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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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861.  ゲゲゲの女房
ヒロインのむっつり顔は、人がお化け屋敷を歩いているときの顔だろう。どういう人間かよく分からずに結婚し、たちまち東京での暮らし、周囲が未知の妖怪変化のようなもので埋まってしまう。ビクビクしながら手探りで歩いているときの顔だ。頼りとすべき夫は、腰砕け気味の笑いを「ハッハッハッ」と片腕の体から不意に発する。豪快な笑いに似合わない貧相な体つきで。これこそ妖怪である。いや一番妖怪みたいなのは気がつくとそこらにうずくまっている姑か(エンディングタイトルまで誰が演じているのか分からなかった)。しばしば画面に平気で妖怪が映り込んでくるが、それら周囲の人間との差別がない。嫁にいくとは、こういうお化け屋敷に入っていくことなんだ。まだ「内助の功」なんて言葉が生まれる以前の、ビクビクもんの新妻を描いて新鮮で面白かった。マンガが動き出す白黒のアニメも、そのザラッとした貸本タッチがいい。ロケはまた深谷市か。ここでロケした映画はたいてい悪くない。昭和の空気を残しているっていうよりも(実際わざと巨大マンションを画面に入れたりしてる。現在の「東京駅」とか狙いはよく分からないが、妖怪が映り込むのと似た効果か)、ここ深谷には何か空間の広がり具合に映画を豊かにしているものがあるようなのだ、具体的にうまく指摘できないのが残念。
[DVD(邦画)] 7点(2011-11-09 09:49:39)
862.  唇からナイフ
マンガを一流の役者・一流の監督で映画化する、ってののハシリか。ポップな感覚。壁の模様なんかはいいけど、演出のほうはシラケ気味。ラストのアラブの騎馬軍団の疾走と甘美なラブソングの交錯のみ、色褪せずにイキイキしていた。役者ではモニカ・ビッティはよくやってたけど、『ベニスに死す』ダーク・ボガードと『コレクター』テレンス・スタンプは浮いてた。とりわけ後者。こういう役者たちをパロディで使うってアイデアは悪くないのに、残念、外れた。当時観てればパロディとしての力がより感じられたのかも知れない。スパイ映画のいい加減さを笑う、って。でも007のほうはいま観ても面白いのに、それを笑ったパロディのほうはいま観るとつまんない。パロディの哀しみ。イギリスという国では、こういう喜劇ができないと一流監督と思われなくて、J・ロージーが慣れないのに一生懸命やってみた、って感じもある。
[映画館(字幕)] 6点(2011-11-08 09:59:01)
863.  北の橋
この人はベンチに座る女性ってのが好きみたい。本を持っているとなお良い。屋外で座る、ってことか。そして次第に親密になっていく二人の女性、ね。本作のポイントは、崩れていくパリの風景を描いたところ。ラストもパリの廃墟にパンして幕となる。時代への苦味のようなものが感じられる。それがスゴロクともっと絡まってくれれば楽しめたんだけど、あんまりスゴロクは生きてなかった気がする。この監督はそういう遊びを中心に据えると乗ってくる人なんじゃないかなあ。スゴロクに至るまでに十分バネを溜めて突入したって感じでもないんだよな。女二人が映画の中で別のストーリー(新聞の切り抜き)に入り込んでいく、って構図は『セリーヌ』と同じなんだけど。最近読んだ本で、フランス人の詩人が山手線の駅を一つ一つ巡りながら詩を作っていく、って趣向のがあったんだけど、なんかその遊びの精神が十分に発揮されずに「エスプリ」っぽい感じだけで終わってしまってた。フランス人の遊びは、ときに「エスプリ」のポーズだけを気にして趣向倒れになるから用心しないと。
