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なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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1361.  勇気あるもの
これ観ると、軍隊はけっきょく人間を鍛え直すいいところらしいんだ。戦死者の名前も記憶せずにプラカード持ってたオチョーシモノ反戦男が、軍隊の中で希望の目つきになる。さらに多くの兵を、肉体的・精神的に廃人にしている軍隊への批評の目がまったくない。女性監督ということで、かえって男性社会に過度に迎合してしまったのか。戦場でマイノリティの部隊が地位向上を目指して一番危険なところへ飛び込みたがる傾向を、ちょっと思い出させた。初めての夜明けの演習のところなんか、不気味さが出ていて良かったけど、教室のシーンはどうしてもダルになる。欧米でやはりシェイクスピアが基本なんだなあ。でも出てくるのが、悲劇と史劇のみで、喜劇には触れない。原題は「ルネッサンスマン」か。「文芸復興男」と訳しちゃいけないんだ。
[映画館(字幕)] 5点(2010-06-24 11:55:36)
1362.  ミッション 《ネタバレ》 
音楽がエンニオ・モリコーネ。『1900年』的なオーボエの歌から始まって、スタッカートのコーラスで盛り上げていく。歴史や政治など硬めの題材を背景にした映画ではとりわけこの人の曲が似合う。『死刑台のメロディ』の歌も好き。『ソドムの市』の、あたかも上品なサロンで流れているような音楽も大好きなんだけど、これは硬めの歴史ものってのとはちょっと違うか。またこの映画では音楽ってのが、そもそも一つのモチーフになっている。宣教師の布教の手段としての音楽が、けっきょく歴史を見ると、布教が音楽文化を伝播するための手段になってしまった、っていう皮肉のようなこと。「慈しみあふれる愛」がどうのこうのと言われると反発を持ってしまうが、異文化の接触という点に重点をおけば、歴史の普遍を描いている。異文化がぶつかりあうことによって、たしかに一方では今までサーベルなど持ったことのなかった楽園に悲惨がもたらされたが、また一方ではヴァイオリンが伝わった(なにもインディオの音楽と西洋音楽との間に優劣をつけてるわけじゃなく、あくまでこうして文化は多様化していくってことで)。もっともその後にはキリスト教文化由来の和声が世界を覆い尽くしていったわけだが、ともかく宗教より芸術が上位、って考えは嬉しい。
[映画館(字幕)] 7点(2010-06-23 12:02:22)
1363.  出来ごころ 《ネタバレ》 
昔の労働者はいかに始業時間を知ったのか、ってのが気になってた。工場でサイレンを鳴らしただろうが、しだいに居住区が広がっていくと、この映画のように労働者が各自時計を持つようになったのだろう。富坊の部屋に時計があるのは子どもは早起きってことなのか、それとも喜八は文字盤を読めないってことなのか。昔の映画って、細部までいろいろ考えさせてくれるから嬉しい。で喜八と次郎と春江の三人の心模様が進行していく。恩の義理と心情と。「隣の大将をコケにさせるような真似はよしてくれ」なんてあたりに、かえって次郎の心情を暗示させている。ヤマ場は盆栽をめぐる場。喜八がぶつたびに富坊はそこを掻く。別に痛くもないやあ、という不貞腐れの表現。そして逆襲、「新聞も読めないで」。喜八ぶつ、富坊掻く、ののち、富坊が喜八をぶつ。やがてされるままになる喜八。子どもにぶたれるにまかせる親、ってのはしばしば小津作品に現われるモチーフだが、ここらへんの侘しさは一級品ですなあ。自分は字が読めない、この子は勉強できる、春江に惚れるのがカアヤンに笑われるほどの歳になっている、自分が惨めに見えてきて、でもその自分を父とする子どもが目の前にいて…。