221. 盲獣
触覚の世界か、凄い、凄すぎる。江戸川乱歩の原作が凄いのだろうが、それをそのまま映像化するなどとは、もっと凄すぎる。 途中母親をまじえてのバトルは愛憎劇としてもおもしろかったが、母親が死んでからはまさに狂気の世界。予想はできるものの映画として堂々と作り上げるのには恐れ入る。 ただ私個人はあまり好きでないというか、苦手な世界かもしれない。 [DVD(邦画)] 6点(2011-08-31 16:16:13) |
222. アイドルを探せ(1963)
シルヴィ・ヴァルタン目当てで鑑賞。当時「アイドルをさがせ」は大ヒットしていたし、彼女はもちろんかわいかった。同名の映画ともなれば、彼女の出演がたとえ4・5分であろうと見る価値があるというもの。 映画はコメディだがそこそこおもしろい。シルヴィ以外の歌手も知っていたらもっと良かったと思うが、どうにか知っていたのはアズナブールだけだった。 [映画館(字幕)] 5点(2011-08-29 07:17:50) |
223. 放浪記(1962)
林芙美子の「放浪記」と言えば、映画だけでなくお芝居にもドラマにもなった。その数は数え切れないくらいだろう。私も子どもの頃芝居を見、映画も見た。しかし数十年経った今では、主人公のふみ子が貧乏で苦労の連続だったことしか覚えていなかった。 それがようやくDVDで鑑賞して改めて凄い人生だったことを再認識した。そしてこのふみ子を演じた高峰秀子のうまさ、すばらしさ。本当に林芙美子になりきっていると思う。こういうのを白熱の演技と言うのだろう。 そしてふみ子を巡る人たち、その人たちの中にあって加藤大介が良い役を演じている。ふみ子は男を見る目がなかったのだろうかと・・・。 [映画館(邦画)] 7点(2011-08-04 23:08:57) |
224. 卍(1964)
先に樋口可南子の卍を見ていたので、この映画を見るまではそれと同じようなイメージがあった。しかし結果としては雲泥の違いだった。こちらの方が断然良い。さすが増村保造監督による映画である。 若尾文子と岸田今日子の二大女優が何と言っても素晴らしく、迫真の演技だ。したがって映画にもエロティシズム以上に緊迫感があり、サスペンス風にも読み取れるくらいだ。同性愛と異性愛の両面からの愛憎劇(かけひき)となっている。 あとで原作の小説のあらすじを追うとこちらの映画の方が本物といえる。 [DVD(邦画)] 7点(2011-08-04 15:08:23) |
225. 雪国(1965)
少年の頃見た川端康成の「雪国」はこの映画だった。大変有名な小説であることだけを頼りに、どういう内容かも何もわからず見た。覚えているのは大変美しい女優さんが出ていたこと、それが岩下志麻であった。 DVDで改めて見てみると、数十年経ったこともありいくらかは川端文学のすばらしさを感じ取れるようになったと思うがまだまだである。 この映画以降、岩下志麻さんの映画を何本も見ることになった。 [映画館(邦画)] 7点(2011-08-04 10:42:16) |
226. ボッカチオ'70
《ネタバレ》 ボッカチオが書いた「デカメロン」 デカというのは10であり、デカメロンは10日という意味だそうだ。日本では十日物語として訳されている。(アラビアンナイトには及ばないが) この映画はさまざまな「愛」をモラルと対比させ、4話のオムニバスとして作られている。4話はフェデリコ・フェリーニら4人の監督が担当したが、計200分を要する映画は上映時間の長さのためか名前の薄いモニチェリの第1話は省かれてしまった。 私がスクリーンで見た時も、3話しかなくしかも順番も違っていた。それがようやく10年ほど前に第1話も含めて完全版となり、DVDにも収められた。それで今回見たのはそのDVDである。 4話はそれぞれに監督の特徴が出てどれも素晴らしいと思われるが、私が好きなのは第1話と第2話。いったん省かれた第1話「レンツォとルチアーナ」は、他の作品と比べ変わっている。ヌーヴェルヴァーグというものらしい。結婚式を仕事の合間に行ったり、夫婦が昼と夜後退で寝るというような、切実な生活の中の愛を描いている。実に斬新であり、訴える力がある。 それと第2話「アントニオ博士の誘惑」フェデリコ・フェリーニの脚本監督であるが、巨大広告の中の女が飛び出してきて、博士を誘惑する。この博士と巨大女の対決がまた何とも言えない。 第3話と第4話は前の2話に比べるとやや平凡。 [映画館(字幕)] 7点(2011-08-02 06:15:16) |
