殺人の話しが思い出されて「おえっ」となりました。そういうポップな要素を取っちゃうと、実に正統的なキチ〇イ系サイコキラー映画という感じです。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2021-03-27 22:32:38)
13.  パッション(2012) 《ネタバレ》 
この映画のプロットは前に観た映画でも似たようなのがあったなと思いましたが、自分は未見ですがリュディヴィーヌ・サニエとクリスティン・スコット・トーマスが出演した2009年の仏映画『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて』のリメイクなんだそうです。まあこれと似たようなストーリーの映画はよくあるってことです。大して話題にもならなかった映画なのに何故か三年でリメイク、監督には『アンタッチャブル』や『ミッション・インポッシブル』など一時期ハリウッドでリメイク職人になりかけたデ・パルマがまたまたリメイクを担当。でもあの二作はTVシリーズの映画化で再構築=リストラクションと呼んだ方が正解でしょうし、デ・パルマにとっては初めてのリメイク作品ってことかな。 デジャブ感が強いだけにお話しの展開と犯人はぼんやり者の自分でもすぐ判りました。デ・パルマ印のスプリット・スクリーンなどは殺人シークエンスが始まるところあたりで使われますが全体におとなしめで、言っちゃあ悪いけど散歩に連れてった犬が電柱にマーキングをしてる程度の効果しかなかったような印象です。映像には凝るけど割と判りやすいストーリーテリングがデ・パルマ風味なんだけど、ラストの夢オチか?と思わせるような判りにくい展開は彼らしくなかった。これは原作の脚本に忠実にリメイクしたってことなのかもしれませんけどね。根本的にノオミ・ラパスという女優が自分の好みじゃないってことも、悪印象を強めたのかもしれません。 コッポラ・ルーカス・スピルバーグたちの兄貴分でハリウッドでは巨匠と呼ばれてもおかしくない存在のデ・パルマ、こんな映画に関わるようなキャリアの人じゃないはずなんだけどなあ…
[CS・衛星(字幕)] 4点(2021-02-09 23:27:04)
14.  パニック・トレイン 《ネタバレ》 
まったく予備知識なしで鑑賞。息子連れの医師のほかはバカ騒ぎする若者集団やマナーが悪い非英国人と思われる男などの乗客集団、これは『ある戦慄』風のストーリーなのかと思いきや、どんどん客は降りていって残るは医師親子を含めて六人の男女。そこからいきなり『激突!』の列車バージョンに突入、追っかけられるんじゃなくて謎の犯人と一緒に暴走させられて降りれないというところが新パターンです。それでも子供を除く五人の誰かに謎の暴走を操る奴が隠れてるんじゃと当然のごとく疑いますが、結果から言うとみんなただの巻き込まれた被害者、ここが本作でのある意味最大のサプライズとなりましょうか。つまり、伏線なんかまったく張らずに暴走する列車の乗客たちのサバイバルを単純明快に観客に見せることに徹した映画だったというわけです。犯人像がまったく不明なだけに、まさかこんな単純なお話しとは予想もしない観客の疑心暗鬼がかえってサスペンスを生むという皮肉な効果を生んでいます、これは製作サイドの意図したことなのか単なる怪我の功名なのかは謎ですけど。列車がひたすら飛ばしまくる疾走感だけは上手くとらえていて、なんか初期のピーター・イエーツが撮ったかのような感じがしました。B級映画としては良くできている部類ですが、これをわざわざクラウドファンディングまでして製作する意義は果たしてどうなの?どうせならもっと独創的な企画の方が良かったんじゃない? それにしてもロンドンの鉄道車両の汚いことと言ったら、せめて窓ぐらい綺麗にしとけよ!
