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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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81.  ブルジョワジーの秘かな愉しみ
たぶんブニュエルでは、メキシコ時代の作品群が最も充実しているだろうが、どれが好きかと言うと、私はこれ。自在な語り口の妙。不安と妄想とトボケた笑いが渾然一体となって、「作者は何を言いたいのか」なんて要約されることをきっぱり拒絶した、まさに映画でしか表わせない世界。映画でしか表わせないものというと、とかく美的な構図やスリリングな移動の効果などに多くの監督は工夫を凝らしてきた、でもブニュエルはそうはしない。ごく普通のカットを織り合わせるという基本で、映画が表わせるものを突き詰めた、いや拡大したと言うべきか。道を主人公たちがただ歩いていくシーンがポンとはいる。意味を考えりゃ、車に乗っていないブルジョワジーたちの頼りなさとか、周囲の農作物と隔てられた食欲だけの存在とか、いろいろ出てくるが、妄想と夢が氾濫した後にポッとその屋外シーンになると、もう意味がどうのではなく映画のリズムとしてまことに効果的で、こうして歩き続けていく彼らが映画を貫いてまとめ上げていくそのさまを、感じ入って見守るしかなくなる。あのシーンで感じる気分を、映画以外で味わうことは不可能だ。繰り返されるごとに夢の状況は悪くなっていくし、やたら発砲も起こる。喫茶店での軍人の話と神父のエピソードが重なってくる。それでも彼らは映画を貫いて歩き続ける。意味と無意味の境のような道を、あてがあるんだかないんだか歩き続ける。こちらは落語家の名人芸に立ち会っているように、ただただ話術に身を任せていればいい。
[映画館(字幕)] 10点(2009-07-08 12:09:30)(良:1票)
82.  ファイナル・プロジェクト 《ネタバレ》 
クールで泰然自若としたアクションスターの系譜もあるが、ジャッキー・チェンは、オロオロしながらコトを為していくキートンやロイドの喜劇の系譜の人で、水中カンフーなどどうしたってキレがなくなるのを、逆手にとってギャグにしてしまうのが偉い。サメはじっとしていると襲わない、というネタで、闘っていた二人がサメが近寄ってくるとそのままジッと停止するおかしさ。あるいは血の匂いを出さないために、傷を受けた指を口にくわえる、その合い間には酸素ボンベの口を取り合ったりと無駄がない。ほかにも、タケウマをしたままのケリを何度かやって、はずした後も長いつもりでケリを空振りする、とか。このころは年齢的にアクションは厳しくなってきているのに、それをカバーしようという工夫が随所に見られて、けっこう感動的だった。白装束白マントの悪漢どもがスキーで追いかけてくるあたり、ああ悪漢とはやはりこうでなくちゃならない、と懐かしい興奮が胸に満ちたものだった。
[映画館(字幕)] 7点(2009-06-10 12:07:38)(良:2票)
83.  笛吹川
この映画、特殊なカラー効果が印象に残るが、音もいいのではないか。主人公たちの家に“政治”がかかわってくるときは、橋の板を踏むバタバタいう音が、まるで歌舞伎の、あれ何て言うの、舞台の端に座ってて板を打つヤツ、あのように響いてくる。原泉の御詠歌のチリンチリンが、戦闘場面の間にも鳴り渡る。まあ原作が傑作なんだけど、傑作文学を映画化して傑作になった稀有の映画だ。やたら被害者意識のみが蔓延してた中で、戦争で生き生きとする庶民て視点が新鮮なんだろうな。つらい日常を忘れさせてくれる祭りの興奮であって、親方様にさんざん痛めつけられても、先祖代々御恩になって…、っていうとこほど戦争における庶民を批判したものはない。けっして庶民は一方的な被害者ではなく、戦争を盛り上げた当事者でもあった。