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21.  ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3 《ネタバレ》 
実は前作はいまいち乗り切れなかったので、少し心配だった「Vol.3」。杞憂でした。ほぼすべてのキャラクターに見せ場を用意し、見たかったもの、聞きたかったものが詰め込まれたジェームス・ガン的大団円。お腹いっぱい、大満足の2時間半でした。  まず何よりも前作ではピンと来なかった選曲が今回は大ストライク。事前のサントラ禁止状態で臨んだら、まさかの1曲目はレディオヘッド! それも『Creep』!! そしてフレーミング・リップス、ビースティ・ボーイズと来て、決めの一曲はフローレンス・アンド・ザ・マシーン。そのあとおなじみのあの曲を挟んでの終幕はなんとなんとボス!ビッグボスじゃくて本物のボス! とくに『Creep』とフローレンス様の『Dog Days Are Over』はテーマにもしっかり絡んでて、尋常ではない精神状態でジェームズ・ガン的クリーチャーが織りなすドラマとアクションを堪能できました。  母の映画だった第1作、父の映画だった第2作と比べれば、本作は「ファミリー」の映画の趣き。「家族」を持てない/持たない/失ったキャラクターたちがつくり出す疑似共同体的な「ファミリー」の物語。「完璧」を求めた結果、誰も信じられず、誰も認められず、どんどん味方を失っていく敵キャラと対照的に、ガーディアンズの「ファミリー」はそれぞれの「ありのまま」を認めてどんどん大きくなっていく。その行く末はあまりに聖書っぽくもあり、ユートピア的で少し心配にもなるのですが、自らの失言で一度は監督の座を追われたジェームズ・ガン監督だからこそ、「完璧」に到らないすべての「Creepy」なクリーチャーたちを、それぞれの哀しみと傷を持った存在としてまるごと抱きしめるというメッセージがぐさりと胸に刺さりました。  唯一残念だったのは、まだ公開2週だというのに、シネコンの大スクリーンは車がふっとぶやつやニンテンドーのやつに持っていかれて、1日2回の小スクリーンのみの縮小上映だったこと(早く行けなかった私も悪いのですが)。なぜ、どうして? こんなスゴい楽しい映画なのにー。マーベルにもディズニーにも飽きちゃった人、どうせディズニー・プラスでみるからっていう人、マーベル関係ないし前作・前々作見てなくても楽しめちゃうから、映画館で見てー。お願い。
[映画館(字幕)] 9点(2023-05-19 16:03:18)
22.  リコリス・ピザ 《ネタバレ》 
こんなに肩肘張らないポール・トーマス・アンダーソン監督ははじめて! 舞台も同じなので空気感は『ブギーナイツ』や『マグノリア』の頃を思い出しますが、もっと力が抜けていて多幸感にあふれていて、ずっとこの世界に浸っていたくなる。なにより素晴らしいのは、クーパー・ホフマン君!名優を父に持ち、父との名コンビで知られたPTA監督作でデビューでいきなりの主役。なのにこの自然体演技は一体何者か。ティーンなのに背伸びして何でもやりたいゲイリー君その人なのではないかと思えるのびのび感。事業家気取りの一方で、おっぱい見たい触りたいあたりのバカさの加減も素晴らしい。一方のアラナさんは先が見えない20代女性の迷いをこれも名演。カラフルな衣装とセットも素晴らしいけど、単にホワイト・サバービアへのノスタルジーだけでなく、何気なくセクハラするカメラマン、日本人妻にわざわざ訛った英語で話すレストランのオーナー、そしてどうにも人の気持ちがわかっていない政治家など、白人男性のイヤな思い上がりを(そしてゲイリー君がその予備軍になりそうなことも)きっちり描いているあたりも好印象。あと、自然体の主演2人のまわりで、ゲスト出演の大物スターたちがやりたい放題やってるのも楽しい。とくに、ショーン・ペンとブラッドリー・クーパーのキレっぷりは本当に楽しそうでした。何よりもリラックスしてても物語の骨組みはしっかりしていて、背伸びする10代と迷う20代が反発したり、対抗したり、でも共感したり、思い合ったりしながら、バディのような関係性のもとで、郊外の田舎町で少しずつ前に進んでいこうとするさまが、本当に愛しく、大好きな一作になりました。
