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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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21.  SUPER8/スーパーエイト(2011) 《ネタバレ》 
映画作成に熱中する子供達が経験したひと夏の冒険と初恋物語、そしてエイリアンとの遭遇、そして家族との和解。いろんな要素が混合され主題が曖昧になっている。監督の意図としては、全ての要素を繋ぎ合わせるのが8㎜フィルムということ。映画作りで仲間が集まり、偶然謎の生命体を撮影して軍の謀略に巻き込まれ、少年の母親の映像で少年と少女が心を通わせ、軍の極秘フィルムでエイリアンの秘密を知り、最後は映画を完成させる。だが、求心力が足りず、各要素の繋がりが弱い。 演出は巧いと思う。工場の無事故掲示板を取り外すことで事故を示唆。少年の父が同僚と会話する姿が影絵になる。円盤の門出の祝福として給水塔の大噴射。才能を感じる。 エイリアンには破壊者と友人と両方の面がある。暴力行為を最小限に留め、少年達との友情を前面に押し出せば、ラストの感動が深まっただろう。現状ではエイリアンが少年のペンダントを欲した理由がわかりにくい。友情を交す相手としてエイリアンは巨大すぎるし、エイリアンが人間を食べる設定は論外だ。それに、ただエイリアンに触れただけで感情が通じるのであれば、科学者達もコミュニケーションがとれたのではないか?ちなみに逆さ吊りにされた人間は脳圧が上昇し、数時間で意識を失い、やがて死ぬ。少女が「エイリアンに助けてもらった」と話すが説得力が無い。 理科教師の行動が不可解だ。エイリアンを助けるためとはいえ、トラックで貨車と正面衝突するのは常軌を逸している。生徒らを逃がす為とはいえ、銃を向けるのはいただけない。尊敬される先生像でないと後に続かない。 少年と父、少女の父の和解が描かれる。少女の父の過失で少年の母が事故死したという設定は両者の関係に緊張感を生み、いい効果を与えている。しかし具体的な事故の説明は無く、不満が残る。不仲だった二人の父同士が和解して、共に我が子の救出に向い、探し出して和解する。感動の場面だが、父達と少年少女達の行動が別々ということに問題がある。再会したとき、お互いの行動を全く知らないのだから、深く共感しあえる理由もなく、和解も表層的なものだろう。ここはやはり、両者が情報を共有し、共に行動して目的を果たすということにしないと感動には結びつかない。両者が軍隊の裏をかいて、エイリアンの帰還を助けるような設定にすれば、一本筋が通る。脚本を少し変えれば名作になった。惜しい作品である。
[DVD(字幕)] 7点(2014-04-22 11:36:17)(良:1票)
22.  THE GREY 凍える太陽 《ネタバレ》 
石油採掘場で狼退治の仕事に携わる射撃のプロ、オットウェイが、 人生に絶望して銃自殺を図るという意表を突く冒頭部分から、 翌日乗った飛行機が墜落してしまうという意外な展開へなだれ込む。 幸運にも軽症で済むが、奇跡的に助かった7人に猛然と吹雪と狼が襲いかかる。 生きのびるためにどういう行動を取るのか? 突如自然の脅威にさらされ、極限に追い込まれた人間の心理状態を描くのが主題。 最も予想外だったのは、オットウェイは狼退治のプロなのに銃を使わないこと。 自分のライフル銃を雪中に発見するが、壊れていたようで、捨ててしまう。 これでは、狼退治の専門家で射撃のプロという設定が無になってしまう。このことが最後までひっかかった。 散弾銃の弾を枝につけて武器にする場面があるが、結局使わない。 彼が人生に絶望したのは愛する妻が死んだから。父も母も既に亡く、天涯孤独だ。 そんな彼が極限のサバイバル経験と他の生存者との交流を通じて、生きる勇気と希望を取り戻す魂の再生物語とも思ったが、それも違った。 彼は最初から十分なリーダーシップを発揮し、他者の面倒をよく見、声をかけ、励まし、狼を度々撃退するなど、大活躍し、心の弱さは微塵も感じられない。以上述べたような演出にはなはだ疑問を感じる。 言いたい事の焦点が絞られていないのではないか? 生存者は一人一人と消えていくが、彼らの人生が観客の心に重くのしかかるわけではない。 彼らの反応、行動は想定内で、これといった印象も残さず、「型どおり」に消えていく。 狼の恐ろしさはよく描けているが、ところどころに作り物めいたところが見え、恐さは薄らいでいった。 普通に考えれば、飛行機の残骸でシェルターを作って立てこもり、救出を待つのが正解と思う。 あの状況で森に逃げ込む人は、まずいないだろう。 狼から必死に逃げたあげくに狼の巣にたどり着くという皮肉な結末を用意した意図は何だろうか? 人生には逃れられない運命があり、結果はどうであれ、最後まで諦めずに戦うことが人間として最も勇気ある行動だ、とでもいいたのだろうか。死者の財布を持ち帰る美談があるが、重くかさばるので、写真と免許書類だけでよいと思った。 自然の猛威を示す映像は申し分なく、狼との戦いも迫力がある。何より音響効果が素晴らしい効果をあげている。なので一見の価値あり。
[DVD(字幕)] 7点(2013-08-04 09:01:15)(良:1票)
23.  アイアンマン3 《ネタバレ》 
三作の中では最も良かった。常に緊張した場面や戦いがあり、中だるみの部分がほとんどみられないのがすがすがしい。 前作の反省を踏まえてか、トニーが精神病に悩み、克服する挿話と恋愛部分は最小限にとどめ、敵役との戦いを何段階にも描いているのが成功の要因だろう。子供を登場させ、物語を明るくしたのも成功の一因。やはりヒーローものは明るいのがよく似合う。 ところで敵役キリアンは何をしたいのか?彼はウイルスにより遺伝子を書き換え、脳の未使用領域を利用して人の能力を飛躍的に向上させる「エクストリミス」というバイオ・テクノロジーを完成させた。これにより、体温は3000度にまで上昇、肉体は鋼鉄のように改造され、、肉体の欠損箇所も再生可能な超人に生まれ変わる。一種の不死ともいえる。しかし体がウイルスを受け入れない場合は爆発してしまうという不完全なテクノロジー。荒唐無稽と一笑してしまえば物語が成立しないので、受け入れるしかないが、これなら「宇宙人が責めてきた」という設定の方がまだわかりやすかった。キリアンはこの素晴らしいテクノロジーを平和利用する気はなかったのか?