[CS・衛星(字幕)] 5点(2020-06-21 21:36:25)
15.  パーティで女の子に話しかけるには
時は1977年、エリザベス女王の在位25周年が祝われジミー・カーターが合衆国大統領だった時代、英国ではパンク・ムーヴメントの嵐が吹き荒れている真っ最中にロンドン郊外のクロイドンでパンク野郎と異星人の女の子の儚いボーイ・ミーツ・ガールがあったのでした。『パーティで女の子に話しかけるには』なんてタイトルからはとても想像がつかない、ちょっと胸キュンなSF恋愛ストーリーでした。『ラビット・ホール』では雇われ監督もそつなくこなしたジョン・キャメロン・ミッチェルが久々に自分のやりたいことに没頭したって感じの作品で、自分はあの『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』から受けた衝撃を思い出させてもらいました。エル・ファニングのキュートさと“人喰いパンク”を即興でシャウトするカッコよさのギャップは最高。でも『ラビット・ホール』からの縁で出演したニコール・キッドマンのパンク女王がまた存在感強くて、もっとも始めは誰だか判りませんでしたけどね。六つの種族に別れる異星人たちの設定や行動様式はほとんど理解不能でしたけど、あのパーティー(?)での脱力系ダンスには自分のツボが突きまくられました。 海外での評価は高くないというか酷評も多いですが、日本では意外と高評価されているみたいです。これは確かに将来カルト化するかもしれませんね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-06-09 19:44:56)
16.  バカリズム THE MOVIE 《ネタバレ》 
バカリズムという人の芸は個人的には好みではないし正直興味はなかったので、暇つぶしというか自己拷問のつもりで鑑賞。五話のオムニバスですが各話冒頭のオフコースをBGMにしての升野英知の年代記というか自己語りが、洒落っ気もオチもなくてこういうところが嫌いなんだよなって再確認させられました。でもエンドロールに流れる音頭を聞いた途端、「なるほど、これがオチなのか!」と納得しました。「映画を撮ったら褒められる、監督やったら文化人」いやー、これは北〇武を強烈にディスってますね(笑)。「無理かな金獅子賞」「いつかはハリウッド」とかも映画監督としての北〇武がなんでこんなに評価(国内では)されるのか理解できない自分には、もうツボが付きまくられました。この人は映画学校出身らしいので、北〇武・内村光良・松本人志に続いてお笑い芸人出身の映画監督という道を選べたかもしれなかったのに、このぶっちゃけぶりを見るとけっこうクレバーなんだなと思います。 内容は語るほどではない下らなさですが、『監督ばんざい!』なんかよりよっぽど笑えます。一つだけ言っておきたいのは、第三話の『トップアイドルと交際することへの考察』です。この人昨年元でんぱ組.incの夢眠ねむと結婚してニュースになりましたが、「お前、このころ(2012年)から付き合ってたんじゃないんかい?」
[CS・衛星(邦画)] 5点(2020-02-25 23:17:38)
17.  バイス 《ネタバレ》 
最近は特殊メイク技術の進歩で演技力がある俳優ならばどんな有名人に化けることもできそうですが、クリスチャン・ベイルはデ・ニーロの流れを組む肉体改造型キャラ創りの最後の雄、メイクも凄いですけど20キロ近く体重を増やしてディック・チェイニーを演じ切りました(さすがにこれは辛いらしくて、今後は肉体改造を止めると宣言したそうです)。彼に限らずブッシュ大統領やラムズフェルド国防長官などそっくりさん大集合といった観もある作品ですけど、みな対象の仕草や喋り方を演技で見事に再現しているところが感心します。 原題の“Vice”には副大統領の“副”という意味のほかに“悪徳”という意味もあり、これはなかなか意味深です。また本来“副”には“正”のような権限はないけど責任も負わないという立場なので、考えてみればこの立場を悪用すれば陰に隠れてけっこうヤバいことができるという絶妙なポジションでもあります。この映画の描いていることがどこまで真実に近いのかは判るはずもありませんが、観る限りではチェイニーはとんでもない悪徳政治屋と解釈されるかもしれません。でも、猛妻の尻に敷かれていたりとても家族思いな面があったり、クリスチャン・ベイルの演技もあって好感までは持てないにしても人間として理解はできるんじゃないでしょうか。観るまでは野心家妻に陰で操られる人という印象はありましたが、どうしてどうして、ワシントンでのチェイニーの活動は完全に彼個人の野心が暴走してゆく過程であると思いました(だいいち、副大統領になることには奥さんは反対してましたからね)。サム・ロックウェルの演じるブッシュ大統領がまた絶妙で、たぶん実物も実像はこんな感じだったんだろうなと思わせる説得力がありました。この映画の脚本は秀逸で、狂言回し的に前半から登場するブルーカラー労働者風のおっさんを「こいつは何者だろう?」と訝しんでいたら、まさかそんな人だったとはと心底驚かされました。編集も実にコミカルで雰囲気を出しているのですが、題材が題材だけに後半に行くに連れてどんどんシリアスになってゆくのは止むを得ないところかと思います。 考えてみると、このブッシュ政権は正・副両大統領とも伝記が映画化されたわけになります、これはある意味で快挙なのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-02-12 21:59:11)(良:1票)
18.  バリー・シール/アメリカをはめた男 《ネタバレ》 