[映画館(字幕)] 6点(2011-11-07 10:34:47)
864.  トライアル/審判
プラハでロケしたってのは、どうなんだろう。たしかに美しいが、話を文学史のなかに追い込んではいなかったか。もっと匿名の街の物語であるべき。K・マクラクランも違うんだよなあ。O・ウェルズがA・パーキンスを起用したのと同じ間違い。カフカは『サイコ』や『ツインピークス』の不気味とは異質のもので、もっと平均的な人物を起用すべきだったろう、もちろん「平均的人物」ってのを作り上げるのも難しいが。窓からこちらを興味津々で見ている隣人たち、あの手の味わいが後半消えてしまう。彼のために調査官が鞭打ちの刑を受けるあたりの「いやな感じ」はいいところを突いてる。疚しさを強制される地獄。
[映画館(字幕)] 6点(2011-11-06 12:24:56)
865.  秋刀魚の味(1962) 《ネタバレ》 
佐田啓二のアパートをロングで捉えたカットで、手前を小編成の電車がトコトコと通過していく。サイレント時代の斎藤達雄の家の前にもこんな車両がやたら往還していたなあ、などと思っていたら、あとで佐田宅から帰る岩下志麻が立った駅が東急池上線の石川台であった。このいくつか先に終点蒲田駅がある。松竹のサイレント時代の故郷だ。なるほど「小市民が暮らすのは蒲田」という配置は30年を置いても変わらなかったわけだ。もっともこちらの小市民はゴルフをたしなむまでになったが。あと今回気がついたことでは、最後のトリスバーのシーン。軍艦マーチが流れ、客の須賀不二男らが旧海軍を揶揄すると、笠智衆はムッとする表情を一瞬浮かべた。小津の登場人物は私的な場ではしばしばクサるが、公の場でこの手の不快を見せるのは珍しいのではないか。つい映画を観ていると忘れてしまいがちになるが、平山は艦長という帝国海軍のエリートだったわけだ。この映画に満ちている侘しさは、おもに娘の結婚や男やもめの孤独など家庭面から来るものだが、もっと若い時代にまつわる失意・小津が体験しつつもずっと正面からは触れようとしなかった戦争の影も、考える必要があるかもしれない。このバーに座る男は、妻に先立たれ・娘の恋を成就させてやれなかっただけでなく、今はからかいの対象にしかならない軍隊に若い時代をうずめてきたその徒労感(と若干の愛惜の情)も背負っているんだ。私は小津の映画が、そのすべてを肯定したくなるくらい大好きなのだが、音楽だけはどうにも我慢ならない。晩年の「秋」の三作にはどこか荒涼とした気配が感じられ、とりわけ遺作となった本作など東野英治郎への残酷な視線に容赦がなく、あのノーテンキな音楽がないとむごたらしさが前面に出過ぎてしまうからか、などと出来るだけ好意的に考えようとも思ってみるのだけど、もし音楽抜きのバージョンが存在したら迷わずそっちを選ぶ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2011-11-05 12:25:23)(良:1票)
866.  タンゴ(1993)
妻と別居しているポールの頭の中は、妻で充血しちゃっている。いまどこかで妻が確実に彼女の生活をしている、ってことが嫉妬の対象になる。彼女の幻影を徹底的に排除したい、それが殺人願望にまで至る。そういう男を巡っても、サスペンスじゃなくコメディになるのは、監督があくまで男の心理にこだわっているから。女性心理には興味を持たない。「男は女をこう感じている」ってところにのみ、興味を集中させていく。男だけの暮らし。でもそれは人一倍女性にこだわっていることでもあり。集中していく話じゃなく、エピソードを集めて移動していく話。とうとう飛行機で北アフリカへ。『髪結いの亭主』のアラブ音楽の故郷だ。あちらのものでは殺人がごく自然にコメディの中にはいれる。エスプリって言うんですかね。