テロを起こしたり、大統領を殺したりして、何をやりたい?彼の経歴から推して、社会に対する強烈な復讐心を持つとも思えないなど疑問が残る。前2作品はメカ対メカのシンプルな戦いだったが、今回はメカ対改造人間。改造人間は飛べないし、飛び道具も持たないのに対し、アイアンマンは遠隔操作できる上に、30数体も登場する。敵の目的が不明な上に弱いのでは話にならない。TV電波ジャックができるくらいの頭脳があるのなら、対アイアンマン戦略も万全にして戦ってほしかった。ヘリで家をミサイル攻撃するなど、おおざっぱすぎて感心しない。 トニーの恋人ポッツが、改造人間になり、アイアン・ウーマンになるのには笑うしかなかった。一種のファンサービスと割り切ろう。 SFアメコミヒーローものだが、やっていることは西部劇と変わりない。善が悪を倒すのだ。「かっこよさ」は西部劇に軍配が上がる。人間が描けているからだ。アイアンマンには真の困窮者も貧困者も社会的弱者も登場しない。荒唐無稽なヒーローと巨悪が存在するだけだ。頭を空っぽにして見る映画。
[DVD(字幕)] 7点(2013-08-01 23:15:22)
24.  タイタンの逆襲(2012) 《ネタバレ》 
ギリシア神話の登場人物を総動員させて、神や半神やクリーチャーの迫力ある戦闘場面を魅せるファンタジー映画。神々の戦いが主軸となる。タイタン(巨神)族のクロノスは父により冥界に閉じ込められるが、反抗して王位を奪う。姉と結ばれ、ハデス、ポセイドン、ゼウスらの子種を得るが、「子供に王位を奪われる」という予言を恐れ、子供を飲み込む。ゼウスは母の計らいで生き延び、ハデス、ポセイドンらはクロノスの兄弟ガイアの策略で腹から吐き出される。兄弟は連合して父とに戦い、勝利して父を冥界に幽閉する。戦後ゼウスとハデスは仲違いし、ハデスは冥界に下る。以上が前段階。時は移る。人間の神への祈りが減り、神の力は衰え、冥界の壁が崩れ始める。壁が崩壊すれば、クロノスが地上を跋扈し。この世は闇に閉ざされる。危機感を募らせたゼウスは神々と半神の力を結集して、冥界の壁を建て直そうとする。だが、ゼウスを憎むハデスとゼウスの子アレスが裏切り、ゼウスは冥府に監禁され、その力をクロノスに吸われる。かろうじて難を逃れたポセイドンだったが、ゼウスの子ペルセウスに事実を告げるとやがて命が尽きた。ペルセウスとポセイドンの子アゲノール、それと何故か女王戦士になっているアンドロメダがゼウス救出に向かう。色々と展開があり、ハデスは改心し、アレスはペルセウスに刺殺され、クロノスは地上に放たれる。神々と人間の連合軍対クロノスの戦いが最終決戦。いわば神々の骨肉の争いに人間が巻き込まれる形だ。親子の情愛を絡ませることで物語に深みを与えようとしているが、成功しているとはいえない。ときに物語の進行を妨げている。アレスがどうして、あれほど父を憎むのが伝わらない。ペルセウスも当初は父に対して冷淡すぎる。ペルセウスの子はただ突っ立っているだけの存在。クロノスの心情は計りしれない。ただ「親、子、愛」という言葉が空回りしている。見所である戦闘場面だが、神々が弱すぎるのが問題。矮小化されて人間と区別がつかない。キメラ、サイクロプスの方が数段迫力があった。神々の戦いなのだがら、巨大化し、空を舞い、雷雲を呼び、雷鳴を響かせ、海を逆巻かせ、山を動かしての一大スペクタクルにすべきではなかったか。巨大なだけで溶岩を投げるだけのクロノスと、美女でないアンドロメダにも失望した。CG,VFXは一流だけに甚だ残念である。B級怪獣映画と割り切れば楽しめる。
[DVD(字幕)] 7点(2013-06-22 15:41:05)(良:1票)
25.  シャーロック・ホームズ/シャドウ ゲーム 《ネタバレ》 
笑いあり、アクションあり、スローモーション推理ありの新感覚ホームズ第二弾。製作者や役者がノリノリで作っている様子が窺えるとても勢いのある作品。19世紀の時代セットは素晴らしく、どこからCGかわからないほど上手に作り込んである。アクション映画の制作費に100億円以上かけれる環境が羨ましい。推理も”それなりに”というか、”かなり”あって、伏線が丁寧に回収されてゆく爽快さがある。推理ものとしても合格点。ただ展開のテンポが良いというか、早すぎて未消化のまま進んでゆく懸念がある。従いてゆくのがやっとで、娯楽映画特有の「心地好い緊張感の持続」は得られない。今回の相手は、最大の宿敵モリアーティで、世界大戦の阻止という犯罪史上最大級の目的がある。ホームズの恋人アドラーが殺されたり、革命家の男が妻子を人質に取られているので自殺を強要させられたりと、基本的にシリアス路線なのに、ホームズは終始おちゃらけているし、モリアーティも小物のワトソン夫婦を狙うなど意味不明な行動が多い。真面目一筋のハドソン夫人が料理用の蓋付皿に鼠を容れて持って来たりと、どうも目線が定まらない。ホームズの女装やマイクロフトの裸など、原作に対するリスペクトが無いのも気になるところ。ご都合主義で、ラインバッハの滝の上に和平会議の会場となる建物を造ってしまっているが、場所が危険すぎてありえない。推理で面白かったのは、植物の本と枯れた植物から、暗号を読み解くところ。驚いたのは、酸素吸入器の伏線。あんな小さいもので滝から脱出できるとは。迷彩服は安直すぎて不可。単にワトソンを驚かすためだけにしか使われていない。笑ったのは、両手両足を踏ん張って天井に潜んでいたコサックの暗殺者。隠れる必要などなく、普通に客を装って、占いの女を刺殺すればよいのに。最も疑問だったのは、和平会議での暗殺場面。政府高官を暗殺するのに、わざわざ政府高官の一人を気絶させ、あらかじめその顔に整形した人物が政府高官に成りすますような手の込んだことをする必要はないだろう。政府高官であれば誰を殺してもよいのだから。ただこれらの難点は、勢いがあるので、鑑賞中は気にならない。それだけ魅力に富んだ作品ということ。
[DVD(字幕)] 7点(2013-05-21 16:24:07)(良:1票)
26.  ガフールの伝説 《ネタバレ》 
