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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2400
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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【製作年 : 1960年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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221.  人間に賭けるな 《ネタバレ》 
日本生まれで日本でしか行われていないギャンブル競輪をモチーフにしたちょっと珍しいタイプのドラマです。ヤクザに首根っこ掴まれて八百長している競輪選手、組長の女房とは愛人関係で姐さんは彼には競輪選手としての才能があると惚れこんでいる、でも彼の本命は組長の姪っ子で彼女の若い肉体にはすっかり溺れてしまっている。この三角関係に姐さんと競輪場で知り合ったサラリーマンが巻き込まれてゆく。言葉にするとけっこう複雑なプロットなんですが、脚本がなかなか秀逸でスピィーディーな展開は良かったです。競輪特有のレース展開などにはいっさい触れないんですからこの映画はギャンブル映画とは言い難く、姐さんがこの選手にひたすら一点買いで有り金をつぎ込んでゆくけどギャンブル依存症がテーマというわけでもありません。実は本作はこの姐さんと姪っ子が病む“マイ・フェア・レディ症候群”を見せたかったんじゃないかと思います。姐さんは自分の性的魅力と愛情でひとりの人間を変える快感に酔いしれ、姪っ子の方はヤクザの身内と言う境遇から逃れるため男を選手引退させて結婚しこじんまりとした世界を創りたいと願っている。そんな女たちの玩具の身から逃げ出そうとする男を川地民夫はけっこう好演しています。姐さん役の渡辺美佐子は、ハッとする様な美人じゃないけど何と言うか色気に満ちた女優ですね。面白いのはサラリーマン・藤村有弘とのホテルでの情事シーン、部屋の壁に聖堂のゴブリン像が映りバックには聖歌を流すんです。映画全体でも人間を見下ろす神の視点の様な高い位置からのショットが多用されており、それはラスト近くで最終ラップを告げて打ち鳴らされる鐘(ジャン)と教会の鐘がオーヴァーラップされるところで決定的になります。 しかし捜して観るとこういう知られざる秀作があるんですね、まだまだ修行が足りんと実感した次第です。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2014-01-24 22:02:51)
222.  紳士同盟(1960) 《ネタバレ》 
プロットというか設定は『オーシャンと十一人の仲間』に酷似しています。舞台が英国で元将校ジャック・ホーキンスが集めた連中がかつての戦友じゃなくて軍を不名誉除隊となった互いに見ず知らず同士というのが『オーシャン』との大きな違いです。普通ならこの海千山千な男たちが持つ特殊技能や仲間内の確執で話を引っ張るものですが、親玉ホーキンスが飄々としているせいか実に淡泊なストーリー・テリングです。いつもそのいかつい顔を活かしたキャラが多いホーキンスも、こんなにとぼけた役もこなせるとは御見それいたしました。 犯行が露見するネタには「こんなことでばれるか?」とちょっと疑問が湧きますが、あのラスト・カットを見れば「ああこれがやりたくてこの映画を撮ったんだろうな」と思わせるようないい味がありました。
[DVD(字幕)] 6点(2014-01-19 22:24:40)
223.  カトマンズの男 《ネタバレ》 
『リオの男』はスピルバーグの『レイダース』の元ネタだったけど、本作も『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』に見事なまで雰囲気が似てます。邦題こそ“カトマンズ”ですが、ヒマラヤの麓で撮られているのはほんの少しで、ほとんど舞台は香港です。『ホンコンの男』じゃカッコ悪いと思ったのかしら、配給会社の人たちは。でもヒマラヤのシーンは、こんなドタバタ・コメディのために良くあんなところまでロケに行ったものだと、素直に感心しました。 『リオの男』以上にドンドンとヒートアップしてゆくスラップスティックなギャグは、なんだか狂気の様なものさえ感じさせられます。ベルモンドを仕留めようと集まってくる殺し屋の数がどんどん増えてゆき、終いには戦争やってるみたいになってくるのがとてもシュールで傑作です。ベルモンドの“前髪クネ男”くんスタイルがまた妙に可笑しいし、一緒について回るジャン・ロシュフォールの執事がまたとぼけた味わいが有りまして良いんです。個人的にはベルモンドとウルスラ・アンドレスが大真面目に演っている『サンダーボール作戦』のパロディがとってもツボでした。
