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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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1001.  お姉さんといっしょ
うわっ、半世紀以上も前の西武新宿線中井駅だ(ローカルな感動で申し訳ありません)。やがて山手通りとして混雑する線路を跨いだ道もあるし、弟が迷子になって帰ってくるとこは妙正寺川ぞいのあたりではないか。ロケもそこらへんとは限らないわけだが、坂が多いのはあそこらへんの特徴(学校は高山小学校と読めたが三鷹にあるやつだろうか)。古い映画で銀座や上野はよく見られるが、こういう山の手の住宅地は珍しかった。別に中井に住んだことがあるわけではないが、知ってる場所の昔が出ると嬉しい。廃墟の空き地ってのがまだあり、崩れ残ったレンガ塀の上を子どもたちが歩いて遊ぶとこでは感涙した。家にテレビはなくラジオもたまにつけるだけ、商店街での和服に割烹着姿の買い物客の比率の高さ、などなどに、いちいち反応させられた。こういうのが劇映画鑑賞の態度として正しいのかどうかは分からないが、じっくりと見させてもらった。つくづくあらゆる映像は記録だと思う。お姉さんをやった伊吹友木子って、すました奥様なんかをよくやってた女優さんの少女時代じゃないかと思い、ネットで検索して中年の顔を見ようと思ったら、最近の写真らしいお婆さんの顔しか出てこなかったので確認できず。えーと話は、お父さんが出張、お母さんが病気で田舎に療養、留守を預かるお姉さんと小学低学年・未就学の兄弟、三人暮らしのあれこれ。田舎のお祖母さんが来たり、りんご売りに気を取られて迷子になったり、といったエピソードで50分をつなぐ。もっと「けなげな留守家族」を売り物にするのかと思ってたら、普通に「わんぱく」で良かった。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2011-06-21 12:22:56)
1002.  冷たい雨に撃て、約束の銃弾を 《ネタバレ》 
東洋人と西洋人が映画の中で絡むと不協和音が生まれがちなので心配していたが、ラテン系だとそうでもない。というか、本作では異邦人ということが、記憶が薄れていくことと重なってイキている。すべての人間社会にとっても異邦人になっていきつつあるということ。ラストシーンがテーブルでニコニコしている主人公なのにはちょっと肩透かし感があったが、あれはつまり孫の記憶が完全に消え去って、その代わりに孫のような子どもたちと団欒をしている映像が入り込んできた、って感じなのだろう。ジョニー・トーらしい丁寧さが出たのは、銃撃戦よりもスパゲッティ食べながらの銃を巡るやりとりのとこ。しだいに男がただものではないと分かってくるあたり。サッと投げられる皿の気合い。その皿の行方にただのシェフでない証明があり、その皿は後のシーンのリング状のフリスビーにつながっていく。そしてゴミ捨て場での銃の試し撃ち、自転車がカラカラと動いていくとこ。記憶が消えていく男との約束をボスとの契約より優先するって「男の美学」は分かるんだけど、ちょっと命を粗末にしすぎてないか。ゴミの野での銃撃戦にもう一工夫ほしかった。ボスの卑劣さを観客に得心させる描写にも。
[DVD(字幕)] 7点(2011-06-20 10:25:50)(良:1票)
1003.  バッフィ/ザ・バンパイア・キラー
最初のうち、エスカレーターを真上から見下ろしたシーンなんか「もしかすると拾い物かも」と思ったんだけど、だんだん緊張は薄らぎ、駄目でしたね。ホラーコメディって、どこか逃げ腰になってるとこありません? 心底怖がらせるのが難しいもんだから、くすぐり笑いに逃げてしまっているというか。怖がらせるのって失敗すると笑いと紙一重なもんだから、「いや実は最初っから笑わせるつもりだったのだよ」と、ズルしてる感じがある。怖がらせるのが難しい時代になったってことはあるでしょう。本当に守らねばならないものってのが不確かになって、つまり本作だと、バンパイア集団と釣り合わされるものが、高校のダンスパーティになってしまうわけね。そこがコメディなんだよ、と製作者側には言い分があろうが、本気で「怖さ」に挑戦してほしいな。作品を選ばずどんな映画にも登場してくるドナルド・サザーランドの盲目的映画愛を見習ってほしい。
