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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2383
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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221.  張込み(1958) 《ネタバレ》 
現在のような猛暑の最中に観る映画じゃないよね(笑)、刑事二人が下着姿にまでなって苦労しての佐賀までの列車行から始まって、いくら昭和三十年代と言っても扇風機ぐらい置くもんじゃない?と呆れる旅館での張り込み、とにかく二人の刑事の汗まみれの姿を延々と見せられるのはちょっとしんどい。冒頭でラジオから聞こえる佐賀の天気予報で「本日の最高気温は35度の見込み」といっているけど、昭和三十年代にそんな猛暑があったとはサプライズです。この予報自体はもちろんフィクションでしょうけどね。 この映画のほぼ三分の二はヒッチコックの『裏窓』を彷彿させるいわば“覗き”のシーンの連続。対象者の家の真ん前に丸見えできる旅館があるなんて笑っちゃいますけど、あんだけ堂々と窓から身をさらしたら気づかれそうなものですけどね。拳銃を所持している可能性がある強盗殺人犯が逃走中なら、ふつうは大々的に指名手配されるのは間違いなしですしね。でも何も起こらない日常を飽きもせずに観させてくれる橋本忍の脚本もですが、一時間半あたりまでほとんどセリフもない高峰秀子の使い方にも驚かされます。そこからの二十五分はまるで別人のような情念を見せてくれるのですけど、この激しいギャップが幸薄い女としての高峰秀子のキャラを強調しているんじゃないでしょうか。 東京に出てきた青年が貧困から抜け出せなくて犯罪に走るといういかにも松本清張らしい今となっては古臭いプロットであるのは否めませんけど、昭和三十年代という中途半端に近代化しつつある東京と地方の世相が丁寧に撮られているのは高評価です。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-07-02 21:58:58)
222.  ヒトラーの贋札 《ネタバレ》 
ナチ・ドイツが実行した史上最大の通貨偽造事件と言われるベルンハルト作戦、第二次大戦中に英国の外貨準備高の四倍ものポンド紙幣を偽造したというから呆れます。戦後に真贋を問わずすべての5ポンド紙幣を回収して破棄しなければならなかったそうですから、英国財政は相当なダメージを喰らったのは間違いないです。この偽札づくりは強制収容所のユダヤ人使ったので成功したわけで、ユダヤ人をただ虐殺するだけでなくとことん利用しつくすドイツ人気質には肌寒くなるものがあります。偽造に成功したのが敗戦の一年前とかなり煮詰まってからだったのが、英国には不幸中の幸いでしたね。トルコの英国大使館でスパイとして活躍したコードネーム・キケロに支払われた三十万ポンドは実はすべてこの偽札だったそうで、ドイツ人のセコさには失笑するしかないです。 ある意味で、数あるナチスのユダヤ人強制収容所を題材にした映画の中でも、かなり珍しい部類になるんじゃないでしょうか。なんせ作業につくユダヤ人たちは特別待遇、白衣すら着用するような清潔な服装、そしてちゃんとマットレスつきのベッドで寝れて、仕事に成功すればご褒美として卓球台までプレゼントされる。敗戦時に囚人たちが蜂起したときに偽造に従事していた者たちが親衛隊員と疑われて射殺されそうになるエピソードには納得です。収容所の中でも完全に隔離されたエリアで作業していたわけで、痩せこけてボロボロの囚人たちには清潔な服装で栄養状態が良好な彼らが同じユダヤ人囚人だとは見えるはずないですね。また主人公のソロヴィッチが善良な市民ではなく、暗黒街でもブイブイ言わせていたアウトレイジだというのも珍しいパターンです。ソロヴィッチはもと犯罪者らしく生き残ることが正義で、共産主義者で大義のためにサボタージュして成功を遅らせようとするブルガーとは対立しますけど、ブルガーを含めて仲間を裏切らず守ろうとする姿勢はまさにアウトレイジの仁義です。実はこのブルガーは実在の人物で、しかも自らの体験を基にした原作著書の作者なんですよ。つまりこのブルガー視点の物語であっても不思議ではないのに、あえてアウトレイジのソロヴィッチが主人公だというのは面白いところです。そんなしぶとい男であるソロヴィッチですけど、終戦直後にモンテカルロで持ち出したドル札で豪遊しますが、収容所の体験がフラッシュ・バックして全部カジノでわざと溶かしてしまうところには、彼の心中の善が噴き出してきたのを見せられたように感じました。そしてラストの「カネはまた造ればいいさ」というソロヴィッチの呟き、カッコいいじゃありませんか。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-06-30 23:12:20)
223.  スタング 《ネタバレ》 