[ビデオ(字幕)] 7点(2014-01-09 20:50:37)
224.  マジック・クリスチャン 《ネタバレ》 
監督のジョセフ・マクグラスは、終いには収拾がつかなくなった迷作『カジノロワイヤル』に狩りだされた監督のひとりです。今回もこれまた稀代の変人テリー・サザーンが書き下ろした脚本に四苦八苦した挙句、観た人ほとんどから「なんじゃ、これ」と言われる様な珍作を撮ってしまいました。テリー・サザーンと言えばキューブリックの『博士の異常な愛情』の脚本を書いたことでも有名ですが、本作は彼の反体制という信条の持つ臭みが全篇に漂っていて閉口させられます。ハムレットを演じながらローレンス・ハーヴェイが見せるストリップやラクエル・ウェルチの登場シーンなんかこの映画で数少ない笑えるツボなんですが、ここはたぶんシナリオに参加したモンティ・パイソン組の出したネタでしょう。 正直言ってこの映画の良かったところは、もろマッカートニー・サウンド全開の主題歌“Come and Get It”ぐらいですかねえ。もう『カジノロワイヤル』が傑作に思えるぐらいでした。
[ビデオ(字幕)] 3点(2014-01-06 20:59:33)
225.  ひなぎく 《ネタバレ》 
まるでゴダールの脚本をソフィア・コッポラが撮った様な映画、と言うのがこの映画の説明としては相応しいかも。とくにストーリーらしきものはなく、強いて言えば“不思議ちゃん援交姉妹のオヤジ狩りの日々”とでも申しましょうか。とても40年以上むかしの映画とは思えないぶっ飛んだ映像と不思議ちゃん姉妹の強烈なキャラ、そして鮮やかな色彩感覚はもう奇跡としか言いようが有りません。「映画の表現とはとことん自由なんだな」とつくづく思いました。AKB48の『ヘビーローテーション』のPVが全篇本作へのオマージュになっていると言うのは一部では有名な話だそうです(監督は蜷川実花)。
[ビデオ(字幕)] 8点(2014-01-03 10:37:46)
226.  愚か者の船 《ネタバレ》 
批評家からの評価も高く群像劇としての完成度は高いけど、なんか小ぢんまりと纏めましたという感じがする作品です。舞台が英米仏の豪華客船でなくて、いかにも二流感が溢れるドイツの客船としたところはうらぶれたムードが出ていて良かったです。 登場人物はみな善人かせこい悪人というわけですが、この連中は“fools”と呼んでしまうにはあまりにも普通の人間すぎる気がします。誰が「君たちは愚か者だ」と言っているのかというとそれは神様で、映画の冒頭とラストで観客に語りかける“神の子”マイケル・ダンが天上の代弁者ということなんでしょう。 この映画のいちばんの悪人は反ユダヤ主義に凝り固まったオーストリア人のホセ・ファラーになるんでしょうけど、彼の演技が魅力的なんで誰も憎む気にはなれないでしょう。シモーヌ・シニョレとオスカー・ウェルナーの悲恋がストーリー展開のメインではありますが、出番は少ないながらもヴィヴィアン・リーのエピソードにはすっかり喰われてしまったみたいです。リー・マーヴィンとのからみとその前後の狂おしいまでの演技、やっぱこの人は凄い女優だったんですよね。
[DVD(字幕)] 6点(2013-12-15 20:08:51)
227.  唇からナイフ 《ネタバレ》 
