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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1885
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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21.  ゴーン・ガール 《ネタバレ》 
皆さん、今日はお集まりいただきありがとう。僕やエイミーにとってとても心強いです。ご存知のように僕の妻エイミー・ダンは3日前に失踪したきり手掛かりすら得られていません。どんなことでも構わない、情報をお持ちの方は是非教えてください。それからもう一つ、皆さん聞きたいだろうからあえて自分から言います。僕は妻の失踪には一切関係ありません。警察にも協力し、隠し事もない。エイミーは僕の最愛の人です。確かに僕は良い夫ではなかったかも知れない。でも、本当です、僕は心から妻を愛しているんです――。結婚生活5年目を迎えた、ニックとその妻エイミー。結婚当初は仲睦まじかった彼らもいまや愛は冷め、離婚の瀬戸際に追い詰められていた。そんな中迎えた5回目の結婚記念日の朝、ニックは今日もエイミーと朝から口喧嘩をして家を出てきてしまう。それでも帰るところはただ一つ。ニックは今後のことを話し合うため、エイミーが待つ家へと戻るのだった。ところが…、そこで彼を待っていたのは破壊されたリビング、何処を捜しても姿を見せない妻、彼に不審の目を向ける刑事、近所の人々の好奇の視線、そしてマスコミに簡単に踊らされる娯楽に餓えた大衆たちの悪意の連鎖だった。自分をずっと信じてついて来てくれる双子の妹とともに身の潔白を証明しようとするニックだったが、彼に不利な真実が次々と明らかになり、ニックは二度と抜け出せないような恐ろしい蟻地獄へと嵌まり込んでゆく…。果たして事件の真相とは?妻は何処に消えてしまったのか?本当に彼が妻を殺したのか?それとも…?サスペンス・スリラーの現代の名匠デヴィット・フィンチャー監督の最新作は、そんな一組の夫婦が抱えた深い闇をミステリアスでダークに、そしてエロティックに描いた濃厚な2時間20分でした。けっこうな長尺であるにも関わらず、冒頭から謎に充ちたストーリー展開で観客をぐいぐい惹き込み、二転三転する事態に驚愕させられ、やがて判明する真相に心の底から戦慄――特に結婚した男性なら誰しも――させられる良質のミステリーでしたね、これ。うん、めちゃくちゃ面白いじゃないですか!特にこの完璧なまでの構成力、優れた映画監督は優れた編集の力で物語を見せるという典型的な例でしょう。フィンチャー監督って昔はあんまり好きじゃなかったのだけど、前作の『ドラゴン・タトゥーの女』といい本作といい、ここ最近のその才能の充実振りには素直に驚嘆です。もう女の怖さとしたたかさを美しく描かせたら彼の右に出る者はいないですね。特に、金持ちの男に自らの身体を抱かせ、相手が射精した瞬間に咽を掻っ切り、血塗れになりながらも最後まで冷静に作業を進めるエイミーの狂気に充ちた美しさには惚れ惚れとさせられました。前作のリスベットや本作のエイミーに徹底的に一貫しているのは、男――及び男が創り上げたこの社会の傲慢さに対する反抗なのでしょう。いやー、男としては冷や汗もんっす(笑)。うん、久々に充実した映画体験をさせてもらいました。9点!
[DVD(字幕)] 9点(2016-02-23 21:15:45)(良:1票)
22.  ニンフォマニアック Vol.2 《ネタバレ》 
「何も感じない…。私、何も感じなくなってしまったの。信じて…、いくらセックスしても、私、もう何も感じない」――。そんな衝撃の言葉を残して静かに幕を下ろしたVol.1から続く、生まれついての“ニンフォマニア(色情狂)”ジョーの性遍歴の物語もいよいよ後半戦。愛を信じず、セックスで得られる快感だけが生きる支えだった彼女に突如として降りかかる不感症という名の災厄(笑)。Vol.2では、冒頭からそんなセックスの快感を再び取り戻そうとするジョーの苦難に満ちた紆余曲折が描かれていきます。言葉の通じないアフリカ人に抱かれたらどうだろうと安ホテルの一室に身を投じてみたものの、やって来た2人の黒人は訳が分からない議論に明け暮れてことに及ばず(黒人男性2人の勃起したペニスに挟まれて佇むジョーの姿はなかなかシュール!笑)、最終的に辿り着いたのはアパートの一室にある秘密SMクラブでした。ちなみにこの間、ジョーは自分の処女を奪った男性と再会して一緒になってちゃっかり男の子を出産してます。でも、そんな最愛の息子が居るにも関わらず、ジョーは超ドSな男に鞭で調教されゆくうちに久し振りに性的快感を取り戻しいつの間にか濡れていた自分を発見するのでした。子供の世話なんかそっちのけでSMクラブ通いを止められなくなるジョー。ここらあたりから、それまでジョーを演じていた若い女優から一転、くたびれた身体のシャルロット・ゲンズブールというおばさん女優へとバトンタッチされるので、もはや目の保養すらなくなってただひたすらイタい展開となっていきます。このセックス大好きおばさんジョーという本作の主人公ほど反発も共感も感じさせない、見事なまでの性的ピエロを僕は初めて見たような気がします。もう完全に喋るダッチ・ワイフ(笑)。ところが、彼女の長い話をずっと聞き続けていた〝男〟が実はこれまで性経験が一切ない汚れなき童貞であることが判明します。そんな奔放な彼女と対極をなす〝汚れなき男〟が、最後に語りだす男と女のセクシュアリティの違い、そしてその違いから端を発する性差別の歴史…。最後に暗闇から聞こえてくる銃声は、結局この社会を形作る倫理観の壁は男どもにとって都合の良いように築き上げられたもので、そんな道徳的な顔をしながら裏側では「女は男の性欲を満足させるための穴でしかない(でも、子供を産み育ててくれる)」と無意識のうちに思い込んでいる男どもへの、女性たちの復讐なのでしょう。トリアー監督って、女性の心からの味方でありながら、それでも自らにもある女性たちへの醜いまでの性欲を自覚している、絶対に友達にはなりたくないタイプの超面倒臭いペシミストなんだろうね。でも、そんな彼が僕は大好きです。