そういったあれこれが凝り固まった場。で「贖罪」で与えた五十銭玉で、富坊の病気を導く。病院代の工面、「こんなときでもなきゃ、あたしなんか御恩返しができませんもの」と春江。喜八は「そう言ってくれるだけでも、ガキぐれえ殺したって」、でも春江が一番言いたかったのは次郎に対する「どうせあたしなんか構わないんじゃないの」。こんなシーンは映画史上いっぱいあったと思うんだけど、段取りよく次郎と春江の愛の確認につなげていくうまさゆえか、泣けちゃう。盆栽からここまでの流れの自然さ、昔のシナリオ術ってのはこういうところが眼目だったんだろう。で北海道行き、かつて子どもに殴られるにまかせていた喜八は、次郎を殴る。しかし喜八をかっこよくし過ぎないようにと、ズボンをシワシワにして脱いでいた描写を、反復させる場を用意する。小津の喜劇の才と、侘しさを描く才とが、不可分に絡み合っている傑作。
[映画館(邦画)] 9点(2010-06-22 09:58:38)
1364.  写楽
写楽の話というよりは、寛政期が主役の群像ドラマ。いつも人殺しの時代を扱うNHKの大河ドラマは、たまにはここらへんの文化を中心にやってみればいいのにと思っているのだが、日本文化史上の一つの頂点。時代が主役ならストーリーとして初めと終わりがキチッとしてなくてもいいのかも知れない。「地獄の上の花見」を見せればそれでいい。でも、一通りの有名人を交錯させるのだけど解説の域を出てなく、なんかこの監督、情報知識を集めすぎて盛りだくさんになってしまう弊が、のちの『スパイ・ゾルゲ』などにも見られる。この人は様式的な場が好きで、おいらん道中と大道芸人の道中とが直角に交差するとことか、歌麿のモデルがじっとしている部屋の光景などに、「らしさ」が出ている。合成技術の当時の限界? 全体の色調がドローンとよどむ。
[映画館(邦画)] 6点(2010-06-21 11:59:30)
1365.  帰って来たヨッパライ 《ネタバレ》 
大島における“少年”ってのは重要。デビューが原題「鳩を売る少年」だったし、『飼育』がそうだし、大川橋蔵は少年に見えなかったけど天草四郎ってのも抵抗する少年ですな。『少年』はそのものズバリ、『儀式』の少年も重要だった。『戦場のメリークリスマス』でデビッド・ボウイの弟に異様にこだわったのも、この流れでいくと納得がいく。つまり本作で一番印象に残ったのが密航韓国人少年の顔だったってこと。希望と挫折と反抗とが少年の顔の中に同居しているところが好きなんじゃないか、大島さん。少年が出てくるとリリシズムが出てくる。ベトコン射殺の写真がモチーフになっており、いかにもチャラチャラした日本人がアレヨアレヨとベトナムへ送り込まれていくあたり、当時はもっとブラックなユーモアが醸し出されていたか。密航者はいないかとピリピリしてる日本の沿岸の空気を描いた作品てのは珍しく、その方向で具体的な日本批判を試みたほうが、抽象的な日本人・韓国人論を展開するよりも、実があっただろう。「あなたは日本人ですか」式のインタビューはあまり成功してなかったと思う。殿山泰司がタバコ屋のオバサンになってた。
[映画館(邦画)] 6点(2010-06-19 11:54:26)
1366.  一人息子 《ネタバレ》 
小津の作品で「過去」が描かれた部分があるのは珍しい。大正末の信州シーンから始まる。ランプ。そこで人物を設定しておいてから、現代の東京に母が上京してくる。嫁は下宿の近所の娘だったそうで、なにやら小津の学園ものコメディを思い出す。あの青春を謳歌していた学生たちのその後。しかし現在の夜学の生徒たちはかつての学園ものと違って、坊主刈りだし生気がない。家ではずっと近所の工場の音が続いているのが、初トーキー作品ならでは。それで支那ソバのシーンでしたか。ちょいと隣の家によって「ひょっくり出てきちゃって弱ってますよ」なんてところ。これを夫婦で語ると深刻になってしまう。