ヘンな映画だとは聞いていましたが、確かに噂に違わぬ珍作でした。もしなんの事前情報も持たずに本作を観せられて監督は誰だと思うか聞かれたら、ジョセフ・ロージーが監督だと答えられる人は皆無でしょう。社会派で硬派なロージーがなんでこの映画を撮ったのかは大いなる謎ですけど、きっと生活のためだったんでしょうね。 だけど峰不二子チックなヒロインであるモニカ・ヴィッティの奇抜なファッションと色っぽさはもう絶品で、あの太もものサソリ・タトゥーはイイ目の保養になりました。敵ボスのダーク・ボカードは銀髪なこと以外はいつものボガードなんですが、この人のホモチックなキャラは訳のイマイチ判らない悪の組織の首領には良く合っていたと思います。 と、ここまでは一応褒めましたが、突っ込みだしたらキリがありません(笑)。①モニカ・ヴィッティ、テレンス・スタンプの脇が甘過ぎ、行動がバカ過ぎ②ボガードの悪の組織も運営方針が判らな過ぎ(側近が帳簿係で経費をかけずに悪事を働くことに腐心しているのは理解できました)③ラスト、モニカとアラブの王様にダイヤを横取りされたのに、なぜ「作戦成功」と英国情報部はご満悦なの? でもこの映画のカラフル&サイケデリックな美術は観てお得感満点で、明らかにピーター・セラーズの『カジノロワイヤル』に影響を与えているし、『オースティン・パワーズ』のセットも本作をパロってます。 ひょっとして、ただのおバカ映画ではないのかも…
[DVD(字幕)] 5点(2013-12-05 21:56:49)
228.  その場所に女ありて 《ネタバレ》 
最近『悪の階段』を観るまでは恥ずかしながら鈴木英夫監督のことを全然知らなかったのですが、昭和30年代にこんなにハードボイルドでしかも女性が主人公のサラリーマン映画を撮っていたなんて、本作を観てさらにぶっ飛びました。昼は会議室や応接室、夜は酒席でビジネスが進む、営業系サラリーマンの仕事ぶりが実にリアルに描かれています。 そして司葉子のカッコいいことと言ったら、さすが昭和を代表する美人女優のひとりです。現在はすっかりふっくらしたおばあちゃん(失礼)ですが、この映画で見せるショートヘアのいかにも出来そうな営業ウーマン姿にはもうほれぼれとしてしまいます。それまでお嬢さん女優だった彼女にこういうシャープなキャラを演じさせるとは、『悪の階段』で団玲子に悪女を演らせた鈴木英夫ならではの手腕にもう脱帽です。 ライバル社の広告デザインをこっそり手掛けて報酬をもらう主任デザイナー(完全な背任です)、社内で金貸しをやって月三分の利子を取る女子社員(超高金利!)、こういったまだ生きてゆくのに精いっぱいだった時代のホワイトカラーの生態には考えさせられるものがあります。最近『ALWAYS 三丁目の夕日』なんかで昭和30年代が過剰に美化される風潮がありますが、高度経済成長前期までの日本はまだまだ喰うのに精いっぱいだったのです。司葉子が査問に懸けられてクビになりそうになるシーンでも、「私が生活し生きてゆくにはこの会社が必要なんです」と毅然とした態度で訴えます。現代で重要視される「やりがい」とか「自分らしさ」なんて御託を並べる余裕は誰にもなかったんです。 社長シリーズや無責任男シリーズを量産していた陰で、こんなリアルでカッコいいサラリーマン映画が東宝で撮られていたとはほんと驚きでした。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2013-12-02 23:44:44)
229.  俺は都会の山男 《ネタバレ》 
公開されたのが新東宝倒産の半年前ということもあってか、タイトルクレジットには大蔵貢の名前が消えています。この映画は“山”や“登山”とはいっさい関係がなく、吉田輝雄の演じる乱暴男のキャラが“山男”と言うわけです。 この男、就職面接で居眠りをした挙句人事部長をぶん殴ってとうぜん就活は失敗、チンピラと組んで“喧嘩商会”なる商売を始めます。要は腕っ節の強さを活かして喧嘩の仲裁(というか助っ人)でカネを稼ごうというわけですが、この“山男”が超硬派なのに女には滅茶苦茶モテて若いのから熟女まで七人もの女が金魚のフンみたいにまとわりついてきます。まあそこは“ハンサム・タワーズ”の吉田輝雄ですから納得しましょう。彼は菅原文太や宇津井健と違ってアクション演技にキレがあってボクサー役でも務まりそうな身のこなしです。 本作は新東宝には珍しいドライでC調なギャグが連発され、ひょっとして東宝の喜劇シリーズより可笑しいんじゃないかと思わせるところもあります。豪華と言うか、コロムビア・トップ・ライトや江戸家猫八といった当時のお笑いのスターたちがワン・シーンずつ登場する構成なのが新東宝にしては珍しく、中でも由利徹の裁判官と南利明の書記のギャグには笑ってしまいました。警察を徹底的にバカにしたり当時の池田政権の政策を名指しでおちょくったりするアナーキーなところもプログラム・ピクチャーとしては珍しいところです。 さて実はこの映画には奇妙な部分があります。