301. クロニクル
《ネタバレ》 力を持たなかった故に虐げられた者が無敵の力を得て暴走してしまう。 それは超能力であろうと権力であろうと、ありがちな落とし穴なのかもしれない。 アンドリューの荒んだ家庭環境と鬱屈した性質が、頂点捕食者としての驕りと破滅につながった。 三人のエスパーが悪と対決して超人的な活躍を見せる話ではなく、友情が描かれたり自分の弱さに負けてしまったりとテーマも身近で人間的。 その分リアルでとっつきやすいSFものに仕上がっている。 [DVD(吹替)] 7点(2013-12-16 19:41:03)(良:1票) |
302. “アイデンティティー”
《ネタバレ》 エドが鏡の中のマルコムを見て驚くシーンがあったが、それならもっと前にも自分の姿に気づく機会があってもよさそうなもの。 そうした都合のよすぎるところは気になるが、緻密に練られたストーリーには唸らされる。 さっぱり理解不能の謎に包まれた連続殺人事件。番号の入ったルームキー。消える死体。 オカルト現象かと思いきや思わぬ真相が隠されていた。そのサスペンス性の高さと意外性のある展開で最後まで惹きつけられる。 多重人格者を犯人とする作品は幾つもあるが、これは多重人格者の妄想の中の事件で人格が一人ずつ消えていくというアイデアが秀逸。 連続殺人を犯した人格を消すことができれば死刑にはならない。が、最後に残った人格は…。 消える死体の設定が殺人人格をうまくカモフラージュしてミスリードされた。 ラストもひねりが効いていて、売春婦だった母親へのマルコムの複雑な思いがうかがえる。 [DVD(吹替)] 7点(2013-12-13 20:23:45) |
303. パピヨン(1973)
《ネタバレ》 パピヨンの生きる力が凄まじい。 何が何でも生き延びて脱獄しようとする強靭な意志と果敢な実行力。 地獄から這い上がる逞しさに感動を覚える。 諦めずに闘い続ける姿は驚嘆に値し、不屈という言葉が最も当てはまる人物だ。 拷問のような独房生活で、ドガの名を最後まで白状しなかったのも人間業とは思えない。 ドガとの友情は極限状態を共にする戦友を彷彿させる。 S・マックィーンとD・ホフマンの共演はさすがに見応えがあった。 半死半生のパピヨンの夢に出てきたシーンが暗示的。 犯したのは殺人よりもっとひどい、人間としてのの最悪の罪――それは人生を無駄にしたこと。 パピヨンはそれまで人生を無為に過ごしてきたのだろう。 死や拘束に直面して初めて生や自由のありがたみを知る。 ギロチン処刑、ゴキブリ入りの食事、ハンセン病の村、原住民の裸族との交流など、刺激的な画もあって盛りだくさん。 でも、内容が重いこともあって2時間半は少し長い。 冗長にならないように二、三十分カットしたほうがテンポがよくなると思う。 [DVD(吹替)] 7点(2013-12-01 19:36:11) |
304. 夕陽のガンマン
《ネタバレ》 マカロニウエスタンの名作で、セルジオ・レオーネ監督の演出にエンリオ・モリコーネの音楽が絶妙。思わず口笛を吹きたくなる。 二人の賞金稼ぎの劇画的強さが単純にカッコいい。そんなに簡単には相手を信用しない腹のさぐり合いもおもしろく、ベタベタしないドライな友情も好感が持てる。 インディオは恋人に浮気されて怒りで射殺したのかと思っていたが、ただの横恋慕だったよう。だったら、殺された女の兄が復讐の鬼になったのも腑に落ちる。 ただ、インディオが捕らえた二人を逃がした策略は、ストーリーを盛り上げるためにそういう展開にしたのだろうけど相当無理がある。 [DVD(字幕)] 7点(2013-11-28 20:57:54)(良:1票) |
305. 刑事コロンボ/秒読みの殺人<TVM>
《ネタバレ》 珍しく冒頭からコロンボが登場したかと思えば、交通事故でのムチ打ちで笑わせてくれる。 サスペンスの面では、ケイの犯行手口に穴が多いのが気になる。 技師が倉庫に行くのはフィルムチェンジを済ませてからのほうが自然だし、ケイが映写室と犯行現場を行き来する途中で誰かに目撃されるリスクも高い。 エレベーターの天井裏に隠した銃の処分も後手に回っていて、犯人としては稚拙な面が目につく。 それでも動機やキャラ設定がわかりやすく上手に描かれているので、ストーリーには入っていきやすい。 映画のパンチは今まで気が付かなかったことなので興味深かった。 社長の逆鱗に触れてクビになった直後に、しつこいコロンボに追いかけられたらたまらないだろうな。 遊園地の騒がしいBGMがイライラ感を増幅して、自業自得とはいえちょっと犯人に同情したくなる。 コロンボにトドメを刺されてもドラマのように肩の荷がおりるわけではなく、負けずに闘って生き残ることを宣言する姿が印象的。 [DVD(吹替)] 7点(2013-11-26 20:44:50) |