隣りのおばさんに軽く言って「まあ(そんなこと言っちゃバチがあたりますよ)」ってな調子で受けてもらいたいという主人公の側の期待も含まれている。つまり愚痴。こういうとこがうまい。そして埋立地のシュールな、後のアントニオーニめいた茫漠とした風景。ひばりの空との対比。夜の不満の爆発。母の性根論もむなしく響くぐらい、風景のうつろさが家族を取り囲んでいる。富坊が馬に蹴られるエピソードがあって、これで母が「お前もお大尽にならないでよかった」と結論づけようとする哀れさ。小津の主要なモチーフとして「不如意」があるが、これをすぐ「諦念」に結びつけるのは危険だと思う。どうして挫折するのか、どうして家族は一緒にいられないのか、どちらかというと小津は諦めるというより苛立ってたんじゃないか。これを「人生の味わい」なんて片づけさせないぞ、ってな意気込みを感じる、少なくとも戦前の作品では。私は基本的には明るい小津が好きなのだが、しかし本作の侘しさはコメディのネガとしてズッシリと記憶に残された。
[映画館(邦画)] 9点(2010-06-18 12:03:27)
1367.  パリ空港の人々 《ネタバレ》 
空港に閉じ込められた彼らこそ国籍から自由になり、外の世界の人々こそ国によって監禁されている、ってなところにまで踏み込むのかと思っていたが、そこはシャンソンの国、アンゲロプロスの国境とは違う。でもラスト、身分証も金も持たず「他国」に踏み出していく勇気に希望がある。テーブルの上で予告された小さなパリから、やがて本物のパリの夜景に展開するとこがまあ見せ場なのだが、このパリは何なのだろう、郷愁か。だとするとやはり閉じ込められていた彼らが「不幸」だったということになる。そうじゃなく、あの夜景は幻想の故郷と見てそれへの訣別ととればいいんだな。外に出た彼の前には無機的な自動車道路が広がっていて…。
[映画館(字幕)] 6点(2010-06-17 12:00:34)
1368.  サクリファイス 《ネタバレ》 
『ソラリス』から『ノスタルジア』まではもう完全に酔いしれたもんだけど、これは違和感が残ったなあ。いままでの作品と比べてセリフの比率が多かった気がする。いままでの復習的な面もちゃんとあって、唖の少年は『鏡』の冒頭の吃音を思い出させ、自転車ってのは『ノスタルジア』で重要だった。ドアがギィーッと開くってのも。揺れてガラスが鳴り出すってのは『ストーカー』、空中浮遊は『ソラリス』に『鏡』と、なんか過去のモチーフを総ざらいしている感じがあった。遺作となると意識していたのか。そういう意味では、もちろんタルコフスキーの世界以外のなにものでもない(でも犬がいなかったなあ。途中で鳴き声が入ってきた気もするが)。素材はそうなんだけど、なんか本作はそれに浸り切ってない感じがある。それが衰えから来るものなのか、作者の切迫から来るものなのか。話の骨組みは黒澤の『生きものの記録』と似てて、でもまったく別種の道を通り、まったく異なる質感の世界を提示した、って感じ。でもまだ黒澤のほうが論理的だった、こちらはもう完全に「祈り」だもんね。あの「日本」をどう考えていいかが分からない。未来都市をわざわざ日本で撮った監督が、あの老教授と同じ考えだとは思えない。案外単純にヒロシマの国ってことかなあ、その場合非キリスト教国ってことはどうなるのだろう。
[映画館(字幕)] 7点(2010-06-16 12:06:40)
1369.  絞死刑
前半の面白さだけだったら、ためらわず大島最高作と断定してしまうんだけど、後半抽象論になって浮いてしまうのが不満。外に出ての妄想シーンまではいいと思うんだけど、「姉」が見える見えない以後の展開は、映画よりも剥き出しのシナリオ文学って感じで。いかにも60年代末という時代を反映はしている。これ音の効果もいいんだ。ぶるぶる震えるときの手錠のカチャカチャやら、生きているということの鼓動、朝鮮人部落の声、など。あの姉の演説にRが、どうもしっくりこない、と不同意を示すとこに誠実さがある。ドアの外の国家がまぶしく輝いているところは、やはり迫力がある。特定の代表者があるわけでなく、国家とは一つの状況だということか、けっきょくRも妄想の世界へ消えてしまったという意味なのか、あるいはこちら側がひとつの妄想の体系だと言っているのか。など理屈をいろいろこねる楽しみはあるが、前半のブラックユーモアで押し通してもらいたかったなあ。
