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民朗さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1317
性別 男性
ホームページ http://minrou.seesaa.net/
年齢 36歳
メールアドレス baker221b@live.jp
自己紹介 全体的に甘めの評価になりがちです。
当然映画のジャンルによって評価にバラつきがあります。以下参考までに……。

評価が高くなりやすいジャンル:ミュージカル、B級アクション、ロマコメ、バカコメディ
評価が低くなりやすいジャンル:ミステリー、サスペンス、ラブロマンス

基本的に過激な映画が好きです。暴力的な意味でも、性描写的にも、人間性の描き方でも
どれだけ感動的な映画であっても尖った所が無い映画より、過激な表現がある映画の方を評価しています。

13.4.27(追記)……TOHOシネマズが6月1日から高校生料金を1,000円にするとのこと。
今は若い方が映画館に少ない状態なので大変素晴らしいと思います。
(日本の料金はそもそも海外に比べて高すぎる。価格も一律で決められているから劇場間の競合も生まれにくい)
でももうちょっとシネコン自体が上映する映画のラインナップを改めた方が良いのでは。
客が集まる邦画をバンバンかけるのは経営としては正しいけれど、いつか必ずしっぺ返しが来るのは判り切っていることなのに。

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【製作年 : 2010年代 抽出】 >> 製作年レビュー統計
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41.  ホビット/決戦のゆくえ 《ネタバレ》 
遂に完結したホビット三部作の最終作。元々は二部作の予定だっただけあって、延々とクライマックスの様な戦闘が続く構成になっています。予定通り二部作だったなら、恐らくスマウグの根城を目指すところから後編の始まりだったのでしょうね。今回の作りですと、やはり最強のドラゴンであるスマウグがあっけない感は否めません。事実、それがオープニングですし。 但し、『指輪物語』『ホビット』を愛してやまないピーター・ジャクソンが作っていることもあって、一本の映画として何とか成り立つように様々な工夫を凝らしていると思います。トーリンが我を失ってしまうが、黄金の間に冠を投げ捨て、再び戦士として立ち上がる時の高揚感は素晴らしい。キーリとタウリエルの恋愛話も単調になりがちな戦闘シーンの連続の中で上手く機能している。原作には登場しないレゴラスを大活躍させることでマクロな視点のアクションシーンに限らず、一対一のアクションも面白く魅せている。本来、『指輪物語』とは違い、単純なストーリー構成をしている『ホビット』を映画化した作品として、ここは評価出来るのではないでしょうか。 しかしこの映画が合わない人がいるのも良く分かる。繰り返される遠景カットは人によってはピーター・ジャクソンの悪癖に見えるでしょう。でもやっぱり原作の『指輪物語』に慣れ親しんでいる身からすると、あの作品世界を映像化しているだけで満足してしまうのですよね。だから複雑な構成を持っている『指輪物語』はともかく、前述の通りの構成の『ホビット』は本来大衆向けではなく、完全にマニアのために作られている作品というのが本質だと思います。
[映画館(字幕)] 8点(2014-12-31 08:55:21)(良:1票)
42.  プロミスト・ランド(2012) 《ネタバレ》 
明らかに地方の田舎モノからしたら悪党のマット・デイモン、彼が最終的に会社の余りに非道な方針にNOを突きつけるラストがとにかく痛快。かと言って大企業を打っ潰すような無理な内容に行くのではなく、単に今までのツケを払いクビになるという結論も良い。 カラオケがド下手なフランシス・マクドーマンドがやるせない空気の映画の清涼剤になっていて面白かった。
[映画館(字幕)] 7点(2014-12-23 22:49:02)
43.  ベイマックス 《ネタバレ》 