[映画館(字幕)] 5点(2011-06-19 10:37:56)
1004.  大河のうた 《ネタバレ》 
家族の最期を看取り続けた母は、しかし息子に看取られずに、遠くの汽車を眺めながら死んでいくというのが本作の中心。亭主が頼りないぶん、自分が頑張らねば、と常に自分に言い聞かせて気を張っている母を描く序盤、父の死後大叔父の家に移り、学校へ通うはしゃぎの描写などがあって、母のへそくりでカルカッタへ出てくる苦学生の日々。この作品の眼目は、休暇中の帰省でのなんとはない母との不調和と言うか、他人行儀と言うか、鬱陶しく感じられてくるあたり。もっとカルカッタの話をしとくれ、と言われたって煩わしいわけよね。残酷なことだけど、その残酷さが成長と言うことであり、『一人息子』などの小津映画を思い浮かべざるを得ない。次の休暇のときに帰省しないでいると…となるわけ。電報であわてて帰ると、庭先に大叔父がボッと立っている様が実にまがまがしい。その前の休暇のときは、わざと帰りを一列車(ということは一日)遅らせたんだけど。
[映画館(字幕)] 8点(2011-06-18 09:47:06)
1005.  ウォーターダンス
病室ものの集団ドラマ。暴走族と黒人の対立が軸。前者はママが付ききりで事故の相手が悪いと信じ込まされてる。黒人のほうは家族の有り難みが分かりかけてきたところで逃げられる。ポイントは踊り子アナベル・リーを巡る賭けと、電話交換台への怒りの爆発のあたりか。水面で踊り続けていると溺れないという夢が、題名の意味。人生訓。まじめな映画だがその分小さくまとまっている感じは否めず、もひとつ大きな爆発が欲しいところだった。女医ローザのエリザベス・ペーニャが、それらしい。闖入してくるカントリー・ダンスの慰問、ああいうのあるんだね、あの国。車椅子でストリップ行けるアメリカのほうが偉いと思った。
[映画館(字幕)] 5点(2011-06-17 10:18:18)
1006.  ハート・ロッカー
普段は不必要に爆弾が爆発するアメリカ映画で、「爆発させない」人を描いている。とにかくずっとピリピリしていて、物語を語るというより、そのピリピリした日常を追体験する映画として優れていた。なぜイラクにアメリカ兵がいることになったのか、とか、爆弾を仕込む側の言い分にはまったく触れてないが、兵士の視線に徹して戦争を見る立場を取った以上、それでいいと思う。イラク戦争はベトナムの反復やってる、と思いがちだったが、いろいろ違いはあるのだな。装備は進歩した。ほとんど宇宙服にまで膨らんだ。それだけ土地の空気からは隔絶されてもいるのだろう。暑さにしても、あっちのジャングルの湿度とこっちの砂漠の湿度の違いは、体感で大きく違うだろうし、そこから来る不安の質も変わってくる。ジャングルのどこにベトコンが潜んでいるか分からない不安に対して、こちらは都市で周囲から無表情に見守られ続ける不安がある。ときにカメラで撮られている。見られ続けていることの居心地の悪い不安、どんな厚手の防護服でも防げない視線にさらされること、これがイラクのアメリカ人の立場なんだ。いいとこばっか描いてるな、とは思うが、少なくとも戦争の大義を主張してはいない。そんなもの探しても見つからないだろうが。
[DVD(字幕)] 7点(2011-06-16 12:15:08)
1007.  コクーン 《ネタバレ》 