[映画館(邦画)] 7点(2010-06-15 11:58:42)
1370.  生さぬ仲(1932) 《ネタバレ》 
まあ悪い意味で少女小説的な話で、メロドラマと言っても監督が後に得意としたそれとは大分違う。かっぱらいの街角のシーンから始まり、順に岡田嘉子(産みの母)に近づいていく。次いで子どものほうを描く。両者を並行して描いていって、子どもを強引に連れていっちゃう展開。デパートに勤める母(育ての)とこの子どもが会ってしまいそうになる三越のシーンのあたりに、晩年のサスペンス作家をほうふつとさせるものがなくもない。母があわてて追いかけると、エレベーターの戸が閉まって下降を始めるあたり。階段とエレベーターの追いかけ。車の後部座席から子どもが母を見かけるが、すぐ目隠しをされてしまうとか。豪邸の子どもと、借家の母との共感シーンなんかもいい。何かを感じ合うみたいなところ。この後で子どもは外に忍び出て酒屋の自転車にぶつかってしまう。後年自動車事故を好んだ監督は、この頃は自転車で我慢した。この酒屋が私のノートによると三井弘次(当時なら秀男)。いまざっと調べた範囲では確認できなかったが、前年から与太者トリオのシリーズが始まって人気が出ており、トリオの一人安部正三郎が本作に出てるのは確認できたから、三井が出てても自然。いま残ってるフィルムのうちでもかなり初期の三井ではないか。で話のほうは満洲浪人の髭面男が出てきて善玉として仕切る(たぶんこれ岡譲二って、小津の『非常線の女』の人)。当時のヒーロー像ってのが分かる。監督これが長編三作目だそうだが、岡田嘉子を使えるほど期待されていたわけだ。
[映画館(邦画)] 6点(2010-06-14 12:19:05)
1371.  ウルトラミラクルラブストーリー 《ネタバレ》 
DVDだったんで、津軽弁の洪水につい字幕付きで観てしまったが、あれはそのまま分かるとこだけを聞く態度で、ドキュメント的に受け取るべきだったかも知れない。発声練習の無意味な言葉とつながって響き合うように。全体ドキュメントタッチとミラクルストーリーが渾然としていて、ミラクルであるものがミラクルらしからぬ態度でひょいと現われてくるとこが面白い。そこが方言の力。唯一方言をしゃべらぬ町子さんて考えてみれば魔性の女で、周囲にいる男の頭を次々カラにしていくわけだ。人類は脳を発達させてしまったので、知力によって新たな危難を避けるようになり、これ以上身体の進化は起こらないだろう、という説があるが、脳をカラにしてしまえば、新たな奇跡が未来に開けてくる可能性もある、ってことか。進化は必然なのかミラクルなのか、ってテーマ? 長回しが多用され、自転車で二人帰る夕方のシーンなんかは楽しかった。サドルでメモしていると自転車が回ってしまうような動きが入り、アクセントになる。逆方向にいく夜のシーンでは、あれもっと花火が映える予定だったんじゃないかな、今ひとつであった。農薬倉庫での長回しは、さして趣向がなく面白くなかった。長回しをもたせるってのは難しいのだ。ラストの脳での子どもの遊びシーンはドキュメント調なので、自然に眺めていて熊につなげられた(前作でもそうだったが子どもをドキュメント的に捉えるのが好きみたい)。それにしても変な話を考えるなあ。
[DVD(字幕)] 6点(2010-06-13 12:11:09)
1372.  ゴジラVSスペースゴジラ
