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ユーカラさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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201.  ジョン・ウィック 《ネタバレ》 
結末部一歩手前を巻頭に持ってくるのも、キアヌ・リーヴスの顔半分に影を落として二面化する照明設計もノワールスタイルの証。 全般に照度を落とした心象情景の中、主として人工の光が彼の相貌を染める。 摩天楼の夜景空撮に稲光、白銀に輝く雨の反射にネオンサインと、光と影を意識してドラマに組み込んでいる。  雨の波止場で決着を付けた彼が画面手前に歩み来ると同時に、その顔面を次第にシルエット化させて死を仄めかす。 そこで冒頭のショットへと回帰するが、瀕死の彼を生に呼び戻すのは亡き妻の声と、彼女を映した携帯端末の光であると。  打撃系と関節系を組み合わせた連続技のアクションを出来うる限り持続的な引きのフィクスショットで撮る。 桟敷部分からの垂直落下を、多人数掛けの銃撃とそのリアクションをワンショットで収める。  そうした意欲的なアクション演出も随所に光る。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-10-17 22:06:38)
202.  グッド・ストライプス 《ネタバレ》 
奔放なようでいて少し人見知りするところのある菊池亜希子。線が細く、いかにも優柔不断な中島歩。 二人の、その辺に普通にいそうな等身大の像が目を惹きつける。 少し倦怠混じりのほどよい距離感を保って向かい合い、並び合い、語り合う二人のナチュラルで他愛ないやりとりがいい。 式場での打ち合わせシーンのなんともユーモラスでリアル感溢れる対話などは岨手由紀子の脚本ベースだろうが、 二人のキャラクターを明快に提示しつつ、アドリブ芝居のような新鮮さがあって、さりげなくも素晴らしい。  妊娠から結婚へ。お互いの家族と交わっていく中での微妙な緊張と気まずさ、安堵、新たな気づき。  それらがふとした瞬間にごく小さな表情・視線の変化の中にたち現れる様が次第にスリルを孕む。  ふとしたアクシデントで夜の用水路に落ちてしまう菊池。結構大胆なショットを引いたカメラでさらりと撮っているのも凄い。
[映画館(邦画)] 7点(2015-10-05 22:22:46)
203.  ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声 《ネタバレ》 
この種のドラマでは、演奏後の大喝采や敵対していた少年との和解や教師たちとの別れのシーンをオーケストレーションで盛り上げて ベタ&ウェットに演出するパターンを和洋問わずさんざん見せられてきたが、本作はその点、物足りなさを感じてしまうくらい淡白でドライだ。  子供たちは安手の仲直りの段取りなど踏まないし、ドラマチックな別離のハグも握手もない。 演奏会を前に皆で一致団結して頑張りましょう的な安手のチームワークもない。 その簡潔な視線と短い台詞のやりとりの中に真情を込める節度あるディレクションがよろしい。  ここでは少年と大人たちとの関係が重視されており、大人への成長が一つの主題となっている。 少年期のみの音域というのもドラマのポイントで、発表会大成功の単純なサクセスストーリーに終わらないのも脚本の妙だ。  次のシーンの音や音楽を先行させて前のシーンに被せる、いわゆる音のズリ上げを用いた繋ぎが多用されていているのだが、 対話の中に合唱が重なってしまって煩わしい部分もある。やりすぎは良くない。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-09-13 20:20:09)
204.  ジュラシック・ワールド 《ネタバレ》 
言語的で非運動的で簡便性が特徴である携帯電話はやはり映画的な小道具ではない。サスペンスを基調とする映画なら尚更で、 この映画の作り手もそこを理解していて、早々に子どもたちの携帯電話を無効にしてしまうなど、気が利いている。 孤立状態も割とあっさりなのだが。  枝葉や車輌など対象物の合間から、メインの恐竜を部分的に小出しに見せていく手管。昼間の擬態や、夜の闇の中で赤いレーザーサイトの交錯の中に シルエットを浮かび上がらせるといった、立体性を意識したモンスターの見せ方の工夫が楽しい。同じくモブシーンの混乱ぶりとスケールも気合が入っている。 もっと、人間視点の仰角構図で恐竜の迫力を見せて欲しかったが。  ヒロインについては、見せ方次第でもっと魅力を出せたはずなのが勿体無い。 滝の上で身支度して一念発起するシーンは、スカートの裾をたくし上げるとかの衣替えでもっと大胆にギャップを提示して欲しい。 後半、銃を打ぶっ放しタンクトップ姿で疾走する彼女はとてもいいが、逆光のショットなどで不美人に見えてしまうのは撮影側の問題である。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-09-11 00:00:10)