[映画館(字幕)] 7点(2011-11-04 10:20:12)
867.  血の婚礼 《ネタバレ》 
足でドンドンとやりだすと、こちらも文句なく興奮してくるのは何なんだろう、原初から人間に伝わる労働のリズムなのか。フラメンコって足が雄弁なダンスだ(ハワイのフラダンスなんかはほとんど手だけの踊り。足のほうが活躍するのは北のロシアコサックぐらいか。緯度の高低とダンスって関係があるのかな。さらに思ったのは、暖かい地方の阿波踊りは手がひらひらしてて、北のねぶたになるとやたらジャンプしてるぞ、と脱線しかけてやめる)。フラメンコってのは、対立シーンになると盛り上がる。女同士にしろ男同士にしろ。フラメンコはもともと「わだかまり」を描くものなのかもしれない。だってあんな苦悶の表情をたたえて踊るダンスってほかにあるか。楽屋入り、化粧、レッスン、衣装つけての通し、とだんだん現実の世界から虚の世界に入っていく趣向。レッスンで鏡のほうへ向かって斜めにくるくる回りながら並んでやってくるあたりから、だんだん現実と虚構のさかいがあやしくなってくる。オハナシは「女房持ちの男と結婚ひかえた女が出来てて式の日に駆け落ちし、決闘で男二人とも死んじゃう」ってんだけど、すべて情熱なのよね。理性で抑えきれないものが騒ぎ出し、しかめつらの舞踏になっていったものがフラメンコなのか。窓からの光が美しい。決闘シーンではスローモーションふう振り付けになる。最初のほう、中央に二人が重なってわかれていくあたりがすごくいい。さて花嫁の血は、あれは演出だったのか否か? と惑わせる趣向。
[映画館(字幕)] 7点(2011-11-03 10:09:32)
868.  冬休みの情景 《ネタバレ》 
中国映画はかくも文化大革命から遠く離れたとこまで来たのか。前向き・力こぶ・希望・明朗といった文革時代の表象は、その後の文革批判の映画でも現われていて、いつも底にはそういった傾向があったように思う。でもこれはどこにも力こぶのない映画だ。退屈しきった日常、手応えの感じられない社会、都市部の若者の世界的テーマが、中国の、しかも内モンゴル自治区から生まれてくるとは。ジャームッシュやカウリスマキにも通じるミニシアター系の脱力ドラマ(コメディと言ってもいいんだけど、言い切るのは若干ためらわれ)。上海でなく内モンゴルでこういう映画が生まれるまでに、世界は均一化してるってことか。シークエンスとシークエンスの間に入るかったるいスキャットも含め、ひたすら脱力している。そして(毛糸をほぐして帽子をこしらえた恋人の)親は離婚しようとしてるし、友人とは些細なことで絶交しようとしている。それもいたって淡々とで、一日たてば消えてしまいそうないさかい。子どもは大きくなったら孤児になろうと言うし、かつて文革で団結を叫んでいた中国人民は、今は解散したくてたまらないようだ。解散の日までの日常をぼそぼそとしのいでいる感じ。登場人物が笑顔を見せたのはたぶんテレビを見ていた老人とオバサンが顔を見合わせたとき一回だけで、そのオバサンもなにがあったのか怒って帰っていった。人はどこも別れる準備をしている。町中に響いている音は何なんだろう。旧正月の花火? どこぞの砕石場? それすら空のうつろさを確認しているように感じられる。退屈しきった休暇が終わり学校が始まって、初めて力こぶが感じられる熱血教師が出てきたと思ったら、教室を間違えてて去っていった。休暇ボケだったのだ。「社会に役立つ人になるには?」という問いの前で脱力し続ける学生らの背後で、初めてビートの効いた音楽が鳴ってエンディング。これがどの程度内発的に作られた映画なのかは監督の別の作品を目にするまでは疑問符をつけておきたいが、町の死に切ったたたずまい(とりわけ怒声なしで淡々とカツアゲされる空き地)や白菜売り場の光景など忘れられそうにない。監督リー・ホンチー李紅旗。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-11-02 10:10:44)