306. 刑事コロンボ/死者のメッセージ<TVM>
《ネタバレ》 『別れのワイン』と同じようにコロンボが共感できるような人間的魅力のある犯人。 娘のように育てた姪を殺された復讐という動機もうなずける。 残念なのは、コロンボと犯人の攻防が少ないこと。 ミステリーの女王という設定なのだから、秘書の脅迫など余計なエピソードは排して、レベルの高い推理合戦が見たかった。 コロンボが姪の事故の捜査をやっていればこんなことはせずに済んだのにとの老女の嘆きは心からのものとして胸に響く。 [DVD(吹替)] 7点(2013-11-26 20:40:51) |
307. ミッション:8ミニッツ
《ネタバレ》 死亡した男の脳が8分間過去の仮想空間にアクセスするだけではなく、リアルなパラレルワールドを作り出すアイデアはSFとして秀逸。 ただ、最後はストップモーションのところで終わったほうが余韻の強いものになった気がする。 皆が救われた奇跡のハッピーエンドに見えるが、ショーンの意識がコルターに上書きされたとしたら、乗っ取られたともいえるのでショーンだけが救われていないような。 それを考えても、奇跡が起きる前で終わったほうが哀しくも美しいラストできれいな締めくくりになったはず。 [DVD(吹替)] 7点(2013-11-22 20:22:39)(良:1票) |
308. 刑事コロンボ/忘れられたスター<TVM>
《ネタバレ》 シリーズの中ではドラマ的要素が最も強い。 犯行手口や推理そのものよりも、しっかりと構成されたヒューマンドラマとして見るべきものがある。 スポットライトと昔の喝采を渇望する女優と、妻の体を気にかけて出資を拒む医学博士の老人、そして昔から女優を見守り続け密かに愛していた男。 人間模様が描かれる中で、コロンボの推理がドライに真相に迫るが、最後は情にほだされたかのように真犯人の逮捕には至らない。 女を庇う男の気持ちに報いた形でもあるが、コロンボファンとしてはあくまでも仕事に徹してほしい気持ちもあった。 犯人が病気とはいえ、虚栄心が強くてヒステリックで自己中の嫌な女にしか見えず、同情心は沸かなかったので。 それだったら『死者のメッセージ』のお婆さん作家を見逃してやれよと。 脇道エピソードがこのドラマの楽しみの一つだが、今回は射撃テストをサボっていたエピソードがいかにもコロンボらしくてツボだった。 [DVD(吹替)] 7点(2013-11-20 00:48:23) |
309. 刑事コロンボ/5時30分の目撃者<TVM>
《ネタバレ》 催眠術というと何やら見せ物的で胡散臭いイメージがあるが、医療の現場にも催眠療法として使われている。 それを悪用した事件なのだが、精神科医とコロンボの駆け引きが興味深い。 ヘッドライト、タイヤ痕、ライター石、ストッキングにくるめた貴金属、催眠導入剤…疑問を次々と犯人に投げかける相変わらずのねちっこさ。 医師仲間のパーティの席で、事件の推理を皆に披露するコロンボと、コロンボの注視の中で殺害暗示の電話をかける犯人は緊迫感があって見応えあり。 目撃者が盲人ということを逆手に取って、本当の目撃者は犯人自身とするオチはオシャレ。 作中、コロンボがおんぼろの愛車プジョーをフランス製の外車とやたら自慢していたのがおかしかった。 [DVD(吹替)] 7点(2013-11-20 00:47:28) |
310. 奇跡(2011)
《ネタバレ》 まえだまえだが主人公ということであまり気が乗らなかったが、観てみると予想外だった。 是枝監督が子役の魅力をうまく引き出しているようだ。 どうせ子どもの健気さに打たれた別居中の夫婦がヨリを戻す話だろうと思えば、そういうベタな展開ではない。 自分の生活より大事なものを持って欲しい、たとえば音楽とか世界とか――オダギリ扮する父の言葉は客観的には甘い自己弁明ともとれる。 でも、息子(兄)にはじんわりと効いてくる。 兄が個人的な家族の祈りを叫ばずに世界のことを考えたのは、父の言葉を理解できるだけ成長した証し。 少年や少女たちのしなやかな成長がうかがえる佳作だ。 [DVD(邦画)] 7点(2013-11-18 20:57:12) |