やっぱB級はこうじゃなくっちゃねえ、何も考えさせない・突っ込ませない絶叫マシーン映画です。“なんで巨大蜂モンスターが出現したの?”という問いに“庭に散布する肥料にホルモンを混ぜたからかな”というアンサー、“この映画は50年代モンスター映画のリメイクか?”という疑問が湧くぐらいのいい加減な理屈、もうサイコーです。いわばこのモンスター蜂の産みの親であるボンクラ息子シドニー君、どうしても懐かしの宅八郎にしか見えず気色が悪いことこの上なし。B級モンスター映画と言えばこの人、ランス・ヘンリクセンご老体もしっかり顔を見せていますが、近年では珍しい暴れっぷりです(結局はお約束通りの途中退場でしたがね)。ケータリング屋のカップルのポール君、チャラい奴かと思いきや危機モードになると突然に頼れるファイターに変貌するのが面白い。でも満身創痍になって収容された救急車の中でヒロインとエッチし始めるのは、さすがチャラ男でした(笑)。ヒロイン娘のツンデレぶりも良かったです。モンスター蜂はもちろんCGですけど、造形や動きにはあまり安っぽさは感じませんでした。刺された獲物から成虫が飛び出してくるのは、寄生バチのモンスターというわけなんですね。 期待しないで観ていたからこれぐらい愉しませていただけたら、まあ満足です。屋敷内の攻防あたりの脚本にもたつきが無ければ、もっと加点してあげたのにね。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-06-27 20:50:03)
224.  ハンターキラー 潜航せよ 《ネタバレ》 
ロシアで好戦的な国防大臣の陰謀でクーデターが発生、穏健な大統領を拘束してなんと米国と一戦を交えるつもり!四年前に製作された映画だけど、事実は映画よりも奇なり、まさか現実の大統領プーチンが核兵器使用をちらつかせながらウクライナに侵攻するとは誰も予想すらできなかった現実です、しかも予想外にロシア軍が弱いとはね。 いちおう元潜水艦の艦長が原作者の小説が元ネタですから、原潜の内部や潜水艦戦の進行などはリアルです。主役ともいえる原潜USSアーカンソーは最新型の攻撃型原潜ヴァージニア級ということになっていますが、実はこの艦は建造中で架空艦みたいな感じかな。道理で艦橋と船体が繋がる部分が実在のヴァージニア級とは微妙に違っているわけです。冒頭で撃沈されるUSSタンパベイはロサンジェルス級原潜ということになっているけど、すでに全艦就役中の同級にはタンパベイという艦はなく、そりゃあ実在の原潜だったら海軍に激怒されちゃいますよ。 前半はスリリングで「おっ、これはいけるかな」と期待するも、中盤以降はご都合主義だらけのメタメタな展開です。だいたいからして、国防相のクーデターの目的が「アメリカと戦争がしたい」としか思えないのがヘンでしょう。現実のプーチンだって、彼なりにいちおう損得を計算して戦争をおっぱじめているわけですからね。そして大統領を始めは殺そうとしなかったというのはあまりに不自然、こりゃクーデター成功の鉄則からはあり得ない。まあそんなことは、アーカンソーに撃ち込まれる対艦ミサイルをロシアの駆逐艦が全弾撃ち落とすマンガみたいなオチを見せられれば、大したことじゃないって思えてきますけど(笑)。 ジェラルド・バトラーは豪胆な叩き上げの潜水艦乗りという雰囲気は良く出ていました、兵学校出じゃなくて原潜の艦長になれたというのはリアルなのかは別にしてね。統合参謀本部議長役はゲイリー・オールドマン、久々に十八番のキレ芸を見せてくれて嬉しかったです。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2022-06-25 02:20:55)
225.  カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇 《ネタバレ》 
ラヴクラフトの『宇宙からの色』を現代に舞台を移して、宇宙から飛来した隕石(?)が敷地に落下したばかりにクトゥルー神話的な怪異に翻弄されて全滅してゆく一家の視点で描いています。自分は原作未読ですけど『宇宙からの色』の翻訳者が絶賛しているぐらいですし、借金を返すためにB・C級の駄作に出まくっていた時期のニコラス・ケイジ映画にしては出色の出来なんじゃないかと思います。 ラヴクラフト作品映画ではその神話的なクリーチャーがいかに人間にはどうしようもない存在なのかをどう表現するかがキモですけど、本作はその点でも十分に合格点が与えられるんじゃないでしょうか。この生命体は本質が“色”なんだそうで、この常人では思いつかない奇抜な設定は巧みに映像化してると思います。そして家長がニコジーである一家がまともな連中であるはずはないですよね。なぜかアルパカの飼育に情熱を燃やすニコジーを筆頭に、オカルトに嵌って『ネクロノミコン』を読みふける娘とか、「絶対におかしい」とは言い切れないけどなんか違和感が拭えない面々なんです。まあお話しが進んで『遊星からの物体X』を彷彿させるようなグチャグチャ・クリーチャーが登場し始めると、もうそんなことはどうでも良くなってくるんですけどね。母親と息子が合体してグチャグチャになるのは本当に観ていてキツいです、なんせ母親役が美形のジョエリー・リチャードソンですからねえ。ニコジーが最後まで怪物化せずに普通に最期を迎えたのは意外だったかも、でも怪異現象にズタボロにされながら静かに狂ってゆく演技はやはり彼ならではの妙技です。 オチが唐突だとかと怒ってはいけません、この“投げやり感”が人知を超越した怪異の前では無力な存在である人間の存在をテーマにしてきたラヴクラフトの真髄なんですから。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2022-06-24 11:13:43)
