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Сакурай Тосиоさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 250
性別 男性
自己紹介 サンボリズムとリアリズムのバランスのとれた作品が好きです。
評価はもちろん主観です。
評価基準 各2点ずつで計10点
1.物語の内容・映像にリアリティを感じるか?
2.視覚的に何かを象徴できているか?
3.プロットの構成は適切か?
4.画面に映る動き・台詞や音にリズム感があるか?
5.作品のテーマに普遍性はあるか?

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21.  ヴァレリアン 千の惑星の救世主
色彩豊かな画面で繰り広げられる少年少女の冒険活劇、こんなコテコテのものを一切手を抜かず本気で作っただけでも大したものだと思います。リュック・ベッソンの仕事で一番感心したかもしれません。アバターに真っ向から勝負を挑んだような作品って他にないでしょう?ハリウッドほどの予算や技術がないからってみんな諦めちゃっている。出来不出来はひとまず置いといて各国でアバターを目指したような作品が生まれてもいいはずなんですよ。アバターと比べるとこっちはコミックの感覚をそのまま映像化したような作風を試みていると思います。まあ原作は読んだことがないので憶測でしかないんですけど、アメリカ映画や日本のコミックへの影響を通して間接的には摂取していると思いますのでなんとなくは理解できると思います。テーマは本当に人を愛するとはどういうことなのか?それもほとんど台詞で説明しちゃってるから映画の構成・演出としてはダメダメなんですけどね。でも大事なことはわかりやすく言葉でちゃんと伝える意義もあると思います。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-04-06 23:29:22)
22.  キングコング2
フランケンシュタインの怪獣サンダ対ガイラが評価されてこの映画が評価されないのも奇妙な話です。CGが本格的に導入される前の時代において巨大な生物を現実にいるかのように表現するという点では最高峰の出来栄えではないでしょうか。まず冒頭のコングの手術シーン、コングほどの巨大な生き物の手術にはあれだけ大掛かりな装置が必要だという説得力のある美術が素晴らしいです。ほかにも鎖やブルドーザーのようなコングと絡む器具には実物大の大道具を用意しミニチュアと自然に連続性のあるように見せています。コングが谷底の川に流される場面では画面に虹がかかっている、これがミニチュア特撮の良さです。キングコングとレディコングがお互いを思い空を見上げるとき、必ず月がそこにある。愛してるを月が綺麗ですねと言い換える精神は普遍的なのです。美女と野獣の恋はまともに鑑賞する価値があると見なされシェイプ・オブ・ザ・ウォーターのような映画がアカデミー賞を受賞する時代でも、野獣と野獣の恋を描く作品に世間はまだまだ冷たいです。ピーター・ジャクソンやギレルモ・デル・トロのようなアプローチだけではなくギャレス・エドワーズやアリ・アッバシのような作家も存在しているのですから、劇中のリンダ・ハミルトンが言うように人間も猿も同じようなものという境地を理解していく必要もあると思います。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-03-29 23:38:06)
23.  シックス・センス
ヒーローも悪役も出さず、社会や人類を揺るがすような大きな事件が起こるわけでもない。他人に話せない秘密や小さな後悔といったどこにでもいそうな平凡の人たちのありふれた感情を丁寧に描いただけで大ヒットした、そう考えるとちょっと驚異的な達成かもしれないです。仕掛けられたギミックは大衆に訴求する最低限の娯楽性を持たせるために必要だったのでありそれほど重要な要素ではありません。偉大な州の歴史を語ろうとし悲惨な歴史を無視しようとする教師、父母が揃った家族像を前提としたCM、この二つは明らかに批判的に描写されています。マッチョとはほど遠い小児精神科医とシングルマザー家庭を主役に据えたのもハリウッドのメインストリームから距離を取る意図があったと思います。のちのM・ナイト・シャマランの作品はギミックやシチュエーションへのこだわりとドラマのバランスが悪く、物語のリアリティまで失ってしまっているのが残念です。
