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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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1141.  屋根裏の散歩者(1992)
古びた鏡の上を這っていくデンデンムシ。プリズムの光の反射する廊下。ものうげに流れるタイスの瞑想曲。それぞれの部屋の痴態はそれぞれの部屋で閉じていなければならないはずで、裸で廊下に出てきたりしてはいけない。これはいわゆる「愉快犯」のハシリですな。殺したい積極的な意志があるわけではなく、殺せる状況を確認したいという感じで、スーパーの飲み物に毒物を入れたりするアレと同じ動機。見るだけでなく、関わることもできることを確認したい天井裏の男。斜めの構図は無理して入れてる。窮屈感ってことか、普通使われる不安感とはちょっと違う。昔のこの人の構図の凝りようは、それなりの納得に通じるものがあったが、このころはもうそれが自己目的化しているようで、味わいとしては薄い。
[映画館(邦画)] 5点(2011-02-01 09:54:45)
1142.  ゴールデンスランバー(2009) 《ネタバレ》 
最初のうちはかなりワクワクした。巻き込まれていくあたりの緩から急への展開。少し無理があるかな、と思うところがあっても、とりあえずリアリズムの線で見ていられたけど、ショットガン撃つ刑事やら通り魔君やらが絡んでくると、ファンタジーの線に近くなって、もうちょっとリアリズムの地平で踏ん張ってもらいたかった。こういう話ならば、そうでないと締まるところが締まらない(事件後すぐに容疑者を、市民の視線がある住宅地で警察が普通持ってない武器で殺しちゃ、オズワルドにも仕立て切れないんじゃないか)。いや、あの二人の演技はいいのよ。浜田岳はもちろん、不気味に上機嫌な永島敏行もそこだけ取り上げれば印象に残るキャラクターになってるんだけど、全体から見ると「邪魔」って気がした。そういった夾雑物が多すぎ。それは映画を活気づかせるより、主人公の「追い詰められぶり」を薄めてしまっている。まあつまりこれ、巻き込まれ型サスペンスっつうより、ほろニガ青春回顧もののほうに比重がいってる、ってことなんだろう。テレビレポーターが、主人公の「正義の味方」のときの画像に「そう言えば人を見下したような表情をしていたのが印象的でしたね」とかいうコメントを入れてたのが、実にアリソー。終わって冒頭を見直したら、ちゃんと子どもが母親に、ある仕種をしていた(あの階で彼がエレベーターから降りたことを竹内結子はどうやって確認したのか知りたかったんだけど、そもそもあの夫婦、彼がハンコを確認しているわずかの時間で、グルッと回っただけですぐにエスカレーターで降りてたが、あれはエレベーターがあの階止まりだった可能性を示唆する行動であって、ならまあ納得できるが、しかしエレベーター停止シーンで耳を澄ますと「3階です、下へまいります」のアナウンスが聞こえ、また竹内結子はエレベーターに乗ったさい新たにボタンを押していたのだから、すでに屋上から乗っていた彼はより下の階のランプを点灯させていたはずである、しかし点灯している階は彼女が押した左上隅の一つのみにしか見えず…。あ、そうそう、リアリズムじゃないのね、ファンタジー、ファンタジー…)。
[DVD(邦画)] 6点(2011-01-31 10:36:00)
1143.  ジャズ大名 《ネタバレ》 