869.  牧野物語 峠
これには真壁仁さんという詩人が出てくる。この人の詩人としての仕事はよく分からない。この元農民詩人と現役の農民の顔とが交互に現われると、なんか違うんだなあ。けっしてこの人の顔がダメって言うんじゃないけど、非小川的な顔なんだ。カメラと接する気分の違いなんだろうか。写されることに慣れている、というか、構えがない。そこに違和感が生まれてしまう。それは『千年刻みの日時計』で職業俳優の顔に感じた違和感を思い出させた(あっちのほうを先に観てたので)。ああそうか、この『牧野物語』の「養蚕編」「峠」の二本の関係は、『古屋敷村』と『千年刻み』の関係と同じなんだ。技術的な「文明」への関心に集中する前者の仕事と、それから生まれる「文化」への関心に広がっていく後者の仕事。そういう段取り。もちろんそうきれいに分かれているわけではないが、関心のありどころが推移しているみたい。私としては技術の記録のほうに興味がわく。本作でも面白かったのは、その技術への関心を引きずっている部分。ワラのめぐみさん。叩いてサンダルのようなものも作れるし、ミノカサも出来る。一式を着込んでみせる木村さん。/小川監督は『牧野物語』シリーズというものを考えていたようで、最期には「牧野物語・紅柿編」というのの撮りかけが残された(これは後に中国の女流監督により『満山紅柿』として完成される)。でも彼の後期の作品は全部「牧野物語」と呼べ、実際『千年刻みの日時計』にも「牧野村物語」という副題が付いており、彼の構想がはっきり確認できない以上、ジャンルに「シリーズもの」を入れるのは躊躇われた。
[映画館(邦画)] 7点(2011-11-01 10:43:31)
870.  ジャック・サマースビー 《ネタバレ》 
南北戦争後の南部が舞台。ミステリーふう。戦争から帰ってきた夫は本当に夫か、ってな。彼と彼女の間のヘンな雰囲気を丁寧に描写していく。ひげを剃るときの緊張。J・フォスターがキスを誘うのにR・ギアが気づかぬ振りして避ける。など、日常の細かい振舞いに潜んだ緊張を楽しめる。靴のサイズ。貴金属拠出のとき「妻のあたしが言うのもなんですが」って言ってブローチを出すあたりがニクイわけ。彼はここでサマースビーとして生きようとする。黒人や子どもの期待、期待をされることのしっかりとした手応え。ゴロツキにさっと右手でナイフを構えるジャックを、ロングで見てしまうローレル。でまあ、KKKもあって、裁判になる。アメリカ映画は本当に裁判が好きだ。南軍負けてもうすぐに黒人の判事が来てたのか。裁判の過程で愛の物語が明らかになってくるの。それまでのローレルの結婚生活の惨めさ、ジャックの改心、などなど。粋な判決を下すのかと思ってたら、愛の伝説になりました、って終わらせ方だった。あれなら裁判の後、あまりじらさないですぐ墓場にしたほうがサッパリしたのに。
[映画館(字幕)] 6点(2011-10-31 10:11:18)
871.  ホット・ショット2 《ネタバレ》 
前作はけっこうパロディを突き抜けた「無意味」自体の輝きを感じた部分があったんだけど、今回はパロディの枠を抜け出られなかった。チャーリー・シーンやヴァレリア・ゴリノといった非喜劇的人物がドタバタをやるという取り合わせの新鮮さも、二度目となると慣れてしまう。個人的に好きなのは、背景でなんかやってるギャグで、タイのシーン、手前でハーレーを巡るドラマが展開している向こうで、セクシーなミシェルの前に坊さんが並んで、犬が立った芸を見せてるとこ。あの手のが好きだなあ。フセインを出したのが、ナンセンスものとしては不純になってしまった。敵地で鍵を盗み取るのにやたら音をたててしまうギャグ、その鍵を木の檻から体を出してつかみ取るギャグなど。