[DVD(字幕)] 8点(2023-03-23 23:29:15)
24.  スタンドオフ
カナダ映画らしいですがスタッフ・キャストも内容もほとんどアメリカ映画です、冒頭いきなり星条旗がたなびいております。この映画の簡素さ・静けさはただ低予算であるというだけでなくある程度の思想性も感じさせます。イラク戦争やリーマン・ショックを経験したアメリカでは既存のアクション映画のような楽観的・大量消費的ムードではいられない、そういう内省的・批評的なムードが基調にあると思います。この映画では放たれる弾丸はわずかなものですが、ほぼトーマス・ジェーンとローレンス・フィッシュバーンの視線の交錯だけで一本のアクション映画として成立させています。ガンアクションとは何かというとただドンパチするだけではなく、相手を視界に入れ自分は相手の視界から消えようとする、そういう視線の演出こそが重要なのだと気づかせてくれます。
[インターネット(字幕)] 8点(2023-03-15 23:56:45)
25.  ターミネーター
冒頭、人の頭蓋骨が機械のキャタピラによって踏み潰される場面はクライマックスでT-800の頭部がプレス器で潰されるのと対になっています。ジェームズ・キャメロンがどの程度意図したかはわかりませんが、未来から武器を持ち込めないという設定は低予算の中でリアリズムを保つためだけでなく、もう既に人間は車や銃のような簡単に人を殺すことのできる機械に囲まれて生きているという事実を浮き彫りにしてはいないでしょうか。最終的にこの映画で人間は現代の機械の力を借り未来の機械に辛くも勝利するわけですが、ターミネーターはいわばその孫にあたるような存在なのであり、悲惨な未来は現代の延長線上にあるのです。次作では残されたマイクロチップがスカイネットの起源であると設定し、それを何とかすれば救われるという安易な解決策を提示してしまったことで、単純なエンターテインメントとしては良いのかもしれませんが文明批評的側面が弱まってしまったと思います。
[DVD(字幕)] 8点(2023-03-07 20:12:37)(良:1票)
26.  恋するトマト
この映画はタイトルで損をしていますね。もう少し深刻さを感じさせるタイトルだったら注目度も評価も上がったはずです、少なくとも副題のクマインカナバーをメインタイトルにするべきでした。しかしちゃんと御覧になった方々は高く評価されてるようで何よりです。①非現実的な設定がなく、善人でも悪人でもない平凡な人間の物語である。②登場人物が日本人に限られず多国籍である。③現代社会に対する批判性がある。④その上で作家性を押し出したような作風ではなく親しみやすいエンターテインメントとして成立している。現代の日本映画でこの四つの条件すべてを満たす作品を見つけることは困難ではないでしょうか。やや主人公に都合の良い展開や安易なオリエンタリズムのきらいがあるのは認めざるを得ませんが、それでも前述の①②③④の観点から見直される価値がある映画だと思います。このような美点を持つ作品が増えれば日本映画の状況はずっと良くなることでしょう。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-03-05 22:08:58)(良:2票)
27.  REX 恐竜物語
ジュラシックパークと同じ年にこれかよ…トホホ(汗)というリアルタイムで見た方々の評価はまあ妥当でしょう。んーしかし今見ると結構悪くない出来じゃないですか?ジュラシックパークというよりは日本版E.Tという趣ですね。終盤のチェイスなんか明らかに意識してます。プロットは別に破綻していないです。子供の目を通して観た幻想的な世界としてみれば言うほど意味不明な描写も無いです。殻を破れない・子供を育てない、そういった恐竜の特徴(これも最新の研究だとまた違うんでしょうが)をうまく人間ドラマに重ねています。レックスの表情の動きも普通によくできてると思います。まあ恐竜というより犬っぽいですし、全身を映すショットだと着ぐるみの出来がこれまたトホホ…なのですが今では絶対全部CGで表現しちゃうでしょう?そう考えるととても貴重ですよ。日本だと巨大怪獣の特撮は多いのですがこのサイズでこの出来はほんと貴重です。洋画で見るような牧場のノスタルジックな雰囲気もいいですね。映画は最低限このぐらい面白ければいいという基準として悪くない作品です、割と本気でそう思います。