[映画館(字幕)] 9点(2022-12-24 17:04:08)
23.  ファーザー 《ネタバレ》 
2021年のオスカー。逝ってしまったチャドウィック・ボーズマンの文字どおり「命を賭けた熱演」に男優賞をと思っていた自分は、アンソニー・ホプキンスの受賞にがっかりしたものでしたが、この作品を見れば・・・これは納得せざるをえない。昨年のローマ法王役もすごかったが、これは別格というか、「上手い」を通り越して「怖い」の領域に達している。人間が人間らしさを失う過程というのは、いくらでもデフォルメできるものであるけれども、これだけ「正常」とシームレスに「異常」が姿をあらわす過程を描いた作品は、ほかにはなかったのではないか。そして、ついヒューマンドラマとして描いてしまいそうな題材を、サスペンス風味たっぷりに緊張感溢れる脚本と演出で仕上げた監督の手腕にも脱帽。しかもこの監督が自分よりも年下だなんて、その「人間」に対する深い洞察には唸るばかり。「認知症を主観的に描く」という実験的な試みは見事に成功していると思います。100分に満たず、舞台もほぼアパートの部屋、登場人物も数名のミニマムな設定で、人間が(肉体的な意味というよりも精神的な意味で)その人生の終盤を迎えることを描ききった傑作です。いやあ、素晴らしかった。
[インターネット(字幕)] 9点(2021-11-27 09:56:18)(良:4票)
24.  シャイニング(1980) 《ネタバレ》 
久々にこの映画を見ようと思ったのは、2020年に世界中に広がった新型コロナウィルスの感染拡大のため緊急事態宣言が発令され、外出自粛のなか家族でずーっと自宅にいる今見るには「最悪の映画」として、この映画が思い浮かんでしまったからです。後になってから思えば、そんなこともあったね、という出来事かもしれませんが、今の気分を記録する意味でもレビューを書いておきたいと思います。ただし、今回は一人で見ました。家族で見たら、本当にヤバい雰囲気になりそうなので。  さて、この作品、ヒッチコック以降のスリラー映画の文法を変えてしまった1本だと思います。当時流行していたオカルト風味を交えながらも、閉鎖的な環境と仕事に追い詰められ徐々に狂っていく夫と、「あなたの知らない世界」が見えてしまう息子、そして目玉を見開いて疑念をどんどん募らせていく奥さんという、閉鎖的な空間で誰も信用できない世界を見事に作り上げているところが素晴らしい。そして、なんてことはない日常のシーンにこそおどろおどろしいBGMを重ねる手法も、序盤〜中盤の(最近の忙しいホラーサスペンスを見慣れている人には退屈とも思える)遅いテンポの会話シーンを重ねて、最後に一気にサスペンスが炸裂する見事な切り替えも、今となってはあちこちに見られますが、当時はやっぱり「新鮮」でした。キューブリックの創造性には本当に驚かされます。身近な人がもっとも信用ならない閉鎖的空間の恐ろしさは、最近のDVやハラスメントの問題などを考えれば、ものすごい批評性を持っていたこともわかります。そして、まさに閉鎖的な空間にとどまらなくてはならない「今」だからこそ、その恐怖は何倍にもふくれあがり、いままでとは別種の「リアルさ」として体感できます。  とくに印象的だったのは、もはや最初から狂っているように見えるジャック・ニコルソン。最初にホテルの歴史を聞いたときの「私は大丈夫」という表情からして問題ありあり。でも彼はたぶんそのことを一番認めたくないから、「大丈夫」と言い切ってしまい、家族まで連れてきてしまう。その後も徐々におかしくなっているのに気づいているのに、それをなんとか抑え込もうとする。あの手この手で彼を狂気を巻き込もうとするホテルのお化け?たちも、彼の内的な葛藤の象徴なんだろう。