226.  ロック・オブ・エイジズ 《ネタバレ》 
ブロードウェイのヒット・ミュージカルの映像化ですけど、80~90年代のアメリカンロックのヒット・ナンバーを並べただけでミュージカルになっちゃうというのは驚きとは言えなくもないです。その分、ストーリー展開は予測がすぐついて実際その通りのお話しになるというのは、ちょっとベタ過ぎるかな。使われるナンバーは、ガンズ・アンド・ローゼス、ボン・ジョヴィ、ジョーン・ジェット、そしてジャーニーと来れば私らの世代には懐かしい懐メロ・ロックのオンパレードですけど、若い世代にはこれがかえって新鮮に聴こえるんでしょうね。主人公ドリューがスカウトされてヒップ・ホップ・アイドルとして売り出されるというところは、音楽シーンの移り変わりを揶揄しているようで面白いところです。ギンギンのメタルが流行っているので設定は80年代かと思いきや特に触れられていないけど現代のお話しみたいで、なんか時空を超越した不思議な世界観みたいな感じもします。 私も観るまではすっかり勘違いしてましたが(騙されたというほうが適切か)、トム・クルーズはわき役的なキャラなんですね。ところが演じるステイシー・ジャックスなるロック・スター、もう「もしトム・クルーズが俳優じゃなくてロックの道に進んでいたら、きっとこういうスーパースターになっていたろうな」と素直に感じてしまう違和感のなさ。劇中の歌唱もすべてトムの生歌、相当な猛練習を重ねたみたいですけど、やっぱハリウッドの大スターですからそのポテンシャルは底知れないものがあります。まあかなりの怪演であることも確かですけどね(笑)。そして出番が少なかったがキャサリン・ゼタ・ジョーンズ、年齢を重ねたとはいえそのダンスのキレは半端ない。せめてトムぐらいの見せ場を造ってあげて欲しかったところです、実に勿体ない…
[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-06-21 22:46:42)
227.  シャッフル(2007) 《ネタバレ》 
物語は木曜日から始まる。リンダは娘たちを学校に送ってから、日常家事のルーティーンに戻る。留守中に出張中の夫・ジムから留守電にメッセージが残されていることを知るが、直後に保安官が訪問して来てジムが昨日に事故死したことを知らせる。 終いまで観て我に返ると、この導入部の木曜日の展開に辻褄が合わないことに気が付かされます。前日に残されたメッセージに気づかなっかったということはまあ現実でも良くあることでツッコむところじゃないですが、その内容はリンダが曜日シャッフルの渦に巻きこまれた状態での火曜日の行動の結果であり、メッセージを残している最中にリンダが電話をかけてきている。でも木曜日の彼女は前日に普通にジムを出張に送り出している冷めた夫婦関係のままだとしか思えない。ということに気づいちゃうと、この映画のプロットがますます理解しがたくなっちゃいます。こんな理不尽な曜日シャッフル現象に“なぜこうなるの?”なんて問いを投げかけても意味ななく、それこそ神様の悪戯ということにでもしておけばいいです。“大混乱の末最後に夫婦の愛が再確認されて新しい生命を授かりました”と言うのが脚本家の意図するところなんでしょうが、 “ジムが事故を免れる”というハッピーエンドや、“ジムの代わりにリンダが事故死する”という疑似ハッピーエンドで閉めなかったところだけは評価したい。 “頑張れば運命は変えることが出来る”というハリウッド映画で定番のテーゼからは逸脱しているけど、たまにはこういうのもイイんじゃないでしょうか。 さすがにサンドラ・ブロックはいい演技を見せてくれるけど、この映画じゃ彼女の無駄遣いなんじゃない?
[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-06-18 22:22:42)
228.  ダーティファイター(1978) 《ネタバレ》 
一説では動物と子役はドル箱スターからは敬遠される共演者だそうですが、さすがはイーストウッド、並みの俳優なら嫌がりそうなオランウータンとの共演も飄々とこなしてくれました。でも映画自体がユルユルなだけに完全にクライド君に喰われてしまっているのは残念、まあ彼としてはソンドラ・ロックと共演できれば満足、まあ言ってみれば完全な公私混同映画なわけです。でも当時は後にはイーストウッドを生涯苦しめる女になるソンドラ・ロックとの仲が破局に向かい始めたころで、それを反映してるのか彼女のキャラはとんでもないツンデレ女となっています。ツンデレだけど最後にはイーストウッドとの仲は修復するんだとばかり思って観ていると、なんとイーストウッドが振られてしまうという衝撃の結末、スクリーンで彼が女に振られるというのは初めてなんじゃないでしょうか。イーストウッドが演じるファイロもイマイチ判らんキャラで、プロのストリートファイターかと思っていたら本業は今一つはっきりしないけどトラックの運ちゃんみたい、気が向いた時だけファイトするいわばセミプロというわけです。中盤からはソンドラを追っかけてのロードムービーになるわけですが、どなたかも指摘されているようにこれはたしかに『トラック野郎』のパロディというかパクりかもしれません。コメディなんだからというわけなのかファイロと対決する相手がみんな弱すぎ、ラスボスとして登場するタンク・マードックなるキャラにしてもビール腹を揺らす単なるメタボ親父で、とても無敗のチャンプとは思えませんよ。たしかにイーストウッドとしては珍しい緩いタイプの映画ですけど、同テイストの映画なら『ブロンコ・ビリー』の方が良い出来だし私は好きです。まあ驚異的ともいえるオランウータン・クライド君の演技に敬意を表して、ここは一点プラスしておきます。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2022-06-15 21:48:00)