[インターネット(邦画)] 8点(2023-03-01 00:42:09)
28.  切腹
中身や実体を見ようともせず形式やメンツだけにこだわり人間性を奪われることへの批判がテーマですが、それを結構台詞でも説明しちゃってるのがちょっとくどいとは感じますね。それよりもすべて理解しているのに他人を痛めつけるためにさも何も知らないかのように振る舞うことの悪質さの方がより本質的な問題かもしれません。様式美とリアリズムの両立、そしてその様式美のこだわりはただ美しい構図というだけでなく武家社会の空虚さを際立たせるものとして効果的です。全体として動きの少ない中、三國連太郎の持つ扇子の立てる音がリズム感を作る良い働きをしています。しかし中盤以降の回想シーンで人間らしい感情の拠り所を家族に求めているところは、家制度自体が武士にとって重要で抑圧的なものであったことを考えるとあまりに素朴で理想化された描き方です。まあこれもこの時代には珍しく主人公がシングルファーザーである特殊なシチュエーションなのでそこまであげつらうべきではないのかもしれませんが、不幸に比べると幸福についての描写は陳腐なものになりがちなのだと痛感しますね。
[インターネット(邦画)] 7点(2023-10-29 23:54:34)(良:1票)
29.  ALWAYS 三丁目の夕日
ノスタルジーをくすぐるのが売りだけの安っぽいお涙頂戴ドラマ、そういう偏見もあって今までちゃんと見てなかったのですが、いざ見てみると意外とこれはちゃんとした構成と内容があって面白い作品ですね。ディテールこそ昭和懐古ですが本題は別のところにあります。この映画で描かれているのは人が嘘をつくことについてのお話です。人物が見栄を張ったり他人を思いやるために嘘をつく、ただしその嘘は必ずバレてしまうというのが基本作劇となっています。そして嘘によって劇中の登場人物は決して幸せにはなれないのです。それはサンタクロースのプレゼントや空の結婚指輪を付けてみせるといった優しい嘘についても同じなのです。その後彼らには気持ちのすれ違いや悲しい別れが待ち受けています。騙したり隠したりせずに正直に自分の気持ちを打ち明けた方が本当の信頼関係を築け、幸せにもなれるというのが作品のテーマですね。初めてテレビが映る場面や迷子になってからの再会場面でいかにも音楽の調子も含めて泣かせに入っているように見せつつも最後はちゃんと笑いで落とす、この辺のバランス感覚もちょうどいいですね。劇中の時間経過がちょうど四季の移り変わりに合わせてあるというのはそれほど珍しい発想でもないのですが、ベタながら長時間のドラマを見た満足感を与えてくれます。やっぱり評価されてる映画ってのは見どころがあるもんなんですね。まあそれでもやはり欠点はありまして、基本的に善人しか出てこないのはゆるゆるで心地よいところもあるにせよ刺激が少なくて物足りないのは否めません。
[インターネット(邦画)] 7点(2023-10-27 22:49:37)
30.  ハンナ
ジョー・ライト監督の作品の中では文学作品の映画化よりも映画らしい内容でいいと思います。シンプルにこの映画の魅力を言いますと主人公のハンナ(シアーシャ・ローナン)がかわいくて強いということに尽きますね。アート風味を利かせているだけで内容はただのアクション映画でしかないんですが、とにかく絵作りと編集に凝っているので常にどんな画面が出てくるか先が読めない楽しさがあります。タイトルの出し方もカッコいいです。冒頭の雪原ではらわたを取り出すのは帝国の逆襲でモロッコのロケーションも妙にスターウォーズっぽかったり、ラストはグリムの家だったりと神話やおとぎ話を連想させるようなところがまたいいんですよね。登場人物に感情移入させるような作りになっていないのも意図してのことではないでしょうか。全体的にストーリーよりも雰囲気を楽しむタイプの作品なのでそこは好き嫌いが分かれるのでしょうけれど私は気に入りました。ケイト・ブランシェットの役はなんだか間抜けでコミカルなところがあります、血まみれの歯磨きとか何なんでしょうか(笑)。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-09-18 23:46:57)