留置場の担当警官というホントのチョイ役なんですけど、制帽をま深に被っていてアップショットもないので判りにくいのですがどうも丹波哲朗みたいなんです。その警官にむかって「お前最近トップ屋なんかして稼ぎやがって」なんて言う楽屋落ちなセリフがあったのでこれは丹波だと確信しちゃいました(彼は当時TVドラマ『トップ屋』で活躍してました)。とすれば、そのころは大蔵貢と喧嘩して丹波は新東宝をクビになってたはずで、大蔵貢に無断でノン・クレジット出演させたってことでしょうか。なんか新東宝末期の混乱が透けて見える様な気がします。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2013-11-29 22:08:46)
230.  続・夕陽のガンマン/地獄の決斗 《ネタバレ》 
20年ぶりぐらいに観直しましましたが、南北戦争の戦闘シーンまであるし記憶に残っていた以上の超大作だったんだと再認識させられました。もっともカネかけてるのは判るけど、はっきり言ってあの戦闘シークエンスは不要だったんじゃないでしょうか。前作に続いて善玉・悪玉・卑劣漢の三すくみ対決ですが、ここまでこってりしていれば数ある三すくみ映画の完成形と言える存在で、このプロットはタランティーノが後年になって盛んに模倣していますが未だに本作を超える域にまでは達していないのです。 セルジオ・レオーネの映画では物語の進行があまりにゆったりし過ぎるのが欠点で、本作でも善玉・悪玉・卑劣漢の三人が一人ずつ紹介されるだけで冒頭30分も使うんですから恐れ入ります。さすがのリー・ヴァン・クリーフもイーライ・ウォラックには喰われっぱなしで可哀想でした。本作でのイーストウッドは“ドル三部作”の中でいちばん個性が薄かった気がしますが、まあこの“名無しのジョー”は『夕陽のガンマン』と合わせると莫大なカネを稼いだのだから良しとしなければ罰が当たりますよ(笑)。
[DVD(字幕)] 8点(2013-11-21 22:43:07)
231.  夕陽のガンマン 《ネタバレ》 
“ドル三部作”も二作目からはいよいよセルジオ・レオーネらしさが目立ち始めました。のっけから超ロングショットで始まるところなんかからしてもう痺れます。冗長と紙一重なレオーネ節ですが、凡百のマカロニ・ウェスタンの監督が束になっても敵わない彼独特の構想力ですよ。 メイン・テーマ「さすらいの口笛」が一緒なので『荒野の用心棒』の続編みたいな印象を持たれがちですけど、イーストウッドはどちらかと言うと影が薄くリー・ヴァン・クリーフとジャン・マリア・ボロンテとの元祖三すくみ状態を堪能すべきでしょう。 この映画のリー・ヴァン・クリーフのカッコよさは尋常なものではなく、『夕陽のガンマン』の主役はリー・ヴァン・クリーフだと私は断言しちゃいます。彼が使っている銃(バントライン・スペシャル)もカッコ良かったしね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2013-11-19 20:35:43)(良:2票)
232.  反撥 《ネタバレ》 
カトリーヌ・ドヌーブのフィルモグラフィ中最高のセクシー&露出度(なんせこの人は映画でヌードを見せたことが今まで皆無だし、これからもないでしょう)、そりゃ出演シーンの半分以上はネグリジェ姿ですからね。このネグリジェがまた悩ましくて、陽光に透けると彼女のボディー・ラインが見えちゃうんですよね、直接ハダカを見せられるよりはるかに刺激が強いです。ドヌーブって女優はホントは演技力はけっこうあるのにしゃかりきに演技を見せるタイプないのでどっちかと言うと世間では大根のイメージが強いのですが、本作を観れば若いころから高度な表現力を持っていたことが良く判ります。なにがすごいと言えば彼女の眼で、タイトル・バックの目玉の大写しから始まるぐらいですから最後まで眼の演技で狂気を表現しきってしまいます。 そして何度観ても生理的に拒否感を覚えてしまうのが壁から腕がニョキニョキ生えてくるシーンで、こんなこと考えつくロマン・ポランスキーという人は天才なのかド変態なのか、たぶん後者なんでしょうね。でも姉貴の愛人に抱きかかえられて笑みを漏らすラストのショットを観たら、ウサギやらの色んなメタファーの意味が判って脚本の巧緻さには感心させられました。
[DVD(字幕)] 8点(2013-11-14 15:30:33)
233.  東京オリンピック 《ネタバレ》 