驚きました。幾多のオタク向け映画の要素を詰め込んでも、土台がしっかりしていれば素晴らしいエンターテイメントに昇華できるんだと。そういう意味ではタランティーノに近いかも知れません。 舞台は架空の都市、サンフランソーキョー。名前から一発で判る通りサンフランシスコと東京をごちゃまぜにしたような都市で、横浜の中華街とか新橋とか道頓堀辺りの外観があたかもアメリカに溶け込んだ様なビジュアルは実にユニークです。 日本の外観を輸入しているだけあってか、明らかに日本アニメから影響を受けてるであろう箇所も多いです。ベイマックスのロケットパンチは当然『マジンガーZ』、マイクロボットの動きは『AKIRA』、ハニーレモンは名前からして『キューティーハニー』。ベイマックスの見栄の切り方もいかにも日本のロボットアニメらしい格好良さ。『パシフィック・リム』の時もそうでしたが、やっぱり日本文化の一つであるアニメにリスペクトされている映画を観るのは楽しいし、嬉しいです。 あとはオタク映画からの引用が目白押し。ゴー・ゴーのブレードを使ったアクションは『TRON』、怪獣オタクのフレッドのビジュアルはコーマンのZ級映画怪獣チック(変に格好いい怪獣にしないのが抜群に良い!)、ベイマックスへの技のダウンロードは『マトリックス』、……いかん、書き切れない! そもそもベイマックスの見た目がとても魅力的。戦闘ロボットとして活躍するのに本質はケアロボットでつい抱きしめたくなるような、まん丸な可愛い見た目。最初はケアロボットとして身体的な傷が無ければ任務終了、肉親を亡くした心の傷を「思春期ですね」と診断(ここは爆笑しちゃった)していた彼が、最後にヒロを心から気遣ったラストは素晴らしかった。ヒロの成長は勿論ですが、ベイマックスもケアロボットとして成長していたのだと思います。 少し気になったのは、お兄さんが火事で亡くなるまでの所謂お話の前提部分の描き方が性急過ぎると思えたことでしょうか。とにかく土台となる設定を積み上げている様で、システマティック故の違和感を感じてしまいました。例えば、お兄さんが火に飛び込んだ途端に爆発してブラックアウト→葬儀シーン→いじけるヒロ、という描写なんかは急ぎ過ぎじゃないでしょうか。脚本としては良い仕事なのでしょうけど、矛盾している様ですがもっとアドリブ的な無駄が欲しかった。
[映画館(吹替)] 8点(2014-12-23 10:04:03)
44.  アバウト・タイム 愛おしい時間について 《ネタバレ》 
タイム・トラベル物では所謂「セワシ君問題」が常に付き纏います。タイム・トラベル物の代名詞、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズの二作目では主人公の軽率な干渉により未来が大きく捻じ曲がる。本作ではティムはとにかく自分の意中の女の子を自分のものにすべく過去を改変していく。具体的には彼女からチャラ男を遠ざける。チャラ男と付き合っているメアリーも幸せそうだったけどな!初エッチを何度も繰り返す。初エッチってそういうものか?もっと別に良いものがあると思うんだけど。つーか普通に彼女に失礼だろ。個人的には人生って後悔とか苦難があってこそだと思っているので、自分の欲望のままに行動するティムにこの時点から結構ムカついていました。 決定的だったのが過去を変えたことで自分の娘が息子に変わってしまっていたことに驚く場面。その後、ティムは過去を元のシナリオに戻し、娘が無事で良かった良かったと済ませているのですが、改変したことで生まれた男の子はどうなるんだよ!こいつ本質的に自分の息子を殺してます。 前述した『バック~2』だって、もしビフとお母さんの間に出来た赤ちゃんが画面に映ってたらエンタメとして綺麗じゃないと思うんです。マーティーが未来を元に戻したら、その赤ちゃんは存在が消えちゃうわけで。そういう所が本作はホント無神経だと思う。 また腹が立つのが、そういう無神経さに関わらず、最終的には「タイムトラベルなんかせずその日その時を真剣に生きるんだ」という結論に行くんですが、それなら自分の息子の存在を消しちゃったときに後悔して気付いてくれよと。 あと、もう一つだけ文句言わせて下さい。タイム・トラベルが出来るようになったら普通何をしますか?私利私欲の為に使いますよね。男なら助平なことに使うに違いない(しかし本作では女性が引くような生々しさは排除されている、素晴らしいね)。でも、いずれ人助けに使えることに気付く筈。ニュースでは消防車が遅れて焼け死んだ人や、親からアビューズされて亡くなった子どもや、ストーカーに殺された女性の話題に事欠かない。別にヒーローじゃないんだから身を挺して守れとは言わんけど、消防署や警察署に電話くらいできるでしょ。偽善ですらない。頼むから人を助けてくれ。自分のことばかり考えないで。
[映画館(字幕)] 2点(2014-12-22 19:24:25)(良:2票)
45.  ゴーン・ガール 《ネタバレ》 