227. 昨日・今日・明日
妊娠中の女は逮捕できないという第1話はそこそこおもしろかったが・・・。この映画を「昨日・今日・明日」と題名をつけ、オムニバスにしたのはわからないでもないが、何か特別な意味があったのだろうか。 [DVD(字幕)] 5点(2011-08-01 06:46:33) |
228. ああ結婚
《ネタバレ》 若い頃見て今でもよく覚えている映画。ソフィア・ローレンの演技が大変素晴らしく、忘れることができない。 結婚に縛られたくない浮気男マストロヤンニ、彼を一途に愛するけなげさには心打たれる。彼女が娘くらいの若い女性と結婚しようとした時、必死の行動を起こす。それは仮病だったかもしれないが、周囲の者達は皆協力したし、私だって応援しただろう。 映画のラストで彼女が幸せの涙を流すのが大変いじらしかった。 [映画館(字幕)] 8点(2011-07-31 22:49:34)(良:1票) |
229. 男と女(1966)
シンプルながら実に良い映画だ。男と女の感情の違いをまざまざと見せてくれる。 夫を事故でなくした女と妻を自殺でなくした男、男には息子がいて、女には娘がいる。しかも同じ寄宿学校に預けていて仲良しであれば、美男と美女の二人の運命は最初から決まったようなもの。それが確実にその方向に進みながらも一直線といかないところが良い。 ところでこの映画、DVD特典やHPなどを見てみると低予算で作られ、ハンドカメラを使ったり、撮影にも監督自身が携わっている。脚本もよくできているが、細かいところは演技者任せだったりしている。つまり演技が自然なのだ。 だから最初映画館で見た時に気になったA・エーメがしきりに手を髪にやる動作も、おそらく彼女自身の癖なのだろう、それが逆に自然の動作に思えるようになった。 ひとつだけ驚くのは、24時間レースをやった後にさらにモンテカルロからパリそしてドービルと立て続けに運転できるタフさ、さすがレーサー。 [映画館(字幕)] 8点(2011-07-31 07:27:41) |
230. 昼顔(1967)
《ネタバレ》 なるほど冒頭とラストの馬車は妄想だったのだ。途中恐ろしく退屈になって、映画館に入ったのを後悔したけど、昼顔とアンリ(ヘンリーはフランス語ではアンリ)が出くわしたあたりから急におもしろくなった。 昔見た時は、セヴリーヌがどうして娼婦になったのか理解に苦しんだものだったが、改めてDVDで見て納得。それにしても金歯の男は嫌な存在だった。 [映画館(字幕)] 5点(2011-07-30 15:45:23) |
231. 個人教授
《ネタバレ》 ナタリーがたまらなく美しく、魅力的だった。ルノー・ヴェルレーとほぼ同じ歳の私は、彼と同じようにナタリーを好きになり夢中になった。 彼がナタリーと幸せなときを過ごせば私もたまらなく幸せになり、ナタリーとうまくいかなると私の心も痛んだ。 ラストが何と言ってもすばらしい。フォンタナの心を知ると電話番号を教え去っていく。私は泣けて泣けて仕方なかった。見終わった後フランシス・レイのサントラを探し求めレコードを聴き、感傷にふけった。 40年ぶりにDVDを購入し、改めて鑑賞、青春の想い出が痛く蘇る。 [映画館(字幕)] 8点(2011-07-29 22:32:27) |
232. わが命つきるとも
トーマス・モアは理想主義者として知られ、「ユートピア」を書いた。彼の理想とするユートピアとはどのようなものだったろうか。映画では、それを図り知ることはできない。 また自説を曲げない相当の頑固者だったらしい。それは映画では否応なく描かれている。ただあまりにもきれいすぎて嫌気が起こるくらいである。ヘンリー8世もアン・ブーリンももう少し出てくるのかと思ったら期待はずれ。それゆえ物語の展開が少なく、おもしろさがない。 [DVD(字幕)] 5点(2011-07-28 05:48:51) |