[映画館(字幕)] 5点(2011-10-30 12:13:49)
872.  伴奏者
フランス映画はヴィシー政権のおかげで陰影のある時代を持つことが出来た。このヒロイン、伴奏者として「何かを選ぶことを放棄した人生」を選んだわけ。ヴィシー政権を背景にすると、そのうつろさがよく似合う。邦画だったら、尽くしぬく芸道ものになりそうな設定を、そうはならない。歌手のほうは少しの卑屈さもなく堂々とこの時代をうまく渡り歩いていく。ヴィシーフランスの下からロンドンへ、さらにアメリカへと、そのつどうまくジャンプしていく。踏み台にされる夫。顔のシーンの多い映画でしたね。私にとってはフランス映画の苦手な部分が凝縮されたような作品でした。オペラ歌手とその伴奏者の話なのに、音楽の基本テーマはベートーベンの第1弦楽四重奏の第2楽章。初期の四重奏が映画に使われるのは珍しい。
[映画館(字幕)] 5点(2011-10-29 12:29:16)
873.  スプリング・フィーバー(2009)
これは困った。話が分からない映画というのにはある程度慣れてるつもりだったが、登場人物が確定できない。なにしろゲリラ撮影なので光量が不足気味で、人物が混乱する。これはさっきのあの人だよね、それとも新しい登場人物か、などとしばしば立ち止まらせられる。とちゅう妻が夫の不倫相手の男(ゲイなの)の仕事場に乗り込んでいくあたりまでは、大体把握できてたつもりなんだけど、探偵が濃く絡んでくると私の握力ではつかみ切れなくなった。あ、あれとこれとはやっぱり別の人なんだな、と顔面の識別よりも話の展開上の合理性で想像する。最後のほうでは『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』っぽく三人が漂流を始めたかと思うと、また分解していって、切られたり刺青ほったり。撮影禁止の処分を乗り越えて製作した、っていうんだから、いい加減なもんじゃないとは思うんだ。ゲイという特殊を通して、閉じ込められている中国からなんとか普遍に至ろうとしたのか。その勇気はたたえたいし、当局の「映画監督に撮影を禁じる」という処分の不合理には怒りを覚えるが、でもこの映画、分かりませんでした。どうゲリラ撮影を敢行していったのか、メイキングフィルムのほうが面白そう(そんなの撮ってる余裕ないわな)。ちょっと心が騒いだのは、同性が踊るシーン。ベルトルッチも女性同士がダンスするシーンが好きだったが、これでは屋外でのダンスと室内でのチャチャチャのシーンに、若干ときめいた。中国語で「変態」とはピェンタイというのか。
[DVD(字幕)] 5点(2011-10-28 10:51:01)
874.  PNDC-エル・パトレイロ
理想に燃えた警官が社会に出て汚れていく。ついに矛盾に耐え切れず職を辞し、妻にこきつかわれ、愛人には「養ってくれるわね」と釘を刺され、ああ、これが人生か(ちょっと「砂の女」を思い出した。男を待ち構えている女という落とし穴)。愛の理想も現実に汚染されていく。仕事の嫌な感じを丹念に積み重ねていくあたりに、手ごたえ。怪我をしたとこに父の幻影が現われるのなんか、中南米の匂い。そしてドン・キホーテのように最後の一花を咲かせようとするわけだ。やはり中南米って、どこかスペインの影を引きずっている。
[映画館(字幕)] 6点(2011-10-27 09:56:07)
875.  アイス・カチャンは恋の味
