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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2401
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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【製作年 : 1960年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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261.  モラン神父 《ネタバレ》 
久しぶりにキリスト教、というかカトリシズムを正面から考えさせてくれた映画でした。『勝手にしやがれ』で無頼漢を演じていたのとほぼ同時期のベルモンドがこんなストイックな神父役をしていたなんて、やっぱこの人ただ者じゃないです。 短いシークエンスをつないで行き、シークエンスの替わり目には画面を暗転させる編集がこの映画の特徴。モラン神父とバルニーの信仰をテーマにした会話は、宗教に無頓着な自分には知的な掛け合い漫才みたいに感じられたのが不思議です。結果的には悲恋に終わるバルニーの恋ですけど、「いつかまた会おう」「またって、あるのですか?」「この世ではなくあの世で」という最後の会話にはホロリとさせられました。 バルニーの娘役は『シベールの日曜日』のP・ゴッジです。
[DVD(字幕)] 8点(2012-12-28 20:21:36)
262.  爆弾を抱く女怪盗 《ネタバレ》 
数ある新東宝プログラム・ピクチャーには「ヒーローが菅原文太の映画は地雷である」というある確固たる法則があります。というわけで、またまた地雷を踏んで爆死してしまいました(笑)。 伯爵令嬢の高倉みゆきが何故か怪しい集団のボスになって、戦中に父を殺して財産を横領した沼田曜一に復讐すると言うお話しです。高倉みゆきは新東宝女優の中では珍しく東宝や松竹でも通用する様な気品を持っています(演技力は別の話ですが)。他にも三原葉子や三条魔子も出ていますが、ファンの意表を突くようにお色気シーンはほとんどありません。それどころか、三原葉子は沼田曜一の愛人としていつものファム・ファタールぶりを見せていたのに、なぜか中盤から姿を見せずに映画からフェード・アウトしてしまいました。別に本作に限ったことではないのですが、新東宝は素人が脚本を書いたとしか思えない様な映画が多いのには呆れます(まあそこが楽しみとも言えますけど)。 『爆弾を抱いた女怪盗』という題名の意味はラストまで観てようやく判りましたが、正しくは『爆弾に括りつけられた女怪盗』なんです。でも普通この映画にこんな題名つけるでしょうか、これも新東宝テイストなんです。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2012-12-17 23:11:32)
263.  マドモアゼル 《ネタバレ》 
中年になってから急速に容色が衰えてしまったJ・モローですが、そんな彼女がその妖艶ぶりを最後にスクリーンに残したのがこの映画ではないでしょうか。教壇に立っているときのいかにもオールドミスといった堅苦しさと、森の中で愛欲に溺れる艶めかしさは同じ女性とは思えないほどの落差があります。少年を睨みつけるラスト・ショットの恐ろしい顔、まさにこれぞ女優というところでしょうか。音楽をまったく使わない演出なので、森の中の自然が奏でる音が実に効果的なんです。大リーグの試合では日本のように鳴りものを使った応援をしないのでボールがバットに当たる音が鮮明に聞こえますよね、そんな感じの鮮明なサウンドでした。