205.  ピース オブ ケイク 《ネタバレ》 
飲みの席で陽気になったりカラんだり愚痴ったり、多部未華子の飾らないキャラクターが魅力的でいい。 借金で雲隠れしていた部下に、咄嗟にレジから札束を取り出し退職金だと渡してテレ笑いする綾野剛の、人の良い表情がいい。  そんな愛すべき二人が熱海のホテルで大喧嘩する。多部が男湯に乗り込んでの修羅場なのだが、 綾野の憎めないキャラクターもあって何故か微笑ましい。  必ずあるはずの二人の再会シーンでは、そこにどのような風を吹かせるのか。 終盤はその興味だけで画面を見守る感じだが、そこではしっかりと歌が流れ、疾走する二人が風になっている。  クワズイモは青々と揺れ、今度はカメラが風になって二人の周りを流れる。  そしてキスする二人のストップモーションが爽やかに映画を〆た。  前半のヒロインのモノローグはもっと削って欲しい。
[映画館(邦画)] 7点(2015-09-08 22:10:13)
206.  ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション 《ネタバレ》 
中空での宙吊りアクションといえば、『グランドキャニオンの対決』や『007リビングデイライツ』がある。 いずれも実景ロングショットでのスタントマンによるアクションと、スクリーンプロセスによる俳優らのミドルショットで構成される アクションシーンだが、そのショット繋ぎの巧さも相まって非常にサスペンスフルで迫真のシーンだ。 それらの「アクション」を踏まえていうなら、『ローグネイション』の宙吊りショットにあるのはスター映画の醍醐味であり、アクション映画の それではない。  巻頭の拘束部屋やオペラ舞台裏での格闘にしても、階段を下るカーチェイスにしてもアクションの段取りと設計はあるようだが、 その繋ぎが悪いのか画角が悪いのか、折角の俳優のアクションが映えないのが勿体無い。 クライマックスのマンホールへの滑り込みなども、トム・クルーズ自身は華麗な身体アクションを体現しているはずなのにそれを 効果的に撮れていない印象を受ける。  拘束具にキーが届かずに悪戦苦闘したり、水中行動での不手際や、バンク走行で膝を擦ったりという ハプニング的なアクションの採り入れ方はよいのだが。  トム・クルーズとサイモン・ペッグらとの信頼関係に関する部分は明らかに台詞が多い。 貸し借りがどうとか、彼を必ず救うだとかを言葉で表明してから行動というのはNGだろう。 有言実行は現実なら励行すべきだが、映画ではやるべきではない。 マイケル・マンを見習うべきである。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-09-06 00:21:39)
207.  バケモノの子 《ネタバレ》 
師匠と弟子二人並んでの、一風変わった型稽古の情景モンタージュが前半の山だ。 少年がひたすら模倣することによって次第に上達していく様が、 ロングショット主体でレイアウトされた動きの変化の中から表れてくる。 そこには二者の動きが次第にシンクロしていくアクション映画、舞踊映画の快感があり、 アニメーションによる誇張(スピード・タイミング)の醍醐味がある。  キャラクターにはあえて影をつけない平板な絵柄を採用し、その分 部屋の内外を駆け回っての喧嘩や、卵かけご飯の食事など アニメーションならではの動きの楽しさを充実させ、 一方で人物の表情のアップでは瞳の潤いを細やかに揺らす繊細な演出を施し、息吹を与える。 モブシーンの動画を含め、特に前半はよく頑張っている。  今回のクレジットでは細田単独の脚本だが、台詞が削り切れていないのは児童向けを意識したためか。 ラストでの回想シーンも少し親切すぎる。  トレードマーク的な青空と白い入道雲は決めのカットにはしっかりと登場していてそれなりに印象的だが。
[映画館(邦画)] 7点(2015-07-18 16:18:26)
208.  アメリカン・スナイパー 《ネタバレ》 