31.  GHOSTBOOK おばけずかん
サニーマックレンドン以外にも教室にはハーフっぽい子がいましたね、こういう特に題材上必要でない場合でも多人種的なキャスティングはこれからどんどん増えていくでしょうしそうあるべきですね。学校の怪談の現代版…と思わせて作品の雰囲気が一番近いのは平成モスラかもしれませんねー。内容は子供向けなんですがその辺りに映画の原体験がある方はすごく楽しめるのではないでしょうか。山崎貴監督は昭和ノスタルジー作品はずっと作ってきたのですが、この頃の懐かしさを感じさせる作品も作れたんだなと感心しました。まあデビュー作がジュブナイルですからね、ようやく初心に帰れたとも言えます。山崎貴監督はこういう作品ばっかり作っていれば誰も不幸にならずに済んだのに、こういう作品ばかり作り続けられないのが不幸な時代ですね。確かに陳腐で新鮮味のない描写だなーと思うところもありますが、劇中に出てきたカレーや麦茶が美味しそうだったり、ところどころでクスリと笑えたり終盤盛り上がるところで盛り上がってちょっと切ない感じで終わる、映画ってのはそれで十分なんです。残念ながらこの映画はあまりヒットしなかったみたいですが、去年劇場で小さなお子さんがお母さんにこの映画のグッズを買ってもらう場面を見かけました。届くべき人に届いたならそれでいいんだと思います。
[DVD(邦画)] 7点(2023-08-12 18:38:56)(良:1票)
32.  特別な一日
古臭い不倫ドラマかなーと思って見ていたらあーそういうオチなんですね。これはむしろ現代の視点で見た方がより高く評価されるタイプの作品だと思います。単にファシズムによる弾圧という範囲を超えた男らしさや女らしさにまつわる抑圧がテーマとなっているからです。二人の個人的な出会いと対比させるためとはいえラジオのプロパガンダ放送が序盤からずっと流される演出にはちょっと単調さも感じてしまいました。冒頭5分近くも記録映像を見せる必要性もあまり感じません。舞台のもぬけの殻となった街の光景はヒッチコックの裏窓も想起させるところもあり単純にワクワクするものがありますね。何かが変わってしまったが変わらない日常を生きていくしかない、余韻を残すラストも素敵です。
[DVD(字幕)] 7点(2023-07-11 23:04:23)
33.  街の灯(1931)
哀しいですけれど現代が舞台だとマッチングアプリでプロフィール盛ってましたみたいなペーソスもへったくれもない話になっちゃいそうですね(笑)。物語も技法も素朴すぎるのは否めませんが、サイレント映画という古びてしまった形式が却っておとぎ話のようなストーリーに説得力を持たせているとも言えます。既にこの映画の製作時にはトーキーへ主流が移りつつあったのでチャップリンもある程度自覚して生まれた時点で古典でもあるような作品を目指したのではないでしょうか。完璧な映画だとは思いません。観客を飽きさせない工夫としてロマンスやコメディだけでなくボクシング映画やギャング映画の要素まで取り込んだ盛りだくさんの内容になっているのは悪くないのですが、個々のギャグはナンセンスというだけでそれが物語の進行上意味のあるものではなく不要と感じてしまうところも多いです。金持ちの男と何度も遭遇するのも偶然にしてはできすぎていて不自然です。黒人のボクサーがカットによって起き上がっていたり倒れていたりするシーンは明らかに編集ミスです。それでもこの映画のラスト5分間はここだけのためにでも見てよかったと思わせるものです。複雑な心理を描くことに成功した切ないクライマックスです。このラストシーンには台詞を一つ加えることも削ることもできません。
[DVD(字幕)] 7点(2023-07-08 23:26:56)(良:1票)
34.  37セカンズ