この映画のエイミーは、現代に蘇った『イヴの総て』のイヴさながらである。全てに於いて計算高く、浮気をした夫を安全圏から追い詰めていく。自業自得とは雖も、周囲の人間に、エイミーがモデルとなった本のファンに、そして全国の視聴者に監視され、批判されていくニックの姿は自分の身に置き換えると、迚も耐えられるものではないだろうと思わせる程の物でした。その追い詰められる男を演じるのが、ジェニファー・ロペスとの熱愛報道で散々世間の的になっていた(&大多数から嫌われていた)、ベン・アフレックというキャスティングの妙です。色んな場面をスッピン(ですよね?)で演じ切っていたロザムンド・パイクの女優根性も称賛に値します。 ミステリーとしても中盤までは主人公を含め誰が本当のことを言っているのか分からないので良く出来ています。ここは原作が優れているのかも知れませんが、それを自分色のサスペンスに落とし込むデヴィッド・フィンチャーは素晴らしい。 ニックの不幸っぷりばかり目につく本作ですが、良く考えるとエイミーにとっても悲劇と言える。幼いころから“完璧なエイミー”と自分を比較して卑屈になっていた彼女にとって、何かの役柄を演じるということは非常な苦痛であった筈。だから彼女は完璧な妻を演じてきたが、遂に失踪し、偽名を使って新たな自分、束縛されない自分になろうとした。でもスカンピンになって仕方なく頼った先の男に、再び完璧なエイミーを演じることを強要される。結局彼を殺して、元鞘に収まって、ニックをコントロールしていると思っても、結局彼女はマスコミ等からの報道のために完璧なエイミーを演じざるを得ない。人生を賭けてまで行った彼女の行動は果たしてその値打ちのあるものだったのか。 にしてもエンドロールを観た瞬間おそろしーい気分に襲われる映画でした。あたかも動物の顔を撮影しているかの様なロザムンド・パイクの顔のラストカット。最愛の人の頭の中は一体どうなっているのだろうか。それを知ることは誰も出来ない。もしかしたら今夜にでも自分を殺そうとしているのかも……なんてね。
[映画館(字幕)] 9点(2014-12-13 04:58:54)(良:3票)
46.  フューリー(2014) 《ネタバレ》 
凄い映画だと思うけれど、同時に凄い不快な気分も味わい、この感情をどうしたらいいか迷ってしまっています。実際のティーガーⅠを動かす等、本物の戦争風景に近づけようとする気概は強く感じます。戦車の中をノーマンが掃除しようとしたら、床に肉片が落ちているシーンなど嫌にリアルです。だから従来の戦争映画では何となく仲良くやっている「仲間同士の絆」も、この映画の中では、敵兵士の死によって成り立っているとされる。そしてその仲間同士で何をするかというと、解放した他国の女を輪姦したりする。こりゃウォー・ダディ率いる部隊を応援し辛い。だって戦争が起きてない現在の価値観からするとやっぱり彼らの振る舞いはクソと思えてしまいますから。 クライマックスは武装SS300人との戦車での籠城戦となる訳ですが、前述した理由により一人一人散っていく仲間たちの死も余り憐れむことが如何しても出来ませんでした。 一夜を共に過ごした女がドイツ軍の爆撃を喰らい死んだのを切欠にナチを心底憎んでしまったノーマンを、ドイツ軍の兵士(少年兵?)が見逃すのが唯一の救いでした。 ともあれ、通過儀礼と託けて無抵抗の敵兵をノーマンに無理矢理殺させるブラピ演じるウォー・ダディは死刑!まあ、その位のメンタリティじゃないと戦場ではやっていけないんでしょうね。凄い映画とは思いますが、好きな映画にはなれない作品でした。
[映画館(字幕)] 5点(2014-12-07 21:36:33)
47.  インターステラー 《ネタバレ》 
多次元的な“愛”を描いた作品だと私は解釈しました。それは家族への愛であり、ガイア理論的な地球への愛であり、未来の子孫に対する愛であり、科学を始めとする知的探究への愛でもある。主人公クーパーが地球の現状、人々は農業に従事して地上に縛られ、誰も空を見上げ宇宙へのロマンを語らない、そんな環境に不満を持っているのは明らかですが、それでも彼は人類という種、また家族の未来の為に宇宙へと飛び出す。ブランド教授が度々引用するディラン・トマスの詩「~穏やかな夜に身を委ねるな。怒れ、怒れ、消えゆく光に対して~」という一節は、絶望的な世界であっても未来を希求する主人公を鼓舞している様に思える。 出発当初、主人公は地球への帰りの燃料を考えていた。それは娘・マーフィーとの約束を守るため。でも地球へ帰るということは、彼の未来への前進を止めることに他ならない。最終的にコンピューターTARSと共にクーパーはアメリアを救うことを優先し、地球への帰還を諦めて、ブラックホールに消える。