ふくろうが高度な文明を営むという世界観だが、鉄器文化を持つことに大いに違和感があった。飛躍しすぎていないか。 鉄剣、鉄兜、鉄面蓋などで武装していては、人間の古代戦士と変わりなく、ふくろうである必然性がなくなる。各種ふくろうの特性を生かした肉体同士での戦闘場面が見たかった。 悪の王国の最終兵器である、砂嚢をしびれさせて動けなくするという「特殊金属」は説明不足の誹りを免れないだろう。何のことやらわからない。砂嚢は鳥類の胃の一部で、食物を砂で細かく砕くものであるので、「砂嚢を麻痺させる」とか「頭ではなく砂嚢で感じろ」といわれてもぴんとこない。心眼のようなものと察しはつくが、すっきりしない。極め付けは「月光麻痺」。月の光を真正面で受けると麻痺してマインド・コントロールされるという安直な設定にはげんなりさせられる。 物語は善悪の王国の対立を軸に、「ガフールの勇者たち」という伝説を盛り込んだ冒険戦記もので、これといった目新しい要素は見当たらない。何より不満なのは、前の戦争の契機と経緯、勇者伝説の詳細が語られないことだ。なので最終決戦場面でも感情移入できない。唯一意表を突くのが、兄がダークサイドに堕ちるという展開だが、どうしてそうなるのかが描写不足だ。弟とそりが合わないだけで、両親の愛情を得られており、心に傷を持つわけではない。妹を攫い、弟を殺そうとする心の闇が見えないので説得力がない。補助的登場人物の扱いもぞんさい。両親は途中で居なくなるし、弟と行動を共にする家政婦の蛇は大した活躍を見せない。旅の仲間はかろうじて合格点。ジルフィーは小さすぎて恋人役には不足。大臣ふくろうのみえみえの裏切りと、時を移さぬ退場は、急ぎ過ぎ。主人の成長物語としても不満が残る。危機はそこそこ描かれているが、幸運に助けられている面が大きい。兄殺しの葛藤が薄い。もっと子供らしい知恵を発揮しての活躍をみたかった。美点はCGの華麗さとアクションの優雅さに尽きる。感動することはないが、CG技術の発展には唸らされる。美術を見るような鑑賞法が最適だろう。
[DVD(吹替)] 7点(2013-05-13 13:06:10)(良:1票)
27.  悪人 《ネタバレ》 
「人は善と悪の間を行き来する生き物、善人でもふと魔のさす瞬間がある」「善と悪は表裏一体、立場や関係によって変る」「殺人のあとに心から愛し合える女と出会った運命の悲劇」こんな感想を持ちながら鑑賞していたが、鑑賞後は、「貧しさに負けた、いいえ不器用さに負けた、祐一と光代の平成枯れすすき」と、少しちゃかしたい気分にもなった。重い作品だが、無口になる程ではない。一つの殺人事件を軸に、被害者と加害者、及びその家族や周辺の人たちを丁寧に描くことで奥深さがでている。被害者の加害者に見せる”鬼の顔”と親に見せる”天使の顔”の二面性を示すことで含みを持たすことに成功している。最初はサスペンス要素、次に恋愛要素が加わり、退屈はしない。犯人に感情移入できるかどうかが要諦。働き者で、病気の祖父の面倒を見るという善き面がある一方、実母に金をねだったり、出会い系で知り合った女の動画を撮ったりする面もある。母からの愛を受けられなかった成育歴からか、対人関係に不器用で、人間関係や恋愛関係を築くのが苦手。殺人の”弱すぎる動機”には目をつぶるとして、不器用な男女が出会って、本当に愛し合うようになる部分は説得力があった。女の背景や不器用さがそれなりに描かれていたし、出会い方やいきなりホテルへという展開はどうであれ、本当に愛し合える人とは、出会うときには出会うからだ。二人はコンプレックスを持つ似た者同士、出会った瞬間から愛が始まっても不思議ではない。祐一が警官の前で女の首をわざと絞めた”優しさ”は十分伝わる。◆”事故的な殺人”という悪に対して、”善人顔した悪(糾弾されない悪)”が対比される。置き去り大学生、健康商法詐欺者、マスコミなど。又加害者になりそうになった被害者の父も悪の一面として登場。しかし、これらは弱い。巨悪を持ってこないとバランスが取れない。マスコミが加害者宅にばかり押しかけて、被害者宅に押しかけない不自然さ。被害者父が大学生の居場所をどうやって知ったのか?犯罪映画として「警察が祐一を犯人と断定した理由」が無いのは難点。あの日祐一は被害者と会う約束をしていた。しかし被害者は大学生の車に同乗。これが祐一のアリバイ証明となる。電話連絡してない以上、会ってないと考えるのが普通。警察に知らぬ存ぜぬで通せば通ったろう。確固とした証拠を残すべき。善だ悪だと論ずるよりも恋愛映画として鑑賞する方が感動できる。
[DVD(邦画)] 7点(2012-09-08 14:32:45)
28.  タイタンの戦い(2010) 《ネタバレ》 
見所は兵士達と大暴れする怪物達との戦闘シーンであり、十分堪能できる。ただ動きが早すぎて目がついていけない場面が多いのは残念。緩急をつけるのがこつ。クリーチャーをじっくり観察できる静の部分は必要。メドゥーサとの戦いは合格点。蝙蝠怪物は飛び回りすぎ。◆ギリシア神話のペルセウス英雄譚が下敷き。神話にはないキャラが登場するが魅力に欠ける。怪物狩人の兄弟には期待したが、さほど活躍せず、途中リタイアして、最後で少し顔出し。もったいない。カリボスは説明不足。ペルセウスとその母を入れた棺桶を海に投げ入れたアクリシス王の落魄した成れの果で、ハデスにより力を得て復活するが、敵として弱すぎた。精霊ジンは、木炭の身体を持つ砂漠の魔術師らしいが、メドゥーサとの戦いで自爆して死ぬ?最終怪物クローケーンは中世の海の怪物。タコの形で描かれる。さほど大暴れしなかった。◆鑑賞後さほど痛快さが残らない原因。まず役者が役に合っていない。ペルセウスは半人半神で17歳くらいなのに、ごつい顔の五分狩り中年男が演じる違和感。半神としての品格がなく、兵士達と区別できないほど没個性。アンドロメダは絶世の美少女が演じるべき。神話では、母により神に勝る美貌と讃えられたのが奇禍の原因となるのだから。ペルセウスとの恋愛もないのは期待外れ。守護者イオも容姿凡庸で品格不足。◆次に兵士達の仲が良くないのが難点。儀仗兵と老兵ばかりとなじり、イオは邪魔者扱い、ペルセウスをも冷笑する。ペルセウスも独りよがりな行動が多い。「人間として戦うのが信念」と主張し、神の力を否定。観客は彼の人間性よりも英雄としての神性を期待しているのに。最終的には神の力を借りるので、信念が問われそうだ。異種混合、一致団結して神との闘いに向かう姿勢がないと、観客はついてこない。神相手なのに緊張感が足りない。三つ目にゼウスの優柔不断と自家撞着ぶり。人間への最後通牒の使者としてハデスを派遣し、最終怪物クローケーンを放ったのに、陰でペルセウスの味方をしている。そもそも人間の愛と尊敬が天上の神々の糧となり、人間の恐怖と苦痛がハデスの糧となる。つまり利害が一致しないのだから意見が一致するわけがない。それに人間の怒りを買ったのはゼウスの無慈悲さによるもの。煮え切らない神々に観客も混迷。あとペガサスは神話どおり、メドゥーサの首が飛んだときの血から生まれる白馬でよかったのでは?