一方、親方様への怨みだけで生きている荒木道子もすごく、息子ともども山門で火に包まれながら、親方様の滅びに歓喜するところ。ラストで高峰秀子が行列に着いていってしまうとこのみ、やや湿り気を帯びたが、あれは思えば『陸軍』の母親にそのまま一緒に行かせてやったものだな。一家が戻ってきたらどこに住もうか、と老夫婦が相談してる場のほうがゾクッとくる。ともかく戦争における庶民を批判する映画で、これほど厳しいものはあんまりなかったと思う。やがて『心中天網島』で夫婦をやる二人が、ここではういういしく兄妹をやってた。
[映画館(邦画)] 8点(2009-05-21 12:06:27)
84.  冬の宿 《ネタバレ》 
前半はキリスト教狂いの妻とその夫の、ユーモアものみたいな展開。酒を飲んで帰ってくる亭主が、うがいをして匂いを消したり気をつかっている。恐妻家コメディの型で進みながら、しだいに話は深刻になっていく。最初にコメディタッチだっただけに、その深刻への傾斜が効いている。亭主、会社をクビになり、なのに見栄を張って宴会やったりする。地元の工場を処分してできた金を、キャバレーで散財してしまう。競馬で取り返そうとしてスッカラカンになる。コメディだったら愛すべき豪放な性格、ということでそれで済んでしまうんだけど、実際にはこういう“愛すべき性格”は、身内にとっては生活破綻者であって迷惑至極なわけだ。近所にこういう人がいても、いい人なんですけどね、と同情はするが、積極的に手を差し伸べはしない。そこらへんの、笑顔がしだいに強ばっていく展開が、見ているほうでも納得がいくだけにけっこう怖い。これを演じた勝見庸太郎も絶品だった。一見優しく見守っていたような作者の視線が、じつはヒンヤリと観察している。子どもたちに、そっちに行っちゃいけないよ、と言っていた貧民窟への坂を下っていくラストの厳しさ、まるで時代の下り坂と重ね合わされるふうで、ゾクッとした。前年の内田吐夢『限りなき前進』の暗さをちょっと思わせ、豊田四郎の文芸ものの中でも、重要な作品ではないだろうか。原作、阿部知二。
[映画館(邦画)] 8点(2009-05-09 12:12:42)
85.  胡同の理髪師 《ネタバレ》 
最初のうちは図式的な新旧の対比に抵抗を感じた。下の世代の描写の俗っぽさ(たとえば老人を引き取った嫁など)が陳腐すぎた。今では人民服がオーダーになる、っていうのは感慨深かったけど。おそらくこの映画の眼目はそういった時代の変化よりも、粛々と死の準備を進めていく老人像のほうだったんだろう。これがいい。見る前は、人々が集う人情床屋ものかと思っていたら、顧客はもうみんな集うだけの元気のない老人たちで、こっちも老人の理髪師が一人一人訪問して回っている。そしてこの胡同自体が解体の危機にさらされている。町全部が死の準備に入っている。その中で老人は遺影を撮っておき、自分の略歴をテープレコーダーに録音する。彼はいつも櫛を携帯して時間があると髪を整えている。理髪師として最期にみっともない髪をしていてはいけないという決意のようなもの、それがこの町全体にも感じられるのだ。しばしば挿入される町の風景は、絵葉書のような情緒タップリの美しさで、映画でそういう美しさを見せられると時間が止まってしまうようで普段はあんまり歓迎しないんだけど、これでは町全体がもう棺桶に片足を突っ込んでいて、回顧される世界に入ってしまっているのだから、絵葉書の美しさが似合うのだ。そしてこれは町の遺影写真でもあろう。『胡同のひまわり』でも猫が滅びる町の象徴として登場してたけど、実際にここには多いのかな。
[DVD(字幕)] 7点(2009-05-01 12:11:01)
86.  [Focus]/フォーカス(1996) 《ネタバレ》 