視力検査で一番下のを読んでパッと車のカバーを取るとこと、ディスコでフィーバーするとこで場内に拍手が起こった。コメディタッチの部分は、なかなか楽しめた。あれで全編覆ってくれれば、もっと良かったのに。悪童三人組風の主人公たちを受け入れちゃえば楽しめる。「お隣の宇宙人」を素直に受け入れてしまうおかしさ。「実は私たちナントカ星から来たナントカ星人なのよ」「うん、そうだと思った」。そして終盤になってくると、東洋と西洋の死生観の違いを、しみじみ感じた。日本だったら、ご先祖様のいないとこには行けぬ、という反対者が出たに違いない。妻への愛じゃなくて。集団で昇天しても、あちらは個人と神の契約なんだね。ユングの言う「全体性への回帰」ってのも、東洋のご先祖様のいる世界とは、ちょっと違うみたい。ということで、このころからは宗教的なものを語るにも、SFの仕掛けが必要になったのだった。あの世の新解釈。かわいそうなのは死んじゃった宇宙人二人。
[映画館(字幕)] 6点(2011-06-15 12:12:30)
1008.  たそがれの東京タワー 《ネタバレ》 
昔1時間ぐらいの中篇映画が大量に作られてて(大島や今村の初期にもあり)、ああいうのがあんまり映画史の本には出てこないんだけど、なんだろう、助監督の昇進試験とか、新人俳優のテストとかを兼ねてたのか。たぶん時代の映像記録の宝庫ではないかと思うんだけど、ちゃんと保存されているのだろうか。でたまたま観られた大映のこれについて、ちょっと語る。主演女優が仁木多鶴子って人で、ロングで出てきたときは若尾文子に見えたがアップになったら財善直見だった(ないと思ってたらこのサイトに人名登録されてた。大したものだ。『猫は知っていた』でヒロインをやってる。そこから採った芸名だな。未見だがメロドラマのヒロインより少女探偵役のほうが合ってただろう)。主演男優のほうは川地民夫似の小林勝彦って人(こっちも登録されてた。おもに時代劇の脇役と声優で活躍)。この無名の二人によるメロドラマ(知ってる顔は三宅邦子と市田ひろみだけだった)。洋裁店のお針子が孤独のあまり夜な夜な店の服を着て都会に出没し、男と出会う。いいとこの娘と嘘をついてしまう。男は車関係の職工だと言う。募る恋心と今さら本当のことを言えない後悔にさいなまれて、苦悩煩悶。しかし実は男は大きな車の会社の社長のせがれで、最後はうまくいき、東京タワーの展望台で愛を誓うのだった、って話が1時間ほどの間に展開する。あまり映像記録としては得るものがなかったが、それでも当時の映画が観客にどういう夢を提供しようとしていたのかが分かる。ヒロインは孤児という設定で、時代的におそらく戦災孤児だろう。そこらへんの世代が就職していた時期だった。そしてモータリゼーションの波がやってきつつあった時代で、まさか世界中を日本の車が走ることになるとは思ってなかっただろうが、最先端の企業として車があった。身分を上にごまかしたのと下にごまかしたのとが、うまくいくという設定に、たぶん当時の時代の夢が織り込まれている。最先端のものが底辺のものを引き上げていってくれるだろうって。そんなとこでも、昔の映画はその時代の記録としての価値があるんだ。」
[CS・衛星(邦画)] 5点(2011-06-14 10:04:50)
1009.  ザ・ファーム/法律事務所 《ネタバレ》 
映画に向いてない話を無理に映画にした、ってのの典型みたいで、ただこちらは話を追ってくだけだった。やっと終わりのほうでB級的悪人が走って追いかけてきたりしたけど、何か流れとして不自然。そもそもなんでこの事務所、よく調べずに正義感の男トム・クルーズに白羽の矢を立てるんだ(顔見りゃ、正義の人って分かるだろうが)。過度の「至れり尽くせり」の不気味さのあたりは悪くない。孤独の戦いが始まるな、ってあたりも一応ワクワクした。でもなんか映像で追う話じゃないんだよな。兄さんを釈放した後の看守にカメラがちょっと寄ってくだけで、彼が事務所に通報したと理解させるあたりは、たしかに映像に語らせてはいるのだが。けっきょくこの事務所の不正を摘発するだけで、マフィアには及ばない。この方が現実的なんだろうけど、いつもガンガン正義で押しまくるアメリカ映画にしては、スカッとしない。トム・クルーズって、両手の人差し指立てて説得するポーズ好きなんじゃない?