どうも製作者サイドがこちらの希望を分かってくれてないという、身をよじるようなじれったさを感じた。まずいろいろ出しすぎ。タイトルの二頭に(“頭”でいいのか)、こちらにロボットモゲラ、それにベビーゴジラとミニモスラ。怪獣が多ければ多いほどサービスと思われているようなのが悔しい。出すぎると集中性に欠ける。さらによくわかんない悪漢も混ぜて、しかし庶民がいない。自衛隊的なものはあくまで脇に回るべきなんじゃないか。怪獣と庶民とが向き合わない。それに怪獣はあくまで庶民が暮らす街で仕事をしてもらいたい。宇宙空間なんて誰も望んでいない(それにしてもずいぶん密な宇宙だった)。スケールを広げて宇宙、ってのがサービスだと思われているのが悔しい。あの結晶が福岡の街に生えるイメージなんか、新しいものに膨らませられそうな芽を感じたものだが、そういう新ネタを膨らますだけの余裕がもうこの頃にはなくなっていたんだなあ。そういえば宇宙怪獣ドゴラも北九州だった、福岡県てのは宇宙となにかフィルムコミッションの協定でも結んでいるのか。怪獣が街を破壊する態度が、いかにも破壊だけが目的となっている。『モスラ』はちゃんと独自の目的があって東京タワーを倒した。とにかくビルを壊しとけばいいんだろ、と思われているようで悔しい。たとえば建物を慎重によけて進む律儀な怪獣ってのだっていてもいいのに。まあ、つまんないだろうけどね。
[映画館(邦画)] 5点(2010-06-12 11:58:12)
1373.  しんぼる 《ネタバレ》 
たぶん、これはどういう意味があるんだろう、と考えること自体無意味な映画なんだろうが、観ているあいだ何も考えないことも難しいので、まあいろいろ考えてしまう。この白い部屋とメキシコとどう絡んでくるんだろう、というのが一番の興味になるわけ。この監禁は天使のいたずらなのか、あちらにはカトリックで、ここらへんでつながるのか、とか。あの覆面をとると何かなんだ、とか。白い部屋は日本の象徴か、とか。ある種の閉塞感。自分が望んだものでなければモノは手に入る。醤油なしでなら寿司も食える。出口の暗い部屋に閉じ込められたとき、パジャマ男は白い部屋で監禁されたままの暮らしでも良かったんだ、という夢を見た。あそこらへん、今の日本の精神状況と言えなくもない。脱出への試行錯誤では、番地表示板で押さえてガムテープで止めて伸ばしていくと、ツーッと剥がれていくとこが好き。で、メキシコとの切り返しで切迫を高めていって、その頂点でああなる。このハジけた感じは、私はけっこう嬉しかった。そして無意味な奇跡が続く。パジャマ男は閉じた部屋から闇を抜けて世界に作用を及ぼせるようになったわけだが、その作用の無価値さ。なんかこの馬鹿馬鹿しさは、宗教的なるものへの批評として、いいとこをついているような気もした。この先を「教祖の妄想」と大笑いしていいものなんだか、へんにマジメぶっているので、真意はつかめません。
[DVD(邦画)] 6点(2010-06-11 12:24:18)
1374.  エル・トポ 《ネタバレ》 
前半はほとんど武者修行の道場破りといったオモムキ。ここらへん60年代が匂い立つ。精神性への憧れがあって、それがファッション的というか皮相的な感じが実にもって60年代末。物質主義に対する反発、というより、物質主義に対する反発を表現したかった時代・反発するとカッコよかった時代。このあと地下のフリークスと組むわけ、というか神になるのかな。ま、この話全体がある種の創世記神話で、ここから歴史を始めたい、なんて意志が感じられる。小人女と組んで大道芸。ここらへんはちょっと哀切。成人した息子が殺しに現われる(だと思うんだけど違うのかな)。解放のための穴をあけ、しかし彼らは街の人々に殺され、男は復讐して焼身自殺を遂げる、ここらへんの展開にはノセられました。いかにも頽廃を演じようとしてるんだけど、なにせ画面が乾いてるもんだから陰湿感がない。でもだからかえっていいのかな。
[映画館(字幕)] 6点(2010-06-10 11:59:27)(良:1票)
1375.  儀式 《ネタバレ》 
