1321. 黄色い大地(1984)
《ネタバレ》 黄色い大地、つまりは不毛の大地。 そこで暮らす極貧の人々。 その中でも、一番辛い思いをするのは幼い娘。 ここで描かれている悲劇は、つまるところ、農村部で慣行となっていた“嫁入り”という名の人身売買だ。 貧しい家は14歳という幼い娘を売りに出し、おっさんたちが食いつなぐ。 おっさんのために犠牲となる、幼い女の子。 このクソくだらん浅黒い野郎どもは死んでいいから、未来あるべき女の子を幸せにさせてほしい。 でも、もっとくだらんのは、その貧しい農村を視察にきた役人。 戦争に勝つため、軍人たちの士気を上げるため農村にやってくる。 そこで貧しい農村に伝わる歌を覚え書きし、戦争に役立てるというのだ。 何たるくだらん野郎だ。 救い難い。 貧しい農村に生まれた少女が、唯一希望として見出したものが戦争だった。 これが極めて残酷なオチ。 チェン・カイコーは本作でも、トラウマになるような悲劇を撮ってみせた。 これは凄い。 だけど後味が悪い。 だけどだけど、この後味の悪さがクセになるチェン・カイコー作品。 これからもチェン・カイコー作品は観ていくことになりそうだ。 何の為に? 悲劇を観るために? 悲劇を観てなんになる? まさにこれこそ悲劇だ。 [ビデオ(字幕)] 5点(2013-06-15 01:26:37) |
1322. 花の影
《ネタバレ》 チェン・カイコーらしい、毒っ気たっぷりの悲劇。 観終えた後の気色の悪い余韻は、何とも表現できないものがある。 特にラストシーンの怖さ。 完全にその辺のホラー映画の怖さを超越している。 コン・リーを乗せた車椅子が音をたてて迫り来る・・・ あー、マジで怖かった。 戦慄のラストシーン。 レスリー・チャンとコン・リーの熱のこもった演技も見所。 クリストファー・ドイルの撮った、少し曇り気味で寓話的な味わいを持つ映像も見所。 チェン・カイコーが演出した、毒キノコ的味わいのある悲劇も見所。 こういった見所満載の中で、最大のマイナスポイントは、その余韻の悪さ。 とにかく後味が悪い。 コン・リーの側近の毒キノコ頭の様に、気色が悪い。 この後味の悪さは、まさに毒キノコ。 いや、、毒キノコは食べたことはないが。 この作品、何気に『さらば、わが愛/覇王別姫』に匹敵するパワーを持っている。 チェン・カイコーの代表作として、個人的には挙げたい作品。 [ビデオ(字幕)] 6点(2013-05-22 00:55:37) |
1323. ぼっちゃん
《ネタバレ》 秋葉原の歩行者天国に車で突っ込み、更に車から降りてナイフで何人も切り付けた実在の人物をモデルにした、社会派ドラマ。 シリアスな作りかと思ったが、コミカルな部分が多勢を占め、予想を外した。 非正規雇用が生み出す社会への怨念と鬱屈から、無差別殺人に到った主人公の心の闇を、シリアスに描き、そこに一つの整合性が見られたならば、もの凄く味わいのある作品になったに違いない。 中村獅童似の乱暴なサブキャラが終始出てきたが、このキャラは、ほんと不要。 無差別殺人鬼を生む過程において、何ら関係性を見いだせない。 先にも書いたが、コミカルなシーンがとにかく多い。 笑えるシーンもあったが、この題材の映画に、そんな笑いは期待していない。 数々のコメディなシーンのおかげで、ラストシーンにおける秋葉原の歩行者天国に突っ込む寸前の息の詰まる時間は、まったくもって真実味がなかった。 思うに、この作品は、無差別殺人という凶悪な犯罪を犯した人間にも、ユーモラスな人間性が備わっていて、普通の人間とそれほど変わらないんだ、ということを主張したかったのかもしれない。 監督が意図したことは定かではないが、やはりこの題材を描くのなら、もっとドキュメンタリータッチで、シリアスに描くのが自然であり、傑作に成り得る方法論であったように思う。 [映画館(邦画)] 6点(2013-04-19 23:36:37) |
1324. 引き裂かれたカーテン
《ネタバレ》 アメリカ人が“鉄のカーテン”で閉ざされた国、東ドイツに潜入し、重大な機密を盗み出すという、ポリティカルサスペンス。 アルフレッド・ヒッチコックらしい美しい映像。 その中で繰り広げられる、アメリカ仕込みのご都合主義的なストーリー。 これが何とも、悪い意味でアンバランス。 終始緊迫感があり、楽しめる人には楽しめる内容となっているものの、あまりにイベント一つ一つが単純すぎる。 そして、主人公たちがピンチに遭遇する回数も多すぎ、しかも都合良く切り抜けすぎ、と不自然な流れ。 そして、最後はハッピーエンド。 ううむ、素直に楽しめなかった私に問題があるのか、この作品の都合の良さに問題があるのか・・・ ちょっとした問題作のようにも思う。 どうでもいいが、ヒロインに魅力が無いのが、隠れ致命傷。 まあ、これは個人的な趣味の域を出ないが。 [DVD(字幕)] 5点(2013-03-27 00:23:10) |