そして、息子を抱き、大丈夫だと言いながらも、息子すら自分を信じていないことに気づいたあとの「絶対に傷つけない」という空虚な言葉。そうすると、ラストのあの出来損ないの蝋人形のような姿も、その葛藤から解放された姿にも見えてきます。  怖いものを見ても見ぬふりをしながら、徐々に最悪の方向にハマっていってしまう・・・40年前の映画ですから当然それを意図していたわけではないと思いますが、今、世界のあちこちで起きているであろう危機の一つの本質に迫っているのは、何よりも名作の証明なんだと思います。「パンデミック」映画が配信サイトなどでも人気のようですが、2020年の春、いま一番怖い、見たくない部分を見せられる映画として、そんな部分を見つめて自分を取り戻すための映画として、おすすめです。
[インターネット(字幕)] 9点(2020-04-15 18:05:46)(良:2票)
25.  バーニング 劇場版 《ネタバレ》 
噂通りのスゴイ映画。何重にも物語が交錯し、さまざまな解釈を呼びこむ巧みな構成。難解という評判もあるけれど、前半のヘミとの出会いからベンの登場による不穏な三角関係からは、韓国社会の格差問題への社会派的な問題意識も垣間見えるし、中盤のヘミの失踪からのサスペンスな展開は次に何が起こるのかという緊張感に満ちている。そんなわけで、構えて鑑賞したものの、結局はエンタメ的にも楽しめてしまった。ネット配信で見たので、1回見たあと、すぐにまた見直すと、いろんな言葉や表情、そしてショットの数々の意味が膨らみ、二重三重においしい。解釈はいろいろあって、あちこちでいろんな解釈を聞いたり、読んだりするのも楽しい。個人的には、存在というか「実在」をめぐる物語として見た。冒頭のソウルの街頭の雑然さ、生々しいセックスのシーン、ジョンスのどうにも散らかった実家、北朝鮮のプロパガンダ放送が流れる田舎の風景まで、前半はたしかにそこに「人」や「もの」が「在る」さまが描かれていたように思う。それが、あの夕陽のなかでヘミが踊る名シーンから、画面からは「在ったはず」のものが忽然と消えていく。「不在」が募り、現実と虚構が入り交じり、人々の証言は食い違う。何が何だかよくわからなくなったときに現れた、あるアイテムと「猫」の強烈な実在感。なかったと思っていたものが「在り」、あったはずのものがなくなる終盤の展開は、「実在」感の喪失という使い古されたテーマを、新しい感性で描いたと思う。「実在」感の喪失と、でもそのなかで確かに「在った」ことを信じて「書く」という行為は、まさに村上春樹の小説そのものであり、そういう意味では、やっぱりこれは非常に優れた「納屋を焼く」のアダプテーションなんだと思います。
[インターネット(字幕)] 9点(2020-01-11 13:23:19)
26.  マンチェスター・バイ・ザ・シー 《ネタバレ》 
本当に「心にしみる映画」を見た。ゆったりとした時間の流れも、マンチェスター・バイ・ザ・シーの寒々としているのにほのかに暖かみを感じる光景も本当にすばらしい。ケイシー・アフレックは、オスカー受賞も納得のハマり役。むしろ、今後これ以上の役柄に彼が出会えるのか心配になるくらい。対するパトリック役のルーカス・ヘッジスのいかにもアメリカンな、大人ぶってるけど子どもな感じも、このときの彼にしかできないハマり役だろう。悲劇的な話なのに、2人の掛け合いには良質のコメディセンスも感じられて、画面に暖かみが漂います。時間軸を巧みに入れ替えているのに、技巧臭くならない脚本。みんな必死に生きようともがいてるのに、それが逆にかみ合っていかない感じ。劇中の人物たちは壮絶な経験をするわけですが、映画を見て、彼らから伝わってくるのは、むしろ極限の人間の選択ではなく、誰もが生きる平凡な人生そのものへの向き合い方。「答え」がでなくても、それでも「生きていく」ということを丁寧に、しっとりと描いた良作。あえて難点をいえば、予告編。予告編は「過去に何があったのか」というちょっとサスペンス風味だったけど、何があったのか自体は中盤で明らかになってしまいます。むしろ、主題は、人間の人生にとっても、大事なのはターニングポイントになる出来事ではなく、「その後」をどう生きるのか。人生にとってはるかに大切なことを語ってくれる映画です。