美しさの点では大島作品でも一二を争う。どこかヒンヤリしてるのが、いかにも儀式の美しさ。テルミチは滅びることによって佐藤慶の桜田家に抵抗したわけ。でもそんな「大敵」なのだろうか。たとえ大敵であっても、大敵として扱うことによって、さらにこちらの無力感を増幅させてるってことはなかったのか。「大敵」として扱うよりは、無視する・それができなければ見ないふりする、って手のほうが有効で、実は抵抗している者も深層では桜田家的なものが好きで、だから大物の敵として見たがっているんじゃないか。敗北の歌をこう美しく歌っていいのかなあ、という思いが残った。もちろんそれをこそ描いた映画なのだ、と大島さん言うだろうけど、ちょっと河原崎君ウジウジしすぎる。映画表現としても、否定すべき儀式をかくまで壮麗に描いてしまう心性と、どこか通じ合ってしまっている気がし、またこの陶酔的敗北主義って、戦後の反体制運動にずっと流れていたような気もし、そういったあれこれが点検できた作品として、私には大変面白かった。地中の弟の声を聞き取ることによってだけかろうじてアイデンティティが確保できるまで、「儀式」に追い詰められている。あの図柄はいいね、土俵ぎわで儀式と対抗している姿勢。耳を澄ますって行為自体が美しい(『ラスト・エンペラー』にもあったなあ)。あとは無人のお色直しのシーンの滑稽な悲痛さ。「ロシア兵は親切だっただろ」とさかんに聞く小松方正の共産党員。そして歌合戦。大島的なものが詰まっている。
[映画館(邦画)] 8点(2010-06-09 12:06:41)(良:1票)
1376.  王妃マルゴ
とにかくなにやら陰謀が渦巻いているのは分かった。それが一族の崩壊へと向かっていけば『ゴッドファーザー』のような作品になっただろう。どうもカメラが近寄りすぎて、ひいて息を抜きたいところでも熱演のアップになって、陰謀ってのはもっと静かにロングの画面の中で進行するのではないか。そして薄暗さ、陰影の美をあまり感じさせず、ただ薄汚れた暗さだった。『ディーバ』や『リバー・ランズ…』のカメラなんだけど。ヒロイン、政略結婚の旦那との間には、友人のような・兄弟のような、いたわり・気の配り合いがあって、実の血のつながった兄弟とは近親相姦やってんの。澱んでますなあ、16世紀末のヨーロッパ。死体の脳で運命占いするってのもすごい。
[映画館(字幕)] 6点(2010-06-08 11:53:58)
1377.  プラトーン
こうまで爽快感のない戦争映画も珍しい。おどおどした気持ちと倦怠感が交錯し、それにヒステリーが重なる。オバサンを射殺するあたり説得力があった。恐怖があり、仲間を殺された恨みがあり、分からない言葉で何やらこちらを非難している、倦怠感からヒステリーへ一足飛びにエイッと行ってしまう。ラストの大混戦、敵味方の区別もつかない渾沌に友軍の爆撃が重なって、ヒステリーは頂点に達する。けっきょくすべての兵士の死は犬死にである、というやりきれなさがビンビン伝わってきた。ヘリコプターの風でカバーがめくれ死体が出てくるとこ。冒頭の除隊組とすれ違うところも印象深い。最後の兵士の意味ありげな笑い。ザマアミロが80%、憐れみ10%、頑張れよ10%、ってとこか。バーンズも単なる悪役じゃなくて、この戦場で生き残り続けてきた経歴を持っている、生き残ることは殺すことだってことを身をもって証明してきて、クリスがラストでなぞるわけ。そしてすべてを包み込むジャングルの怖さ。ここでは敵はまったく純粋な「敵」として存在する。懲らしめるべきものでも、人倫を踏み外した憐れむべきものでもなく、ほっておくとこちらを殺しに来るただ純粋な敵。
[映画館(字幕)] 7点(2010-06-07 12:03:29)
1378.  ナイトメアー・ビフォア・クリスマス 《ネタバレ》 