監督本来のリズムが感じられた作品はこれが最後だったかな。十字架が東西南北を示すようなどうでもいい細工が、画面を生き生きさせる。不意に岩陰から現われる「ええじゃないか」の絶妙なカット割り。何と言ってもこの映画最大のアイデアは城の設定で、ただ横に長いってだけで後はどうなってるのかよく分からない、というすごいセット。ソロバンに乗って滑っていけるんだもんね。この妹が唐十郎の後ろにじっと控えているあたりのおかしさ(喜八先生の娘とか)。ヤケクソ気味のジャムセッションは筒井好みだが、ドンツクドンドンツクツクは間違いなく喜八先生の世界。おかげ参りも官軍もなぜかなだれ込んできて、地上の戦闘とは無関係に、明治になってもジャズは続くのでした。『肉弾』も戦争の終わりをドラム缶に閉じ籠もって通過させる男が主人公だったけど、こっちのはもっと積極的な拒否みたいなもんだ。筒井のアナーキーが、いいふうに喜八先生のアナーキーと共鳴した。
[映画館(邦画)] 8点(2011-01-30 12:09:05)
1144.  川の流れに草は青々 《ネタバレ》 
いちおう主人公は青年教師なんだろうが、子どもが主でそっちは添えものと思えばいい。トンネルから出てくる汽車を合図にかけっこする下校の子どもたち。ブンブン袋を振り回して橋から落としたりしちゃう。後ろの女の子も橋ぎわに寄って見る。ここらだけでもういい気分に包まれてくる。家にも学校にも所属していない子どもの時間。遅れそうになって走り、小さな階段から校庭の朝礼の列に入っていくワンカットなども、ノビノビしていてよろしい。検便のエピソード、なんかさくらももこにも通じる視線。新鮮さを保つために冷蔵庫にしまっとくやつ、容器を落として箱に入れてくるやつ。遠雷が聞こえる広がりや、ゆったりとした斜面も好きみたい。安定したものよりも不安定なものを、はっきりしたものよりもまだ曖昧なものを、という好みが、青年の恋愛より少年の感情のおもむきにカメラを向わせる。やがてそういう姿勢は『冬冬の夏休み』や『童年往事』でより充実した成果を見せ、さらに歴史を扱っても、それを包む想い出のほうにカメラを向わせていくことになるわけだ。
[映画館(字幕)] 7点(2011-01-29 10:25:27)
1145.  火宅の人
一番良かったところは、警察署でいしだあゆみが原田美枝子のおでこを叩くとこ。頬を引っぱたかないで、「めっ」って感じなの。フトコロが深いという表現でありながら、変に悟った感じを伴わず、滑稽さで対象化しちゃってるっていうか。ラストの「あなたのすることはみんな分かってんのよ」なんてとこは、そのセンスに欠けて、もひとつ鮮度が落ちてしまう。もちっと時代がプンプン匂う映画を期待したが、流行歌も出ず、そういう趣向の作品ではなかった(音楽は最悪だった)。あたりにどれだけ迷惑をかけても、そのことを自覚していればそれだけで許してもらえるんじゃないか、という甘えた男の話なんだけど、でもこれ、日本文化の一つの型なんだろうな。上方歌舞伎に出てくる放蕩息子の末裔って感じで。放浪って言っても厳しいものじゃなく、遊山の変形みたいなもので、金がなくなりゃ帰ってこられる家がある。それをただ甘えと否定してしまわず、そういう弱さを認め合ってしまうような土壌(本当はそれをこそ否定しなくちゃいけないのかも知れないが)、そういう文化の風土が描かれている。それはただの男尊女卑になってしまうこととは、微妙な差があるようなんだけど。夫婦の間での丁寧な言葉づかい、冷え切った感じを出すのではなく、ちょっとゲームみたいな感じを出していて、いい。
[映画館(邦画)] 6点(2011-01-28 10:19:28)
1146.  若者のすべて 《ネタバレ》 