[DVD(字幕)] 9点(2015-08-10 01:47:27)
23.  かぐや姫の物語 《ネタバレ》 
素晴らしい。この竹取物語という日本人なら誰もが知っている日本最古の物語を現代に甦らせた本作は、アニメのみならずここ10年の間に製作された全ての映画の中でも歴史に残る傑作と言ってもいいくらいの素晴らしい出来栄えだった。高畑勲という日本を代表する映画作家は、この平安期の日本に古色蒼然と埋もれていたかぐや姫という女の子をその見事なまでの芸術的才能によって、千年の時を経た現代の日本に活き活きと生き返らせたのだ。水彩画を思わせる淡いタッチの絵の中で瑞々しく躍動する、このかぐや姫ほど魅力に満ちた主人公を僕は他に知らない。光り輝く竹の中から生まれた小さな女の子であった彼女が心優しき老夫婦の元ですくすくと成長していくさまを自然に見せていく冒頭部分から僕は心を鷲掴みにされた。最初は心優しき翁だった父が都に出てくると、次第にその出世欲と見栄を増大させ、単なる俗物へと変化していくのは、このかぐや姫という物語の本質を象徴している。生きることは、その純粋さを少しずつ穢していくこと――。常日頃からそう思っている僕にはとても共感できるテーマだった。光り輝く魅力に満ちたそんなかぐや姫も都に出たことによって、社会の序列化の波に組み込まれていく。やがて、彼女は男どもの横柄な支配欲――その裏には必ず醜い性欲が潜んでいる――によって、その美しさと純粋さを完全に奪われそうになるのだ。ただ綺麗なだけの着物を脱ぎ捨て、楽しかった生まれ故郷の里山に帰ろうとするかぐや姫(絵のタッチを意図的に荒くして描かれるこのシーンは息を呑むほどに美しかった)だが、男社会の論理はそれを許さない。何とかしてそんな男どもの支配欲に抗おうとするかぐや姫だったが、とうとう帝に見初められることによって追い詰められてしまう。そして、彼女を後ろから抱き締めようとする帝の醜い支配欲…。かぐや姫はその純潔を守るために自らの意志で迎えを呼び、そして“穢れなき”月の世界へと帰ってゆく。だが、そんな俗世にまみれたこの世界でも初恋の思い出や鳥や虫たちの健気に生きる姿、そして父母の情愛という彩りに満ちた素晴らしいものがあると悟り、かぐや姫は涙を流す。不覚にも、僕はこのラストシーンを見ながら涙が止まらなかった。映画でこんなにも泣かされたのは久し振りのことだった。理不尽で醜い現実に満ち充ちたこの世界で、少しずつ穢れていきながら日々の生活を送る僕たち人間の悲哀を象徴的に描いたこのラストシーンは白眉としか言いようがない。そうなのだ。だからこそ、僕たちは物語というものに純粋さ・美しさ・あるいはユートピアを求めていくのだ。それは竹取物語が誕生した千年前も現代を生きる我々でもなんら変わることはない。そんな普遍的なテーマを追求した本作は、近年稀にみる傑作と言っていい。
[DVD(邦画)] 9点(2015-08-02 16:41:20)(良:2票)
24.  インターステラー 《ネタバレ》 
僕のこよなく愛する『インセプション』という傑作を撮ったクリストファー・ノーラン監督の最新作にして3時間に迫るSF大作ということで、久し振りにわざわざ映画館へ――。結論を言うと、無茶苦茶面白かったです。圧倒的なスケールで描かれる壮大な世界観、イマジネーションが奔流のように迸るスタイリッシュで洗練された美麗な映像、哲学的で難解なお話なのにそれを微塵も感じさせない考え抜かれたストーリーテリング……。特に、あの1時間経つと地球時間では7年もの年月が過ぎる水の惑星から帰ってきた主人公が、あの僅かな時間で既に27年も経っていたと知ったときの絶望感といったら凄まじかった。地球時間と宇宙時間のずれを見事に対比させることで、今まで誰も見たことのないような壮大なアクションシーンを創り上げたところなんか、さすが『インセプション』のクリストファー・ノーラン!ブラックホールを越え、予想だにしなかった世界へと迷い込んだ主人公が知る驚愕の真実には度肝を抜かれました。そして、最後に彼が娘との約束を果たすシーンは切なくてちょっぴり泣きそうになっちゃったし。そんな綺麗な円環を閉じながらも、物語は新たな旅立ちの余韻を残す希望に満ちたラストシーンを迎えます。ただただ圧倒されてしばらく席から立ち上がれませんでした。最近、この世界は結局唯物論であり、人間はDNAを運ぶための単なる容れ物にすぎないのではないか。愛だの神だの幸せだといった概念は、所詮は人間が作り出した生きるための勝手な理由付けなのだろうという虚無的な考えに捉われがちな僕なのですが、人間はそんな絶望を乗り越えうる素晴らしい観念(想像力)を持っているということをあらためて教わったような気がします。僕はこの作品から生きる希望のようなものをほんの少し得られました。個人的な好みで言えば『インセプション』の方に軍配が上がるけれど、こちらも映画史にその名を燦然と刻むだろう傑作と言っていい。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-01 22:40:05)
25.  エンジェル ウォーズ 《ネタバレ》 
あの、奇才ザック・スナイダーが原点回帰して撮ったかのような、もう映画なんだからこの独自の世界観に酔いしれてください(分かる人だけ笑)と言わんばかりの〝少女の妄想力〟全開映画。良いですね、この徹底的に我が道をいく監督の姿勢、僕は好きです。残酷な義父に母と妹を殺され、挙句の果てに精神病院に入れられた主人公ベイビードール。そして、その病院は常駐する医者も訪ねてくる議員も料理場のコックも、みんな揃いも揃って酷い悪人or変態ばかり。仲間となった少女たちと共に、ベイビードールは得意のダンスと、そして中2病爆発な妄想力とを武器に、そんな世界から脱出しようと図るのだった!もしかしたらこれは大傑作になるぞっとワクワクしながら観てたのだけど、残念なのは最後の試練、さすがに息切れしたのか、予算の都合なのか、ここもちゃんとしっかり妄想で描いて欲しかった。惜しい。でも、やっぱり僕はこの監督のセンスが大好きなので甘めに9点!