233. バーバレラ
昔々若かりし頃、悪友からジェーン・フォンダの○○○が拝めるというので一緒に見た映画。友人はとてもはしゃいでいたが、私はがっかりだった。よくまたくだらない映画ができたものと感心した。 [映画館(字幕)] 3点(2011-07-26 15:36:18) |
234. 清作の妻(1965)
若尾文子主演増村映画の「妻は告白する」と並ぶ名作。女性の愛する男への想いは、こちらの方が更に強烈、強烈であるが為に思わぬ行動を取ってしまう。 そして、目を潰されて初めて今まで見えてなかったものが見えてくる。忠臣愛国の模範軍人よりも、もっと大切なものが・・・。 [DVD(邦画)] 8点(2011-07-24 20:41:43) |
235. 妻は告白する
《ネタバレ》 若尾文子主演増村映画の代表作だけあって、さすがに文句の付けようがない。不幸な結婚をした女性が、自分に優しくしてくれる男性を好きになったとして、どうして責められよう。必要以上におもしろおかしくかき立てるマスコミや非難の目で見る周囲の者たち、そうした裁判の中で「緊急避難」が適用され無罪となるがこれは当然の判決であろう。被告の差し迫った状況は第三者ではわからない。検察側の言うように、その瞬間殺意が芽生えたとしても、証明のしようがない。 しかしこの映画の真価は、その後からである。川口浩演じる恋人から何度となく真相を追求された時、本心を告白してしまう。人を殺してしまう人が人を愛せるのかという川口浩に対して、それほどまであなたを助けたかった、本当に愛していたのはあなただった。女の情念を見事に演じきった若尾さんは大変すばらしい。 しかし納得がいかないのは、なぜベテランの登山家でもある夫が、なぜ何のために危険な登山に二人を誘ったかである。 [DVD(邦画)] 7点(2011-07-24 09:36:51) |
236. 若者はゆく -続若者たち-
《ネタバレ》 「若者たち」の続編があることを最近知りDVDで鑑賞したが、内容も登場人物も前作を引き継いでいてまさに続編である。 高度経済成長の中にあって生産第一に邁進する大企業、人権無視に苦しみ翻弄される労働者。社会の矛盾と戦いながら、主役の兄弟たちはお互いの想いをぶつけながら成長していく。考えさせられる場面が多々あるが、強く生き抜くことが主題なのだろう。 今では考えられないことだが、三郎の就職試験の場で己の思想信条が問われている。上手に繕う者が合格し、正直な者が不合格になる。腹立たしくもあったが、それが大企業なのか。その面接試験の中で、最近亡くなられた原田芳雄さんが端役で出演されていた。合掌。 [DVD(邦画)] 7点(2011-07-22 23:38:50) |
237. クレオパトラ(1963)
世紀の美女を世紀の女優が演ずるということもあって、大変な話題になった映画である。しかし映画が壮大な歴史スペクタクルであるにも関わらず、評判は必ずしも良くなかった。それは撮影期間が長引いたのと、巨額の費用を要したからであろう。 映画会社の経営を危機に貶めたこの映画は、費用に見合う興行成績を伴わなかったために失敗作とまで言われたが、私はそれは当てはまってないと思う。十戒やベン・ハー、天地創造と並ぶ歴史劇の名作だと思う。 戦前のデミル監督の「クレオパトラ」は、非常にまとまったコンパクトな映画であったが、マンキウィッツの「クレオパトラ」はどこまでも、壮大であり華やかである。しかもクレオパトラを美女としてだけでなく、深い愛情の持ち主として表現していると思う。それだけに見終わった後の感動が大きい。 またマンキウィッツは本来「シーザーとクレオパトラ」「アントニーとクレオパトラ」の2本の約6時間にも及ぶ長大な映画を考えていたらしい。しかし、それは観客が長すぎて敬遠してしまうということで、4時間の1本の映画に改変され、さらに上映時には3時間あまりにカットされてしまった。 私が最初見たのはこの3時間にカットされた短縮版であったが、DVDになって元の4時間版を見ることができた。どこがどう短縮されていたのかは今となってはわからないが、クレオパトラのスフィンクス像に乗ったローマ入場シーンをもしカットしたとしても話は繫がるが、それでは大変味気ないものになってしまうだろう。映画とはそういったものだ。 [映画館(字幕)] 7点(2011-07-22 12:06:00) |