[DVD(字幕)] 7点(2012-08-13 03:05:23)
29.  メビウス(2013/韓国) 《ネタバレ》 
過去に類例が無いであろう、男性器にこだわった作品で、男性器をめぐる珍妙な家庭内愛憎劇だ。 冷え切った家庭の父、母、息子が主人公。父が愛人と情交するのを母と息子が目撃する。母は精神が破綻し、夫の性器を刃物で切ろうとするが不首尾で、咄嗟の代償行為で息子のそれを切り、食べてしまう。そして失跡する。責任を痛感した父は、医師に性器を切除してもらう。息子は父の愛人に関心を持ち、不良達に混じって強姦してしまう。鑑別所の入れられた息子を不憫に思った父は、ネットで得た知識で体得した“激痛射精術”を息子に伝授する。快感を覚えた息子は、出所して愛人と奇妙な愛の交歓をする。息子は性器再生手術を受けたが、勃起しない。しかし、舞い戻って来た母に欲情して勃起した。息子を慰めたい母は息子と性的関係を持とうとする。 家庭が再生する物語と予想しながら観ていたので、最後の展開には驚いた。 科白が一切無いことから、寓話的世界を表現しているのが判る。 生殖である男性器は家庭生活に不可欠だが、不倫など性欲の使い方を間違えると家庭が崩壊する。 性器を失くした男は男でなくなり、侮蔑の対称となる。男性器の再生は不可能である。  メビウスの輪は裏と表が繋がり永続する環構造で、「悲夢」の「黒白同色」に通じる。 母と愛人役が一人二役だったのは、妻も愛人も男性器という性欲の前では同じ一続きのものであるということを表現したかったのだろう。近親相姦も同じである。 激痛と快楽が表裏一体のように、性欲も解脱も同じ一続きのものだ。性欲は生命力、解脱は死、すなわち「生死即涅槃」である。 仏像に祈る男が二度登場する。一度目は失跡後の母が目撃し、二度目は、息子が“祈る男”になっている。 “祈る男”は解脱の象徴で、「煩悩即菩提」ということだろう。 息子は自ら再生性器を除去して煩悩を絶ち、仏門に帰依して心の安定を得た。父は無理心中することで家庭の業を断ち切った。祈る男は求道する監督の姿と重なる。 いつもの芸術的映像は影をひそめ、説明的で冗長なのが残念だ。主人公達に科白が無いのはよいが、警官や不良達まで科白が無いのはは不自然すぎる。内容が内容だけに、一般の視聴者の共感を得るのは難しいだろう。
[DVD(字幕)] 6点(2014-12-11 02:37:44)
30.  小さいおうち 《ネタバレ》 
女中タキが、奉公先の平井家の時子夫人と、平井の会社の若手社員である板倉の不倫を目撃する話。徴兵検査丙種合格だった板倉にも召集令状が届き、時子が会いに行くのをタキが世間に関係が知れるからと止める。その代わり自分が手紙を届けるからと手紙を書かせるが、届けなかった。その後、タキは田舎に帰り、平井夫婦は空襲で鬼籍に入る。満州事変、支那事変、大東亜戦争と戦争が拡大しても、戦争なんてどこか他人事だった時子とタキの明るい暮らしぶりに新鮮味がある。この暮らしが戦争の拡大により崩壊していく様子を描き、反戦の意を伝えている。但し、低予算の為、当時の東京の様子は写真以外、一切出て来ない。空襲もおもちゃによる特撮で、セットも最小限。こじんまりとした映画だ。タキは時子への贖罪のためか、生涯結婚しなかった。そして、自分は長生きし過ぎたと号泣する。悲しい物語だが、感涙を催すほどの感動はなかった。理由の第一は、タキの不倫の理由が不明なことだ。子供に恵まれ、何不自由ない暮らしをして、夫に不満があるわけでもなく、板倉が美青年でもなく、人妻の理性を狂わすほどの漁色家でもない。不倫に走る必然性がないのだ。時子が板倉にどうしようもなく魅かれる理由を描かない限り、観客は時子に同情できないだろう。次に、タキの手紙の秘密だが、これには重要な意味が無いと思う。タキが板倉に手紙を渡そうが、渡さなかろうが、板倉は出征したし、時子は爆死した。板倉は翌日平井家を訪れているので、最後の別れも果たしている。手紙の内容もただ来てくださいという至極単純なのもの。手紙は秘密を解く重要な品目のように扱われているが、実は大勢に影響を及ぼさない程度のものでしかない。完全な肩透かしである。従って、タキが生涯結婚しなかった理由に成りえないのである。このような秘密を演出する場合、渡さなかった所為で誰かの人生が大きく変わるとか、誰かが非常な不幸に陥るというような展開にしないと均衡が取れない。板倉が「僕が死ぬとしたら、タキちゃんと奥さんを守るためだからね」とタキを抱きしめるが、これは頂けない。当時の人は決してこのような直接的な物言いはしないと思うし、タキと板倉の間に恋愛感情があったと誤解される恐れがあるからだ。タキが、板倉が描いた赤い屋根の家の絵を所有していた由来が描かれていないのも不親切だ。戦争批判を含んだ“毛色の変わった不倫劇”で終っている。
[DVD(字幕)] 6点(2014-12-05 23:39:59)(良:1票)
31.  キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK- 《ネタバレ》 
