41. 乱暴と待機
登場人物は4人の男女。映画の大半はほぼ一室で繰り広げられる。原作はあの「劇団、本谷有希子」の本谷有希子だ。なるほど舞台劇のような設定。とは言ってもその一室の窓を割って小池栄子を乱入させる痛快さは映画ならではの興奮があった。セリフも大袈裟で説明っぽいのだが、何故だかあまり不自然さを感じない。小池栄子の説明を帯びた怒声は説明を帯びることによって攻撃力を確実に増大させているし、山田孝之の説明を帯びた口説き文句は説明を帯びることによって断れない状況を確実に作っている。にしてもあと二人、美波と浅野忠信のギャグのような誇大演技はどうよ。この二人は変な人なんだけど、変を通り越して浮いている。その立ち過ぎたキャラによって映画館ではそこそこに笑いをとってたんだけど、その笑い、いらんよ。美波が、男に誤解させないために着用しているスウェット上下に対し私がずっとずっと思ってたことを山田孝之が代弁してくれる。「逆効果だよ」と。とくにスウェットの上をインされた日にゃ・・・ [映画館(邦画)] 5点(2010-10-29 15:41:34) |
42. 告白(2010)
中島監督の前作『パコと魔法の絵本』と前々作『嫌われ松子の一生』に私が1点という低い点をつけているのは何もかもを映像では語らずに言葉で語っているからなんだけど、深田恭子の独り言のようなナレーションで進んでゆく『下妻物語』が6点なのは何故か。例えば『パコ~』で絵本の物語が言葉で紡がれてゆくのも『嫌われ~』で言葉が歌となってストーリーを語ってゆくのも全然かまわないのだ。大事なところ、伝えたいところまで全てを言葉にしちゃうからダメなんだ。『下妻物語』には伝えるべきメッセージなんてなく、ひたすらエンターテイメントギャグ映画だったから良かったのだ(人物の行動をちゃんと映画的に処理していたし)。そしてこの『告白』もまた登場人物それぞれの独白という言葉で進んでゆくが『下妻物語』同様にメッセージなんてものはなく、ひたすらマンガ的エンターテイメントであるから「重要なところを言葉で語っちゃう」ことを回避し、結果その部分での私の大幅減点も免れることになる。独白が必ずしも真実ではなく、イコール・ストーリとならないのもいい。が、そのことを訂正してゆくのも他の者による独白でしかないわけで、例えば少年と少女の関係が少年側からと少女側からでは全く違うということだって一つの画で現せることは出来るのだ。もちろんそれぞれの独白が違う事実を語ることに面白さがある作品なのはわかる。でもその一つの画を「伏線」として出すくらいしてくれないと、私の中での高得点はあり得ない。あしからず。 でも5点は合格点ですから。 [映画館(邦画)] 5点(2010-10-28 14:10:15)(良:1票) |
43. パリより愛をこめて
《ネタバレ》 前半は面白くない。トラボルタの目的を達成するための徹底的な傍若無人ぶりはそれなりに楽しいのだが、どこにでもあるその辺の映画からもう一歩抜け出せない。シンプルなのはいいけど、何もかもがベタすぎる(ベタは狙いでもあるんだろうけど)。ところが傍若無人でもふと心を乱したりするのがこの手の映画なのだが、主人公宅にて躊躇なく友人女性を撃ち殺すその徹底を上回る徹底振りに俄然面白くなってくる。主人公をも置いてゆく早い展開もいい。スピード感溢れる演出が最も光っていたのがカーチェイスがこれから始まろうとするシーン。サイドミラーに猛追する車がぐいんと映し出された瞬間、心が躍った。手垢のついたものを寄せ集めたに過ぎないのだが、そのことをあえて前面に出してウリにしちゃってるところがコズルイというかウマイというか・・。 [映画館(字幕)] 6点(2010-10-12 13:31:11) |
44. ソルト