3章の「ロッコ」から、それまでのネオリアリズモのタッチと、神話のような世界とが重なってきて交響し、圧倒的。長男は小家庭に籠もり外界には無関心、四男は都市でやっていこうと決心して、その信念に沿って勉強してる。長男の消極的都市生活に対して、積極的都市生活。五男は未来への希望であり、故郷へ帰れる者、さらには故郷を富ませるであろう者として存在する。重要なのはもちろん、次男のシモーネと三男のロッコの対立で、この二人の自分の役割に執着するその過剰さが、神話の雰囲気をかもす。獣性と聖性の対立という二元論で片づけてもいいんだけど、さらにこの二人がどちらも都会に不適応であるところが厚み。クライマックスでロッコがシモーネのことを、「家のいけにえ」と言ってたけど(公開時の字幕では、私のノートを信ずるなら「家族の土台となる者」)、あれは自分も含めてなんだよね。クリーニング屋での女たちにからかわれながらの働き、ジムで見込まれたときの歯まで調べられる扱われよう、酔いどれて酒場で友だちに馬鹿にされる痛ましさ。それは彼ら兄弟が地上に堕ちた神々の気配を漂わせているからこそ増幅される惨めさなんだろう。シモーネが金をたかるシーンでテレビがずっと古典画を映し続けていたのなんか、これは古典悲劇なんだよ、と監督が確認してるみたい。四男はロッコのことを「許してはけないものまで許してしまった」と言ってたけど、その過剰さが彼を神々の高さにまで引き上げ、また社会との不適応を招いている。ナディア陵辱シーンの、この兄弟の惨めさの極みがそのまま神性に通じていくようなあたり、ゾクゾクする。みなで雪掻きに出かけていくシーンは、後で振り返って悲しむために仕込まれた失楽園用情景だな。父が故郷にいるあいだずっと辛抱し、憧れ続けていた北部都市にやっと出てきたという母も悲しい。南部の暮らしのつらさを描いた場面はワンカットもないのだけれど(それならもう『揺れる大地』でミッチリ描いた)、それがずっと映画の通奏低音になっている。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2011-01-27 10:27:10)(良:1票)
1147.  カッスル夫妻
伝記ものという枠があるせいか、ミュージカルとしての楽しみはこのコンビの他作品に比べて、ちと落ちる。前半はいいところもあるんだよ。駅でのタップシーンは、こじんまりしているけどやっぱ楽しいし、ドライブに誘うときの二人の心のゆらめきを、犬を小道具に使ってうまく見せる。あるいはプロポーズするときの、明るい部屋と暗い部屋の対照の妙。つまり結婚するまでは、普通のミュージカルものの型通りで手馴れているわけ。ジンジャーの下手な悪魔の踊りがあったりというサービスも含めて。ミュージカルってのは、非日常的な恋愛状態で一番ふさわしく、本来結婚で終わらせるものなんだなあ。生活のある二人の暮らしになると、肝心のダンスシーンがも一つ酔わせてくれない。監督のせいなのか振り付けのせいなのかは知らないけど、ダンスがダンスだけの表現で閉じちゃってるってことなのか。軍隊帰りの旦那と踊るとこが、まあミュージカルっぽいけど、あんまり高揚させてくれなかった。アメリカを転々としているシーン、地図の上で踊ってて、蟻のような群衆がうじゃうじゃと湧いてきて踊るってのは悪趣味でしたな。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2011-01-26 10:15:38)
1148.  宇宙大戦争
私にとって千田是也はまず「東宝特撮映画にちょっとだけ出てくる博士の人」って存在だったので、のちに偉い演劇人と知って驚かされたものだった。そしたらこれでは「ちょっとだけ」じゃなく「ずっと」出てる。変なピッタリした水泳帽みたいな宇宙服(?)姿で、同じ格好の池部良とともに、出ずっぱり。しかもこの映画、当時の右寄りの空気が若干感じられ、外交交渉の出来ない敵に対しては先制攻撃あるのみという勇ましい話で、どんな役でも平気でやってしまう左翼演劇人のふところの深さを感じた。一番驚いたのは、59年の映画で、設定が65年という近未来なの。で日本のロケットが月に行っちゃうんだ。東京オリンピック後の未来は、もうなんでも可能なバラ色に見えてたのかな。宇宙人対策の国際会議が当然のように日本で開かれていて、日本人が地球防衛を仕切っている。そういう6年後の未来を描くことが可能なほど、日本が成長期だったってことか。