少年の初恋ものと聞いてたので、するとアンジェリカ・リーもとうとう母親役をやるようになったのか、と思ってたら、初恋相手の「気の強い少女」であった。ラストの「少女のその後」で、やっと現在に追いついた感じ。『アイ』で初めて観たときだってもう「少女」というより「娘」だったし、あれが十年くらい前の映画。本サイトの情報でいま確認したら1976年の生まれだそうだから、このときは三十代半ばか。いい度胸だ。ま映画としても年齢不明の人ばっかり出てきてて、さして無理でもなかったかもしれない。これ香港コメディから動きのキレを抜いて泥臭さだけを残したような映画で、音楽が鳴りっぱなしなのも苦痛だった。お父さんがバクチやってる小屋とその前に広がる海に、かろうじて東南アジアの匂いを感じた。あとは、不意に生まれた四組のカップルが四辻の四方向から顔を合わせる俯瞰のカットぐらいか。今までに作られてきた「初恋もの」の部品を組み合わせてみたってだけで、自分なりのオリジナルなものを発見しようとしていない。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2011-10-26 10:19:29)
876.  マチネー/土曜の午後はキッスで始まる
キューバ危機の不安の中のアメリカの一断面。あの「イキイキと不安だった季節」はアメリカにとっても特別な日々だったよう。なにか浮き足だっていて、それが子どもにとっては祭りのようなハレのはしゃいだ気分に通じている。パパが戦争に巻き込まれつつあるかもしれないという不安と、パパのいない解放感。漠然とした核の不安を、B級ホラー映画が「恐怖ごっこ」に変えてしまう。ガールフレンドになる子、こんなこと(核対策)したって意味ないわよと醒めてる子、健全映画を観る会、詩を書く不良、これらの人々が土曜の午後へ向けて一歩ずつ世界を織りなしていく。バックには懐メロが流れ。核の恐怖に取り付かれている劇場支配人。満員の二階席。シェルターに残った二人っていうのは、世界に二人だけになってしまうという恋する若者の甘い夢でもあり、時代の不安の悪夢でもあり。
[映画館(字幕)] 8点(2011-10-25 10:15:46)
877.  おかあさん(1952)
この映画の怖いところは、母が次々に襲ってくる不幸から家族を守り続けているようで、その家族が順番に消えていくところ。家族の幸せを願うことが、その一家を解体していく現実。避けようがない病気を送った後には、娘を手放さなければならず、さらに精神的な頼りとなっていた手伝いの男も遠ざけなければならない。やっと露店から自分の店として再建できた家から、一人ずつ人が消えていく。中北千枝子に髪を触れられた娘はやがてこの家を去り、遠からずもう一人もこの家を去っていくだろう。これは成瀬の『麦秋』なんだと思う。あの解体していく大家族の物語を、成瀬の小市民の世界に移すと、こうなるんだ。どちらも厳粛な諦観が底に流れている。母はメソメソしないが、肝っ玉母さん的に豪快に笑うわけでもなく、激さない矜持を持ちながら不幸を通過させていく。どこかニヒリズムの匂いがする。成瀬の世界観がかなりクッキリ現われた代表作と言ってもいいんじゃないか。とちゅう股覗きしている子どもの視点になって逆さまの看板を捉えたり、映画館での「終」の画面で驚かせたり、けっこう遊んでおり、これは脚本の水木洋子の企てかもしれないが、サイレント映画を経てきた成瀬の可能性が高いと思う。加東大介、中北千枝子の常連脇役もそれぞれいい仕事をしており、とりわけ加東はベスト。どちらかというと「お嬢さん」役の印象が強い香川京子のパキパキした下町娘も新鮮だ。(そうか、岡田英次も香川京子も今では実質一人息子・一人娘になっちゃってるんで、なかなか結婚はスムーズに行かないかも知れんなあ。パン屋の長男がひょっこり生還すればいいんだが。まてよ、最後にクリーニング屋にやってきた見習い店員が16歳といってたから、娘とは二つ違い。あれを将来婿に育てて、と田中絹代は算段するかもしれん。まだまだひと波乱ありそうだぞ。)
[CS・衛星(邦画)] 8点(2011-10-24 10:06:07)
878.  ハモンハモン