浅野忠信っていいな、と思ったのがこの映画だった。強引なテレビ局の取材に押され、「えー」とか照れ笑い浮かべつつ、ストレスがたまっていくオタク青年の役。このテレビのディレクターやった白井晃がまた傑作で、強引かつ傲慢、口ばかり達者で他人を素材としてしか見られなくなっている人種を、誇張のようなリアリズムのようなきわどい線で怪演。ドラマとしては、そのオタク青年がキレ、がらっと変わるところが見せ場で、まあ落語の「らくだ」とか、そう珍しい企みではないのだけれど、ここでカメラマンの存在がだんだん怖くなってくるところがこの映画のポイントだ。カメラマンはこのクルーの中心にいるんだけど、加害者にも被害者にもならず、中立的な安全地帯を確保し、ただただ見続けているの。いや、中立を装いつつ、常に加害者の側に立ってんだな。もちろんそれは我々視聴者のことでもあって、けっして当人は傷つかない。実体験よりテレビ映像のほうに、より本物らしさを感じるようになった我々の、内なる加害者をあぶり出す。画面を経由しないと生々しくならない世界って、かなり不気味だ。
[映画館(邦画)] 8点(2009-04-09 12:09:33)(良:2票)
87.  フェイク
A・パチーノが貫禄のボス役かと思ったら、うだつの上がらぬ中堅どころってのがミソで、人情家ゆえにも一つ伸し上がれないチンピラに毛の生えた程度のマフィア。動物番組を見、クリスマスには部下に金をやり、でもそれを借り、大親分へのカードをドキドキしながら選び、料理をする。ゴッドファーザーのパロディになってしまいそうなところだが、そこはさすがパチーノ、ちゃんとリアリティある人物として造形できていて面白かった。潜入捜査官も憎めなくなっちゃうわけ。J・デップは、子の父としては失敗したが、やくざの息子としては合格してしまったわけだ。自分の家族から、やくざのファミリーへ、しだいにアイデンティティが移っていってしまう。仮面がしだいに本物の皮膚になってしまうような気味の悪さ、ここらへんにだけ絞って100分に納めれば、もっと良かっただろうけど、悪い映画ではない。
[映画館(字幕)] 6点(2009-04-04 11:58:44)(良:1票)
88.  ブレーキ・ダウン
荒野で高速道路を走っていると、自分が「誰でもいい一人」になってしまう怖さがあるわけだ。そういうものは、たとえば都会の群衆の中でもっぱら感じられるものと思われがちだが、そこは田舎のほうが怖い。都会では全員が無名同士になるが、田舎ではガッチリ組まれたチームの中に無名のよそ者として入っていくことになるわけだから。というわけで前半はへんにリアルでけっこう怖かった。通り過ぎた車が向こうでターンしてこちらを見てる感じ。食堂での田舎の人たちの無関心、無表情。このまま不安感が持続する田舎の迷宮に入っていくって展開だとハリウッド映画にならないから、直接的暴力が襲ってきてレベルが一つ落ちる。でも上映時間90分ちょっとという手ごろ感が好ましい。
[映画館(字幕)] 7点(2009-02-24 12:13:48)(良:2票)
89.  ブラス! 《ネタバレ》 
ブラスバンドの響きに乗って光の列が歩いてくるが、それは真鍮の輝きではなく、炭鉱夫のライト、という冒頭にこの映画のすべてが集約されている。灰色の世界と金ぴかでりりしい制服との対比。タイトルのpとfが赤になっているのも洒落てる。生きるということは惨めなことが多いが、でも音楽は誇りとなり得るし、そういう人生を鼓舞してくれる、って。芸術絶対派のダニーも肺を冒されていて、生きることに身を削られているわけだ。ちょっと後半荒っぽいのが残念だが、「威風堂々」でのダニーの顔は実に見事で、ここに誇りのテーマが凝縮していた。労働者の生活をドキュメント的に描くのはもうイギリス映画のオハコで、一見強硬派でありつつ借金に追われ、スト破りの側に投票するダニーのせがれなんかいい。泣かせどころは、やっぱり病院の見舞いに庭でダニーボーイをやるところ、ヘルメットライトが生きている。
[映画館(字幕)] 7点(2009-02-09 12:13:58)