あ、映画は私にはつまんなかった。とにかく都市が破壊されるとこが好きなもんで、これ、ほとんどの舞台が月面なんだもん。破壊光線が砕くのは岩とショボい円盤ばかり(しかも山が変にとんがっている)、冷却光線で地球が攻撃されるのは、冒頭で予告のように特急が転覆された後は、終わりのほうでちょびっとだけ。怪電波で操られる隊員ってところに一応ドラマ的なサスペンスは用意されていた。池部良が亡くなったとき、追悼記念で彼が金田一耕助をやった中川信夫の『吸血蛾』って珍品どっかでやってくんないかなあ、と思ってたのだがかなわず、そのかわりに、彼の出演映画としてはまあ珍品と言えるだろう、これを観た。どっちも安西郷子と共演してんの(写真家秋山庄太郎によると「映画フィルムよりもグラビア写真に傑作が多い不思議な女優」で、この二年後に三橋達也と結婚して引退)。
[DVD(邦画)] 4点(2011-01-25 09:55:43)
1149.  危険な遊び(1993) 《ネタバレ》 
向こうは悪は悪としてきっぱり断罪するからなあ。あの母親、これから一生クヨクヨ悩まなくちゃならなくなるんだろうな、と後味悪い。主人公のほうが精神的に危なくみられてるあたりがミソ。最初の木のぼりで、カルキン君がイライジャ君を宙吊りにして助け上げるのが伏線。妹への殺意がいま発動したってのに無理はないか、という気にもなるが、イライジャ君の登場で均衡が破れたってことなんだろう。アヒルのおもちゃが出てくるところは、もう少し何か出来なかったか。いい仕掛けなのだが、も一つ迫力がない。最後ぶら下がって、両手で僕を助けてよ、と言う。欧米人はこういうふうに悪魔はささやくと見るわけだ。キリスト教世界の厳格さ・容赦のなさは、つねづね映画を見ていて、我々のナアナアでやってきた世界と一番違いを感じるところ。ナアナアの世界も悪くないよ。ま、この映画の現在での価値は、『ホーム・アローン』後のカルキン君と、『ロード・オブ・ザ・リング』前のイライジャ君の、選手交替期のすれ違いを目撃できるってところか。
[映画館(字幕)] 6点(2011-01-24 09:59:06)(笑:1票)
1150.  みどりの壁 《ネタバレ》 
ジャングル開拓におもむいた元都会暮らしの一家の悲劇。詳しくは言えないけど、ラスト近く、川を行く舟がしだいに増えてくるシーンから後、ほとんど字幕なしで描かれる部分が凄く、子どもが作ったおもちゃの水車のチーンチーンと鳴る仕掛けが澄んで響き、じっと黙って食事の支度をしていた母がワッと泣き崩れ、そこでストップモーション、バッハのコラールがギターで聞こえてくる。おそらく映画の締めとして、ほとんど完璧と言っていい。このラストまでは、ややキザな演出でかえって軽めの印象をもたらしていたのが、ラストは正攻法でちゃんと手応えのある重さを持った(アルマンド・ロブレス・ゴドイってこの監督の、もう一つ日本で公開された作品『砂のミラージュ』は、キザのほうに傾きすぎてしまった)。ただ涙だけでなく、政治への怒りが裏打ちされているところがいかにも南米。家族の不幸を描きつつ、それを強いた開拓事業・さらに大統領へと怒りの方向を定めている。その構造だけを見ると、涙と怒りが釣り合って単純になってしまいそうなんだけど、ジャングルでの生活の描写が丁寧なので、映画が豊かになっている。涙と怒りが別々の天秤で釣り合うというより、それが混じり合って迫ってくる。
[映画館(字幕)] 8点(2011-01-23 10:04:56)
1151.  時の翼にのって ファラウェイ・ソー・クロース! 《ネタバレ》 