1325. はつ恋(2000)
《ネタバレ》 余命いくばくもない母親の“はつ恋”の男を探しに出かけ、その男を見つけ出し、次第に打ち解けていく過程を描いた前半は、とても面白い。 それに対し、みんなが平和におさまっていく後半は、あまりにフツー過ぎるというか、無難というか、もう一つ物足りない。 田中麗奈と真田広之の二人のコンビは、なかなかのお似合い。 歳の差を感じさせず、アブナイ方向に向かうのでは?と勘繰ってしまうほどの仲の良さ。 いや、むしろ私が真田広之の立場だったら、「もータマラン!!」ってなっちゃって、その立場を悪用するかも?!・・・いや実際はしないと思いますけどぉ(笑)。 そういや初恋っていえば、個人的な話として私の場合、中学生の頃だった。 当時のにじばぶ少年は、同じ部活の女のコと両想いだと思っていた。 そして時が過ぎること数十年・・・同窓会が開催されて、その女のコと再会した。 中学時代に好きだったことをそのコに伝えると、「へぇ~、全然気づかなかったよぉ。」だってさ!! 初恋なんて、しょせんこんなモンよ。 男の思い入れで終わり、女は案外おぼえてくれていないモンよ。 哀しいねぇ。。 脱線して失敬。 まあ、なんというか、長澤雅彦が書きそうな脚本というか、優等生的なヒューマンドラマ。 [ビデオ(邦画)] 5点(2013-02-18 00:20:36) |
1326. ミュージックボックス
《ネタバレ》 見飽きたナチスもので、苦手な法廷サスペンスときたら、もう楽しめませんという感じだったが、コスタ=ガヴラスの圧倒的な力に、そんな先入観は吹き飛ばされてしまった。 後半にいくにしたがって緊張感は増していき、実の父親が残忍な獣であったと娘が知る場面は、思わず唸ってしまった。 だけど、これって少し綺麗ごと過ぎやしないか?! 今まで自分を育ててくれた父親を、いきなり死に追い込むだろうか? 確かに父親が若い頃に犯した罪は鳥肌モンの許せない過去だろうが、実際に自分に対して愛情を持って育ててくれた父親でもあるわけで、こんなにいとも簡単に死に追いやることができるだろうか? そこには、弁護士としてのプロ根性が介在していた、と考えれば合点はいくが・・・ [ビデオ(字幕)] 7点(2013-02-11 01:05:04) |
1327. シルビーの帰郷
なんてセンスの無い映画だ。 気色の悪い女どものオンパレード。 しかも、やっていることや発言全てがつらまない。 しかしただ一つ共感できたことはある。 それは、社会がはみ出し者を嫌うということ。 「個性」は尊重されるべきだが、しょせん社会という組織は、“異端”を問題視したがる。 ただ異端というだけで、排除しようとする。 そんな問題提起を、私は勝手に読み取った。 それ以外は、全くみるべき点の無い退屈な映画だ。 [ビデオ(字幕)] 2点(2013-02-03 01:33:15) |
1328. 人斬り
《ネタバレ》 異色豪華キャストで、脚本に橋本忍。 つまらないわけがない! 以蔵は野性的ながら、一方で繊細な面を持っている憎めないヤツ。 ただ少しだけ頭が足らない。 頭が足らないから、偉い奴らにいいように使われ捨てられてしまう。 これは現代社会のサラリーマンみたいなもんだ。 ブラック企業に勤めているサラリーマンがまるで以蔵のようだ。 そういう意味で、ラスト、飼い主に報復するという顛末は胸のすく思いだが、以蔵自らの命をもって報復するというのは、どうにも切ない。 もっと良い解決方法はなかったんだろうか、と思う。 映画としての完成度も高いし、キャストも良い。 なかなか良い掘り出し物を見つけた気分だ。 [ビデオ(邦画)] 7点(2013-01-23 12:05:15) |
1329. ワカラナイ