90.  プライベート・ライアン 《ネタバレ》 
冒頭、ノルマディ上陸作戦のシーンは文句なしである。戦争映画というより戦場映画とでも言うか。勝ち戦を描いていながらなんら勇壮さがなく、ただ恐怖とヒステリーが支配している狂乱の場としての戦場を描き切った。水上の騒音と水中の静寂の対比は『ジョーズ』のときと同じだが、ここでは恐怖は水上の音のほうにある。自分の片腕を探している兵や、戦友を引きずって逃げていたら上半身だけだったとか、エピソードが詰まっている。で主ストーリーの、軍作戦としての美談に狩り出される話になっていく。一人の命は地球より重い、ということの正しさと矛盾とがせりあう。兵の母親にしてみれば、どんなにきたない“美談”にもすがりつきたいという切実さがあるわけで、ここらへんの設定が緊張を生んでいた。これでライアンがつまらない男だったほうがドラマとしては正しいように思うんだが、これが好青年で、するとけっきょくこの“美談”を肯定する話になってしまってるようで、アレレ? となった。そういう映画だったのか。ここらへんがハテナである。
[映画館(字幕)] 8点(2009-01-15 12:10:53)
91.  ブレア・ウィッチ・プロジェクト
禁欲の徹底が成功だと思う。こういう試みは多くの人が考えただろうが、つい伏線めいたものを作りたくなったりするもんだ。そこをじっと我慢した。死体が一つも出てこないホラー、内臓みたいなものは出たけど。作品の性質上、当然音楽がないのもありがたい。だいたいホラーでは音楽が邪魔になることが多い。本作では、テントを包み込んでくる音、足音、子どもの笑い声に、耳を澄ませられる(ただ本当なら真暗になるべき場面で、日本だと消防法で劇場内がうすら明るく、また字幕も白く光って明るく出てくるのが難点だった)。そしてやっぱり家ってのが怖い。家は巣であり、他者の領域であり、この森がこっちを他者としつつあるとこで、ヌッと王宮のように出てくる。家が出ただけで、ああ怖いな、と思ったもん。とにかく作者たちがなにものかに似せて作っていないところが一番いい。
[映画館(字幕)] 8点(2008-10-18 12:10:40)(良:3票)
92.  吹けよ春風(1953) 《ネタバレ》 
脚本の谷口・黒澤がどういう分担だったか分からないが、こういう短編連作への好みをすでに黒澤が持っていたのか。乗客の人生観察をするインテリ傾向のタクシー運転手って三船敏郎に似合わないけど、まあいい。外苑を越路吹雪とデュエットしながら回るミュージカル的シーンなんか、似合わなさを突き抜けていて感動しちゃう。風船売り、マンホールの工事人、都電の乗客らがあっけにとられてタクシーを見送るあたりがたまらない。一番好きなのは、早慶戦帰りらしい二人の酔っ払い客(藤原釜足・小林桂樹)のエピソード。これから見る人のためにネタばらしはしないが、タクシーの屋根を人が這うボコンバコンという音の効果がよかった。映画として充実している一編。次に東京で暮らす大阪ものの寂しい夫婦のエピソードがあり、三好栄子があいかわらず達者。三国連太郎のタクシー強盗があって、最後に、おそらくBC級戦犯だったらしい山村聡が釈放され、子の待つ家に妻の山根寿子とためらいながら帰る、という時代ならではの話で締めている。当時の東京風景をたっぷり眺められて嬉しい一本。冒頭、新人の小泉博と岡田茉莉子がちょっとだけ出てた。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2008-09-05 12:19:53)
93.  プラネット・テラー in グラインドハウス 《ネタバレ》 