《ネタバレ》 『ニキータ』『アサシン』、あと『ミッション・インポッシブル』とか70年代スパイ映画、とくに時を経て作戦が実行されるというところで『テレフォン』なんかも想起した。他にもロシア大統領暗殺シーン前は『ジャッカルの日』とかいろいろ出てくるんだけどやっぱり「ボーン」シリーズがあらゆる面で似ている。似すぎと言ってもいいくらい。でもこっちは過去を探るといったドラマはなくひたすら戦う。そして圧倒的な強さを見せる。当然特殊な訓練を受けた暗殺者なんだから強いに決まってるんだけど、その強さが半端ない。たった一人でアメリカ・ロシアの精鋭を振り回す。その人間離れした強さを一応納得させるために、幼少からの英才教育に加えて遺伝子的にもその強さの根源を提示してくれているのだが、これけっこう効いているかも。かといって訓練中のエピソードとかくどくど描かなかったのもいい。冒頭の即席の武器を作って逃げるシーンの半分焦りながらも脳みそがフル回転で導き出した動作を完璧にこなしてゆく様、高速道路を走る車の屋根から屋根に飛び移るスーパーアクション、車ごとダイビングする際の車内映像など怒涛にして頑なにアンジーの顔をしっかりと映したアクションが紡がれてゆく。コアな映画ファンにはイマイチというか駄作という専らの評判なのだが、なんつうか、このへんが映画素人ってことなのかどうか、私はアンジーその人がアクションしてます!ってのがガンガン伝わってくるともうそれだけすげーすげーと喜んじゃうみたいだ。それに「ボーン」シリーズの揺れ揺れ画面なんかよりずっといいと思った。あいつがあれだったのか!ってな米ソ冷戦時代の安っぽいスパイ映画にありがちな終盤の展開は、そういうのもういいよって思ったけど。 [映画館(字幕)] 7点(2010-10-04 19:50:16)(良:2票) |
45. 悪人
《ネタバレ》 「出会い系」というツールが結ぶ男女の出会いを発端に、一人は殺され一人は初めて人を愛する。一つの出会いが運命的な出会いとなる。それが二つあるわけだ。なんて映画的なんだろう。となると「出会い系」という安易で軽薄なツールを使う登場人物たちの孤独さを象徴するシーンの連なりがこの作品の肝となってくる。原作どおりとはいえ、GT-Rに三連メーターなんていう車オタクぶりを見せる妻夫木。居酒屋で友人に対して虚勢を張る満島。妹カップルの出て行ったあとの乱れた寝室をぴしゃりと閉める深津。それぞれの孤独を表すなにげないシーンが効果的に配されてゆく。なのに「国道のあっちとこっちを行ったり来たりするだけの人生」(正確じゃないけど、そんな感じのこと)という決定的な孤独環境をセリフにしちゃう安易さよ。「レイプされたと訴えてやる」と声を張り上げるそのときの「絶対」を連呼する満島の短絡思考表現の絶妙さに比べて岡田のわかりやすいだけの人物造形のスカスカさよ。そしてやっぱり出てきたバカの一つ覚えのようなマスコミの描き方。とどめは一生懸命に何かを語ってくる音楽の鬱陶しさ。いいところも多々あるのに、どうしてそんなことしちゃうのってのがもっとある。 [映画館(邦画)] 5点(2010-09-21 16:35:35)(良:3票) |
46. バイオハザードIV アフターライフ
2Dと3Dがあれば迷わず2Dを選ぶのだが3Dしかなかったのでやむなく。で、見て思うがやっぱり3Dの必要性がさっぱりわからん。ま、そこは置いとくとして。序盤のアリスの大群がなんだか笑いを誘う。お話はシリーズ最高のバカバカしさでなんの捻りもない。てなところがけっこう好きだったりするのだが、アクションまでもが単調でつまらないというのはいかん。スローモーションで見せるならもっとあり得ないアクションを見せてほしい。じゃなければスローにせずに生身のガチンコを見たい。この設定でバイオレンスやエロスが無いのは実に不自然なんだけど、興行上、ゲームから流れてくる低年齢層も考慮してR指定にならないように作られているのだろう。だからこそもっとアクションに力入れようよ。 [映画館(字幕)] 4点(2010-09-14 14:15:01) |
47. グリーン・ゾーン
画面が揺れすぎで何が映されているのか判別不能。映画というのは見るもののはずなのに、これはその見ることをひたすら邪魔して、どうだこれでも見ることができるかと挑発してくる。前衛的だ。などと冗談言ってる場合ではない。と思ってたけどここまでの評価、悪いなりにも最低点が4点というそこそこの評価。もしかして私が見たときだけ映写機になんらかの不具合があって画面が必要以上に揺れていたのだろうか。それとも私の動体視力が他の方たちよりも著しく悪いのだろうか。冗談抜きで。0点はつけることはないと思ってたけど、こればっかりは他につけようがない。だって悲しいけど本当に何が映されてたのかわからないんだから。字幕だけ見てりゃとりあえず内容はしっかりとわかりましたが、それはそれでどうなんでしょう。もしいつの日か見直すことがあったとして、画面に何が映されていたのか判別できればまた修正したいと思います。 [映画館(字幕)] 0点(2010-06-01 14:22:41)(良:1票) |