暗めのトーンを基調とした映像センスは抜群に良い。 更には、無駄な説明やセリフを排除し、映像で語ろうとする姿勢は、まさに映画的である。 それに対し、音の使い方というか拾い方が、どうにも私の好みに合わなかった。 作品の中で聞こえてくる様々な音という音が、耳障りに感じた。 主人公を演じた少年は、確かにインパクトはある。 だが、好感は持てず。 おそらく、この少年がうんぬんではなく、この少年に演技指導をし、その映画世界を作り上げた監督に問題がありそうだ。 この監督、おそらく少し馬鹿である。 だけど、すごく映画の勉強をしていそうだ。 映像センス、つまり芸術的な部分は優れているが、どうにも頭が悪い。 頭が悪いと、主人公を演じた少年も馬鹿に見える。 馬鹿だからイライラしてくるし、この少年に感情移入や同情しようとする気持ちが湧いてこない。 以上、この作品を観て感じたことを、率直に書いてみたが、単なる駄作だとは思っていない。 むしろ、この監督の他の作品を観てみたいという、好奇心が湧いてくる。 映像センスの優れた、愛すべき馬鹿作品。 [DVD(邦画)] 4点(2013-01-23 00:52:51) |
1330. TOKYO EYES
《ネタバレ》 この時代の東京って、こんな若者だらけだった・・・というのはウソ。 ただ、「偽造テレカ」は懐かしい。 時代を象徴している。 吉川ひなのが、おそらく最も輝いていた頃。 そんな彼女が出演しているだけでも価値がある。 あのミニスカートは素晴らしい。 それに手を出さない武田真治も、かっこいい(?)、いや、ダメだ。 なんか東京都心をフワフワと歩いている感じの気分になった。 まったくもって、時間的感覚がない。 せかせかと東京で働くサラリーマンと全くもって異質な世界。 だが、そんなサラリーマンも、同じ東京で生活している。 同じ東京という場所で、こんな人間達が居ても、おかしくはないかもしれない。 吉川ひなのの演技はダメダメだが、そのダメさ加減が、彼女を何倍にも魅力的に映しているところが面白いし、とても良い。 [ビデオ(邦画)] 7点(2013-01-16 13:54:21) |
1331. 劇場版 フランダースの犬
この作品は、私に生きる喜びを与えてくれた。 そして正直に生きることの尊さ、“人類の友”としての犬の存在の大きさ、それを教えてくれた。 ラストは特に秀逸。 言葉には現せない感動。 感動し過ぎて、涙を流すというよりも、茫然としてしまった。 紛れもなく、私が今までに観てきたアニメ映画の中でNo1。 隠れたる、最高峰のアニメ映画を発見でき、観ることのできた喜びで胸が一杯だ。 私は、ネロとパトラッシュのことを忘れない。 そして、ネロとパトラッシュの分まで、人生を懸命に生きたい。 [DVD(邦画)] 9点(2013-01-13 00:16:32) |
1332. ヘヴンズ ストーリー
《ネタバレ》 愛する人を殺されたら、殺した人間を憎み、そこに復讐心が生まれる。 暴力として復讐を実行しても、そこには悲劇しか生まれない。 人は生まれ、やがて死んでいく。 それでも街と、その上に広がる青い空は変わらない。 死んでしまった人も、この世に残った人のことをどこかで見ている。 だけど、残された人は、一人でこの世を歩いていくしかない。 “生と死”そして“愛と復讐”というテーマを、深く追究した力作。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-01-06 23:24:17) |
1333. 蛇にピアス
原作未読。 いや、既読か未読か、そんなことは映画を観る上では、どうでも良いこと。 見た目以上に、精神的に痛々しい作品。 主人公のルイが、精神崩壊していく様が、実に痛々しい。 吉高由里子は、こういった役の方が相応しいのでは?と思うほどの好演。 それに対し、相変わらずARATAはダメダメ。 実にダメ。 かなりの部分において、登場人物たちの描写が細やかであり、リアルなところも評価できる。 問題は、観た後の気分の悪さ。 良い意味でも悪い意味でもなく、ただただルイの精神状態のことを想うと、どうにもならない憂鬱な気分になる。 こういう生き方をしている人には、同情も憐れみも要らない。 というか、そんなのはなんの効果もない。 ただ傍観するしかない。 そんなやりきれなさが、とても痛い。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2013-01-04 00:27:54) |
1334. 厳重に監視された列車