その結果、五次元空間でマーフィーを介してプランAを成功させ人類を救うのだ。TARSが言っていた運動の第三法則、「何かに到達するには何かを置いていかなければならない」という台詞がすべてを物語っている。人類皆が知的探求を止めた世界において、宇宙を見上げ、前進を止めなかったクーパーは遂に人類を救った。つまりこの映画は広義的には前進する愛を描いた物語。前進を止めた時点で人間は滅び、愛も消える。 徹底的にリアリズムに則った撮影技術の凄まじさは誰もが認めるところでしょう。本物で撮影できるものは全て本物で撮る。実物大の宇宙船内部を作り、精巧なミニチュアのロケットを動かし、水に役者を放り込み、極寒の大地で撮影する。CGを駆使して宇宙空間を作り上げた『ゼロ・グラビティ』とは全く異なるリアリティの追求でした。
[映画館(字幕)] 8点(2014-12-01 00:54:30)(良:3票)
48.  寄生獣 《ネタバレ》 
それなりの原作ファンと自負しておりますが、原作の必要不可欠な要素を2時間弱に収めるその構成力・脚本力の手腕の高さは大変素晴らしかったと思います。新一の家族構成から父親を排し、シングルマザーの家庭とすることで、主人公にとっての母親の喪失感をより強く出すことに成功している。寄生生物の一匹であるAが母親の脳を奪う個体と変更されている点も、新一とAとの対決とリンクさせることで、物語の展開がスムーズになり、タイトに仕上がる要素となっていたと思います。 またミギーが序盤で剣道部や弓道部の練習風景を何気なく眺めることで、他の寄生生物との戦いにおける斬り合いや、終盤の弓に変形する展開に、説得力を持たせることに成功している点など、実にクレバーに思えます。 個人的には山崎貴監督は大仰な演出が多く、好きになれない監督の筆頭だったのですが、本作では何度も心動かされるシーンがありました。特に新一が母親を失って「夢じゃなかったのか……」とひとりごちる場面は、唯一の肉親を失ってしまった悲しい人生の幕開けにも関わらず、外からは明るい朝焼けか夕焼けの光が差し込んでいて、彼の悲劇性をより引き立てていると感じました。このシーンは主演の染谷将太君の慟哭する演技の凄まじさも相まって、胸に迫るものがありました。 人体破壊描写をPG12作品と言う枠の中で出来るだけ限界に挑戦しているであろう気概も良いです。ヌルイとそれは最早『寄生獣』では無くなってしまうと思うので。 大傑作漫画の実写映画化ということで、高いハードルだったと思いますが、監督からはそのハードルを乗り越えようとする意志を感じますし、前編を観た時点でなら十分にその力はあると思います。問題は完結編で全ての要素を綺麗に回収することが出来るのか。田宮良子の結末、広川剛志の結末、後藤との戦い、どれも普通の映画であればクライマックスに出来るだけの素材のため、完結編で変に間延びした(クライマックスが何度もある)作品にならないことを期待しています。
[映画館(邦画)] 8点(2014-12-01 00:44:18)(良:1票)
49.  グレート・ビューティー/追憶のローマ 《ネタバレ》 
こんな映画を撮ってしまった以上、パオロ・ソレンティーノは次回作で何を撮ろうというのだろう。そんな凄まじい映画でした。 目指そうとした作品はハッキリしていて、多分巨匠フェリーニの『8 1/2』でしょう。同作はどんな映画を撮っていいのか分からない主人公(明らかにフェリーニの分身)が悩み続け幻想の世界に足を踏み入れていくという内容ですが、本作の場合は主人公が作家に変更されているだけで、大筋は殆ど一緒です。 次作が書けない主人公は執筆の題材の為に、只管に美を探し求める。それは古代ローマの彫像から、現代アート、大自然の美、宗教的な美、女性像の美にまで及んでいく。尚、個人的には普段から現代アートの良さが全く分からず、主人公が「こんなん美じゃないよね」って感じで現代アートを鑑賞するのには少し胸のすくような気持ちでした。 いくら美を追い求めても主人公には究極の美は見つからない。徹底的に画面構成の美しさ、映像美を凝らした本作を撮っているソレンティーノも恐らく同じことを考えているのだろう。最終的に主人公は究極の美など自分の手に余ると、諦観して映画はプッツリと終わってしまう。今までもどこか気の抜けたような飄々とした作品を作り続けて来たソレンティーノらしい幕切れです。 とどのつまりプラトン的に言えば、究極の美、即ち美のイデアなど、矮小な人間が見つけだすことが出来る訳が無いということでしょう。それでも表現者は自己の中に思い描く究極の美を求めて作品を作り続ける。そんなあらゆる表現者の業を感じる作品でした。