[DVD(字幕)] 9点(2012-09-06 20:00:19)
26.  告白(2010) 《ネタバレ》 
昨今の邦画業界の商業主義に走るあまり、観客に迎合したような、昔のアニメとかドラマとかをCG満載にリメイクしてお父さんもお母さんも子供たちも楽しめて、そしてそれでは飽き足らずジャニーズのアイドルを多用したので若い女の子たちも楽しんでくださいね的な、観客に媚びまくったような軟弱な体たらくぶりに正面から挑戦するような、中島哲也監督の猛毒エンターテイメント。もう、その一本、筋が通ったような彼の信念は大好きです。人間の悪意や偽善、そして集団心理のとてつもない残虐性といった、深くて重たいテーマを扱いながら、ちゃんとエンタメ映画として一級品の作品に仕上がっているところは、本当に素晴らしい。思春期の少年少女たちの誰もが孕む、少しでも触れたら壊れてしまいそうな狂気の世界を陰鬱に、そして美しく描きながら、最後はそんな身勝手な子供たちに、松たか子演じる教師が全ての大人の代表として鉄槌を下す。「なーんてね」なんていう中2病的な逃げが、どれだけ卑怯かを分からせるために……。冒頭の、牛乳パックが転がって中身が零れるシーンから、そんな素晴らしいラストまでぞくぞくするような緊張感が一切途切れない、中島哲也監督の傑作。
[DVD(字幕)] 9点(2012-05-17 01:50:30)
27.  オフィサー・アンド・スパイ 《ネタバレ》 
19世紀フランスで実際に起きた冤罪事件を元に、巨大な権力に立ち向かったあるスパイの闘いをリアルに描いた歴史サスペンス。監督は、数々の賞に輝く名匠ロマン・ポランスキー。さすがベテラン監督だけあって、その円熟味を増した演出はもはや匠の技。非常に複雑でしかも基本地味なお話なのに最後まで観客を惹き付けてやまないストーリーテリングの巧みさは素晴らしいと言うほかありません。DNA鑑定はもちろん、指紋鑑定すらない時代に、ただひたすら破られて捨てられた機密文書を入手し気の遠くなるような手間と労力をかけて再現してゆくところなんて凄いとしか言いようがない。んで、肝心の証拠となるのは、専門家とは言え一人の人間が行う筆跡鑑定のみ……。そりゃ冤罪も生まれますわーー。でも、主人公はただ社会正義の為にそしてかつての教え子の冤罪を晴らすために孤軍奮闘してゆく。保身に走る上層部、主人公を陥れようという同僚たち、そして明らかとなる主人公の不倫スキャンダル……。それらのドラマが後半になるにしたがって加速度的に盛り上がっていくところはもはや圧巻。背景にある、根強いユダヤ人差別の問題にもちゃんと目を向ける監督の目線の鋭さにも感心させられます。そして迎えるほろ苦い結末。歴史の巨大なうねりの中で今はもう忘れられてしまった無名の人々の人生に改めて光を当てるこの物語の深い余韻に、自分はしばらく浸っておりました。最後まで充分見応えのある歴史ドラマの秀作、お薦めです。
[DVD(字幕)] 8点(2023-09-06 09:35:24)
28.  ゾンビーワールドへようこそ 《ネタバレ》 
子供の頃に入隊したボースカウトを未だに続けている高校生、ベンとカーター。2人の大親友でスカウトが生きがいのオギーの手前、今すぐ辞めたいとはとても言い出しづらくもはや惰性で続けていた。そんなある日、2人はクラスのイケてる女子に今夜開催される秘密のパーティーへのお誘いを受けるのだった。しかもそこにはヤリ〇ンで有名な女の子もたくさん出席するらしい。「これで俺たちも童貞卒業だ!!」。降ってわいた事態に思わず浮足立つ2人。でも、今夜は前々から約束していたオギーとのキャンプの日。考えた末に彼らは、オギーが寝静まった夜中にキャンプを抜け出し、パーティー会場へと向かう計画を立てる。だが、彼らは知らなかった。同じ頃、近くのバイオ研究所から大量のゾンビが逃げ出し、付近の住民に手当たり次第襲い掛かっていることを――。偶然知り合ったストリップバーのセクシーなお姉さんとともにゾンビが支配する町を脱出しようとする2人。ところがパーティーにはカーターのお姉ちゃんも出席していた。事態を知ったオギーとも合流した彼らは、ボーイスカウトで身に着けた様々な技術を駆使し、パーティー会場へと向かうのだが……。冴えないボーイスカウト3人組が大量のゾンビどもと戦う姿をコミカルに描いたサバイバル・アクション。とにかく面白かったです、これ!!冒頭のいかにも殺され要員のアホアホな清掃員がゾンビに喰われるシーンから掴みはバッチリ。続いて登場する主人公3人組のいかにも童貞というイモ臭い感じがもうサイコーでした。奥手な主人公とおっぱいのことしか頭にない友達とのおバカな会話も終始ニヤニヤが止まらなかったです。そして襲ってくる大量のゾンビたちとの死闘!どれもお約束のベタなものばかりでしたが、どれも見せ方が凝ってるので最後まで飽きさせない。ゾンビに囲まれているのに巨乳ゾンビのおっぱいは一応揉んどくあいつとか、トランポリンでおじさんゾンビのあれを命綱にしちゃう主人公とか、スカウトの隊長の家でトイレを借りる太っちょのあいつがトイレットペーパーを重ねて置いて使うとか、細かいネタがいちいち面白い。あと、好きな女の子の部屋でパーティー会場を記した日記を捜すシーン。女の子の下着がたくさん入った引き出しに動揺して思わず閉めちゃう主人公なんていかにも童貞ぽくて大変グッド(しかも結局日記はこの中にあったし!笑)。白いタンクトップにホットパンツというお約束な格好のおねーさんがお色気ムンムンなのもポイント高い。彼らが最後、ホームセンターで拵えたお手製武器でゾンビの巣窟へと乗り込むシーンは、ベタですけどやぱ最高にテンション上がっちゃいました!この3人のなんだかんだ仲間思いなとこもよいね~。うん、なかなか面白かった!8点!