始まって早々に、今どき流行りの時間の巻き戻しが入る。 幼少期の父親の薫陶であったり、ライフル体験であったり、9.11への義憤であったり。 これが結果的には、今そこにある主人公に対する弁明・釈明ともなり得てしまう。  従来の監督なら、回想による生い立ち説明などには依存せずに あくまでも現在の人物の言動で提示しうる範囲でもって人物を描写したのではないか。 「スナイパーはスナイパーだから狙撃する。」と。 そうした「古き良き」簡潔さを許さぬのが映画の現在であり、 実話ものの制約・しがらみなのだろうが、 この隙もまた本作をめぐるイデオロギー論争を助長させたように思える。  ともあれ、本作での銃撃や着弾の即物的音響は生々しく尾を引く。 白いシーツの翻る、視界不良の屋上空間では、尚のこと音の恐怖が倍増する。 帰国後の主人公を苛むのも、ドリル音や子供の泣声など、視覚以上に聴覚的記憶のほうであり、 携帯電話から響く戦場の音も、現場が見えないだけに主人公の妻を恐怖させる。 エンディングはそこからの開放でもあろうか。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-07-05 20:44:27)
209.  トイレのピエタ 《ネタバレ》 
口跡の良さで女優を選ぶ、と語ったのは鈴木則文監督だが、 本作での杉咲花もその声の響きが何よりの特長で、 病院での出のショット、同じくラストでの登場もまずオフからの 彼女の甲高い声が画面に響く。  走り、泳ぎ、自転車を漕ぐ彼女の躍動的なフォーム、 病んだ男たちの泳ぐ視線とは対照的に真っ直ぐ覗き込むような眼にも力がある。  野田洋次郎とリリー・フランキーが語り合う、 白シーツ揺らめく病院屋上シーンの曇天は狙ったものか、たまたまか。 いずれにしてもそうした天候のメリハリも、杉咲とのプールシーンや田舎のシーンの晴天と風を際立たせるのだが、 ここでの野田のアップと涙のショットや、宮沢りえの台詞過剰は、 やはり甘いのではないかと思う。 リリー・フランキーの撮った動画映像も、主人公の死後にだけ見せる形にしたほうがすっきりして より効果的だったのではないか。
[映画館(邦画)] 7点(2015-06-25 23:58:08)
210.  マッドマックス 怒りのデス・ロード 《ネタバレ》 
なぜ『2』かといえば、それが最も『駅馬車』的、即ち最も西部劇的だからだろうか。 近未来ものでありながら、狼煙としての発煙弾、砂嵐や土埃、 塩湖や奇岩や峡谷のスペクタクル、投擲と銃砲による襲撃などなど、 原初的でアナログな西部劇の風情が新鮮な魅力となっている。  (ついでにブルーの『アメリカの夜』(day for night)の魅力も加えておこう。)  原初的というなら、一台のビークルの構造をとことん使いこなし車上を動き回るアクションや、 メカニックを自壊させていくアナーキーぶりは『キートンの大列車追跡』や『マルクスの二挺拳銃』に遡ってもいい。 竿の反動を使った良きアナクロアクションなどは特に楽しい。  序盤の残念なコマ落としアクションではこの先どうなるかと不安になったが。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-06-24 23:58:09)
211.  予告犯 《ネタバレ》 
中盤の、路地裏から用水路へ至る追走劇などが映画ならではの ロケーションと走りのアクションで頑張っている。  生田斗真を追って水路に入ろうとする戸田恵梨香が一瞬のためらいを 見せる。その引っ掛りのショットは、別箇所の周到な台詞の伏線とも リンクしながら後の彼女の「水面」のフラッシュバックへと繋がっていくわけだが、 その彼女の生い立ちを仄めかす回想も橋と少女とランドセルの落書きのショットで示唆するという、 寡黙で簡潔な語りが実にスマートだ。  動機や説明や回想の類をどうしても必要とする物語だが、後半もさほど失速させずに2時間におさめられた のは、そうした過不足ない語りの聡明さにもよる。  投棄現場詰所の蒼い光の中、抱く・抱かれる「友達」二人のショットも 十分に説得的で感動的だ。  ネットを始めとするメディア画面も『白雪姫殺人事件』よりも 熟れてきた感じで、携帯端末画面の有効な使い方も巧い。  荒川良々の反則的な涙にも癪だがやられた。
[映画館(邦画)] 7点(2015-06-07 19:46:25)
212.  ラン・オールナイト 《ネタバレ》 
一筋縄ではいかない両儀的なキャラクター同士の取り返しのつかない対決。 遠方に雷光が走る繁華街の夜景や、黒・青・白を基調とした操車場の硬質なロケーション、 走る車窓を滲ませる夜の雨などとともに、結部を冒頭に持ってきて回想形式で語る ノワールスタイルが運命論的な憂愁を終始纏いつかせる。  逆にそうした不穏感の持続が、エド・ハリスとの対決シーン以降の顛末を 間延びさせてしまった感もあるのだが。  階段といい、煙草や鏡などの小道具の用法といい、監督は案外ワイルダー好きだろうか。  お遊びのような移動空撮、スロー弾丸などはいい加減やめて欲しいし、 細切れ編集の格闘アクションは、『セブンス・コード』の前田敦子にも負けている。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2015-05-23 23:42:14)