タランティーノ版は楽しめなかったが、基本的にゲテモノは好きなのでこっちはちょっとは楽しめるのではないかと思って見たら、すごく楽しめた自分が恥ずかしい。まずほとんど筋が分かってしまう架空映画の予告編が楽しい。本編、前半はさしたることなし。病院に次々とドロドロした人が担ぎ込まれてくるあたりからか。ゲテモノテイストがはっきり立ち上がり、またヒーロー、エル・レイの安っぽい活躍も始まる。無意味に壁面で一回転したり、二丁拳銃をクルクル回して周囲に“こいつタダモンじゃねえ”と感嘆させたり、かつて映画にあった安っぽさゆえの活力を再現しているその情熱。「不手際をお詫びします・支配人」でクライマックスに跳ぶ離れわざ。またこれは、なぜかイロっぽいシーンを含む巻から紛失していった映画上映史上の謎を後世に伝える役目も果たしていよう。ラストはもう一気呵成で、ヒロインが塀を飛び越えるとこ、ブリッジで砲撃をかわすとこなど、たまらなかったです。ミーミレミファミレ、ミーミレミファミレの心地よく下品なテーマ音楽が、今も頭の中で鳴り続けている。
[DVD(字幕)] 7点(2008-07-05 11:19:02)(良:1票)
94.  プラットホーム
おそらく二度目により感動するたぐいの映画だろう、と日記に記しているが、まだ二度目は果たしていない。青春の自由と自由ゆえの頼りなさみたいなものが、あわあわと描かれていた。炭坑で働く人々の描写が向こうでは当局のチェックにあったとか聞いたけど、社会問題を提示するというより、青年たちがこれから出て行かねばならぬ社会の苛酷さにおびえためらう要素として置かれていたよう。汽車のモチーフが全編を貫いた。汽車を見たことのない彼らが、バスの中で警笛を真似て始まり、最後は村に戻って家庭にはいった一人の部屋でケトルが警笛のように鳴って終わる。その部屋からは、若いときにタムロしていた城門が見えている。日本にもあるサークル青春ものの中国拡大版だ。日本の青春ものの過剰ななれなれしさがない。外から聞こえてくる町の音、半野喜弘のヴァイオリンとチェロの音楽が、断片的に入る。
[映画館(字幕)] 7点(2008-07-04 11:22:36)
95.  フランドル
寓話と納得するまでは、いったいこれ何の戦争なんだろうと考え込んでしまった。あえて現代風俗で描いたアルジェ戦かな、とか。そうではなくて、フランスから遠く離れたよその国で行なわれる抽象的な“戦争一般”だったんだな。だから当然アルジェも入ってるし、ベトナムを思わせるジャングルめいた場所もチラッと入った。フランスにとってはあんまり思い出したくない戦争の、混合された戦場。映画としての焦点の当てどころがもひとつ分からなかったんだけど、フランドルのみずみずしい田園と、乾燥した戦場との対比みたいなものは感じた。その間隙に、戦場の男と故郷の女の間にお互いに話せないことが生じてしまう。戦争とはそういうこと、って。行軍のパサついた感覚が、心のパサつきとともに、体感として記憶に残る。
[DVD(字幕)] 6点(2008-07-01 12:13:43)
96.  フロストバイト 《ネタバレ》 
北極圏の吸血鬼は、極夜期になると日の出が一ト月来ないので、安心して遊び続けられる。もっともスウェーデン製吸血鬼って特徴はそこのところだけで、あとは別段新味はなく、寒さも特別感じなかった(吸血鬼役の俳優が、ベルイマン映画の常連だったグンナール・ビョルンストランドに、顔やしゃべり方が似てたのも、スウェーデン味と言えばスウェーデン味)。医学生サイドと病院サイドで話は進み、血を吸われ合って吸血鬼が広がる前に、吸血鬼を維持する錠剤(そういうのが出てくるの)で広がってしまうってとこが現代か。吸血鬼が疫病の隠喩なら、現代は麻薬や不良製剤のほうが怖いわけだ。吸血鬼になった若者たちが家の前に並んで立っていて、警察が近づくといっせいに体が傾くとこが気に入った。最後まで軽いノリの赤毛娘ベガも印象に残る。
[DVD(字幕)] 6点(2008-06-24 12:14:53)
97.  ブレッド&ローズ