[DVD(字幕)] 8点(2022-11-28 06:33:58)(良:1票)
29.  Swallow スワロウ 《ネタバレ》 
超一流企業の御曹司と結婚し、誰もがうらやむような生活を手に入れた専業主婦ハンター。ニューヨーク郊外の一等地に建つ豪邸に住み、自由気ままな日々を過ごしている彼女は、最近妊娠が判明し、これからますます幸せになることが約束されていた。だが、横柄でプライド高い夫は常に仕事が第一で妻の話などろくに聞こうとしない。何かと干渉してくる夫の両親も結局、産まれてくる子供にしか興味がない。そんな実は孤独で満たされない毎日を過ごしていたハンターはある日、ふとした好奇心からガラス玉を吞み込んでみるのだった――。次の日、トイレでようを足してみると、そこには昨日吞み込んだガラス玉が何事もなかったように存在していた。何かをやり遂げたような充実感を味わったハンターは、その日から次々と異物を呑み込んでゆく。画鋲、口紅、小さな置物、そして電池……。当然、それは夫とその両親にも知られることとなり、ハンターは無理やりカウンセリングと24時間監視する介護人をつけられてしまう。それでもハンターは、何かを呑み込みたいという衝動を抑えることが出来なかった……。異食症という心の病に侵された専業主婦の孤独な日常を美しい映像で綴ったヒューマン・ドラマ。今回この作品で異食症なるものをはじめて知りましたが、いやー、ちょっときつかったですね~。ビー玉や安全ピンまではまだ耐えられましたが、剝き出しの画鋲を呑み込んじゃうシーンとそれをトイレで排出するシーンはさすがに痛々しく観てられませんでした。血がべちゃっと付いてる便器の中に手を突っ込んで画鋲を探すとか正直、「誰得やねん、この映像!」と思わず停止ボタンを押しそうになっちゃいましたわ。でも、色彩感覚あふれる映像や知的でおしゃれな音楽の使い方など、全編にわたって監督のセンスをビシバシ感じるのでついつい観続けることに。すると中盤、主人公の衝撃の過去が明らかにされ、そのトラウマからこのような行動に走ったのだと分かると俄然、作品世界に惹き込まれている自分がいました。なるほど、これは男の身勝手な欲望に振り回される女たちの切実な哀しみに寄り添った物語だったのですね。女は子供を産む機械だと思っているような男たちへの一種の復讐として異物を呑み込んでしまう主人公。子供なんか産みたくないのに男のために仕方なく子宮を差し出した自分への罰という側面もあるのだろう。最後、様々な女性たちが行きかう女子トイレの映像で終わるのも良いセンスしている。そう、女はそれぞれに男が知らない悩みを抱えているのだ。とは言え、生理的に受け付けないシーンが幾つかあったので自分はもう一度観るのはちょっときついです。この監督の才能は確かだと思うので、次は違うテーマの作品を観てみたいですね。
[DVD(字幕)] 8点(2022-05-04 05:45:56)
30.  ブラックバード 家族が家族であるうちに 《ネタバレ》 
アメリカ郊外ののどかな田舎町に建てられた一軒の豪華な邸宅。そこで暮らすのは、医者である夫と二人で暮らす初老の女性リリーだ。ある日、そこに彼女の二人の娘、ジェニファーとアンナがそれぞれ夫とパートナーを伴って帰ってくる。目的は、週末のディナーをともに過ごすため。孫にあたるジェニファーの息子やリリー夫妻とずっと親友関係にあるリズという女性も加わり、楽しい夜になるはずだった。だが、彼らの表情は何処か不安げで隠し切れない哀しみに満ちている。何故なら、夜が明けるとリリーはもうこの世に居なくなってしまうから――。彼女は徐々に全身の身体機能が失われ、半年後には完全なる植物状態になることが分かっており、身体の自由が利くうちに自ら人生を終わらせることにしたのだ。そう、これはリリーが最後に過ごす家族水入らずのディナー。夫も二人の娘たちも母親の決断を容認し、最後は穏やかに逝かせてあげようと決意したはずだった。だが、夜も更けてゆくとそれぞれに抱え込んだ思惑が抑えきれなくなり、とうとう爆発してしまう……。尊厳死を決断した女性とその家族の最後の夜を淡々と見つめたヒューマン・ドラマ。アカデミー賞の栄誉に輝くベテラン女優スーザン・サランドンとケイト・ウィンスレットがそんな確執を抱えた母子を熱演しております。難病に侵された女性の尊厳死という大変重いテーマを扱っていながら、全体に漂う空気はほのぼのとしていてこのギャップが何とも言えない気持ちにさせられますね。死を決意した祖母を演じるスーザン・サランドンの、悲愴感を漂わせながらも微塵も同情を求めていないその凛とした佇まいがとても魅力的。彼女とケイト・ウィンスレットとのそれぞれの思いがぶつかりあう濃密な演技合戦はとても見応えありました。そして今回意外だったのは、次女役のミア・ワシコウスカ。精神的に不安定で自殺未遂を繰り返す問題児をリアルに演じていて、この二人に負けず劣らずの熱演を見せてくれます。この人、いつの間にここまでの実力をつけたんでしょうね。内容の方は、もちろん非常にデリケートな問題を扱っているので当然賛否が分かれるところ。でも僕は、善悪の彼岸を越えた、「永遠に分かり合えない家族の切なさ」を感じてとても心に染みました。最後、それでもそんな分かり合えない家族の元へと帰ってゆく登場人物たちの後ろ姿が何とも切ない。シリアス版『8月の家族たち』とも呼ぶべき、深い慈愛に満ちた良品と言っていいでしょう。
[DVD(字幕)] 8点(2022-01-07 02:00:50)
31.  炎の裁き 《ネタバレ》 