213.  寄生獣 完結編 《ネタバレ》 
焼却炉の設定が、というよりこのシーンでの所謂「J・キャメロン・ブルー」を 採り入れたライティングこそがキャメロン的なのだが、このつまみ喰いでとってつけた感が山崎貴らしいご愛嬌だ。  炉のオレンジと反面のブルーに照らされる中で主人公たちが展開するクライマックスの舞台は映画向きの彩りある改変として申し分ない。  (「原作に忠実でない」だの「メッセージ性がない」だのといった原作崇拝的、テーマ・メッセージ依存型 批判は、それこそ映画が別メディアである原作に従属していない証であり、原理的に反「反映画」という事なのだから、映画にとって褒め言葉だ。)  宙吊りのアーム上でありながら垂直軸のサスペンスは淡白だし、陽炎や火の粉による灼熱の感覚が物足りないのも如何にも山崎貴だが、 動物園での三つ巴の対峙シーンやラストの屋上シーンなどと共に 高所を舞台に取り入れながら健闘している。  深津絵里の夜のマンションでは、風の音響はありながら画面上は無風状態 であったり、一方で画面上では彼女の髪を揺らしながら風音の効果音を省いていたり。  そうした趣向も彼女の異質性を際立たせており、面白い。
[映画館(邦画)] 7点(2015-05-10 08:00:53)
214.  バンクーバーの朝日 《ネタバレ》 
始めの製材所のシーンから、木材を運び、それを積み重ねる俳優らの労働を 長目のショットで丹念に描写している。 その中で次第にクロースアップされていくのは、彼らが見つめる手だ。  彼らの過酷な境遇は何よりも、じっと己の手を見るショットによって語られる。  それはライバルチームの投手らについても平等である。  モブシーンでも 冒頭の移民たちの顔、試合のギャラリー一人一人の顔をパンフォーカスで 可能な限り映し出そうとするあたり、作り手のFAIRNESSの発露といえる。  高畑充希のスピーチ前半を収めた引きのショットが引き立てる彼女の健気。 夜の日本人街に静かに響く波音のノスタルジア。 それらを邪魔しない、控えめで節度ある音楽用法が好ましい。 艶のあるナイトシーンの多さが、球技シーンの晴れ舞台を引き立てる。  それだけに競技シーンの運動感の欠如はやはり勿体無い。  敏捷性と連携プレーを活かした戦術なのだから相応のカメラワークで 盛り上げて欲しい。 妻夫木聡の初めての出塁・得点シーンにスローでは落胆である。 
[映画館(邦画)] 7点(2014-12-28 20:21:58)
215.  ゴーン・ガール 《ネタバレ》 
カメラに正対した第一ショットのロザムンド・パイクの妖しい瞳の表情から 一気に引き込まれるのだが、ラストで反復されるその黒い瞳の力は145分の ドラマを経て一層の凄味を増して迫る。 映画を牽引していく彼女のキャラクターが圧巻だ。  携帯カメラで撮られた表情によって印象操作される、 テレビショー出演の反響と印象度を即座にネットでチェックするなどといった、 メディア批評も随所で光る。 スクリーン内スクリーンの中で夫を演じるベン・アフレックの表情に交差する 虚と実が何ともスリリングだ。  そして本作でも、ズリ上げを始めとする音使いの妙が映画のテンポを上げている。 有り金を奪われたロザムンド・パイクが公衆電話で話す声をかき消す トラックの騒音、ドアのロック音・ノック音など、さりげない音を サスペンスにしてしまう演出に唸る。  妻の帰宅シーンにあえて安堵感に満ちたBGMを被せるシニカルな選曲なども堪らない。   
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-12-11 23:43:37)
216.  紙の月 《ネタバレ》 
地下鉄駅のホームで、線路を挟み向かい合う宮沢りえと池松壮亮の視線が合う。 列車の到着と発車の中で彼女の姿がかき消される。 発車後のホームに彼女の姿はない。振り返ると、 池松側のホーム階段を降りてく彼女の脚がある。 次は一気にホテルのシーンだ。  ラストも同様、「見えない壁ガラス」を割った彼女は次のシーンではもう 自らの脚で駆け出しており、街路の壁を曲がるところだ。  観客が気付いた時には彼女はすでに足を踏み出している。 画面には交差点や線路、白い会議ルームの壁のラインや窓ガラスなどの境界線が配置されているが、彼女は意を決したらもう躊躇わない。 心理を露呈させることなく、観客の共感など置き去りに突き進んでいる。 その潔さ、唐突さがいい。  儚げでありながら時に不敵な面持ちを見せる宮沢りえが随所で単に美しいだけに 留まらない複雑性を内包した魅力的なヒロイン像を見せる。   