佳山明のか細い声は彼女の性格と今までの人生が伝わってくるような印象を与えます。ミニチュアのように見えるかのように撮られた空撮シーンがリアリズムから離れた感覚を覚えさせます。子どものように小さく振舞わざるを得なかった彼女の世界を垣間見ているようです。良い意味で普通の作品です。このぐらいの作品が特別な傑作扱いではなく毎年1、2本は作られる状況になるのが理想だと思います。世界レベルの映像作品に必要なのは何も精密なCGや派手なアクションではなく、タブーを恐れない題材の選択と役に合った自然なキャスティング、そしてテンポの良い編集があれば十分なのです。ただ全体としてドラマ性が希薄で各シーンの関連が見えづらいゆるい構成は一般的な日本映画の脚本から大きく逸脱しておらず、障害者も普通の人と変わらないことや37セカンズというタイトルの由来を言葉で説明してしまう台詞への依存度の高さはちょっとダメな日本映画らしさを感じてしまいました。技術的な面や題材の選択という点では優れていても構成力の弱さがこの作品に限らない現代の日本映画の課題とは言えます。
[DVD(邦画)] 7点(2023-07-03 23:58:04)
35.  機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
昔はメカアクション目当てでしか見てなかったんですけど、改めて見直すとひえ〜こんな内容だったんですね。かいつまんで言うと自分が本当に好きな人には決して好きになってもらえないというお話です。自分を好きになってくれる人を好きになれたら幸せになれるのにそうすることができない、徹底して人と人の分かり合えなさを描いた映画です。一方が一方に勝手に理想像を投影してそれに応えようとする苦しみ、応えることができない苦しみ、応えてくれない苦しみ。「うちなんか、家族で地球にいたんだよ」クェスのこの台詞のどうしようもない寂しさ。スペースノイドの期待を背負わされながらこれでは道化だよという愚痴をこぼすシャア、ナナイもなんとか応えようとしているが本当はシャアの母親代わりをやれる強い女じゃない。アムロが人類に絶望しないのは実は人類に対して大きな期待もしていないことの裏返しではないでしょうか。
[インターネット(邦画)] 7点(2023-06-30 22:55:40)
36.  恐怖のまわり道
映画史上最もジム・トンプスンの小説の雰囲気を再現することに成功した作品ではないでしょうか。しかしジム・トンプスンはこの映画の公開当時小説家としてデビューしたばかりなので逆に影響を与えたと考えるべきなのでしょうね。それってつまり当時のパルプ小説の一番文学的な部分を拾い上げることに成功したということであって低予算の中で映画の本質に迫った作品というのはずれた評価だと思います。全編に渡りモノローグが多用されているのも低予算を誤魔化すためでしょうし、この映画の面白さって台詞の良さに大きく依存しているわけです。奇跡的に脚本の出来が良いだけでエドガー・G・ウルマーの演出は当時のハリウッドの中で飛びぬけて優れているわけでも異常でもないと思います。単に信頼できない語り手の手法を用いた映画を求めるだけなら1940年代あたりの文化に思い入れがない現代人ならばメメント等を見た方がいいでしょう。ただアルとスーとの電話では相手の応答は全く聞こえずまるで一人語りをしているように見える演出はすごいですね、これも上映時間を短くするための省略がたまたまそう見えるだけかもしれませんが。トム・ニールの童顔と倦怠感の釣り合わない感じが役のイメージにピッタリで素晴らしいです。アルとヴェラとの口論を見ているとフィルムノワールとラブコメは実は紙一重のジャンルなのかもしれないとも思えてきます。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-06-04 20:29:04)(良:1票)
37.  夕陽のガンマン