1991年、12月23日。テキサス州、コルシカナにおいて一軒家を焼く火事が発生する。子供部屋で出火した炎は瞬く間に家全体へと拡がり、手の施しようのないまま全焼してしまう。当時家に居たのは失業中の父親トッドと、産まれたばかりの赤ん坊を含む3人の幼い子供たち。母親のステイシーは夜勤に出ていてまだ帰宅していなかった。消防車が来るまで懸命に子供を助けようとしたトッドだったが、炎の廻りは予想以上に早く、不幸にも3人の子供たちは帰らぬ人になってしまうのだった――。当初は被害者として扱われていたトッドだったが、その後事件は予想外の展開を見せる。なんとトッドが、自らの子供3人を焼き殺した放火犯として逮捕されたのだ。そうして始まった裁判では、トッドの過去の犯罪歴や妻に暴力を振るう粗暴な言動、そして彼と揉め事を抱えていた隣人たちの証言によって追い詰められ、最終的に彼は死刑判決を受けてしまうのだった……。果たしてあの日、いったい何があったのか?彼は本当に娘を殺したのか?そして彼はこのまま死刑となってしまうのか?実話を元に、そんな痛ましい火事の真相を巡って翻弄される人々の葛藤を描いた法廷劇。という、冤罪の疑いのある死刑囚の再審請求を巡るお話なのですが、普通ならここで彼の事件の再調査を担うことになるのは理想に燃える若手弁護士と相場は決まっているもの。だけど今回、この事件の再調査を行うのは何処にでもいるような平凡なおばちゃんというのが本作のミソ。もちろん頑張って裁判記録や当時の証言者に当たってみるのだけど、死刑反対派ってだけの何の権限もない単なるおばちゃんなので、そりゃもちろん調査は難航するわけですよ。しかも彼女だって自分の子供たちまで巻き込んでるわけですから、そりゃ世間の白い眼を浴びて当然。それでも地道な調査の結果、彼の冤罪の可能性が濃厚となり、決定的な証拠も掴めそうになるクライマックスは非常にサスペンスフルで見応え充分でした。死刑執行が明日に迫る中、ぎりぎりのタイミングまで尽力する主人公。きっと最後には執行延期の連絡が届くはず……。でも、ここで大きくネタばれすると、物語は非常に重い結末を迎えてしまいます。果たして何が正しかったのか?自分は死刑存置論者ですが、それでもこの結末は深く考えさせられました。監督は、社会性の強いエンタメを得意とするエドワード・ズウィック。彼の演出力は相変わらず高く、特に死刑囚独房で幻想の娘と一人会話を交わすトッドには胸打たれるものがあります。当初はこのトッドに冷たく当たっていた看守が次第に彼に同情を寄せていく描写も巧い。ただ最後、テキサスの共和党知事の実際の映像を流すシーンは非常に政治的主張が強いので、恐らく賛否が分かれるところ。自分はちょっとやり過ぎに感じてしまいました。とは言え、いろいろと考えさせられる密度の濃いヒューマン・ドラマの逸品と言っていいでしょう。
[インターネット(字幕)] 8点(2021-11-22 07:33:31)
32.  ビバリウム 《ネタバレ》 
そこは一度迷い込むと二度と出てこれない新興住宅地――。トマとジェムは、結婚を間近に控えた若いカップル。まだ収入も安定していないし子供も居ないが、それでもこれから幸せいっぱいの生活が待っているはずだった。将来を見越し、新居を購入しようと彼らは街の不動産屋へと足を運ぶことに。対応してくれた何処か風変わりな営業マンの案内で彼らは郊外の新興住宅地「ヨンダー」へとやってくる。そこは、同じような緑の家が何処までも立ち並ぶ生活感の一切感じられない謎めいた町だった。無事に内見を終え、すぐに帰ろうとするトマとジェムだったが、いつの間にか営業マンの姿が消えていた。不審に思いながらも自らの車で帰途に就いた二人。だが、いつまで経っても元の街並みへと抜け出すことが出来ず、気付いたら紹介された9番地の家へと舞い戻っていた。戸惑いながらもその9番地の家で夜を明かした二人に、更なる異常事態が襲う。なんと家の前に置かれた段ボールに、誰の子か分からない男の赤ん坊がいれられていたのだ。しかもそこには「無事にこの子を育て上げたら開放する」との謎のメッセージが。果たしてここは何処なのか?突然の不条理な事態に二人の精神は次第に崩壊してゆく……。カッコウが他の鳥の巣に自らの卵を産み育てさせるといういわゆる托卵という習性をモチーフに、突然異常な状況へと陥った若いカップルを描いたシュルレアリスム劇。そんな期待せずに今回鑑賞してみたのですが、いやいや、これがなかなかエッジの効いた演出の力が光る不条理劇の逸品に仕上がっておりました。とにかく映像のセンスが抜群に良い!どこまでも続く生活感を微塵も感じさせない緑色の住宅、マグリッドの絵を髣髴とさせる作り物感が半端ない雲、まったく美味しそうに見えない食事…。どれもが不気味で生理的嫌悪感がいい意味で凄いです。特に、二人が育てることになる男の子。言っちゃ悪いですけど、よくここまで可愛くない子供を見つけてきたもんですね。この子がずっと自分たちの物まねをしたり、思い通りにいかないことがあると金切り声をあげたり、意味の分からないテレビの映像に延々と見入っていたりともはや殺意を覚えるくらい可愛くない(笑)。極めつけは、途中でカエルやある種の鳥のように喉を膨らませて雄叫びをあげるシーン。こんなに気持ち悪い映像、久しぶりに見ましたわ。肝心の内容は典型的ないわゆる不条理劇なんですけど、そこに何処か乾いたユーモアがあるところはカフカよりも安部公房に近いのかな。後半、物語はまさにこの訳の分からなさをどんどんと加速させ、徐々に崩壊してゆきます。文字通りぐちゃぐちゃに空間が捻じれてしまった家の中での主人公と子供の追いかけっこなんてセンス抜群!いやー、面白かったですね、これ。まあ悪趣味全開ですけど(笑)。今から将来が楽しみな新たな才能に出会えたような気がします。
[DVD(字幕)] 8点(2021-08-21 01:31:14)
33.  グッド・ボーイズ(2019) 《ネタバレ》 
現在、思春期真っ只中の12歳の男の子、マックス。近所の仲の良い友達二人と「ビーンバッグ」というグループを組み、ひたすらカードゲームとエロ話に明け暮れる冴えない毎日。ネットでエロ画像を検索してその生々しい内容にショックを受けたり、近所の高校生カップルを覗き見してるのを見つかって追いかけまわされたり…。そんな悶々とした日々を送っていたマックスはある日、ビッグ・ニュースを耳にする。なんと前から気になっていた女の子が明日の夜、クラスメイトたちとのパーティーでキス・ゲームに参加するというのだ。「大変だ!!憧れのあの子が、誰か他のヤツとキスしてしまうかもしれない!!」――。それを聞いて頭と何処かが爆発しそうになったマックスは、とにかく彼女の唇を守るためにビーンバッグのメンバーとともにパーティーへの参加を決意するのだった。でも、キスなんてどうやってしたらいいか分からない。勉強のために、お父さんの仕事用のドローンを使い、近所のヤリ〇ンで有名な女子高生の家を観察することを思いついたマックスは、さっそくビーンバッグのメンバーを集め、作戦を実行に移すのだった。