[映画館(字幕)] 9点(2014-12-01 00:25:15)
50.  紙の月 《ネタバレ》 
ぶっちゃけ単なる「ヒモ男に入れ込んだバカな中年人妻の不倫話」です。でもこれがお金や欲望、そして善意にまつわる奥深い話になっており、吉田大八監督の演出力に舌を巻きます。 この映画には主人公が本質的に二人いる。一人は勿論、宮沢りえ演じる営業マンの梅澤。そしてもう一人は小林聡美演じるベテラン社員の隅さんです。この二人は恐らく観客の持つ二面性をそれぞれ片面ずつ表しているキャラクターだと思います。それぞれが頭の中の天使と悪魔だと考えれば実に分かり易い。「横領しちゃえばいいじゃない。お金なんて所詮は価値のない偽物よ。唯の札束よ。自由になりましょう」と囁くのが梅澤、「お金じゃ結局自由になれないわよ。人間落ち着く所に落ち着くようになってんの」と囁くのが隅さん。私は観ながら「梅澤みたいには行動できんなぁ……」と思っていましたが(大多数の人はそうでしょう)、梅澤が隅さんに「もっと怒ればいいのに」と言うのも尤もな様に思える。本来唯の紙切れに過ぎないお金に縛られている私達はどうしてもモラルの壁を乗り越えてしまった梅澤にどこか憧憬を禁じ得ない。しかし最後にそんな夢は醒めます。この瞬間の描き方が実に皮肉となっていて素晴らしかった。ヒモ男は若い女を作っていて破局。いやらしいと思っていたお客には枕営業を仕掛けようとしたら「今まで通り真面目にやればいいんじゃないかな」と逆に諭された。隅さんには「お金で買える自由はここが限界」と気付かされる。それでも彼女は窓から飛び出して偽りの自由で生きることを選んだ。ラストシーン、タイで自分が募金した相手の男の子は、別に募金があろうがなかろうが立派に大人に成長していた。彼女の善意はまるっきり無意味なものだった。自由でもなければ、善意にもならず、単に無意味な人生。それが彼女が選んだ偽りの自由の結果なのでしょう。リンゴを無言でほおばる彼女の眼からはそんな人生に対する呪詛すら感じる。 まあ流石にあんな突発的な逃亡の末に、タイまで逃げられるのは無理有り過ぎるとも思ったのですが。もうちょっと上手い見せ方は無かったのかな。
[映画館(邦画)] 8点(2014-11-24 23:15:21)
51.  小野寺の弟・小野寺の姉 《ネタバレ》 
予告編を見た時点では、片桐はいりさんの見た目で笑わす感じのコメディなのかなと思っていたので、そういう役者の容姿が悪いことで笑わせるコメディは嫌いなので、良い意味で裏切られました。普通に真っ当なコメディになっていて、特に兄弟同士ののんびりとした会話にはついつい笑ってしまいました。私も姉弟の家族構成なので面白かったです。 数ある伏線がキチンと最後の二人の結末に向かって回収されていくのも良い所。 ちょっと良くないなーと思ったのは山本美月の演技プラン。余りに他人行儀でしゃべっているので、「この娘は多分小野寺・弟のことは特に恋愛感情は抱いてないんだろうなー」と思っていると、普通に惚れてて驚きました。もうちょっとくだけて話す方が自然な気がするのですが、好きなら親密になろうと頑張ってる筈ですし。 それからセクハラ・パワハラが問題になっている昨今で、眼鏡店のおじさんとおばさんが小野寺・姉に男事情のことを何度も聞くのは気になりました。もうちょっと自然な感じで、言葉には直接出ないけど、相手にプレッシャーが伝わるような方法が良かったんではないでしょうか。例えば、願いが叶うと言われている花じゃなく、恋愛成就の花に換えて、小野寺・姉が後で自分で調べてみてそれを初めて知るとか。 あとこれは私の個人的な感情なので、人によっては「そこがいいんじゃない!」という意見もあると思うのですが、頼むからちゃんとピントを合わせて撮ってほしい。ソフトフォーカスも良いけどずっとそれだと単に見辛い。それから逆光で撮るのも止めてほしい。眩しいです。カメラをグラグラグラグラ揺らすのも止めてほしい。主人公二人の心理状態と呼応しているのは分かるけど、ちゃんとフィックスで撮るべき所は撮ってほしい。不自然な照明を当てないでほしい。夜に一人で部屋で泣いているシーンで、バッチリ光が入ってるとおかいいでしょ。街灯でも部屋の真横に立ってるんでしょうか?ちょっとお洒落な画作りに拘り過ぎている気がしました。
[映画館(邦画)] 7点(2014-11-22 06:36:31)
52.  西遊記 はじまりのはじまり 《ネタバレ》 