鑑賞後、誰もが宇宙海賊ハーロック(H)に憧れ、アルカディア号に乗りたいと思わせるような内容であるべきだが、この作品には夢も感動もない。デザインや技術は優れているのに、矛盾点や疑問点が多く、作品に入り込めないのは残念である。人類は他の銀河に進出したが、異星文明との共存が果たせず、種として衰退したというが、実際は人口5000億と大繁栄を誇っている。他の星に人類は住んでいるし、生物も生息するので矛盾する。地球がダークマターで破壊された様子は多くの目撃者がおり、ホログラムで隠せるものではない。破壊された地球はテラフォーミングすればよい。 ヤマが無理な操作をして植物園を破壊するが、状況が説明不足。地球の花ならすぐに再現できるはず。誰かが種を持っている。 イソラは下半身不随になるが、再生医療は?ナミは植物状態なのにホログラムで会話ができる不思議さ。どうやって相手を見てるの?イソラは植物状態のナミとどうして結婚したの?イソラが激昂してナミの生命維持装置を抜いたが、すぐに戻せば死ななかった。アルカディア号が黒煙を吐くのは何故?アルカディア号かホログラムかは、レーダーがあれば見分けがつく。トカーガ星で救助船がナミを助けたが、一人しか救助できない不思議さ。また次元振動弾を設置するのに不安定な橋のような場所を選んだ理由。乗務員志願者が急崖を素手で登るが、飛行船等で移動すればいい。イソラが使っているような反重力乗り物もある。Hは孤高の存在で男の憧れ。乗務員志願者の三人を殺したり、宇宙をリセットしようとしたり、敵に拘束されて落ち込んだりしてはいけない。ましてや次元振動弾の起爆スイッチをヤマに渡して、「人類が過ちを犯しそうになったら躊躇わず押せ」とは言わない。あまりに傲慢すぎる。それに敵とはいえ殺し過ぎ。同じ人類ではないか。ダークマター機関の説明が欲しい。Hが不死身だったり、ダークマターを開放するとミーナが消滅することの関係は?死人が生き返り、ミーナが復活した場面は謎。Hがヤマに渡したものと関係がある?敵艦の集中砲火ビームがアルカディア号に当らない不思議さ。地球に植物が再生したのを誰も気づかなかった?ガイアサンクションの総監が簡単に地球を破壊する決定を下す矛盾。総監とHの対決を最終決戦として御膳立てすべきだった。ハーロック二人体制で続編?たぶん無い。
[DVD(邦画)] 6点(2014-05-22 07:31:29)
32.  EVA エヴァ(2011) 《ネタバレ》 
ロボット科学者のアレックスは十年ぶりに故郷に戻り、自律型子供アンドロイドの情動反応プログラムを研究する。モデルとなる子供を探していたら、エヴァという少女に出会った。愛らしく活発で、大人に臆せず、ずけずけと物を言う、個性豊かな少女だ。アレックスが兄の家を訪ねるとエヴァがいた。偶然にも兄の娘だったのだ。アレックスはエヴァをモデルに研究を進める。かつてアレックスと兄と兄の妻ラナの三人は大学で一緒に研究をしていたが、アレックスが大学を飛び出し、外国に行ってしまったという経緯があった。理由はラナを巡っての三角関係だったようだ。時代は未来で、家事を何でもこなす召使型アンドロイドは開発されているが、その割に住居や車、その他の道具類は旧態依然としている。低予算映画だからだ。最大のサプライズは、エヴァがアンドロイドだったこと。アレックスが投げ出した研究をナラが引き継いで完成させた。そしてエヴァは自分がアンドロイドであることを知らない。そんな馬鹿なと思う。食事したり、逆立ちしたり、風呂入って髪の毛洗ったり、スケートしたり、何もかも出来すぎではないか。ロボット工学のアレックスが人間と見紛うような完璧なアンドロイドなど造れるわけがない。そもそもその原型を造ったのはアレックスだ。そのアレックスが造った唯一の自律型ロボットの猫と比較してもテクノロジーが飛躍しすぎていて、整合性が取れていない。以後見る気が急激に失せた。映画の教訓としては、自律型アンドロイドは時として人間に危害を加える危険があるということと、過去の三角関係の清算は難しいということで、共に興味は引かれない。教訓の代償としてラナは転落死し、エヴァは初期化された。何もかもが虚しい。物語は淡々と進み、抑揚がなく、演出面に問題がある。冒頭でラナの転落場面を持ってきたところが唯一の取り柄だ。眼についたところといえば、プロセッサー作成のCGの美しさくらい。エヴァがアレックスとラナを結びつけようとしたのは、ラナの感情が埋め込まれていたからだろうか?ところで記憶を初期化する「眼を閉じたら何が見える」の暗号は、日常でも使う言葉なので避けた方がよいだろう。それに初期化されたとしてもそれがロボットの死ではない。記憶はどこかに保存されている筈だ。記憶があるからこそ、正常に対人関係が営まれるのだ。文系の人が脚本を書いたのだろうか?隔靴掻痒の感が残る。
[DVD(字幕)] 6点(2014-04-20 13:07:33)
33.  4デイズ 《ネタバレ》 