これって、観ている最中は何とも思わないのだが、観終えた後、じんわりくるような不思議な魅力を持った作品だ。 監督のイジー・メンツェルの作品は、なかなか観る機会がないので、わくわくしながら鑑賞した。 この監督ならではの、不思議な余韻を残す独特の味わいは、他に類をみない。 楽しい作品ではないが、記憶に残るであろう作品。 戦時下で思春期を過ごすと、こうなるのかなぁ、と何だか哀愁さえ感じさせるのは見事。 それでいて、どの時代の若者にも通ずる、普遍的な思春期の悩みを描いているのが、これまた凄い。 [DVD(字幕)] 7点(2012-12-25 23:07:53) |
1335. ポリー・マグーお前は誰だ
当時のフランスにおけるモードファッションやマヌカン(ファッションモデル)を題材に描いた、ドキュメンタリー風味漂う実験的な作品。 『勝手にしやがれ』を模倣したかのようなつくり、ひたすら当時の流行を追うだけの展開に辟易させられた。 本作なりの、ちょっとしたアート性を感じられたのが救いかな。 当時のモード界そのままをむき出したかのような内容であり、当時の当事者たちが笑えるほどマジにつくっちゃってるのが、また別の意味で楽しいかも。 [DVD(字幕)] 3点(2012-12-25 23:06:50) |
1336. 血
《ネタバレ》 ブレッソンの『バルタザールどこへ行く』やベルイマンの『処女の泉』を彷彿とさせる様な、凄まじく美しいモノクロの映像。 物語をいくら真剣に追っても、どうにも解釈にいたらない。 おそらく、美しい映像を感覚として捉えるべき作品だろう。 作品全体に関して言うと、どうにも暗ったいおはなし。 夜のシーンも多いが、内容もどんよりと暗い。 そして登場人物が暗い表情をしている。 決して楽しいとは言えない。 だが、例えば美しい絵画を鑑賞する際に、笑顔とか楽しさって必要だろうか? そう考えると、この暗さは必然か? いや、正直、よく分からない。 だが、この作品の映像が美しいということだけは分かる。 いや、感じる。 [DVD(字幕)] 6点(2012-12-22 01:22:20) |
1337. スイッチ! ~短篇.jpルーキーズ第2弾~
「短篇.jpルーキーズ」というWEB発信の作品を集めたオムニバス。 その第2弾。 このシリーズ全般に言えることは、残念だが、それほどレベルが高くはないということ。 この手の日本映画オムニバスって、結構な数あるのだが、このシリーズはレベル的に下の部類に入る。 もちろん好みの問題もあるだろうが、全体的に在り得ない設定、、、なんていうかファンタジー要素が強い。 そこに焦点があてられていて、なんだか逃げ道的なものを感じてしまう。 つまり、このシリーズ全般、本格派とは言えない。 一つの作品の尺が10分ちょっとという短さも一因の一つなので、全くダメと、一言で切り捨てられない部分もあるにはあるが・・・ [DVD(邦画)] 4点(2012-12-12 01:04:11) |
1338. ポルトガル、ここに誕生す ギマランイス歴史地区
錚々たる顔ぶれの監督が揃ったオムニバス映画。 目当ては、ヴィクトル・エリセ監督の作品だったが、不発。 代わりに、しぶとくアキ・カウリスマキ監督の作品が、自分の中では最上位にきた。 しがないバーテンダー。 セリフなし。 しかしその分、動きと表情で饒舌に語る。 これがまた、男の哀愁が存分に感じられて、なかなか良かった。 他の三つの短編は微妙なところ。 監督の名前負けしているのは確実といったところだが、これだけのメンツが揃うと、さすがに観に行かないわけにはいかない。 それが映画ファンの心境というものだろう。 [映画館(字幕)] 6点(2012-12-12 01:01:40) |
1339. サヨナラの恋
《ネタバレ》 昼メロっぽいし、チープっぽさ、都合の良さも否定はしない。 しかし、非常に感動できる恋愛ドラマ。 一人の若き女性が、二人の男性の間で揺れる恋心を丁寧に描写している。 丁寧に描写されているからこそ、強引な展開でも最後は納得できてしまう。 隠れた、恋愛ドラマの秀作だ。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-12-12 00:59:43) |
1340. 神様の言うとおり ~短篇.jpルーキーズ第1弾~
邦画オムニバス。 非常にチープでマイナーな、邦画オムニバスだ。 全作品がリンクしている、いや、リンクしているかどうか微妙なところだが、その作品のまとめ方がファンタジー入っているのが残念。 恋愛色の強いオムニバスなんだから、何もこんなファンタジーにしなくても・・・ 一つ一つの作品は、まあまあ観れるので、まあまあってことで。 [DVD(邦画)] 4点(2012-12-12 00:57:32) |