人形アニメとしての丁寧さもいいが、設定もいい。「怖がらす」ことを極めてしまって、なんとはないウツロに捉えられているジャック、ふとクリスマスを覗いてしまって、今度は「喜ばす」ってことをやろうとする。一生懸命科学的に分析しようとしたりして。何ら悪意がないところに、「フランケンシュタインの怪物」的哀しみが潜んでいる。これは下手すると「己れの分際を知れ」って反動的なメッセージになってしまいかねないところ、ジャックが「とにかく俺はやったんだ」ってな歌を朗々と歌い上げて、そうはならない。ここが大事。キャラクターもよくできていて、市長は二つの顔がクルクル替わるし、ヒロインは体が分解する。手だけでサンタを助けたり。何か頭部がドロドロネバネバのやつもいたなあ。トランプのキング。中身が虫のカタマリのやつ。人を怖がらせる国に比べてクリスマスの国の退屈な暖色、これは日本でも地獄絵の豊穣と極楽絵の退屈と、どんな文化圏でも同じ傾向があるな。ハロウィン・クリスマス文化の浸透している国だともっと楽しめるのだろう。
[映画館(字幕)] 8点(2010-06-06 12:04:54)(良:1票)
1379.  2012(2009) 《ネタバレ》 
切り上げどきの判断が出来ない映画。前半はいいのよ。見世物に徹していて、映画が誕生した当時のDNAを受け継いでいるなあ、とワクワクしながら観てた。小説でも芝居でも絵画でも出来ない映画ならではの興奮。重大な災厄へ導いていく些細な兆候のあれこれ。危機一髪の脱出も似たパターンの繰り返しながら、やはり嬉しく眺めた。でもそれも中国到着まで。あそこで切り上げる話に設定してくれてれば、ヨシッ、と膝をたたいたんだけど、ズルズルあと退屈な1時間が続く。「日本沈没」の拡大版か、と思ってたら、あちらはどうしても、ノアの箱舟と大洪水を出さないとならないらしい。いらない教訓シーンまで付けてガックリきた。こういう映画は2時間半を越さないといけない、という決まりでもあるのか。コンパクトにまとめて上映の回転数増やしたほうが、映画館だって嬉しいだろうに。見応えの前半、崩壊していく世界をうっとり眺めながら、しかし人々の間にこういうリセット願望が深まってるってのは、あんまりいい傾向じゃないな、と思わされた。日々のゴチャゴチャしたあれこれに埋め尽くされている日常からの解放への誘惑。渋滞した道路や街が海に飲み込まれていく晴れ晴れしさ。複雑になりすぎていた社会が、単純な重力の法則にのみ従ってものみな沈降していく。我々はこういった光景にスッキリするまでに、身辺が窮屈になっているわけだ。そして自分=主人公は生き残る側にいて当然と思っている。これが深まると変な宗教にハマったりするまであと一歩。
[DVD(吹替)] 7点(2010-06-05 12:04:30)(良:2票)
1380.  コミック雑誌なんかいらない! 《ネタバレ》 
とにかく内田裕也が芸能レポーターやってるってだけでおかしい。内田裕也一人でもおかしい、芸能レポーターってものもそもそもおかしい、そのおかしさは異質のものだったんだけど、それが重なるとまた第三のおかしさが生まれてくる。「深く静かに愛が潜行しているものと思われます」なんてレポートのおかしさが、内田が言ってることでさらにおかしくなる。後半、御巣鷹山で啓示を受けて、まともなジャーナリストへと目を開いてしまうんだけど、これどうかなあ。面白さは減じてしまったが、同時進行製作としてこうなってしまったって感じで納得できもする。マジメな人だから。三浦和義のシークエンスが一番いい。逮捕シーンも収められたことで、さらにこの三浦さんて人のホントかウソか分からない・いかにもテレビ的なところが、ナマナマしく記録できた。一和会のとこに行ったときは、裕也さんちょっとビビッてたんじゃないの。「カメラちゃんと撮ってるか」も良かった。あらゆる劇映画は時代の記録映画である、という真理を、最初から中に組み込んだ作品。
[映画館(邦画)] 7点(2010-06-04 12:02:15)
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