[DVD(字幕)] 7点(2012-12-13 00:49:06)
264.  女死刑囚の脱獄 《ネタバレ》 
新東宝随一の名匠である中川信夫も量産されたプログラム・ピクチャーを数多く撮っています。中川信夫と言えば怪談・ホラー・時代劇の監督というイメージが強くて、こういう現代を舞台にした犯罪アクションものは果たして彼の撮りたかった題材とは言い難いところです。 父親殺しの尊属殺人罪(むかしはこういう罪がありました)で死刑が確定してしまったお嬢様が、婚約者の力を借りて脱獄して冤罪を晴らすというのがストーリーです。このお嬢様役が、新東宝社長の大蔵貢に「妾を女優にしてやった」という歴史に残る大妄言を浴びせられて映画界から消えていった、いまや伝説の女優である高倉みゆきなのです。『天皇・皇后と日清戦争』で昭憲皇后を演じたこともあり“皇后女優”とも呼ばれた彼女、品がある顔つきであまり露骨な役はフィルモグラフィには無い新東宝女優としては珍しい存在です。それだけ大蔵貢には大事にされていたみたいです。ちなみに大蔵が彼女に言い寄ったのは事実ですが、“妾発言”はまったく相手にされなかった腹いせだったと言うのが真相だそうです。 この映画でも、レズの女囚に迫られるぐらいで高倉みゆきのお色気シーンはいっさいなし。死刑確定しているのに独房でなく雑居房に入っているなどかなりいい加減な脚本ですし、殺人事件の真相もかなりのハチャメチャぶりで、これではさすがの中川信夫も腕の振るいようがなかったでしょうね。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2012-12-03 19:58:55)
265.  突然炎のごとく(1961) 《ネタバレ》 
引っ切り無しに流れるJ・ドリュリューの音楽と詩的ではあるが少々過剰気味のナレーションはこの当時のトリュフォーが良く使った手法で、これは好き嫌いが分かれるところでしょう。このナレーションは美しい修辞のセリフが好きなフランス映画の伝統を引き継いでいて、日本語に訳されていてもなんかいいですよね、言葉遣いが。 男女の三角関係がテーマの映画は多いけど、こういう風に三人がそれぞれ他の二人を愛するというのはなかなかユニークです。J・モローはもう完全に気まぐれな女神で、ジュールとジムは彼女に仕える祭司みたいなものです。とくにジュールは女神さまを満足させるためにジムを同居させてSEXまでさせちゃうなんて、普通に描いたらドロドロものです。そこをトリュフォーはコメディっぽく撮っているのは上手いと思います。 J・モローは不思議な女優で、監督がL・マルとトリュフォーでは雰囲気が全然違うんですね(個人的にはマルの映画のモローの方が好きですけど)。ストップモーションで表情を固定したり、歌を歌わせたり、鏡に向かって化粧を落としてゆくのをじっくり撮ったりして、いかにもトリュフォーらしく彼女をフィルムに残しています。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2012-11-12 22:44:47)
266.  世界大戦争 《ネタバレ》 
■「明るく楽しい」「不偏不党」がモットーである東宝が、SFとは言えよくぞここまでデスパレートな映画を製作したものだと感心します。あの当時は汚い核兵器である水爆の威力がほぼ頂点に達していた時期なので、あれだけ盛大にICBMを撃ちまくったらそりゃ死の灰が降り注いで全人類が滅亡するでしょう。ハリウッド映画ではよく“核戦争後の世界”というテーマがありますが、そう言えば邦画では皆無ですね。島国日本では水爆2~3発おとされたらもう逃げ場がないですし、放射能の恐ろしさを世界一に理解している国民ですから、当然です。■僧籍を持つ松林宗恵が監督ですから、根底には仏教的な無常観が感じられます。