[映画館(字幕)] 5点(2011-06-13 10:14:50)(良:1票)
1010.  息もできない 《ネタバレ》 
てっきり娘の復讐が話の本筋になるのかと思ってた。母の仇。ヤクザモンに突っかかっていった態度は、その復讐心を秘めているからだと思ってたら、憎しみの感情は曖昧なまま、彼女は男に「癒しの膝」を提供してたりする。男は、娘の母と自分との関係を知らないまま最期を迎える。その最期を導く男と娘の関係さえ知らない。もちろん現実世界ではこういう知られない偶然は多々あるだろうし、作者は物語の綾を最後にはほぐさなければならない、という義務があるわけでもない。現実社会は物語ではない。でもそれなら甥を絡めるのは物語の定番過ぎないか。遊び相手になってやり、時にはマスクまで付けてジャレあってる。最後は幼稚園の学芸会だ。主人公の柔らかい内面への示唆だとしたら安易過ぎないか。そこらへんの作者の態度が不確かなので、観てて主人公やヒロインを「すっきり掴んだ」って気になれなかった。一番気に入った人物は、下につくチンピラ。お笑い芸人にでも似合いそうなヒョロッとした顔してて、主人公にはビクビクしてて、でも荒れると本気で、なんか一番現実にこういう環境にいそうな若者の空虚をリアルに感じた。
[DVD(字幕)] 6点(2011-06-12 10:44:27)
1011.  ギルティ/罪深き罪 《ネタバレ》 
弁護士ものってのをアメリカ映画が好きなのは、正義というテーマがもともと好きなところに、契約社会と人情のズレ、って話で持って行きやすいからなんだろう。ドン・ジョンソンの気味悪さがなかなかで見どころ。自信たっぷりでありながら、変に神経症的でもあり。二人の仲を同僚に怪しませていくあたり。洗濯物を届けたり、離れていた場所からだんだん言い合って迫ってきたところに秘書が入ってくるとか。ヒロインが、狂気が自分に向けられていたんだと分かるあたりが怖い。単に仕事の対象としての狂気だったはずが、自分に向けられて持続していたんだ、って。ラブ・ストーリーの変種と見てもいい。締めが弱い。ドン・ジョンソンにガラリとすがるような演技をさせたらどうだったんだろう。デモーネイは、ヒラリー・クリントンを意識してたな。
[映画館(字幕)] 6点(2011-06-11 09:51:56)
1012.  ブリット
10年前にヒッチコックがねっとりゆるゆると迷宮へ導いていったサンフランシスコの坂道が、サーキット場に変貌する。ボンボンと弾むのがいい。最初は本作もゆるゆるとスタートするの。視野が制限される斜面の街を生かしている。追うものと追われるものが入れ替わって、バックミラーに車が浮き上がってくるあたりの安っぽいズームアップが、わけもなく嬉しい。ベルトを締めて急発進。この序破急の序から破に移る気合いが、アクションものでは大事だな。スピードを制限させていた斜面の特質が、ここで車をボンボン弾ませる特質に移行する。悪漢たち、運転してるのが一見銀行員風、助手席が一見老教授風と、これ見よがしの悪人顔でないのもいい。終始無言ってのも大事(「しめしめ、うまく撒いたぞ」「ゲッ、まだついてきやがる」「よーし、いっちょう撃ったるか」などといちいち喋ってるとこを想像して下さい、いかに興ざめか)。で銃が登場して破から急に至る。段取り通りの展開と言えばそうだけど、でもこの映画からなんだろ、カーチェイスの作劇法が確立するのは。車だけでひとつのシークエンスを埋め切った潔さが立派。それまでだと車の疾走は、なんかのアクションと次のアクションとを繋いでいる役割のほうが多かったんじゃないかな、印象で言っちゃってるけど。というわけで、この中盤のカーチェイスが見どころとして目立ちすぎるため、あと病院や空港でもいろいろやってはいるんだけど、そっちの印象が薄くなるのが、作品としてはアンバランス感があってちょっと損してる。死臭漂う職場で生きる男の悲しみ、ってのもテーマっぽく出しているが、あんまりマックィーンには似合わない。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-06-10 10:15:18)