238. マイ・フェア・レディ
《ネタバレ》 映画「マイ・フェア・レディ」の誕生までには、少しばかりの歴史がある。元々はギリシャ神話の「ピグマリオン」それを劇作家バーナード・ショーが舞台劇にし、映画化も行った。バーナード・ショーの死後、ミュージカル「マイフェア・レディ」が誕生し、映画化されたのがこの映画である。 私は、ミュージカルも見て、原作の「ピグマリオン」も見たが、筋書きはどれもほぼ同じである。戯曲「ピグマリオン」がどれほどのものだったか知るよしもないが、映画「ピグマリオン」はアカデミー賞の候補にもなった。しかし、モノクロだからかもしれないが大変地味である。 それに比べるとミュージカルは当時のロングラン記録を作るほどの好評であったし、映画「マイ・フェア・レディ」は満を持して登場しただけに、歴史に残る名作となった。 何と言ってもエキストラの数が多く、1シーンしか出ない登場人物まで豪華な衣装である。華やかさこの上ない。主役のヘプバーンに至っては目が覚めるほどの美しさである。このヘプバーンの出で立ちだけでも、絵になる。 音楽や歌もミュージカルも映画も全く同じで、大変なじみ深い。「踊り明かそう」「スペインの雨」を初め、口ずさみたくなるほどである。 DVD特典の中にあるヘプバーン自身の歌も聴いたが、なかなか味があってすばらしい。おそらく全曲吹き替えなしでも可能だったと思われるが、この頃のミュージカルは「王様と私」も「ウェストサイド・ストーリー」もすべて吹き替え本職のマニー・ニクソンが歌っている。吹き替えなしで歌ったのは、この「マイ・フェア・レディ」のミュージカルで歌っていたジュリー・アンドリュースくらいなもの。「サウンド・オブ・ミュージック」「メリー・ポピンス」など。 なおヒギンズ教授のレックス・ハリソンやイライザの父親のスタンリー・ホロウェイはミュージカルで同じ役をやっていただけに、表情豊かでさすがに上手い。上手すぎる。 [映画館(字幕)] 8点(2011-07-20 18:48:51) |
239. 若者たち
《ネタバレ》 テレビドラマのシリーズが中断し打ち切られた時、全国のファンの後押しもあって作られた映画。私は40年前に市民劇場自主上映映画としての「若者たち」を見たのだが、今回DVDになって改めて見てみた。 親を早くに亡くした兄弟5人、性格も考え方も違う若者たちが、恋愛や仕事や社会の矛盾などについて、おたがいの主張をぶつけあう。お金や履歴は大切なものか、理想をめざすべきか現実に生きるかなどなど・・・。 自主上映会は、映画を見終わった後にそれぞれが映画について語り合う有意義な場であった。 DVDの特典を見ると、監督と原作者それに三郎役の山本圭の3人の、映画に対する思いが語られていて実に興味深い。 [試写会(邦画)] 7点(2011-07-16 16:55:18) |
240. 雁の寺
《ネタバレ》 水上勉の原作を読んだわけではないが、映画を見るだけでもそのすばらしさを感じる。 捨て子として育ち寺にあずられた慈念、母を慕う気持ちはいくら修行を積もうとも消えることはなかった。彼の目の前で繰り広げられる和尚と里子の痴態の数々、それが人を殺めるという犯行を引き起こしたのだろうか。それでも気持ちは救われず木村功の竺道に問いつめる。その結果が寺を去る決心になったのだろうが・・・。 映画は三島雅夫の和尚がすばらしく、若尾文子も美しく悩ましい。しかし何と言っても南嶽が描いた雁の絵、最初に出てきて最後に全容を現す。慈念によって破られた親子の雁、それだけが新しく張り替えられている。物語の主題を現すかのように・・・。 [DVD(邦画)] 8点(2011-07-04 20:06:26) |