テロリストが米国内に複数の核爆弾を設置し、大統領に対してイスラム国への政策を転換せよと脅迫する話。凝った脚本だ。テロリスト、ヤンガーはわざと捕まり、拷問尋問にかけられる。拷問するのは専門家のH、尋問は女性FBIのブロディ。三人が織りなす緊迫した心理描写が見どころだ。ヤンガーは狂言と思わせ、嘘の場所を教え、トラップでショッピングモールを爆破する。ここでヤングは初めて、大統領への要求を開陳し、動画撮影させる。爆破阻止という大義の為、犯人の妻子まで拷問しようとするHと、人道的見地からそれを許さないブロディの対立は深刻となる。刻限が迫るにつれて、衰弱していくH。きれいごとではすまされないことを認識して苦悶するブロディ。人命を救うためには拷問も許されるのか、を問いかける問題作。テロ題材の作品が多い中で新鮮な切り口だ。爆弾が実はもう1つあったというサプライズは秀逸。問題点もある。古典的な拷問を延々描くが、今は科学的にやる。自白剤を用いればよい。理性を麻痺させ、誘導自白させるのだ。犯人の行動には不自然なものがある。大統領を脅迫するのに犯行予告動画をマスコミに送ればよい。そしてショッピングモールを爆破させれば効果てきめんだ。自ら捕まったのでは成功の見込みはない。世論を味方につける必要がある。また妻子が外国移住後に犯行を始めるべきだ。単独で核兵器を作成するのも考えられない。ずば抜けた知能犯のはずなのに、動画も編集できていないという矛盾。冒頭の連続撮り直し、馬鹿丸出しだった。Hの妻の経歴が変わっている。ボスニア紛争で、近所の三人に家族を目の前で殺され、その後、復讐を果たした女、いわゆる喪服のテロリストだ。これが物語に絡むようで絡まない。Hの過去にこそ、そういう生臭い事件を盛り込むべきだった。それで彼の人間性の理解が進み、彼の行為もある程度納得できるだろう。通常の感覚からすれば、明らかに異常な彼の残虐行為にいかに感情移入できるかが、この映画の成否を分ける要諦となる。その工夫が足りない。Hの感情が爆発し、ヤングの妻を唐突に殺してしまう。そんなことをすればヤングの心を閉ざしてしまうのは自明。Hが勝手にヤングの拘束を解いて自由にしてやるのも不自然だ。Hが我が子を守るために拳銃自殺するのはよい演出と思う。犯人に残っていた人間性が垣間見れるからだ。一方で、彼が犯行に至る動機の解明は謎のままだ。
[DVD(字幕)] 6点(2014-04-18 16:09:12)
34.  アベンジャーズ(2012) 《ネタバレ》 
単純な“ヒーロー勢揃いのお祭り映画”と思って鑑賞したが、予想に反して不明な点が多く楽しめなかった。 『マイティ・ソー』という映画の世界観に準拠しているようで、その予備知識無しでは入り込めない。 テザラクト、またはキューブと呼ばれるものが重要品目で、無限のエネルギーを秘め、異次元宇宙との入口となれる。研究所のキューブが暴走する場面から映画は始まる。中からロキが登場し、キューブを奪い去る。その目的はキューブで異次元との巨大な入口を造り、仲間の宇宙人に地球を強襲させるというもの。ロキとソーは兄弟で半神らしい。人類がキューブを保有した経緯は不明だが、武器として研究されていた。よくわからないが研究所は崩壊する。 国際平和維持組織S.H.I.E.L.Dは対抗手段としてヒーロー達を集める。ところが、最初に召集されたのが女スパイ。戦闘能力不足で、他のヒーロー達と同列できるものではない。 この後も疑問が重なっていく。 ロキの槍は他人の心を支配する能力があるが、途中から効力がなくなった。また支配された人間は殴られただけで正常に戻る。 ロキはわざとS.H.I.E.L.Dに捕まるが、その理由が不明。ハルクを操るためのように思えたが、そうではなかった。 ハルクは爆発衝動で暴走してしまうが、後半は理性で自分を制御できるようになっている。その説明がない。 世界観が違い、個性の強いヒーローを一同に会させ、それぞれのファンを納得させ得る物語を造るのは大変だと思う。本作品はかろうじえ合格点だが、不満もある。当初仲間割れしがちだったヒーロー達が心を一にする契機はS.H.I.E.L.D職員の死だ。それはよい。だが、そこにはS.H.I.E.L.Dチーフのカードの作為があった。これは不要だ。次に、敵を撃退する最終兵器が核だったこと。何と安っぽい!キューブに対して貧弱すぎる。それに政府が都市に核攻撃をするのを阻止する話はもう見飽きた。もっと斬新なものにすべきだろう。最も残念だったのは、敵に魅力がないということ。ロキはハルクに軽くひねられ、宇宙人は核ミサイル一発で木端微塵。ヒーローを引き立たせるためには強い敵でなければならない。ある程度感情移入できる程度に敵側のドラマを描く必要ことが、ラストへの伏線となる。科学の進歩に格段の差があるのだから、核兵器などもろともしない強敵であってほしかった。危機の演出には不満が残る。
[DVD(字幕)] 6点(2014-04-11 21:04:48)
35.  星を追う子ども 《ネタバレ》 
一言で云えば、求心力のない作品だ。話の筋が一本通っていないのだ。少女アスナが不思議な少年シュンと出会って、アガルタという異界に旅して成長するという本来あるべき話が、途中で、亡き妻の生き返りを願うモリサキの冒険話に取って代わられてしまっている。アスナはモリサキのお供に成り下がる。そして異界の世界観が複雑で非常に分かりづらいのだ。かつてケツアルトルという神々が存在し、人間に知恵を授け、古代文明を発生させた。やがて人類が独自の進化を始めたことで、その役割を終え、地底世界アガルタに身を隠した。アガルタには願いの叶う石があり、生死の門があり、不老不死があり、神々の船がある。しかし今ではケルアルトルは異形の姿に変貌し、アガルタ人は地上の人間と接触を絶ち、滅びの時を迎えようとしている。このあたりの説明はうまくいえない。