1. ラブ ゴーゴー
《ネタバレ》 パン屋くんと同居している男女、三人とも吉本の芸人をスカウトしてきたような風貌なのが面白い。この若者たちの恋愛模様と言っても、髭男爵の相方・ひぐち君みたいな風貌の郷里に帰る素人音楽プロデューサーは恋バナには絡まず、けっこうイケメンだけど気弱なスタンガンのセールスマン君を含めての三人というわけなんですね。塚地武雅を可愛くしたようなパン屋君と小学校の卒業式の前夜に消えた“透明人間”彼女との再会と彼女に認知してもらおうとする奮闘ぶりがストーリーの軸に当たるんだろうと思いますが、面と向かって話してもパン屋君のことを全然思い出さないところが哀しい、彼は十数年ぶりの遭遇でも一瞬にして認知したのにね(笑)。そんな美容師として店を持つ彼女の方は、中二病を引きずっているような吉本三人組とは違って、不倫して奥さんに店に突貫されるような大人の恋愛中なんだから、パン屋君に気が向くはずもないんでけどね。でもこの映画の最注目キャラは、ポケベルを拾ってから見知らぬ持ち主に会うためにダイエットに奮闘するメタボねえちゃん・リリーとなることは間違いない。どう見ても女芸人としか思えない彼女も、コミカルにダイエットしてゆくうちにだんだん可愛くていとおしくなってくるのが不思議。でもそのポケベル男が、あの前半で売り物のパンにグチャグチャに噛んだガムをねじ込むようなサイコ野郎だったとは、そりゃリリーちゃんが可哀そうってもんだよ。失恋してバーガー屋でヤケ食いしてる横の席で、マナーモードの携帯がブルブルしているラスト、やはりこの映画が撮られた97年当時は携帯の黎明期だったのかな、台湾でも。 三人の導線が交差しているとも見えなくもないラストの展開には、なんか独特の余韻がありました。台湾の映画界って、中韓とは違って日本人に馴染みやすい感性の映画作家が多い様な気がします。この監督チェン・ユーシュンは、寡作ですけどやはり台湾ニューウェーブの旗手として注目してゆきたいです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-07-31 22:56:34) |
2. 乱気流/タービュランス
《ネタバレ》 10年ぶりぐらいで観直し鑑賞しましたが、この映画のヒロイン・スッチーはハル・ベリーだったと思い違いしていたことに気が付きました。ローレン・ホリーもショートカットですけど、ハル・ベリーがスッチーだったのは『エグゼクティブ・デシジョン』でしたね、でも彼女のヘア・スタイルは製作スタッフは確信犯だったと思いますよ(笑)。飛行中の旅客機がトラブルに見舞われてスチュワーデスが操縦するする羽目になるという展開は『エアポート75』のカレン・ブラックが始祖だと思いますが、90年代後半になって突然このプロットが復活したような印象があります。私の中では本作と『エグゼクティブ・デシジョン』『パニック・フライト』が三大スッチー操縦映画という位置づけでございます。この三作の悪役の中で文句なしに最悪なのはレイ・リオッタであることには、皆さまご異議はございませんでしょう。もう彼はこの時期から怪優というカテゴリーに分類される資格は十分で、現在に至るまでまともなキャラを演じたことがないんじゃないかという美味しい(?)ポジションをハリウッドでキープしているわけです。対してこの三本の中で最悪(あくまでキャラとしてね)スッチーは、やはりローレン・ホリーということになりましょう。もうこの女の客席乗務員としてのバカっぷりは、観ていてほんとイライラさせられっぱなしでした。まあリオッタがあれほど嫌悪感を催させるキャラでしたから、これぐらいおバカでお人よしの方が雰囲気が和むのかもしれませんけどね。 ストーリー自体はツッコミどころが満載、いちばんの疑問はリオッタから「他の人質はみんな殺した」と聞かされていたのに、なんで着陸したとたんに彼らを探そうとするところでしょうか、まるで生きて監禁されていることを知っていたかのようにです。ましてジャンボに残っているのが二人だけとという誤報はFBI捜査官にも伝わっているのだから、LA市街に到達する前に撃墜してますよ、アメリカなんだから。そして最大のツッコミどころは、「いくらクリスマス・イブとはいえジャンボ機で一般乗客が五人じゃ、このエアラインもう倒産ですよ!」。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2020-03-06 23:38:29)(良:1票) |
3. ラビナス