[インターネット(字幕)] 9点(2019-02-26 18:09:28)
27.  ROMA/ローマ 《ネタバレ》 
盟友の撮影監督エマニュエル・ルベツキ抜きのキュアロン監督というのはちょい不安だったのですが、全くの杞憂でした。冒頭の印象的なタイルとそこに映り込む飛行機の映像から始まり、主人公一家が住む家のなかを水平移動するカメラ。あちこちにモノが散らばっているところに、この一家の不安定な日常が浮かび挙がってくる。犬とあちこちに散らばるその糞。それでも素直で元気な子どもたち。少数民族の言語で会話するメイド。道を行進する軍隊。狭いガレージに無理矢理駐車される巨大なアメ車。これら一つ一つが、その後、家族の状況の変化のなかでとても効果的に繰り返し描かれる。なんてことはない反復技法なのだけれど、モノクロの美しい映像でゆっくりじっくりと見せられると、そこに込められた心情描写がじんわりと見る者にも染み込んでくる。水平移動カメラで俯瞰的に眺める映像は、序盤はちょっともどかしいのだけれど、中盤のクライマックスの若者運動の弾圧シーン、そしてラストの海辺のシーンでは、これ以上ないくらい効果的に使われる。そして、ラストの空に向かうショットの美しさ! もう絵を思い出しただけで泣けそう。残念だったのは、音と映像に凝ったこの映画を、映画館で観る機会がほとんどないということ。もちろん、非英語、モノクロ、パーソナルなテーマという点では明らかにミニシアター向けのこの作品が、田舎に住んでいてもすぐにNetflixで見られることは、悪いことばかりではないのだけれど。
[インターネット(字幕)] 9点(2019-01-06 10:55:44)(良:1票)
28.  夜は短し歩けよ乙女 《ネタバレ》 
京都を舞台にした青春映画には独特の雰囲気があるが、その雰囲気が世界観に昇華されているのが本当にスバラシイ。よく知っている風景が続出するだけに、そこで展開される奇想天外な物語とのギャップに完全にやられた。原作未読だが湯浅監督の『四畳半神話体系』は完走済。同じ世界観ではあるけれど、ハチャメチャだった『四畳半』と比べると、非リア充な「先輩」の恋というモチーフが一貫しているぶん、この映画のほうが感情移入もしやすい。とくに、先輩と黒髪の乙女の、さわやかでシンプルなラストは心から「美しい」と思って涙してしまった。こんなところからもわかるように、私もけっこう「先輩」に近い青春を送ってきたわけだが、一緒に飲み会にいるのに結局話しかけられない感じだとか、人知れず彼女との共通項を求めて奮闘してしまう感じとか、イベントにかこつけて近づいてみようとする感じとか、いざ接近してみたらいろいろ恐ろしくなって結局挙動不審になるところとか、いちいちグサグサと来る。結局、本作で一番のスペクタクル場面が、もう一度心を閉ざすか、一歩踏み出すかの先輩の心の葛藤である点も象徴的だ。ある意味、『桐島部活やめるってよ』とは全く正反対のアプローチで、見事に自分を(あんまり戻りたくもないと思っていた)青春時代へと連れ戻し、そして、その「愛おしさ」を再発見させてくれるという意味で、自分にとって大事な作品になった。あと秀逸なのが、時間の設定。一夜で一年という矛盾も、一人一人が生きる時間の相対性を見事に表現している。そう、ある時代の一夜は、1年に相当するだけの濃度と長さをもって経験されるのだ。そして、人の緩いつながりを可視化して「社会」を描いた映画に僕は弱いのだが、そんな僕にストライクな展開も待っていた。細かいことを言えば、序盤のはしご酒や演劇シーンの描写は(わざとだったとしても)面白みに欠ける平板さで、ちょっと退屈だなと感じたし、登場人物ももう少し絞ったほうが90分の物語の「濃度」がもっと凝縮されたようにも思う。でも、かつての(今もか)「四畳半主義者」に捧げるストレートな青春賛歌として、幸福な90分間をありがとー!と叫びたくなる作品である。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2018-06-08 21:50:17)