ザッツ・エンターテイメント!な作品。チャウ・シンチーの観客へのサービスが半端ではなく徹底されており、大変楽しい2時間でした。この映画は妖怪が沢山出てくるとは言え、とどのつまりは怪獣映画。その道の達人であるスティーブン・スピルバーグに多大な影響を受けていると思えるシーンがいっぱいあり、怪獣映画としてのクオリティも大変高いです。オープニングから始まるギミックを活かした立体的なアクションは『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』を思わせ、怪魚の動きは完全に『ジョーズ』や『ジュラシック・パーク』。何よりこの一連のシーンで凄いのは普通に残酷なこと。底抜けに楽しいアクション・ムービーかと思いきや、オープニングからある村のお父さんが水中で殺され、大量の血がみるみる広がっていくシーンで、襟を正しました。その後も、少女が無慈悲にも丸呑みされたり、お母さんが怪魚と対峙した場面の「ああ、これは死ぬわ……」という絶望感など、その徹底して甘さの無い脚本は、矢張りスピルバーグに通じるものです。人間の丸焼きのビジュアルや、猪剛列が馬鍬で襲い掛かるシーンなんかも普通に子どもが観たらトラウマ級な気がします(子どもを怖がらすのも映画の立派な役割だ)。 怖がらせるだけでなくお色気要素もキチンと入っているので、そこも楽しい。女妖怪ハンターの段が主人公に惚れる経緯が余りにも雑なのは少し気になったりもしましたが、お色気シーンを入れるためだったのなら仕方が無かったのかも知れません。 あと天丼ギャグが何度も入っていたり、途中から出てくる妖怪ハンター×3のバックボーンが全く分からなかったり、場面転換が唐突過ぎたりする点も少し気になりましたが、全体的にこれほど真正面から観客を楽しませるエンタメ映画を作ってくれれば文句もありません。
[映画館(吹替)] 8点(2014-11-21 20:09:01)
53.  エクスペンダブルズ3 ワールドミッション 《ネタバレ》 
三度集いしオヤジどもの宴。単なるドンパチ映画であることも確かなのですが、個々の役者の見せ場を万遍なく用意している辺りは実は結構考えられている映画なんだなと思えます。しかし人それぞれの好みもあるでしょうが、個人的には前作くらい狂った内容の方が好きだったので、今回はその反動か可也落ち着いたアクション映画に終始しており、簡単に言ってしまうと普通の映画に近くなってしまったと思いました。 なんか世代交代を匂わす様な一作でしたが、今回の若手チームは完全に蔑ろにして次回作は始まるでしょうね、多分。
[映画館(字幕)] 6点(2014-11-19 21:10:27)
54.  ジャージー・ボーイズ 《ネタバレ》 
60年代に人気を博した「フォー・シーズンズ」の結成から解散までを描いた音楽映画。彼らの代表曲の数々と、主演のジョン・ロイド・ヤングの素晴らしいファルセット、特に〆の「君の瞳に恋してる」は聴いているだけでゴキゲンになってしまいました。 但し、物語としては正直言うと凡庸かと思います。ある人物の栄光と衰勢というストーリーは作り尽くされているものですし、しかも本来の映画だったら描くであろう部分(家族との不和etc...)等はアッサリと片づけられる。 これから述べることは私の考え過ぎだと思うし、クリント・イーストウッドにそんな意図は無いと信じている。でも気になったのは以下の部分。 この映画では黒人が驚くほどに除外されている。フォー・シーズンズの観客には100人に1人位の割合で黒人女性が映るけど、それ以外には一切映らない。確かにフォー・シーズンズのポップスは主に白人に人気があったのでしょう。黒人音楽と言えばゴスペルを起源とするジャズですが、60年代にその人気は失われていきますが、その後はファンクやR&Bと進化して人気を博し、更にその後はフュージョンとして深化を続けます。そういう音楽はこの映画からは影も殆ど映らない程にオミットされている(パーティー場面で流れるファンキー・ジャズの名曲『モーニン』もお洒落な白人風にアレンジされている)。この映画はフォー・シーズンズを描く映画なのだから他のジャンルはいらないだろうという意見もまあ分かる。でも黒人という要素すら映画から殆ど省いてしまうのは如何なものかと思いました。あの『グラン・トリノ』を撮ったイーストウッドが何故、という気持ちが強かったです。
[映画館(字幕)] 6点(2014-11-09 16:32:52)
55.  太秦ライムライト 《ネタバレ》 