世界情勢の激変に巻き込まれてゆくフランキー堺親子という徹底的に庶民目線の作劇は、東宝特撮映画には珍しく乙羽信子が出演してることもあり、まるで新藤兼人が脚本を手掛けた様な印象です。二階で泣き叫ぶフランキー堺のシーンはあまりにも有名ですが、宝田明と星由里子が無線で「コウフクダッタネ」と交信するシーンでは観るたびに自分は不覚にも泣いちゃいます。流れ星みたいにミサイルが国会議事堂の上に飛んできてからの地獄絵図は、緻密なカット割りも功を奏して未だに強烈なトラウマとなっています。■この映画と言うか東宝という会社の限界は、「戦争は政治の継続である」と言われているのに、政治がまったく描かれていないところでしょう。ワルシャワ条約陣営を「同盟国」NATO陣営を「連邦国」と言い換えて国籍マークや軍服まで架空のものを使い、何をそこまで遠慮しなければならないの?と言いたいぐらいです。航空機や潜水艦などは当時の両陣営の実物をけっこう正確に摸しているのに、“ミグ”を“モク”と言い換えることまでしています。もちろん、アメリカやソ連と言った言葉はまったく出てこないので、なんで第三次世界大戦が勃発したのか理解不能です。登場する政治家は日本政府だけで、山村聡はじめ貫禄ある顔ぶれですけど、まるでバチカンかダライ・ラマみたいなご託宣を発するだけでどう見ても単なる傍観者でしかない。戦後の日本と言う国の国際的な位置づけからすると、この描き方もある意味リアルということでしょうか。■この映画が当時の観客にあまりに強い衝撃を与えたので、東宝は翌年に超能天気な『妖星ゴラス』を製作したんじゃないかと個人的に思っています。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2012-11-07 23:46:18)(良:1票)
267.  飛べ!フェニックス 《ネタバレ》 
不時着する輸送機はフェアチャイルドC-82パケットというマイナーな飛行機です。胴体が二本になっているツイン・ブームという珍しい型式が特徴ですが、原作者はこの姿を見て「これだ!」って閃いたのでしょうね。ちょっと飛行機に詳しい人なら、どうやってエンジンの後ろに計器をくっつけたんだよ、などと突っ込みたくなるところですが、フィクションとしては素晴らしいプロットであることは確かです。フェニックス号は飛行可能な機体として実際に製作されていますが、やはり空力的には不安定だったので墜落してしまい不世出の名スタント・パイロットだったP・マンツが撮影中に亡くなってしまいました。J・スチュアートは大戦時に航空隊に志願して爆撃機のパイロットをしてたくらいですから、適役と言えるでしょう。 この映画に出てくる男たちは、J・スチュアートを含めて人格的な欠点を持つ人間ばかりだってところが濃密なドラマ構成に繋がっています。H・クリューガーにやり込められてくさっているスチュアートは、まるで窓際の中年サラリーマンみたいで、全然ヒーローらしさがありません。それにしてもアルドリッジらしいところは、結果として卑怯で臆病な人間が生き残るという実にリアルな結末でしょう。極限に追い込まれた人間の醜さを、綺麗ごとで済まさずにちゃんと描いているところはさすがです。そして、あまり活躍しなかったけど、おサルちゃんが最後まで生き残ったのはホッとしました。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2012-10-30 19:05:25)(良:1票)
268.  妖星ゴラス 《ネタバレ》 
