81. さびしんぼう
《ネタバレ》 尾道三部作の中でも秀逸、さすがに大林監督が長年暖めていた映画だ。前半は雨にも負けずぶーらぶらに代表されるコミック、ちょっと馬鹿馬鹿しいほどなのだが、これが後半の心に染みるラブストーリーを引き立たせている。少年は母によく似た少女に恋する者なのか。大掃除の写真が見事に伏線となっていて、青春映画としてもファンタジーとしてもすばらしい。 [DVD(邦画)] 9点(2012-06-14 23:31:39) |
82. スラムドッグ$ミリオネア
《ネタバレ》 冒頭の4択問題がきわめて重要、そして解答はラストに明かされるのだが・・・。これって何とも言えない巧みな作りではないか。もちろんクイズの問題と少年の過去のオーバーラップも、そしてそして、最後に歌って踊り出すというのは・・・。 映画ってのは理屈じゃないよ、感動だよと誰かが言ってたけど、まさにその言葉がぴったりの映画だった。Jai Ho はネットで探しまくって、何度も何度も聴いた。 [DVD(字幕)] 9点(2012-06-10 22:41:56) |
83. 秘密と嘘
数々の映画賞に輝いた名作である。マイク・リー監督の代表作でありながら、見る順序が逆になって「人生は、時々晴れ」や「ヴェラ・ドレイク」より後になってしまった。それだけに、家族の絆や人間愛をテーマとする彼独特のスタイル(ヒューマニズム)を身にしみて感じ取ることができた。こういう映画はハリウッドでは作れないのだろうか。 [DVD(字幕)] 9点(2012-05-23 20:33:07) |
84. 火宅の人
1986年の日本アカデミー賞は、作品賞のみならず、主演男優、主演女優、助演女優、監督賞、脚本賞、それに撮影賞と7部門をこの「火宅の人」が受賞した。良きも悪しきも人間をあからさまにして、かつ情感深く描く人間ドラマが私は大好きであるが、それにまさしくぴったりの映画。緒方拳の名優ぶりは定評がある所だが、主人公を取り巻く女性陣がすごい。いしだあゆみと原田美枝子は甲乙付けがたいが、さとづめ本妻と愛人の差か。松坂慶子だって枠がもう一つあれば入ったのではと思うほど。 映画は檀一雄の代表作「火宅の人」を映像化したもの、悪く言えばでたらめな彼自身の生活を綴ったものと言えるかもしれないが、それだけで片付けてほしくない文学大賞作品だ。 [DVD(邦画)] 9点(2012-05-16 17:42:31) |
85. 未知への飛行
一つ間違えは世界戦争、地球崩壊になりかねないだけの原水爆がボタン1つで乱れ飛ぶ、そういう恐ろしさを後世に伝える映画である。映画は低予算のモノクロ映画でありながら、迫真迫る演技と演出によって、その怖さを見事に描いている。 同年に製作されたキューブリック映画とは違い、正真正銘、正攻法1本のシリアスな映画だ。特に大統領と通訳二人だけ(相手は見えない)のシーンがすばらしい。 この映画は同年に制作されたキューブリック映画とは違い、日本公開が18年も遅れてしまったが、被爆国日本としてはそれほど強烈な影響を与える映画だったからかもしれない。 [映画館(字幕)] 9点(2012-05-10 21:32:03)(良:1票) |
86. 一枚のハガキ
《ネタバレ》 どんな賞に輝いたかではなく、これぞ新藤兼人監督人生100年の集大成と言える映画だ。一切の無駄がなく、粋を集めたような画面やストーリーは、人間を追求してやまなかった男の神髄を見たような気がした。 戦争はいろいろな形で語られるが、これは監督自身が主人公松山啓太同様、くじという幸運に恵まれ帰還できた体験によるものだろう。 戦争は多くの悲劇をもたらした。長男が戦死し、その嫁が次男と結婚し、その次男も戦死する。子どもを戦死させた老夫婦が後を追ったように亡くなる。そういった不幸もあったろう。あるいは夫が戦死したと思っていた妻が他の男と一緒になっていたということもあったろう。この映画はそういった不幸を淡々と物語っている反面、鋭い叫び声を上げ、残された人間が強く生きていく姿も描いている。シンプルな作りと舞台劇のような台詞は、あたかも上質のお芝居を見ているようだったし、満を持して見ただけあって、実に見応えのある映画だった。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2012-04-23 06:16:08) |
87. 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(2006)<TVM>