311. 刑事コロンボ/祝砲の挽歌<TVM>
《ネタバレ》 陸軍幼年学校という特殊な空間で起きた事件で、校長のキャラが魅力的。 犯人に存在感がある回はコロンボとの対決の構図が締まる。 白いと言えば黒いと答えるような天邪鬼な性格を利用した犯行も戦略的な知性を感じさせる。 リンゴ酒密造の目撃場所と時間の決め手は少しオチとしては弱いように感じたが、それ以外の魅力で補っている。 自白した後も、後悔はしていない、私は何度でもやるだろうと言い切る校長の揺るぎない信念がすごい。 ただ、自分の価値観にそぐわない人間を抹殺したり、生徒でさえも犯人に仕立てようとするあたりには狂気ものぞく。 それも含めて必要悪と肯定していることが、戦時や紛争下での論理につながるものがあるのかも。 [DVD(吹替)] 7点(2013-11-16 00:57:57) |
312. シラノ・ド・ベルジュラック(1990)
元が戯曲だけあってセリフ回しも演劇的で、やっぱり舞台のほうが合っている。 映像にすると舞台なら気にならないようなデフォルメされた部分が嘘っぽく感じられる。 シラノの心意気はフランスの寅さんのよう。 [DVD(字幕)] 7点(2013-11-14 20:06:58) |
313. おいしい殺し方 -A Delicious Way to Kill-
《ネタバレ》 ケラリーノ・サンドロビッチの舞台は何度か観たが、ユニークなキャラクターとウィットに富んだセリフがおもしろい。 その特長が本作にも活かされている。 投身自殺と思われた料理教室の講師の死をめぐって真相を解明していくサスペンス形式だが、犯行トリックは無理筋で推理クイズ並みのこじつけレベル。 そういったことは実はどうでもよくて、あくまでケラ得意の軽妙な会話が肝になったライト・コメディに仕上がっている。 インタビュー形式のモノローグを時折り挿入したり、クライマックスで教材のナレーションが犯行の解説に移行したり、演出も巧み。 ラストは名探偵の子どもを買収して探偵ゴッゴの継続を表すオチで、しっかり計算された構成。 主演の奥菜恵はコミカルな役にハマって好演。 脇を固める犬山イヌコ、池谷のぶえのオバサンキャラも個性的で抜群の存在感。 ただ、ケラ作品は生の舞台のほうがインパクトがあって好き。 映像でもおもしろいんだけど、内容自体は頭に残らず、しばらくすると忘れてしまうような軽さがある。 テレビやDVDならいいけど、決して映画館で見たいとは思わない類の作品。 [DVD(邦画)] 7点(2013-11-07 23:09:14) |
314. オーメン(1976)
オカルトブームの代表作のような映画だけに、よくできているし独特の雰囲気がある。 666やラストのダミアンの笑みなど、心に刻みつけられたシーンが幾つも。 [地上波(吹替)] 7点(2013-11-04 00:16:19) |
315. 刑事コロンボ/意識の下の映像<TVM>
《ネタバレ》 サブリミナル効果が一時期結構話題になったが、これはそのテーマを扱った先駆け的作品かも。 フィルムのサブリミナル効果に加え、塩辛いキャビアと高い室温の合わせ技で説得力を増している。 ただ、密室ではないので目撃者が一人でもいれば失敗するかなりリスクの高い犯行ではある。 コロンボ得意の細かい推理はこのシリーズの楽しみのひとつ。 犯人の名で料金先払いの電話をかけて相手が受けたことから親しい関係であることを見抜くあたりはいかにもコロンボらしい。 映写技師のコインを使う習慣を根拠に、犯人のアリバイ工作を見抜いたのもそうだ。 犯行手口を逆に利用して逮捕につなげるのもオシャレでキレイに決まった印象。 [DVD(吹替)] 7点(2013-11-03 20:38:31) |
316. 刑事コロンボ/野望の果て<TVM>
《ネタバレ》 上院議員補欠選挙を控えて、スキャンダルにならないよう愛人の秘書と別れるように迫る選挙参謀。 言ってることは妥当なので、殺すほどの理由にはとても思えなかった。 ヘイワードが上着を十日前にオーダーしたのは、あらかじめ上着がダメになることがわかっていたのではという疑惑。 例によってコロンボがしつこく疑問をぶつけていくので、ヘイワードがジワジワ追い詰められていく様が面白い。 人違い殺人ではなく最初から参謀を狙って待ち伏せていたと推論するコロンボに、ムキになって反論するヘイワード。 「自分が狙われたのではないとわかれば安心するだろうと思ったのに」 コロンボの言葉に一瞬フリーズするヘイワード、こういうコロンボの術中に嵌っていく描写が素晴らしい。 窮地を挽回しようとして打った手がやぶ蛇で、コロンボに見透かされてトドメを刺される。 役者の違いを見せつけて痛快なラスト。 [DVD(吹替)] 7点(2013-11-03 20:37:25) |