《ネタバレ》 『フロム・ダスク・ティル・ドーン』みたいに前半と後半ではテイストが変わってしまう映画。正統的なサスペンス・ホラーで始まったのに、途中からヴァンパイアかゾンビものみたいになっちゃいます。R・カーライルがまるで『28週後...』の高速ゾンビを先取りした様な暴れっぷりを見せてくれてなかなかの好演です。対するG・ピアースも彼が得意とするヘタれなヒーローと言うキャラなので安心して(?)観ていられます。 肝心のカニバリズム描写は特にグロいところもないのですが、実はいちばんグッときたのは冒頭の会食に出てくる妙に血なまぐさいレア・ステーキだったのは皮肉です。でもどうしても監督が『司祭』のA・バードなので、ラストなんかもカーライルとピアースのホモ的なイメージで閉めてきますし、もう彼女の趣味に走った感は否めなかったです。 そしてぶったまげたのはM・ナイマンの仕事とは思えない意表を突く陽気なサウンド・トラック、この先この映画はミュージカルになっちゃうんじゃないかと心配しましたよ。この辺りはD・アルバーンの色が濃く出ていたのかもしれませんね。 [ビデオ(字幕)] 5点(2013-05-29 21:20:27)(良:1票) |
4. ランブリング・ローズ
《ネタバレ》 D・ラッドとL・ダーンの母娘共演と言うとどうしても『ワイルド・アット・ハート』を思い出してしまいますが、あんな怪演ではなくて二人とも落ち着いた演技なので安心して観れました。まあ何と言いますか、30年代のアメリカ南部を舞台にした大人のファンタジーと言ったところでしょうか。ローズは男にとっては都合のよいちょっとオツムの弱い可愛い女というM・モンローが得意としたようなキャラなんですが、あのL・ダーンがここまで上手く演れるとは意外でした。のっけからローズがR・デュヴァルのお父さんを誘惑しようとするのでこの映画はどういう方向に行っちゃうのかとハラハラしちゃいましたが、「俺はテルモピュライのレオニダスだ!」と実にシャレたことを言ってローズの色気を撥ね退けちゃうのはさすがです。まあそこら辺が『青い体験』とは違うところなんでしょうね。でもその光景を観て喜んでいるお兄ちゃんと妹のませガキぶりも大したものですよ。 イタリア艶笑喜劇の様なくどさはないけど愛すべき小品だと思います。 [ビデオ(字幕)] 6点(2013-05-19 19:54:39) |
5. ラウンダーズ
《ネタバレ》 いかにもという感じの役柄であるM・デイモンはともかくとしても、E・ノートン以下脇を固める曲者俳優たちの濃くて絶妙な演技には引き付けられました。“KGB”マルコヴィッチのほとんどバカ演技と言ってよいほどの怪演も凄かったけど、中年で堅実なギャンブラーのJ・タートゥーロの生きざまがとってもリアルです。デイモンの借金お願いをきっぱり断るところなんか、単にタートゥーロの小心さを感じる人が多いだろうけど、たとえ友人だろうとも一線を画すというギャンブラーとして一本筋が通った生き方だと私は思うんですよね。 プロのギャンブラー同士ではお互いに見破る眼力があるのでイカサマはしない。逆に素人にはプロのイカサマはまず見抜けないものであるが、素人の警官にイカサマがバレてE・ノートンが袋だたきにされるのは、ちょっとリアリティとしては疑問でした。 安易にスタイリッシュな撮り方をしていないところは好感が持てる、ギャンブル映画の秀作です。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-02-28 00:05:24)(良:1票) |
6. 楽園をください
《ネタバレ》 名匠アン・リーらしい叙情あふれる作品でした。面白いのは脚本で、普通だったら、さあ盛り上がるぞというところが何も起きずに通り過ぎてしまうところで(ジェイクとスー・リーの結婚、ピットと出会う場面、ラストの別れのシーンなど)、下手な監督だと多分相当な駄作になってしまうのでは。脚本を書いたJ・シェイマスはさすがアン・リーとは数々の作品でコンビを組んでいるだけあって、血なまぐさい戦争ものとは思えない味わい映画になっています。ジュエルという人は有名なシンガーだそうですが、結構良い演技していました。女優としてもっとたくさん映画に出て欲しいな。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-03-07 21:39:19)(良:1票) |
7. ラン・ローラ・ラン
《ネタバレ》 久しぶりに「アイデアで勝負!」という映画に出会いました。ジャーマン・テクノに乗って走りまわるローラの姿は実に爽快!バギーパンツ姿で走るローラは下半身がどっしり(安産型)しているから走るフォームに説得力があります。しかし、恋人のマニの情けなさはツボにはまります。こいつが自転車に乗った浮浪者を追いかけるときの走りっぷりは、ローラと対照的でおかしかったです。監督の意図が?だったのは冒頭ローラが走り出す前の部屋でテレビがドミノ倒しの番組を放送していますが、テレビの音声が日本語なんです。これはなんなのでしょうか。 [DVD(字幕)] 7点(2009-03-15 12:21:37)(良:1票) |