229.  東京裁判 《ネタバレ》 
最近は“東京裁判史観”なる用語まであって色々と論議が尽きない東京裁判、判決から35年後に裁判を真正面からとらえたこのドキュメンタリー、製作からほぼ40年たった現在でも考えさせられることが改めて湧いてきます。■とにかく上映時間四時間半はめちゃくちゃ長い。でもよく考えると、ニュルンベルク裁判と違って判決までほぼ二年半も続いたわけで、真面目に追ったらこれぐらい長くなるのもやむを得ないかなと思います。最も昭和初年から敗戦そして占領時代までの挿入された記録フィルムだけで全部足すと一時間近くになるけどね。高校生あたりの現代史授業の教材としてはうってつけかもしれません。■検事側すら最終論告で言及しているように、ナチスの犯罪をさばいたニュルンベルク裁判の被告たちと東京裁判の被告は同列に置かれるべきではない。これは私個人の感想ですが、東京裁判は政治家・官僚組織がその行政および外交の失敗が罪に問われた珍しいケースなんじゃないでしょうか。大日本帝国はドイツ・イタリアの様に一人の独裁者が好きなように動かせた国家じゃなく、明治憲法の下での集団指導で運営される体制で“天皇制独裁”なんて大嘘です。明治維新以降だんだんと国家の指導層が劣化してゆきついにたどり着いたのが敗戦だったわけで、その意味ではA級戦犯の中には万死に値する人物がいるのは確かだと思います。とは言ってもそれがいわゆる勝者によって断罪される筋合いのことかというと別問題です。温度差があったとはいえやはりこれは連合国による復讐で、裁判自体が戦争行為の一部で正義とは無関係なんじゃないでしょうか。■こうやってじっくり見させていただくと、勝者の法廷の粗や杜撰さが発見できました。まず裁判長以下の判事団は、それぞれ母国で法曹に関係していた面々だけど、国際法の専門家が一人もいないというのが驚きです。ソ連とフランスの判事に至っては、英語も日本語も理解できなかったというから呆れます。中でも裁判長のウェッブが日本憎悪に凝り固まっており、何が何でも天皇を訴追しようとゴネるわけです。首席検事のキーナンがこれまた典型的な強面で、ギャング相手みたいに被告たちに接します。でもマッカーサーからは天皇を訴追しないという方針を伝えられており、ウェッブを抑え込もうと陰で東条英機の失言をまるで弁護人の様に修正させるのがなんか滑稽。ソ連の検事に至っては日露戦争も日本の有罪要因だと主張、ここまで来ると失笑するしかないですね。その反面、各被告についたアメリカ人弁護人たちの弁論は想像以上に雄弁で、学会の大御所を引っ張ってきた日本人弁護人とは比べ物になりません。彼らは本国でも無名の弁護士たちですけど、やはり訴訟大国だけあってその能力は半端ないです。■判決はご存知の通り七人が絞首刑ですけど、やはりただ一人文官で死刑になった広田弘毅はさすがに可哀想でしたね。なんせ南京事件が彼の責任とされているのにはびっくりです。あと、全員が有罪というのは驚くべき厳しさ、ニュルンベルク裁判でも何人かは無罪だったのにね。しかしこの被告たちの人選には首を傾げるしかないです。大川周明なんて、当時の日本人でも知らない人がほとんどでしょ。この被告人選定には、なんか日本人で入れ知恵した人がいたんじゃないでしょうかね。あと海軍から死刑が出なかったのもなんか腹立つ、永野修身が生きていたらたぶん死刑だったんじゃないかな。宣告後に隣の留置所から死刑を免れた嶋田繫太郎の高笑いが聞こえてきて腹が煮えくり返った、と武藤章が手記に残しています。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-06-13 10:22:51)(良:1票)
230.  グロリア(1980) 《ネタバレ》 
『レオン』のキャッチコピーが“凶暴な純愛”ならば、元ネタ的なこっちは“凶暴な母性愛”というコピーをつけるに相応しいジーナ・ローランズ姐御の暴れっぷりです。ウンガロのスーツをバシッと着こなしハイヒールを履きながらも重いスーツケース引きずって駆け回り、そして容赦なく拳銃をぶっ放すこのおばさん、いったい何者なんだ?マフィアのチンピラたちと対決するときも銃で脅すだけじゃなく完全に挑発してますからねえ。ボスのところに乗り込んでも、ぜんぜんビビらずに「これで私は帰る、撃つんならどうぞお好きに」と堂々とした態度、もうその肝っ玉の太さには痺れてしまいます。演じるのが夫カサヴェテスとは名コンビのジーナ・ローランズですから、子供嫌いがだんだんと母性愛に目覚めてくる人物像には説得力があります。カサヴェテスの即興演出映画はどちらかというと苦手なんですけど、本作ではその臭みはあまり感じさせません。まあアクション映画では即興演出はちょっと無理すぎなんでしょうね。 ラストの墓地のシークエンス、グロリアは「ピッツバーグの駅で会おう」と少年に言っていたけど、なんで墓地にいることが判ったんでしょうかね?そしてマフィア相手にあんだけムチャしまくったんだから、手帳を渡したと言っても彼らが見逃してくれるとは到底思えません。そう思うと、あのラストは果たしてハッピーエンドだったのかと重い気持ちになります。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2022-06-09 22:11:19)