きちんと説明されていないからだ。 更に登場人物の行動に理解しがたいものがある。その最たるものはシュンだ。地上にあこがれ、命を縮めると知っていても地上に出て、アスナと出会って、助け、思いがかなったと自殺する。シュンの歌った最後の歌を聞いたのがアスナだったのだが、それがどんな意味があるのか。シュンはそれっきり登場しない。モリサキの行動で不可解なのは、学校の先生をしていることだろう。彼はアガルタを探査する組織に属しているのに。モリサキとアスナの接点を設けようとする無理やりな設定としか思えない。彼は亡き妻を生き返らせるという異常な宿願に憑りつかれているが、どうしてそこまで思い詰めるようになったか、観客が共感できるほど十分に描かれていない。モリサキが願ったからその願いを叶えようとする神の心理も計り知れない。 アスナの行動も共感しにくい。彼女が鉱石ラジオを作ったのは父親への追慕からだろう。石は父の形見である。ラジオで聞いた歌に惹かれたのも、あの世の父の声が心をよぎったからだ。彼女が日常で感じている寂しさは父の不在が大きい。彼女がアガルタでの探訪を望んだのは、父親探しの思いがあったはずだ。だが、父親は一切登場しない。では、シュンを探す旅なのか。それも違う。結局最後まで彼女が成長することはなく、彼女は終始受け身で、モリサキの妻の肉体のための憑代にされそうになるだけだ。彼女は父の不在の寂しさ、シュンの死をどう乗り越えたのだろうか?風景がきれいなのは美点だ。
[DVD(邦画)] 6点(2014-03-04 03:00:51)
36.  ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬 《ネタバレ》 
全編「007」のパロディに終始するコメディ映画だが、歯切れが悪い。 コメディに徹しきれていないのだ。政府首脳を暗殺する悪の組織があり、全うな筋書があり、裏切りや友情、恋愛があり、アクションがあり、オチがある。雪の崖上に建つ敵の組織の要塞をみればわかるが、相当な予算をかけている。映画作りを半分真面目にやっているのだ。そうではなくて、もっとバカバカしく、おちゃらけて、笑える内容にすればよかったと思う。主人公ジョー・イングリッシュが、ミスター・ビーンズのように突き抜けたおとぼけキャラクターになっていない。ジョーをサポートするタッカーのおまぬけぶりも中途半端だ。どうせなら二人で徹底的にボケて、名コンビを組んでもよかった。 脚本はよく練られていて、笑いどころは沢山用意してある。残念なのは見せ方がうまくないこと。例えば車椅子でのカーチェイスの場面。アイデアは秀逸だが、爆笑にはつながらない。音楽の使い方やスローモーションなどでコミカルさを強調するなどの工夫が欲しい。最後の大ネタ、女王陛下を叩く場面は爆笑した。
[DVD(字幕)] 6点(2013-09-06 22:16:35)
37.  テール しっぽのある美女 《ネタバレ》 
老人の遺体が森の小屋近くで発見された。何年も前に獣に殺されたとおもわれるもので、犯罪現場の特殊清掃人レオとエルビスが派遣された。レオは物事に動じないが、エルビスは何事にも敏感に反応するという好対照のコンビ。二人は小屋で秘密の地下室を見つける。埃の積り具合から何年も使用されていない。研究用の部屋があり、古い缶詰が残され、バスタブには白濁水が張ってある。テープを再生すると、老人の声が流れるが、何について語っているか判然としない。服から遺体は軍医とわかる。エルビスが装置の管をいじっていると、突如、バスタブから素裸の美女が飛び出して倒れ込んだ。白い肌、豊満な肉体。驚愕する二人。エルビスが近づくと、美女は跳ね起き、首を絞める。レオは美女を落ち着かせ、服と食料と水を与える。冷蔵庫には尻尾が保存されていた。美女の手がレオに触れると、彼女の過去が断片的に伝わってきた。軍医は未発見生物の赤ん坊を森の中で発見し、軍の研究施設に持ち帰った。ターレと名付けられた生物は驚くべき順応をみせ、人間に似た姿に成長した。情の移った軍医は、彼女を施設から連れ出し、森の小屋に隠れ住んだ。尻尾があるとターレの仲間から感知されるので仕方なく切断。そこまで判明したとき、武装した軍の組織に取り囲まれてしまう。謎の多い映画だ。ターレの正体は、北欧の伝説上の生物「フルドラ」とされる。美しい容姿に牛の尻尾を持ち、美しい歌声で人間の男たちを誘惑し、怒ると老婆の姿になるという。本作品では残忍な一面も見せる。単なるホラーで終らず、二人の友情を描いているのも特徴。レオは肺ガンと宣告されていたが、事件後ガンの影は消えていた。ターレの治癒能力によるものだ。エルビスには娘がいたが、貧困を厭った妻が去り、娘を誰かに預けていた。事件後レオの説得により?妻が戻り、三人は元のさやに戻る。明るいエンディングは、逃走したタールの未来を暗示している。冒頭、反吐を吐く場面を何度も映すが、これは減点。フルドラのCGは不出来。【疑問】①ターレは数年間をどうやって生きのびた?どうして小屋を出なかった。②小屋の電力供給方法。エンジン式発電機では何年ももたない。③軍の組織の正体。④軍の組織のリーダーが老人。⑤フルドラがリーダーの死体を持ち去った理由。⑥フルドラはどうして二人を襲わなかった?⑦軍とフルドラはターレの居場所をどうやって知った?