私の中では“はやぶさ”と言えば、“妖星ゴラスのJX隼号”と昔から決まっています。バンザイしながらゴラスに吸い込まれて散ってゆくクルーたちは、何と日本的なことか(そういやこの映画、やたらバンザイするシーンがありますが)。古今からさまざまなSF映画が製作されたけど、ここまで壮大で大乗的な視点の大法螺話は映画史に残る偉業です。高度成長期の日本のバイタリティは、なんと地球まで動かしてしまったんですから大したものです(笑)。 南極からジェット噴射しながら地球が動く画って、稚拙な技法かもしれませんが今の眼で観ても凄い映像です。東宝特撮ミニチュアワークの粋を凝らした南極での工事シーンは見応えがあり、建設現場のミニチュアから溶接の火花が見えるように撮っているのは感心しました。 あまりに不評な唐突に怪獣が出現するシーンも、ここで登場する航空機が後に『ウルトラマン』で科学特捜隊が使用するジェットビートルの原型になっていることは評価してあげたい。 この映画で異彩を放つのは、久保明と宇宙飛行士たちの異様なまでに高いテンションと陽気さです。彼らの描き方を観ていると、旧海軍の戦闘機パイロットたちの文化をそのまま持ってきた様な印象を受けます。「宇宙飛行士は駕籠かきみたいなものよ」なんてセリフまであった気がしますが、まだ日本ではアストロノーツという職業への理解がまだ浅かったのが伺えます。当時はアメリカではジェミニ計画が進行中でしたが、『ライトスタッフ』を観れば判るように、宇宙飛行士には知力体力ともに超人的な能力が必要だと言うことは想像を超えていたんでしょうね。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2012-10-19 20:58:02)
269.  少女妻 恐るべき十六才 《ネタバレ》 
まずは驚愕のトリヴィアから、なんとこの映画は昭和35年度芸術祭参加作品なんです!! さすがに受賞したわけではないみたいですが、恐るべし昭和30年代! 冒頭シーンでは明るい音楽が流れ、セーラー服の少女たちが校庭でバスケをしながらはしゃいでいます、まるで『青い山脈』か『若い人』みたいな雰囲気ですね。大騒ぎしながら校庭を飛び出し繁華街に繰り出した彼女たちは、一軒の喫茶店に入ってゆきます。開店前の店内にはケバイおネエちゃんがいて少女たちを叱ります、「商売衣装着て遊んでんじゃないよ、お前ら!」 何とこの娘たちはバリバリの娼婦だったんですよ。新宿駅東口のハモニカ横丁あたりが縄張りのヤクザが仕切っている売春組織で、組のチンピラがそれぞれのヒモになっています。娼婦とヒモで疑似夫婦というわけです。このヒモたちを定期的に“人事異動”させて担当する娘を変えるというのがビジネスライクで実に面白い。でもユキと五郎は真剣に愛し合うようになって、何とか組織から逃げ出そうと苦しみます。 この映画、予想外に丁寧に撮られていて、とくにユキと五郎の破天荒なカップルの恋愛は、同時期の松竹ヌーヴェル・ヴァーグを連想させるような瑞々しいタッチなんです。でも新東宝らしいダサさはもちろん健在で、客分として組に流れてきた殺し屋天知茂がやってくれます。天知のヘアスタイルがまた変でして、ビートルズをはるかに先取りした様なマッシュルーム・カットが全然似合ってません。堅気になって引退した仇敵が宇津井健こと“ハジキのブラック”、名字が黒木だからなんですがこのセンスが新東宝テイストなんです。そしてラストは新東宝お得意の無理矢理対決で、今回は“拳銃日本一”を賭けたガンファイトでした。 というわけで色々ヘンなところはありますが、最近観た新東宝プログラムピクチャーの中ではかなりいい味出している一篇でした。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2012-10-16 23:07:17)
270.  女奴隷船 《ネタバレ》 