231.  裁かるゝジャンヌ 《ネタバレ》 
知って驚くしかないのは、この歴史的傑作のオリジナル・バージョンが80年代まで観ることが出来なかったということでしょう。28年製作のフランス映画ですけど試写の段階でカトリック教会の検閲で大幅にカットされ、劇場公開され世界に配給されたのはこの改変版だったわけです。サイレント映画ではよくある事例ですけどその改変版のフィルムも30年代には火事で焼失、80年代にオリジナル版のフィルムが奇跡的に発見されるまで、海賊版バージョンしか観ることが出来なかったんだそうです。 この映画の感想はもう“衝撃の映像体験”の一言ですね。ジャンヌが火刑されるまでの審問裁判のシークエンスでは、バストショットすら皆無のもう俳優たちの顔のどアップの連続、ジャンヌを含めてノーメイクの俳優たちが繰り広げる演技というか顔芸には圧倒されっぱなしです。デジタルの力もありますけど、サイレント映画とは思えないシャープな映像は圧巻です。ドライヤーは本来トーキー映画として製作したかったそうで、サイレントながら俳優たちにすべて脚本通りに演技させたそうですから、現代の眼でも違和感がない。ジャンヌ・ダルクを救国の英雄として描くのではなく、ルーズ・ルネ・ファルコネッティが演じるのはとても19歳には見えないくたびれた田舎の娘としか見えないのもリアル過ぎでしょ。後にはイングリッド・バーグマンやミラ・ジョヴォヴィッチまでもが演じるキャラですが、ファルコネッティは歴代ジャンヌの中ではもっともアレな女優だったんじゃないでしょうか。 ラストの火刑はほんと観ていて辛くなる、まさにトラウマものです、なんせジャンヌが焼けぼっくりになるまで見せるんですから。また刑場となるルーアン城の遠近法を無視したようなセットがまた印象に残ります。美術は『カリガリ博士』のヘルマン・ヴァルムの仕事ですから、納得です。でもこの美術構成は、ケン・ラッセルの『肉体の悪魔』でそっくり再現されており、美術担当デレク・ジャーマンの拘りが感じられます。
[DVD(字幕)] 8点(2022-06-06 22:08:33)(良:1票)
232.  勝手にしやがれ!! 英雄計画 《ネタバレ》 
このシリーズもついに大団円ですが、妙に弾けていた前作からは想像もつかない幕の閉じ方です。お手本というかネタ元だった『傷だらけの天使』も最終回は予想を超えてましたが、このシリーズもかなりシュールでぶっ飛んだ最後でした、でもこんなぶっ飛び方は好きじゃないよな。ヤクザを町内から追放しようとする寺島進が中心の前半のストーリー展開はたしかにいつものグダグダ系コメディですが、後半からエンディングまではもはやシリアス・ドラマとしか言いようがないです。寺島進の妹キャラがヒロインですけど、いつものように不思議ちゃんではないのからして違和感がありました。バブル時代が終わって大不況になっていった時世を反映して登場キャラたちが離散してゆくんだろうなというのは想像していましたが、まさか哀川翔と前田耕陽のコンビが警官隊に包囲されて銃撃されるようになるとは、予想を大きくはずされました。 “やっぱり腹黒い奴だった”寺島進がけっきょく生き延びたのには何のカタルシスもなかったし、警官隊の待ち受ける中に飛び出してゆく二人の姿は『明日に向かって撃て』のパクりじゃねえかよ!暖簾が風に揺れた瞬間に居眠りしていた洞口依子が目覚めるのがラスト・カット、これは二人が死んだことを暗示していました。ここまで来ると、黒沢清の「最後は俺の好きなように撮らせろ!」という魂の叫びが籠っているような気がします。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2022-06-03 22:25:20)
233.  切腹 《ネタバレ》 
井伊家上屋敷に突然現れた浪人・津雲半四郎、「当家の玄関先で切腹させてください」と申し出る。食い詰めた浪人者が大名屋敷に押しかけて腹を斬らせろとごねて金品を恵んでもらうというゆすり・たかりまがいの手口が多発していた昨今、「どうせ腹をさばく覚悟もないたかりだろ」とタカをくくった家老・斎藤勘解由は津雲を追い返すべく面談する。それは日本時代劇史上まれにみる陰惨かつグロテスクなストーリーの幕開けであった。 いやぁもう、凄い映画としか言いようがありません。数ある橋本忍の脚本の中でもトップクラス、ひょっとしたらベスト・ワンなのかもしれません。津雲半四郎=仲代達也と斎藤勘解由=三國連太郎の緊迫したやり取りから始まる序盤から、謎の浪人・津雲は何の意図があってやって来たのかが判らないまるでミステリー現代劇のような展開、もうぐいぐいと引き込まれてしまいます。幕藩体制が固まってきた寛永年間、各藩は多くの従業員を抱える法人組織みたいな存在になっています。井伊家は言ってみれば名門大企業、芸州福島家はちょっと大きめの中小企業みたいな位置付けでしょう。幕府の引き締め政策が猛威をふるって地方企業がバタバタ潰れても、財閥企業である井伊家はびくともしないわけです。そして大企業らしい官僚制のうえ建前でガチガチに固まった組織、これは現代のメガ企業のオマージュじゃないかと思うほど60年代とは思えない鋭い視点です。