馬鹿な大臣がいちゃもんつけたおかげで「記録か芸術か」と論争が起こったというのは有名なお話ですが、今の眼で見ればしごくまともでオーソドックスな印象さえ感じます。もっと前に『民族の祭典』をリーフェンシュタールが撮ってるのに、当時なぜそんな騒ぎになったのか不思議です。『民族の祭典』と比べれば平凡なもんですよ。それでも市川崑らしさを感じさせられるスタイリッシュなカットも随所に観られ、とくにあの女子80メートルハードルを正面から捉えたショットは、現在では当たり前の技法となっていますが当時は観客をびっくりさせたことでしょう。というわけで、映像に残された当時のオリンピック運営を観察したり日本人の反応を愉しめるのが本作の意義でしょう。■現在のオリンピックと比べると、思った以上に素朴な運営だったんだなとしみじみ思います。マラソンのとき、国立競技場の入口の柱に毛布が巻きつけてあるんです。なぜというと、選手が出入りするときにぶつかって怪我しない様にしてあるみたいです。開会式の晴天は有名ですが、イメージと違ってその後はけっこう雨が降った日が多かったみたいですね。雨天の走り幅跳びなんて、選手の足元は踏ん張ったら穴があくほどドロドロでした。そして見逃せないポイントは、「走る哲人」アベベ選手の力走が堪能できること。ストイックな風貌で、私はこれほど美しく走るマラソン・ランナーは観たことがありません。■実は手違いが怪我の功名になったというあの感動の閉会式の選手入場、今じゃこの「東京方式」がすっかりオリンピック閉会式のスタンダードとなっています。良く見ると選手たちがコスプレやパフォーマンスをしてて、ここだけもっとじっくり見せて欲しいぐらいです。昭和の日本人の精神に多大な影響を与えたもののひとつが、この閉会式が与えてくれた感動だったと思います。■64年のオリンピック招致が決まった時の首相は岸信介、56年後に再び東京オリンピックの招致が決まった時の首相が彼の孫というのは、不思議な因縁ですね(もっとも岸首相は招致には乗り気じゃなかったそうですが)。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2013-11-09 01:28:23)
234.  女獣 《ネタバレ》 
それにしても、いくら新東宝だからと言っても、このタイトルもう少し何とかならなかったんですかね。雰囲気だけでストーリーとは無関係で意味不明、まあそんなことで新東宝プログラムピクチャーに難癖付けてもしょうがないのは判ってますけど。 いきなり現金を輸送する銀行の車が襲撃されて銀行員たちは皆殺し、おまけに共犯の女まで始末されてしまう、そんな非現実的ながらもハードな幕開けです。この事件の捜査のために警視庁は婦人警官をズべ公に変装させて女子少年院に潜入させるのですが、こんな危険なこと婦警にやらせますかね? 作戦は上手くいって新宿の組織にまで潜り込めますが、どうもこの組織は麻薬取引の元締めでもあるらしいと判ってきます。ここで同じく潜入していた麻薬Gメンの菅原文太が登場です。実はこの映画が思ったより観られたのは、文太が一応ヒーローであるがなぜかほとんどストーリーに絡んでなかったからだと思います。とにかく新東宝時代の文太は、主演するとただでさえひどい出来の映画にとどめを差す必殺ぶりを如何なく発揮してましたからね。 この映画、麻薬中毒者の悲惨な禁断症状や新宿の風俗などが予想外の丁寧さで描かれています。ジャズ喫茶のバンド演奏なんか、音楽担当があの『11PM』の有名なテーマ音楽で知られる三保敬太郎なので、なかなかの迫力です。女優陣も左京路子や星輝美といった個性派を使っているところがグッドです。またところどころで遊園地のアトラクションを効果的に使ったショットがあったりして、撮り方が普通の新東宝映画とはちょっと違うなと思わせるところもあります。 でもやっぱり所詮は新東宝の映画、ユルユルな脚本ではどうしようもありません。文太をあまり活躍させなかったことには敬意を表して、ここはプラス一点とさせていただきます(苦笑)。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2013-11-08 23:20:34)
235.  地下室のメロディー 《ネタバレ》 