新東宝、というか大蔵貢はいかにして手持ちの女優でエロっぽい映画を撮るかに全精力を注いできたのですが、それにしても本作は相当に奇想天外な映画です。 太平洋戦争末期、菅原文太はドイツのレーダー設計図(これが女性の写真の裏に隠しインクで印刷されているというわけが判らん設定)を南方から本土へ運ぶ任務を遂行中に乗機が撃墜されてしまう。気がついたらそこは船の中、その船は九州から上海に売られてゆく日本人女性を運搬している船だった。その船は丹波哲朗が首領の海賊船(!)に襲われて女たちと文太のほかは皆殺しにされ、本拠である無人島に拉致される。 はあ、思い出すたびに何とバカげたプロットかとため息が出るばかりです。丹波たち海賊は説明がないけど中国人みたいで、まあそれはいいけど丹波のファッションが幅の広いベルトにグリーンのサテンのシャツ、まるっきりカリブの海賊なんです、バンダナはさすがにしてないけど。 女たちを売り飛ばす組織の女王様は新東宝いちのヴァンプ女優である三原葉子でして、彼女がまたタータンチェックのベストに革のブーツとなんか違和感のある衣装で登場するんですよ(もっともその後は薄い半裸に近い衣装で通してくれます)。他の女たちもそうなんですが、みんな当時の六本木あたりで見られたファッションというのは、どうなんでしょうね(笑)。中盤では三原葉子がアラブ風衣装でセクシーダンスを踊ったり、三原と女たちがパンツ丸出しで乱闘して見せたりと期待されているものは一応見せてくれます。 ヒーローは菅原文太ですが、その文太の演技が驚くほど下手くそなんです。アクションシーンも腰が引けていて様になってないし、丹波の方が上手い役者に見えるというぐらいですから、相当なもんです。海女映画ではあんなに露出していた三ツ矢歌子まで、ひとりだけお嬢さんルックで肌も全然見せないと言うのには、当時のファンから罵声を浴びたんじゃないですかね。 ラスト、文太と女たちが高速艇で島を脱出するのですが、さんざん裏切ってあくどい事をしてきた三原がヒロインみたいな表情で船首に立っているのはびっくりです。まあ良くも悪くも、本作は彼女のための映画だったということでしょうか。
[CS・衛星(邦画)] 2点(2012-10-10 23:46:23)(良:1票)
271.  死ぬにはまだ早い 《ネタバレ》 
情事を終えた元レーサーと人妻。女を車で送りに行くが、街道では殺人犯を追っている警察が検問をしている。夜11時、喉が渇いたので山小屋風のドライブインに二人は入る。店内には新婚カップル、常連の医者、おつむの軽い若い娘ふたり、タクシー運転手、そしてカウンターの隅っこで黙々とマッチを積み重ねる陰気な男などの客がいた。そこに拳銃を持った男が乱入してくる… ここでネタばらしちゃいますけど、実は本作は64年製作の『恐怖の時間』を翻案した映画なのです。原作は菊村至の『閉じ込められて』という小説なんだそうですが、原作自体が『恐怖の時間』をネタにしたということなんでしょうか。 『恐怖の時間』と違ってこちらは男が立てこもってからは完全に密室、誰も入ってきません。客たちのエゴはだんだんむき出しになってきて、自分だけは助かろうとして醜い行動をする奴も出てきます。黒沢年男が演じる立てこもり犯は、浮気した恋人を射殺しその浮気相手を殺すために店に来たのですが、いきなり見回りの警官を射殺する凶暴な奴です。こいつは『恐怖の時間』の山崎勉とは違って鬼畜のような男で、医者に新婚の女をレイプさせようとしたり緑魔子には裸になることを強要したりでやりたい放題です。この頃の黒沢年男はこういう激情に駆られて身体を動かすキャラをやらせたらピカイチですよね、セリフは聞き取りにくいけど。 低予算ながらもほぼドライブイン店内だけで繰り広げられる密室劇としてはかなり濃度が高いと言えます。ジュークボックスがあって、そこから森進一の『花と蝶』やザ・タイガースの『青い鳥』なんかを聞かせるところなど独特のテイストに満ちています、この映画は。ラストにちょっとしたオチがあるのですが、『恐怖の時間』と比べても毒味がはるかに利いています(基本的には同じオチなんですけどね)。 