29.  シェイプ・オブ・ウォーター 《ネタバレ》 
評判どおりの怪(快)作でした。60年代初頭という舞台設定が効いていて、序盤は、挿入されるタップダンスやミュージカルの音楽などウェルメイドな往年のハリウッド娯楽映画風なのに、徐々に、冷戦・人種・家族をめぐる社会問題が絡んできて、でも最後はしっかり「愛」の物語として昇華されてました。印象的だったのは、悪役ストリックランドの家庭は、まさに50年代のファミリードラマが描いてきた「理想の家族」そのものであり、彼に対峙して「怪物」を守ろうとする主人公たちは、障害、人種、同性愛、イデオロギーといった点で、その「理想」の家族像から最も遠いところにいる人たちだったこと。でも、その遠い世界にいる人たちこそが、もっとも「人間らしく」生きているという逆説を描ききった、美しいラストシーンでした。そこにスパイスとして絡んでくるエロやグロも、人が生きるということにつきまとうものに目を背けず、それと共に生きるからこその美しさを描くんだという監督の信念を感じました。あと、主人公が突然歌い出すミュージカルのシーンは、伝統的なハリウッド映画の手法を使って「古きよき」映画を支えてきた固定観念みたいなものをひっくり返す名シーンだったと思います。だって、歌い出すのは言葉が話せない質素な掃除婦の女性で、そのお相手は卵を食べるのに夢中な半魚人ですよ。でも、そのシーンの美しさたるや。1年前にオスカーを賑わした美男・美女のミュージカル映画との対比も面白いです。ギレルモ・デル・トロ監督はハリウッドでは異色の職人監督というイメージでしたが、その彼がいつのまにかハリウッドのど真ん中で、もっとも現代のハリウッドらしい映画を撮っているということにも、ちょっと胸が熱くなります。それにしても、キュアロン、イリャニトゥに続いて、今のハリウッドはメキシコ出身監督なしには成立しない場所になりましたね。いろんな意味で現代を象徴する一作品だと思います。
[映画館(字幕)] 9点(2018-03-12 10:55:37)(良:3票)
30.  スポットライト 世紀のスクープ 《ネタバレ》 
オーソドックスな手法で真面目にしっかり作ったという印象の良作。「世紀のスクープ」というタイトルではあるものの、この映画が描いたスキャンダルは、「誰も知らなかった真実!」ではなく、実はボストンの人たちの多くが知っていて、でも言えないと思っていた事実。人々の日常生活の支えとなっている教会が舞台だったからこそ起きる隠蔽。1つ1つの事件ではなく、そのシステム、構造を暴かないと意味がないという編集長の言葉は、ジャーナリズムというものの役割を再発見させるものでした。そして、そのための記者たちの作戦とは、どこかに「真実」を暴く「驚きの大逆転」があるのではなく、1人1人の関係者の話を聞き、事件や関係者の数を数え、それを裏付ける文書を探し出し(その開示を裁判所に要求し)、そしてそれを裏付ける証言を得ること。どこまでも地道で気が遠くなるような作業ではあるものの、そのプロセスを飽きさせずに見せた点は、この作品の質の高さを示していると思います。ある事件があり、その全容を描こうとすること、そこから自分たちが生きる社会のあり方を問うこと。この作品が描いているのは、そういうシンプルなことであり、「宗教」や「教会」の闇というような表面的なことではなかったと思います。誰かがもの凄い演技を披露するわけでもなく(もちろん俳優の演技はどれも素晴らしいですが)、どこかに斬新な演出や画があるわけではないので、地味さは拭えませんが、これがオスカー作品賞(と脚本賞)を取ったというのは、個人的には十分に納得できるものでした。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2016-05-17 14:51:11)
31.  世界にひとつのプレイブック