天使像があたかも飛翔しているような冒頭のカットには興奮したものだったが、この人の映画は何か「監督の世界観」が出てくるとしぼんでしまう。映像的には白黒場面のカメラがゆらゆら動き回るカットなんかいいところは多いんだけど、それが話の必然性の裏打ちが弱いんで、淡々とし過ぎちゃうっていうか。天使が人間になってつまんなくなっちゃうのは、そういう設定なんだろうが、そのつまんなさの縮小感が映画そのものにも当てはまってしまった。後半なんだかよくわかんないまま悪漢ものになっていって、空中ブランコで荷を運ぶあたり、ちゃんとした活劇もののなかでのアイデアなら、なかなか面白いと感心したかも知れないが、こうヌルヌルした展開の後で見せられると、電球のコードがもつわけがない、などとヒンヤリ見ている己れがいた。
[映画館(字幕)] 6点(2011-01-22 10:12:49)
1152.  新・喜びも悲しみも幾歳月 《ネタバレ》 
啄木の墓見に行って植木等が倒れ、パッと教会になって数年後の結婚式、アレアレと思わせといてちゃっかり車椅子で出てくる、なんて観客をからかうあたりはちょっと良かったが、なんかただの名所巡りになってるとこもあって、宇喜多秀家の墓なんてどうでもいいじゃないかと思わされ、総じて期待外れだった。よし、まず悪口を言っちゃおう。取ってつけたようなナマな反戦的言辞「戦争に行く船じゃなくてよかった」。自分で「あの映画は良かった」なんて言うな。紺野嬢の存在感のなさ、などなどが浮かぶが、紺野嬢に加藤剛、中井貴一、田中健と、あきらかに、強烈な個性を持たない・善意の人しか演じられないような俳優を選んでますね。けっして「神話」にはならない、固有名詞性の稀薄な「庶民の物語」を造り出してしまうキャスティング。こういう姿勢は現代の創造者としてイカンと思う一方、どこかでこういう世界を残しておきたい、って気もして、なんか全面否定する気にもなれない。まあそういう、昔の名人を懐かしむ、ってところが味の映画です。
[映画館(邦画)] 6点(2011-01-21 10:18:02)
1153.  ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディー
これ全編、ヤンキー精神の国威発揚映画。同時期の日本の国策映画と違って明るいのなんの。成功物語の型。随所にひらめく星条旗。リパブリック讃歌のあとは、リンカーン像に手を差し伸べ、シルクハットかぶった女性二人を脇にJ・キャグニーがステップ踏めば、アンクルサムと自由の女神が登場してきて、もう恐れ入るよりほかはない。ナショナリズムの高揚。こうすればアメリカは興奮するという手本のような映画ですな。この人が踊るんで驚いたけど、あちらの役者は「歌って踊れる」ってのはもう基本なのね(ふーん、ギャング役じゃなくて、これでアカデミーの主演男優賞獲ってるんか)。老人のふりして恋人と出会い、突然の軽やかなステップ、なんて鮮やか。この人は背が低いので、ステップも爪先立ちしたのを多用してた気がする。それが軽やかさを引き立てた。船から上がった花火がスポットライトになる舞台演出の妙。街中のネオンサインをクネクネと経巡って成功の歴史をワンカットで描いてしまう。アッパレというほかはない。日本では悲壮感漂う国策映画が多く作られ、またそういうのが効果のある国民だったが、あっちは明るくイケイケで盛り上がる国民。やっぱそっちのほうが戦争は勝つよね。
[映画館(字幕なし「原語」)] 6点(2011-01-20 10:09:40)
1154.  私立探偵・濱マイク/我が人生最悪の時
この監督は「…もどき」という世界をピョンピョンと渡っているみたいで、「もどき」でない世界をいいかげん見せてもらいたい気がする(と封切り当時のノート)。これはアジア映画的というか、日活無国籍アクションもどき。でも主人公はウロチョロしてるだけで、事件との絡みが稀薄。そもそも「事件」に明確な輪郭がないのが、こういう話としては致命的。楊海平の顔はとってもいいんだけど。せっかくモノクロ・シネマスコープという活劇黄金期の枠を選択したのに、それがあんまり生きてない。痛快さがないの。陰気に指切り落としたりして、ジメジメして。
[映画館(邦画)] 5点(2011-01-19 10:11:48)