317. 刑事コロンボ/パイルD-3の壁<TVM>
《ネタバレ》 カーステで流す音楽の趣向が違ったことから生じた疑惑。 コロンボの細かいところに気づく展開は健在。 死体発見と行方不明では遺産の行方に大きな違いが出るのがミソ。 犯人の建築家、ウイリアムソン夫人、元夫人のそれぞれの思惑が交差する。 パイルの掘り出し許可をもらうのに、お役所仕事でたらい回しにされるのは日本と同じようで。 裏の裏を読んで犯人の誘いに乗っかるコロンボが一枚上手。 絶対に見つからない死体の隠し場所が一度捜索したパイルなのは納得だが、それまで被害者の馬屋の道具小屋でバレなかったというのがちょっと引っかかる。 [DVD(吹替)] 7点(2013-10-24 00:45:38) |
318. 刑事コロンボ/死の方程式<TVM>
《ネタバレ》 犯行手口としては粗いけど、犯人のお調子者キャラがいいので十分楽しめる。 野沢那智の吹替えも軽くて役にハマっている。 ロジャーは警察にはいくらでも知り合いがいるのに交番に電話してこんな冴えない刑事を呼ぶことはなかったのにという意図で叔母にチクリと苦言を呈するが、叔母は署長に選り抜きの刑事を回してくれと頼んでいた。 黄門様ではないけれど、コロンボを見くびっている目が印籠を見せられたように変わるシーンが実に楽しい。 高所恐怖症でロープウェイに青い顔で乗っていたのに、ラストの謎解きの場面では仕事に集中して恐がっていないのがコロンボらしい。 ワナにはまったロジャーの狂ったような高笑いが余韻を残すラスト。 [DVD(吹替)] 7点(2013-10-22 21:56:23) |
319. 刑事コロンボ/指輪の爪あと<TVM>
《ネタバレ》 ゴルフのレッスンプロへの尋問シーンがおもしろい。 レッスンが遅い時間に変更されているのを夫人との逢瀬のためと見破ってジワジワと追い詰める。 コロンボの本領発揮で、おまけにナイスショットのオチつき。 死体の傷を指輪と推理して犯人像を左利き、短気など絞り込んで探偵事務所所長に目星をつけ、指輪の跡がないことからレッスンプロをあっさりシロとしたのも手際よい。 車を故障させた上にコンタクトを使って犯人をワナにはめ、コロンボがケニカットにネタばらしするラストもにんまりさせられる。 [DVD(吹替)] 7点(2013-10-18 00:01:47) |
320. 刑事コロンボ/殺人処方箋<TVM>
《ネタバレ》 刑事コロンボシリーズの最大の魅力はキャラクター。 第一作目からコロンボと冷徹な犯人のキャラがしっかりと描かれていた。 本作の犯行自体は特筆すべきことはないものの、コロンボの仕掛けたワナに小憎たらしい精神分析医がやりこめられるカタルシスがある。 フレミンゴがラストで手の内をペラペラばらすのが決め手になるのは若干物足りないが、自信過剰で傲慢な人物が勝ち誇った言動なので無理筋に見えないようにはなっている。 フレミングが帰宅したときに一度も夫人の名を呼ばなかったこと、旅行の行き帰りでトランクの重量が違ったことなど、細かいところに気づいてチクリチクリと追及する持ち味のしつこさも出ている。 このパイロット版が3年後にシリーズ化される際には、局側からフィードバックされたそうだがその指摘の内容に呆れる。 「初めから犯人がわかってしまうのでサスペンス効果がない」「コロンボの登場が遅すぎる」「シリーズにするにはコロンボの他に部下のレギュラーが必要」「会話が多くてテンポが悪いので、アクションシーンを増やし緊張感を出す」「登場しないカミさんというアイデアはおもしろくない」――どれも刑事コロンボならではの特長で、これがあるから面白いのに。 ということは、本作がいかに今までの「常識」の枠を超えていたかということだろう。 共同執筆したリチャード・レヴィンソンとウイリアム・リンクのコンビが、自分たちの作品を守るために局の要請を退けてシリーズでも自分たちでプロデュースを兼ねた。 生みの親である二人の英断に感謝したい。 [DVD(吹替)] 7点(2013-10-12 22:32:59)(良:1票) |