[映画館(邦画)] 7点(2014-11-19 23:59:47)
217.  江ノ島プリズム 《ネタバレ》 
2012年と年月日までを特定しながら、吉田康弘は時代錯誤なまでに頑なに携帯電話を登場させない。 初監督作『キトキト!』では惜しくも一箇所肝心なところで使ってしまっているが、 それ以降は確信的に禁じ手としているのは間違いない。  だから、この物語の中では海外留学はまるで今生の別れのようだ。 本田翼は手紙をしたため、福士蒼汰は駅へと海岸沿いの道路を自転車で全力疾走する。 そこに普遍的な感情と、映画の躍動を生んでいる。  陽光が差し込む江ノ電の長閑な走行と、野村周平の住む日本家屋などのレトロ感も、 ケータイ無き世界でこそ活きる。  校舎の窓から夜の花火を見る未来穂香の表情がまた素晴らしい。 RAM WIREのエンディングテーマとドラマとの相性もいい。  
[DVD(邦画)] 7点(2014-11-11 23:51:02)
218.  太陽の坐る場所 《ネタバレ》 
酔った水川あさみが夜の跨線橋を上司と歩くシーン、墓参りを済ませた森カンナが 墓地を後にするシーン、いずれも絶妙なタイミングで背後に列車を通過させながら そこに作為を感じさせない自然なショットに仕上げるあたりが矢崎監督らしい。  体育館内の古泉葵と吉田まどかの周囲を旋回するカメラも一見ラフな手持ちだが、 その中で館内に差し込む光のフレアの一瞬一瞬を見事に取り込んでいる。  体育館の暗い備品室の中で並び座る水川と木村文乃。わずかに外からの光が 床の一点に当たっており、その微かな光の反射が二人の存在を浮かび上がらせる。 主題的に多々登場するローキー画面だが、いずれも光の加減の設計は緻密だ。  トンネルから外界へ。日食に伴い緩やかに暗転していく教室内。 1ショット内で光と闇が反転していく様が、ドラマを語っている。  二人の出会いを演出する、風と揺れるロングヘアも印象的だ。 走る自転車によって揺れ、寝そべることでふわりと広がる黒髪が画面を揺らす。 
[映画館(邦画)] 7点(2014-10-06 23:00:31)
219.  ジャージー・ボーイズ 《ネタバレ》 
トランクに無理矢理金庫を押し込んで前輪の浮き上がった車が夜の街を 迷走する。 金の重みに後輪をとられてうまく舵をとれない車は、その後のドラマの暗示でも あろうか。それでも必死にハンドルを駆るジョン・ロイド・ヤングは 上方の光に向かう姿勢で前へと進んでいく。  それはそのままラストの街路で光を見上げる彼らの擬似ストップモーションと 釣り合う形ともなる。  60年代へのオマージュか、厳格なロケーション主義かと思われた監督がさらりと スクリーンプロセスを使う趣向があったり、長身のエリック・バーゲンが カウンター席で斜め後方を振り返るといった特権的な仕草を見せたりと あちらこちらがさりげなく面白い。  「SHERRY」をはじめとする楽曲とそれに合わせた4人の振り付けにももちろん心踊るが、 やはり既成曲の力に寄りかかりすぎの気がしないでもない。 クライマックスも少々くどくはないだろうか。
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-10-02 23:04:09)
220.  フライト・ゲーム 《ネタバレ》 
携帯画面の文字情報と、それを読むリーアム・ニーソンのリアクションを 同じ画面内に乗せながら物語を畳み掛けていく。  観客は双方に視線を配りながらの視聴を要求されるが、それぞれのショットを 定番的に分断させるよりも断然テンポとリズムがいい。 その意味でも「NON STOP」である。  犯人とメール交渉をしつつ、相手の反応を機内の複数の監視カメラを通して 女性二人にチェックさせていく。 そこに同時進行で機外との通話が重なる、といった具合に複雑な シチェーションを的確に処理しながらテンションを上げていく手際がいい。  主人公を陥れていくマスメディア、謎解きに一役買う携帯動画メディア。 各種映像媒体の提示も現在的で面白い。  閉所での格闘アクションは相変わらず煩雑でぶつ切りなのが玉に瑕だが。  割れた鏡面に歪む主人公の像などは、もはや監督のトレードマークといえる。  
[映画館(字幕なし「原語」)] 7点(2014-09-11 23:59:05)
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