実は見終わった直後はそうでもなかったのだが、その後しばらくしてからジワーっと「あ、いい映画だったな」と思わせられた不思議な作品。「病んでる」主人公2人の描き方が秀逸。薬ネタで盛り上がるところから、最初のデートでのオーダーまではブラックな笑いにニヤニヤ。その後の少しずつ相手を理解する過程で知らず知らずに2人を応援する気持ちに・・・。その合間に挟まれる親父や友人のエピソードもいい感じで物語に絡んでくる。演技では、ジェニファー・ローレンスもいいけど、ブラッドリー・クーパーも躁鬱で忙しい役を本当にがんばって演じていた。ダブル受賞あってもよかったのではないかなあと今更ながら残念な気持ちになるくらい、僕はこの映画が好きになっていた。そして、個人的な愛すべきポイントは、「普通であること」とうまく折り合いをつけられない主人公やその家族を、それでも最後には包み込む懐の深い「人間社会」の姿。その危なっかしいバランス感覚と温かさが、この映画にはきっちりと描かれていたと思います。あとは、よくわからない邦題だけは何とかならなかったものかなあ・・・。
[CS・衛星(字幕なし「原語」)] 9点(2015-03-15 23:14:09)
32.  ゴーン・ガール 《ネタバレ》 
フィンチャー監督の円熟した演出、隙のない絵作り、物語と一体化した音楽、そして意味深なストーリーと、どれをとっても一級品。とくに、ベン=アフレック演じるニックのダメ夫ぶりもすばらしい。ニックの「いい人でいること」をめぐる葛藤は印象的。失踪妻の捜索のなかで「いい人である」ことに飽き飽きした夫も、メディアに追い詰められるなかで「演じる」ことを決意する。そして、テレビの独占インタビューは、エイミーに彼が「演じる」ことを決意したことを伝え、エイミーに新しい人生と夫婦生活の「再生」を決意させる。「演じる」ことが、夫婦生活そして人生そのものであるというラストは、失踪中のエイミーの妙に人間的な姿(うっかり隙を見せて強盗まで許してしまう)との見事な対照によって、その残酷さをいっそう際立たせる。そうした残酷な現実をいっそう増幅させるメディアの存在も含めて、現代という時代を生きることをこれだけ見事に切り取った作品は貴重だと思う。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2015-01-28 16:58:44)
33.  フルートベール駅で 《ネタバレ》 
映画公開時、事件の起きたフルートベール駅がある町の近くに住み、実際に事件が起きた地下鉄(BART)にほぼ毎日乗っていました。この映画で描かれる黒人に対する警察の暴力は、いま(2014年夏)ちょうど、アメリカではミズーリ州ファーガソンという町でも大きな問題となり(警察による10代の黒人少年の射殺事件とその後の抗議運動の強圧的な取締・・・)、この映画がアメリカが抱える大きな闇を象徴するものであることを物語っています。このようなテーマですから、当然もっと「主張」や「抗議」を全面に出した映画にすることもできたかもしれません。でも、この映画はそういう方法をとらず、1人の黒人青年の1日を丁寧に描くことによって、アメリカ固有の問題というよりも、普遍的なメッセージを持つ映画として昇華するのに成功したと思います。この映画が描く主人公は、かつて刑務所にいたこともあったが、いまは家族に囲まれ、うまくいかない日常とも対峙しながら何とかまっとうに生きようとしています。彼が過ごす一日は、決して特殊なものではなく、多くの人が共有できるものであろうと思います。また、ラストの事件の描き方も、一方的な正義対悪の図式というよりは、新米警官が取り押さえた相手に抱く不安と恐怖が引き金となっているところも、非常によく考えられた脚本であると思います。この映画は、アメリカの社会問題を深いレベルで描いていますが、それにとどまらず、現代という社会が共有する「他者への不安」と「武装と威嚇への依存」という問題をしっかりと捉えている点で、すばらしい作品です。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2014-09-04 17:23:17)(良:1票)