1155.  マヅルカ 《ネタバレ》 
色男・女たらしを描くと、この時代のドイツの右に出るものはないか(フランスよりも濃い気がする)。1935年のウィーン。真のヒロインが登場する酒場のシーンの頽廃感。バックに孔雀の羽根のようなデザインで姿を現わし、左手を腰に当てて、垂れたテープをかき分けながら歌って歩いてくる感じ。絶対に何か起こらねばならない、というワクワク感が満ちる。何しろ時代が下ってからこさえた時代色ではなく、まさに当時の空気なんだろうから。そして「何か」が起こって、映画は前半と後半にきれいに分かれる。それがどう重なっていくのか、っていうところが本作の推理小説的楽しさ。前半での女性の訪問が、後半で歌手の側から繰り返されたりする謎解き的楽しみね。物語の芯は、この時代に汎世界的にあった型で、何の作品がルーツかなんて確かめようもない人情話の世界なんだけど、やっぱりホロッとさせられる。警吏が、前に禁じたスカーフをそっと掛けてやったり。それと知らぬ実の子が礼を言って、空想の抱擁があって、歩いているうちにバックが輝きだして、となるの。前半で、女たらしと娘が踊るとこで、カメラと一緒にぐるぐる回ったりしてたなあ。
[映画館(字幕)] 8点(2011-01-18 11:02:57)
1156.  ミセス・ダウト
監督がC・コロンバスで、R・ウィリアムズにS・フィールドだろ。やや苦手な面子がそろって、まして冒頭、主人公がタバコの吹き替えを嫌がってクビになるって「良心的」なとこを見せられ、さらに子どもの人気者やってりゃ、アンタンとした気分になりかける。でもアメリカ映画の「型」の強み、話が一人二役になって展開していけば、それなりに見られてしまった。一つの趣向に集中してアレコレすると、アメリカ映画は手を抜かずにアレコレやる。サービスシーンとしていろんな声を聞かせたりいろんな女装を見せたり、R・Wのちょっと躁病的な個人芸を展開してくれる。邪気のないクラスの人気者といった無難なキャラクターなんでしょうなあ。これをひねってサイコ的な役をやってみれば面白いと思うんだけど、「いい人」の線からは出ないの(とこれは公開時に記したノート。その後そういうサイコな役もやったが思ったほど面白くはなかった)。音楽に合わせてダウトがホウキなどで笑っているカットは、つらい。この監督こういうのが好きなんだよな。お面が外に落ちて絶体絶命になったときの対処と、レストランの場は楽しめた。しかし最後にテレビで、家族とはどうあるべきかの演説が流れる。
[映画館(字幕)] 6点(2011-01-17 10:27:39)
1157.  続・菩提樹
『サウンド・オブ・ミュージック』では見られなかったトラップ・ファミリーの「その後」が見られるという楽しみはあるが、映画としては平板でも一つ面白くない。安下宿の裏手で「オールド・ブラック・ジョー」を歌うシーンが一番良かった。興味を引いたのは「戦勝国アメリカを旅するオーストリア人を描いた敗戦国ドイツの映画」という屈折。同じ敗戦国として、なんか感じるものがある(日本映画ではアメリカロケって、いつごろから出来たんだろう)。一生懸命彼の地でがんばって、故郷に似た土地に家を得るまでの苦闘。しかし歌はいつも折り目正しく、アメリカに媚びたりしてない。オールド・ブラック・ジョーもオー・スザンナも、バッハやパレストリーナと似たトーンになる。セックスアピールが必要と興行側に言われても、尼僧姿を選ぶ。出来るだけヨーロッパ風・聖歌風で押し通そうとする。そこに敗戦国の意地が感じられた。といってニューヨークの摩天楼には素直に感嘆を示し、アメリカ文化を卑下するわけではない。屈折はあるのだが、それに拘泥せず前向きなのがよろしい。前向きにならざるを得ない状況だったけどね。これを撮影していた映画人にも屈折はあっただろう。戦前はドイツ映画はアメリカと肩を並べていたのに、いまでは青息吐息。その戦勝国をドサ回りしている映画を何とか撮っている。同じ敗戦国のイタリアや日本は、50年代に黄金期を迎え映画祭などを賑わしていた。屈折するなってほうが無理。でもドイツ映画の没落は、敗戦が原因というより、ナチスの存在でユダヤ系映画人が逃げ出したことの方が大きかった。ああいうことやると、回復困難な致命傷になるんだよな。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2011-01-16 12:19:56)