1013.  元禄忠臣蔵 後編
これは原作の真山青果のせいなんだろうけど、まったく大石中心の話なわけね。群像ものではないし、吉良のほうもほとんど描かれない。第一討ち入りシーンがないんだもん。原作がそうなんだけど、これって当時の国策映画が兵隊さんの苦労話だけ描いて、敵が出てこない、ってことと似ている。大石のやったことがいかに善か、ということより、彼の内心の苦衷に共感しようとするほうが大事なんだ。だからあえて悪玉を描く必要がない。あえて中国侵略を正当化するアジテーションを必要としなかったこととパラレル。そういう意味では間違いなく本作もあの時代の国策映画であったわけだ。美しいとこと言ったら、まず冒頭、能舞台の裏手からクレーンで下降してきて大セットを収めていき、そのまま殿様のほうに寄っていく大移動。屋敷の中で吉良を見かけた翫右衛門が、すがりつく妹を引きずりながら奥へ向っていくシーン。長回しで廊下を回り歩いた果てにこれがくるのでいっそう効果があった。ただラストの高峰三枝子のエピソードは退屈だったな。もう疲れてたし。
[映画館(邦画)] 7点(2011-06-09 10:22:56)
1014.  元禄忠臣蔵 前篇
2カット目で刃傷になる空前絶後の松の廊下。まずセットのすごさを見せて、ついで柱越しに捉えてゆるゆる移動するカメラ、吉良が浅野の悪口を言ってて、こちらに歩いてくるとその後ろのほうで座ってた内匠頭が立ち上がってこちらに走ってきて切り付ける。この緊迫感、文句ないですなあ。知らせを受ける浅野家での部屋を越えていく横移動、あるいは裁きへの不服を訴えるナントカのあとを追いかけていくカメラ、いずれも新鮮。構図美では屏風囲いの中での内匠頭を俯瞰で捉えたカット、障子ごとに座っている侍たちがアクセントになって実に美しい。切腹シーンは俯瞰で始まりゆるゆると下降していきながら、内匠頭が何かにハッとしてカメラが地上に降り立ったときに、家来が画面に入ってくる。内匠頭が中に入ると同時にまたカメラが上昇して、中の儀式と外の家来の嗚咽を同時に収める寸法。あるいは城受け渡しのときや、山科閑居の母と娘が去っていくときの駕篭を追うカメラ、など移動撮影の美の極致を見せてくれる。構図がどんどん変化していくことのサスペンス。俯瞰は権力志向だと言われるけど、クレーンで下降してくると、観客の視線が登場人物の高さに下りてくる、って感じもある。本作は溝口の映像テクニックを堪能するだけのためなら、一番ふさわしい映画。
[映画館(邦画)] 8点(2011-06-08 12:16:01)
1015.  必死剣 鳥刺し 《ネタバレ》 
世間の噂話だけを根拠に、自分の死に花を咲かせるための暴力を行使する、って昭和にもたくさんいた愚かなテロリストの典型みたいな冒頭の事件。あんまりこんな奴に付き合いたくないな、と思いながら観続けていると、疑念を持ちながらもボスの言いなりに用心棒としての殺人を行なう。自分というものを消して、道具に徹する。使役され、善悪の判断を外部に置くスッキリした生き方ではあるが、やはり愚か。しかしそこで使役されていた意味が分かり、初めて自分の判断で「敵」を捉え乱闘から必死剣に至る。「必死」によって初めて、自分自身だけの「生」にたどり着けた男の物語、ってことか。観ながらモヤモヤしていたものが、岸部一徳の下知で「そういう話か」とスッキリする瞬間がこの映画の勘どころ。