34.  グッドフェローズ 《ネタバレ》 
実は公開直後にも見たのだけど、当時はピンとこなかった。最近、なぜかこの映画が急に見たくなり、久々の再見。すると、なんと素晴らしい作品だったのか。暴力と犯罪と些細な日常が交錯するギャングの下っ端の世界。物語全体を包むのは、人間の愚かさ、偏狭さ、そしてユーモア。淡々としているけどスピード感のあるタッチと効果的な音楽(「レイラ」のメロディの美しさをああいうふうに使うのは、狙いすぎと見る見方もあると思うけど、やっぱり凄いと思う)。主役3人のキャスティングは言うことなし。あと、個人的に評価したいのは、実はアイルランド人の親を持っていることでイタリア人ギャングの世界の中心にはなれないというヘンリーたちの立場。そのギャング世界の構造のなかでもがき破滅する姿は、どこか普遍的な人間の生き方を描いているようにも思えて妙な共感を導く。現代の多くの映画にも影響を与えた演出で、愚かで魅力的な登場人物たちを描いたスコセッシの傑作。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2014-03-20 14:28:24)
35.  ゼロ・グラビティ
突然宇宙空間に放り出された飛行士の予告編が印象的で公開直後の米国で鑑賞。宇宙空間のルールを忠実に再現し(部分的には?の部分もあるが)、キュアロン監督おなじみの長回しが効いていて、映像体験としても一見の価値あり。登場人物はサンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーの実質2人(あと声だけの管制官俳優エド・ハリス)だけですが、無駄をそぎ落としたシンプルなストーリーのなかにも主人公のドラマがちゃんと用意してあって映像だけの映画でもないのも魅力です。目立たないけど音楽もいい。それからカエル君! 『アバター』以降ごちゃごちゃした大味な大作が増えたこともあって、個人的には3D映画に否定的だったのだけれど、3Dであることによって映画としての質を高められるということを、はじめて実感させてくれました。そして、こういう映画をちゃんとヒットさせるのが映画の国の底力なんだなあと関心。
[映画館(字幕なし「原語」)] 9点(2013-11-02 04:38:26)(良:4票)
36.  X-MEN:ファースト・ジェネレーション
実はシリーズ通してはじめてちゃんと観た(ほかの作品はテレビ放映時にちらっと見た程度)。もともとX-MENシリーズの背景にはアメリカの人種をめぐる問題があると言われていたわけですが、この作品では、X-MEN物語の誕生とアメリカの人種問題が歴史的にも結びつけられています。舞台となっているのは、1962年のキューバ危機ですが、実はこの時代はアメリカでは人種差別の解消を目指した公民権運動の時代でもあります。有名なキング牧師の「私には夢がある」演説が1963年です。しかし、この時代には、白人との「統合」を目指すキングとは対照的に、黒人の誇りや自立を求めるマルコムXも新しいリーダーとして登場してきます。本作のチャールズとエリックの対立は、この2人の黒人リーダーの対立に重なるものとして描かれています。いま私たちが直面している人種問題の根源的な対立(これはアメリカだけの問題ではなく、世界史レベルの問題の象徴として「ホロコースト」がある)を、物語のなかに、ちゃんと歴史的な同時代性をもって描きこむことで、単なる勧善懲悪ではない深みを物語に与えています。しかし、そんな頭でっかちな内容に終始しないのも本作のすばらしいところで、さまざまなミュータントが能力を発揮するようになるプロセスは見てて楽しいし、アクションにもセンスを感じます。娯楽映画としても一級品というところもすばらしい。
[映画館(字幕)] 9点(2011-09-04 10:44:47)(良:3票)
37.  ゴジラ(1954) 《ネタバレ》 