48. シャッター アイランド
けっこう期待して観に行った。精神を病んだ犯罪者を収容する施設から一人の女が消える。それを追う捜査官。古き良き(?)ハードボイルドが拝めそうだ。ましてや『ディパーテッド』で豪華な大作路線から初期のインディペンデントとまではいかずとも本来の小回りのきく作品に回帰したスコセッシだ。その期待に応えるようにまずティム・バートンよりもずっと魅力的な灰色の世界で幕を開ける。舞台は誰が撮っても絵になりそうなニューヨークの雑踏ではなく閑散とした孤島。しかしこの孤島が雨によってなんとも怪しく光りだす。結果として上出来だった。上出来すぎるぐらいに。偽の回想であることを示しているのだろう、横移動するカメラに合わせてドイツ兵を虐殺してゆくシーンの残酷なファンタジックさや灰になる女のCGの素晴らしさ、あるいはその女が登場するシーンの色鮮やかさはこれまでのスコセッシ像を大きく上方修正するものだった。それでもやっぱり『ディパーテッド』同様に欲求をじゅうぶんには満たしてくれなかった。今さらロボトミーって・・てのもあるけど、一つ目のオチ、つまり灯台シーン、このオチってはっきりいってここまで引っぱるようなオチでもなんでもない。それにしてはそこにたどり着くまでが長すぎる。その間ずっとディカプリオの険しい表情を見続けなくちゃならんのだからこの長さはたまらん。もうちょっと遊びがほしい。硬いよ。 [映画館(字幕)] 6点(2010-05-25 15:18:07) |
49. ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲
仲里依紗が挑発ポーズで歌い踊るシーンがたっぷりとあるんだけど、たっぷりあるのも頷ける歌唱力とダンスパフォーマンス。あのふくよかなお腹には個人的にそそられはしないんだけど、これ見よがしに映し出されるボンレスハム状態のお肉はそうとうにエロい。見てはいけないものが映し出されているような、そんな気恥ずかしさがある。ストーリーもストーリーを中断させるギャグも世評の悪さとは裏腹にけっこう気に入ってます。でも「白馬の家」の二人と喪黒福造のような都知事のセリフ過多がどうにもこうにも。たしかにセリフ過多は子供向けヒーロー番組っぽくもあって、もしかしたらわざとしているようにも思えるのだが、そもそもセリフ過多の要因でもある「続編」であることに問題がある。むりに前作から繋げなくともよい。辻褄を合わせるためのいろいろがかなり鬱陶しかった。ホントは25歳のすみれちゃんを演じた子役の子の顔はどこか若かりし原田美枝子を彷彿させて今後が楽しみ。 [映画館(邦画)] 5点(2010-05-24 14:44:51)(良:1票) |
50. 今度は愛妻家
仕事もせずにフラフラして妻にはいつもえらそうで、その妻はというと文句を言いながらも天然ボケで和ませながら結局は大きな懐で夫を支える。一昔前なら当たり前だったかもしれないこんな夫婦のカタチも今では非常に奇特なカタチになるのではないだろうか。そんな時代錯誤感をまず感じた。いつの映画やねんと。ほとんどが夫婦の自宅のリビングルームを舞台としているため、どこか舞台劇的でもあるのだが(と思ったらやっぱり戯曲の映画化だった)、途中まではそれが良く思えて、最後のほうはそれが良くなく思えたのだが、たぶんその途中までというのはその場所に薬師丸ひろ子がいるからというのが大きい。それほどに薬師丸ひろ子がいい。すごくかわいかった。豊川、薬師丸の貫禄を消し去った余裕の演技、落ち着いた口調はセンスのいいコメディを見ているような気にさせられた。途中で外に出るところも開放感があって良かったし井川遥の意味深で優しい表情も良かった。一方後半の薬師丸不在のパーティシーンの皆が皆すばらしい滑舌でセリフが飛び交う様はまさに舞台劇のまんまという感じでうんざりした。後半、もうちょっと屋外が映されたらとも思ったんだけど、どうだろう。 [映画館(邦画)] 5点(2010-05-20 15:55:18) |