チャップリンの傑作『ライムライト』を基に、斜陽となった時代劇の衰退と微かに見える未来への希望を描いた作品。「5万回斬られた男」とも言われる斬られ役者の福本清三さんが、ご本人の分身ともいえる主人公を演じます。 確かに時代劇は衰退の一途を辿っていることは間違いないでしょう。近年でも時代劇は度々映画でも公開されているものの、それは若い美形俳優を主役に据えた(本作の中で描かれる『ODANOBU』の様な)アクロバティックな殺陣の作品だったり、ラブストーリーを主軸に置いた作品だったり、コメディに特化した作品だったりする。松方弘樹や近衛十四郎らスター時代劇俳優は既に若者への求心力はないし、ましてや福本清三さんの様な謂わば裏方の時代劇俳優は辛酸を舐める思いで仕事をしているのでしょう。 しかしながらこの映画を観ていると本当に時代劇俳優の、松方弘樹らの殺陣の美しさに惚れ惚れする。終盤の桜が舞い散る中での松方弘樹と敵役を演じる福本清三さんの立ち回りは大変格好良かった。心底この文化が斜陽になり消えかかっている事実に悲しさを感じました。そう思わせるだけでこの映画は勝ちだと思います。まだまだ若い者に時代劇を受け継いで復興させられる筈だ!という時代劇役者たちの矜持を感じました。 私も最近の時代劇は余り足を運ばなくなってしまいましたが、これからは積極的に観に行って時代劇業界を支えてみたくなりました。但し、出来ればやっぱり本作で描かれる様な美しく、また血沸き肉躍る殺陣の作品が観たい所です。 でも手放しで喜べる出来かと言うと断言できない所もありました。一番は悪役が何となく改心してしまうこと。いや、いつ改心したかも明示されないので、本当に脚本の都合で良い奴になったようにしか見えない。せめて主人公の限界を超えた奇跡の立ち回りを見たことで、つい感極まってしまい考えを改める位の理由づけは欲しかった。また根本的な問題ですが、主演の福本清三さんは主演俳優としての演技に慣れてないためなのか、滑舌の問題で聞き取り難い箇所がいくらかあった。
[映画館(邦画)] 7点(2014-11-05 21:27:33)(良:1票)
56.  ドラキュラZERO 《ネタバレ》 
短い上映時間も相まって良くも悪くもサクッと観れる一本。それだけに鑑賞後には何も残らない感じでした。VFXはどこか既視感のあるもので特に独自性は感じられず、役者の演技も基本的に一本調子。唯一主人公のルーク・エヴァンスは、悩める君主と、怪物になってしまった自分への畏怖を演じる程度には頑張っていた。脚本には穴ボコが一杯あるのですが、前述した通り気負って観る様な映画じゃないと、分かってからはもうそういう物として観ました。それでも苦言を呈したくなるレベルですけども。 あとは吸血鬼という西洋の怪物の中でも非常に象徴的に奥深いモチーフを使っていながら、結末までヴラド公の英雄譚(?)に終始していたのは何とも残念。折角、民衆が吸血鬼と化した主人公に火を付けたりするシーンを入れるのなら、それは中世の魔女狩りを意識したものにしなくては勿体無い。そこで暗黒時代のキリスト教を批判するとか。最終的に命を落としかけていた民衆が吸血鬼に変わり復讐をなすシーンも同様で、それまで彼らはキリスト教の為に主人公を焼き殺そうとまでしたのだから何かしらのリアクションを入れるべきだと思います。
[映画館(字幕)] 5点(2014-11-04 14:22:20)
57.  イコライザー 《ネタバレ》 
いやあ驚かされました。このご時世に大資本出資の映画で、ここまでフィルム・ノワールを標榜した画作りの映画が観れるとは。というか何度も挿入される大都市の全景、切り出された様なシルエット、重量感や痛みを感じる硬派なガンアクション、等は否応もなくマイケル・マンの映画を彷彿とされる。 正直その素晴らしい画を観れただけでも満足と言えば満足なのですが、本作はかつてのフィルム・ノワールが特徴としていた作品の閉塞感・虚無感は描かれていない。基本的に敵のマフィアは元CIAのヒットマンであったデンゼル・ワシントンに殆ど反撃する隙も無いままに殺されていく。デンゼル・ワシントン側にも特に「自身の行為が正しいかどうか?」などと悩む様子はなく、彼は正義の法の執行者として敵を刈り続ける。そこにやるせなさを一切感じない所が、傑作アクション映画『ヒート』を生んだマイケル・マンと大きく異なる点ですが、人によって好き嫌いはあるでしょうが、個人的には暗い画には暗く陰鬱な話であった方が好みです。 タンカーの爆破シーンで完全に陰鬱さの靄が吹っ飛んだのが残念。
[映画館(字幕)] 7点(2014-10-28 00:44:29)
58.  メアリーと秘密の王国 《ネタバレ》 