だが、呆気なく反撃に遭った彼らは逆に彼女たちに弱みを握られてしまい……。思春期を迎えたばかりの男の子が、憧れの女の子とキスするために繰り広げる大冒険を下品なギャグ満載で描いた青春コメディ。天才子役として人気を集めるジェイコブ・トレンブレイ君が、そんな悶々少年を演じているということで今回鑑賞してみました。まあ全く期待していなかったのですが、意外や意外、なかなか面白いじゃないですか、これ!!子供にこんなことさせていいのかってくらい、お下品なネタがてんこ盛り。でも、それがいちいち笑えるのがナイスですね~~。少年たちが大人のおもちゃを手にあーだこーだ言うとこなんて思わず笑っちゃいましたわ。好きな子に渡すネックレスを忘れちゃったので、代わりにアナルビーズをプレゼントするシーンなんてサイコーでした。一番笑ったのが、キス・ゲームで隣のカップルがディープキスし終わった後によだれが糸引いてるのを見て、ドン引きしている黒人の男の子!こいつ、かなりいい味出してましたわ。と、お下品100%の内容かと思ったら、最後はまさかの切ないエピソードを放り込んできていい意味で裏切られました。少年から少しずつ大人の世界へと足を踏み入れた彼らは、それぞれ自分の居場所を見つけてゆく…。永遠だと思っていた自分たちの友情が、ちょっとずつすれ違っていくというラストはなんとも切ない。キレのいいギャグで大笑いさせて、最後はほろりとさせてくれる、いわばエロ版『スタンド・バイ・ミー』とも言うべき作品。なかなか楽しませていただきました。お薦めです。
[DVD(字幕)] 8点(2021-06-07 05:07:33)(良:1票)
34.  テリー・ギリアムのドン・キホーテ 《ネタバレ》 
度重なるトラブルや資金難により、何度も何度も挫折を繰り返してきた映画『ドン・キホーテ』。何十年にもわたり、この映画の完成に執念を燃やし続けてきた鬼才テリー・ギリアムが、この度満を持して完成させることが出来ました!!いやー、長年彼の大ファンの自分としてはこれは観ないわけにはいきますまい。相変わらず支離滅裂で意味不明な内容なのに、最後まで見せきるのはギリアム御大の唯一無二と言ってもいい、この独創的な〝画〟の力。次から次へと繰り出される奇妙で摩訶不思議なキャラクターや世界観に僕は素直に圧倒されました。特に今回は、彼往年の名作『バンデッドQ』や『フィッシャー・キング』を髣髴とさせるネタが最初から最後までてんこ盛り。自らがドン・キホーテだという妄想に取り憑かれてしまった爺さんをはじめ、社会の枠からはみ出してしまった人々の乱痴気騒ぎは遊び心満載で素晴らしいとしか言いようがない。スマホやDVDが出てくる現代社会と騎士道やお城などの中世世界を自在に混在させ、最後は主人公の映画監督自身がドン・キホーテの妄想に取り憑かれていたという完璧なオチ。生粋のギリアムファンの自分としては最後までテンション爆上がりで見てしまいました。いやー、サイコーだぜ、ギリアム!!まあこれだけ待たせておいて、その割にはいまいちスケールが小さい感じは否めないですけど、僕は充分満足。とにかく今は、「ようやく完成出来て良かったね、お疲れさま、ギリアム」と言ってあげたい。
[DVD(字幕)] 8点(2021-05-25 00:44:02)
35.  FREAKS フリークス 能力者たち 《ネタバレ》 
彼女の名は、クロエ・リード。今年で7歳になるちょっと変わった女の子だ。なんと彼女は、唯一の肉親である父親から家に閉じ込められ、生まれてから一度も外の世界に出たことがないのだ。父が言う、「外の世界には恐ろしい者どもがたくさんいて、見つかろうものならすぐに食べられてしまうぞ」という言葉を素直に信じ、完全に外界から遮断された一軒家の中でずっと生きてきたクロエ。友達もおらず、ただ目張りされた窓から路上でアイスクリームを売るワゴン車を覗き見ることだけを楽しみに生きる毎日。「でも、やっぱり外の世界をこの目で見てみたい」――。いつしかそんな欲求を抑えられなくなった彼女は、ある日我慢できずに家のドアを開け、外の世界へと飛び出すのだった。果たしてそこには何があったのか?世界は本当に恐ろしいものへと変貌してしまったのか?そして、彼女に秘められた恐るべき〝能力〟とは?父親によって生まれた時から家に閉じ込められてきた少女の驚愕の真実を独自の手法で描いたSFドラマ。何の予備知識もなく、ただスピルバーグに見いだされた新たな才能といううたい文句に惹かれ、今回鑑賞してみました。最初こそ低予算感が漂っているし、奇を衒ったような演出が散見されるしで、ちょっとこれはどうなんだろうって思わせるものの、後半からの怒涛の展開には完全にやられちゃいましたね。いや、なかなかの掘り出し物ですよ、これ。とにかくこの考え抜かれた脚本の構成力!前半に散りばめられた数々の謎が全て、後半への伏線になっていたとは!いやー、これは是非ともネタバレせずに観て欲しい一本。それに映像的にもけっこうセンスを感じました。人の感情を操ったり時間を止めたりといった特殊能力を使うシーンやクライマックスでの軍人を遠隔操作するシーン(屈強なおっさんがママって言うとこなんて思わず笑っちゃいました)など、どれもすんごくカッコよかったです。特に、姿を消したお爺ちゃんが銃で撃たれ、その血が空中に滲み始めるシーンなんて、センス抜群で最高でした!スピルバーグに見いだされた才能というのも納得。この監督、すぐにマーブルあたりの大作映画に大抜擢されるんじゃないですかね。前半、状況説明をほとんどしてくれないところや父親があまりに横柄なところにちょっぴりイライラしちゃいましたが、僕は充分満足。将来が楽しみな新たな才能との出会いを素直に喜びたいと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2021-05-08 00:32:59)
36.  ナイチンゲール 《ネタバレ》 