こんな映画がソフト化されていないのは実に不思議。この映画の内容が、後におこった三菱銀行北畠支店の有名な事件に似ているからというあまり説得力のない説もありますが、真相はどうなんでしょうね。監督の西村潔には、ほかにも完成したのにお蔵入りさせられて観た人がほとんど皆無の『夕映えに明日は消えた』という正真正銘の幻の映画があり、まあ不運な人だったみたいです。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2012-10-08 14:33:41)
272.  恐怖の時間 《ネタバレ》 
渋谷の宮益署は夕方6時を過ぎてのんびりとした雰囲気に包まれていた。刑事課の部屋に若い男(山崎勉)が入ってきて「刑事の山本さんいらっしゃいますか」と尋ねた。帰宅しようとしていた初老の刑事(志村喬)が「わしが山本だが」と答えると、男は突然拳銃を突きつけて在室していた他の三人の刑事も武装解除して部屋に立てこもった。実は男は人違いをしていて、恋人を射殺した山本和夫刑事(加山雄三)をねらっていたのだが彼はまだ署に戻っていなかったのだった。 エド・マクベインの『殺意の楔』が原作だそうで、古典的な密室限定サスペンスです。密室と言っても、刑事部屋に三回も人が入ってくるのでどんどん人質が増えてくるのに、肝心の加山雄三がなかなか帰って来ないと言うのがサスペンスになっているのです。山崎勉はニトログリセリンを持っているので、人数が多い刑事たちも手が出せない。加山雄三は奥さんと食事をしたり、射殺した女の家に弔問に行ったりしているのを並行してカメラは映してゆきます。 ここまで観ていちばんイラつかされるのは、加山がまるで若大将みたい陰がない坊ちゃんで、正当防衛とはいえ女性を殺してしまったという苦悩がまるで伝わってこないところです。対照的に山崎勉は死んだ恋人のことを嘆くばかりで、熱演だとは思うけどキャラとしては深みに乏しい。貧乏だが真面目な恋人同士だったことは回想映像で語られるけど、なんで女が麻薬取引の現場にいたのかが説明されないのが作劇としてはとても不可解でした。刑事部屋に閉じ込められた人々と山崎努との駆け引きは見せ場として重要なのですが、どうも監督のサスペンス演出にキレがないのであまり盛り上がりませんでした。それでも、志村喬や土屋嘉男など刑事たちの海千山千ぶりは、観ていてなかなか面白かったです。 ラスト、事件が解決してからやっと加山雄三が警察署に到着して、「救急車が来てましたけど、何かあったんですか?」とボケをかますんです、これには笑いました。奥さん(星由里子)まで犯人に騙されて殺されかけたってゆうのにね、まったく…
[CS・衛星(邦画)] 5点(2012-10-08 14:33:32)
273.  地獄(1960) 《ネタバレ》 
肝心の地獄よりも、天地茂たち主要な登場人物がほとんど死に絶える現生の方が、不気味なんです。上から見おろす、下から見上げる、そんなとてもシュールで居心地の悪いショットが一時間の現生編の半分は占めているような気がします。何度も挿入される走る蒸気機関車や線路のカットがどんどん鬱な気分にしてくれます。 しかし新東宝でも屈指のカルトにこの映画を押し上げたのは沼田曜一のそりゃ鬼気迫る怪演に違いなく、この演技を説明するには適切な言葉が思いつかないぐらいです。彼が悪魔なのか天地茂のダーク・ハーフとして出現したのか、けっきょく最後までよく判らんところがまた良いですね。 地獄で苦しめられる天地茂に何か光明がさしてくるような雰囲気もあり、まさか夢オチの最悪なハッピー・エンドかと危惧させられるも、あまりに無常なラスト・ショットで締めてくるとはさすが中川信夫です。 この映画、未成年とお迎えが近い老人は、決して観てはいけません!!