フランスのノワールには“仁義”“掟”“男同士の友情”といった臭みが目立つ映画が多いが、この映画には不思議とそういう要素が見られません。ジャン・ギャバンが出所して家に帰りつくと通りの名前が変わっていたという冒頭シークエンスには、そこはかとないユーモアすら感じさせてくれます。でも人物造形やその背景設定には粗と言うかポカが目立ちますね。だいいち、10億フランもの大金を強奪する計画を立てる切実感や成功させようとする高揚感といったものがこの犯人たちから欠けている様に思えます。アラン・ドロンがダクトを這ってゆく様な細部描写にはとても拘りを見せているのにね。でもこのシーンを甦らせた『ダイハード』よりもずっと面白い撮り方でした(ダクトの中にエアコンの空流が吹き抜けるところなんか、もう最高です)。ドロンがちょっかいを出す踊り子やギャバンの女房が伏線の様な存在なのかと思えば全然発展しないキャラでした、ってのも自分としては不満なところです。 と言うわけで、観ての通りでラスト・シーンがすべてというジャンルの映画でした、まあこれはこれで粋な5分間であることは確かです(でもあのカバンが水に沈むかなー、『あやしい伝説』でぜひ検証して欲しいです)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2013-11-05 23:53:58)
236.  電送人間 《ネタバレ》 
東宝特撮映画の中では、監督・福田純、脚本・関沢新一のコンビの作品はろくでもないという良い見本です。この電送人間というやつもなかなか難儀な存在です。なんせ、テレポーテイションするためには目的地に必ずバカでかい機械がないといけないんですから、トラックやら貨物列車で装置を先送りしとく必要がある。電送人間自体は普通の体質で殺人を犯した後は警官やら新聞記者から走って逃げ回らないといけない、彼も内心では「こりゃ、透明人間の方が良かったな」と後悔してたんじゃないでしょうか(笑)。 そしてこの映画を語るときに避けて通れないのが、あの伝説のキャバレー“大本営”です。悪役たちが本業の密輸をカモフラージュするために経営してるみたいですが、派手なネオン出してるうえけっこう繁盛してるから税務署あたりに眼をつけられたりして逆効果になりゃしませんかね。ボーイやホステス(このセーラー服姿はちょっとイケてました)の格好もすごいけど、なんと金粉ダンサーまで登場します(ダンス自体は致命的にダサいけど)。「ゴールド・フィンガーを臆面なくパクリやがって」苦い目で観てしまいましたが、よく考えたらこっちの方が4年も前の映画なんですよね、恐るべし東宝特撮映画! ラストは突然の浅間山の大噴火で閉めるという東宝特撮映画ではときどき観られる投げやりさですが、その噴火特撮までもが『日本誕生』の使い回しとくれば、もう監督の志しの低さを嘆くばかりです。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2013-11-02 20:16:59)
237.  荒野の用心棒 《ネタバレ》 
セルジオ・レオーネの映画は長尺というイメージがあるが、この映画は例外的にふつうの尺に収まっています。もっとも本作以降の彼の作品で2時間未満の上映時間は皆無ですけど。 ほんと良くここまでと感心するぐらい黒澤の『用心棒』をパクってますねえ。もっとも私らの世代では、『用心棒』より先にTVで本作を観たという人の方が多いことでしょう。でも『用心棒』自体がウェスタンを意識したプロットだったから、見事にレオーネは換骨奪胎して見せたわけです。 とにかく若くて渋いイーストウッドを愛で、モリコーネの口笛のメロディーに酔いしれるのが正解でしょう。ラストの鉄板を腹に仕込んでのガンファイト(これはイーストウッドがアイデアを出したそうです)は今観ればなんかバカバカしくて、素朴に子供のころはなんで頭を撃たないんだろうと不思議でした。西部劇で頭や顔を撃っちゃいけないという規制があったことは後に知りましたが、マカロニ・ウェスタンも初期の頃はそんな不自然なルールを踏襲してたんでしょうかね。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2013-11-01 00:36:14)
238.  からみ合い 《ネタバレ》 