その瞬間のドキドキに比べると後の乱闘はいささか大味だった(ご別家との一対一の静かな緊張は悪くない)。使役されることの悲しみは漂った。「侍もの」では女性の描き方ってのが難しいんだな。噂話というベールは掛かっているけど、側室は分かりやす過ぎる型通りの悪女で、主人公の妻や姪は、これまた型通りの貞女。寂しく微笑むだけの存在。時代劇でも市井ものでは魅力的な女性をたくさん描けるんだけど、武家ものになるとなかなか型を破れない。それだけ女性が生きづらい環境だったってことなんだろうが。
[DVD(邦画)] 7点(2011-06-07 12:22:57)
1016.  路上の霊魂
演技法はやはり映画黎明期特有の大振りで、顔を手で覆って回顧したりする。本作は「低俗娯楽でない芸術映画を創るんだ」という意気込みで製作されたフィルムだから、とりわけ新劇臭が濃いのかもしれない(クリスマスのシーンなんかがある)。しかし姪にバイオリンを聞かせている樹に寄りかかっているカットの美しさ、なぞは普遍的な映画の「美しさ」に至っている。運命の分かれ道のカット、八木節の兄妹が去っていこうとしている道、伝明ら親子の帰郷の丘の上から見た道など、画面の奥に伸びていくカットに映画ならではの新鮮さが感じられる。あのお爺さんが小山内薫だそうで、太郎がこの監督の村田実、じいやの役がシナリオを担当した牛原虚彦とのこと。関係者一同がスタッフキャストを兼ねワイワイやっている自主制作的な手作り感に時代の息吹が感じられ、現在の我々には歴史的人物を動画で見られる興奮がある。オバサンでしか知らない英百合子が令嬢役。テーマは寛容と非寛容の対比で『イントレランス』の線。大正10年とはそういう時代だったんだろう。関東大震災より前だ。令嬢の想いが駅の太郎のとこに現われ、父のとこに息子(?)が、また落ちぶれた主人公のとこに若き主人公がバイオリン持って現われ、なんてトリック映像が当時の観客にはびっくりだったんだろうね。いやそうでもないか、目玉の松っちゃんの忍術映画など、彼らが目の仇にした「低俗娯楽映画」でもうその手の映像はさんざん見て、観客の目は新劇人より肥えていたはずだ。
[映画館(邦画)] 6点(2011-06-06 09:57:30)
1017.  鑓の権三
三宅邦子はキートンに似ているという発見はあったが、それはさておき。一つ一つのカットはたしかに美しく、日本美の写真集といった趣はある。ただそれがリズムになってくれないのよね。そこが崑との違い。でも前半はけっこう良かった。権三がヒョロッと結婚の約束をしてしまったあたりから、逃げていく朝にかけてのあたり。あっという間に自ら悲劇に飛び込んでいってしまう、その勢いのよさに、一種の爽快感すらある。つまり泰平の世で、槍よりも茶の時代、おさゐの娘との婚約を決めちゃうのは、権三にとっては一勝負でもあったということ。泰平の世に対して、人々が何かイライラチリチリしてる感じ、ってのがずっと底にある。おさゐの縁側での長いモノローグなど、リアリズム離れするとこはいい。
[映画館(邦画)] 6点(2011-06-05 10:04:17)
1018.  支那の夜 [前後篇]