《ネタバレ》 田中裕子の熱演に尽きる。湿りがちでウジウジするようなストーリーも、脚本演出と田中の力で明るく吹き飛ばしてくれる。それに時々現れるオトンのハチャメチャぶりがまた良い。 音楽(主題歌)も実に良い。BEGINの「東京」という曲だが、これは昔マイペースが歌っていたもの。オリジナルもBEGINもどちらも良いが、あの“東京へは、もう何度行きましたね~”というメロディーが流れると思わず涙が出てくる。2時間というドラマがあっというまに過ぎ去ってしまった・・・ なおこの映画ではNHKテレビドラマ「カーネーション」の尾野真千子が端役で出ているが、テレビではまったく気づかなかった(違う、まったく知らなかった)さらにもう一つ、映画のオトンとオカンがこのTVドラマでは大家さんと東京タワー職員というちょい役なのもおもしろい。 [地上波(邦画)] 9点(2012-04-22 06:15:17) |
88. フライド・グリーン・トマト
南北戦争が終わって奴隷解放宣言がなされても、なお残る黒人差別が残る米国南部、そこで事件は起こった。事件の真相は終盤に明かされるが・・・。 映画は女性たちがとてもすばらしい。女性のための女性の映画のようにも思えるが、男の私が見てもすばらしい。大変心に残る映画だった。いつかまた、女房と一緒に見てみたい。 [DVD(字幕)] 9点(2012-04-21 11:15:26) |
89. 死刑台のメロディ
《ネタバレ》 第1次世界大戦後の米国の不景気は、イタリア移民の労働問題、赤狩りという左翼弾圧など暗黒社会をもたらした。(この映画の中でも「米国はアメリカ人のものだ」とプラカードが目立った) その中で起こった銀行襲撃事件、たれ込みによってサッコとヴァンゼッティというイタリア移民のアナーキストが逮捕される。人種差別と偏見によって歪められた裁判、その不正に対して米国や欧州各地で抗議の声が上がるが、二人の被告は死刑になってしまう。 映画はカラーとモノクロの映像の対比が見事だ。そしてジョーン・バエズの歌が涙を誘う。 日本にも松川事件を初めとする冤罪事件が多々あった。しかし米国のような陰謀がらみの冤罪には驚くばかりである。 [映画館(字幕)] 9点(2012-04-18 00:07:56) |
90. ジュリエットからの手紙
《ネタバレ》 予告編で、ジュリエットの家にまつわる話や50年前の手紙などを知り、見たくてたまらなかった。そしてDVDで鑑賞。やはり思い通りというか、それ以上の映画だった。 私が見た映画の中で、見る前から期待が高く、それでなおかつ期待以上で、見た後も心に残ったという映画はそれほど多くない。それどころか近年はなかなかそういう映画に出会わなかった。これはまさしく、その1本だった。 まずオープニング良い。数々の愛の姿が映し出される。これだけでもはや映画の中に浸ってしまった。そして映像もきれいだし、音楽がとってもすばらしい。いくつもの挿入曲がそれぞれのシーンにマッチし、映画の雰囲気を高めてくれる。 50年前の恋人を探す旅はなかなか見つからず、私もそろそろあきらめ(映画を見るのも退屈?)そうになったとき、ロレンツォに出会う。このシーンが実に良い。そしてもっと良いのは結婚式のシーン。50年前の手紙の返事を読み上げるシーンでは思わず涙か・・・。 あらすじがわかっていて、結末もほぼ予想通りに展開した映画だったが、それでいて充実した映画だった。 ところで、このヴァネッサ・レッドグレーヴとフランコ・ネロの二人、私が若い頃見たミュージカル映画「キャメロット」で共演した二人だったことを思い出した。50年は経っていないけど(43年前) [DVD(字幕)] 9点(2012-03-11 08:31:25)(良:1票) |
91. 夫婦善哉
いやあ、名作だと思うなあ。あんなダメ男の若旦那に尽くす売れっ子芸者。何度も愛想尽かしても、またけなげに・・・。その人情味あふれるドラマを実に鮮やかに、描き出している。原作もすばらしいんだろうと思う。そして森繁も淡島千景さんも、そしてまた監督豊田四郎も・・・。これぞ日本映画だと思うし、淡島さんの追悼にふさしい。 [DVD(邦画)] 9点(2012-03-02 21:09:52) |
92. ペーパーバード/幸せは翼にのって
《ネタバレ》 笑いと涙があり、そして大きな感動を与えてくれた映画だった。私にとっておそらく、今年一番の映画になるのでは・・・と思う。 ペーパーバード、紙でできた鳥すなわち日本で言う折り鶴である。このペーパーバード(折り鶴)に願いをかけるのは、万国共通らしい。ホルヘらの願いは、何だったのだろう。それを解く鍵こそ劇中の「フランコとは暮らせない」という反骨精神のこもったあの歌である。 多くの人にぜひ見てほしいと思う映画。 [映画館(字幕)] 9点(2012-02-15 19:18:30) |
93. 恋するトマト