斎藤勘解由や沢潟彦九郎=丹波哲郎が振り回す“武士の面目”はたしかに武家社会のど正論なんですが、裏を返せば体面を保つための手段に過ぎなかったという事が劇中で見事に喝破されます。騒動が終息して記される覚書にも、まるで「西部戦線異状なし」という感じで隠蔽される幕の閉じ方、もう無常観が半端ないです。 まるで舞台劇のような展開でしたが、ラストニ十分の斬り合いがまたリアルです。さすがに眠狂四郎でも勝てるかどうかというぐらいの井伊家の手勢の人数、満身創痍になりながら息が上がってくる仲代達也の立ち回りが壮絶です。そして沢潟彦九郎=丹波哲郎との決闘、なんとこのシーンは両者とも真剣を使っていたんだと。私は剣道には知識はないですけど仲代達也の構えは戦国時代の実戦的なものなんだそうです。それにしてもこの映画での丹波哲郎は、立ち振る舞いからして迫力があってほんと強そうです、この人は剣豪役をやらせたらピカイチですね。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2022-05-30 22:08:51)(良:2票)
234.  スウィングガールズ 《ネタバレ》 
オーディションで選んだ楽器未経験の女優たちをしごいてビッグバンド・ジャズの演奏を披露させるというコンセプトありきの映画。出落ちならぬ“ラス落ち”とも言うべきラストの演奏を見せるために書かれた脚本みたいなもので、いかにも広告屋とTV屋が考えそうな企画ですね。 ストーリー展開は『ウォーターボーイズ』とほとんど同じような感じ、竹中直人に至っては同じキャラなんじゃないかと錯覚してしまうほどです。ギャグも大人が観るのは恥ずかしくなるレベルで、それを若手(当時)女優たちのクサい演技で“これでもか”という圧で見せられるのには、正直辟易させられます。楽器指導にかける労力の何分の一かでも演技指導して欲しかったところですが、こういうのが監督の趣味らしいので如何ともし難い。あんなにやる気がなかったJKたちが半年ぐらいであのレベルの演奏が出来るようになる過程が、いくらギャグをまぶしたからといって説得力がなさすぎでしょう。まあ出演女優たちが三カ月ぐらいで実際にあれだけの演奏を披露できたわけだからという言い訳は出来るかもしれませんが、この人たちはたぶん相当な苦労をしたわけで、劇中のキャラ達にも努力の跡を見せる演出をして欲しかったですね。そして地方というか田舎をバカにしたような底意を感じてしまうのは、なんか嫌な気持ちになります、こういうところがフジTVらしいのかもしれません。あと、「人間は二種類に分かれる、○○と○○だ」というセリフが数か所で出てくるのですけど、わたくしこのフレーズが大嫌いなんです。軽々しくこのフレーズを使うってのは、やはりダメな脚本の証です。 などと文句を並べましたが、そうは言ってもラスト十五分の演奏シークエンスは文句なしに素晴らしいのは確かです。演奏が万雷の拍手を浴びて終了したあとJKたちの浮かべる笑顔と表情は、演じた女優たちが「やり遂げた」という満足感が表出した素の表情なんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2022-05-29 11:43:30)(良:2票)
235.  黄昏のチャイナタウン 《ネタバレ》 
前作から10年ぐらい経ったころの設定なんでしょうか、その間に第二次大戦があってジェイク・ギテスは従軍して勲章をもらい、LA市警のルー・エスコバルは負傷して片足を失うと明暗が分かれたわけです。ジェイクの探偵業はこじんまりながらも二階建てのビルを構えるまでに繁盛して、名門カントリークラブの会員になってゴルフを愉しむご身分に。敬遠する同業者もいる浮気調査で稼いでいるのは相変わらずだが、頭の片隅には不幸な生い立ちだったキャサリン・モーレイの行く末が気がかりとしてこびりついている。 正直なところ前作を観ていないと話しについていけない類のストーリーです。脚本は同じくロバート・タウンですが、ニコルソンのモノローグやストーリーの判りにくさも含めて前作と異なり普通のハードボイルド映画になってしまったというのが感想です。ジャック・ニコルソンが自らメガホンをとっているわけですが、演出自体は手堅くまとめています。この頃のニコルソンはすっかり貫禄が付いてしまっていて、グラサンをかけるともうタモリにしか見えない(笑)。ストーリー展開は前作が問題にならないぐらい難解で、もう少し整理した脚本にして欲しかった。ニコルソンとハーヴェイ・カイテルの共演は『ボーダー』以来だが、この二人はけっこう相性が良いんじゃないかな。砂漠地帯で油田産業が活況だったLAを象徴しているような赤色が強調されたヴィルモス・ジグモンドの映像は、その色合いが強烈な印象を残します。あと、ストーリーには何の影響もなく地震が何度も起こるのですが、この意図はしょうじき?でした。 けっきょく実現していませんけど、ロバート・タウンは“ジェイク・ギテス三部作”としてLAの地域史を描くことを目指していたみたいです。もし三作目が書かれていたら、キャサリン・モーレイに続いて、前作で銃撃されたけど死ななかったと劇中で言及されたノア・クロスが登場するんじゃないかと妄想する次第です。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-05-24 23:06:31)