イギリスによる植民地支配が本格化した時代のオーストラリア、タスマニア地方。些細な罪を犯し、この地に流刑となったアイルランド人クレアは、生まれたばかりの赤ん坊と優しい夫だけを頼りに懸命に生きていた。だが彼女の身元引受人でこの地を管轄するイギリス軍中尉によって、クレアはどん底へと追い詰められてゆく。中尉に夜毎何度もレイプされ、あろうことか酷い暴力まで受けていたのだ。そのことを知った夫は逆上し、中尉へと抗議するも逆に返り討ちに遭い、クレアは夫の目の前でレイプされてしまう。さらには夫ばかりか生まれたばかりの赤ん坊まで自らの目の前で殺されてしまうのだった――。「絶対に許さない!地の果てまで追い詰めてやる!」。絶望のどん底で、そう固く復讐を誓ったクレア。だが、中尉とその仲間たちは急用で森を抜けた街へと旅立ってしまった後だった。自分一人ではすぐに道に迷い、野垂れ死んでしまうのは明らか。仕方なく彼女は、現地のアボリジニを案内役として雇い、深く険しい森の奥へと分け入ってゆくのだが……。苦難に満ちた時代に、男たちの暴力によって人生を無茶苦茶にされたある一人の女性の復讐の旅路を描いたバイオレンス・スリラー。ナイチンゲールというタイトルとは似ても似つかぬ、非常にエグいシーン満載のなかなかハードな映画でありました。とにかく男たちの暴力シーンのえげつなさは群を抜いてます。女とみればとにかくレイプ、用が済むと無残にも殺しそこらに放置、家族が狂乱してやってきたらそれも殺し、泣いてる赤ん坊はうるさいからと壁に叩きつけて殺します。いや、さすがにやり過ぎやろ……(笑)。でも、なんだか妙に説得力があるのはこの監督の演出力の高さなのでしょうね。ストーリーはその後、極めてシンプルに進みます。家族を殺されたこの主人公が、同じく白人に家族を皆殺しにされたアボリジニの青年とともに森の中をただひたすら復讐のために歩き続ける。たったこれだけのお話なのに、最後まで緊張感をもって描き切ったところは素直に評価されるべきでしょう。何も悪いことしていないのに侵略され弾圧された、アボリジニの怒りや悲しみにも静かに目を向けるこの監督の目線の鋭さにも感嘆させられます。ただ、さすがに二時間越えは長い。もう少しコンパクトに出来たのでは。あと、最後の復讐劇も意外にあっさりしていて、そこまでカタルシスが得られなかったのもちょっと残念でした。まあそれがリアルだと言ってしまえばそうなんでしょうけど、さすがにこの中尉のやってることが鬼畜過ぎてもっと悶え苦しんで死んでほしかったですな。とは言え、この全編に漲る圧倒的な緊張感には素直にやられました。主人公を演じた女優の鬼気迫るような表情も素晴らしい。ちょっと甘めの8点!
[DVD(字幕)] 8点(2021-03-16 02:08:46)(良:1票)
37.  ザ・ピーナッツバター・ファルコン 《ネタバレ》 
ダウン症を患い、幼いころからずっと施設で暮らしてきた22歳の青年、ザック。家族にも見捨てられ、ずっと独りで生きてきた彼の主な話し相手は、昔話と愚痴だらけの老人ばかり。そんな生活に嫌気が差したザックは、長年の夢を叶えるためにパンツ一丁で脱出を図る。その夢とは、昔大人気だったプロレスラーの元を訪れて弟子となり、華々しくリングデビューを果たすことだった――。何とか脱出に成功したザックは途中、荒くれ者の漁師タイラーと出会う。仲間の漁師の獲物をネコババしていたことがばれ、地元を追われたという彼とザックは意気投合し、いつしか旅をともにすることに。かたやプロレスラーとなる夢を叶えるため、かたや新天地で自身の生活を立て直すため。社会のはみ出し者同士のそんな二人のどかなの旅路は、当初は順調に進んでゆく。だが、彼らを追う施設職員や地元の漁師たちが迫ってきて……。アメリカ南部の田舎町を舞台に、ダウン症の青年と貧しい漁師とのそんなのどかな逃避行を描いたロード・ムービー。非常にベタな内容ながら、この全編に漂う暖かな雰囲気は終始心地良く、最後まで気持ちよく観ることが出来ました。主人公をはじめ、ままならない現実に翻弄されながらもそれでも前を向いて生きていこうとする登場人物たちがみんな魅力的で大変グッド。荒くれ者の漁師の兄を巡る不幸な過去をさらりと描写する回想シーンのさりげなさも巧い。まあ確かに物語が都合よく進みすぎ、登場人物誰もが簡単に仲良くなりすぎといった欠点も大いに目に付く作品なのですが、それを補って余りある魅力がこの作品にはあります。その一つが主人公ザックの目的の人物であったプロレスラーの人。今や落ちぶれ酒浸りの中年となったこのプロレスラーが最初はそっけない態度を示すのですが、自分を信じてやって来た主人公のために昔の衣装とメイクを施し車で追ってくるシーン。なんとも微笑ましい魅力に溢れていて、僕は不覚にも涙してしまいました。うん、みんなカッコ悪くてしょーもなくてどうしようもない人生なのかも知れないけど、それでもみんな頑張って生きている。そんな当たり前のことを改めて思い出させてくれる、ヒューマン・ドラマの佳品でありました。お薦めです。
[DVD(字幕)] 8点(2021-03-03 01:04:55)(良:1票)
38.  1917 命をかけた伝令 《ネタバレ》 
1917年、第一次世界大戦真っ只中のヨーロッパ戦線。激しい戦闘が続くこの地で、独軍によって今まさに罠に落ちようとしている仲間たちを救うため、命を懸けて戦場を駆け抜けたある無名兵士の苦難の旅路を全編ワンカットで描いた戦争ドラマ。まず驚かされるのは、やはりその驚異の撮影手法でしょう。手持ちカメラからクレーンでの空撮、そしてまた通常の固定カメラへと流れるように続く変幻自在のカメラワークには圧倒されました。明らかにカメラマンが壁を通り抜けていたり、激しく流れる川の水の中から普通に撮っていたりと、「本当にどうやって撮影したんだろう?」と月並みな感想ながら改めて感嘆させられます。そして、それにより戦場の臨場感を生々しく描き出すことに成功している。見事というしかありません。まあ内容が内容だけに物語的な深みは一切ありませんが、監督はそういった主題を扱うことをはなから放棄しているところも潔いですね。なので、細部の細かなエピソードが重要となってくるのだけど、それがどれも自然で非常に巧い。特に、一緒に旅に出た仲間が途中、墜落した敵機のパイロットを救おうとして命を落としてしまうというエピソードはなんともやり切れない。お互い普通の人間のはずなのに、背負うべき国家のためにかくも愚かになれるのか。戦争というものの不条理性を見事に炙りだしている。サム・メンデス監督作の中では今のところ僕は一番好きですね。うん、充実した映画体験をさせていただきました。8点!