何よりこの映画はファッションがいいですよね、脇役に至るまでとても野蛮な連中とは思えないほど(笑)見事な着こなしと小物へのこだわりだと思います。さすがイタリア人の映画といったところでしょうか。殺伐とした金の奪い合いでありながらオルゴールの音色が示すように物語の底には哀しみが流れています。大切な人がいなくなってしまった世界で自分はどう生きればいいのか、それがこの作品以降のセルジオ・レオーネ作品に通底するテーマです。モーティマー大佐(リー・ヴァン・クリーフ)もインディオ(ジャン・マリア・ヴォロンテ)も本当は金のことなんてどうでもいいのです、彼らは己の欲望に突き動かされて行動しているわけではありません。金よりもずっと大事な人が死んでしまった後では賞金稼ぎも強盗稼業もすべては暇つぶしの戯れでしかなく、だからどこか大人が子どもじみた悪ふざけをやっているような感覚が付きまといます。そうした諦観があるからこそ、この映画は大人の寓話であり続けていると思います。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-05-25 23:41:45)(良:2票)
38.  こちらあみ子
物語自体は暗いものでもシュールでコミカルと感じさせるバランス感覚が絶妙ですね。序盤から何となく相米慎二監督のお引越しを思い出しながら見ていたんですが、ラストの水場のシーンを見る限りこれは明確にオマージュしているのではないでしょうか。カメラワークもロングショットの長回しが目立ちますが技巧そのものが突出しているわけではなく好感を持てる一方、もうちょっと凝った演出も見たかったと物足りなさを感じなくもないです。大沢一菜の演技は田畑智子を超えてるかもしれませんね。お引越しのラストは少女の成長を象徴したシーンという見解が有力なようですが、この映画はそれとは真逆のどんな経験を経てもそれを糧とすることができず成長することができない性質として生まれた人間の至る悲劇と言えます。そしてそれを正当化するわけでも悪いものと糾弾するわけでもなく、自分は自分なのだからただそういうものとして受け入れて生きていくしかないのです。
[DVD(邦画)] 7点(2023-05-21 23:14:51)(良:1票)
39.  ノースマン 導かれし復讐者
ロバート・エガース監督の前作ライトハウスは大した内容もないのに無意味に難解ぶったつまんないアート系映画としか思えずこの映画も全然期待していなかったのですが、今回は下手に捻ったところのない王道の復讐劇で普通にエンターテイメントとしても楽しめる作品に仕上がってますね。アイアムユアファーザーならぬアイアムユアソン、クライマックスの決闘はシスの復讐ばり。ハムレットっぽい展開だと思っていたらハムレットの元となった伝説の映像化なんですね。個人の意思ではなく運命によって駆動する物語、下手に現代的なテーマや視点は持ち込まずに神話の世界を忠実に再現しています。寒々しいモノクロに近い世界に炎の暖色が映えて美しい映像です。妙に芝居がかった台詞に単純な心理描写は冷静に考えるとなんてバカバカしいんだろうとも思えてきますが(笑)、こういう古典劇のような現代人の感覚から距離が取られた作品でしか味わえない感動もあります。
[DVD(字幕)] 7点(2023-05-20 21:48:04)
40.  メメント
この映画が高く評価されるのは単に構成が練られたミステリーというだけでなく、現実というものに対して人間が持つ認識の再現に成功している点にあると思います。私たちは劇中の主人公のような症状がなくとも日々の生活の中で自分の記憶を信じられずにメモを取ることは珍しいことではありません。一瞬一瞬の現実はそれぞれバラバラの断片でしかなく後からそれをストーリーとして再構築しているわけです。そうした感覚は時代の経過によって古びるどころかインターネット時代になってより高まってすらいるのではないでしょうか。クリストファー・ノーラン監督の作品に関してはむしろ近年の方がフィルムやCGを使わないというこだわりも含めて古臭くどこか時代からずれてきている印象を受けてしまいます。最近の作品がどこか違和感を感じさせるものになっているのはCGを使わないことによる映像の真実性への追求と、記憶や時間軸の不確かさへのこだわりといった作家性が矛盾していることが原因ではないでしょうか。せっかく過去を舞台にしたダンケルクでも記憶と記録の不確かさをテーマに据えずに安直に時間軸操作を加えただけの作りになっていたのにはがっかりでした。ダークナイトが成功して下手に大作志向になってしまったのはこの監督にとって不幸なことだったのかもしれませんね。
[インターネット(字幕)] 7点(2023-05-13 23:33:26)
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