日本とフィリピンの農家の実態をリアルに描いたドラマだ。農家の嫁探しや労働力不足、あるいは怪しげなフィリピン人ダンサー勧誘、結婚詐欺に至るまで、深刻な問題がたくさん潜んでいる社会派ドラマでもある。この映画を作った人々の情熱に驚くとともに感謝。 [DVD(邦画)] 9点(2012-01-28 13:58:33) |
94. Love Letter(1995)
藤井樹が二人いて、中山美穂も二人いて、最初のうちは非常に紛らわしかったけど、とてもよかった。幻想的で大変ロマンティックで、そしてちょっぴりコメディっぽくもあって、好きだなあ。藤井樹ハート藤井樹の中学生も良かったし、ラストシーンも文句なし。「失われた時を求めて」はプルーストの長大な小説だけど、タイトル名がとてもいい感じ。 [DVD(邦画)] 9点(2012-01-27 22:18:42) |
95. 切腹
原作が凄いのか、脚本がすばらしいのか、はたまた映画監督や役者が抜きんでた才能があったのか、いずれにしても最高峰に値する時代劇である。 切腹という究極の武士道精神なのだが、それを少しも格好良いものではなく、腹切りという現実の自殺として扱う。なぜ切腹しなければならなくなったかを、朗々と言って聞かせるあたり並のものではない。 映画を見た当初は知らなかったが、人間の条件を描いた監督であり、その主役の仲代達矢である。それがそのまま、この映画で反映されているかのようにも改めて思う。 [DVD(邦画)] 9点(2012-01-16 20:59:27) |
96. 父の祈りを
良いところも悪いところもすべてを見せてくれるからこそ、実話もののすばらしさがある。ダニエル・デイ=ルイス演じるジェリーは決して良い人間ではない。盗みはするし麻薬に手を出すし、素直さにも欠ける。何度も自暴自棄になるがそれがいかにもリアルだ。そのジェリーを見捨てず、あくまで家族を大切に考える父。その父親の姿が、私には亡くなった私の父にも似て涙でだんだんかすんでくる。冤罪ものの映画としては、ショーシャンクをも超えていると私は思う。 まちがいを間違いと認めず、さらなる大きな嘘で真実を歪める不正、私たちはそういう不正に対して、決然と対決すべきだ。感動を呼ぶ名作して賞賛したい。 [DVD(字幕)] 9点(2012-01-11 18:14:07) |
97. 天使にラブ・ソングを・・・
文句なく楽しい、おもしろい、すばらしい。良くできたストーリーで言うことなし。と言いつつ、コメントするが・・・。 尼さんと暴力団組織?のまったく異なる世界を同次元に扱うなんてすごい。音楽ももちろんすばらしいし、音楽の軽快なテンポに合わせるかのように進む映画もまたすばらしい。ピストルを構えたチンピラに「彼らを許し給え」などと祈るところなど最高。 しかし神様を冒涜してはいけないので、調子に乗りすぎないためにも1点だけ引いておこう。 [DVD(字幕)] 9点(2011-12-30 21:53:46) |
98. 人間の條件 第六部 曠野の彷徨
ソ連の捕虜となっても、過酷な運命は続いていく。そして最後は壮絶な死、予想できていた結末とはいえ、人間が人間として扱われる条件とは何かを突き詰めさせられる。 見終わった後DVD特典で撮影の様子を知り、改めて大変な映画だったことを感じる。 [DVD(邦画)] 9点(2011-12-18 14:59:03) |
99. クリスマス・キャロル ザ・ミュージカル〈TVM〉
原作はディケンズの小説だが、細部が思い切り書き換えられ、本格的なミュージカルとなっている。それでいて、なお名作の感動が伝わってくる。 音楽を手がけたのはディズニー映画でおなじみのアラン・メンケン、多くのアカデミーの作曲賞に輝いた作曲家だ。またケルシー・グラマーを初めとする俳優陣も実力派ぞろいだ。映像も美しく、クリスマスにもってこいのミュージカルだと思う。 [DVD(字幕)] 9点(2011-12-14 10:46:22) |
100. 紙屋悦子の青春
《ネタバレ》 静かな、静かな、静かーな反戦物語。映画の途中までこの映画がどうして評価が高いのかわからなかったが、見終わって十分すぎるほど納得できた。 「沖縄を取り戻すために」という明石少尉の言葉を聞いたときは、目から鱗が落ちる思いだった。そうか、死を覚悟しての志願(特攻隊)そして2階級特進(名誉の戦死)、明石少尉は悦子さんが好きなのに、どうして同僚を紹介したのかが・・・。悦子さんが泣くシーンでは私もいっしょに泣いてしまった。 長崎弁や鹿児島弁もあったばってん、よかあ映画じゃった。元が舞台劇ちゅうのもよかもんでごわした。 [DVD(邦画)] 9点(2011-12-08 21:28:55) |