この人の映画って、政治宣伝ビラになりそうなぎりぎりのところで、それを越えて深く入ってくる。たとえば“強盗”で本国送還になるケース、この被害者を老人にして観客の心が引っかかるようにしてある。これが脂ぎった中年男だったら、観客はヒロインに寄り添ってもっと簡単に善悪を判断してしまうところ。あるいはオルガナイザーに「で、あんたのリスクは何なの?」と問う場面、これ適度に同情的に見てた観客に向かっても放たれた言葉だ。白眉は姉妹対決の場で、裏切った姉にも言い分がある。労使間の搾取の下に、男女間の搾取がぞろっと見えるその奥深さ。「知らないふりしてたんでしょ」が効く。
[映画館(字幕)] 7点(2008-06-10 12:10:24)
98.  腑抜けども、悲しみの愛を見せろ 《ネタバレ》 
周囲のせいで“十分実力が発揮できない”スミカさん。田舎生まれのせいだし、仕送りが不十分のせいだし、困った妹のせいだし、自分が自分を発揮できなくさせる環境のせい、と思ってる。一方兄嫁のマチコさんは、自分が自分だけという状況をいやと言うほど味わってきて、やっと家族を得られた。この新しい環境を保持したい。尽くして尽くして笑顔を絶やさない。この和合家、家族がある不幸と家族がある幸福が、変に噛み合って同居してる、それは家族のせいにできる幸福と家族の鬱陶しさを知らない不幸でもあるのだけど。黙ってそれを観察してるのが妹のキヨミさんで、もしかすると一番性格が悪いのは彼女かもしれない。お姉ちゃんのいいとこを百コ歌いなさい、と命じられて歌いながらも、そういう姉を「面白い」と観察している眼がある。ラスト「これからが面白いんだから」とタンカを切ったことで、やっと姉も妹と同じレベルになったということか。また一人になったマチコさんの後ろ姿も気になるエンディング。この三人の、押したり引いたりの被害者合戦が見ものでした。サトエリはオーディションの場が一番良かったが、それが女優として喜ぶべきことなのかどうかは不明。
[DVD(邦画)] 7点(2008-05-25 12:16:50)
99.  ブラック・スネーク・モーン 《ネタバレ》 
半裸のクリスティーナ・リッチが鎖に縛られて監禁される話と聞けば、良からぬ期待を抱いて見てしまうのは、まあ男の業。ところがぜんぜん猟奇変態ものじゃないの。どちらかというと“健康が一番”ってストーリーで、おいおい話が違うじゃないか、と思ったときは遅かった。治療と回復の話であった。予断を持って見たこちらが悪いのであって、リッチ嬢に責任はない。はい、南部の空気が味わえる良い映画です。白人の娘が殴られて道に倒れているのを見つけた黒人は、保安官に知らせると面倒なことになるので自宅に運んで治療する、なんてあたり、ああこれが南部かと思う。ただね、白人が抱える問題や悩みを、有色人種の精神性が癒やしていくってパターンはアメリカ映画に多いのよね。あからさまな差別とは言えないかも知れないけど、なんか『風と共に去りぬ』の黒人乳母マミーの扱いのころから、さして進歩してないんじゃないかって気にもなる。そういえば、M・ミッチェルはあからさまな差別映画『国民の創生』の原作者の熱狂的なファンだったそうだ。
[DVD(字幕)] 6点(2008-05-18 12:18:47)(良:2票)
100.  フリーダ
亭主が桂春団治的で、芸のためなら浮気もコヤシって感じの人。でもメキシコの女はただでは忍従しない。忍従を美徳としない。忍従するくらいなら男になってしまう。受難を解放に変えていく。自分の体を締め付けているギプスに絵を描く、自分を拘束するものによって解放されていく。それはラストの寝台ごとの個展出席にまで続いていくわけだ。メキシコ文化という拘束から、インターナショナルなものを生み出していく。地球の反対側の中南米文化って、中身も日本と正反対みたいで、元気いっぱい。
[映画館(字幕)] 6点(2008-05-08 12:13:49)
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