236.  チャイナタウン 《ネタバレ》 
ロマン・ポランスキーに典型的なハードボイルド=フィルム・ノワールを撮らせるというプロデューサー=ロバート・エヴァンズの目利き力は賞賛すべきです。ロバート・タウンの“優れた脚本の教科書”と呼ばれる脚本と、ノワール的な雰囲気をこれでもかと盛り上げるジェリー・ゴールドスミスのスコア(彼の手掛けた映画音楽のベスト・スコアでしょう)も忘れてはならんでしょう。ジャック・ニコルソンに探偵役がこれほどしっくり演じることが出来るというのはそれまで彼が演じてきたキャラを考えると意外かもしれませんが、歴代ハードボイルド映画に登場する私立探偵の中でベスト・スリーにランクインするのは間違いないでしょう。このジェイクはかつてチャイナタウンを管轄地としていた刑事、その地で女性絡みの事件がきっかけで警察をリタイアした過去があるみたいですが、それを匂わせながらも最後まで詳細を観客に教えない脚本が上手いですね。イヴリンは“何をしでかすか判らん女”というのがキャラ設定だったそうですが、まさにフェイ・ダナウェイにはピッタシの役です。出番は少なかったですけど悪の黒幕であるジョン・ヒューストンもなんか凄い存在感でした。劇中彼がニコルソンと対話している中で「うちの娘と寝てるか?」と言うセリフ、彼のアドリブだったのかもしれませんが脚本上のセリフだとしたら傑作な楽屋オチです。ニコルソンとジョンの娘アンジェリカ・ヒューストンが当時同棲していたのは周知でしたからね、この時ニコルソンが微妙な表情で返すのも傑作です。 ハードボイルド映画のストーリーが判りにくいのは一種の伝統芸みたいなものですが、その中でもこの脚本はましな方じゃないですかね。それでも“誰がダイアン・ラッド(アイーダ:偽イヴリン)を殺したのか?”なんて、気にしたら夜も眠れなくなっちゃいます(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2022-05-21 23:19:22)(良:1票)
237.  柳生一族の陰謀 《ネタバレ》 
日本で時代劇映画が死滅したと言われるまでになっていた70年代後半、かつて時代劇で邦画を牽引してきた東映が時代劇復興を期し満を持して世に問うた超大作、このバクチは御存じのように大当たりだったわけです。 まず、登場する俳優陣の顔ぶれの豪華なことと言ったら、目をむいてしまいます。萬屋錦之介の東映出演なんて十二年ぶりだし、三船敏郎や芦田伸介といった東映作品では他では見れない大物がキャスティングされているのが凄い。豪華かどうかは?だけど、なぜか角川春樹や映画監督の佐藤純彌まで出演しています、もっとも何度観てもどこに出ているか不明ですけど(笑)。柳生十兵衛は千葉真一の当たり役ですけど、意外にも映画では本作が初の十兵衛役だったんですね。登場人物はみなキャラが立ちまくっていますが、やはりその筆頭は成田三樹夫の烏丸少将であることは異存ないでしょう。意外なことにわりとあっさり十兵衛に斬られてしまって退場、どうせ架空のキャラなんだからもっと暴れるところが見たかったです。 ストーリーはもう荒唐無稽の極み、でもここまでぶっ飛んでると清々しいぐらいです。深作欣二が監督と脚本を書いているだけあって、言ってみれば『仁義なき戦い』大江戸版といった感じです。要は“家光組”と“忠長組”が日本の覇権をめぐって壮烈な跡目争いを繰り広げ、かつては覇者だった“公家連合会”は両組が抗争で共倒れするのを裏で画策し、再び暗黒街の覇者に返り咲くのを狙うという感じです。“忠長組”に集まる浪人たちや柳生宗矩に操られる根来衆は、抗争で使い捨てされる鉄砲玉というわけです。そこに出雲阿国までムリやり気味に絡ませてもうテンコ盛り状態、そしてあの驚愕のラストになだれ込むわけです。 深作欣二が初めて撮った大作時代劇としては上出来だったんじゃないでしょうか。ただ柳生宗矩=萬屋錦之介の大げさな歌舞伎演技だけは違和感が半端ないです。これは錦之助の彼なりに計算したうえでの拘りで、深作も指導したけど頑として変えず一時は真剣に降板させることを考えたそうです。でも、当時の深作にはこんな大物スターをクビにする権力がまだなかったのは、幸いだったのではないでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2022-05-18 22:25:51)
238.  ボーダー(1982) 《ネタバレ》 
現在では大げさに言うと星の数ほど製作されている“メキシコ国境もの”映画のはしりのような作品、レーガン政権が始まった80年代初頭からこのテーマが注目されるようになってきたんですね。言ってみればこのジャンルの映画の基礎型みたいな感じなんだけど、ジャック・ニコルソン、ハーヴェイ・カイテル、そしてウォーレン・オーツという豪華な顔ぶれのキャスティングなのになんか盛り上がらないんだよね。決して正義感に溢れるキャラじゃなく派手好きな女房に振り回される国境警備隊員を演じるニコルソン、そんな男が汚職に手を染めながらもふとしたきっかけで乳飲み子を抱えて国境地帯に流れてきた姉弟を無償の愛で助けようと奔走する。ここはさすが名優ジャック・ニコルソン、抑えた演技ながらも自らの行動を変革して、くたびれた空しい人生を建て直そうとする男を好演しています。この映画というか脚本の難点は、メキシコ女性の「なぜ私を助けてくれるの?」