ガンを患って余命幾ばくもない大企業のオーナー社長が、遺産を与えるかどうか判断するために三人の認知してない隠し子を部下や弁護士に捜して連れて来いと命令を下す、まるで戦国武将の跡目争いか『リア王』みたいなとても現代劇とは思えないプロットです。社長以下登場人物がみな腹黒くていわば“全員悪人”といった風情で遺産をめぐった暗闘を展開するわけですが、どう考えても社長役の山村聡がミスキャストだと思います。手当たり次第に女に手をつけて子種をまき散らす、おまけに胃を三分の二も切除して療養中なのに秘書の岸恵子を手篭めにする、と言う風に肉欲の化け物みたいな絶倫男が山村聡だなんてちょっと無理があります。ここはもっと下品で脂ぎった演技が出来る役者を使うべきだったでしょう(新東宝なら適役と言える俳優がゴロゴロいますが)。 結局三人の隠し子のうち本物だったのは一人だけだったのですが、この隠し子たちが意外なほどストーリーに絡まないところがこの映画の弱いところです。芳村真理のエピソードなぞは殺人事件に繋がってゆくんですが、これってそもそも仲代達矢の弁護士が人違いをしてしまったのが発端じゃないですか。でもその辺を上手く観客に伝えられないストーリー・テリングの拙さは観ていてもどかしくなるぐらいでした。 いかにも小林正樹らしい重厚な撮り方なんですけど、なんか物足りなさが残ってしまうんですよね。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2013-10-30 17:27:37)
239.  どぶ鼠作戦 《ネタバレ》 
岡本喜八の愚連隊三部作シリーズの中でももっとも切れた脚本と言ってよいでしょう、この映画は。この三部作はそれぞれのプロットはバラバラですが、共通する登場人物はもちろん佐藤允で、とくに本作で彼は最高のキレ味を見せてくれます。彼と藤田進や加山雄三のやり取りは、粋で軽妙の極みで聞き惚れてしまいました。惜しむらくは、サミュエル・L・ジャクソンの決め台詞“Mother Fucker !”と並ぶインパクトがある「ちっきっしょー」が、前二作ほど聞けなかったことでしょう。 藤田進がまたいい味出してるんですよね。坊さんが召集されて中国戦線に派遣されてきたという、いかにもと言うキャラを大らかに演じております。婚礼シーンの火踊りを観ても判る通り、この映画は『隠し砦の三悪人』のパロディみたいなところが有り、その中で彼が嬉々としてセルフ・パロディに興じるとは微笑ましい限りです。ラストなんか、有名な「裏切り御免!」へのオマージュになってますからね。 加山雄三も結局意外な役どころだったわけですが、この人はヒーローよりも脇に絡む役の方が上手いんじゃないでしょうか。もっとも砂塚秀夫の抱腹絶倒ぶりには大負けしますが(パントマイムで見張りを翻弄するシーンはもう最高です)。 あと今さら言ってもしょうがないことですけど、中国人とはちゃんと中国語(たぶん)で話すのは善いんですが、昼のシーンなんかは白文字を使っているので字幕が全然読み取れないことです。これは当時の東宝映画に共通する欠点なんです。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2013-10-27 19:51:22)
240.  悪の階段 《ネタバレ》 
大金を強奪した5人の男女が仲間割れというありふれたプロットなのに、不思議なほど引き込まれる魅力を持った作品です。キャスティングだけでこの映画の評価の8割は決まったとも言えます。山崎勉は『天国と地獄』の竹内銀次郎からさらに人間的感情を削ぎ落してもっと冷酷にした様なはまりキャラです。西村晃がこういう役をするのは別に珍しくはないけど、きっちり期待以上の演技を見せてくれます。一味の中に加藤大介を入れるというのがまた絶妙で、彼としては珍しい犯罪者役ですがやっぱこの人は上手いわ。そしてあの東宝きってのお嬢様女優である団令子が崩れた悪女だというのが驚きです。こういう役は、彼女のフィルモグラフィ中でも唯一ではないでしょうか。 不動産屋の中にほぼ画面が限定される後半は、二階と地下に昇り降りする階段を意識した画面造りには拘りを感じさせます。でもあの水筒のシークエンスはちょっと不自然で、だいいちあんな水筒、お店で売ってないでしょう(苦笑)。それまで山崎勉があまりに怜悧だったから、このシーンにももっと裏があるんじゃないかと勘ぐってしまって拍子抜けしちゃいました。でもこの映画の持つ独特の雰囲気はフレンチ・ノワールを東宝映画調に昇華させることに成功しており、まさに隠れた傑作と呼んで過言は無いでしょう。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2013-10-20 20:05:30)
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