80年代レーガン政権時代の米国と中米の係わりは、ほんとにややこしく複雑でなおかつ個人的には興味がないので困ったものですが、そこにトム・クルーズをぶち込んできたのでちょっと期待して観ました。映像はドキュメンタリー・タッチの手持ち撮影が多く、実録ものらしい雰囲気は良く出ていました。トム・クルーズの演技はいかにもな小者感が前面に出ていて、けっこう愉しませてくれます。そういえば同じ実話ものである『グッドフェローズ』と似た雰囲気があるとも感じましたが、『グッドフェローズ』のような切れのある脚本ではないので比べられたら可哀そうですね。キャスト面では奥さん役のサラ・ライト以外に重要な女優キャラが皆無と言える状態で、ちょっと花がなさすぎ感が否めません。結論としては、ダグ・リーマンがメガホンをとっているという期待感は見事に裏切られたかなという感じです。 70~80年代の米国政界の主要人物が勢ぞろいしていたところが面白かったところでした。それはアーカイブ映像だけではなく実際にキャスティングされた役やセリフだけで登場する人物など様々でしす。なかでも、バリー・シールがホワイトハウスに連れていかれたシークエンスで、ベンチの隣に座っていたのが小者時代のジョージ・W・ブッシュで副大統領のパパ・ブッシュに会いに来てるというのが、個人的にはツボでした。それもまるでお小遣いをもらいに来た引きこもりみたいな感じなのが笑わせてくれます。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2019-08-03 23:03:02)
19.  パージ 《ネタバレ》 
プロットは完全にケータイ小説レベル、イーサン・ホークやレナ・ヘディといったそこそこ名の知れた俳優を起用していますが、B級感は隠しようがない。まあこのプロットは詰めて考察すれば穴だらけなんで無視することにして、やはり『わらの犬』的な映画として観るしかないですね。でも緊迫感は『わらの犬』に遠く及ばず、というよりも比べること自体がペキンパーに失礼極まりないといったほうが正解。イーサン・ホークはいつものイーサンで、今回こそは今までのヘタレキャラを返上するかと思えば最後まで生き残れないし、奥さんのレナ・ヘディにしてもお前の中途半端な態度も事態を悪化させた要因の一つでしょ。パージの日だから交際の邪魔をする父親を始末しよう、いくらバカ娘の恋人だからといってこんなアホな奴いるわけねーじゃん。そして匿われた黒人ホームレスを執拗に狙うヤッピー軍団、あの黒人にそこまで執着する理由がさっぱり判らん、狩りの獲物なら他にいくらでもいるでしょ。そして本当に怖いのは成功を妬む隣人軍団で、もしパージ制度が実際に存在したら、パージの対象は見知らぬ他人じゃなくて人間関係がある者になるに決まってるじゃないですか。そこがこの映画のプロットのおかしい根本理由です。 「1年で12時間だけだれを殺してもイイですよ」こんな制度があるおかげでアメリカが平和な国になった、これは考えようによってはアメリカ人をずいぶん馬鹿にした設定だとも言えますが、トランプを選挙で大統領に選ぶ人たちだからあながち間違っていないのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2019-02-28 23:55:29)(良:1票)
20.  パトリオット・ウォー ナチス戦車部隊に挑んだ28人 《ネタバレ》 
期待しないで観たのですが、意外とこれが悪くなかったです。なんでもこの映画が取り上げている戦闘は“パンフィロフの28人”としてロシアでは有名なんだそうです。この1941年11月のモスクワ前面での神話的な戦闘ですが、実は最近当時の記者による捏造説が出てきて、これはかなり真実をついているそうです。とはいえ話が盛られているにしてもその地で戦闘があったことは事実で、映画製作者もそのことは踏まえたうえでの映像化らしいです。 攻めるドイツ軍は三号戦車と四号戦車を大量に投入してきますが、CGではあるけど動作も含めて出色の再現度です。これはWar Thunderというロシアのネット・コンバット・ゲームの運営が出資していることがいい影響を与えたみたいです。他のドイツ・ソ連両陣営の火砲もCGを交えて忠実に再現されていました。塹壕陣地にこもって戦車を伴って攻めてくる歩兵をひたすら撃退するだけというシチュエーションはフィンランド映画の『ウィンター・ウォー/厳寒の攻防戦』とまるで一緒ですが、本作の方が見せ方に迫力があって段違いです。ソ連兵たちは個々のキャラの掘り下げはほとんどないので誰が誰やら戦闘が始まったらさっぱりですが、史実通りらしいのですがカザフスタンあたりのアジア系兵士が多かったです。ソ連側は対戦車砲からモロトフカクテル(いわゆる火炎瓶)まで多様な兵器で防衛しますが、中でも対戦車ライフルが大活躍しています。いくらまだ装甲が薄かったドイツ戦車とはいえ、対戦車ライフルがあそこまで効果あるとは思えません。そして最後のいちばん都合の良いところでドイツ兵をバッタバッタとなぎ倒すマキシム重機関銃、MVP兵器はこの重機だったのかもしれません。 さすがロシア政府まで出資しただけあって全編にわたって英雄物語に徹していますが、旧ソ連国策戦争映画ほどの暑苦しさはありません。でも当時の赤軍には督戦隊という戦意が低い兵士を処刑する部隊がいて、史実でもこの戦闘で降伏しようとした兵士が射殺されたということはきれいにスルーしています。28人全員が愛国心に燃えて積極的に戦った、というこの映画のプロットはやはり神話だったということです。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2018-12-10 23:52:20)
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