古い劇映画は当時の記録映画としての意味も持ち、その意味でこれは「あの時代の日本人の自分勝手なエエカッコシイの精神」を知るに優れていた。兄的な立場、我慢している立場、そして教育者という立場。そのままあの戦争の大義に重なる。「白人に支配されているアジアを、アジアのなかの兄さんである日本が、もう我慢できずに解放してやるのだ」。現実にある抗日運動に対しては、一応上海で日本人が傍若無人に威張っていることは認めざるを得ない、そこにある現実だから。それは認めてそういう「一部の不届きな日本人」に説教する。でこちらにひとつ負い目を負わせておいてから、李香蘭の方には「抗日運動は目隠しされた愛国心」だと言えば、これを観ている日本の観客はその二つで釣り合いを取ってしまう。全然レベルの違うものを釣り合わせて、納得させる。李香蘭の崩れた旧家と、日本の兵士の戦死。そういったゴマカシの釣り合わせの果てに「だからこそ手をつながなければならないのよ」となってしまう。そしてそれを情緒のレベルで許してしまう日本人のいい加減さ。ひどい話であるが、そのひどさを平気で生んだ当時の日本人の精神が、この映画にはしっかり記録されていて貴重。
[映画館(邦画)] 7点(2011-06-04 09:56:35)
1019.  水の旅人 侍KIDS
この監督は破綻するときは、いつも同じ傾向の破綻の仕方をする。ある種の大袈裟さ、テーマを扱う手つきに異様に力がはいってしまう(ダムに捨てられる空き缶)、コミカルを狙うのがハシャギになって、制御が利かなくなってしまう、パトカーを盗むあたりの演出。どこか「しっとり」とか「しんみり」があって、うまく釣り合いが取れるといいんだけど。合成も昔と比べりゃいいのかもしれないけど、なんせ『ジュラシック・パーク』観た後だと、金も時間もヒトケタ違う仕事って感じ。カラスの動きなんかもうちょっと何とかならなんだか。家庭の日常シーンは細かいカット割りでせかせかさせる(これを徹底させたのが次の『女ざかり』なんだろう)。この人のテーマとしての「時間」がやはり絡んできて、流水に「年をとること」や「若返ること」が重なる。カメラ・レコード・講談社の絵本、などの古物趣味を展開されると、何も昔ばかりがいいわけではない、とも思いたくなる。そして「水」は人間が保護するばかりのヒヨワなものではないことを、日本は最近また痛いほど知らされたわけで。
[映画館(邦画)] 5点(2011-06-03 10:08:46)
1020.  煙突の見える場所 《ネタバレ》 
原作椎名麟三のドストエフスキー的なるものは、つまり邦画の庶民の世界として親しんでいたものと同じだったんだ。何気ない日常の会話が、不意に深淵に迫ってくる。ささいな言葉のやり取りが、実は人生についての深刻な論争であったりする。それをまたうまく人情コメディにまとめ上げる技術のたくみさ。旦那が自殺しかけているときに逃げてきちゃった関千恵子と赤ん坊を捨てた母親が、明るい土手を歩いていくあの晴れ晴れしさに感動した。人を悪と善で割り切らない・あるいは割り切れないものとして遇する態度、これって明るいドストエフスキーじゃないか(と感心したら、あの関千恵子は原作にはないんだそう)。邦画は1940年代、前半は国威発揚・後半は民主主義啓蒙と、「大きな話」が占めていた。しかしここではそういう大局論や評論家的な態度が退けられる。虫歯や子作りレベルの身近な話から大きなものを見通そうとする。それが黄金の50年代なのだ。芥川比呂志の「正義」も、上原謙のパチンコで茶化される。そして「大きな言葉」が去った後の、新しい在りようをみんなで襖越しに模索している。「庶民」を描くことに徹しながら、「人民」までを見通そうとしている。時代の息吹を感じた。部屋の中にやたら影を導く(窓の桟から庭木の枝振りまで)。しかしそれが暗さにはつながっていない。といって光の存在の強調でもない。何か外部が変わりつつある予兆、とまでは言えないかも知れないが、風通しのよさが感じられてくる。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2011-06-02 10:21:36)
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