登場するすべての男女に愛の線を引くことが出来る。しかもみな自分の愛のみを基準に行動するから、秩序から渾沌へと導かれていく。スペインである。ファーストシーン、なんだろうこれ、教会の釣鐘のタマかなあ、ひびが入ってるなあ、などと思ってたら、牛のタマであった。これは後に巨大なパンツのたて看板と対になって(この監督の次回作は『ゴールデン・ボール』って嘘みたい)。最初は肝っ玉母さんと溺愛ママの対比で、なんか「もう分かった」って話かと思っていたら、だんだんヘンになってくる。情熱の国。S・サンドレッリの、自分の仕掛けに溺れていってしまうあたりが分かりやすい軸となって、あとはみなヘン。A・ガリエナは女の家の親分。娘三人に娼婦たちも雇って、轢かれたペットの豚を丸焼きにして食べちゃうたくましさ。情熱の国だが、乾ききっている。ハムで戦う男。ゆっくりとやってくる羊の群れ。リアリズムに撤するとかえってヘンテコリンになっていく風土なの。
[映画館(字幕)] 7点(2011-10-23 12:10:31)(良:1票)
879.  大脱走
しばしば目に入る抜けるような空の青さはスポーツにこそふさわしい。この映画に満ちているのはスポーツの気分。逃亡するのが義務と心得ている連合国側捕虜と、それを阻止するための特別の収容所を開設したドイツ側との、攻守がはっきりしたチームスポーツ競技を観戦する気分だ。マックィーンの小道具としてのボールも、そういう気分をかもすのに役立っている。逃亡するための資材を調達していくあたりの、息のあった連携プレーが楽しい。役割りによって分業体制を敷いているのも団体スポーツの味わい。またその中にコンビの友情をいくつも仕込んでおいて、全体をまとめるのをイデオロギーにしていない。小さな友情が集まって大きな団結を構築している。一匹狼だったマックィーンも失われた友情への復讐心からチームに参加していく。本作の気持ちのいい明るさは、この友情を下敷きにしているところから来ているんだろう。悪役側も、ドイツ軍とゲシュタポとを区別し、ドイツ軍そのものはスポーツ競技の相手役としてサッパリとさせている。もちろん実際の戦争はスポーツではなかったわけで、それだけははっきりとさせとかなくちゃならない暗い部分はみなゲシュタポに任され、青空ではない曇り空の下の銃殺によって代表させる。暗い戦争を明朗なエンタテイメントに仕立て、しかもそれを「敵」をやっつけて溜飲を下げるレベルのものでなく成功させたところが、この映画の一番の手柄。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2011-10-22 10:08:53)(良:2票)
880.  アラジン(1992)
小さな猿と巨人の吊り合わせなぞ、いかにもディズニーの好み。ただこのエノケン似の猿は後半象になってキャラクターを生かしきってはいない。巨人ジーニーの変身ギャグはあまり好きではない傾向のものだが、そのヘンにはしゃぐ「朴直な大男」ぶりは悪くない。陽気にはしゃいだ後、でも自由じゃない、とショボンと変化するとこは笑えた。ランプの住まいは窮屈だ、って。洞窟で登場する「魔法のじゅうたん」の擬人化のうまさはディズニーのお得意のとこ。飛行シーンは宮崎のほうがうまいけど。世界中を飛び回り、スフィンクスの顔が欠ける。エジプトも中国も「オリエント一般」でひとくくり。西洋には飛ばないのだ(おそらく魔法圏外の文明地ということなのだろう)。ランプが悪玉ジャファーの手に渡って次々と力を得ていくあたりの畳み込みぶりがいい。心ならずも命令をきくジーニーの打ちひしがれぶり。ダンボやピノキオなど旧作へのオマージュもある。「世界一の魔法使いになっても自由を奪われたらおしまい」という教訓付き。私にはちと目まぐるしすぎた。
[映画館(字幕)] 6点(2011-10-21 09:58:58)
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