[DVD(邦画)] 6点(2012-09-08 20:04:12)
274.  おしゃれ泥棒 《ネタバレ》 
いまリメイクするとアン・ハサウェイとブラッド・ピットなんかがキャスティングとしては自分の妄想イメージですが、ヘップバーンとオトゥールの軽妙洒脱さにはとうてい及ばないだろうな。ヘップバーンが映画で着こなしたジバンシー・モードは数多いけれど、この映画で見せるファッションが私の中ではベストです。最初に登場するシーンで着ているあの白い帽子のファッションなんかあまりにも有名ですよね。ピーター・オトゥールのとぼけた軽妙な演技がまた絶妙でして、ほんとこの人は上手い役者です。 泥棒映画は盗み方をいかに工夫して見せるかが命ですが、まるでこのジャンルの名作『トプカピ』をおちょくった様な脱力系の手口には意表を突かれました。いろいろと粗が見えるところはあるストーリーですけど、そこはラブコメですから楽しんだ者勝ちです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2012-08-09 22:45:58)(良:1票)
275.  白い巨塔 《ネタバレ》 
タイトルバックが実際に開腹手術をしているところを撮っているのにはびっくりです。この映画はその他の手術シーンも実写でカメラに収めていて、現代では絶対に不可能なことでしょう。モノクロだからまだましですが、けっこうグロいです。78年のTV版に衝撃を受けた年代ですので、「あれ、財前五郎はガンで死ぬんじゃなかったっけ?」と拍子抜けしましたが、本作は原作の正編だけの映画化だったんですね。 とは言え、上映時間2時間半でもかなり駆け足で物語を進行させていると言う印象はぬぐえないかな。それでも、田宮二郎のド迫力には終始圧倒されてしまいました。 でもやはりTV版をもう一度観たくなりました、ビデオ屋で探してみよう。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2012-07-28 23:07:37)
276.  小早川家の秋 《ネタバレ》 
小津安二郎のラス前作なのですが、『秋刀魚の味』よりよっぽど遺作っぽい不思議な作品です。まず、原節子、『秋刀魚の味』には出てないのでこれが最後の小津映画。『東京物語』と似た設定の未亡人なんだけど、本作では『東京物語』での役柄とは違ってなんか凄味まで感じさせられるたくましい女性だと思います。お見合い相手の森繁久彌を翻弄しちゃうところなんか、この役は性格が悪い設定なのかなと思ってしまいました。小津映画の特徴である登場人物たちのアンサンブルは円熟の域に達していますが、やはり新珠三千代がとくにいい演技を見せていますね。 この映画のテーマは、中村鴈治郎が演じる道楽旦那が天寿を全うするまでの数カ月の出来事なんですが、小津安二郎の“死”に対する恐れと無常観が痛いほど伝わってきます。とくに鴈治郎と19年ぶりに再会して、結局その死を看取ることになった浪花千栄子とその娘団令子、この二人のキャラクターは個人的には不気味に感じました。まるで死期が近づいた鴈治郎を黄泉の国からお迎えに来た物の怪じゃないかと思えるぐらいで、とくに死んだ鴈治郎を前にした二人の会話は凄くシュールじゃないですか。笠智衆が出てくるシーンも本筋には関係なくてちょっと変だし、この辺りで流れる音楽がまた突然暗くなってきてなんか不気味です。 よく「脚本に全然無駄がない」という褒め言葉を聞きますが、小津映画、とくに本作は不思議なほど無駄なところや隙がある。それでも名匠の手にかかると傑作になる、映画とは実に不思議なものです。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2012-07-24 21:58:49)
277.  遥か群衆を離れて(1967) 《ネタバレ》 
原作は『テス』で有名な英国の文豪トーマス・ハーディが若いころに執筆した小説。トーマス・ハーディの小説と言うとヒロインがボロボロになる暗いお話しが多いけど、まだ若いころに書いた小説なので『テス』や『日蔭者ジュード』とはだいぶ作風が違います。ジュリー・クリスティが伯母の遺産である農場を相続したヒロインです。彼女と求婚してきた三人の男たちとの波乱万丈の物語というわけで、ひたすらに農場を守ろうとするジュリー・クリスティの姿は『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラに似たところもある。