[DVD(字幕)] 6点(2013-08-02 12:34:45)
38.  アイアンマン2 《ネタバレ》 
前作では、巨大軍事企業の社長かつ天才科学技術者トニー・スタークが、テロ組織に拉致され間一髪のところで生還した経験から、自分の進むべき道を問い直し、会社の軍事部門を廃止し、戦闘スーツを身に着け世界を守るヒーローとしての活躍を始めると意思表示をするところで終る。 本編では、アイアンマンのおかげで各地の紛争は鎮静化され、平和が維持されているという場面から始まる。 ヒーローの活躍場面が省略されているわけで、物足りない。 代わりに、その余りの威力を危惧した国から、軍事兵器として接収されそうになるという、ヒーローの活躍に水を差すような展開になっている。 このヒーロー、飄々としているのは良いが、おちゃらけが過ぎるのが難点だ。 前回では拉致された際に受傷し、生命の危機に瀕するという真摯な場面があった。 だから、他の場面で見せるおちゃらけとバランスが取れていた。 今回は徹頭徹尾、おちゃらけ路線。これでは、危機が危機におもえなくなってくる。よって感情移入もない。 酔って踊りながら、群集の面前で火器を使用しての西瓜割りなどの危険行為も目に余る。 第二のアイアンマンも、トニー監視役の友人が、暴れるアイアンマンを止めようとして着用するというさえない登場の仕方をする。いわば仲間割れで、集中心が削がれる。 恋愛パートだが、毎度痴話喧嘩レベルの言い争いの繰り返しで新鮮味がない。秘書を社長にしたのはよいが、軍事会社が軍事をやめてなにをしているのか? 父親が遺したフィルムをヒントに新動力源を発見する挿話はよかった。冷めがちだった父親との絆を深め、人間らしい感情を取り戻した瞬間だ。 さて、ライバルだが、トニーの父親の元同僚の息子イワンが、父の研究を奪ったトニー父子に恨みを抱いているという設定。 独自開発した戦闘スーツでトニーを急襲するものの撃退される。しかしトニーのライバル企業のハマーに救出され、新兵器の開発に協力する。最終的にイワンはハマーを裏切り、新兵器軍団を伴ってアイアンマンを襲うという、どうにも複雑な展開。善対悪の戦いになっていない。この外にシールドやブラック・ウィドウなどが登場し、流れが途切れがち。これでは、いくら戦闘場面が魅力的であっても爽快感は得られない。スーツケースからの流麗な変身場面のみ印象に残っている。
[DVD(字幕)] 6点(2013-08-01 13:05:43)
39.  相棒 -劇場版Ⅱ- 警視庁占拠!特命係の一番長い夜 《ネタバレ》 
まさに前代未聞!警視庁庁舎内の会議室で、警視総監、副総監以下12人の上級幹部を人質とした篭城事件が発生した。 犯人は一人だが、拳銃で瞬く間に並み居る幹部らを制圧、非常に手際がよい。それでいて要求はなく、時間をくれというばかり。一体何者?何の目的で?謎は膨らばかり。こうして特命係の一番長い夜が始まった。今後どういった展開を見せるのか、期待をもたせる順調なすべりだしだ。 だが、犯人の身元はすぐに割れ、機動部隊突入によるもみ合いの最中、犯人は射殺されてしまう。緊急時の正当防衛ということで事件は落着、呆気ない幕切れとなる。特命係の右京らは独自に捜査を始める。犯人は元警察官の八重樫で、動機は7年前の反米テロリスト事件に絡んだものと推定された。捜査が進むにつれて、反米テロリスト事件の黒幕は実は公安警察で、中国人マフィアを利用してテロ事件を捏造したものと判明する。動機は、公安の存在意義を世間に認知らしめること。証人隠滅を図って船ごと爆発させるという悪辣なもので、警察官一人が巻き添えとなる。 これに警視庁幹部らの隠ぺい工作、テロリスト事件で婚約者を亡くして復讐に燃える女性警察官、警察庁と警視庁の権力争い等の要素が絡む。単純な事件から複雑な事件へと変貌するが、謎解きの面白さはさほどない。謎はさくさく解けてしまうし、最大の証拠である会議室での録音データは監察官から送られてくる。元々、刑事もので警察内部犯行というオチは芳しくない。現実味が薄い上に、後味が悪い。公安のでっち上げ事件は荒々しすぎて荒唐無稽だし、中国人をイスラム系テロリストに見せかけるのにも無理がある。もっと”らしい”事件にすべきだった。懲戒解雇された生活安全部長が、それだけで警察庁官房長を刺殺するだろうか?また八重樫らが、証人である意識不明の中国人を連れ出して1年間も監禁したのは人道的問題がある。それに窮したとはいえ、元警察官が人質事件を起こすだろうか?警察上層部が真相を握りつぶそうとしても、マスコミに訴えるなり、ネットに公開するなり、裁判を起こすなり、いろいろと手段はあるはずだ。女性警察官は、黒幕の正体をどうして知ったのか?いきなり射殺しようとしたのにも違和感がある。公安はどうして八重樫の隠れ場所を知ったのか?疑問もいろいろと湧く。すっきりしない終り方では、当然観客もすっきりしない。
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-23 03:44:24)
40.  パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 《ネタバレ》 
ギリシア神話を下敷きにして、現代のニューヨークを舞台に、盗まれたゼウスの最強兵器「稲妻」をめぐっての冒険譚。冒頭の巨大ポセイドン出現場面では期待したが、以降の威厳の感じられない神々には幻滅させられた。総じてファンタジー色が少ない。高校生とファンタジーでは親和性が薄い。原作の12歳の方が適切だ。活躍する舞台は地上ではなく、天上などの異次元にした方がよい。そうすれば園芸店にメデューサがいて客を石に変えているが人間に露見しない、という矛盾がなくなる。ゼウスがポセイドンを呼び付けるが、そこは高層ビルで、共に人間の姿。摩天楼をオリンポス山になぞらえているのはわかるが、神同士なら天上で会えばよい。ファンタジーはイメージが大切だ。カインの渡し守もハデスもその妻も人間の姿。手抜きであろう。ゼウスはこれといった理由もなく、ポセイドンの息子パーシー(P)が犯人と決めつける。そしてポセイドンに「期日までに持ってこなければ戦争だ」と脅す。それでいて息子との面会は許さない。酷い神だ。Pは継父の酷い悪臭で神々から隠されているという。酷い設定だ。でも何故隠すのか?「Pが稲妻を盗んだ」の噂が広まり、「稲妻」を奪いに魔物が現れる。魔物に居場所が分るのに、ゼウスには分らない?母が冥界の支配者ハデスにさらわれ、ハデスは「稲妻」と母の交換を条件とする。Pは仲間と母の救助に向うが、先ず冥界からの帰還に必要な「真珠」を見つける必要がある。ここからペルセウス神話をなぞっての冒険が始まる。宝探し、怪物退治、ロード・ムービー、旅の仲間等の要素で、最大の見せどころ。が、残念ながら盛り上がらない。緊迫感がないのだ。「ジュラシック・パーク」の恐竜の迫力と比較すれば一目瞭然。前段のキャンプでの訓練もチャンバラにしか見えなかった。冥界で、ハデスを説得して母を返してもらうという最大の難問が立ちはだかるが、労せず解決してしまう。カタルシスは得られない。帰還してルークと一騎打ち。彼が「稲妻」を盗んだ真犯人で、楯に隠してPに与え、冥界でハデスに渡るように企んだのだった。「稲妻」が実践で使用されるが、驚くほどの威力はない。羊頭狗肉だ。夜の場面が多く、見にくい。何故魔物の近くに真珠があるのかは謎だ。真珠を守っている様子はなく、ハデスとも不連絡。真珠が足ずに一人冥界に残るが、後にPがゼウスに頼んで戻してもらう。無駄な挿話はやめよう。
[DVD(字幕)] 6点(2013-06-20 22:04:03)
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