という疑問に「それを言っても理解されないだろうな」というニコルソンのセリフの通り、観ている方にしてもそれが判りにくいところなんです。ニコルソンの内面の葛藤をもっと観客に見せる脚本じゃないといけなかったんじゃないでしょうか。監督は60年代英国ニュー・ウェイブ・シネマの旗手だったトニー・リチャードソンです。本作でのニコルソンと妻のヴァレリー・ペリンとの関係性は、やはり奔放な妻に引きずられるリチャードソンの遺作である『ブルースカイ』のトミー・リー・ジョーンズとジェシカ・ラングに似ているなと感じました。 まあこれがブルース・ウィリスあたりが主役なら汚職同僚のハーヴェイ・カイテルやウォーレン・オーツなんかもバッタバッタと撃ち殺すオチになるんだろうけど、カイテルは銃弾があたってタイヤがパンクした車に押しつぶされオーツは勝手に横転した車が炎上して焼死、密入国ビジネスの元締めに至っては転んだらショットガンが暴発して頭を吹き飛ばされて自滅。要はニコルソンが直接殺した相手は皆無で、こういう捻ったところがニコルソンらしいと言えます。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2022-05-12 22:00:53)
239.  徳川セックス禁止令 色情大名 《ネタバレ》 
いわゆる東映時代劇ポルノでもかなり後期の作品。時代の進展により初期と比べるとエロ度のパワーアップはかなりのレベルに達しています、なんせにっかつロマンポルノという強力なライバルが登場していますからね。というわけで今回はカネをかけていますね、なにせヒロイン(なのかな?)におフランスからあのサンドラ・ジュリアンを呼んできました。サンドラ・ジュリアンと言えば日本でだけ人気が爆発した伝説のポルノ女優、もちろんリアルにスクリーンで観たことはなく自分は今回が初体験です。しかしよく見るとボディに関しては良く言えば日本人向きという感じの大人しさ、やはりウケたのは清純的と言えなくもないルックスなんでしょうね。初期のポルノ映画界隈ではやはり欧州系の方が日本では流行ったみたいで、ケバケバしい女優が多いUS製はまだ刺激が強かったんじゃないでしょうか。たしかにサンドラよりも一緒に登場する無名の黒人女優の方が、目を奪われるナイスバディでしたからね。そんなサンドラをお殿様に献上する豪商・博多屋を演じるのが渡辺文雄、サンドラとはフランス語で会話したりしてさすが東大卒だけあって様になっています。でもなんでフランス娘が江戸中期の日本にいるの?それはね、彼女は処刑されたフランス人宣教師の娘だからよ、っていう設定みたい。はぁ、女人禁制の宣教師になんで娘がいるの?なんて突っ込むのは野暮ってもんですよ(笑)。エロ以外にもサービス精神過剰なのか、女性の作法通りの切腹まで見せてくれます。この映画は切腹シークエンスの演出に見られるように、とてもコメディとは思えない重い撮り方をところどころでしているんです。あとバカ殿の近習若侍や途中から登場する山城新伍の様に、ふつうはストーリーの核になるようなキャラが途中で消えちゃんですよ。まさか監督は、この映画を群像劇のつもりで撮っていたのかも(笑)。 まあ基本はそのぶっ飛んだバカバカしさを愛でる類の映画ですけど、下品さくだらなさの陰に意外と製作当時の状況をシリアスにぶっこんだ脚本でもあります。バカ殿が押し付けるセックス禁止令・法令175條とは猥褻物頒布等の罪・刑法175条のパロディであるのは明白。ラストの字幕ももろにその反175条のスローガン。でもこんなおバカ映画で気勢を上げても、説得力ないんですけど…
[CS・衛星(邦画)] 6点(2022-05-09 22:53:10)
240.  勝手にしやがれ!! 成金計画 《ネタバレ》 
このシリーズもたいがいマンネリ化してるよな、と舐めていたら五作目にして突然の大変調!なんと言いますか、リミッターが解除されたようなぶっ飛びぶりとかなりシュールなセンスのギャグで、なんか鬼気すら感じてしまいました。ヒロインはシリーズ中で最豪華といえるあのWinkの鈴木早智子、トレードマークの無表情を活かした大根芝居なんですがそのキャラのバカっぷりと訳の分からなさは、これまたシリーズ随一!八億円分のヘロインを拾った(?)OLに振り回される哀川翔と前田耕陽のコンビという図式なんですけど、今回はそのヘロインを競り落とそうとするヤクザたちのキャラが立ちまくっています。ヤクザなんだからヘロインは強奪するのが普通なのに、めちゃくちゃにダンピングしながらもまるでオークションみたいに落札しようとするのが可笑しい。そのヤクザ・トリオのうちの金髪野郎は、首輪で繋がれて犬みたいに吠えるだけ、まるで人間ドーベルマンです。東京湾で捨てたヘロインが富士五湖に流れつくなどいい加減なストーリー展開は相変わらずですけど、散りばめられるギャグは今までにないセンスがあって自分にはけっこうツボでした。映像的にも遠景ショットや長回しの多用が見られ、今まで薄かった黒沢清風味が濃厚な感じがしました。ラストもパスポートを持って旅に出る哀川と前田の姿を見せてエンド、こりゃあ最終第六作では波乱の展開になるのかな?とはいえ、本作がシリーズ中でいちばん面白かったとは言っておきます。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2022-05-03 23:41:25)
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