このヒロインが実は大変に困ったちゃんで、男性や恋愛に関する感覚が自己チューすぎるのです。 映画が開幕してわずか5分あまりで振られてしまうアラン・ベイツはしょうがないとしても、お隣の農場主であるピーター・フィンチから求婚されても、なかなか返事をしない。ぐずぐずしてるうちに女癖の悪い騎兵軍曹テレンス・スタンプと出逢ってこいつとあっという間に結婚しちゃう。可哀想なピーター・フィンチはその後も彼女に翻弄され、ついに人生を破滅させられてしまうのです。 ある意味元祖ハーレイ・クイン・ロマンスみたいなお話しですが、英国南部の美しい田園風景が丁寧に映し出されていて、インター・ミッションまである長さも不思議と退屈せずに観れちゃいました。きっとオスカーにノミネートされたリチャード・ロドニー・ベネットの音楽が良かったせいでしょう。 まあ元が大した小説でもないので(失礼)、映画化するにはもっと大胆な脚色が必要だったかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2012-07-06 20:53:08)
278.  サイコ(1960)
60年代のヒッチコック映画は、一作ごとにテーマも出演者もがらりと変わり、それにつれて評価もドンドン堕ちていったのは事実。しかしトップバッターである本作は、ホラー・スプラッター映画というジャンルを創りだした“偉大なるオリジナル”であることは間違いない。 ジャネット・リーを始め俳優陣は今までヒッチコック映画に起用されたことがない顔ぶれ、おまけにモノクロ撮影と当時としては実験的な手法を使っているけれど、緻密に計算されたカット割りと演出は現在の眼で見ても見事の一語。基本的に役者の演技は50年代のものでちょっと物足りない感じはするけど、ラストで独房で毛布をかぶって笑うアンソニー・パーキンスは、何度観てもゾーっとさせてくれます。 そう言えば、『ハロウィン』のジェイミー・リー・カーチスはジャネット・リーの娘なんですよね。元祖スクリーミング・クィーンの子供が母の芸を引き継ぎ発展させるなんて、まるで伝統芸能の世界みたいで微笑ましい限りです。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2012-06-24 22:16:01)
279.  召使 《ネタバレ》 
ジェームズ・フォックスが劇中「魚の様な男」とダーク・ボガートのことを評するけど、これぞどんぴしゃりの表現。無表情というわけではないけどあまり顔の筋肉が動く感じが見えない、まさにお魚の様な顔なんですよ。家の中にある鏡はなぜか円形や楕円型をしていて、そこに映る画がまるで魚眼に映っているかの様なのも、意味深です。こんな演技ができるのは、ダーク・ボガートのほかにはいないでしょう。 屋内でほとんど話が進行するのでこのフラット(屋敷)が影の主人公みたいなもんですが、壁に映る影の映像が多用されてドイツ表現主義の教科書みたい。そして屋外はありふれた風景なのに、名カメラマンであるダグラス・スローカムの静謐なモノクロ映像が素晴らしく、屋内とは対照的である。 最後の悪夢のようなパーティはいまいち意味不明っぽいのではありますが、ハロルド・ピンターの脚本はかなりの完成度だと思います。 今ではカルト映画みたいな位置づけになってますが、本作はジョセフ・ロージーの最高作なのかもしれない。
[DVD(字幕)] 8点(2012-06-23 01:14:43)
280.  天国と地獄 《ネタバレ》 
黒澤明の現代もの映画は今一つ好みではないのですが、本作だけは例外・別格です。序盤の舞台劇を思わせる対話劇からして緊張感でもうピリピリですし、身代金受け渡しシークエンスから一挙に躍動し始める作劇も見事です。あの特急列車を実際に走らせて一発勝負で撮った(実際には撮り直したそうですが)シーン、これほど緊迫した映像は映画史の中でも類を見ない壮絶さです。そして煙突から牡丹色の煙が上がるシーンになると、満席の映画館でいっせいに拍手が沸き起こったのは、そんなこと初めての経験だったのでほんとびっくりしました。これこそ、初めて黒澤映画に色彩がついた瞬間なんですよね。 思えばその当時(70年代)、黒澤や小津の映画を褒めることはダサいというのがジャーナリズムの風潮だった時代に、黒澤映画の価値が判っていたのは市井の映画ファンたちだったのだなと、しみじみ感じます。
[映画館(邦画)] 10点(2012-06-15 00:41:04)
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