1158.  マイ・ライフ(1993) 《ネタバレ》 
『ゴースト』や『ジェイコブス・ラダー』のシナリオの人だってんで期待したけど、それほど凝った話ではなかった。生まれてくる子に、末期ガンのパパが生前に作るビデオ、って趣向。ヒゲの剃りかたや、自動車の修理の仕方や、せがれにしたいことが、圧縮され、意識化される仕組み。「普段」の暮らし、というもののかけがえのなさが迫ってくる(なんか日本のほうがこういうの得意そうだけど、ソーントン・ワイルダーの芝居「わが町」ってのもそうで、アメリカにはけっこうこういうウェットな面がある)。超音波画像で子どもを出産前に見られるようになったし、こうして死後に向けた画像も残しておけるようになったし、「映像画面」というものを通して、今まで不可能だった出会いが可能になる拡がりが起こった。ある意味では人生の拡大。しかしその進歩を謳歌するだけにしないのが、あの一見合理万能の国の「気の弱さ」みたいなところで、そういう「人生を拡げる」科学に対する「人生を深める」もの、ってのを持ち出してこないと落ち着けない。それがあいかわらず東洋の神秘なんだなあ。それとホスピスの看護人が黒人と、アメリカ映画では精神面は有色人種が担うという絶対の定理がある。いつもそうやって釣り合いを取ってると、もうただの様式になっちゃって、そういう「気の弱さ」の本体を一度ちゃんと突き詰めてみたほうがいいんじゃないか、と老婆心ながら思ったりする。
[映画館(字幕)] 6点(2011-01-15 10:33:41)
1159.  忍ぶ川
とりわけ前半がいい。州崎パラダイスのあたりの美術(木村威夫)なんか丁寧で。木場での兄さん(井川比佐志)の最後の表情とか。奥のほうにピントが合ったまま、主人公がこっちに来るってのもあったね、浅草のシーンだったか。カモメを見る少年のシーンとか。メロドラマってのは、こうそれにふさわしい情景の中に、美男美女のアップがポンポンと入らないといけないんだ。リアリティを追及した演技じゃなくていいんです。美男美女であることを自覚している立ち居振る舞いが求められている。栗原小巻って、ちょっと下あごを突き出すと、ちあきなおみなのね。ときどきひどくドンくさく見えるカットがあるんだけど、男(加藤剛)はこういうところがいとおしいんだろうなあ、と思わされちゃうのがメロドラマの魔力。
[映画館(邦画)] 7点(2011-01-14 10:31:28)
1160.  天使にラブ・ソングを2
インディペンデントじゃなくメジャー作品で、監督や主な出演者がみな黒人てのは、いつごろから存在したんだろうか。けっこう最近だろ? これなんかハシリのころか。あの民族主義少年なんかを笑いのネタにするのなんかも、監督が黒人だからスンナリできたのかも知れない。民族と無縁にありたい、というアメリカ文化のいいところ。話は型通りなんだ。やる気なく流された日々を送っている生徒たちを導いてコンクールで一等賞にするっていう。分かっててもこういうのに弱く、ホロッとさせられる。拗ねてた子が戻ってきたり、母親の許しを得るところなんか、もうちょっと粘っこくしてもよかったか。音楽室でのデュエット、スズメがどうのって歌、あれ最後まで聴きたかったな。
[映画館(字幕)] 6点(2011-01-13 10:17:10)
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