[DVD(字幕)] 8点(2021-02-19 06:30:23)
39.  ミッドサマー 《ネタバレ》 
不幸な出来事により一夜にして家族全員を失ってしまった女子大生、ダニー。以来精神安定剤が手放せなくなるほど不安定な状態になった彼女は、彼氏や友達に誘われるまま、スウェーデンへと二週間のバカンスに旅立つことに。目的は、北極圏に近い地域で自給自足の生活を続けている閉鎖的なコミューンを訪れるため。長い間外部との接触を絶ち、独自の文化と風習を継承してきたそのコミューンに、ダニーたちは戸惑いながらも徐々に受け入れられてゆくのだった。だが、二日三日と過ごすうちに彼らは拭いようのない違和感を覚え始める。みな同じ民族衣装を着てみな同じような笑顔を見せる住民たち、いたるところにある立ち入り禁止区域、明らかに幻覚作用のある物質を含んだお茶……。いつまでも太陽の沈まない白夜を迎えたこの季節、コミューンでは約90年ぶりとなる祝祭が開かれるという。なしくずし的に祝祭へと参加させられるダニーたち。やがて彼らは知ることになる。このコミューンには恐るべき秘密が隠されていることを――。長編デビュー作となる前作『へレディタリー 継承』で強烈なインパクトを残してくれたアリ・アスター監督待望の新作は、そんなカルト集団たちの恐怖を独自の手法で描いたサスペンス・スリラーでした。いやー、この監督独特のもう身悶えするようなねちっこ~~~い描写は相変わらず健在でしたね。とにかくこの世界を覆う異常なまでの白さはもう見れば見るほど気が狂いそうになりますわ。どこまでも連なる山々や緑あふれる草原、木造の掘っ立て小屋に少女たちが冠る花かんむりと、普通に見ればなんとも牧歌的な世界なのになんなんでしょう、このいやーーーな感じは。「アルプスの少女ハイジ」に完全に喧嘩売ってますね(笑)。このなんとも禍々しい世界観は男性より女性の方が嵌まるんじゃないでしょうか。倒れるまで踊り続ける少女たちやクマの毛皮を着せられた彼氏など、もはやメルヘン・ホラーといった趣きです。最後、全身花で飾られた衣装を身に纏った主人公が満面の笑みで迎えるラストシーンは、あまりにも狂気染みていて鳥肌ものでした。ただ、多少長いかなってのはありましたけど。もう少しコンパクトに出来たような気がしなくもない。それでも僕は充分楽しめました。なかなか癖が強いので観る人を選ぶとは思うんですけど、この監督の作品はこれからも要注目です。
[DVD(字幕)] 8点(2021-02-18 02:14:55)(良:2票)
40.  パラサイト 半地下の家族 《ネタバレ》 
半地下と呼ばれる、低所得者向けの賃貸住宅に住むとある四人家族。長びく不況のあおりを受け、揃いも揃って失業中の彼らは先の見えない困窮生活を続けていた。便所コウロギや酔っ払いの吐くゲロに囲まれ、スマホも近隣住民の飛ばすWi-Fi頼み、唯一の収入源であるピザ屋の内職も何かと理由をつけて買いたたかれるような屈辱的な毎日。そんな彼らが這い上がるために見つけたとっておきの方法。それは、小高い丘の上の豪邸に住む金持ち家族に〝寄生〟することだった――。浪人中の長男は、娘の英語の家庭教師として。同じく浪人中の美大志望の長女は、幼い息子の美術教師兼カウンセラーとして。失業中の父親は、主に金持ち主人の運転手として。そして母親は、住み込みで働く家政婦として。世間知らずの夫人に取り入り、もともと居た人間を追い出すようにして徐々に家族の中へと入り込む〝寄生虫〟たち。だが、異常を察知したもともとの家政婦が舞い戻ってきたことから、事態は思わぬ方向へと転がり込んでゆく……。韓国映画界を牽引するポン・ジュノ監督の最新作にして、外国語映画として初めてアカデミー作品賞を受賞した本作を今回鑑賞してみました。冒頭から流れるように続く、徹底的に考え抜かれたであろうストーリー構成は本当に素晴らしかったです。貧困に喘ぐ四人家族が、徐々にこの金持ち家族の中へと入り込んでゆく一連の流れはもはや神がかってました。細部にまで拘ったカメラワークに計算されつくした脚本、変幻自在な音楽の使い方など全てに監督の才気が漲っております。そして元々の家政婦が舞い戻って来てからのあっと驚くどんでん返しも見事にやられました。まさか寄生虫に先客がいたなんて!そこからのドタバタも皮肉が効いていて、ベタながらなかなか楽しい。そして最後はポン・ジュノらしく、貧富の格差という普遍的な社会問題へと落とし込む手腕もお見事。貧困家族がどんなに頑張っても消せなかった「臭い」の扱いなど、監督の視線は何処までも鋭く、そして切ない。エンタメ映画として観客を徹底的に楽しませておいて、最後はちゃんと社会問題についても考えさせられるという、アカデミー賞受賞も納得の良品でありました。
[DVD(字幕)] 8点(2020-10-24 00:06:10)
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