失礼ですが余り面白くなさそうなタイトルにも関わらず、素晴らしいクオリティの子ども向け3Dアニメーションだと思いました。花が芽吹く・木が枯れる等の自然の豊かな動き、鳥に乗った小人のダイナミックなアクション。小人から見たら世界はこんな風に見えるのかなと思える程に良く出来た画が堪能できました。また終盤では舞台が主人公・メアリーの家に移り、小人の世界から見た人間が描かれる。まあジブリの『アリエッティ』と同じ状況な訳ですが、本作の場合、小人から見たら人間は超スローで動く間抜けな生き物という設定やそこで起こるアクションはとても独特で、正直同作よりもずっと面白かった。 またキャラクター造詣が本当に良く出来ている。数々の木々や花々、虫たちが擬人化するとこうも面白くなるのか!と唸ってしまうデザイン。多分、見た目からして『指輪物語』に強く影響を受けているとは思いますが。 物語のストーリーも良く練られている。話の骨子は少女が未知の世界を冒険して、大人になり家に帰るという王道で、テーマは「誰しも誰かの、世界の一部であり、一人では生きられない」という、とても教育効果のあるものでした。 唯一ガッカリだったのが、全ての話が解決し、メアリーが家に帰った後です。父娘のわだかまりも解消し、良かった良かったと思っていると、なんと小人の世界とメアリーがコミュニケーションしている姿が描かれる。硬いことを言う様ですが、こういう旅を通して主人公が大人になる話において、旅の場所とは最終的に決別すべきものだと思います。主人公はその小人の世界を通って、大人に成長し自分の世界に帰還した。つまり小人の世界は主人公にとっては子どもだった頃の世界の象徴なんですから。「最後まで皆仲良くハッピー!」としたくなる気持ちは大変良くわかる(映画が良く出来ている程、その誘惑は強くなるのでしょう)のですが、個人的には只の蛇足に感じました。別れを描いてこその子ども向け映画ではないでしょうか。この辺りは、未だ『トイ・ストーリー3』等のPIXARに及ばない部分だと感じます。
[映画館(吹替)] 8点(2014-10-27 06:58:21)(良:1票)
59.  るろうに剣心 伝説の最期編 《ネタバレ》 
ビックリするほど詰まらなかったです。とにかく脚本に粗が多く、真面目に観ようと努めていても如何しても気になってきてしまう。明治政府が剣心を殺そうとする件が狂言であることを観客に予めばらしてしまう展開には眩暈がします。それでその後の剣心の打ち首シーンが盛り上がるわけないでしょーに。斉藤一が「こんな茶番はおわりだ」って言いますけど、この映画こそ茶番です。ビジュアルは相変わらず良かっただけに、この出来は本当に残念です。 あとこれは前作から気にはなっていたのですが、音楽が酷い。延々と感傷的な音楽が流れるのでいい加減にしてくれないかなとずっと思って観てました。音楽を担当した佐藤直紀さんは山崎貴監督や羽住英一郎監督のお気に入り。どんな音楽でこの映画が占められているのかは自ずと知れるというもの。
[映画館(邦画)] 3点(2014-10-21 00:07:47)(良:1票)
60.  ふしぎな岬の物語 《ネタバレ》 
~突然、阿部寛は叫んだ。「小百合様、かまわないでくれ。まだ誘惑して私を苦しめるのか。」小百合様が、「行け。」と言われると、阿部寛と竹内結子が良い関係になだれ込み、なんとなく終わった。~ まあ冗談はこの位にしても、余りにも吉永小百合の万能感が前面に出ている作品である印象は拭えない。この映画ではあらゆる事態を吉永小百合演じる悦子(通称:悦ちゃん)が唐突に解決してしまう。それはイエスが相手に触れるだけで病を治したり、モーセが海を割るのと同じことだ。つまり奇跡。カフェに訪れ、彼女に触れた人々は別段大した理由もなく、悔い改め、自己解決して、彼女に感謝を述べて、去っていく。感動できるドラマが生まれる訳もない。中盤では本気で徳さんの胃癌さえ魔法のコーヒーの力で消すのではないかと思った程だ。エンディングで島中の人々が彼女を想って見舞いに行列を成すシーンは、最早「小百合様を教祖とする信徒たち!」としか思えなかった。 終盤に彼女は彼女なりの苦悩を抱えていたことが判明するのだが、それも別段ドラマとして優れているものではないと感じました。 ある関係が崩れ、再構築し、立ち直る。そういう作品は多々ありますが、吉永小百合演じる悦子を前半であまりに万能感たっぷりに描いているため、終盤に彼女が弱さを見せ、崩れ、再出発する様が非常に唐突に見えました。 まあ、そんなに優れた映画には迚思えなかったのですが、モントリオール映画祭はこの映画の一体どこをどれだけ評価したのかは気になる所です。同映画祭の日本映画贔屓は有名ですが、それにしても賞やる程の映画とは一ミリも思えませんでした。
[映画館(邦画)] 4点(2014-10-16 06:41:18)
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