世代的には1980年代ゴジラ世代なんだが、なぜか縁がなくて、ほとんどの作品をちゃんと見た記憶がない。というわけで思い入れも何もなく、何となく見てしまった第一作。正直おどろいた。ゴジラが恐ろしい。怪獣映画をちゃんと見てこなかった人間にとっては、ゴジラなんて、TDLのミッキーマウスばりに、宣伝のためにあちこちで愛想を振りまく着ぐるみのイメージのほうが先行してた。そのゴジラが、人間を「狙って」殺しまくる。女性も子どもも関係なく放射能をまき散らす。そして、そのゴジラを葬れるのは、ゴジラを生んだものと同じ「大量殺戮兵器」しかないというジレンマ。演技や演出には時代を感じる稚拙な点もある。けれど、無差別爆撃と原爆が「記憶」ではなく「体験」として残っていた時代に、こんな映画を作った製作陣はすごい。戦争を「体験」として知っている多くの日本人がこの映画を見て、大ヒットさせたという事実もすごい。僕は、この映画をリアルタイムで見ることはできなかったけど、震災と原発事故を「体験」した2011年のいま初めてみることができたのは、とても意味があることだったと思う。これぞ、真の意味での国民的映画と呼ぶべき作品だ。
[DVD(邦画)] 9点(2011-06-21 14:21:49)
38.  2001年宇宙の旅
初見は映画館でのリバイバル。その後もDVDで何度か見ましたが、大画面TVを購入したので再見。この映画ほど宇宙への「畏怖」を感じさせる映像は、これ以前も以後も存在しないと思う。エイリアンやら巨大宇宙船やらモンスターやらなくても、未知なるもの、未知なる場所、未知なる出来事への恐怖で満たされている。そして、未知なるものを飼い慣らすための科学までもが、人間を裏切っていくことの恐怖。とくかく恐ろしい映画でした。すでにハリウッド的エンタメ映画の手法にズブズブに浸かってしまった私は、ゆったりとしたテンポには苦戦しましたが、この凄い映画をリアルタイムで「体験」できなかったのは残念です。
[映画館(字幕)] 9点(2009-04-02 11:29:13)
39.  天国と地獄 《ネタバレ》 
冒頭の勘違い誘拐から物語にぐいぐい引き込まれました。緊迫したシーンが続いた前半と比べると、後半は主役の三船敏郎の出番は激減しテンポもダウンしますが、そのぶん「天国」に対する犯人の歪んだ感情がずっしりと重くのしかかります。今見ても、黄金町のシーンは衝撃的です。高度経済成長に取り残された人々の怨念が若い医師を狂わせたのかなと勝手に解釈しています。一級の娯楽作でありながら、日本が「豊かさ」を知り始めた時代の「天国と地獄」を見事に切り取った傑作だと思います。
[CS・衛星(邦画)] 9点(2009-02-13 23:49:10)(良:1票)
40.  父親たちの星条旗
イーストウッドは、戦場だけでなく、「銃後」である本国の人々やらメディアやらも巻き込むものとしての近代の「総力戦」を見事に描いた。とりわけ、「内戦」であった南北戦争以来、「本土」で本格的な総力戦を戦ったことのないアメリカにとって、この映画が持つ意味はとても大きいと思う。凄惨な戦場と「英雄」に熱狂する銃後の人々のあいだのどうしようもないズレを、これだけ「わかりやすく」「まじめに」描いたハリウッド映画は、これまでなかったのではないか。これぞ、「戦場映画」ではなく「戦争映画」と呼ぶにふさわしい。また、個人的にはイーストウッドは、人間の深遠さ・複雑さよりもパターン化された描写が抜群にうまい監督だと思うのだけれど、本作のアイラが体現したマイノリティの悲哀はまさに監督の職人技の真骨頂だった。
[映画館(字幕)] 9点(2006-11-24 15:54:11)
010.16%
120.32%
260.95%
3345.40%
4457.14%
511217.78%
612319.52%
716025.40%
88914.13%
9426.67%
10162.54%

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